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海 上 の 森 の 物 語
【目次】 <1> プロローグ <23> 初冬の海上の森 <2> ホタル飛ぶ! <24> 語り部の家 <3> 夏の森 <25> 迎春準備 <4> 里の教室 <26> 里の正月 <5> 虫送り <27> どんど焼き <6> 夏のキノコ <28> 瀬戸焼の始まり <7> ソバづくり <29> 厳冬の森 <8> 初盆の迎え火 <30> 節分 <9> 海上の森の水生生物 <31> いい炭が出来たよ! <10> 海上の森の昆虫 <32> 物見山の思い出 <11> 二百十日 <33> リスのエビフライ !? <12> 海上の猪 <34> 春の森 <13> 森の間伐 <35> 棚田の復活 <14> 実りの秋 <36> ナラ枯れが心配 <15> 海上のお月見 <37> 春が来たよ♪ <16> 清掃登山 <38> 四月の森 <17> 秋祭り <39> 里のひな祭り <18> 森のガイド <40> 企業連携 <19> ため池を作ろう <41> 里の再生 <20> 海上の柿 <42> 新緑の森 <21> 海上のキノコ <43> 多度祭り <22> 収穫感謝祭 <44> 海上の森の楽しみ方 <45> エピローグ <1> プロローグ 全ては 5 年後に開催の国際博覧会予定地を海上(か いしょ)の森と決定した 2000 年の「愛知万博検討会議」 に始まる。名古屋市近郊で豊かな自然が残る530haの 森を万博後には新住宅都市に変えてしまっていいのか という議論が巻き起こる。そして、その後の経過はご存 知の通りであるが、同時に万博後の海上の森では自然 との共生を目指す様々な取り組みの始まりでもあった。 1 年間にわたって里山・海上の森の歳時記をお届けし たい。 (山川 一年 2009.06) 【散策者でにぎわう海上の森の集落】 <2> ホタル飛ぶ! 海上の森の入り口を流れる吉田川沿いでは、山口の「まちづくり協 議会」が中心となってホタルの里づくりを進めてきました。平成 10 年 に京都大学遊麿正秀助教授の指導で「自然発生する水辺環境づく り」が始まりました。ホタルには飛翔の時期には飛べる空間と休める 森、そして何より水辺の環境が大切です。今年一番嬉しかったの は、上流にカワニナが沢山生息していてくれたことです。「沢山飛 んでくれてありがとう、来年もね」。海上川のヘイケボタルも今が最盛 期だ。 (出口 なほ子 2009.07) 【吉田川のゲンジホタル】 <3> 夏の森 ヤマアジサイが咲き終わると梅雨が明け、本格的な夏がきます。ピン クのネムノキ、白いイワガラミ、地味なアカメガシワの花が目立ちます。 道や畦ではコマツナギ、オカトラノオ、アキノタムラソウなどが咲き出し ます。森の中ではツチアケビ、クモキリソウなど可憐な花が見られま す。ニイニイゼミ、アブラゼミ、ヒグラシなどのセミが鳴き出し、湿地では ハッチョウトンボ、キイトトンボ、モノサシトンボなどのトンボが飛んでいま す。 (山本 征弘 2009.07) 【ハッチョウトンボ】 <4> 里の教室 今年も「里の教室」がスタートしました。県内から応募さ れた方々に、半年間合計 10 回の農作業を体験してもら います。参加者に家族ぐるみの方が多いのが特徴で す。はじめてサツマイモの植え付けや田植えを経験した 子供たちはとても感動してくれていました。 水田や畑では 14 種類の米や野菜を栽培しています。勿 論無農薬で育てていますので、収穫物は変形していた り、穴のあいたものもありますが参加者に持ち帰ってもら います。この体験を通して農業の大切さを学習して欲し いと願っています。 (藤野 昌之 2009.07) <5> 虫送り 以前の農村では6月初旬に麦刈りを行い、急いで 高畝を壊して田を耕し、一斉に田植えを行った。夏 至の頃の田植えが終わると、20 日くらいして一番草 の草取りを行った。