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若い乳房温存症例での家族歴と乳房内再発との関連の後ろ向き検討
若い乳房温存症例での家族歴と乳房内再発との関連の後ろ向き検討 研究責任者 乳腺科 大住省三 はじめに 遺伝性乳がん卵巣がん症候群により、乳がんに罹るべくして罹患している乳癌患者がい る。この疾患の患者の特徴として、濃厚な乳がんおよび卵巣がんの家族歴があったり、非 常に若い年齢で乳癌を発症することが多いことが知られている。 この症候群であることは、生殖細胞系列での BRCA1 あるいは 2 の病的遺伝子変異があ ることで確定する。この症候群の患者が乳房温存療法を受けた場合、乳房内再発率が高い とする報告が多い 1。ただし、補助化学療法を受けた場合の乳房内再発率は孤発性の場合に 比して、高くないことも示されている 2。 日本でも、この症候群の患者が、米国のアシュケナージ系ユダヤ人でない白人と同程度 にいるとされるが、現実的に BRCA の遺伝子検査を受けている患者は少ない。そこで、こ の疾患を疑うべき濃厚な家族歴の有無で、その乳房内再発率に差があるかどうかを見る目 的で、この後ろ向き研究を行うことにした。なお、この疾患である可能性は何歳で乳癌に 罹患してもありうるが、若い症例での可能性が高い。一方、年齢が若いこと自体が乳房内 再発の危険因子とされているため、比較する対象も若い症例に限定した。 対象 2001 年1月より 2010 年 12 月までに 40 歳未満で乳房温存療法(乳腺部分切除+放射線 治療)で治療をうけた女性乳癌症例 方法 家族歴のある症例(definite の症例{G}と疑い{P}参考資料を参照)とない症例での 乳房内再発率並びに対側乳癌発生率を比較する。 家族歴の有無は家族性腫瘍相談室で集計した家族歴のデータを用いる。40歳未満で乳 癌の乳房温存療法を受けた症例は乳腺科の乳癌患者データベースから抽出する。 さらに、乳房内再発と関連する可能性の高い種々の因子も調べ、乳房内再発との関連な らびに、多変量解析で家族歴が独立した危険因子かどうかを検討する。 乳房内再発のない率(IBTR-free survival)は Kaplan-Mayer 法で計算し、2 群間の有意 差検定には log rank 検定を多変量解析には比例ハザード検定を用いる。 症例数の設定 本研究は後ろ向き研究であるため、症例数の設定は今までに当院で治療を受けてきた患 者数によって規定される。さらに、家族歴を正確にとれていることが本研究の条件になる ため、当院で家族歴を正確に取り始めた 2001 年以降の症例に限定されることになる。 本研究の意義 すでに欧米で同様の研究がされてきたが、家族歴でみた場合 negative な結果がほとんど である 3,4。すなわち、BRCA の変異で見た場合は、病的変異があることが乳房内再発率と 関連しているとする報告が多いが 1、家族歴でみた場合、家族歴と乳房内再発には相関はな いという報告がほとんどである。今回欧米で用いられた家族性乳がんの定義よりも厳しい 定義を用いて家族歴と乳房内再発の関連を見ようとしている。もし、それでも両者に相関 がなかった場合は、家族歴が濃厚であることを理由に乳房切除を勧めるということの妥当 性がないことになる。一方、濃厚な乳がん・卵巣がんの家族歴がある場合に乳房温存療法 後の乳房内再発率が高い場合は、家族歴のみから乳房温存療法危険群を同定できることに なる。 今回検討する乳房内再発の危険因子の可能性のある因子 術後(あるいは術前)補助化学療法 術後補助内分泌療法 ホルモンレセプター HER2 初診時乳癌の触診径 病理での原発巣の浸潤径 病理でのリンパ節転移 Ly 組織学的断端 本研究での倫理的配慮と個人情報保護 研究結果は学会発表ならびに論文発表されるがその際、発表時に個人同定できないように する。 既に収集(あるいは検査)済みの情報のみを使用し、新たな検査等はおこなわない。 参考文献 1. Liebens FP, Carly B, Pastijn B, et al. Management of BRCA 1/2 associated breast cancer: a systematic qualitative review of the state of knowledge in 2006. Eur J Cancer 2007, 43: 238-57. 2. Pierce LJ, Phillips KA, Griffith KA, et al. Local therapy in BRCA1 and BRCA2 mutation carriers with operable breast cancer: comparison of breast conservation and mastectomy. Breast Cancer Res Treat 2010, 121: 389-98. 3. Chabner E, Nixon A, Gelman R, et al. Family history and treatment outcome in young women after breast-conserving surgery and radiation therapy for early-stage breast cancer. J Clin Oncol 1998, 16: 2045-51. 4. Vlastos G, Mirza NQ, Meric F, et al. Breast-conservation therapy in early-stage breast cancer patients with a positive family history. Ann Surg Oncol 2002, 9: 912-9. 調査票 当院ID番号 氏名 生年月日 根治的手術年月日 最終診察年月日 乳房内再発の有無 有り 無し 不明 有り 無し 不明 有り 無し 不明 有り 無し 不明 有り 無し 不明 有り 無し 不明 G P C (有る場合)その年月日 (無い場合)その確認年月日 対側乳癌の有無 (有る場合)その年月日 (無い場合)その確認年月日 遠隔転移の有無 (有る場合)その年月日 (無い場合)その確認年月日 その他の再発の有無 (有る場合)その部位 (有る場合)その年月日 (無い場合)その確認年月日 家族歴 乳癌家族歴の有無 (有る場合)その内訳 卵巣癌家族歴の有無 (有る場合)その内訳 G P Cの分類 術後(あるいは術前)補助化学療法 術後補助内分泌療法 エストロゲンレセプター プロゲステロンレセプター HER2 初診時乳癌の触診径 病理での原発巣の浸潤径 病理でのリンパ節転移 Ly 組織学的断端 有り(前 後 前後) 無し 不明