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企業における交通安全対策の現状
2009.03 200 KC はじめに ここ数年、交通事故による死者数は減少傾向にあり、2005 年は実に 49 年ぶ りに死者数が 7,000 人を下回りました。とはいえ、交通事故による負傷者数は 相変わらず 100 万人を超えており、憂慮すべき事態であることに違いはありま せん。 当協会では、わが国の安全・防災の一層の普及・向上のため、交通事故防止 および交通事故被害者の保護、国民各層の安全防災意識の高揚などに資するさ まざまな取り組みを行ってきました。 そうした取り組みの一環として 1995 年に、冊子「これからの企業における交 通安全対策」を発刊し、各方面でご活用いただきました。しかし、それから既 に 10 年が経過し交通をめぐる環境も変化しております。 そこで今般、上記冊子はその役割と使命を果たしたと考え廃刊することとし、 新たにアンケート調査と訪問調査による企業の交通安全対策の実態をまとめる ことにいたしました。 本冊子は約 210 社の調査結果をわかりやすくまとめたものです。交通安全対 策に真摯に取り組まれている企業の経営者ならびに管理者の皆様に、本冊子が 少しでもお役に立てば幸いです。 2006 年 6 月 社団法人 日本損害保険協会 業務企画部企画 ・ 安全技術グループ 目 次 1 調査の目的と方法 4 企業の交通安全対策アンケート調査結果 5 第1章 交通事故発生件数に対する評価 6 第2章 事故後の対応 10 第3章 情報の収集と必要な情報 12 第4章 交通安全活動 14 第5章 交通安全教育 25 第6章 飲酒運転防止対策 38 第7章 交通事故防止に効果的だった対策 40 企業の交通安全対策事例 43 目 次 はじめに 調査の目的と方法 図1 回答企業の業種 図 1 回答企業の業種 1 目的 100 国内企業における交通安全対策の実態を調 査することによって、今後の企業における交 通安全対策の資料とする。 80 60 40 3 12 11 8 1 その他 官公庁 電気・ガス 運送 サービス 金融 0 10 商業 ■調査項目 調査項目は以下のとおりである。 ◦企業の概要 ◦交通事故の実態・特徴 ◦交通事故対策(事故への対応等) ◦管理体制 ◦交通安全活動 ◦交通安全教育 4 製造 ■訪問調査 訪問調査は 13 社に対して実施した。内訳 は、一般企業が 5 社、運送企業が 8 社である。 20 建設 業種および保有台数を問わず、交通安全 に熱心と考えられる企業に対して、2005 年 8 月にアンケート調査および訪問調査を実施し た。 33 27 鉱業 調査の目的と方法 2 方法 ■アンケート調査 アンケート用紙は約 1,300 社に送付し、回 答のあった企業は 195 社であった。その業種 別の内訳は、図 1 のとおりである。 回答のあった企業を、安全運転管理者の選 任が義務づけられている企業(以下「一般企 業」という)と、運行管理者の選任が義務づ けられている企業(以下「運送企業」という) に分けてみると、一般企業が 109 社、運送企 業が 86 社であった。 運送企業をトラック、バス、タクシーの業 種で分けると、図 2 のようになる。 また、回答企業の所在地を都道府県別に分 けると、表 1 のようになる。 86 図2 運送企業の業種別内訳 図 2 運送企業の業種別内訳 13 タクシー 21 バス 52 トラック 0 10 20 30 40 50 60 表 1 都道府県別回答企業数 北海道 青 森 岩 手 秋 田 山 形 宮 城 福 島 茨 城 群 馬 埼 玉 千 葉 東 京 神奈川 山 梨 新 潟 長 野 4 8 3 4 2 1 5 5 3 0 7 5 16 5 1 4 3 静 岡 愛 知 岐 阜 富 山 石 川 福 井 京 都 滋 賀 三 重 奈 良 和歌山 大 阪 兵 庫 岡 山 鳥 取 島 根 10 15 1 3 2 3 1 3 1 1 0 24 14 6 3 1 広 島 山 口 愛 媛 香 川 徳 島 高 知 福 岡 大 分 佐 賀 長 崎 熊 本 宮 崎 鹿児島 沖 縄 無回答 6 3 1 3 0 3 4 2 1 4 2 0 2 0 4 questionnaire findings 企業の交通安全対策 アンケート調査結果 第1章 交通事故発生件数に対する評価 1 交通事故発生件数の推移 図3 交通事故発生件数の増減傾向(全体) わからない 4% 第1章 交通事故発生件数に対する評価 回答企業における交通事故発生件数の推移につ いては、「横ばい傾向」が最も多く、 「増加傾向」 と「減少傾向」についてはほぼ同じくらいとなっ ている(図 3)。 一般企業と運送企業で分けてみると、一般企業 では「横ばい傾向」が半数近くを占めているのに 対して(図 4)、運送企業は「横ばい傾向」 、 「増 加傾向」、「減少傾向」がほぼ同じくらいとなって いる(図 5)。 増加傾向 26% 減少傾向 28% 横ばい傾向 42% 図4 交通事故発生件数の増減傾向(一般) 図5 交通事故発生件数の増減傾向(運送) わからない 5% わからない 6% 減少傾向 25% 増加傾向 22% 減少傾向 30% 横ばい傾向 47% 増加傾向 33% 横ばい傾向 32% 6 2 交通事故件数の評価 図6 交通事故発生件数の評価(全体) 交通事故件数の評価については、全体では「少 ない」が最も多いが、 「非常に多い」と「やや多 い」の回答を合計すると、 「少ない」という回答 よりも多くなる(図 6) 。一般企業と運送企業に 分けてみると、一般企業では「少ない」の回答が、 「非常に多い」と「やや多い」の回答合計のより も多いのに対して(図 7) 、 運送企業では「少ない」 の回答が、「非常に多い」と「やや多い」の合計 よりもかなり少なくなっている(図 8) 。 わからない 3% 少ない 37% 非常に多い 26% 多くも 少なく もない 9% 図7 交通事故発生件数の評価(一般) 図8 交通事故発生件数の評価(運送) わからない 5% わからない 1% 非常に多い 18% 少ない 47% 少ない 25% 非常に多い 35% やや多い 18% 多くも 少なくも ない 7% 多くも 少なくもない 12% 7 やや多い 32% 第1章 交通事故発生件数に対する評価 やや多い 25% 3 交通事故件数の評価の基準 図9 交通事故発生件数の評価基準(全体) 第1章 交通事故発生件数に対する評価 交通事故件数の評価の基準については、全体で は「社内の目標と比較して」 「以前と比較して」 が過半数を占めており(図 9) 、事故の多寡の評 価は、外部の統計や他社との比較ではなく、あく まで自社における目標値や過去の件数の推移から 行われているケースが多い。 一般企業と運送企業を比べてみると、運送企業 は「同業他社と比較して」という基準が多いのが 特徴的である(図 10、11) 。 なお、「非常に多い」と「やや多い」の回答に ついては、社内における事故件数の目標が高いほ ど多くなると考えられるので、 「非常に多い」 と 「や や多い」と回答した企業が他社と比較した場合に 必ずしも事故件数が「多い」とは言い切れない。 なんとなく 5% 同業他社と 比較 11% 警察による 交通事故統計と 比較して 8% なんとなく 2% なんとなく 7% 以前と比較 30% 保有車両台数 からみて 18% 警察による 交通事故統計と 比較して 13% 保有車両台数 からみて 18% 図11 交通事故発生件数の評価基準 (運送) 図10 交通事故発生件数の評価基準 (一般) 社内の目標 と比較 27% 以前と比較 28% 社内の目標 と比較 30% 社内の目標 と比較 34% 保有車両台数 からみて 18% 同業他社と 比較 5% 警察による 交通事故統計と 比較して 1% 8 以前と比較 28% 同業他社と 比較 17% 4 交通事故件数の社内認知度 図12 交通事故件数の認知度 (全体) 事故件数についての社内の認知度については、 「大半が知っていると思う」が回答の約 7 割を占 めており(図 12)、一般企業と運送企業では、運 送企業のほうが「大半が知っていると思う」とい う回答がやや多くなっている(図 13、14) 。 ほとんどの従業員は 知らないと思う 3% 知らない 従業員のほうが 多いと思う 11% 半分くらいの 従業員は知って いると思う 13% 図14 交通事故件数の認知度 (運送) 図13 交通事故件数の認知度 (一般) ほとんどの従業員は 知らないと思う 4% ほとんどの従業員は 知らないと思う 1% 知らない 従業員のほうが 多いと思う 11% 知らない 従業員のほうが 多いと思う 11% 半分くらいの 従業員は知って いると思う 13% 半分くらいの 従業員は知って いると思う 13% 大半の従業員は 知っていると思う 72% 大半の従業員は 知っていると思う 75% 9 第1章 交通事故発生件数に対する評価 大半の従業員は 知っていると思う 73% 第2章 事故後の対応 図15 事故後の対策 (全体) (複数回答) 1 対策の内容 200 第2章 事故後の対応 事故発生後の対策については、 「事故分析を行 い、原因や対策の提示や朝礼等での報告」が最も 多くなっており(図 15) 、一般企業と運送企業に 大きな差異はみられない(図 16、17) 。 また、自由記述による各企業の事故後の対策に ついて、主なものをあげてみると次のようになる。 ◦事故惹起者反省会を年に 3 〜 4 回実施する(バ ス) ◦班単位(小集団 4 〜 6 人体制)で対策を検討す る(トラック) ◦毎月の安全ミーティング時に事故事例を発表す る(トラック) ◦安全衛生会議(月 2 回)のなかで当事者は概要 原因・対策を発表する(トラック) ◦事故報告書を作成し提出させ、状況と原因、対 策を記入させる(商業) ◦乗務員を小グループに分け、事故別討議をして いる(バス) ◦毎月の安全ミーティング時に事故事例の発表を 行っている(トラック) 116 100 70 50 30 その他 特に何もしていない 当該事故に基づいた 事例研究の実施 事故分析を行い、原 因や対策の提示や、 朝礼等での報告 図17 事故後の対策 (運送) (複数回答) 80 80 70 60 0 事故防止委員会を開 催し、事故防止策につ いて検討、実施 0 図16 事故後の対策 (一般) (複数回答) 80 151 150 71 70 60 56 50 60 50 40 38 40 32 30 30 18 20 20 12 10 0 その他 特に何もしていない 当該事故に基づいた 事例研究の実施 事故分析を行い、原 因や対策の提示や、 朝礼等での報告 10 0 事故防止委員会を開 催し、事故防止策につ いて検討、実施 0 その他 特に何もしていない 当該事故に基づいた 事例研究の実施 事故分析を行い、原 因や対策の提示や、 朝礼等での報告 事故防止委員会を開 催し、事故防止策につ いて検討、実施 0 10 2 事故分析結果の活用 図18 事故分析結果の活用 (全体) (複数回答) 150 事故の分析については、 「分析していない」と いう回答は 3 社のみであった。分析結果の活用に ついては「社内の交通事故統計を作成している」 や 「事故発生者への個別指導に活用している」 「社 、 内の安全運転講習会等の資料にしている」などが 多いが(図 18)、一般企業では「社内の交通事故 統計を作成している」が最も多く(図 19) 、運送 企業では「事故発生者への個別指導に活用してい る」が最も多かった(図 20) 。 138 143 124 120 98 90 87 60 その他 69 61 60 49 55 49 50 40 40 32 30 30 20 16 20 10 10 その他 社長に報告している 安全運転講習会等の 資料として活用 事故事例研究会の資 料として活用 社内の交通事故統計 を作成 11 4 事故発生者への個別 指導に活用 0 その他 社長に報告している 安全運転講習会等の 資料として活用 事故事例研究会の資 料として活用 社内の交通事故統計 を作成 事故発生者への個別 指導に活用 0 76 70 63 50 社長に報告している 80 70 60 安全運転講習会等の 資料として活用 図20 事故分析結果の活用 (運送) (複数回答) 74 62 事故事例研究会の資 料として活用 80 社内の交通事故統計 を作成 図19 事故分析結果の活用 (一般) (複数回答) 事故発生者への個別 指導に活用 0 20 第2章 事故後の対応 30 第3章 情報の収集と必要な情報 1 情報の収集先 図21 情報の収集先 (全体) (複数回答) 200 169 102 100 50 27 その他 損害保険会社 図23 情報の収集先 (運送) (複数回答) 96 80 73 70 80 警察や交通安全 協会等の交通関 係団体 図22 情報の収集先 (一般) (複数回答) 31 交通安全関係の 専門雑誌 0 100 139 150 新聞、 テレビ ラジオ、 週刊誌 第3章 情報の収集と必要な情報 道路交通法の改正に関する情報など、交通安全 対策に必要な情報の収集先については、 「警察や 交通安全協会等の交通関係団体」が最も多く、次 いで「交通安全関係の専門雑誌」となっており、 損害保険会社からの収集については2割程度と なっている(図 21) 。 この傾向は、一般企業と運送企業ではあまり差 異はみられないが、運送企業は一般企業に比べる と、損害保険会社からの情報収集が多くなってい る(図 22、23)。 64 75 60 55 50 60 47 40 40 30 21 20 20 10 15 10 その他 損害保険会社 警察や交通安全 協会等の交通関 係団体 交通安全関係 の専門雑誌 12 新聞、 テレビ ラジオ、 週刊誌 0 その他 損害保険会社 警察や交通安全 協会等の交通関 係団体 交通安全関係の 専門雑誌 新聞、 テレビ ラジオ、 週刊誌 0 12 図24 企業が必要な情報 (全体) (複数回答) 2 企業にとって必要な情報 150 今、企業が必要としている情報については、 「運 転者教育の方法」がもっとも多く、次いで「他社 の事故防止活動の内容」 、 「事故発生者に対する措 置の仕方」となっており、運転者教育や他社の事 例に対する要望が強い(図 24) 。 一方、回答企業のうち、マイカー通勤者のいる 企業が9割以上を占めているが、マイカー通勤管 理やマイカーの業務使用管理についての関心は低 い。 なお、一般企業では「管理体制の作り方」への 関心が比較的薄く、運送企業でマイカー管理関係 への関心が薄くなっている(図 25、26) 。 134 120 85 72 65 60 47 33 15 その他 損害保険の活用法 交通事故と企業責任に関する 判例 運転適性診断の活用法 マイカー業務への使用の方法 マイカー通勤管理の方法 車両管理の方法 安全運転管理体制の作り方 事故発生者に対する措置の 仕方 運転者教育の方法 他社の事故防止活動の内容 0 図26 企業が必要な情報 (運送) (複数回答) 80 69 70 70 60 58 50 44 42 40 30 65 56 51 50 43 24 41 41 40 29 30 24 20 23 22 20 17 12 10 16 12 10 3 1 2 その他 損害保険の活用法 交通事故と企業責任に関する 判例 運転適性診断の活用法 マイカー業務への使用の方法 マイカー通勤管理の方法 車両管理の方法 安全運転管理体制の作り方 運転者教育の方法 事故発生者に対する措置 の仕方 13 他社の事故防止活動の内容 その他 損害保険の活用法 運転適性診断の活用法 交通事故と企業責任に関する 判例 マイカー業務への使用の方法 マイカー通勤管理の方法 車両管理の方法 安全運転管理体制の作り方 運転者教育の方法 事故発生者に対する措置 の仕方 他社の事故防止活動の内容 0 第3章 情報の収集と必要な情報 34 30 80 0 93 90 図25 企業に必要な情報 (一般) (複数回答) 60 114 図27 社内組織 (全体) 1 交通安全に関する社内組織 交通安全に関する社内組織(交通安全委員会な ど)については、約3分の2が「設けている」と 回答しており(図 27) 、一般企業と運送企業のあ いだに大きな差異はみられない(図 28、29) 。 無回答 5% 第4章 交通安全活動 社内組織がない 30% 図28 社内組織 (一般) 社内組織がない 33% 社内組織がある 65% 図29 社内組織 (運送) 社内組織がある 67% 社内組織がない 32% 社内組織がある 68% *無回答を除く *無回答を除く 14 2 交通安全に関する予算 図30 交通安全に関する予算 (全体) 交通安全に関する予算については、 「ある」と 回答した企業は 4 割で、 「ない」と回答した企業 を上回った(図 30) 。ただし、予算については約 4 分の 1 の企業が無回答である。このなかには何 らかの費用は捻出されているが、それが予算とし て位置づけられていないために、 「ある」とも「な い」とも回答できなかったというケースも含まれ ている可能性がある。 また、一般企業では「予算なし」より「予算あり」 の回答のほうが多かったのに対し(図 31) 、運送 企業では逆に「予算なし」のほうが多かった(図 32) 。 無回答 24% 予算がない 36% 図32 交通安全に関する予算 (運送) 図31 交通安全に関する予算 (一般) 無回答 18% 無回答 31% 予算がある 28% 予算がある 50% 予算がない 32% 予算がない 41% 15 第4章 交通安全活動 予算がある 40% 3 経営者による訓話等の実施 図33 経営者による訓話等の実施 (全体) 第4章 交通安全活動 経営者による訓話等の実施については、 「普段 からよくある」が約 5 割で、次いで「安全大会な どの行事の際にはある」が約 3 割となっており、 「事故が起こったときにはある」は約 1 割と少な い(図 33)。 一般企業と運送企業を比べると、運送企業の方 が「よくある」という回答が多い(図 34、35) 。 しかし、普段から訓話等のよくある企業が、事 故が起こったときには訓話がないというのは考え にくい。これは複数回答ではなく、一つだけ選択 するという回答方式が影響したためであり、実際 には、事故が起こったときの訓話は、もっと多く の企業で実施されている可能性がある。 