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ジェロントロジー・シネマ・チャンネル[2008 年度より実施]
ジェロントロジー・シネマ・チャンネルの目的・方法/會田信子 2014 ■ジェロントロジー・シネマ・チャンネル[2008 年度より実施] 1.映画は有用な教材 今回は、大学院博士前期課程の『老年看護学特論』の中で実施している“ジェロントロジー・シネマ・チャンネ ル”をご紹介します。保健医療福祉を題材にした映画は、医療者のみならず、非医療者である一般市民に大きな影 響をもたらします。それは、人間の実存的な苦しみである「生老病死」と切っても切れないテーマが含蓄されてい るからです。映像から受けるインパクトは大きく、観る人の意識や考え方、行動にまでも影響を及ぼす可能性すら あります。さらにその多くが、その時代を生きる人々の生活や考え方、習慣・文化、法律・制度などを色濃く映し 出しているので、倫理的・法的・社会的側面を含めて広く議論するのに、非常に有用な教材と考えています。 2.ジェロントロジー・シネマ・チャンネルの教育目標と方法 ジェロントロジー・シネマ・チャンネルでは、このように観る人に強い影響力をもたらす映画を教材として、具 象から抽象へ、現実から理論への帰納的な思考過程をもとにしたディスカッションと、それらをもとに整理した看 護職からの提言を、さらに平易な言葉で非医療者にわかりやすく伝える訓練をすることを狙いとしています。言い 替えれば、映画を観る視点を、 “娯楽”の周波数帯(channel)から“保健医療福祉”に切り替えて俯瞰して観る、 あえて老年学的(gerontology)な視点から鑑賞し、考え、専門的に議論してみる方法をとります。なお教育目標は、 下記の 4 点です。 1)鑑賞した映画から、老年期に関する事象の根底となるキー概念を選択し、キー概念を含蓄しながら、ストーリ ーを説明できる。 2)選択したキー概念の意味と理論的背景、および、なぜ、そのキー概念を選択したのか、映画の具体的場面をも とに説明できる。 3)選択したキー概念をもとに、映画に内在する倫理的・法的・社会的課題の背景や特徴を検討し、保健医療福祉 に関わる立場から、課題に関する提言を記述することができる。 4)上記 1)2)3 をもとに、看護職として市民に伝えたいメッセージを、保健医療福祉の専門職でない人にも理解で きるように、平易な言葉で、わかりやすく伝えることができる。 3.実施上の注意点 実施するにあたり、学生と確認しあう留意点があります。それは、本学習の目的は、俳優の演技力や映画の芸術 性などを評価(評論)するものではなく、また、映画市場・産業の視点から、映画のハイライトやキャッチフレーズ を紹介(解説)したり、医療専門職の立場から現実性の程度などを批判したりするものでもないということです。 ですので、映画をセレクションする時、原則として、学生が希望する映画を教材としますが、教育目標を達成する ことができそうであるか否かは、前もって教員も一緒に検討して決めています。 4.学習タスク 1)学内プレゼン用資料 (1)映画情報 ①タイトル(邦題,原題/英題)、②公開年、③作成国、④原作・脚本、⑤監督、⑥キャスト、⑦字幕翻訳、⑧配 給、⑨発売元、⑩JAN コード、⑪その他(特別なロケ地,受賞歴など) (2)老年看護学に関連するキー概念 ①キー概念、②キー概念の意味、③なぜその概念を選んだのか(該当する場面を示しながら説明をする) (3)映画の主な登場人物とストーリー ストーリーは、自分が選んだキー概念を含蓄しながら、映画設定の時代背景などを踏まえて、自分の言葉で説 明する。映画のキャッチコピーや、Wikipedia などに掲載されているストーリーを剽窃しないこと。 (4)看護職からの提言 キー概念をもとに、映画に内在する倫理的・法的・社会的課題の背景や特徴を検討し、保健医療福祉分野に関 わる者の立場から、課題に関する提言をまとめる。 2)市民用資料 上記の「学内プレゼン用資料」とディスカッションをもとに、看護職から市民に伝えたいメッセージを、<映画 情報>とともに、わかりやすくまとめる。書式などは基本的に自由。ただし、枚数は A4 版・2 枚以内とする。 ※ 本科目は、 「老年看護学」専攻以外のゼミ生も履修可能です。過去にも、地域看護学や精神看護学などの学生さん と幅広い視点からディスカッションを重ねてきました。ご興味のある方は、是非、一緒に学びましょう。 會田信子(作成日 2014 年 2 月)