...

砂漠による二酸化炭素固定について 一 炭酸塩中のバC

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

砂漠による二酸化炭素固定について 一 炭酸塩中のバC
砂 漠 に よ る二 酸 化 炭 素 固 定 に つ い て
-
炭 酸 塩 中 の 14C/13C比 に 基 づ く論 証
稲山
栄治、
浅原
良浩、
田中
剛
名古屋大学理学部地球惑星科学科
〒 464-01 名 古 屋 市 千 種 区 不 老 町
は じ め」
に_
化 石 燃 料 の 大 量 消 費 や 熱 帯 地 方 に お け る森 林 伐 採 に よ って 産 業 革 命 以 後 、 大 量 の
C02
が 自 然 界 に 放 出 さ れ つ づ け て い る 。 大 気 と 海 が そ の C02
の主 な滞 留 場 所 で あ るが 、
人 間 活 動 に よ る CO2
放 出 量 と 大 気 及 び 海 の 吸 収 量 の 間 に く い 違 い が み られ る 。 す な わ
ち 吸 収 量 よ り も 放 出 量 が 多 く 大 気 と 海 以 外 に も C02
を 吸 収 す る場 所 を 考 え る必 要 が あ
り、 これ を '
mi
ssi
ng si
nk'
'
と 呼 び 、 今 科 学 者 た ち が 探 し求 め て い る も の で あ る 。
カ ル シ ウ ム の 特 性 と して C02と 結 合 して CaC03
を形 成 す るが 、 蒸 発 量 が 降 水 量 を 上 回
は炭 酸塩 と し
る 砂 漠 で 岩 石 に 由 来 す る カ ル シ ウ ム と こ の 反 応 が 進 め ば 究 極 的 に は C02
て 固 定 化 され る こ とに な る。 本 研 究 で は砂 漠 に お け る炭 酸 塩 保 持 量 の 計 測 を 行 い 、 砂
漠 の 砂 か ら炭 酸 塩 を 分 離 し そ の (14C
/13C)8 … 。le/(
14C
/13C)A D 1950比 (以 後 14C/13C比 )
/86sr比 の 測 定 か ら砂 漠 に お い て C02が 固 定 化 さ れ て い る 可 能 性 を 考 え て み る 。
及 び 87sr
試 料 とj塩
本 研 究 で は 、 ゴ ビ砂 漠 、 タ ク ラ マ カ ン砂 漠 、 ネ フ ド砂 漠 、 サ - ラ 砂 漠 、 ギ ブ ソ ン砂
漠 、 モ - ー ベ 砂 漠 、 デ ス バ レ ー で 採 取 し た 35の 乾 燥 し た 砂 を 60-meshの ふ る い に か け
炭 酸 塩 を 定 量 分 析 し た 。 分 析 は CO2
セ パ レ イ シ ョ ン シ ス テ ム を 用 い Epstei
n et al. (1
963)に 従 い 行 っ た 。 そ の う ち タ ク ラ マ カ ン砂 漠 の 巴 格 阿 瓦 提 、 鳥 相 、 牌 棲 、 ネ フ ド砂
漠 の ヒ ュ フ ェ ア 、 エ ジ プ トの ア ス ワ ン 、 ヌ ベ リ ア 、 ア メ リ カ の デ ス バ レ ー で 採 取 し た
砂 に 関 し て は 炭 酸 カ ル シ ウ ム を 分 離 し 14C測 定 を 行 っ た 。 重 液 分 離 及 び 磁 気 分 離 で 炭
酸 カ ル シ ウ ム を 取 り 出 し、 水 素 還 元 法 に 従 っ て 14C測 定 試 料 の 前 処 理 を 行 い (北 川 ら 、
1991)
、 名 古 屋 大 学 年 代 測 定 資 料 研 究 セ ン タ ー の 加 速 器 質 量 分 析 計 に よ り 14C/13C比 を
測 定 し た 。 ま た 牌 楼 、 ヒ ュ フ ェ ア 、 ヌ ベ リ ア 、 ア ス ワ ン 、 デ ス バ レ ー の 砂 に 関 して 、
-1
8
4-
図 1 調 査地点 位置図
1巴 格 阿 瓦 提 2烏 拘 3牌 楼
6ア ス ワ ン 7デ ス バ レー
4 ヒュフ ェア
-1
8
5-
5 ヌベ リア
同 様 に 炭 酸 カ ル シ ウ ム を 分 離 し、 そ の
sr/86sr比 を 測 定 し た 。
87
紘_
盟上jL塞_
表 1. 砂 漠 の 砂 か ら 採 取 し た 炭 酸 カ ル シ ウ ム の
sampl
e No.
