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一般社団法人機能性食品開発支援機関協議会 (FFDA)の現状と課題
特集…食品CROの現状と課題 一般社団法人機能性食品開発支援機関協議会 (FFDA)の現状と課題について やまもとてつろう 1) い とうれん た ろう みなみ たけひろ や ぶき あきら はじめに 最近の食生活は、食品の種類の多種・多様化が進んだ ことにより変化しつつあります。消費者が食品に求める 2) しお や のぶひこ 山本哲郎 、伊藤蓮太郎 、南 丈裕 、塩谷順彦2)、 坂本知紀2)、矢吹 昭2)、鈴木英明2)、原 泰久2) さかもととものり 2) すず き ひであき はら やすひさ 2.ヒト試験と医薬品の臨床試験の 違いについて 要素には、「嗜好性」、「安全性」に加えて「機能性」に ヒト試験における並行群間試験は、医薬品の新薬開発 大別され、購入しようとする食品ごとに求めるものが異 (治験)や臨床試験でも行われており、「医薬品の臨床試 なってきます。特に健康食品のブームにより、食品の 験の実施の基準に関する省令(GCP)」をどこまで参考と 「機能性」に着目した健康食品市場は拡大し、その規模 は既に1兆円を超えています。 また、食品の機能性に関するニュースは注目度が高く、 するのかが問題になります。 すなわち、主にヒト試験の実施方法とデータの品質の 確保のあり方とその水準ということになり、具体的には マスコミに取り上げられる機会が多くあります。最近で モニタリング、DM(データ管理)、SDV(原資料閲覧)、 は、動物実験による「卵の成分 うつ病症状緩和する働 監査等の業務の実施のあり方とその内容(精度・質の確 き」(3/29 NHKほか)、疫学研究による「アジ・サバを 保)ということにもなります。このGCP省令は、治験薬 多く食べる人 肝臓がんになりにくい」(6/8読売新聞 (医薬品として承認申請を目的とする未承認の薬剤)につ ほか)などが報道されました。 いて医薬品の臨床試験(治験(医薬品における薬事法上の このような状況のもと、FFDAは健康の維持にかかわ 承認を得るための臨床試験))を実施する場合と承認後の る食品機能の科学的根拠に基づく有効性と安全性を確認 製造販売後臨床試験の基準を示したもので、治験を行う するためのヒト試験に取り組んでいます。今回、FFDA 製薬会社、病院、医師は「薬事法」とGCP省令(規則)を が取り組んでいるヒト試験の現状と課題について報告し 遵守しなくてはなりません。したがって、治験に関わる ます。 医療機関、製薬企業(依頼者)、医薬品開発受託機関、及 びそれらの関係者が実施に当たって、これに違反した場 1.健康食品におけるヒト試験 合は、法的に罰せられることになります。なお、製造販 売後臨床試験の場合にはGCP省令に準拠します。 通常、消費者は健康食品に対しては、健康の維持に関 治験による有効性と安全性に関する結果は、治験薬を わる食品機能の科学的根拠に基づく有効性と安全性を求 医療用医薬品として当局に承認申請する際に「臨床試験 めています。特に特定保健用食品(トクホ)に関して、一 の成績に関する資料」として有効性と安全性に係る添付 般的な国民やマスコミ等は保健用途に対する効果につい 資料を提出します。したがって、添付資料は医薬品とし て国のお墨付きがついていると考えているようです。こ て承認申請する際の当局からの要求基準ともいえます。 のトクホの承認を得ようとする場合、トクホの申請添付 これに対して、トクホの審査申請に当たっての当局から 資料の中には保健の用途に係る効果及び摂取量 (保健の の要求基準等については、「特定保健用食品の審査申請 用途に係る有効性等) を確認した資料として、ヒト試験 における添付資料作成上の留意事項について(平成17年 (医薬では臨床試験)が求められています。