ほとんどない 12% 安全大会などの 行事の際にはある 28% 普段から よくある 51% 事故が 起こったとき にはある 9% 図34 経営者による訓話等の実施 (一般) 図35 経営者による訓話等の実施 (運送) ほとんどない 8% ほとんどない 15% 安全大会などの 行事の際にはある 30% 普段からよくある 46% 安全大会などの 行事の際にはある 26% 事故が 起こったとき にはある 9% 事故が起こったときにはある9% 16 普段からよくある 57% 4 朝礼や点呼時の訓話等の実施 図36 朝礼や点呼時の訓話等の実施 (全体) 事故が発生 したときに はある 10% 春と秋の 交通安全 運動期間 中にはある 10% 月に1∼2回 くらいはある 14% ほとんどない 1% よくある 55% 週に1回くらい はある 10% 図37 朝礼や点呼時の訓話等の実施 (一般) 図38 朝礼や点呼時の訓話等の実施 (運送) ほとんどない 1% 春と秋の 交通安全 運動期間中 にはある 16% 事故が発生 したときには ある 14% 月に1∼2回 くらいはある 4% 事故が発生 春と秋の交通安全 運動期間中にはある したときに 3% はある ほとんどない 5% 0% 週に1回 くらいは ある 9% よくある 36% よくある 79% 月に1∼2回 くらいはある 22% 週に1回 くらいはある 11% 17 第4章 交通安全活動 朝礼や点呼時において、管理者等が交通安全に 関する話をすることがあるかどうかについては、 「よくある」が約 6 割で、それ以外はいずれも低 い数字となっている(図 36) 。しかし、この質問 についても複数回答ではなく、一つだけ選択する という回答方式なので、 「事故が発生したときに はある」については、前項と同じことがいえる。 また、一般企業では「よくある」は 4 割程度だ が(図 37)、運送企業では 8 割に上っている。運 送企業の場合は、点呼時に交通安全に関する訓話 等がよく行われている可能性がある(図 38) 。 がある」の順位と異なっているが、それ以外は同 じ順位になっている。ただし、 「事故写真の掲示」 については、実施している企業の大半が「安全意 識向上に効果あり」と回答している(図 39)。 一般企業と運送企業で比べると、ほぼ同じ傾向 を示しているが、 「標語やスローガンの掲示」に ついては、一般企業ではあまり評価が高くないの に対して、運送企業では比較的評価が高くなって いる(図 40、41) 。 5 交通安全広報活動 第4章 交通安全活動 ■実施の程度 交通安全広報活動について、 「実施したことが あるもの」のトップは「ポスターの掲示」で、約 9割の企業が実施したことがあるとしている。次 いで「標語やスローガンの掲示」 、 「パンフレット やチラシ等の配布」となっている(図 39) 。 一般企業と運送企業に分けてみると、運送企業 は「事故写真掲示」のほか、 「立て看板」や「横断幕」 の使用が比較的多くなっている(図 40、41) 。 ■実施の効果 「安全意識向上に効果あり」という回答につい ては、 「立て看板の設置」 、 「横断幕や垂幕の設置」 、 「社内報への記事掲載」の項目が「実施したこと 図39 交通安全広報活動 (全体) (複数回答) 200 実施経験あり 175 安全意識向上 に効果あり 164 150 139 115 118 113 105 104 100 83 81 79 68 64 69 73 50 50 34 25 23 その他 社内交通安全放送 社内報への記事掲載 横断幕や垂幕の設置 18 立て看板の設置 事故写真の掲示 定期的な交通安全 広報誌の発行 パンフレットやチラ シ等の配布 標語やスローガンの 掲示 ポスターの掲示 0 28 図40 交通安全広報活動 (一般) (複数回答) 77 80 安全意識向上 に効果あり 86 図41 交通安全広報活動 (運送) (複数回答) 67 49 29 24 第4章 交通安全活動 10 10 12 14 20 その他 実施経験あり 100 13 15 16 20 20 社内交通安全放送 社内報への記事掲載 40 41 横断幕や垂幕の設置 その他 社内交通安全放送 社内報への記事掲載 横断幕や垂幕の設置 立て看板の設置 事故写真の掲示 定期的な交通安全 広報誌の発行 パンフレットやチラ シ等の配布 標語やスローガンの 掲示 19 54 50 51 29 27 31 28 26 立て看板の設置 事故写真の掲示 35 34 40 62 63 38 35 40 55 51 51 49 50 定期的な交通安全 広報誌の発行 78 80 パンフレットやチラ シ等の配布 安全意識向上 に効果あり 81 標語やスローガンの 掲示 ポスターの掲示 0 ポスターの掲示 0 55 60 60 60 実施経験あり 94 100 ■実施の効果 交通安全活動について「教育効果が大きい」と された項目をみると、トップは「運転適性診断」 であり、 次いで「無事故無違反運動」 「ドライバー 、 向け安全運転講習会」 、 「無事故運転者表彰制度」、 「年末年始の事故防止運動」の順となっており(図 42) 、 「年末年始の事故防止運動」は実施企業は多 いが効果はそれほど高い評価をされてはいない。 教育効果について一般企業と運送企業を比べる と、運送企業では「無事故運転者表彰制度」に対 する評価が一般企業よりも高くなっている。また、 「エコドライブ推進運動」についても一般企業で の評価はかなり低いが、運送企業では比較的高く なっている(図 43、44) 。 6 交通安全活動 第4章 交通安全活動 ■実施の程度 具体的な交通安全活動について、まず、実施項 目をみると、全体で最も多いのが「年末年始の事 故防止運動」で、約 79%の企業が実施している。 次いで、「無事故・無違反運動」 (約 78%) 、 「運 転適性診断」(約 77%) 、 「ドライバー向け安全運 転講習会」 (約 71%) 「無事故運転者表彰制度」 、 (約 67%)となっている(図 42) 。一般企業と運送企 業を比べると、 「無事故運転者表彰制度」や「運転 記録証明の書取り付け」 「エコドライブ推進運動」 、 などの項目で、差異がみられる(図 43、44) 。 図42 交通安全活動 (全体) (複数回答) 200 実施経験あり 教育効果大 継続・新規 実施希望 154 153 150 150 138 131 119 120 117 115 111 109 109 101 99 100 93 96 86 106 106 98 94 82 73 68 80 81 77 75 69 63 64 59 60 65 62 65 65 67 53 50 44 48 44 61 66 62 48 46 40 42 28 30 10 77 その他 安全大会 街頭指導 エコドライブ推進運 動 運転記録証明書の取 り付け 危険箇所 ︵ヒヤリハット︶ マップの作成 ヒヤリハット報告 安全運転講習会 ︵管 理者向け︶ 20 安全運転講習会 ︵ド ライバー向け︶ 運転適性診断 呼称運転 ︵指差し呼 称運転︶ 社内免許制度 ︵ 認定 運転者制度︶ 社内カウンセリング 無事故運転者表彰制 度 車両一斉点検・清掃 シートベルト着用推 進運動 年末年始の事故防止 運動 無事故・無違反運動 0 73 教育効果大 70 64 12 28 27 27 2 3 4 5 図44 交通安全活動 (運送) (複数回答) 教育効果大 10 第4章 交通安全活動 41 42 その他 63 安全大会 48 街頭指導 56 56 エコドライブ推進運 動 継続・新規 実施希望 68 70 運転記録証明書の取 り付け 危険箇所 ︵ヒヤリハット︶ マップの作成 その他 安全大会 街頭指導 エコドライブ推進運 動 運転記録証明書の取 り付け 危険箇所 ︵ヒヤリハット︶ マップの作成 ヒヤリハット報告 安全運転講習会 ︵管 理者向け︶ 安全運転講習会 ︵ド ライバー向け︶ 運転適性診断 呼称運転 ︵指差し呼 称運転︶ 社内免許制度 ︵認定 運転者制度︶ 社内カウンセリング 無事故運転者表彰制 度 車両一斉点検・清掃 シートベルト着用推 進運動 年末年始の事故防止 運動 無事故・無違反運動 21 ヒヤリハット報告 45 安全運転講習会 ︵管 理者向け︶ 安全運転講習会 ︵ド ライバー向け︶ 73 13 14 15 4 6 7 10 47 46 45 47 50 35 36 運転適性診断 14 13 呼称運転 ︵指差し呼 称運転︶ 社内免許制度 ︵認定 運転者制度︶ 17 19 20 30 30 30 30 社内カウンセリング 無事故運転者表彰制 度 58 35 33 33 33 34 38 38 38 実施経験あり 76 40 40 40 40 40 60 58 54 53 57 55 54 54 車両一斉点検・清掃 77 78 80 シートベルト着用推 進運動 0 60 60 年末年始の事故防止 運動 無事故・無違反運動 0 19 20 21 23 13 14 15 14 15 27 28 30 34 34 31 32 30 31 31 30 52 53 38 40 41 48 48 50 54 54 41 42 40 41 40 35 35 35 35 34 58 59 継続・新規 実施希望 61 59 60 実施経験あり 75 76 77 80 図43 交通安全活動 (一般) (複数回答) 56 45 クボードの取り組み、防災ハンドブック読み合 わせ、年間個人目標への取り組み及び反省、健 康管理、荷卸し先でのフォークリフト作業、熱 中症対策など(トラック) ◦班目標を立てさせ結果報告を行い、次年の目標 を立てさせる(トラック) ◦事故を起こした運転者が所属する班の班長と班 員が班会議を開催し、事故の原因を追究し、対 策について話し合う(トラック) ◦ヒヤリハット体験やブレーンストーミングによ り、安全輸送に関して何でも言わせる(バス) ◦公休班別小集団活動で事故討議の実施(バス) ◦交通安全運動の前に、年 4 回程度、乗務員を集 め(10 人未満) 、集合教育をしている。