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砲丸投の学習指導に関する研究

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砲丸投の学習指導に関する研究
島根大学教育学部紀要(教育科学)第19巻 43∼55頁
昭和60年12月
砲丸投の学習指導に関する研究
砲丸投の動作分析
斎藤重徳*・渡辺悦男*・大谷和寿*・伊藤豊彦*・檀野淳一*
Sh1genor1SAIT0,Etuo WATANABE Kazutosh1OHTANI,
Toyoh1ko IT0and Jun1ch1UEN0
AStadyonTeach1ngMethod.smShotPut
Mot1on Ana1ys1s of Shot Put
I は じ め に
みても16ポソドという砲丸の重さに十分対応できるもの
ではなかったようである。
砲丸投の歴史はかなり古く,紀元前1829年頃スコヅト
目本と世界の記録を比較してみると,目本記録(9肌00)
ラソドあたりで石投げとして行われていた1),という記
として最初に載っている1913年頃世界はすでに15肌台の
録が残っている。目本では,明治16年(1883),F.W.ス
時代であり,目本がこの15肌台に到達したのが昭和35年
トレソジが主宰して開催された東京大学運動会のブログ
ラムに砲丸投が種目として記載されている2)。この時の
(1960)である。そして,その頃世界はもう19肌台に突
入していた。目本と世界セはこのように4肌もの差があ
砲丸の重さは記録にないが,明治18年(1885)の同運動
り,その差は現代縮まっているどころか,5剛こ開いて
会の競技種目(記録には競技番付と記載されている)に
しまった。1984年までの目本記録と世界記録は,目本記
大砲玉批げ方(14ポソド)という記録があり,また,明
録が17肌16,瓜田(1982)であるのに対し,世界記録は
治19年の同大会では砲丸投(15ポソド),明治20年の同
22肌22,U.バイヤー,東独(1983)である。これまで
述べてきた目本記録と世界記録の差は男子の比較であっ
大会では砲丸投(14.5ポンド)と,重さも一定していな
かったようである。
たが,女子においてはその差が男子以上の6肌にも及ん
今目のような16ポソドの砲丸で行われるようになった
でいる。
のは,1865年のオックスフォード対ケソブリッジ大学対
砲丸投の研究は,記録の変遷が示すように常にいかに
抗戦で用いられてからである3)。
したら砲丸をより遠くまで投げることができるかを考え
しかし,日本でこの重さの砲丸を使用するようになっ
た結果でもある。そして,その研究は砲丸投選手自身の
たのは,ずっとあとにたってからである。砲丸投の目本
創意と工夫によってなされてきた1)ともいわれている。
記録の変遷2)をみると,大正2年(1913)辰野保(東大)
砲丸投の研究の目的,最終的な目標は,砲丸という重量
9肌00,第1回全国陸上大会,という記録が残ってはい
物をいかにしたら16肌でも遠くへ投げることがでぎるか
るものの,まだ16ポソドの重さに定着していたわげでは
に向げられる。
なかったようである。大正14年(1925)発行されたr運
本研究では,動作解析コ:■ピュータシステムを用い,
動競技全書」3)(内務省編纂)の中のr砲丸投」の項で,
熟練者と未熟練老の投動作を比較分析し,その相違と視
次のように書かれている。「國際オリソピック競技會で
覚情報手段としての応用可能性の検討を通して,初心者
は,16卦度(我が約2貫目)の鐵丸を,直樫7択の圓の
牛から投げる規定になってをり,又極東選手権競技會で
の砲丸投の指導に際しての基礎的な手がかりを得ようと
するものである。
は12卦度の砲丸を投げる事になってをります。これは今
目我が國の青年諸君の麗力では矢張り12卦度のが適當で
