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能代市バイオマスタウン構想書
能代市バイオマスタウン構想 1.提出日 平成20年2月20日 2.提出者 能代市環境部環境企画課 担当者:畠山利勝、穴山和照 〒018−3192 能代市二ツ井町字上台1−1 電話:0185−73−5501 Fax: 0185−73−5618 メールアドレス:[email protected] 市ホームページ:http://www.city.noshiro.akita.jp 3.対象地域 能代市 4.構想の実施主体 能代市、その他関係団体 5.地域の現状 能代市は平成18年3月に旧能代市、旧二ツ井町が合併して誕生し、市の基本構想では その将来像を 「 わ のまち 能代」、 基本理念を 「能代市民の 和 」 「環境で活力を生み出す 「未来へつながる 環 」 輪 」 として大きな一歩を踏み出している。 (1)経済的特色 能代港は4万トン級岸壁を擁しており、平成 18年12月にリサイクルポートとして国の指 定を受け、秋田県北部エコタウン計画と相まっ て、リサイクル関連貨物を取り扱う拠点港とし て、今後の利活用が期待されている。また、日 本海沿岸東北自動車道の市内インターが相次い で開通し、大館能代空港とともに本市を取り巻 く交通、交流、物流のネットワークは整いつつ (リサイクルポートに指定された能代港) ある。 1 本市の経済は平成9年の2,583億円の総生 産をピークに年々減少傾向を示している。 特に基本産業である農林水産業(第一次 産業)は、平成6年の117億円をピークに年々 減少しているものの、能代地域を代表するネギ、 山ウド、ミョウガ、キャベツなどは、県内一の生 産、出荷量となっている。 (ネギは全国17位の生産量:平成17年) 産業構造別に見ると、第一次、第二次産業が減 少傾向で、第三次産業が約8割を占めている。 畜産業は、乳用牛、肉用牛及び養豚の飼養農家19戸、8億円の産出額となっている。また、 比内地鶏の飼養農家が増えつつある。 林業については、かつて米代川を利用した秋田杉の集積地「木都能代」として栄えてきてお り、永年の伝統である木材加工技術は高い水準にある。しかし、国有林材の減少や低廉な外材 に押され木材関連企業は厳しい状況となっており、市場動向の情報収集や商品開発等のマーケ ティング面での取組が課題となっている。平成2年と平成12年のセンサスを比較してみると、 製材関連事業所数が10年間で約3割減少し、117事業所となっている。 能代市総生産 3,000 第一次産業 (単位:億円) 第二次産業 第三次産業 計 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 H2年 H4年 H6年 H8年 H10年 H12年 H14年 H16年 (2)社会的特色 本市は、自然豊かな景勝地の風の松原や日本一高い天然秋田杉の仁鮒水沢スギ植物群落保 護林、風光明媚な県立自然公園きみまち阪などと27万人集客している能代おなごりフェス ティバルなどに年間140万人の観光客がある。 交流人口は増加しているが、市の人口は平成2年 から平成17年の15年間に6,658人、約9. 6%減少している。年齢別人口では、15歳未満 の子どもや15歳∼64歳までの生産年齢人口が 減少し、65歳以上の高齢者人口が増えて少子高 齢化が進行している。 一方、世帯数は、2,519世帯12%増え、 核家族化の傾向が顕著に現れている。 (能代おなごりフェスティバル) 2 (3)地理的特色 能代市は、秋田県北西部に位置し、東は 北秋田市・上小阿仁村、西は日本海、南は 三種町、北は八峰町・藤里町に接してい る。また県都秋田市には約60kmの圏内 にある。 市内中央を流れる米代川は、東北地方を 縦断する奥羽山脈に源を発し、世界自然遺 産白神山地を源とする藤琴川や種梅川など と合流しながら日本海に注いでいる。下流 部には能代平野が広がり、その両側は、広 大な台地が広がり大部分が農地として活用 されている。また西部は日本海に面してい る。 気候は、四季の移り変わりが明瞭で、対 馬暖流の影響により、年間の平均気温は1 0度前後と温暖。冬は低温で日本海側特有 の北西の強い季節風が吹き、降雪日数は平 均70日程度ある。面積は426.7k㎡ (東西約30km、南北約35km)であ り、地目別では、山林が約42%(180k㎡)農用地が約20%(87k㎡)で、宅地は 約4%(17k㎡)となっている。 