1 2 3 4 5 6 7
mean
及び
び 87sr/86sr
比
sr/86sr
14
87
0.
0365±0.
0021
27400± 500
0.
0405± 0.
0017
26500± 400
0.
0445± 0.
0017
25700± 400
0.
70883±0.
0001
0.
0265± 0.
0015
30000± 500
0.
70776± 0.
0001
0.
0320± 0.
0016
28500± 400
0.
70911±0.
0001
0.
0238± 0.
0015
30900± 500
0.
70774± 0.
0001
0.
0554±0.
0021
23900± 300
0.
71071±0.
0001
0.
0370±0.
0047
27600± 1200
0.
70883±0.
0002
Cの 半 減 期 と し て 5730年 を 使 用
14C/13C比
c date(
y.
B.
p.
)
14C/ 13C比
14
Nhsst
anda
rd
14C /13C 比 及
y.
B.
p.
は A.
D.
1950か ら遡 っ た 年 数 を 示 す 。
。
sr/86sr比 は 0.
710245± 0.
000027(
2g,
n=21).
87
sr/86sr比 測 定 結 果 を 表 1に 示 す 。 炭 酸 塩 は 今 回 分 析 し た 全 試 料 に
87
つ い て 単 純 に 平 均 す る と 5.
9%含 ま れ る 。 特 に タ ク ラ マ カ ン 砂 漠 の 砂 に は 平 均 12.
9%と
高 い 含 有 率 を しめ した .
(14C/13C )cA Ic Jt.
比
は
(14C/13C )AD 1950比
の 0.
0238± 0.
0015
か ら 0.
0554± 0.
0021(
23900± 300- 30900± 500y。
B.
p.
に 相 当 )と 、 ど の 試 料 に つ い て も
比 較 的 似 た 値 を 示 した 。 しか し、 こ の
14C年
代 が 採 取 され た炭 酸 カル シ ウム の 地 質 学
的 な 形 成 時 期 と 一 致 す る わ け で な い 。 も し、 採 取 さ れ た 炭 酸 カ ル シ ウ ム が 中 新 世 以 前
(
25Ma∼ )に 既 に 海 底 で 堆 積 し た 石 灰 岩 が 隆 起 し そ の 後 陸 上 で 風 化 さ れ た も の で あ る な
ら、
14C の 半
減 期 が 5730年 で あ る こ と を 考 慮 に 入 れ る と 14C/13C比 は ゼ ロ に な る 。 し か
し、 現 実 に 砂 漠 砂 中 の 炭 酸 カ ル シ ウ ム 中 に は
が含 ま れ て お り、 この こ とは 炭 酸 カ
14C
ル シ ウ ム 中 に 最 近 新 た に 炭 素 が 取 り込 ま れ た こ と を 意 味 す る 。
ス ト ロ ン チ ウ ム は カ ル シ ウ ム と 同 じ族 に あ り そ れ ぞ れ
-1
8
6-
C0 2に 対
し似 た ふ る ま い を す
る の で Srは Caの ト レ ー サ ー と な り う る こ と か ら 、
87
sr/86 sr比 か ら伺 え る ス ト ロ ン チ
ウ ム の 動 向 を カ ル シ ウ ム に も当 て は め る こ とが 出 来 る。 海 水 の
sr/86sr比 は 過 去
87
(中 生 代 、 約 1
億 6000千 万 年 前 ) か ら 上 昇 して お り 現 在 の 値 は 0.