ありませう。此の投げ方は隻腕を以て投げるので,爾手
■ 研究の方法
で支えて投げてはいけない事になってをります。」(野口
1)被験者は,熟練者(島根大学陸上競技部投てき専門
源三郎記)こgように,当時の目本人の体カでは記録を
者)2名と,未熟練者(島根大学バスケットボール部
*島根犬学教育学部保健体育研究室
員で砲丸投の未経験者)2名の男子学生である。
砲丸投の学習指導に関する研究
44
⑧一一⑳ 熟練者
⑧一一一③ 未熟練者
(b)4㎏
(a) 2.7kg
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図1 腰 の
2)砲丸の投てきは,サークル中央からのその場投げ(グ
TIME(sec)
垂
直 速 度
離れるときの速度,方向,それに高さによって決まる。
ライドを行わない投げ方)の方法で,砲丸の重さを
この3つの要素は,投げる人の体力や技術に大きく関係
2.7幼,4んg,5.4んg,7.2幼のそれぞれについて実施
するが,この中でもっとも大切なのは手から離れるとき
した。
の砲丸の速度(初速)である4)。そこで,砲丸に初速を
3)被験者の身体にマークしたポイソトは,腰,肩,肘,
増すためには,次のようなことが条件になってくる。
手首,指(中指)の5箇所である。
①できるだけ大きな力で,長い距離で砲丸に一力を加え
4)撮映の方法は,砲丸投サークル真横から1/600秒の
る。
ロータリーシャッタービデオカメラ(ソニー製)によ
②投げる方向に直線的に,しかも加速度的に力を加え
り毎秒60コマで撮映した。
る。
5)動作の分析は,動作解析コソピュータシステム(ソ
ニー製)により,毎秒30コマの画像で解析を行った。
皿結果および考察
砲丸投の投てき距離は,力学的にみると砲丸が手から
⑧でだしの構えから投射までの身体の移動に,スピー
ドの切れ目がない5)。
以上述べたことは,予備動作,グライド動作を入れた
場合の条件であるが,次の投げの動f乍の局面においても
同じことがいえる。今回の実験では,被験者はその場投
斎藤重徳・渡辺悦男・大谷和寿・伊藤豊彦・植野淳一
45
③一一⑧ 熟練者
③ ⑧ 未熟練者
(b)4kg
(a) 2.7kg
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TIME(sec)
図2 腰 の 水平速
げを行っており,投げの動作の局面のみの分析となる。
度
次に,腰の水平速度を図2からみると,垂直速度の場
以上のような砲丸投の基本的な考えをもとに,動作解
合と同様にいずれの重さの砲丸に一おいても最高速度が未
析コンピュータシステムにより,被験者にマークしたそ
熟練者で低く,水平方向への力の発揮が未熟練者は劣っ
れぞれの箇所および使用したそれぞれの砲丸の重さにつ
ている。とくに砲丸の軽い2.7んgと4幼の場合が顕著で
いて垂直速度(VERTICAL VELOCITY),水平速度
(HORIZONTAL VELOCITY),軌跡(LOCUS)そし
あり,下半身(脚)を使った砲丸投動作が行われていな
てスティックピクチャーを取り出し,熟練者1人,未熟
腰の垂直速度と水平速度との関係を図3からみると,
練者1人を無作意に抽出して両老の比較,検討を試みた。
熟練者の場合にはいずれの重さの砲丸においても垂直速
1)腰の動き
度が先行し,垂直速度が最高になったあたりから水平速
腰の垂直速度を図1からみると,いずれの重さの砲丸
度に切り替えられている。これに対し,未熟練者は垂直
いことが推察される。
の場合も最高速度は未熟練者が低くなっており,また最
速度と水平速度との間にあまり差がみとめられない。
高速度の出現も未熟練者は遅くなっている。つまり,未
西藤氏は,熟練者は垂直加速度の値が先行し,もっと
熟練者は垂直方向へのカの発揮が弱く,また力の出し方
も力の出しやすい姿勢で水平加速度の値に切り替えられ
も緩徐であるといえる。