この頃にウンカやニカメイチュウ が発生する事が多く、「虫送り」という農耕儀礼があ った。海上では最上流部の奥の院に集まり、下田か らクルミドそこから三河境まで送った。子供たちは飾 りの付いた笹竿を持ち、「オンカの神オークレヨ」と 囃しながらオンカ道を廻った。 (伊藤 良吉 2009.07) <6> 夏のキノコ 【採取された夏のキノコ】 7 月 20 日は「海上の森の夏のキノコ」の調査学習会でし た。午前中は海上の森のキノコを採取しながら里山サテラ イトまで上がり、午後はそのキノコを見ながらの講師の山田 先生の講義でした。この調査学習会は大変人気がありま す、一度参加されるとキノコの魅力の虜になってしまいま す。夏休みの自由研究の材料にしたいと子供さんの参加 も多くてにぎやかな学習会になりました。子供さんの興味 は毒キノコ、怖いもの見たさもありとても心に残った事と思 います。海上の森の会では他にも水生生物・昆虫など学 習会を予定しております、無料ですので是非参加し て下さい。 (中元 恵子 2009.07) <7> ソバづくり 今年も海上の里でソバづくりに取り組みま す。昨年は岡崎の専業農家に出向きアドバイ スを仰ぎ、インターネットからも情報を集め て準備をしました。しかし、8 月末の集中豪 雨で畑が水に浸かり、発芽しないものや、種 を播き過ぎ、成長中のソバが倒伏し収穫量は 目標を下回りました。最終的には 10 ㎏の粉に 仕上がり、収穫感謝祭で打ち立てのソバが振 舞われました。今年は 8 月 23 日に種を播く予 定です。 (藤野 昌之 2009.08) 【ソバの花】 <8> 初盆の迎え火 【海上の森のサギソウ】 8月13日、夕方5時頃になると海上の森の入口、屋戸町の 農道(葬連路)に百八つの松明に火がつけられ初盆の家族 による新仏のお迎え行事が行われます。 町内の人たちによ る心経の唱和とチンチンという調子切りの鉦の音が厳かに響 きわたることからこの地区では「チンチン念仏」と呼ばれていま す。 読経が終わると初盆を迎えた家族により町内の人々に 酒、料理、お菓子などがふるまわれ新霊を迎い入れたことを 皆で感謝し労いあうのです。このあと禅宗の家では15日の送 り日まで朝晩お精霊さんにさまざまな手厚い供養が施されま す。 (山田 耕二 2009.08) <9> 海上の森の水生生物 あいにくの雨になってしまいましたが、8月2日 (日)海上の森で水生生物の調査学習会が行 われました。合羽を着ての川やビオトープでの ガサガサになりましたが、意外にたくさんの面白 い水生生物が採取できて、参加して下さった子 供さん達も大張りきりでした。 採取した水生生 物はその場で講師の榊原先生が興味深い説明 をしながらルーペの使い方を教えて下さり、熱 心にルーペを子供たちがのぞいていました。午 後は午前中に採取した生物をチェックして生息 生物の数より吉田川がまあまあきれいな水の川 であるということがわかりました。雨で参加人数は少なかったのですが参加して下さった子供さん達にはとても実り の多い学習会になったことと思います。 (中元 恵子 2009.08) <10> 海上の森の昆虫 8月9日(日)海上の森で昆虫の調査学習会が行われま した。参加人数は 38 人と多くて賑やかな学習会になりま した。午前中は海上の森センターの研修室にて、講師の 松尾先生の用意された資料と写真を見ながら、昆虫の見 つけ方や、採取の仕方などを勉強しました。午後はセンタ ーの横のビオトープでトンボ類を採取して、その場で先生 に説明をしていただきました。森の中ではフクラスズメなど 大きな幼虫類を観察して毒のある個所や、触り方を教え ていただきましたが、子供さん達はなかなか幼虫には手 が出ませんでした。でも不思議なその生態に興味津々でした。いま海上の森ではトンボがたくさん飛んでいます。 かわいいイトトンボ類も多く飛んでいて心を和ませてくれます。オニヤンマも見かけるようになり、森は着々と秋の準 備を始めています。 (中元 恵子 2009.08) <11> 二百十日 猿投山の基盤は花崗岩です。