この中 で乗務員の意思等について話し合っている(タ クシー) ◦各営業所の班別集会、常会等で発生した事故の 原因、要因、再発防止について話し合いをする (タクシー) 7 小集団活動 第4章 交通安全活動 小集団活動については、3 分の 2 の企業が導入 している(図 45) 。 記述回答による小集団活動の具体的な内容をみ ると、 「KYT」 (危険予知訓練)と「ヒヤリ・ハッ ト」が多いが、そのいくつかを紹介する。 ◦安全行動目標設定による所員の安全意識の徹底 やKYT活動、ヒヤリハット体験報告、安全ビ デオ視聴、ヒヤリマップ作成(電力) ◦小グループ(5〜6人)でKYT(ミーティン グ)により、危険箇所の写真から、どんな危険 が潜んでいるかを討議し、 全員で意見をまとめ、 発表させる(鉱業) ◦KYT、安全運転知識テスト、交通安全教育ビ デオテープの貸し出し(製造・販売) ◦交通安全立哨活動と清掃活動の実施(製造) ◦会社のイメージアップ、車両管理、無事故ラン 図45 小集団活動 (全体) いいえ 33% はい 67% 22 図46 従業員の家族への働きかけ (全体) 8 従業員の家族への働きかけ (複数回答) 60 従業員の家族に対して交通安全に関する働きか けを行っている企業は 4 割であった(図 46) 。 一般企業と運送企業を分けてみると、一般企業 では 3 割、運送企業では 5 割となっており、運送 企業のほうが家族への働きかけは熱心である(図 47、48)。 運送企業の働きかけの内容をみると、 「家庭へ の交通安全文書の送付」が最も多かったが、次の ような活動をしている企業もあった。 ◦給料明細に社長のメッセージを入れる(バス) ◦飲酒運転防止に関する要請文(タクシー) ◦家庭訪問により相互理解と安全運転への協力要 請(トラック) 51 50 40 30 23 14 10 5 その他 職場見学会 家族への交通安 全文書の送付 従業員の家族か らの標語やポス ター等の募集 0 図48 従業員の家族への働きかけ (運送) 図47 従業員の家族への働きかけ (一般) (複数回答) 20 (複数回答) 35 35 30 16 15 25 12 20 10 15 7 11 10 5 7 5 2 その他 職場見学会 家族への交通安 全文書の送付 23 従業員の家族か らの標語やポス ター等の募集 0 その他 職場見学会 家族への交通安 全文書の送付 従業員の家族か らの標語やポス ター等の募集 0 3 第4章 交通安全活動 20 ン(官公庁) ◦交通安全かかしコンクールへの参加、交通安全 早押しクイズへの参加(電力) ◦交通安全運動、代表者による街頭立哨、各無事 故 ・ 無違反コンクール等への参加(製造) ◦交通安全運動初日に横断歩道歩行者の誘導(バ ス) ◦駅前自動車クリーンキャンペーン、全国交通安 全運動街頭指導への参加(バス) ◦地域ごとにパトロールや安全大会などあり、参 加している(トラック) ◦横断歩道の旗振り、ミラーの清掃、子ども交通 安全教室(トラック) ◦地域の町会の方々と協力し、主要交差点の街頭 指導を実施している。営業所によって独自に自 主的に主要交差点、駅前交差点での街頭指導を 実施(タクシー) ◦春、夏、秋、冬の交通安全運動の期間に交差 点でメンバー4名で街頭指導。10 日間× 4 期、 80 分間、午前 7:30 〜 8:00(タクシー) 9 地域の交通安全活動への参加 地域の交通安全活動については、回答企業の 約 7 割が「参加している」と回答しており、地域 活動に取り組んでいる様子がうかがわれる(図 49)。 記述回答による具体的な活動内容としては、地 元の警察署や交通安全協会と連携してさまざまな 交通安全活動に取り組むという形が多いが、独自 に活動を行っている事例もみられる。 第4章 交通安全活動 <活動事例> ◦春 ・ 秋の交通安全運動に交差点で交通整理、旗 振り活動、街頭活動(金融) ◦交通安全祈願祭り、交通安全キャンペーン、安 全安心まちづくり市民大会(製造) ◦自社で交通安全運動を実施、地域学区に対して 子どもの安全通行の指導(自動車教習所) ◦モデル駐車デー、安管シートベルトキャンペー 図49 地域の交通安全活動への参加 (全体) 参加していない 31% 参加している 69% 24 第5章 交通安全教育 1 交通安全教育の実施状況 昨年度(2004 年度)に交通安全教育を実施し たという企業が大半であった(図 50) 。実施しな かったと回答とした企業については、 「時間がと れない」「方法がわからない」 「事故が少ない」と いう理由があげられている。 第5章 交通安全教育 ■実施場所 実施場所については、 「社内の会議室」が最も 多く、実施した企業の約 9 割を占めていた(図 51) 。 図51 交通安全教育の実施場所 (全体) 図50 交通安全教育の実施 (全体) 200 いいえ 3% 163 150 はい 97% 100 50 45 43 28 24 36 11 その他 自動車教習所 路上 駐車場 運 ・動場 社外の研修施設 社内の研修所 25 社内の会議室 0 一般企業と運送企業でみると、 一般企業では「従 業員全員」が最も多いが、運送企業では「社有車 を運転する従業員」が最も多い。 また、一般企業に比べて運送企業では「新規採 用従業員」や「事故発生者」が多くなっているの も特徴的である(図 53、54) 。 2 交通安全教育の対象者 第5章 交通安全教育 交通安全教育の対象として最も多いのは「従業 員全員」、次いで「新規採用従業員」 、 「社有車を 運転する従業員」、 「事故発生者」の順となってい る(図 52)。 「事故多発者」については約 4 分の 1 と少ないが、 これについては「事故多発者」は存在しないとい う企業がかなり多い可能性がある。 また、「車両通勤者」については、実施してい る企業は 1 割強であり、今後実施したいという企 業を合わせても 3 割程度で、マイカー通勤者に対 する教育の関心度は低いといわざるをえない。 図52 交通安全教育の対象者 (全体) (複数回答) 120 実施経験あり 今後実施希望 107 102 97 100 89 80 60 57 60 55 53 49 44 42 40 36 34 28 31 40 34 29 32 27 24 17 20 12 6 1 その他 関連会社の従業員 従業員の家族 管理者 事故多発者 26 事故発生者 中高年齢者 若年者 新規採用従業員 車両通勤者 社有車を運転 する従業員 免許保有者 従業員全員 0 3 図53 交通安全教育の対象者 (一般) (複数回答) 80 実施経験あり 70 今後実施希望 64 60 50 44 40 34 42 36 32 29 30 18 18 20 24 21 17 16 15 16 19 14 15 14 10 8 10 0 3 1 その他 関連会社の従業員 従業員の家族 管理者 事故多発者 事故発生者 中高年齢者 若年者 新規採用従業員 車両通勤者 社有車を運転 する従業員 免許保有者 従業員全員 0 3 図54 交通安全教育の対象者 (運送) (複数回答) 60 60 57 実施経験あり 53 今後実施希望 50 43 40 33 29 30 23 20 24 27 25 24 21 20 18 16 15 15 13 13 10 9 10 9 7 1 2 その他 関連会社の従業員 従業員の家族 管理者 事故多発者 27 事故発生者 中高年齢者 若年者 新規採用従業員 車両通勤者 社有車を運転 する従業員 免許保有者 従業員全員 0 0 第5章 交通安全教育 26 ■実施の効果 「教育効果が大きい」とされた項目をみると、 全体では「外部講師による講義形式の講習会」、 次いで「運転適性診断」 、 「交通安全映画 ・ ビデオ の上映」 「事故事例分析」 、 「添乗指導」の順となっ 、 ている。 一般企業は全体の傾向と似ているが、運送企業 は「運転適性診断」と「添乗指導」の評価が高い のが特徴的である。 3 交通安全教育の方法 どのような形で教育を実施したかについては、 全体では「運転適性診断」が最も多く、 次いで「交 通安全映画 ・ ビデオの上映」 、 「外部講師による講 義形式の講習会」、 「事故事例分析」 、 「危険予知ト レーニング」の順となっている(図 55) 。 一般企業と運送企業をみると、運送企業は一般 企業に比べて「添乗指導」が多くなっているのが 特徴的である(図 56、 57) 。 