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SEM(走査電子顕微鏡)を用いた各種材料の解析事例の紹介 表面の被覆
3AM-E01 平成25年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 SEM(走査電子顕微鏡)を用いた各種材料の解析事例の紹介 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー (KAST) 高度計測センター 矢矧 束穂 SEM(走査電子顕微鏡)は汎用性の高い分析装置であり、材料解析においては使用頻度が高い。SEM では多くの情 報を得ることができるため、目的によっては SEM 観察で解析を完結することもある。また、近年の装置は操作性に 優れ、容易に高分解能観察を行うことができるようになっており、従来、TEM(透過電子顕微鏡)で実施していた領域 の解析を SEM で代替できるようになっている。 一方で解析対象となる試料においては複合化や微細化が進むとともに、温度の制約等も加わり、解析における前処 理の重要性は大きくなっている。そのため、解析担当者の労力としては「前処理>観察」といった状況も多々ある。ま た、前処理の多くは材料の破壊を伴い、この工程での構造変化は最終的に得られるデータの誤解釈へと繋がるため、 材料や目的に応じた手法を選択する必要がある。 当センターでは機械研磨を始め、イオンミリング、エッチング等の各種手法を用いて解析を進めている。本発表で はこれらの手法を用いて観察を行った磁性材料、有機材料、低融点材料、異物解析に関する事例紹介を行う。 試料:市販のボンド磁石 ←被覆材 断面 表面の被覆材を除去! 10µm 10µm 表面 10µm 表面 特殊処理により表面被覆材を除去した表面形態観察例 表面の被覆材を除去することにより、フェライト磁石の形態観察、密度、不純物の評価等が可能となる。 試料:市販の防振材(天然ゴム) カミソリ切断 イオンミリング法 ←Ca+O ←Zn+S 10µm 10µm 10µm Al+Si→ イオンミリング法による複合材の断面加工及び観察例 イオンミリング法により、機械的なダメージを回避した評価が可能。 ウッド合金 (60Bi -20Sn-20In) 融点:78.8℃ フィラー含有 ABS 樹脂 5µm ネオジム磁石 1µm 各種材料の観察例 1µm 3AM-E02 平成25年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 DLS によるナノ粒径評価 神奈川県産業技術センター 機械・材料技術部 ○奥田 徹也、藤井 寿、良知 健 1. DLS 法とは サイズが 100 nm(ナノメートル)以下の、ナノ粒子の一次粒子径や形態分布を評価するためには、電子 顕微鏡(SEM、TEM)が最も有効な方法である。測定精度はもとより、目で見て直接確認した結果に対する 信頼性は高い。しかし、観察や粒径解析に時間がかかるだけでなく、スラリーのような分散溶液中の凝集し た二次粒子径の観察はできず、またエマルションの評価もできない。 一方、一次粒子径の評価はできないものの、簡便で汎用的な湿式評価法としては、 (1) レーザー回折法と、 (2) 動的光散乱(以下、DLS と記す)法が代表的である。(1) レーザー回折法は、近年、ナノ粒子対応が図 られているものの、現状では汎用的に測定できるとは言えないようである。したがってナノ粒子は、(2) DLS 法で対応するのが一般的である。 DLS 法は、粒子が小さいほど、ブラウン運動によって激しくランダムに動き回る性質を、粒子の拡散定数 と結びつけて評価する。測定には溶媒の粘度と屈折率の情報だけで良く、分散粒子の物性情報を必要としな いことが、大きなメリットである。また、当センターの DLS 装置は、レーザーの後方散乱光を検出する方式 なので、高濃度のサンプルに対応できる反面、パーティクルレベルの希薄系の測定はできない。 2. DLS 法の特徴と評価事例 図1は、セラミックス粒子の TEM 像、および、DLS 法から個数分布を求めた結果である。個数分布平均 粒径は、TEM 観察からは約 3.5 nm、DLS の解析からは 2.3 nm である。完全に一致しているわけではな いが、極めて小さいシングルナノ粒子の評価も十分可能であることを示している。 