る4),と述べている。
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斎藤重徳・渡辺悦男・大谷和寿・伊藤豊彦・植野淳一
47
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図5 肩 の
投げの動作において重い砲丸を加速させるためには,
TIME(sec)
垂
直 速 度
前方にひねり出されなけれぱならたいが,未熟練者はこ
身体(アゴと首の都分)にできるだけつげたままで,押
の動きが不十分であり,とくに前方への動きが小さいと
し上げ,ひねり動作をすることである。そして,できる
いえる。
だげ早く砲丸を投てき方向に向げ身体の前にもってくる
2)肩の動き
ことは,次のカ強い突き出し動作を導くことになる4)。
肩の垂直速度を図5からみると,腰の動きの場合と同
このように,投げの動作においては先づ押し上げ,つま
様に未熟練者は最高速度の現われ方が遅くなっているも
り垂直方向への動きが大切となる。
のの,最高速度の値は両者に大きな差はみとめられな
次に,腰の動きを図4の軌跡からみると,未熟練者は
い。中でも2.7紡と4鋤こおいては,最高速度が未熟練
サークル前方(投てき方向)への動きが少なく,とくに
者でわずかに上回っている。
2.7紡,4紡といった軽い砲丸の場合が顕著である。前
肩の水平速度(図6)は,最高速度の値では未熟練者
で述べたように,水平速度は未熟練者が低い値となって
が熟練者を上回っているが,最高速度に達する過程が緩
いることがここでも立証される。
徐である。
ここでいえることは,投げの動作において砲丸と身体
肩の垂直速度と水平速度の関係を図7からみると,7.2
は支持脚を伸ぱすことによって順次押し上げられ,腰を
幼の砲丸の場合に熟練者は水平速度の伸びが十分でない
砲丸投の学習指導に関する研究
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1−2[m]
肩 の 軌 跡
ことがうかがえる。
←柿
←平灯
また,図8の肩の軌跡をみると,砲丸が重くなるにつ
れて未熟練老の軌跡が熟練者よりも前に出ている。よく
観察すると,熟練者は砲丸が重くなるにつれて水平方向
肘
肩
への移動距離が短かくなり,未熟練者は逆に長くなって
いる。腰の動きの場合には,未熟練者は水平方向への移
動が十分に行われていなかったのでこれを合わせて考え
ると,未熟練者は上体だげが前に押し出されたような形
←脳
になり,上半身を主とし牟投げの動作になっていること
が推測される。図9の未熟練者のスティックピクチャー
をみると,そのことが容易に理解できる。
また,熟練者においても,専門種目とはいえ7.2幼の
重さの砲丸にはまだまだ十分な動きが備わっているとは
図9 未熟練者のスティヅクピクチャー
いえない。
50
砲丸投の学習指導に関する研究
熟練老
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図11肘の垂直速度と水平速度の関係
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52
砲丸投の学習指導に関する研究
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(a)2.7㎏
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肘の垂直遠度を図10からみると,未熟練者は砲丸が重
くなるにつれて速度の低下がみられるのに対し,熟練者
ではほとんど変化がみとめられない。また,未熟練者は
肘の水平速度(図12)は,両者に最高速度の出現にズ
.h.
レが生じているものの,最高速度の値にはあまり大きな
差はみとめられない。
肘の垂直速度と水平速度の関係を図11からみると,熟
、.
