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改善活動に リストラは不要

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改善活動に リストラは不要
1
章
改善活動に
リストラは不要
改善活動の問題として「製品1個当たりの組立時間や加工時間を短
くしても、暇になった作業者を解雇しないと会社の利益は増えない」と
いう意見をよく聞きます。
たしかに、改善は短期的には会社の利益に結びつかないことがあり
ます。
しかし、
5年くらいの長期的なスパンで見ると、改善を行っていな
い工場では作業者が水膨れ的に増えて、会社の業績は悪化します。こ
の章では、改善活動をどうやって儲けにつなげるかを理解してください。
余った時間を活用しないと
意味がない
CASE
1
会社の売上高と利益の関係
売上、費用
利益
余った時間で生産すると、売価から部品費を差し引いたお金がまるごと儲けになる
経費
売上高
CASE 自動車部品を組み立てているA社
労務費
A社では、3年前から改善活動を行って製品の組立時間を短縮し、製品1個当た
部品費
りの原価は平均で20%下がった。しかし、A社の利益は3年前と全く変わって
いない。社長は、コストが下がっているのに利益は増えないのは原価の計算方法
が間違っていると疑っているが、本当にそうだろうか?
★余った時間を使って儲ける
★組立時間を短くするだけでは儲からない
A社が行っている改善活動は、作業のムダを減らす「 ムダ取り」が中心
しかし、新たな製品を受注して、それを作業者の手が空いているときに組
です。
み立てることができれば、その製品は追加の労務費と経費をかけずに作る
ことができます。つまり「売価から部品費だけを差し引いたお金」が、ま
主なムダ取り
るまる儲けになります。
●部品の置き方を工夫してムダな動作を減らす
●部品を整理・整頓して部品を探すためのムダな時間を減らす
手が空いているときに作る製品の儲け
●製品の利益=製品の売価-製品の部品費
A社では改善活動で製品の組立時間が短くなったので、製品原価が下がり
A社のように製品の組立時間を短くしただけでは会社の利益は増えません
会社の利益は増えたはずですよ!
が、その結果余った時間で新たな製品を作ると利益が増えます。
「計算上の製品原価」が下がると、すぐに会社の利益が増えるとは限りま
CASE の解答
せん。製品1個を組み立てる時間を短くしても、工場の作業者の人数が変
わらなければ、会社全体の労務費は減らないので利益は増えません。
追加 CASE
自動車業界の急激な収益改善
●製品原価
日本の自動車メーカーは、2012年までの超円高でもじっと我慢して改
=部品費+組立費
善活動を続けていました。その後、2013年からの円安で海外での売上
=部品費+(賃率× 組立時間 )
台数が伸びたときに、
「今までの改善活動で作った余剰時間(余剰生産能力)」
●会社の利益
を使って増産し、大きな利益をあげているのです。
=年間の売上高-年間の部品費- 年間の労務費 -年間の経費
(付録1参照)
2
第1章/改善活動にリストラは不要
3
★ムダを削る
●賃率
=「工場の労務費と経費」÷「全作業者の年間作業時間合計」
しかし、ほとんどの企業では「余った時間に作る製品」があれば元々作っ
=5000万円÷(1000時間×10人)
ていますよ。そんな製品がないから困っているのでしょう!
=5000円/人時間
確かにそうですね、余った時間に作る製品がない工場では、作業者の残業
★作業時間とは
時間を減らしたり、外注に出していた製品を引き上げて社内の仕事を増や
すことで、ムダ取りを儲けにつなげています。
賃率の計算式の中にある作業時間とは作業者が工場にいる時間(タイムカ
ード上の労働時間)ではありません。作業時間とは実際に製品を組立てた
改善活動でできた余剰時間の使い方
り加工している時間のことで、正確には「 正味作業時間 」といいます。
●新たな製品を作る
作業者が工場にいる労働時間の中の正味時間の割合を「 稼働率 」といい
●残業時間を減らす
ます。つまり、厳密には賃率は以下のように計算します。
●外注品を社内に戻す(内製化)
●臨時労働者を減らす
●賃率
=「工場の労務費と経費」÷(全作業者の年間労働時間合計×稼働率)
★賃率とは
ところで、製品原価の計算で使われている「 賃率 」とはなんですか?
●稼働率=正味作業時間÷タイムカード上の労働時間
と言うことは、工場の受注量が増えて稼働率が上がると、賃率が下がり、
製品原価が下がり、工場が儲かるのですね。
賃率は「工場の時間当たりの使用料」みたいなものです。たとえば、自社
で設計した製品を、他社の工場で委託生産してもらうときには「製品を組
そのとおりです。
み立てるのにかかる時間」に応じてお金を払うでしょう。
労働時間と正味作業時間
もう少し理屈っぽく説明すると、賃率とは、工場で発生する労務費と経費
時間
を、工場で作っている各製品に「その製品を組み立てるのにかかる時間」
に比例して割り付けるための係数のことです。
段取り時間
休憩時間
賃率は会社によって呼び方が様々で「レート、チャージ、ローディング、
単位、単金、加工費率、配賦率」とも呼ばれます。また、時間の単位も会
労働時間
社によって様々で、
「1時間当たり、1分当たり、1秒当たり」があります。
正味作業時間
工場の労務費と経費の合計が年間5000万円、作業者が10人、1人当
たりの年間作業時間が1000時間とすると、賃率は5000円/時間に
なります。
4
第1章/改善活動にリストラは不要
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