風化してサバ土に なった部分は、時として大規模な地滑りが起きま す。地元の老人は「山津波」と呼びました。昭和 32 年に海上でも大規模な山津波で民家が流され、多 くの田畑が冠水しました。この時の災害で海上を離 れる家族が増えました。平成 13 年9月の「東海豪 雨」は 50 年に一度という集中豪雨で、海上地区で は144ヵ所の崩落が起こりました。海上砂防池も2 分の1以上が土砂に埋まってしまいました。 (山川 一年 2009.09) 【土砂で埋まった海上砂防池】 <12> 海上の猪 猪が田畑を荒らして被害をもたらしている。里山 の農家にとっては対策に追われ、金銭的にも大き な負担となっている。本来猪は山奥にねぐらがあ り、食べ物が少なくなるお盆を過ぎた頃に山郷に 出没し、実が固くなる前の稲穂を食べた。現在は 里山近くを離れることなく住みついているので、年 間を通して被害が絶えない。 この10年、ワイヤーメッシュ柵で囲うなど、猪と知 恵比べの防護対策を実施しているが、万全ではな い。 (鈴木 五男 2009.09) 【ワナにかかった猪】 <13> 森の間伐 私たち森づくりグループ十数名は月4回の作業 日に集まり、里山サテライト前のヒノキの人工林で、 間伐、枝打ち作業をおこなっています。海上の森 には 530ha の森が在ります。その 5 割がスギ、ヒノ キの人工林です。作業林の広さは約 1.7ha で本格 的作業開始から5年経ちました。ほぼ6割方完了 です。いい汗を流して、30 年後いや 50 年後には 立派な材木となる様にヒノキ林を作りましょう。そし て、子々孫々の人達に、貴重な贈り物としましょう。 興味のある人は一度「海上の森の会」にお問い合 わせ下さい。 (平野 幸治 2009.09) 【森づくりグループのメンバー】 <14> 実りの秋 海上の里も収穫の時を迎えました。 9 月 20 日、第 7 回「里の教室」ではさつま芋を収穫し ました。当日は子供たちが多く 70 名以上が参加し、 重そうに持ち帰っていました。これは 5 月 24 日、第 1 回「里の教室」で植え付けしたものです。 これからはもち米、里芋、ソバ等の収穫が目白押し です。そして 11 月 15 日にはこれらの食材を使っても ちつき、芋煮、ソバ打ち、焼き芋等で収穫感謝祭が 催されます。 (藤野 昌之 2009.09) 【収穫したサツマイモ】 <15> 海上のお月見 海上の里でのお月見行事について記憶をたどりたいと 思います。 中秋の名月(旧暦八月十五日)の夜それぞれの家庭で は、すすきと萩の花を花瓶に飾り、花瓶の無かったころに は竹筒に飾り、里芋の煮物と、米の粉で作った団子を縁 側にお供えしました。 今年は十月三日に行いました。そのお供えをした団子を、 十五夜の月明かりを頼りに、子供たちが団子に上手に刺 さる様、先の尖った長い竹の棒を作り、かく家庭の人に見 つからない様に盗んで回ったものです。 (鈴木 みどり 2009.10) <16> 清掃登山 去る4日「秋の海上の森清掃登山」が実施されま した。愛知県勤労者山岳連盟、東海学生ワンゲル 連盟や海上の森センターなど当日は 160 余名の参 加があり、物見山登山コース,広久手の森コースな ど 6 グループに分けられてゴミの収集が行われまし た。海上の森駐車場に集められたゴミは前年の 3 倍以上の 2.4 トンにも及びました。自然環境の保全 に逆行する大量の廃棄物の不法投棄は残念でた まりません。森の会では春にも清掃活動を行いま す。 (山川 一年 2009.10) <17> 秋祭り 秋晴れの下、「山口秋祭り」がありました。朝9時、全町内か ら獅子頭を先頭にはっぴ姿の子供たちの掛け声が祭りの雰 囲気を盛り上げました。 公民館から出発した「献馬」「鉄砲隊」「棒の手隊」は総勢10 0名18カ所の発砲場所で轟音を響かせ、数ヶ所では威勢の いい馬の走りがけや棒の手の演武と見守る市民の方から盛 んに拍手が生まれました。 