第5章 交通安全教育 図55 交通安全教育の方法 (全体) (複数回答) 200 実施経験あり 教育効果大 継続・ 新規実施希望 157 150 140 138 124 108 110 104 102 100 108 103 90 108 95 90 92 82 71 63 66 68 77 81 73 78 67 57 56 50 4 3 4 その他 事故事例分析 ヒヤリ ハ・ット体 験分析 危険予知トレー ニング ・ 28 添乗指導 運転実技講習会 運転適性診断 交通安全映画 ビデオの上映 外部講師による 講義形式の講習 会 社内講師による 講義形式の講習 会 0 図56 交通安全教育の方法 (一般) (複数回答) 79 80 78 78 実施経験あり 教育効果大 継続・ 新規実施希望 70 63 61 60 60 51 51 49 50 49 55 52 38 40 41 36 37 38 42 41 37 32 30 30 40 28 25 28 27 20 10 2 2 2 その他 事故事例分析 ヒヤリ ハ・ット体 験分析 危険予知トレー ニング 添乗指導 運転実技講習会 運転適性診断 交通安全映画 ・ ビデオの上映 外部講師による 講義形式の講習 会 社内講師による 講義形式の講習 会 0 図57 交通安全教育の方法 (運送) (複数回答) 実施経験あり 79 80 教育効果大 継続・ 新規実施希望 70 62 58 60 64 62 58 54 54 52 50 41 41 41 48 45 44 43 41 33 33 30 30 31 51 40 38 40 31 53 29 20 10 2 1 2 その他 事故事例分析 ヒヤリ ハ・ット体 験分析 29 危険予知トレー ニング 添乗指導 ・ 運転実技講習会 運転適性診断 交通安全映画 ビデオの上映 外部講師による 講義形式の講習 会 社内講師による 講義形式の講習 会 0 ■実施の効果 「教育効果が大きい」とされた項目をみると、 トップは 「安全運転知識に関する事項」 、 次いで「交 通事故発生時の措置に関する事項」 、 「交通法規に 関する事項」 、 「子どもや高齢者、二輪車等の行動 特性に関する事項」 、 「実車を用いた車の死角や車 幅、車高感覚に関する事項」の順となっている。 なお、継続実施や新規実施の要望の多い項目を みると、トップは「安全運転知識に関する事項」、 次いで「交通法規の内容に関する事項」 、「交通事 故発生時の措置に関する事項」 、 「社内規程に関す る事項」 、 「運行前の点検の内容や方法に関する事 項」の順となっている。 4 交通安全教育の内容 第5章 交通安全教育 具体的な教育内容をみると、車両特性やスピー ドが運転に及ぼす影響などの「安全運転知識に関 する事項」が最も多く、次に「交通法規の内容に 関する事項」、「運行前の点検の内容や方法に関す る事項」、「社内規程に関する事項」 、 「交通事故発 生時の措置に関する事項」の順となっている(図 58)。 一般企業と運送企業では順位が少し異なり、一 般企業では、「安全運転知識に関する事項」 、 「社 内規程に関する事項」 、 「運行前の点検の内容や方 法に関する事項」となっているが、運送企業では 「交通法規の内容に関する事項」が最も多く、次 いで「安全運転知識に関する事項」 、 「運行前の点 検の内容や方法に関する事項」となっている(図 59、60)。 図58 交通安全教育の内容 (全体) (複数回答) 150 実施経験あり 教育効果大 133 129 継続・ 新規実施希望 120 108 107 98 100 94 89 87 90 106 79 70 69 60 71 68 67 65 56 58 53 70 69 62 62 60 54 71 59 56 43 41 40 34 30 44 5 その他 エコドライブと交通 安全に関する事項 交通事故 ︵故障︶ 発 生時の措置に関す る事項 車の構造に関する 事項 運行前の点検の内 容や方法に関する 事項 30 実車を用いた車の 死角や車幅、車高 感覚に関する事項 高速道路走行に関 する事項 雨、強風、霧、雪等 の悪天候下におけ る運転方法に関す る事項 子どもや高齢者、 二輪車等の行動特 性に関する事項 車両特性やスピード が運転に及ぼす影響 等の安全運転知識に 関する事項 安全運転管理規程 ︵運航管理規程︶ 等 社内規程に関する 事項 交通法規の内容に 関する事項 0 図59 交通安全教育の内容 (一般) (複数回答) 66 20 10 2 23 図60 交通安全教育の内容 (運送) (複数回答) 60 35 222 第5章 交通安全教育 19 その他 教育効果大 73 エコドライブと交通 安全に関する事項 交通事故 ︵故障︶ 発 生時の措置に関す る事項 47 11 98 10 車の構造に関する 事項 その他 エコドライブと交通 安全に関する事項 交通事故 ︵故障︶ 発 生時の措置に関す る事項 車の構造に関する 事項 運行前の点検の内 容や方法に関する 事項 実車を用いた車の 死角や車幅、車高 感覚に関する事項 高速道路走行に関 する事項 雨、強風、霧、雪等 の悪天候下におけ る運転方法に関す る事項 子どもや高齢者、 二輪車等の行動特 性に関する事項 車両特性やスピー ドが運転に及ぼす 影響等の安全運転 知識に関する事項 安全運転管理規程 ︵運航管理規程︶ 等 社内規程に関する 事項 31 運行前の点検の内 容や方法に関する 事項 実施経験あり 80 17 14 実車を用いた車の 死角や車幅、車高 感覚に関する事項 高速道路走行に関 する事項 23 18 16 20 26 24 26 25 27 27 26 23 雨、強風、霧、雪等 の悪天候下におけ る運転方法に関す る事項 子どもや高齢者、 二輪車等の行動特 性に関する事項 41 41 34 36 40 46 43 45 31 30 30 継続・ 新規実施希望 67 70 車両特性やスピード が運転に及ぼす影 響等の安全運転知 識に関する事項 安全運転管理規程 ︵運航管理規程︶ 等 社内規程に関する 事項 52 51 48 50 25 26 32 30 30 交通法規の内容に 関する事項 0 交通法規の内容に 関する事項 0 30 29 30 36 35 37 35 32 33 39 38 42 39 38 40 39 40 61 62 44 43 44 46 52 51 48 49 50 教育効果大 継続・ 新規実施希望 70 59 56 60 実施経験あり 80 5 外部の支援要請先 交通安全教育を実施する際の外部への支援要請 の有無については、9 割近くの企業が外部に支援 を要請している(図 61) 。 要請先については、 「警察」が最も多く、損害 保険会社への支援要請は 3 割である(図 62) 。 図62 外部の支援要請先 (全体) 150 第5章 交通安全教育 図61 外部の支援要請の有無 (全体) (複数回答) 138 120 90 ない 13% 60 60 37 ある 87% 30 16 8 15 10 その他 損害保険会社 他社の管理者 交通評論家・専門家 大学教授 自動車教習所 80 自動車事故対策機構 図63 外部の支援要請先 (一般) 交通安全協会・安全運 転管理者協会等 警察 0 図64 外部の支援要請先 (運送) (複数回答) 100 35 26 60 82 (複数回答) 56 50 40 60 35 30 40 32 24 20 6 5 13 10 10 10 5 4 3 6 6 2 その他 損害保険会社 他社の管理者 交通評論家・専門家 大学教授 自動車教習所 自動車事故対策機構 交通安全協会・安全運 転管理者協会等 32 警察 0 その他 損害保険会社 他社の管理者 交通評論家・専門家 大学教授 自動車教習所 自動車事故対策機構 交通安全協会・安全運 転管理者協会等 警察 0 21 20 25 6 教育の効果に対する評価 図65 教育の効果に対する評価 (全体) 交通安全教育の効果をどのように評価している かについては、「十分効果があった」が約 4 分の 1、 「まずまず効果があった」が約 3 分の 2 を占め ている(図 65)。 一般企業と運送企業では大きな差異はみられな いが、運送企業のほうが「教育効果に対する評価」 はやや高い(図 66、67) 。 期待したほどの 効果はなかった 9% ほとんど 効果はなかった 1% 十分効果が あった 26% 図66 教育の効果に対する評価 (一般) 図67 教育の効果に対する評価 (運送) ほとんど 効果はなかった 2% 期待したほどの 効果はなかった 11% 期待したほどの 効果はなかった 6% 十分効果が あった 25% 十分効果があった 27% まずまず効果があった 67% まずまず効果があった 62% 33 第5章 交通安全教育 まずまず効果があった 64% 7 教育効果の内容 図68 教育効果の内容 (全体) (複数回答) 120 90 60 その他 安全運転管理 が徹底できる ようになった 60 60 50 50 40 40 30 30 17 10 従業員の安全 意識が向上し た 70 71 37 32 24 20 10 2 その他 安全運転管理 が徹底できる ようになった 従業員の安全 意識が向上し た 交通マナーがよ くなった 34 1 事故件数が減 少した 0 その他 安全運転管理 が徹底できる ようになった 従業員の安全 意識が向上し た 交通マナーがよ くなった 事故件数が減 少した 0 3 80 70 20 41 交通マナーがよ くなった 79 22 54 図70 教育効果の内容 (運送) (複数回答) 図69 教育効果の内容 (一般) (複数回答) 23 60 30 0 80 150 150 事故件数が減 少した 第5章 交通安全教育 教育によってどのような効果があったかについ ては、 「従業員の安全意識が向上した」 が最も多く、 次いで「事故件数が減少した」 、 「交通マナーがよ くなった」の順となっている(図 68) 。 一般企業と運送企業を比べてみると、一般企業 は「従業員の安全意識が向上した」が突出してい るが、運送企業の場合には一般企業ほどの大きな 格差はなく、「事故件数が減少した」や「交通マ ナーがよくなった」 ことへの評価も小さくない (図 69、70)。 ■効果がなかった理由 「期待したほどの効果はなかった」と「ほとん ど効果はなかった」とする回答は約 1 割だが、そ の原因をみると、「マンネリ化していた」が最も 多い(図 71)。 