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債券の“超”強気相場は終焉を迎えつつあるのか?
2016 年 11 月 19 日
して昨年初頭に 0.9%上昇していますが、いずれもその後は低下基
調に回帰しています。
要旨
> デフレ懸念の後退、経済成長加速の兆候、そして(ドナルド・
トランプ氏の米国大統領選勝利に後押しされた)金融政策
頼みから財政刺激策への政策転換気運の高まりによって、
35 年間続いた債券価格上昇期が終焉を迎えつつある可能
性が高まっています。
> これにより、債券と高利回り株式のリターンが押し下げられ
る可能性があります。しかし、債券強気相場の終焉は緩や
かなペースになることが予想され、実物資産は引き続き利
回り追求の動きから一定の恩恵を受けると思われます。
はじめに
国債利回りは、英国の EU 離脱(ブレクジット)の国民投票直後につ
けた過去最低値から急激に上昇しました。過去 4 ヵ月間で、10 年物
米国債利回りは 1.36%から 2.2%に、ドイツ国債は-0.19%から
0.31%に、そして豪州国債は 1.81%から 2.64%にそれぞれ上昇し
ています。これを受けて、債券利回り低下を背景とした投資家の利
回り追求の動きから恩恵を受けてきたリートや公益株といったセクタ
ーが大幅に下落しました。債券利回り上昇のトレンドは、ドナルド・ト
ランプ氏の米国大統領選勝利によってさらに加速しています。果た
して、35 年間続いた債券の“超”強気相場は終焉を迎えつつあるの
でしょうか?もしそうだとしたら、それが投資家に与える影響はどの
ようなものでしょうか?
債券利回りがこれほど低下したのはなぜでしょうか?
債券利回りが 2016 年年央に過去最低水準まで下落した背景には、
(1)デフレに対する懸念、(2)今後も政策金利が極めて低い水準で
推移すると投資家が予想したこと、(3)経済成長のペースが引き続
き緩やかなものになるとの思惑、(4)近年の地政学的懸念(ウクライ
ナ、ブレクジットなど)を背景とした資金の逃避先としての債券需要、
(5)高齢化の進展による安定したインカム収入に対する需要増大、
(6)各国中央銀行による債券購入、そして(7)投資家の利回り追求
行動により豪州をはじめとする高利回り国債に対し利回り低下圧力
がかかったことなど、いくつかの複合要因が存在します。
なぜ今債券利回りが上昇しているのでしょうか?
現在、様々な要因が債券利回りを押し上げています:
•
今年前半に懸念されていたよりも、世界経済の成長の足取りが
しっかりしていることが明らかになった:グローバル企業景況感
指数が上昇基調にあること。
•
デフレ懸念が後退し、グローバル規模でインフレ率の低下が底
打ちした感がある:コモディティ価格(特に原油)が安定化し上昇
傾向にあることや、世界経済の成長が続くことによって余剰生産
能力が徐々に消化されつつあること。
•
ドナルド・トランプ氏が米国大統領選挙に勝利したことで、経済
成長の押し上げを中央銀行の金融政策に依存する現在の手法
から、財政政策へと軸足を移す「政策の大転換」に対する期待
が高まっている:減税、インフラ支出拡大、そして規制緩和を含
むトランプ氏の政策が経済成長とインフレ率を押し上げ、米連邦
準備制度理事会(FRB)による金利引き上げを加速させるとの期
待感が高まっていること。
•
最近のこれらの潮目の変化を目の当たりにした投資家が、超低
水準の債券利回りが果たして持続可能かどうか疑問に思い始
めていること。長期にわたって名目債券利回りは名目 GDP 成
長率の長期平均の近辺で推移していることから、名目経済成長
に対する長期見通しに基づくと、足元の 10 年物国債の利回り
は持続的な水準をはるかに下回っていること。
これまでの債券利回りの推移
1850 年以降の債券利回りを示した次のチャートをご覧ください。
依然として超低水準にある債券利回り
主要各国の10年国債利回り(%)
豪州
日本
ドイツ
米国
債券利回りは長期の潜在名目成長率を大きく下回る
出所:Global Financial Data、AMP キャピタル
これまでのところ、2016 年年央の最低水準から債券利回りは 0.6~
0.8%上昇していますが、チャート上の底値水準から脱するまでには
至っていません。また、1980 年代初頭以降の債券の“超”強気相場
において、何度か経験した利回り上昇が一時的なものだったことに
は注意が必要です。たとえば、豪州債券利回りは 2009 年に 2%、
2012~13 年にかけて 1.7%(いわゆる「テーパー・タントラム」)、そ
国名
現在の 10 年国債利回り
(%)
長期の潜在名目成長率
(年率%)
米国
2.20
4.25
ドイツ
0.31
3.5
日本
-0.03
2.0
豪州
2.64
4.75
出所:Global Financial Data、AMP キャピタル
1980 年代に始まった債券の“超”強気相場が終焉したと断言するの
は未だ時期尚早との見解も多々ありますが、それが今まさに進行中
であることを確信する証左もまた存在します。債券利回りはファンダ
メンタル面から正当化される水準をはるかに下回る水準で推移して
います。また世界経済が穏やかながらも良好に推移していることか
ら、デフレの脅威は後退しつつあり、米国を先頭に経済政策の焦点
が金融刺激策から財政刺激策へとシフトしつつあります。
益利回りは依然として債券利回りを上回る
豪州企業の予想益利回り
債券利回りの上昇は穏やかと予想する理由
ただし、今回は 1970 年代あるいは 1994 年(小規模な債券クラッシ