最後は八幡社に大集合し、奉納の儀式が始まると祭りもクラ イマックスに達しました。 (福田 澄夫 2009.10) <18> 森のガイド 海上の森の会では森のガイドもしています、先日は 名古屋市内の小学校の 2 年生 95 人に秋の海上の 森を案内しました。あいにくの雨模様になってしまい ましたが、子供達はとても熱心に植物の名前や特徴 をノートに書き留めて森の観察を楽しんでくれまし た。後日ガイドをした自然観察指導員のスタッフの元 にかわいい感謝の手紙が届き、みんなで目を細めて それを読みました。四季を通じて海上の森には見る もの、感じるものがいっぱいです。 (中元 恵子 2009.10) <19> ため池を作ろう 海上の森や里は、1960 年代以降一部を除いて放置 され、ため池も堰堤が決壊して機能を果していない。あ いち海上の森センターと本会が協働で進めている里の 再生では、灌漑用水の確保が急務になるため、本格的 なため池復元計画とは別に、廃田となっている谷地田を 簡易ため池として活用し、その下方に展開する旧水田 の保全に努めることになった。目下センター事業として 行われているため池の設計も大詰めを迎え、3 月のため 池完成が待たれる。 (伊藤 良吉 2009.11) <20>海上の柿 海上の名産は?と聞かれると、一番先に富士柿と答えるくら い、昔から何処の家の庭先にも、柿の木が植えてありました。義 父の時代には、遠くは名古屋まで自転車で、売りに行ったそう で、海上の富士柿の名は広く知れ渡っていたそうです。若い頃 私は、柿を採ることが楽しみだったのですが、年をとるごとに柿 の採れる季節が待ち遠しくなりました。富士柿は渋柿ですが、 採って一週間くらい過ぎると、熟し表皮がピーンと張り赤くなっ て食べごろとなります。一度食べると、この味のとりこにな るほど美味しいです。 (鈴木 志津子 2009.11) <21> 海上のキノコ この季節になると山にはキノコが出る。海上で見られる 主な食用キノコにはハマツ、シメジ、センボンシメジ、ソ ナ、ロージ、カワタケなどがある。海上の森で4年間継続 してキノコ観察している山田弘先生によれば 331種のキノ コが確認され、中には猛毒のツルタケやクリタケの仲間、 シロタマゴタケなどもあるという。里山林であった頃には、 個人山であってもキノコ山は消防団の管理する山となり、 山は区分して入札に掛け利用したものである。マツタケの 姿は見かけなくなったが、ソナやアミタケは朝の味噌汁に 入れて味わっている。 (山田 治義 2009.11) <22> 収穫感謝祭 11 月 15 日、海上産の収穫物を使った収穫感謝祭を 開催しました。 参加者はわざわざお出でいただいたあいち海上の森 センターのマリ・クリスティーヌ名誉所長を始め 200 名 余りで、つきたての餅をからみ餅にして頬張り、芋煮、 手打ちそば、赤飯、焼き芋などに舌鼓を打ちました。 今年はマイ食器のない方には会員手製の「竹の器」を 購入していただきゴミの少量化にも貢献しました。 オオタカもちょこっと様子を見に来たようです。 (藤野 悦子 2009.11) <23> 初冬の海上の森 12月木枯らしが吹き始めると美しさを競っていたウリカエデ、タカ ノツメ、アカメガシワ、コナラ、コバノミツバツツジ、ナツハゼ、カナク ギノキ、ダンコウバイ、フジなど紅葉(黄葉)が散り始めます。 その頃ベニマシコ、ジョウビタキ、ルリビタキ、アオジ、カシラダカな どの鳥が北の国や高い山からやって来ます。 正月が近くなると落葉樹の葉は落ちそのあとに可愛い冬芽が顔を 覗かせます。 (山本 征弘 2009.12) 【ベニマシコ】 <24>語り部の家 里山サテライト通称‘かたりべの家’は先祖が大正 7 年に赤津にあった民家を購入し、海上に移築したも のである。昭和の初期から2階で養蚕をしていたため 1階のダイドコロの床を切りぬいて囲炉裏を作って下 から2階を暖めていた。現在の床暖房に等しい方法だ った。その役が終わると厚手の板を置いてその上に 畳を敷いた。