DLS 法の短所として、粒径分布に対する信頼性が低いことが挙げられる。図2は、SEM 観察で平均粒径 が約 110 nm の、ほぼ単分散(粒度が均一)のシリカ粒子を、DLS 法で 7 回繰り返し測定した結果である が、測定毎に分布の変動が見て取れる。粒径分布から平均粒径を計算すると、散乱強度分布では分布に変動 があるにもかかわらず、平均粒径は 128.2 ~ 132.0 nm の範囲に収まり、平均値の繰り返し再現性はとり あえず確保されている。しかし、個数分布平均粒径では 101.5 ~ 121.3 nm となり、SEM 観察と調和的で あるものの、ばらつきが大きい。この理由は、散乱強度分布が、測定から得られる一次的データであるのに 対し、数値解析から求める個数分布は、測定誤差による分布形状の変動を敏感に反映するためと考えられる。 その他のナノ粒子の評価事例については、当日報告する。 図1 シングルナノ粒子の TEM 像と DLS 測定による個数分布 図2 測定を 7 回繰り返した場合の 散乱強度分布の累積頻度(上段) 個数分布の累積頻度(下段) 3AM-E03 平成25年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 Cu-Fe-based nano materials synthesized by Bulk Mechanical Alloying and structural evaluation 東海大学工学部応用化学科 李延君 田代亮 森裕 久慈俊郎 Abstract: BMA(Bulk Mechanical Alloying) is based upon repeating compression and extrusion of materials. It is completely different from the process base on conventional Ball-Milling type of BMA. In this paper, using this newly developed BMA(bulk mechanical alloying),Cu-Fe-based material were synthesized. It must pointed out that Cu-Fe couple in the solid state is almost not mutually dissolved. Cu95fe5 of bulk samples has been prepared by the BMA. XRD and EPMA analysis, It can be concluded that Cu and Fe particles tend to be mixed uniformity mixed and finally Fe dissolved in Fcc Cu lattice. Ⅲ Results and discussions 1. Although BM has been proven to wide solid solution range, but can’t got bulk samples. But we can obtain a diameter of 20MM ,a height of 15MM bulk cu-fe samples by BMA. 2. More fully mix Cu and Fe because of wax. 3. From the EPMA analysis results, we can found :with the process cycles increasing, cu-fe mixing uniformity is getting more better than before. Key words: bulk mechanical alloying 、Cu-Fe Ⅰ Introduction Cu-Fe couple in the solid state is almost not mutually dissolved.;Although BM(ball milling )be able to successfully expand their solubility range, but ball milling has long processing time and easily mixed with impurities shortcomings. Now use newly developed BMA(bulk mechanical alloying) to research cu-fe-based material. 