一般企業と運送企業を比べてみると、一般企業 は「マンネリ化していた」の次に多いのが「従業 員の安全意識が欠けていた」だが、運送企業の場 合には「従業員の安全意識が欠けていた」という 回答は 1 社だけである(図 72、73) 。 図71 教育効果がなかった理由 (全体) (複数回答) 20 16 15 10 9 6 2 (複数回答) (複数回答) 12 3 8 2 6 2 1 1 1 1 1 その他 マンネリ化して いた 従業員の意識が 欠けていた 指導員の力量が 不足だった 35 教育内容が不備 だった 0 その他 マンネリ化して いた 従業員の意識が 欠けていた 指導員の力量が 不足だった 教育内容が不備 だった 0 2 4 4 2 4 4 10 8 その他 図73 教育効果がなかった理由 (運送) 図72 教育効果がなかった理由 (一般) 12 マンネリ化してい た 従業員の意識が 欠けていた 指導員の力量が 不足だった 教育内容が不備 だった 0 3 第5章 交通安全教育 5 8 教育実施上で困った点 第5章 交通安全教育 交通安全教育を実施する際に困った点について は、「指導時間の確保ができない」が他の事項に 比べて格段に多い(図 74) 。従来から、教育時間 が確保できないことが、教育実施上の大きな問題 点として指摘されてきたが、その状況はあまり改 善されていないと考えられる。 一般企業と運送企業の差異はほとんどみられな いが、運送企業では「指導員不足」が目立ってい る(図 75、76)。 図74 教育実施上で困った点 (全体) (複数回答) 100 92 80 60 42 40 35 33 31 32 29 25 20 14 13 11 8 その他 従業員の理解、協力 が得にくい 経営者層の理解、協 力が得にくい 予算、費用が不足し ている 外部からの指導員 の確保ができない 36 実技指導できる指 導員がいない 実技指導の場所が 確保できない 指導員が不足して いる 教材が不足している 指導時間の確保が できない 指導カリキュラムが 不備である 安全教育を実施す る体制がない 0 図75 教育実施上で困った点 (一般) (複数回答) 50 43 40 30 その他 従業員の理解、協力 が得にくい 経営者層の理解、協 力が得にくい 11 予算、費用が不足し ている 13 15 6 7 8 10 外部からの指導員 の確保ができない その他 従業員の理解、協力 が得にくい 経営者層の理解、協 力が得にくい 予算、費用が不足し ている 外部からの指導員 の確保ができない 実技指導できる指 導員がいない 実技指導の場所が 確保できない 指導員が不足して いる 教材が不足している 指導時間の確保が できない 指導カリキュラムが 不備である 37 実技指導できる指 導員がいない 実技指導の場所が 確保できない 27 30 5 5 5 18 20 10 3 図76 教育実施上で困った点 (運送) (複数回答) 40 20 3 第5章 交通安全教育 13 指導員が不足して いる 教材が不足している 指導時間の確保が できない 49 50 15 16 20 指導カリキュラムが 不備である 安全教育を実施す る体制がない 0 安全教育を実施す る体制がない 0 14 15 15 19 20 高刑の懲役 20 年という判決も出されている今日、 飲酒運転という悪質・危険な反社会的行為につい ては厳罰で臨むのというのは企業として当然の姿 勢と考えられる。 1 飲酒運転に対する社内的規程の有無 第6章 飲酒運転防止対策 飲酒運転に対する社内的な処罰に関する規程に ついては、4 分の 3 の企業が何らかの規程を設け ている(図 77)。 一般企業と運送企業を比べてみると、一般企業 よりも運送企業のほうが規程を設けているケース が多い(図 78、79) 。 処罰の内容についての自由記述で最も多かった のは「解雇」で、それを明確に回答した企業は3 割だが、「社内規程による」や「賞罰委員会によ る」と回答した企業のなかにも処罰のなかに「解 雇」が含まれていると考えられるので、実際には もっと多くの企業が「解雇」という処分規程を設 けていると考えられる。 「解雇」 以外にも「休職」や「乗務禁止」も多 く、ほとんどは非常に重い処分となっている。ま た、「本人と上司は所内乗り入れ禁止」という回 答もみられたが、これは「マイカー通勤禁止処分」 の可能性がある。 飲酒運転については、懲戒解雇等の厳罰で臨む 企業が大半である。一般論としての厳罰主義には いろいろ是非もあるが、飲酒運転による重大な死 亡事故が多発し、 「危険運転致死傷罪」による最 図77 飲酒運転に対する社内処罰規程の有無 (全体) 規程なし 24% 規程あり 76% 図79 飲酒運転に対する社内処罰規程の有無 (運送) 図78 飲酒運転に対する社内処罰規程の有無 (一般) 規程なし 15% 規程なし 31% 規程あり 85% 規程あり 69% 38 図80 飲酒運転防止対策の有無 (全体) 2 飲酒運転防止対策 飲酒運転防止対策についても、4 分の 3 の企業 が何らかの対策を講じている(図 80) 。 一般企業と運送企業を比べてみると、一般企業 では対策を講じているのが約6割に対し、運送企 業では 9 割以上が何らかの対策を講じている(図 81、82)。 飲酒運転防止対策の具体的な内容の主なものを あげてみると、次のようになる。 <飲酒運転防止のための対策> ◦前日の飲酒の状況確認とアルコールチェッカー による検査(トラック) ◦点呼時にアルコールチェッカーを設置計測、運 転席の点検を定期的に実施(トラック) ◦家族への手紙、点呼時のアルコールチェッカー の使用など(バス) ◦出勤時および帰着時に必ず飲酒検知を実施(タ クシー) ◦飲み会でのタクシー券付与(サービス) ◦宴会等で「車運転」の札を胸につけ飲まない、 飲ませないを実行している(製造) ◦飲酒運転追放宣言書を警察署へ提出(製造) ◦飲酒運転防止対策マニュアルを作成し、全職員 がマニュアルに添って行動し、飲酒運転の防止 を図っている(バス) ◦社内の酒が出る会合には自転車でも参加しない (製造) ◦事故による体験談などを用いて、事故の悲惨さ を認識させる(電気・ガス) 対策なし 24% 対策あり 76% 対策なし 41% 対策あり 59% 図82 飲酒運転防止対策の有無 (運送) 対策なし 7% 対策あり 93% 39 第6章 飲酒運転防止対策 図81 飲酒運転防止対策の有無 (一般) 第7章 交通事故防止に効果的だった対策 1 交通事故防止に重要と思われる事項 交通事故防止に効果的だった対策 第7章 交通事故を防止するために特に重要な事項につ いては、「運転者が安全意識を持つこと」が最も 多く、次いで「経営者が安全意識をもつこと」 「管 、 理者が安全意識をもつこと」 、 「危険感受性を養成 すること」となっている(図 83) 。 一般企業と運送企業のいずれも同様の傾向を示 しており、意識の問題が重視されていることがわ かる(図 84、85) 。 図83 交通事故防止に重要と思われる事項 (全体) (複数回答) 200 175 150 114 111 106 100 75 70 64 68 57 50 38 26 23 23 7 2 その他 7 車両の安全装置を 改良すること 交通取り締まりを 強化すること 事故の悲惨さを認 識させること シートベルトを着 用させること 運転技能を向上さ せること 安全運転知識を向 上させること 40 危険感受性を養成 すること 運転マナーを向上 させること 交通法規を遵守さ せること 罰則制度を強化す ること 表彰制度を充実す ること 安全運転教育を実 施すること 安全運転管理を徹 底すること 運転者が安全意識 を持つこと 管理者が安全意識 を持つこと 経営者が安全意識 を持つこと 0 9 道路環境を整備す ること 12 図84 交通事故防止に重要と思われる事項 (一般) (複数回答) 27 8 12 0 2 交通取り締まりを 強化すること 事故の悲惨さを認 識させること シートベルトを着 用させること 14 運転技能を向上さ せること 安全運転知識を向 上させること 危険感受性を養成 すること 運転マナーを向上 させること 交通法規を遵守さ せること 罰則制度を強化す ること 表彰制度を充実す ること 安全運転教育を実 施すること 10 その他 交通取り締まりを 強化すること 事故の悲惨さを認 識させること シートベルトを着 用させること 運転技能を向上さ せること 安全運転知識を向 上させること 危険感受性を養成 すること 運転マナーを向上 させること 交通法規を遵守さ せること 罰則制度を強化す ること 表彰制度を充実す ること 安全運転教育を実 施すること 安全運転管理を徹 底すること 運転者が安全意識 を持つこと 管理者が安全意識 を持つこと 41 0 交通事故防止に効果的だった対策 19 19 20 29 27 30 安全運転管理を徹 底すること 運転者が安全意識 を持つこと 管理者が安全意識 を持つこと 経営者が安全意識 を持つこと 0 経営者が安全意識 を持つこと 40 第7章 38 37 2 その他 45 50 車両の安全装置を 改良すること 70 車両の安全装置を 改良すること 図85 交通事故防止に重要と思われる事項 (運送) (複数回答) 道路環境を整備す ること 54 55 60 5 2 4 9 10 11 11 道路環境を整備す ること 76 80 15 12 20 39 37 38 40 3 0 57 61 59 60 99 100 80 51 2 最も効果的だった交通安全対策 これまで実施してきた交通安全対策のなかで最も 効果的だったと思われる対策についての質問では、 さまざまな回答が寄せられた。