この効果及び 2月1日 食安新発0201002号)」が該当するものと考え 摂取量を確認する目的のヒト試験では、原則として評価 られますが、その法的根拠と内容は大きく異なります。 する食品摂取群とプラセボ食品摂取群の2群を無作為に これは、効果があるが副作用もある医薬品と食品との違 割付けて行う並行群間試験が必要とされています。 いと思われます。 一方、「特定保健用食品の審査申請における添付資料 一般社団法人機能性食品開発支援機関協議会 1)FFDA 代表理事 2)FFDA 理事 作成上の留意事項について」では、ヒト試験が第三者機 1) 関による実施を原則とすると示されていますが 、その 内容の質についてはヒト試験を運営・管理する食品開発 1 Vol.16 No.8 / 2012 食品と医薬品の試験の主な相違 対象 特定保健用食品の審査 申請 食品 (サプリメント を含む) 食品 治験薬 3) 未承認薬 (治験薬) ヒト試験 治験 医師主導治験 医薬品 既承認薬 実施者等 対象者 倫理的原則 「特定保健用食品の審査 申請における添付資料作 医師または医師の 健常人から疾病の境界 管理の下で研究者 領域の患者 成上の留意事項につい が実施 て」(通知)1) 疫学的なエビデンスの 「疫学研究に関する倫理 2) 指針」 に則って実施す 取得 る試験 機能性に関わる エビデンスの取得 医薬品として薬事法の 承認申請を目的とする GCP省令4) 未承認の薬剤 製造販売後臨床試験 再審査申請 臨床研究に関する 倫理指針に則って 実施する試験 実施する際の基準等 目的 試験の種類 5) 研究者 企業が研究者に 委託 健常人から患者 但し、患者の診療録等 診療情報を調べる行為 がある場合と医薬品の 健康に与える影響を調 ヘルシンキ 宣言 べる行為は除外 企業が専門医に委託 患者(第Ⅰ相試験を 除く) 専門医 4) GPSP省令 GCP省令 企業が専門医に依頼 医学的薬理的なエビデ 「臨床研究に関する倫理 6) 専門医 指針」 ンスの取得 患者 1)食安新発第0201002号、平成17年2月1日 2)文部科学省、厚生労働省、弊政20年12月1日 3)治験薬:医薬品の製造承認を得る目的で、臨床試験(治験)のデータを収集するための未承認の薬剤(薬物)。 4)GCP省令:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令、厚生労働省令第68号、平成21年3月31日 5)GPSP省令:医薬品の製造販売後の調査および試験の実施の基準に関する使用例、厚生労働省令第171号、平成16年12月20日 6)厚生労働省、弊政20年7月31日 業務受託機関(以下、食品CRO)に委ねられています。 また、『ヒト試験は、ヘルシンキ宣言の精神に則り、常 3.FFDAの活動状況 に被験者の人権保護に配慮し、倫理委員会等の承認を得 て、医師の管理の下に実施する。実施に当たっては、 「疫学研究に関する倫理指針」に従う』と記載されてい ますので、当該倫理指針に従うことになります。 従って、食品CROは食品企業から業務を受託していま 2003年8月に任意団体「健康・栄養食品CRO連絡会」 が設立され、自主的なガイドラインを作成し公表するな どの活動をしてきました。 そして2010年11月には、こ の組織をさらに発展させて、社会的責任を担う非営利法 すが、ヒト試験については、文部科学省・厚生労働省告 人として活動するために「健康・栄養食品CRO連絡会」 示 『疫学研究に関する倫理指針』に従って科学性と倫 から「一般社団法人機能性食品開発支援機関協議会 理性を充分に配慮して実施しなければなりません。 (Functional Foods Development Association 略称: また、トクホは食品安全法及び健康増進法を根拠とし 2) FFDA) 」に移行し、FFDAとしての自主的なガイドライ ているのに対して 、医薬品は薬事法と大きく異なりま ンの作成を続けております。なお、海外では食品の試験 す。