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「契約の更新等によって労働契約の通算期間が2年を超え
た場合、当該労働契約は無期労働契約となる」と判断し、B
<第24回 カンボジア労働仲裁事例⑥
−2014年28号 Naga World Limited事件−> 氏らの労働契約は無期労働契約であると認定しました。
2. 解雇の正当性 (1) 懲戒事由の認定
今回は、2014年28号Naga World事件を参考事例とし
労働仲裁委員会は、A社がB氏を、B氏が無断欠勤を5回
て、解雇に関する理解を深めて頂ければと思います。
したため、就業規則の懲戒処分規定に基いて解雇したこと
を認定しました。
<事案概要>
(2) 就業規則中の懲戒規定
労働組合は、解雇になった4名(B乃至E氏)の労働
その上で、同社就業規則の懲戒処分規定には「①最初
者の復職及び解雇から復職までの賃金の支払い、及
の軽微なmisconductについては口頭注意、②2度目につい
び、その4人とは別に解雇になった4名(F乃至I氏)の
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ては警告書による注意、③3度目については1週間を超え
労働者の解雇補償金の支払いを求め、労働仲裁委員
‐気をつけて下さい。不動産購入後の注意点‐ない期間での停職とする」、「3度目の中程度のmisconduct
会に労働仲裁の申立てを行いました。
があった場合には1週間の停職、それ以上については免職
とする」、「5度目の中程度のmisconductについてはserious
<労働組合の請求内容>
misconductがあったものとする」との記載があること、他方、
労働組合は、A社に対し、B乃至E氏の復職及び解
「5度目の軽微なmisconductがあった場合にはserious
雇から復職までの賃金の支払い、F乃至I氏の退職金
misconductがあったものとする」という記載がないことを認定
の支払いの請求を行いました。 した上で、A社によるB氏の解雇は就業規則に則って行わ
れたものではないと判断しました。
<仲裁判断内容>
(3) 労働法27条
A社は、①「B乃至E氏を復職させよ、B乃至E氏に対
労働仲裁委員会は、労働法27条によれば、懲戒処分は
し、解雇から復職までの賃金の支払え、B氏を就業規
懲戒事由の重大さに伴ったものでなければならないと述べ
則に基づいて罰せよ」、②「F乃至I氏に対して解雇補
た上で、5回目の軽微な企業秩序違反行為は、「4度目の
償金を支払え」との仲裁判断をそれぞれ下しました。
軽微なmisconductが中程度のmisconductに該当する」とい
うA社の主張が仮に認められたとしても、これは2度目の中
<理由・解説>
程度のmisconductにすら該当しないため、当該懲戒事由に
今回は①の「解雇の正当性」について論じます。
は解雇処分を下す程の重大性は認められないため、B氏
前提知識として、(無期雇用契約の場合)労働者に
の解雇は労働法27条に反すると判断しました。
重大な企業秩序違反行為(serious
misconduct)がある
(4) 上記に基づき、B氏の解雇は正当な理由を欠くところ、
場合(以下、「企業秩序違反
行 為 」 に つ い て は
B氏が復職を求めていたため、労働仲裁委員会は、A社に
「misconduct」と記載)、使用者は当該労働者を、事前
通知を行うことなく、また解雇補償金等を支払うことなく、 B氏を復職、及び、解雇時から復職時までの賃金相当額の
当該労働者を解雇することができます(労働法(以下、 支払いを命じる裁定を下しました。
他方、F氏らは復職を求めず、解雇補償金の支払いを求
法令名省略)82条2項、89条1項、91条1項)。
他方、「正当な理由(valid reason)」がある場合には、 めていたため、F氏らの解雇についても正当な理由がない
ことが認められた上で、A社にはF氏らに対する解雇補償金
事前通知及び解雇補償金の支払いを行った上での解
の支払いを命じる裁定が下されました。
雇が可能となります(75条、89条、90条)。
3. まとめ
1. 雇用契約の性質
本仲裁裁定等によって、解雇が不当解雇であると判断さ
労働仲裁委員会はまず、B氏らの契約が無期労働契
れた場合には再雇用の可能性があり、解雇を行うことのリス
約か有期労働契約かを判断しています。
クが飛躍的に高まったと言えます。
A社とB氏らは、有期労働契約を締結し、これを更新
当該リスク低減のために、就業規則の整備並びに就業規
し、通算の労働契約期間は2年を超えていました。
則に基づいた手続及び証拠作成・収集をお勧め致します。
労働仲裁委員会は、労働法67条2項に基づいて、
トピックス : <注記>
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