O
9)肘の動き
たり,安定した砲丸投動作とはいえない。
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垂 直 速 度
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垂直
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O.l ll.l! い.:1 Ω.4 0.5
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われている。図13の肘の軌跡をみるとわかるように,熟
図15指の垂直速度と水平速度の関係
練者は投てき方向にほとんど直線的に動いているのに対
斎藤重徳・渡辺悦男・大谷和寿・伊藤豊彦・植野淳
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熟練者
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図16指の水平速度
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砲丸投の学習指導に関する研究
54
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(a)5.4㎏(垂直)
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図18身体各部位の速度変化
し,未熟練者は上方に脹らみをもつ緩やかな円弧を描い
ように熟練者の方が早く最高速度に達しており,未熟練
ており,垂直速度と水平速度の関係を容易に知ることが
者は上昇スピードが緩徐である。最高速度の値において
できる。
未熟練者は7.2紡の場合にかたりのスピードダウソがみ
肘の動きは,他の部位と同様に直線的に動くのが理想
とめられる。
的と考える。
指の垂直速度と水平速度の関係を図15からみると,熟
4)指の動き
練者の場合は垂直速度が先行し,次いで水平速度に切り
指の垂直速度の変化を図14からみると,いずれの重さ
替えられているが,未熟練者の場合は重い砲丸(5.4んg,
の砲丸においても熟練者の方が早く最高速度に達してお
7.2んg)になると双方の関係が入り乱れており,良い動
り,最高速度の値も熟練者の方が高くなっている。この
きとはいえない。
場合の指は,砲丸を支えている中指であり,砲丸が手か
指の軌跡(図17)では,未熟練者は軽い砲丸の場合に
ら離れるまでは指の動きを砲丸の動きとみてよい。した
水平方向,垂直方向ともに移動距離が短かい。しかし,
がって,砲丸に加えられた上方へのスピード(力)は熟
重い砲丸になると未熟練者は熟練者よりも移動距離が長
練者の方が大きいといえる。
くなっている。砲丸に対し長い距離にわたって力を加え
次に指の水平速度を図16からみると,垂直速度と同じ
ることが飛距離を伸ばす条件であるが,この場合は加え
斎藤重徳・渡辺悦男・大谷和寿・伊藤豊彦・植野淳一
られている力が小さい(スピードがない)ため,結果的
には砲丸の飛距離は伸びていないといえる。
IV’ま と め
砲丸投動作の中の投げの局面を構成する主な運動は,
上体を起こし,左右腰と左右肩のねじりもどし,胴の回
転運動,胸部の伸展,右腕の伸展,右手首・指によるス
ナップである。これらの運動は,投げる方向へ直線的
に,そして動きのスピードに切れ目がない,しかも加速
度的に行われなげれぱたらない。
今回の研究では,被験者の身体の各部(腰,肩,肘,
指)の垂直速度,水平速度,軌跡から,熟練者と未熟練
者とを比較すると次のようなことがいえる。
1.図18一(a)をみると,熟練者は垂直速度において腰,
肩,肘,指といった順に速度が漸増している。それに
比べ図18一(b)の未熟練者は,前半に各部位の速度が接
近している。つまり,熟練者は垂直方向への砲丸の加
速が脚から始まり最後は指による加速といったように
うまく力が伝達されていることが理解できるのに対
し,未熟練者は最初の段階で重要な脚の伸展による上
体の起こしがないため,砲丸にスピードが加わらない
ぼかりか,身体各部位の動きもスムーズに行われて1、・
ないといえる。
2.身体各部位の水平速度の変化を図18一(c)(d)からみる
と,垂直速度の場合と同様に腰の水平速度が未熟練者
では低い値となっている。投げの動作の最初の部分
は,脚の伸展による押し上げと同時に支持脚側の腰を
投てき方向にひねり押し出さなければならない。未熟
練者は,脚による効果的な動f乍が行われていないため
身体各部位の動きも砲丸の加速に有効に働いていない
といえる。
V 引 用 文 献
1)植屋清見:体育の科学,砲丸投の研究,Vo1.30.
(1980)
2) 山本邦夫:日本陸上競技史,道和書院,(1979)
3)内務省編纂:運動競技全書,朝目新聞杜,(1925)
4)西藤宏司:陸上競技入門シリーズ8,砲丸投・ハソ
マー投,べ一スボールマガジソ杜,(1977)
5)古藤高良編:体育授業シリーズ,陸上競技指導ハン
ドブック,大修館書店,(1976)
55
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