7091で あ る 。 測 定 試
料 の 平 均 値 0.
70883は 中 新 世 (10Ma)
の 海 水 値 に 一 致 す る が 、 化 石 に よ って 調 べ られ た
石 灰 岩 の 堆 積 時 期 と 比 較 す る と か な り高 い 値 で あ る 。 こ れ は 87 sr/86sr比 の 高 い 大 陸
性 物 質 が 含 ま れ て い る こ と を 意 味 して お り 、 石 灰 岩 起 源 の 炭 酸 カ ル シ ウ ム 中 に 大 陸 起
源 の Caが 混 入 し た 、 す な わ ち 砂 漠 内 で カ ル シ ウ ム を 取 り 込 み CaC03
を 生 成 した と考 え
られ る 。
以 上 の 論 議 か ら砂 漠 の 砂 の 炭 酸 カ ル シ ウ ム に は 最 近 形 成 さ れ た も の を 含 ん で お り 、
が 砂 漠 で 固 定 化 され て い る 可 能 性 は 非 常 に 高 い と言 え る。
大 気 C02
参 考 文 献
Epstei
n,Sり Graf,D.L.and Degens,E.T。 (
1963) 0Ⅹygeni
sotope studi
es on
c AndCosmi
c Chemi
stry (
eds.Crai
g,
the ori
gi
n of dol
omi
tes,Isotopi
H.
,Miller,S. L. and Wasserburg,G.J.) p169-180.
北川
浩之 、増葎
敏行、松本
法 に よ る AMS法 炭 素 -
英二、山口
和典、中村
俊 夫 (1991) 水 素 還 元
14測 定 の た め の グ ラ フ ァ イ
トタ ー ゲ ッ トの 作 成 法 、
3-121
名 古 屋 大 学 加 速 器 質 量 分 析 計 業 績 報 告 書 (ⅠⅠ) pl1
-1
8
7-
DESERT I
S A POTENTI
AL SI
NK OF CO2: I
SOTOPI
C EVI
DENCE
I
NAYAMA,E.
,ASAHARA,Y.& TANAKA T.
ver
s
i
t
y,
Dept
.ofEar
t
hand Pl
anet
ar
y Sci
ences
,SchoolofSci
ence, Nagoya Uni
Chi
kus
a,Nagoya L
l
6L
l
-01
,JAPAN
Car
bonat
e car
bon i
n des
er
ts
and wasexami
ned i
nr
es
pectofi
t
sabundance,
sr
/865rr
at
i
o and 14c concent
r
at
i
on. 1
8s
ampl
esofdes
er
ts
and wer
e col
l
ect
ed
f
r
om var
i
ousdes
er
t
sand s
emi
-des
er
tar
easi
nt
he wor
l
d . Sampl
eswer
e mos
t
l
y
col
l
ect
ed f
r
om t
he edgeoft
he des
er
t
s
. Mor
et
han 90% oft
he s
and pas
s
ed
t
hr
ough ar
t80 mes
h (1
60 〝m)s
i
eveand gr
ai
nsf
i
nert
han t
he mes
h wer
e us
ed f
or
anal
ys
i
s.
Sampl
eswer
e decompos
ed wi
t
hconcent
r
at
ed phos
phor
i
c aci
di
n a vacuum s
ys
t
em,
and vol
ume ofCO2 gaSr
ecover
ed wasmeas
ur
ed af
t
ers
epar
at
i
on ofH20. The CO2
cont
enti
nt
he s
andswasf
ound t
o be 0.
0- 1
7.
0wt
.
% ascar
bonat
e. CO2 t
endst
o
be concent
r
at
ed mor
ei
ns
and ofol
derdes
er
t
st
han i
ns
andofyoungerones
.
