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特殊報第2号 レタス根腐病
平成24年度病害虫発生予察情報 特 殊 報 第 2 号 平成24年4月13日 青森県病害虫防除所 レタス根腐病(レース1)の発生について 1 作 2 病 害 虫 名:レタス根腐病(レース1; Fusarium oxysporum f.sp. lactucae ) 3 発 生 地 域:青森県津軽地域 4 物 名:レタス 発生確認の経過 (1)津軽地域のレタス栽培ほ場で平成21年頃から萎凋症状を呈する生育不良株がみられ、夏季異 常高温年となった平成22年及び23年の秋どり栽培では甚大な被害が生じた(写真1)。(地独)青森 県産業技術センター農林総合研究所において、病原菌の分離同定を実施した結果、罹病株の根部 からはフザリウム菌が高率に分離され、レタスに対する病原性も確認されたことから、本県で未 確認のレタス根腐病であることが判明した。また、分離9菌株について、判別品種を用いたレー ス検定を実施した結果、全てレース1であった(表1)。 (2)レタス根腐病菌はレタス品種間の発病の違いにより3つのレースに分類される。近年、茨城 県(平成19年;レース1)、長崎県(平成20年;レース1)、群馬県(平成21年;レース2)、長野県 (平成22年;レース3)からレタス根腐病菌の発生レースに関する特殊報が発表されている。 《レタス根腐病の被害症状》 ←健全株 ↓萎凋株 ↓黄変株 写真1:秋どり栽培でみられた甚発生状況 (平成23年9月撮影) 5 写真2:外葉の黄変と株全体の萎凋 写真3:主根の褐変 (平成23年7月撮影) (平成23年7月撮影) 被害の特徴 (1)病徴 ・初め外葉の一部が葉縁から萎凋・黄変し、やがて株全体が萎れ、重症株は枯死する(写真2)。 軽症株は枯死しないが、結球肥大が悪くなり商品価値が著しく低下する。 ・主根を縦横に切断すると、維管束部分の褐変が見られ、褐変はクラウン部から根先端部まで及 び、重症株ではクラウン部付近が空洞化する(写真3)。 (2)発生生態 ・土壌伝染性の糸状菌による病害で、レタス、サラダナ等のレタス類にのみ感染する。 ・被害株の根部に形成された胞子が土中に残って伝染源となる。 ・病原菌はレタスの根から感染し、導管等を侵して植物体の生育を抑制し、枯死させる。 ・病原菌の生育適温は28~30℃と、高温で発病が助長されるため、夏季に定植・生育する作型で 発生しやすい。 6 防除対策 レタス根腐病に対して土壌消毒剤が農薬登録されているが、県内における防除効果や薬害発生 等に関して知見がないため、耕種的な防除対策を取り入れた総合的な防除を行う。 (1)連作により被害が増加するので、レタス類以外の作物との輪作を行う。 (2)レース1に対して発病指数が低く比較的強い品種、もしくはこれに次いで強い品種を選定し 作付する(表2)。なお、品種の選定にあたっては、作型や地域で求められる品種特性等を考慮する。 (3)高温期の作型でのマルチは地温上昇効果が低いもの(白、白黒ダブル、シルバー等)を使用する。 (4)その他の対策 ①農機類や長靴等による土壌の移動に注意する。作業終了後はこれらの洗浄を行う。 ②雨水による汚染土壌の流出を防ぐため、できるだけ圃場には明きょを設ける。 ③育苗土には無菌培養土を用い、育苗資材も殺菌済みのものか新しいものを用いる。 ④発病株、被害残渣はできるだけ圃場外に搬出し、土中深く埋めるなど、適正に処分する。 表1 菌株No 10-1 レタス根腐病菌のレース検定結果 分離菌株の由来 採取年月日 平成22年8月18日 品種 サウザー 試験No (青森産技セ 農林総研 平成23年度試験成績) 判別品種の発病指数 コスタリカ4号 パトリオット 晩抽レッドファイヤー 1 0(R) 2.9(S) 2.9(S) 2 0(R) 2.5(S) 2.2(S) 3 0(R) 2.5(S) 2.7(S) 0(R) 2.2(S) 2.6(S) 0(R) 2.1(S) 2.6(S) 0(R) 2.1(S) 1.9(S) 0(R) 2.2(S) 2.1(S) 0(R) 2.5(S) 2.4(S) 0(R) 2.5(S) 2.8(S) 0(R) 2.6(S) 2.8(S) 0(R) 2.1(S) 2.8(S) 11-1 11-2 平成23年7月 7日 11-3 11-4 平成23年7月 8日 11-5 11-6 11-7 エムラップ 231 4 平成23年7月 7日 11-8 レース1に対する反応 レース2に対する反応 レース3に対する反応 S S S R S S 判 定 レース1 レース1 レース1 レース1 レース1 レース1 レース1 レース1 レース1 S R S 注)発病程度別基準=A:枯死または腐敗、B:株全体が萎凋、C:やや萎凋、D:健全 発病指数=(3A+2+C)/調査株数 抵抗性(R)≦1.0(発病指数)<感受性(S) 表2 レタス根腐病菌レース1に対する市販品種の発病比較 (青森産技セ 農林総研 平成23年度試験成績) ほ場抵抗性(耐病性) < 分 類 > 品 種 名 比較的強い品種 (発病指数:1.0以下) <結 球 レ タ ス>: 「ラプトル」「サクラメント」「キングシスコ」「極早生シスコ」 <リーフレタス>: 「バラエティ」 上記に次いで強い品種 (発病指数:1.5以下) <結 球 レ タ ス>: 「ステディ」「ステディclassic」「クリスタル」「カーチス」「ワトソン」 「キングクラウン」「スターレイ」「カイザー」「トップマーク」 注)1.同一品種について、接種試験を3回または2回行い、表1の調査基準で発病程度を比較し発病指数を算出した。 2.ほ場抵抗性の程度は、発病指数0(抵抗性強)~1~2~3(最弱)として判断した。 3.レース1に対しほとんどの品種が罹るが、ほ場抵抗性(耐病性)に強弱がみられる。 <問い合わせ先> 青森県病害虫防除所 〒030-0113 青森県青森市第二問屋町4-11-6 Fax:017-729-1900 電話:017-729-1717