ュが発生)に起こった債券利回りの急上昇とは異なる可能性があり
ます。今回はむしろ、緩やかながらもしっかりとした利回り上昇基調
が続くと予想されます。歴史的に、債券利回りは数年間の長期的な
下落基調の後、しばらくは低水準に留まる傾向があります。それは、
経済成長やインフレ期待が本格的に上向くまでには時間がかかる
からです。米国および豪州債券の利回りに関しては、冒頭のチャー
ト上の円で囲まれた部分がそれに当たります。
FRB は来年、現在金融市場が予想している水準よりも大きく金利を
引き上げる可能性があります。一方で、現状はインフレの問題はなく、
緩和策の効果が出現するには時間がかかる上、米ドルの上昇が阻
害要因になる可能性もあることから、利上げプロセスは引き続き緩
やかなものになると思われます。加えて、欧州、日本、そして豪州の
各中央銀行は、今後も金融緩和策を更に推し進める可能性があり
ます。したがって、債券に対してあまりに弱気な姿勢を取ることもで
きません。少なくとも、本当の意味でインフレ・モメンタムが出現し、
世界経済の成長率が 4%まで上昇するには、少々時間を要すること
でしょう。とはいえ債券投資家にとっての最良の時期は過ぎ、利回り
のトレンドは緩やかな上昇基調に乗った可能性があります。
豪州10年債利回り
出所:Bloomberg、AMP キャピタル
また名目経済成長率が上昇すると株価が上昇し、債券利回りの上
昇を相殺する可能性があります。債券利回りの上昇が緩やかであ
れば、株価の上昇でそれを相殺できる可能性があります。ただし、
債券の利回りが大幅に上昇した場合は警戒が必要です。
第三に、ディフェンシブ性の高い高利回り株式は、引き続き下押し圧
力を受ける可能性があります。豪州のリートと公益株は債券利回り
の低下から特に恩恵を受けてきました(下のチャート参照)が、債券
利回りが上昇基調に転じているため、これらのセクターは今後も相
対的にアンダーパフォームする可能性があります。
豪州リート・インデックスと豪州債券利回りの推移
豪州リート・インデックス(左軸)
投資家への影響
債券の超長期強気相場は終焉を迎えた可能性がありますが、この
ことから投資家はいくつかの影響を受けるでしょう。第一に、豪州お
よびグローバル国債のリターンは過去 3 年間にわたって 6%近辺で
推移していましたが、これが維持される可能性は低下しています。
中期的に投資家が債券から得られるリターンは、基本的に資金を投
下したときの利回りによって影響される可能性があります。このこと
を示しているのが、1950 年以降の豪州 10 年物国債の利回りとそ
のリターンをプロットした次のチャートです。現在の利回り 2.6%はチ
ャート上の左下にあり、このことは今後 10 年間にわたってリターン
が過去最低水準になることを示唆しています。また、短期的には債
券利回りの上昇はキャピタル・ロスにつながる可能性があります。
豪州債券 – 利回りが高いほど好パフォーマンス
債券のリターン(年率%)
1950年以降の10年ローリング・
リターンの散布図
トレンド線
1982年1月
15.2%
現在2.6%
10年債利回り(%)
出所:Global Financial Data、AMP キャピタル
次に、債券利回りが上昇基調に転じることで、株式のリターンが抑
制される可能性があります。なぜなら、債券利回りの上昇により株
式が相対的に割高になるからです。しかしながら、これを相殺する 2
つの可能性があります。豪州株式の益利回りは、債券利回りの低下
に対して完全に追随している訳ではありません。次のチャートでも明
らかなように、株式は債券よりも良好なリスクプレミアムを投資家に
提供しています。
10年債利回り(%、右軸)
*スケールは反転
出所:Bloomberg、AMP キャピタル
最後に、非上場商業不動産や非上場インフラといった実物資産につ
いては、引き続き利回り追求の動きがリターンの牽引役になる可能
性があります。次のチャートでも明らかなように、過去において商業
不動産の利回りは債券利回りの低下に連動したことはありません。
世界金融危機(GFC)近辺までの期間で債券利回りが商業不動産
の利回りを上回ったのは、商業不動産価格が低迷し始めた時だけ
でした。その時代からは、現在は程遠い状況にあります。
豪州商業用不動産の利回りと豪州債券利回り
10年債利回り
オフィス物件、産業用施設、
小売物件の平均利回り
出所:Bloomberg、AMP キャピタル
シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジーヘッド&チーフ・エコノミスト
AMP キャピタル
重要事項:この⽂書に含まれる情報は⼀般的な情報の提供のみを⽬的として AMP Capital Investors Limited(ABN 59 001 777 591, AFSL 232497)(以下「AMP キャピタル」とい
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む)特定の地域において適⽤される法令諸規則その他の要件に関して、並びにそれらを遵守しなかったことにより⽣じる結果について、専⾨家に意⾒を求め、相談しなければなりません。この⽂書の
作成に当たっては細⼼の注意を払っていますが、AMP キャピタルあるいは AMP リミテッドのグループ会社は、予測を含むこの⽂書の中のいかなる記述についても、その正確性または完全性に関して表
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