4. XRD result: processing in 5000cyc,only have fcc copper phase ; with processing cycles increasing, copper peaks were broadened. Ⅱ Expermental 1. Add wax into materials, better mix than before. Purity 99% Cu powder and purity 99% Fe powder mixed to Cu95Fe5, and add a small amount wax in the materials as lubricant Mixed 30 minutes in the mortar. Materials were processed in BMA’s machine by made KYB company, in according with the requirements of test, set different processing times 、cycles and crackdown. Ⅳ Conclusions 2. Cu particle size is decreasing with cycles increasing. 3. Cu and Fe particles tend to be mixed uniformity mixed and finally Fe dissolved in Fcc lattice . 3AM-E04 平成25年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 混合焼成による高日射反射率顔料の暗色化 1. はじめに 高日射反射率塗料(遮熱塗料)は太陽光を反射させる ことで熱の吸収を抑え、住宅における冷房節減やヒート アイランド抑制に効果がある塗料として期待されている。 特に屋根へ適用する際には、日本の風土に合った、明度 を抑えた塗料が好まれるため、暗色系の高日射反射率塗 料の開発が盛んに進められている。 図 1 の基準太陽光の分光放射照度スペクトル 1)を見て 分かるように、太陽光の近赤外領域の放射照度は、可視 に近い領域(特に 780-1500 nm)で高い。そのため、こ の波長領域の反射率は近赤外日射反射率への影響が大き く、この領域で高い反射率を示すことが重要となる。一 方で、暗色顔料にはこれに近接する可視領域での反射率 が低いことが要求され、このことが近赤外高日射反射と 暗色(可視光吸収)の両立を難しくしている。本研究で は、近赤外領域、特に 780-1500 nm の波長領域で高い 反射率を維持したまま、可視領域の反射率を低下させた 顔料の開発を試みた。 2. 実験 白色顔料に暗色系の材料を添加し、 混合したのち焼成す るという手法により、試料を作製した。白色顔料には CeO2 を用いた。暗色系の材料として Co、Fe2O3 を選定 し、(i)Co、(ii)Fe2O3、(iii)Co+Fe2O3 の 3 種を白色顔料に 添加した。各試料における白色顔料に対する添加材料の 量(モル比)は、0.06 モルとし、焼成温度は 1000 ℃と した。得られた試料は 1 wt%のポリビニルアルコール (PVA)水溶液中に分散させてガラス板に塗布し、70 ℃ で乾燥させた後、反射率を測定した。 3. 結果および考察 作製した試料の反射率スペクトルを図 2 に示す。 3.1 白色顔料+Co 白色顔料に Co を添加して作製した試料では、可視領 域の反射率が比較的低く、暗色の顔料となるが、近赤外 領域中の 1250-1500 nm の波長領域に強い吸収が見られ た。前述したように、この波長領域の反射率は、近赤外 日射反射率への影響が大きいため、反射性能を低下させ る要因となる。 3.2 白色顔料+Fe2O3 白色顔料に Fe2O3 を添加して作製した試料では、Co を添加した試料で見られたような、近赤外領域での顕著 な吸収が見られず、近赤外領域で高い反射率を示した。 