用語に関して、「特定保健用食品の審査申請におけ は、GCPで実施しているといわれていますが、その詳細 る添付資料作成上の留意事項について」では、ヒト試験、 が分からないため、課題としています。 食品の保健の用途、摂取、関与成分、副次作用などとい その他、課題としては、有害事象と副次作用(医薬で う用語が用いられています。唯一、両者に共通している は副作用)の取り扱い基準を医薬品と同様とするべきか ことは「ヘルシンキ宣言」を倫理の原則としていること という問題もあります。 です。 このFFDAは、主たる事務所を公益財団法人 日本健 したがって、食品のヒト試験の実施について、GCP省 康・栄養食品協会内におき、役員(理事や監事)の中には、 令を参考にできますが、GCP省令に従って実施すること 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会、財団法人 健 については、オーバークオリティーになりやすくなりま 康・体力づくり事業財団、特定非営利活動法人 食品保 す。 健科学情報交流協議会(食科協)の関係者と外部からの学 このような状況の中にあって、食品CRO業界は、治験 や製造販売後臨床試験の実施に関わる「医薬品の臨床試 3) 術専門家も参画し、会員企業は6社 から構成されてい ます。 験の実施の基準に関する省令(GCP)」に相当するような 2011年度の活動をここで紹介しますと、研修会・勉強 ヒト試験の科学的な質及び成績の信頼性を確保するため 会を3回のほか「食品の機能性評価シンポジウム ∼健 の統一的な実施基準があるとはいえません。 康食品の機能性表示を目指して∼」(10月25日)を学士会 館において、公益財団法人 日本健康・栄養食品協会が 2 Vol.16 No.8 / 2012 特集…食品CROの現状と課題 主催、FFDAが共催で開催いたしました。その中で FFDAは「機能性食品の開発支援について」のセッショ やまもと・てつろう/Tetsuro Yamamoto ンを担当し、「機能性食品に関する特許の現状と問題点」 1978年3月 大阪大学工学部 卒業、1988年5月 工学博士 津国特許事務所(現 特許業務法人 津国)弁理士 鈴木 音哉 取得(大阪大学)、2001年2月 ㈱TTC設立 代表取締役社長 先生、「食品の機能性を評価するための統計学的手法」 に就任、現在に至る 東京理科大学 工学部経営工学科 教授 浜田 知久馬 最近の主な研究や活動:一般社団法人 機能性食品開発支援 先生のご講演内容を冊子にする作業を進めています。 機関協議会(FFDA)代表理事他 いとう・れんたろう/Rentaro Ito おわりに FFDA理事 FFDAは、日本健康・栄養食品協会などの協力とご指 導をいただきながら、機能性食品開発支援を通して、消 みなみ・たけひろ/Takehiro Minami 費者のみなさまに提供する健康食品の安全・安心と納得 FFDA理事 性(機能性と安全性に関わる情報・データ作り)に関わ り、健康食品の未来を作るために活動しています。 しおや・のぶひこ/Nobuhiko Shioya FFDA理事 《《《《《 参考文献 》》》》》 さかもと・とものり/Tomonori Sakamoto 1) 特定保健用食品の審査申請における添付資料作成上の FFDA理事 留意事項について (平成17年2月1日 食安新発第0201002 号) 2) 伊藤蓮太郎、食品表示法(仮称)は関連3法の一本化でな やぶき・あきら/Akira Yabuki FFDA理事 く食衛法とJAS法の表示基準を統合した新法を 月刊フ ードケミカル 2012-4 3) イーピーエス㈱、㈱エスカルラボラトリーズ、㈱ケ すずき・ひであき/Hideaki Suzuki FFDA理事 イ・エス・オー、シミック㈱、特許業務法人津国、㈱テ ィーティーシー(五十音順) はら・やすひさ/Yasuhisa Hara FFDA理事 3 Vol.16 No.8 / 2012