【国勢調査】 (単位:人) 年 平成 2 年 平成 7 年 平成 12 年 平成 17 年 口 69,516 67,816 65,237 62,858 0∼14 歳 11,934 9,972 8,436 ― 15∼64 歳 45,739 43,584 40,226 ― 65 歳∼ 11,843 14,260 16,572 ― 帯 21,454 22,216 22,744 種別 人 世 数 23,973 6.バイオマスタウン形成上の基本的な構想 本市におけるバイオマスへの取り組みとして、能代木質バイオマス発電所(平成15年に 運転稼動)があり、この取組を中心に原料の確保等の課題に対処し、バイオマス事業の着実な 推進を図りながら新たな利活用について考慮し、地域内消費を主体とした資源循環型のまちづ くりを目指すものである。 3 その際に、本市の特産品であるネギや山ウド等の農業残さや、山林の林地残材、生活系・事 業系の食品残さを原料とし、安定的・効率的に収集するシステムづくりや先駆的なマテリアル 転換技術の確立等を総合的・計画的に進めたバイオマスの利活用を推進するものである。 (1)地域のバイオマスの利活用方法 ① 森林資源の利活用 当市の約 4 割を占める森林面積からの森林資源は、現在、住宅建築資材等として活用 されている。しかし、伐採後の枝葉や残材は搬入せず山林に残されたままで未利用となっ ている。今後は、林家や集材事業者、木材活用事業者、行政等の関係者が一体となって森 林資源の収集システムを構築し、次の木質バイオマス利活用を行う。 ア.秋田県立大学木材高度加工研究所が主体となり林地残材やクロモジ木等を活用して精 油の抽出実証を行うとともに、精油生産施設を導入し「香料」として販売する精油の製 造・商品化を行う。 イ.民間事業者で組織している水環境研究会が主体となり、間伐材の炭化装置等を導入 し、木粉炭を製造した後、ゼオライト等と混合焼成した水質浄化濾剤として製造、市場 販売を行う。 ウ.精油抽出等に不向きな残材及び抽出後の残材については、木質バイオマス発電所の燃 料として熱・電気エネルギーの利用を進める。熱エネルギー等は温室栽培などに利用す る。 また、同木材高度加工研究所が主体となり進めている木質ガス化発電について実証試 験を進め、結果を踏まえて製材事業者等が発電装置を導入し、自社の電気エネルギーと しての利用を進める。 エ.市が主体となり、現在、同木材高度加工研究所が中心となって行っている木材をエネ ルギー変換するための前処理研究を継続し、技術開発の進捗によるエタノール生成と経 済的な視点から低コスト化に向けた木質バイオマスを原料とした燃料製造の取組を進 め、輸送用燃料として活用・販売する。 林地残材利活用の流れ 山林の 所有者 委 託 集 約 森林組合等 間 伐 集 材 市民利用 販 売 エタノール 事 業 者 販 売 香 事 業 者 自社利用 温室栽培などに熱利用 運搬事業者 エネルギー変換 料 精油抽出 電気エネルギー 製材所端材等 バイオマス発電所 (燃料原料) 4 香料やエネルギーに使用 しない林地残材残さ ② 堆肥化・肥料化への利活用 現在、能代の特産品であるネギ、山ウド等の残さについては、一部は野積した後農地への すき込み等のほか、ほとんどは埋め立てなどの廃棄処分されている。また、もみ殻は家畜の 敷料や堆肥として活用している。 家庭系と事業系の生ごみについては、一部コンポストによる家庭菜園の堆肥などに活用さ れているものの、大半は燃えるごみとして焼却処分されている。 今後は、JA 等を中心に効率的な農作物残さやもみ殻の収集システムを構築するとともに、 生ごみの分別や収集と利活用については地域単位等でも検討を進める機会を設け、それぞれ が積極的に係わるシステムを構築する。そして、これらを複合的に活用し農業法人グループ が主体となって複合堆肥工場と複合肥料工場を設置し、製造した堆肥は地域農業の生産現場 に施肥し有機肥料を活用した付加価値の高い農作物を生産するなど地域農業の振興の一役と する。 また、白神微生物(白神山地の有用土着菌)を活用して、民間事業者等が牛、豚、比内地 鶏への飼料化を行い、市内の畜産農家等に販売し、世界遺産である白神山地の土着菌を有効 に活用した畜産ブランド化を図り、地域の畜産振興とエサの地産地消による自給率向上の一 役とするとともに、市場販売を行う。 農業残さ・もみ殻・生ごみ利活用の流れ 農業残さ もみ殻 ( ネギ・山うど) (食品残さ含む) 複合堆肥工場→製品→販売 機能性食品 生ゴミ 複合飼料工場→製品→販売 燻炭・燃料 ガス化発電等の検討 堆肥化、肥料化の他、次の活用についても推進する。 ②−1 農作物残さの活用 ネギ、山ウド等の残さについては、大学及び研究機関等において成分調査を進め、民間 事業者等が付加価値の高い加工商品や白神微生物を活用した機能性食品への活用を図り、 健康食品として販売する。 ②−2 もみ殻の利活用 市内のライスセンター等から排出するもみ殻は、農業法人が主体となってもみ殻燻炭機 械の導入及びもみ殻燻炭を生産し、農業生産現場での土壌改良材等への活用を推進する。 また、施設園芸等のボイラー燃料としての実証を進め、燃料利用を推進する。 ②−3 生ごみ(食物残さ)の利活用 畜産事業者を主体として、メタン発酵施設を設置しガス化発電を行い畜舎に供給すると 5 ともに生産現場への液肥活用について液肥の成分調査・研究を進めながら安心安全な地域 農産物を生産し農業の振興を図る。 ③ 廃食油の利活用 現在、家庭(事業系)からの廃食油は旧二ツ井町分を業者が回収し、他県へ飼料原料等と して販売している。 今後は、市が主体となって旧二ツ井町の廃食油回収を能代市全域での回収システムを構築 し、市内からの全ての廃食用油を原料として、民間事業者が BDF 施設を導入、BDF 等の 輸送燃料や施設園芸ボイラー燃料等としての利活用を推進する。 廃油回収システム 行政の役割 ・集積所の決定、市民への周知 ・事業者の決定 市民の役割 事業者の役割 ・調理後の食用油の保管 ・集積所の廃食油を回収 ・集積所に搬出 集積所 ・エネルギー変換 ・自己責任で燃料等使用 ④ 資源作物の利活用 当市における不耕作地は、393ha(※1)程で今後も増加が予想され、農地の有効活 用からなたね等の資源作物の作付けによる課題解決が大切であると考えられる。 そのため、今後は、これらの農地を活用し地域に適した資源作物の選定とコスト削減等の 実証を行いつつ栽培を推進し、地域農業の振興を図る。 (※1:2005年農林業センサス、1年間何も作らなかった田畑) (2)バイオマスの利活用推進体制 平成19年5月に設置したバイオマスタウン構想策定委員(秋田県立大学木材高度加工研 究所、秋田県立大学、総合食品研究所、JAあきた白神、白神森林組合、建設業協会、能代 森林資源利用協同組合、農業者、市民、秋田県山本地域振興局)を中心に、新たに「バイオ マス事業推進協議会」を平成20年5月に設置する。専門的知識を有する研究者や企業、事 業者を委員とする「白神微生物利活用研究会」をオブザーバとし、本バイオマスタウン実現 のための推進体制とする。 本協議会は、次の3つの部会からなり、バイオマス利活用に対する啓発普及や実現のため の課題解決及び事業化のための推進を図る。 6 組 織 図 協力機関 バイオマス 事業推進協議会 白神微生物 利活用研究会 ラ イ フリ サイ ク ル 部会 ア グリ リ サ イ ク ル 部会 バ イオ エ ネル ギ ー 部会 市民・事業者・行政の協働 ア)バイオエネルギー部会 ○スギ間伐材等のエタノール変換やガス化発電、精油抽出及び廃食油のエネルギー変換、 利活用について推進する。 ○林地残材の収集・運搬について、間伐の手法も含め、課題解決のための協議を進め、 能代地域独自のシステムづくりを構築する。 ○もみ殻の複合燃料としての利活用を調査研究するとともに推進を図る。 イ)アグリリサイクル部会 ○当市の特産品となっているネギや山ウド残さ等の飼肥料化、機能性食品への製造につい て推進する。 ○もみ殻の収集、薫炭の生産方法や土壌改良材としての利活用について推進する。 ○資源作物からのバイオエネルギー利活用について調査、研究を行い推進する。 ウ)ライフリサイクル部会 ○生ごみ(食物残さ含む)の堆肥化、飼料化、ガス化発電等を推進する。 ○廃食油の回収システム、BDF 製造と利用について推進する。 7 (3)取組工程 取組事項 19 年度 20 年度 能代市バイオマスタウン構想 H20 年 2 月申請予定 21 年度 22 年度 バイオマス事業推進協議会 定期開催 林地残材収集システム検討 システム検討・構築 木材エネルギー(エタノール、ガ ス化発電)事業 事業検討 調査研究 木材精油抽出事業 実証試験 水質浄化濾剤事業 23 年度以降 事業検討・事業化 実証試験・事業検 農業残さ(能代特産)利活用事 業(機能性食品、複合飼肥料等) 事業化 飼肥料事業検討 飼肥料調査研究 土壌改良剤 等調査研究 燻炭事業検討 燻炭事業化 推進 もみ殻利活用事業 飼肥料調査研究 飼肥料事業化検討 生ごみ利活用事業 回収システム 調査研究 廃食油利活用事業 資源作物(バイオ燃料等)の検討 事業検討・事業化 調査・試験栽培 事業検討 7.