しかしその反面、可視領域では特に長波長側で反射率が 高くなり、赤みがかった色を呈した。 3.3 白色顔料+Co+Fe2O3 白色顔料にCo と Fe2O3 を添加して作製した試料では、 Co にさらに Fe2O3 を加えることにより、Co を単独で添 ○良知 健、藤井 寿、奥田 徹也 加した際に見られた 1250-1500 nm の反射率の低下が、 大幅に抑制されたことが分かる。その一方で可視領域の 反射率は、白色顔料に Co もしくは Fe2O3 を単独で加え た時よりもさらに低下しており、近赤外日射反射率への 寄与の大きい波長領域での反射率を高く維持したまま、 暗色化した材料が得られることが分かった。 4. まとめ 屋根への適用を想定した暗色系の高日射反射率顔料の 反射性能を向上させることを目的に、白色顔料に暗色系 の材料を添加して混合焼成することにより、添加の効果 を調べた。その結果、白色顔料に Co と Fe2O3 の両方を 添加した系では、近赤外領域の反射率の低下が抑制され るとともに、可視領域の反射率は Co と Fe2O3 を単独で 添加した試料よりも低くなることがわかった。 すなわち、 白色顔料に Co を添加した系で見られる近赤外領域での 吸収が、Fe2O3 を加えることで大幅に改善され、近赤外 日射反射率への寄与の大きい波長領域での反射率を高く 維持したまま、暗色化した材料が得られることが明らか になった。 JIS 基準太陽光 - 分光放射照度 [ W/m2/ m ] 機械・材料技術部 2.0 可視領域 近赤外領域 1.5 1.0 0.5 0.0 500 1000 1500 2000 2500 波長 [ nm ] 図 1 基準太陽光の分光放射照度スペクトル 100 +Fe2O3 80 反射率 [ % ] 神奈川県産業技術センター 60 +Co+Fe2O3 40 20 +Co 0 500 1000 1500 2000 波長 [ nm ] 図 2 作製試料の反射率スペクトル 参考文献 1) JIS C 8911 日本工業標準調査会 (1998) . 2500 3AM-E05 平成25年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 持続可能な循環社会に向けたプラスチック複合材料の開発 ~ 熱圧板の省資源工業への適用 その2 ~ 千葉県産業支援技術研究所 ○細谷 昌裕、篠田 清、蓮見 薫、西村 祐二、吉田 浩之 日本大学生産工学部 高橋 進 千葉県における2009年度の落花生生産量は約15,300tであり、全国生産量(20,300 t)の約75%にあたる。これらの 落花生のうち約半分はむき実(莢を取り除いたもの)商品として加工・流通されているが、このむき身工程で排出さ れる落花生莢は千葉県内だけでも年間約1,900tとなる。これらの廃棄莢は、従来は堆肥や家畜飼料として利用されて いたが、近年では大半が産業廃棄物として有料で処理されているのが現状である。 本研究では、持続可能な循環型社会構築の一助となるべく、廃棄されている落花生莢をバイオマス資源として有効 活用するため、ポリビニルアルコール樹脂(以下、PVA)をバインダーとした落花生莢パーティクルボード(以下、P HPボード)を試作し、昨年度は従来よりも高密度のボード(以下、SHD-PHPボード)の成形方法を開発した。今年度は ボードの大型化を目指し、縦300mm×横300mm、厚さ10mmのSHD-PHPボードを成形し、その機械特性の評価を行った。 1. はじめに 建材及び家具等に使用されるパーティクルボードは、 日本工業規格 A 5908「パーティクルボード」により規定 されている。 表面状態や曲げ強さ等により区分され、それぞれの要 求品質項目が定められているが、今回試作した SHD-PHP ボードは主に家具等への適用を目指し、素地パーティク ルボード・13 タイプ(曲げ強さ 13MPa 以上)に適合する ことを目標とした。 2.試作 落花生莢は、千葉県八街市で栽培・加工されたものを 水洗し、天日及び電気炉にて乾燥した後、粉砕機を用い て粒子化した。これを篩にかけ、目開き2mmを通過し0.5 mmの篩の上に残留したものを使用した。母材には、完全 ケン化型(ケン化度:99.0mol%以上)のPVA(日本酢ビ・ ポバール製V-S20)樹脂の粉末を用いた。 