農作業で使っていた牛や馬は土間続き のマヤで飼われていた。また、オクドや風呂は家の北 側にひさしを出して薪の煙や煤が家の中に入らない ようにしていた。 (鈴木 俊憲 2009.12) <25> 迎春準備 今年もあと二週間ばかりで終わります。海上のサ テライト(語り部の家)でも大掃除をしたり、お鏡餅を 用意したり、歳神さまの依り代の門松などを用意し て新しい年を迎えます。大晦日にはカド(外庭)を 掃き清めて、オコズナ(山の赤土と川原の白砂)で 日の出を描きます。農作業で使用する道具を最後 に洗い飾ります。一年の無事に過ごせたことに感 謝、新しい歳も無病息災を願う迎春準備です。こ の年末の一連の行事を 27 日に行います。 (柴田 鐘三 2009.12) <26> 里の正月 平成 22 年庚寅歳を迎えました。元日は家長が 若水を汲み、その若水で雑煮をつくり家族そろっ ていただきます(少し残した水で翌日書き初めを 行う)。その後、近くの氏神様に詣で家族の健康 を祈願します。その足で旦那寺にも年頭のあいさ つに行きます。途中で会う人々にも新年のあいさ つをします。2 日はトロロ飯、7 日に七草粥を食べ ます。松が明けた 10 日にサテライトでは、ドンド焼 き(門松など正月飾りや書き初めを燃やす)をしま す。 (柴田 鐘三 2010.01) <27> どんど焼き お正月に使った門松やしめ縄、お守り、破魔矢、 祈願成就したダルマ等持ち寄って焼き、その火に あたり餅を焼いて食べて無病息災を願うもので す。 【2日のとろろ】新年早々の幸せを、二日目に一気 に飲み込んで、1年間無事に過ごせるようにと願い ます。 【七草粥】初冬から芽を出し、年を越す寒さの中か らいち早く芽を伸ばす元気さに無病息災の願いを 込めます。 (出口 なほ子 2010.01) <28> 瀬戸焼の始まり 陶都として栄えてきた瀬戸には長い「せともの」の歴史 があります。せとものを焼く最初の煙は海上の森から立ち 上りました。あいち海上の森センター内に在る「広久手第 30 号窯」は、万博新駅建設予定地の発掘調査によって 発見されました。稼働時期が 10 世紀後半代であり、これ まで最古とされていた古窯より半世紀も遡るものでした。 海上の森には豊かな陶土と燃料に恵まれて数十基の古 代から中世にかけての古窯跡が分布します。 (山川 一年 2010.01) 【あいち海上の森センターにある広久手第 30 号窯】 <29> 厳冬の森 1年中で一番寒い時期でルリビタキ、ツグミ、シロハラなどが餌を求め て山から降りてきます。 中旬以降暖かい日にはテングチョウ、キタテハ、ルリタテハ、ムラサキシ ジミなどのチョウ、マメヒラタアブ、オオハナアブなどの昆虫が見られま す。 下旬にはダンコバイ、サクラバハンノキ等の木の花が、スズカカンアオ イ、ショウジョウバカマ、ホトケノザ、ハルリンドウ、ミドリハコベなどの草花 が咲きだします。 春到来も真近です。 (山本 征弘 2010.01) 【ルリビタキ】 <30> 節分 節分は立春の前日で、新たな年を迎える大きな季 節の変わり目である。季節の変わり目には神霊が来 臨し、中には招かれざる客も来る。それを追い払う行 事を鬼やらいという。真宗檀家の多い海上では節分 の行事は盛んでなかった。 海上に隣接する屋戸では節分の夜を「年越し」とい い、イワシの頭をカシの木枝に挿し大豆稈で焼いて、 母屋のすべての出入り口に挿した。鬼はイワシの焼け た臭いを嫌うという。これも一種の鬼やらいであった。 (伊藤 良吉 2010.02) <31>いい炭が出来たよ! 1月23・24日と海上の森でドラム缶による竹炭焼き 体験を行いました。竹はどこにでも生えてくるし、1年 で成長する厄介者です。しかし、炭にすれば木の炭 より吸臭効果は数倍あるといわれています。 今年は釜の焚き口を工夫したこともあって2日目は見 事な炭に出来上がっていました。同時に焼いたドング リや松ぼっくり、クルミなどもきれいに焼きあがってい ました。