バイオマスタウン構想の利活用目標及び実施により期待される効果 (1)利活用目標 未利用バイオマス 40%【林地残材、もみ殻】を目指す。 (2)期待される効果 化石燃料に変わるバイオマスの利用は地球温暖化防止に役立つことはもとより、地場で得 られるバイオマス利活用の地産地消を進めることにより、一定地域内におけるクローズドシ ステムでの循環型社会形成の一役になり、バイオマスタウンのまちづくりとなる。さらに本 構想に掲げる事業により生産されるバイオマス製品を広く域外への流通を目指すことにより、 本市の環境産業をアピールするとともに、地域の活性化に向けた取組みの先進的な地区とな る。 8 また、環境に対する市民意識の醸成と今後の推進と利活用に対しての協力が得られ、未利 用系バイオマスや廃棄物系バイオマスの利活用は市の基本産業である農業や林業の活性化や 変換施設の導入により新たな産業の創出と雇用の発生が期待できる。 特に能代地域にはネギや山ウド、クロモジ木等の当地域特有のバイオマスが存在し、残さ について未だ確固たる利用法のないこれらバイオマスの利用技術の開発を他地域に先駆けて 行うことは、能代地域の特色をPRする上で大きな効果が期待できる。 8.対象地域における関係者を含めたこれまでの検討状況 ・平成19年 5 月にバイオマスタウン構想策定委員会を設置 バイオマスの種類や量、利活用事業への課題や対策推進体制等について、協議、検討(月 1回)。 9.地域のバイオマス賦存量及び現在の利用状況 (単位:トン、廃食油 kl) バイオマス 賦存量 変換・処理方法 仕向量 利用・販売 利用率% 廃棄物系バイオマス ネギ 3,100 すき込み、埋立 0 ― 0 山ウド 1,800 すき込み、埋立 0 ― 0 生ごみ 7,820 焼却、堆肥 0 堆肥 0 3 燃料、石鹸等 廃食油 18 焼却、燃料、石鹸等 16.7 下水汚泥 1,263 埋立 0 埋立 0 家畜排泄物 6,914 堆肥 6,603 堆肥 95.5 44,482 発電燃料、家畜敷料等 44,482 発電燃料、家畜敷料等 65,397 ― 51,088 林地残材 6,209 ― 稲わら 26,022 もみ殻 計 製材所廃材等 計 100.0 ― 96.3 ― 0 未利用バイオマス 0 家畜飼・敷料、堆肥、 すき込み等 6,532 家畜飼・敷料、堆肥等 25.1 2,566 堆肥、敷料、 すき込み等 1,617 堆肥、敷料等 63.0 34,797 ― 8,149 ― 24.4 9 10.地域のこれまでのバイオマス利活用の取組状況 (1)経緯 ・能代森林資源利用協同組合による木質バイオマス発電所の建設(H14)、本格稼動(H15) ・新エネルギービジョン策定(H15:旧能代市、H12:旧二ツ井町) ・コンポスト見なおし隊(H18) ・旧二ツ井町廃食油回収システム(H15) (2)推進体制 ・環境のまちづくり市民懇談会(H18) ・食の環研究会(H17) ・水環境研究会(H15) (3)関連事業・計画 ・第4次能代市総合計画(H13)、第5次二ツ井町総合発展計画(H17) ・能代市環境保全条例、能代市環境基本条例 ・能代市環境基本計画 ・能代市循環型社会形成市民懇談会(H17) ・二ツ井町循環型社会推進ワークショップ(H17) ・秋田県北部エコタウン計画(H11) ・新エネルギービジョンのもと、太陽光発電、風力発電、木質ペレット等の活用を推進して いる。 (4)既存施設 ・木質バイオマス発電所 (平成13年に3社3団体 が能代森林資源利用協同組 合を設立し、米代川流域、 能代地域内の木質資源の循 環利用を図るため、組合員 等から排出される樹皮、製 材端材等を粉砕加工し、木 質バイオマスによる発電、 蒸気等の生産を行なってい る:本格稼動平成15年) ・JA堆肥施設 (能代木質バイオマス発電所) 10 稲わら・もみ殻の活用 能代特産ネギや山ウド等の残さの飼料 化、堆肥化 自社の端材をガス 化発電して使用 製材所で製品化 家畜の飼料 もみ殻の燻炭製造 山を保全していくための適正間伐 端材等は発電所へ バイオマスエネルギー生産工場 堆肥・飼料の製造 間伐材の多目的利活用 BDF 精製使用 バイオ発電所 家庭菜園 エタノールは地域内で消費 エタノール、精油に変換 電力・蒸気の供 有機堆肥は農地に 飼料は畜産農家 個人でできる エタノール・精油抽出残渣 ウッド工場 廃油回収 コンポスト の燃料化 家庭から出る生ごみ・廃 食油の回収システム 11