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せたがやの教育96号 8ページ (PDF形式 1235キロバイト)

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せたがやの教育96号 8ページ (PDF形式 1235キロバイト)
【 第 3 回】
世田谷区ゆかりの著名人にご自身の
子どもの頃やお仕事についてインタ
ビュー。第3回目は編集者・評論家
の山田五郎さんです。若林小学校
ご出身の山田さん。お仕事に対して
の姿勢や考え方、子どもの頃に出
会った印象深い大人達等々、大人も
ためになるお話を頂きました。
編集者・評論家
山田 五郎
インタビュー
さん
世の中には自分と違う資質や考え方があることを
子どものうちに学べたことは、何よりも大切な教育だった。
誰かが面白いと思ったものに
自分も興味を持てないはずがない
─大学生活を終え出版社に入社されて、最初
ほうが得だし幸せなんじゃないかと思います。
山田五郎
子どもを放っておく勇気を持とう
(やまだ・ごろう)
の配属は若者情報誌「Hot-Dog PRESS」で
─こんな事を子どもの頃にしておくと良い、等
すが、テレビ番組で、
「本当にファッションが好
がありましたら教えてください。
きな人とそうでない人が作ったものは差が出て
子ども達は何も言わなくてもやるべきことを
しまう」とお話されていましたが。 やりますよ。問題はむしろ親の方ですね。
僕は美術書を作りたくて出版社に入ったの
─大人がもっとしっかりすべき、ということです
に、若者情報誌の編集部に配属されてファッ
か?
ションを担当させられました。それでも仕事だ
いや、逆にしっかりしすぎというか、頑張り
からと前向きに頑張りましたが、ライバル誌と
すぎなんですよ、今の親は。だから子どもを
比べると明らかに見劣りするページしか作れな
放っておいてやることができない。よく「今の
1958年東京都生まれ。上智大学文学部在学中にオース
トリア・ザルツブルク大学に1年間遊学し西洋美術史を学
ぶ。卒業後、
(株)講談社に入社し『Hot-Dog PRESS』
編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。現在は
時計、西洋美術、街づくりなど幅広い分野で講演、執筆
活動を続けている。著書に『百万人のお尻学』
(講談社+
α文庫)
『知識ゼロからの西洋絵画入門』
(幻冬舎)
『知
識ゼロからの西洋絵画史入門』
(幻冬舎)
『銀座のすし』
(文藝春秋)
『ヘンタイ美術館』
(ダイヤモンド社)
。
『出没!
アド街ック天国』
(テレビ東京)
『ぶらぶら美術博物館』
(BS日テレ)他のテレビ番組、
『デイ・キャッチ』
(TBSラジ
オ)他ラジオ番組にレギュラー出演中。
かったんです。何が違うのか考えた結果、見
子どもは……」と言いますが、子どもは今も昔
ておく勇気だけでなく、憎まれ役や嫌われ者に
つけた答が、自分が本気でファッションが好き
もたいして変わっていませんよ。変わったのは
なる勇気も欠けていると思います。子ども達の
かどうかでした。美術好きが美術書を読め
環境であり、中でも親。教育熱心なあまり子ど
教育では、公立の小中学校にも頑張ってほし
ば、本気で美術を好きな人が作っているかどう
もを放っておく勇気が持てず、結果、子どもを
いですね。
「公立はいろんな子がくるから」と私
かわかってしまう。それと同じで、自分が本気
スポイルしてしまう親が増えたんです。特に
立に行かせる親御さんもいらっしゃるようです
でいいと思ってなければ、読者を説得できるは
「ちゃんとしたお宅」ほどその傾向が強いのは
が、僕は逆にそれこそが公立の最大の利点だ
ずがありません。
皮肉ですね。
「仕事だから好きにならなきゃいけない」の
若林にはかつて「ジジイの広場」と「ババア
と思っています。僕が通っていた頃の若林小
学校には、サラリーマンの子どももいれば商店
ではなく、
「好きになること自体が仕事」なんだ
の広場」といわれる空き地がありました。空き
や町工場や農家の子もいて、出来のいい子も
と気づき、そこからは本気でファッションを好
地の隣にお年寄りがお住まいで、いつも子ども
そうでない子もいたものです。そういう雑多な
きになろうと覚悟を決めました。そうしたらだ
達をどやしつけていたから、そう呼ばれていた
環境で、世の中には自分とは違う資質や考え方
んだん興味が湧いてきて、自然と好きになれま
わけです。子どもの頃には憎たらしいジジイや
があることを子どものうちに学ばせてもらったこ
した。そもそも、僕が興味がなかっただけで、
ババアとしか思いませんでしたが、今にして思
とは、何よりも大切な教育でした。
読者の多くは関心があるからこそ、ファッショ
えばお二人とも実に立派に大人の役割を果た
商店や町工場の子の家に遊びに行くと、昼
ン記事を載せるわけです。それだけ多くの人の
して下さっていたのだなと感心します。子ども
間でも父親がいるわけですよ。そういう大人達
関心を引くテーマなんだから、自分も興味を持
達に野球のボールを打ち込まれて盆栽を折ら
が子ども達を見守ってくれ、子ども達は働く大
てないはずがない。そう考えれば、この世にあ
れたりガラスを割られたりする上に、怒鳴れば
人達の背中を見て育つ―。そんなふうに、コ
「復讐」と称して花火を投げ込まれたりもす
ミュニティ全体で子ども達を育てていける環境
本気で好きになれば、いい仕事ができるだ
る。今なら訴訟問題に発展しかねない被害を
が作れるよう、地域に密着した公立の学校が
けでなく、仕事が楽しくなってきます。最近の
ものともせず、自ら憎まれ役となって子ども達
核になってくれることを期待しています。
る大抵の物や事柄は好きになれますよ。
若者は「仕事より自分の時間が大切」といい
を叱り、放っておくべき所は放っておいて自由
ますが、どの道1日8時間は拘束されるんです
に遊ばせて下さっていたのですから。
から、仕事を好きになって自分の楽しみに変える
僕自身も含め今の大人には、子ども達を放っ
8
★山田五郎さんの子どもの頃の思い出や西洋美術につい
てのインタビューの全文は区のホームページ(本号7
ページ参照)に掲載しています。
問 教育総務課 ☎5432-2745 5432-3028
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