成形方法は、落花生莢650gのうち325gの落花生莢とPV A樹脂81g及び蒸留水244gの混合物をボード表面材とし、 乾燥した落花生莢を中間層とする3層構造で金型に充填 し、熱プレス成形機にて焼成した。板厚は熱プレス成形 機の盤面位置制御機能により10mm厚とし、成形温度は18 0℃、成形時間は15分とした。金型は内寸300mm×300mm で各辺に水蒸気排出用のスリットを設けている。 昨年度開発した成形方法では、プレス中に段階的に板 厚を薄くする方法をとったが、中間層に配置した乾燥落 花生により水蒸気排出性が良好になったことから、プレ ス初期より板厚10mmで成形を行った。 3.機械特性評価と成形方法の検討 成形したボードについて、JIS 規格で要求される項目 の内、密度、含水率、吸水厚さ膨張率、曲げ強さ、湿潤 時曲げ強さ、はく離強さ、木ねじ保持力について試験を 行った。この結果を表1に示す。 密度、含水率、吸水厚さ膨張率及び木ねじ保持力につ いては規格値をほぼ満足できることが分かったが、曲げ 強さについては規格値の最小 13MPa に対し 11.8MPa と規 格値を下回った。また、湿潤時曲げ強さ及びはく離強さ については規格値を大きく下回る結果となり、温水 (70℃)に浸漬している段階で中間層のはく離が見られた ことから、中間層の接着力が大きく不足していることが 分かった。 ここで、接着力の向上を図るためには中間層の落花生 莢に PVA を添加すれば良いが、適切な添加量を超えると 水蒸気排出が困難となるため、PVA 重量比 5~25%の範囲 で幾つかの試作を行ったところ、添加量 7.5~12.5%の範 囲で JIS 規格値を満足することができた。また、PVA 重 量比 25%では水蒸気排出が困難となり、水分がボード内 に残留した。 4.まとめ 昨年度までボードの評価項目として曲げ強さについて 評価を行ってきたが、今回新たな試験項目を追加したと ころ、曲げ強さ以外の項目では JIS 規格を満足できるこ とが分かった。他の課題としては反りや表面ムラ等が挙 げられるが、今後は曲げ強さの向上やカーボンニュート ラルな環境性能等も考慮し、PVA に替わる樹脂材料の選 定とその成形方法について検討する。 表1.JIS A 5908 品質項目評価結果 品質項目 規格値 測定値 密度 0.40 ~ 0.90 0.79 ~ 0.88 含水率 5 ~ 13% 7.3% 吸水厚さ膨張率 12%以下 11.7% 曲げ強さ 最小値 13.0MPa 最小 11.8MPa 湿潤時曲げ強さ 最小値 6.5MPa 最小 2.2MPa はく離強さ 0.2MPa 以上 0.04MPa 木ねじ保持力 400N 以上 540N 3AM-E06 平成25年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 小径 Mg 合金棒の同時加熱ヘッディング加工 鹿児島県工業技術センター 鹿児島大学大学院理工学研究科 1. はじめに 携帯型電子機器等の部品には,マグネシウム合金(以 下,Mg 合金)の採用が増えつつある。リサイクル性や異 種金属間の腐食防止を考慮すると,それに付随する小径 軸付き部品等についても同一金属でできた部品使用が望 ましい。 本研究では小径の Mg 合金棒材を使用して, 端部を目的 形状に塑性変形するヘッディング加工法(据込み加工) の開発検討を行った。Mg 合金は,常温付近では塑性加工 が困難であることから,加工温度 250℃以上に加熱する 必要がある。そこで,使用する加工装置の一部のみを 300℃~400℃に昇温するだけで,事前に材料を加熱する ことなく材料の加熱とヘッディング加工を同時に行う方 法を試みた。加工実験により成形可否や加工条件との関 係を明らかにし,さらに同加工法によって六角形状及び 歯車形状の成形品が得られることを確認した。 2. 実験方法 実験に用いた加工装置の概略を図1に示す。図中心線 の左側は,加工前の状態を表す。試験材には,直径 1.7 ㎜,長さ 22 ㎜の Mg 合金棒材(AZ31)を使用した。試験 材はダイスによって支えられる。上部にあるパンチホル ダー内部には,ヒーターを埋め込んでおり,パンチホル ダー及び平面パンチは高温に加熱されている。パンチ内 部には熱電対を設置し,パンチ温度を測定した。 