Thi
si
ndi
cat
est
hatt
he car
bonat
e accumul
at
ed wi
t
h age i
n des
er
ts
and becaus
eof
l
i
t
t
l
e weat
her
i
ng caus
ed byf
ew pr
eci
pi
t
at
i
on.
87s
r
/
865
rr
at
i
o wasmeas
ur
ed f
ort
he car
bonat
e and i
t
shos
ts
and. The r
at
i
os
708 t
o 0.
71
2,whi
ch ar
es
omewhathi
ghert
han t
hos
e
oft
he car
bonat
e var
yf
r
om 0.
ofmar
i
ne car
bonat
ei
n any geol
ogi
ct
i
me.
Low Rb/
Srr
at
i
osoft
he des
er
t
car
bonat
e do notal
l
ow t
o accumul
at
et
he l
ar
ge amountofr
adi
ogeni
c 87s
ri
n
geol
ogi
ct
i
me. Si
gni
f
i
cantpar
t
soft
he car
bonat
ei
n des
er
tar
e cons
i
der
ed t
o
or
i
gi
nat
ed i
ns
our
ce di
f
f
er
entf
r
om l
i
mes
t
one whi
ch wasf
or
med i
n anci
entmar
i
ne
envi
r
onment
s
.
14C/
I3C r
at
i
osoft
he car
bonat
e wer
e meas
ur
ed us
i
ng a t
andet
r
on accel
er
at
or
mas
ss
pecl
[
r
omet
eratNagoya Uni
ver
s
i
t
y. Theobt
ai
ned r
at
i
osar
e di
s
t
r
i
but
ed
bet
ween 0.
055±0.
002and 0.
02L
l
±0.
002 r
el
at
i
ve t
ot
hos
eofAD 1
950。 The r
at
i
os
cor
r
es
p
ond t
o ages24000±300and 31
000± 500 yBP,r
es
pect
i
vel
y. Thi
si
ndi
cat
es
t
hatal
loft
he car
bonat
ei
snotder
i
ved f
r
om det
r
i
t
all
i
mes
t
one f
or
med i
n
geol
ogi
ct
j
L
me buts
ome par
t
soft
he car
bonat
e have been f
or
med dur
i
ng hi
s
t
or
i
c
t
i
me i
n des
er
t
.
enti
nt
he s
and was6.
8 wt
% ascar
bonat
e(
CaCO 3). When we
Aver
agl
e CO2 COnt
t
,t
hi
cknes
sofdes
er
ts
and,dens
i
t
yofdes
er
ts
and
as
s
ume t
hi
l
tt
he ar
ea ofdes
er
0m and 2g/
cm3,r
es
pect
i
vel
y,t
he t
ot
alamountofCO2 i
n des
er
t
ar
e 8000,
000km2,1
i
scal
cul
at
ed t
o be 0.
5× 1
019gr
ams
. The amountexceedst
he car
bon abundance i
n
t
he wor
l
dwi
de bi
omas
swhi
ch i
ses
t
i
mat
ed t
o be 0.
乃 ×1
018 gr
amsascar
bon.
Des
er
ts
t
ocksa l
ar
ge amountofCO2,becaus
e ofi
t
suni
que f
eat
ur
ess
uch as
f
ew pr
eci
Pl
t
at
i
on and qui
ckevap
or
at
i
on.
Des
er
ti
snota us
el
es
spl
aceas
gener
al
l
y。OnS
i
der
ed buti
st
he pot
ent
i
als
i
nkofCO2.
5ampl
esar
e donat
ed by NaoyukiAndo,Takemas
al
s
hi
iand Ki
yohi
de Mi
zuno of
Geol
ogi
calSur
veyofJapan and Li
u Pei
j
i
n ofAcademi
a Si
ni
ca and Shi
mi
zu
er
mi
ned undert
he l
eadi
ng ofTos
hi
o
Cor
p
or
at
i
o・
n. 1
4C/1
3C r
at
i
oswer
e det
Nakamur
a ofNagoya Uni
ver
s
i
t
y.
87
-1
8
8-
Fly UP