釜を覆った砂で蒸し焼きしたサツマイモの美 味しかったことは言うまでもありません。 (福田 澄夫 2010.02) <32> 物見山の思い出 海上で生まれ、海上に小学校 1・2 年生までいました。物見山の思い出はこの 1枚に写真からしか思い出せませんが、物見山に登り兄と一緒に岩の上から周 囲を見ている写真です。撮影は父親だと思います、この当時は山々に木々が 少なく禿山だったような記憶です。 また、母親が太平洋戦争の時、名古屋空襲で物見山から名古屋城が焼夷弾 により真赤に燃えているところがみえたと聞かされた事を思い出しました。現在 の物見山の頂上はどのようになっているのでしょうね。 (鈴木正 司 2010.02) 【七城ヶ嶺(物見山)】 <33> リスのエビフライ!? 春が待ち遠しい海上の森です、海上の森には有名 になったムササビをはじめリスやテンなどの動物もたく さん住んでいます。日当たりの良い松林の根元を見て みると、こんな形のものがあちこちに落ちています。こ れは松ぼっくりをリスなどが食べた残骸です。形が似 ていることからエビフライと呼ばれています。冬枯れの 山に散策に来られたら松の木の根元を探してみてくだ さい。かわいいお宝が見つかると思いますよ。 (中元 恵子 2010.02) <34> 春の森 ウソが木々の冬芽を食べに現れ、ウグイス、シジ ュウガラ、ヤマガラなどがさえずり、エナガが巣を作 り始めます。クロモジ、ヒサカキ、バッコヤナギが咲 き、キチョウ、モンシロチョウ、ベニシジミ、コツバメ、 ミヤマセセリなどが飛び始め野山が賑やかになっ てきます。 シデコブシ、コバノミツバツツジ、オオカメノキが咲 き出すと本格的な春到来です。友人・ご家族など 連れだって自然の息吹を感じながら海上の森を楽 しみましょう。 (山本 征弘 20210.03) 【シデコブシ】 <35> 棚田の復活 愛知県は海上の里で谷津田(やつだ・谷あいの田んぼ) の復元を目ざす「里の教室」を展開してきました。耕作放棄 された里山でまず必要なことはかんがい用水の確保です。 かつて稼働した3つのため池やそれを各田に給水する用水 路が必要となります。 森の会では県と協働で、「下田」のため池造り(=写真)や その水を利用した棚田の復元に取り組んでいます。 棚田は日本の里山の原風景であり、何よりも多様な生き物 の温床となるものです。 (山川 一年 2010.03) <36> ナラ枯れが心配 今近郊のナラ枯れが猛威をふるっています。里山に普遍的に見られ るコナラ・アベマキなどブナ科の落葉広葉樹が枯死する現象で、原因は 「カシノナガキクイムシ」という害虫が樹木に穿孔・産卵、その際に「ナラ 菌」を媒介し導水管を塞いで枯らす「樹木萎凋伝染病」。 海上の森入口の駐車場周辺のナラ枯れを仲間と調査してみました。 するとコナラ 96 本、アベマキ 12 本の内穿孔木 70%、枯死木 15%が観 察されました。 里山の管理不足を痛感しています。 (寺岡 靖介 2010.03) <37> 春が来たよ♪ 私はムーちゃんだよ、仲間たちと海上の森に住んでいる の、寒い冬の間は木の芽やドングリやシイの実なんかを食 べて子育てを頑張ってきたのよ。なんだか春のニオイがし てきたから皆さんが設置してくれた巣箱からのぞいてみた の、里山に春は来たかしら?むささびのムーちゃんです。 現在海上の森では40カ所以上でその生息が確認されて います。本来夜行性なので昼間に見かけることは稀なので すが、春の暖かさに寝ぼけて顔をみせてくれました。 (中元 恵子 2010.04) <38>四月の森 シデコブシの花が終わりコバノミツバツツジが咲き出すと三 角点付近ではギフチョウが飛び始めます(=写真)。ギフチョ ウは「春の妖精」と呼ばれる2次林に適応した里山の住人で す。 森の中ではハナイカダ、ウワミズザクラ等が咲き出し、里では ヘビイチゴ、ミツバツチグリ、タチツボスミレ等の草花が増え てきます。ヤマトシジミ、ベニシジミ、コチャバネセセリ等が花 の蜜を吸っています。 