上記加工装置をプレス機に設置し,上方からパンチホ ルダーを下降させることで,高温の平面パンチで試験材 をヘッディング加工した。同図中心線右側は,加工時の 状態である。高温のパンチ試験材が接触することで,加 熱と同時に加工を行った。このとき接触からのパンチ移 動量は,3 ㎜とした。加工実験は,パンチ温度を 300℃~ 400℃及びパンチ速度を 0.1~4mm/s の範囲で行った。 また,平面パンチの代わりに接触面に窪み空間を設け た成形パンチを用いて,試験材を窪み空間内で六角形状 または歯車形状に成形するヘッディング加工実験を行っ た。 3. 実験結果 3.1 平面パンチによる実験結果 パンチ温度 380℃及びパンチ速度 1mm/s の加工条件で 得られた成形品を図2(ⅰ)に示す。パンチに接触した試 験材上端部の直径が広がり, 逆三角形形状に成形された。 亀裂等は見られなかった。パンチ温度 300℃及びパンチ 速度 1mm/s の加工条件で得られた成形品を同図(ⅱ)に示 す。加工途中でせん断破壊が起き,成形不良となってい た。各加工条件で実験を行った結果,パンチ温度が低く パンチ速度が速い程,成形不良が発生した。 ○松田豪彦 中西賢二 3.2 窪み空間を設けた成形パンチによる実験結果 窪み空間を設けた成形パンチを用いた加工実験で得ら れた成形品を図3に示す。このときの加工条件は,パン チ温度 300℃及びパンチ速度 0.5mm/s である。同図(ⅰ) は六角形状に成形した成形品である。同図 (ⅱ)は,歯車 形状に成形した成形品である。ともに,成形不良は起き ずにパンチ窪み空間の形状が転写された良好な成形品が 得られた。 図1 加工装置の概略 図2 平面パンチによる成形品 図3 窪み空間を設けた成形パンチによる成形品 4. まとめ (1)同時加熱ヘッディング加工により, 材料の事前加熱や 装置全体を加熱することなく, 小径の Mg 合金棒材の加工 が可能であることを実証した。 (2)成形の可否は, パンチ温度及びパンチ速度によって異 なる。また,パンチ形状に応じて歯車形状や六角形状の 成形品を得ることがきる。 3AM-E07 平成25年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 X 線残留応力測定装置のポータブル化と実例 パルステック工業株式会社 ○内山宗久 丸山洋一 1. はじめに 世の中の鉄鋼部品は、様々の工程を経て製品化されています。中でも自動車関連部品については、近年激化する高燃費 競争による部品の軽量化と、それとは相反して安全性や性能向上のために、寸法精度・強度向上が急務とされています。部品 製造には、目的の性能に達するためさまざまな工程があります。鋳造、鍛造(ダイカスト)、圧延、溶接、加工、熱処理、表面改 質等の数多くの工程の中で、鋼材の温度変化に伴う熱膨張や収縮が発生することで、残留応力が発生することが多くありま す。 その残留応力が原因で、変形などによる寸法精度の低下、疲労強度低下による亀裂等の問題が発生する場合もあります。 そのことから残留応力の管理や把握、その制御が重要とされています。 残留応力測定には幾つかの測定方法が存在しますが、試験体を切断や除去した時に生じる弾性変形を定量的に測定する破 壊法と、試験体を破壊しない非破壊法があります。今回は非破壊の一つである X 線残留応力測定装置を紹介致します。 X 線残留応力測定装置は、従来液冷装置含む大型のものが多く、持ち運びが困難でした。そのことから大型部品や大型構 造物等については、同等の鋼材を同様の工程で実施し、測定機の中に納まる大きさで評価を実施したり、シミュレーションに頼 らざるを得ない状況でした。 今回当社にて開発した装置は従来の装置に比べ、大幅な小型化に成功し、現場現物の測定を可能といたしました。 2. 手法 X 線回折を利用した材料分析機(XRD)は良く知られてい ますが、その機能を活用した残留応力測定装置がありま す。多くは、X 線入射角度を変更しながら測定を行ってい ます。 そのことから、測定位置精度を上げるため、ゴニオステージ 等の高精度で精密なメカ機能が必要でした。 従来多くは 1 次元検出器による装置が主流でしたが、 今回は、2次元検出器を用いることで、回折 X 線を 360 度すべて取得することを可能とした残留応力測定装置を 紹介します。 2次元検出器を用いることで多くのメリットがあります。 ・X 線入射角度を振ることが不要 →高速、小型、軽量、簡単 ・2 次元検出器にて回折 X 線を 360 度すべて取得 →信頼性向上 →結晶状態の視覚化 上記メリットを生かして、ポータブル化を実現、現場計測 を可能にしました。 3. 今後 1960 年代は日本の高度経済成長期にあたり、道路、 トンネル、橋梁や上下水道等のインフラ関連が一斉に整 備されました。耐用年数とされている 50 年を向かえ、補修 や更新の時期を迎えはじめています。 X 線残留応力測定装置のポータブル性を生かし、測定 を多く実施し、X 線残留応力測定装置をより身近なものと して、安全安心な社会への貢献を目的とします。 3AM-E08 平成25年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 4 点曲げ疲労試験方法における試験片形状の影響 神奈川県産業技術センター 機械・材料技術部 ○殿塚 易行、斉藤 光弘 素材や表面処理材の簡易な疲労試験方法として、試験片の作製が容易な 4 点曲げ疲労試験法を提案してい る。しかし、この 4 点曲げ試験における評価面側の応力分布は、試験片形状等の試験条件により若干の偏り (ムラ)が生じる。本報では応力分布をできるだけ一様にするための試験条件について検討した。 1 はじめに 4 点曲げ疲労試験では、評価面である引張側表面の 試験片のたわみ量が増大し、試験周波数(試験速度) が低下する。 応力は偏り(ムラ)があり、試験片形状や支点等の試 その他、各条件において応力差 Δσ を最小とする荷 験条件により応力分布は変化する。今回この応力分布 重ピン径 φ が存在するようである。応力の最大値 をできるだけ一様にする試験片形状等の試験条件につ σmax はエッジ(幅方向端部)にないことから、エッ いて検討した。 ジからの疲労破壊の問題は少ないと考えられる。 2 実験方法 4 点曲げ試験の応力分布に影響する主な因子は、図 これらより、今回の結果からは基本条件の試験片形 状が最も有利と考えられる。 1 のように内側支点間距離 X、外側支点間距離 Y、試 φ 験片厚さ h、試験片幅 b、および内側支点の荷重ピン 径 φ であり、これらを、これまで実施してきた基本条 件から表 1 のように変化させた場合の応力分布を、 FEM による最大主応力の数値解析により調べた。各 X:Y=1:3 図 1 4 点曲げ試験の模式図 200 MPa となるようにした。支点間距離は内側 X と 外側 Y の比が 1:3 となるよう固定した。 最大主応力の数値解析結果の例を図 2 に示す。公称 曲げ応力 σth 付近の応力(197 MPa~203 MPa)を、 色彩を強調して表示した。試験片中央部の応力が比較 的高い範囲の中で、応力の最小値 σmin の位置はいず れも試験片中央部であったのに対し、応力の最大値 σmax の位置は各試験条件により異なる結果となっ た。応力の偏りの代表値として σmax と σmin の差を b Y 荷重は、はりの計算による表面の公称曲げ応力 σth が 3 実験結果・考察 h X 表 1 4 点曲げ試験条件との応力差(単位 mm) 試験条件 基本条件 条件1 条件2 条件3 条件4 条件5 条件6 内側支点間距離 X 外側支点間距離 Y 試験片幅 b 試験片厚 h 荷重ピン径 φ 20 60 応力差 Δσ (MPa) 0.57 40 120 20 20 40 10 30 40 20 40 20 20 1.6 0.92 1.1 10 6.8 2.4 20 応力差 Δσ と定義すると、表 1 のように応力差 Δσ は、 基本条件の場合が最も小さく、次いで条件 2(支点間 距離 X、Y を 2 倍、荷重ピン径 φ を 1.5 倍)が小さか った。 基本条件の応力分布は図 2 上段のように試験片中央 部にまとまっており偏り(ムラ)は少ない。条件 2 は 図 2 下段のように基本条件より偏り(ムラ)も若干目 立つが、支点間距離 X、Y が大きい分、応力の高い範 囲(評価面積)が拡大しており、疲労起点の確率分布 の影響が大きい疲労強度では安全側の評価となる利点 がある。また、支点間距離が大きい利点として、試験 荷重が低くなるため荷重点での試験片の摩耗が減少す る。反対に支点間距離が大きいと、同じ曲げ応力でも 図 2 応力分布の解析結果例(上:基本条件、下:条件 2)