ウグイスが春を告げると、野鳥の子育てシーズンが始まりま す。 (山本 征弘 2010.04) <39> 里のひな祭り 毎年サテライト前のしだれ桜が満開の時期に1月遅 れのひな祭りを行いました。今は以前のようなお供えも のがほとんどできません。蛤の串の干物、うるめ鰯の開 き、あえ物のつぼ等々。ひな祭りの時に聞きましたらほ とんど中国産だそうです。山口地区ではツボドンといっ ていました。 今年もいろいろなお花が咲いています。野の花いっぱ いでお祝いをし、祖母・母・子の3代でオコシモン作りを 楽しみました。 (出口 なほ子 2010.04) <40> 企業連携 海上の森センターでは、現在4社の企業 と「事業提携」を結んでいます。「森の手入 れ」は企業にとっても「CSR(企業の社会 的責任)」の一環として自社の企業理念を 反映させる絶好の場所であるし、センター や私たちにとっても「間伐作業の促進を図 る」意味で一石二鳥の取り組みでもありま す。企業の社員を中心に昨年は6回で延 べ250名もの参加者があり、指定のフィー ルドで汗を流しました。参加者の感想も「樹 が倒れるときは感動!」の声も上がっ ています。 (福田 澄夫 2010.04) <41> 里の再生 海上の里づくり「里の再生」を新たな自主 事業としてスタートします。昨年度、愛知県は 生物多様性条約「COP10」関連事業の一環 として、海上で「里の再生教室」=写真を開 催しました。谷津田の再生作業を通して里の 暮しと生物多様性のかかわりを学ぶ内容でし た。これらを参考に、元は農地でありながら 現在は放置された水田やため池・水路、さら にその背後の二次林の再生に取り組んでゆ きます。楽しく汗かき体験をしませんか! (鈴木 五男 2010.05) <42> 新緑の森 木々の新緑が目に映えるようになると、オオルリ(=写 真)、キビタキ、サンコウチョウ等が来て営巣を始め美しい さえずりが聞こえます。 ウツギ、タニウツギ、イボタノキにはクロアゲハ、ジャコウア ゲハなどのトンボも現れます。 道端にはヤマハタザオ、シライトソウ、タツナミソウ等の可 愛い花が増えてきます。 5月9日の「海上の植物観察会」、同 16 日の「海上の野鳥 観察会」に是非お出かけいただき、新緑の海上の森を満 喫下さい。 (山本 征弘 2010.05) <43> 多度祭り 海上の氏神は多度神社で、海上集落手前の南の 山手に祀られている。例大祭が春秋2度あったが、 現在は春のみおこなわれる。祭日は雨乞いの神、 生業の神として知られる桑名市の多度大社と同じ5 月5日である。明治の頃は本殿に至る急坂で上げ 馬神事も行われていたという。多度祭りになると海 上を出た人たちが戻ってきて、1年1度の再会を喜 び合う。その数は例年 50~60 人であったが、最近 は高齢化もあって参加者が少なくなってきた。 (伊藤 良吉 2010.05) <44> 海上の森の楽しみ方 海上の森を楽しむには森のことを知ると楽しみは 倍増します。生命力溢れる草木や可憐な花、姿は見 えないけど美しい鳴き声の小鳥たち、制空権を悠々 と飛ぶ猛禽類、森に暮らす動物たちの落し物など、 知ったら森を歩くのがもっと楽しくなりますよ。 海上の森の会では「調査学習会」や「森ツァー」など 様々な体験学習を通してみなさんに「森の博士」に なっていただきたいと思っています。 (中元 恵子 2010.05) <45> エピローグ 1 年間にわたって海上の森の歳時記をお届け してきました。 猿投山西南麓に位置する「海上の森」は日本 の何処にでもある里山の一つです。豊かな自 然が残り、森と関わって生きてきた里山文化の 紹介でした。 実はこの間に、海上の森の会(220 人)も「NPO 法人 海上の森の会」にステップ・アップしまし た。 「COP10」がこの愛知県で開催される今年、生 物多様性を維持する海上の森の大切さを今後 も発信し続けてゆきたいと思っています。 (山川 一年 2010.05)