そのなかからいくつ かを紹介する。 交通事故防止に効果的だった対策 第7章 ■一般企業 ◦交通安全週間等で朝、門にて社員に声かけをする (製造) ◦「社用車管理規定」を制定(2003 年 9 月) ①「車両管理台帳」の作成 ・ 備え付け ②「運転者台帳」の作成 ・ 免許証コピー添付を義 務付け 以上により、社用車利用における社員の意識が向 上した(製造) ◦交通事故報告書の提出、 交通事故を起こした本人、 上司との再発防止会議などを通じて運転者の安全 意識が向上したこと(製造) ◦従業員全員が順番で朝の出勤時に駐車場前などに 立ち、従業員の運転状況のチェックを行うこと (製 造) ◦教習所での事故多発者教育(製造) ◦支店訪問時にメンバー全員の前で現在の事故発生 件数、内容、対策の報告。同乗による指導 (製造) ◦ヒヤリハット報告とヒヤリマップの作成(鉱業) ◦各作業所へは最盛期ともなれば 50 〜 60 社の下請 けも毎日入場してくるので、朝礼等を通じ交通事 故防止を啓発する(建設) ◦日々の安全に対する意識づけとして朝礼時の呼称 確認やヒヤリハットの朗読、朝の見送りなど(電 気・ガス) ◦安全運転適性検査を定期的に受験し、所属長がそ の個人の適性に合った安全運転指導を行う。災害 になる手前の交通違反を撲滅することで、交通災 害を防止する。違反は自己申告により違反の都度 所属長へ報告し個別に指導する(電気 ・ ガス) ◦毎日の朝礼や終礼において、子どもやお年寄りの 行動特性や最近の事故事例等の交通安全講話の実 施および、自家用車運転時の速度について安全へ の意識づけを、これでもかというくらい実施する (サービス) 42 ■運送企業 ◦ヒヤリハット事例を運転乗務員に紹介すること で、事故の起こしやすい場所がクリアになり注意 を促すことになる(トラック) ◦安全会議等の機会に事故クレーム発生者当人の説 明、反省、再発防止策を発表させる(トラック) ◦ヒヤリハット検討会を週 1 回実施。車両の抜き打 ち検査(ブレーキペダル、クラッチペダルの正常 の有無) (トラック) ◦全員で社歌を斉唱し、全員に無事故の意識を持た せ、教育の大切さ、教育を受ける喜びを再認識さ せ輸送の品質を向上させる取組みを毎年 1 回 5 月 に行っている。そのときは役員から乗務員、事務 員、 全社員の 9 割が 1 泊参加している(トラック) ◦確認呼称を実施し、交差点付近の事故発生防止に 効果あり(発進時、右左折時、車線変更時、交差 点通過時など) 。多めの車間距離等、これらの点 について添乗教育キャンペーン時にチェックをし ている(トラック) ◦年数回、構内においてバック練習などを実施。そ の結果、約 3 年間バック事故がない(トラック) ◦半期毎に事故惹起者をブロック別に集め安全教育 を施したこと(トラック) ◦社内に教育センターを設立し、新入社員全員は研 修が修了した後に配置(トラック) ◦全体会議で社内の事故全般や保険料の高騰を話 し、事故を抑制をするように働きかけた(バス) ◦ KYT (ミーティング) によるグループ討議により、 運転者に安全運転意識を持たすこと(バス) ◦発車時、後退時にしぼっての事故防止に取り組ん だ(バス) ◦実技・車両で路線を走行。添乗し、ひとつひとつ 徹底指導を行っている(バス) ◦指差呼称の徹底(バス) ◦添乗指導が効果あり。ターミナル交差点等で調査 するなど、乗務員自身が緊張感を持って運転する ことが効果がある(タクシー) ◦各事故防止運動実施の際、管理職が出庫時に積極 的な声かけを実施し、 本日の事故防止重点目標(ス ローガン)の確認を行ったこと(タクシー) ◦チャート紙の徹底した点検による個別指導。事故 発生者の毎月 1 回の事故者研修会(タクシー) ◦ 100 日作戦のキャンペーンを行い、結果をグラフ (星取表)にし、個人と各班ごとに無事故を目指 して競争する(タクシー) Actual Cases 企業の交通安全対策事例 交通安全対策に熱心な企業へ訪問して聞いてきた、実際に 取り組んでいる活動や交通安全対策への考え方などをここで 紹介いたします。 自社内における現在の交通安全への取り組みや考え方との 比較、またはこれから行う交通安全対策の参考となれば幸い です。 A社 業種 :製造・販売 創業 :1947 年 車両台数:60 台 従業員 :142 名 社長が安全運転管理者として月に数回程度、 ●交通安全活動 また副安全管理者が毎週月・金の朝礼時に交 通安全に関する訓話をしている。各支店でも ・ 2002 年5月からすべての車両でデイライト 同様に安全運転管理者が行っている。 運動を実施している。 <管理> ・小集団活動として、部門毎の交通安全運動を ・運転日報は週に1回まとめて提出させてい 行い①会議等の場で安全運転指導、②会社出 る。 発時に「安全運転で行って来ます」を呼称。 ・社内でセーフティラリーをドライバー5人1 ・年に1回会社の費用で全従業員の運転記録証 組で行っており、無事故・無違反の各組には 明書をとって事故・違反等を確認している。 ・交通安全に関する情報は、新聞・テレビ、警 交通安全紅白餅を配っている。 察・交通安全協会、損保会社等から入手して ・自主的に部署単位で交通安全活動を行って いる。 いる(出掛ける際に事故防止のための呼称を したり、金曜日に車両の清掃チェックを行う <研修・教育> 等)。 ・教育教材として、自社作成の事故記録簿、交 ・家族ぐるみの交通安全運動の期間を設定して 通安全協会から発行されている小冊子を活用 いる。 している。 <表彰制度> ・警察関係者による講習会を年2回行ってい ・各支店単位で半年間無事故・無違反の場合、 る。 特注の交通安全紅白餅を当該支店全従業員へ ・社内講師による年3回の講習会を実施し、う 配っている。 ち2回は若年者層(30 歳以下)を対象、残 ・毎年6月の創立記念日に、1年間無事故・無 りの1回は運転記録証明書の内容に応じて対 違反のドライバーに対し表彰状と高価な商品 象者を決めて講習会を行っている。 を授与している。 ・個別指導を機会あるごとに行っており、特に ・毎年、交通安全協会へ表彰の申請をし、該当 危ないと思われる従業員については逐次重点 するドライバーは表彰されている(優良運転 的に教育している。従業員自身は会社の(交 者表彰の上申) 。 通安全に関する)風習を充分知っているが、 個別指導をすることでさらに効果がある。個 ●交通安全教育・管理 別指導は定期的ではなく機会があるごとに、 副安全運転管理者が行っている。 <訓話> ・部署単位(課)ごとの指導も重要視しており、 ・交通事故はゼロにできるという信念のもと、 部門長から指導するよう指示をしている。社 44 有車だけでなく、私有車による違反・事故に 者層による事故が多い。 ついても厳重な注意を促している。 ・社長の交通安全に対する姿勢が社内に浸透し ・従業員へ常に与えている注意は、①交通ルー ているので大きな事故はないが、細かい事故 ルの厳守(特に速度、一時停止、信号) 、② はなくならない。ここ3年間で人身事故はゼ 特に冬季は車間距離確保、③デイライト・ ロ、物損は1〜5件(自損事故も含む) 。 シートベルトの完全実施である。 <対応> ・特に厳しく指導している内容のひとつに「車 (車外、車内)の清掃」がある。当社は社有 ・事故分析を行い、原因や対策を掲示したり、 車が 1 人1台体制であり、清掃については考 朝礼等で報告するなど注意を促している。 課査定がある。毎週月曜日に副安全運転管理 ・事故分析結果は、社長へ報告し、事故発生者 者が車両の点検をしている。安全運転は車両 への個別指導、自社交通事故統計、社内安全 の管理が基本であり、車を綺麗に保管してい 運転講習資料に活用している。 ・事故の内容によっては2〜3週間の運転禁 る従業員は事故を起こさない。 ・社内講習会では事故内容と判例を教えてい 止、また1ヶ月間の社外清掃をさせている。 る。事故の損を教え、損をしない運転をする ・事故を起こした社員には、過失が小さくても よう指導している。若者は自分に降りかかっ 朝礼で他の従業員へ詫びを入れさせ、その後 てくることについては真剣に話を聞く。事故 事故の原因、対策を安全運転管理者(又は副 を起こせば我が身に降りかかるということを 安全運転管理者)が報告している。 教え込んでいる。 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと ・新入社員には入社前の新入社員研修から交通 安全に関する教育を行っている。安全教育は その時期から開始しないといけない。 ・ドライバー個人の安全意識が重要と考える。 ・入社1年目は毎月1回業務終了後にビジネス マナーと交通安全の教育を行っている。入社 安全意識を高めるには、経営者の意識や会社 1年目は教育にとって大事な時期。 の体制をよく分からせ、それらを意識に植え つけさせることが重要。言葉による指導だけ ・自分が事故を起こしたら全従業員に迷惑がか でなく、半強制的にでも飴と鞭を使い分ける かるという意識が高まっている。 べき。しかし、最後には本人の意識の高さに ・若年者層の従業員に対する安全運転の意識高 よるところが大きい。 揚が難しい。 ・経営者・会社が交通安全のアピールを継続す ●事故への対応 ることで意識が高まり、事故が減少する。 ・運転記録証明書の取得による、違反・事故内 <現状> 容に応じた個人指導に効果があった。 ・多発している事故は「追突事故」 (場所・原 因:交差点付近・だろう運転、直線道路・ブ レーキの踏み外し) 。 ・事故の発生はほとんどが日中で、最近は若年 45 B社 業種 :トラック事業 創業 :2001 年 車両台数:60 台 従業員 :90 名 ●交通安全活動 ●交通安全教育・管理 ・年間の活動として、春夏の交通安全運動、月 <訓話> ・大きい会社ではないので、社長からの訓話は 1回の安全会議・グループ長会議を行ってい 普段からマメにできている。 る。 ・「安全活動は安全広報なり」 と考えており、 「貼 ・運送会社のドライバーは全員が一同に集まる る、配る、見せる」ようにすることが重要で ことがないため、出発時または出先からの電 ある。言葉で言うだけでは効果がない。 話点呼等で 1 対 1 の接触をしている。 ・広報グッズはオリジナル(手作り)が良い。 材料は色々なところから集め、創意工夫をし <管理> てグッズ(飾りやデコレーション)をつくる。 ・道路交通法等や事故等の情報収集はインター ドライバーからアイディアを出させて作るの ネットからの入手が中心。入手した情報はド も効果がある。いかに意識、雰囲気を盛り上 ライバーが一番集まるところに張り出し、見 げ、ドライバーの安全意識を動機づけるか、 たドライバーには判を押させている。そうす 交通ルールを思い出させるかである。 ることで教育したという公的な資料(教育資 料)にもなる。 ・カウンセリングは効果があると思うが、カウ ・点呼等コミュニケーション時にはドライバー ンセラーが内部(社内)の場合は効果は薄い。 の体調は必ず聞いている。また、悩み事等も ・小集団活動はグループ長の質によるが、活動 聞いている。その場では答えないことが多い 自体は効果がある。 ・表彰制度は効果があると思う。 が、とりあえず聞くだけでよい。思い詰まっ ・家庭への働きかけとして、給料明細袋に会社 たときドライバーから言ってくる。また、職 の状況報告を中心とした内容のメッセージを 場仲間の噂にも注意し情報収集をしておくべ 入れている。 きである。 ・地域活動として、子どもの交通安全教室、道 路ミラー磨きや横断歩道での旗振りなどをし <研修・教育> たことがある。 ・一堂に集まれる時間がなく集合研修ができな いため、個人個人または少人数での教育をお ・安全性評価事業の認定は顧客等にアピールで こなっている。教材はその時その時の情報を きるので価値はある。 活用している。ドライバー講習会は教習所等 で外部講師にさせると効果がある。同じ内容 の話でも社内より外部からの指導のほうが効 果がある。 46 <対応> ・新人やベテランという区別なしで個々に指導 ・事故が起きた場合、当事者本人を呼んで面談 している。「点呼シート」の項目に沿って個 指導し、その後安全会議を行う。 別に点呼、指導している(48 頁参照) 。 ・事故の内容は点呼および掲示板により社員全 ・毎月の給料日に給料袋に安全に関する内容を 員に伝えている。 中心としたメッセージを入れて渡している。 ・自社の事故件数は「多い」と思っていること 社員から返事も来る。 で引き続き対策にも力が入る。 ・当社のような大きくない事業所でも、適性診 断、添乗指導、ヒヤリハット・事故事例分析 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと は行える。 ・飲酒運転防止対策として、1 年に 1 回、運転 記録証明書を提出させて酒気帯び等違反があ れば解雇としている。点呼時のチェックにア ・安全運転を管理する者がやらなくてはなら ルコールチェッカーは使っていない。ある程 ないことをしっかりと全て実行することが基 度の信頼関係は大事だと考えている。 本。これをやっていればドライバーとの信頼 関係が築け、事故の削減成果もあがる。管理 ●事故への対応 者とドライバーのお互いが関心をもってやっ ていくことにつきる。管理者が「信頼関係を <現状> 築ける自分自身であるか」 がポイント。また、 ・1年に 1 回くらい重大事故(人身事故)があ ドライバーへも積極的に情報提供をすること る。 も重要。 ・事故件数の推移 2003 年度:23 件、2004 年 ・点呼によって会社側がドライバーに関心を 度:15 件(人身 1 件) 、2005 年度:8 件(人 もっていることを分からせること。普段の点 身 1 件) 呼は簡単に済ますが、週に 1 回程度は座らせ ・事故の特徴は、営業所構内での後退時接触、 て管理者が対面で質疑応答している。会話の 料金所での接触事故または追突事故という些 内容はバージョンを変え、簡単な話をよく聞 細な事故が多い。 き取り、短い時間にいかにコミュニケーショ ・事故惹起者の特徴は、入社 1 年半程度のドラ ンをとるか。運送事業者は点呼しか接触が イバーの 6 割が軽微な事故を起こしている。 ないので「点呼」は特に重要。例えば、風邪 また、入社 10 年以上のドライバーが比較的 を引いていたら帰社したときに「治っている 大きい事故を起こしている。 か?」と声をかける等「会社はちゃんと見て ・時間帯は、土日、朝方に多い(営業所構内の いる」ということを分かってもらう。 事故)。運送車両が少ないことによる油断が ・経営者、管理者が安全意識を十二分に持つこ 原因と推測している。 と。いかに関心を持って口うるさく教育を継 ・転勤時期に事故が多い。新しい職場に対する 続するか。子供のしつけと同じである。 心理的な面での不安が原因と思われる。転勤 時期は特に安全に注意せよと指令を出してい る。 47 B社 〈点呼シート〉 乗務前点呼・確認・指示事項 月 日 社番 行先 点呼執行者 被点呼者氏名 運行前の日常点検 1. 出庫時の状態 体調は 2. 心配事・悩み 3. 睡眠時間 なし 4. 飲酒 ビール 焼酎 5. 服装 6. 免許証 7. ヘルメット・安全靴 8. キーヒモ 9. ETCプレート貸与 10. 受領サインをしましたか 11. ネームプレート装着 12. あなたはプロドライバーですか 13. 今日の自己申告注意事項 顔色は 時間前 日本酒 ウイスキー 14. 伝達指示事項 乗務後点呼・確認事項 月 日 社番 行先 点呼執行者 被点呼者氏名 1. 帰庫時の状態 体調は 顔色は 2. 車両の異常 3. 運行中の事故・違反・ トラブル・荷物事故 4. 最高スピードは? 5. 休憩・場所? 6. 連続運転時間は? 7. 運行中にヒヤリ・ハットしたことがありましたか 8. ETCプレート返却 9. ネームプレート返却 10. 受領サインをしましたか 11. その他報告引継ぎ事項 48 C社 業種 :トラック事業 創業 :1892 年 車両台数:830 台 従業員 :660 名 ・各店所の取り組み実施状況は毎年 1 回、中央 ●交通安全活動 安全衛生委員(労使)と安全部の担当者が全 店所を回り帳票類にて確認している。また、 ・「安全白書」を毎年作成し、 事故の発生状況、 随時アンケート等でも確認、 調査をしている。 分析等を全社員へ示している。 ・日常のコミュニケーションとして KYT を含 ・年度ごとに作成される安全衛生管理方針の年 むミーティングを最低でも月 1 回実施するよ 頭所感に交通安全に関する社長の訓話を掲載 う指導している。 している。 ・研修場所は公共外部施設を活用しているが、 会場の確保は簡単ではない。 ●交通安全教育・管理 ・研修は社内講師による講義形式の講習会が中 心である。その他、外部講師(警察等)によ <管理> る講習、 ビデオ上映講習、 運転適性診断を行っ ・社有車の持ち帰りは原則禁止。 ている。 ・各種情報は、交通安全ジャーナル、自動車 ・講義内容は「人間のもつ特性やスピード超過 管理等の交通安全専門誌からの入手が主であ が運転に及ぼす影響…」 「子どもや高齢者、 る。関係団体からも情報を得ている。 二輪車等の…」 「実車を用いた車の死角…」 ・関係会社については、年 2 回安全担当者が集 が教育効果あり。 まる場で、各社の活動を発表し、情報交換し ・添乗指導は雇い入れ時と事故時に行ってい ている。 る。 ・運転日報は毎日提出させている。 ・教材は外部のもの(適性・性格診断、交通の ・全社レベルの事故防止運動は、全国交通安全 危険予知的なもの)も活用している。 運動等に合わせて年 4 回実施している。 ●事故への対応 <研修・教育> <現状> ・各店所主催による年 1 回の安全運転講習会を ・ 事 故 発 生 件 数 2003 年:4 件 2004 年:13 行い、講義・ビデオによる研修をしている。 件 2005 年:5 件 その際は安全部の担当者が土日等の仕事がな ・多い事故形態は「追突」で、見込み違い、判 いときに店所に出向いて安全に関する講習を 断ミス(前の車が止まると思った、曲がると 行っている。 思った等)が原因。 ・警察関係者にも交通安全に関する講話を行っ てもらっている。 ・朝礼は部署により毎日〜週 1 回実施している (最低でも週に 1 回は指導) 。 49 C社 <対応> 数に反映してくるため継続した指導・教育が ・事故発生時は、事故審議会を開催し、事故防 重要である。 止策について検討のうえ担当部署で事故分析 を行い、原因や対策の掲示、朝礼等で報告す るなどで全ての従業員に周知し注意を促して いる。 ・事故発生後、速報(電話、ファックス)で 安全部へ報告→事故報告書の提出→インター ネットで全店所へ連絡し、注意を喚起してい る。 ・事故分析の活用:事故発生店所での事故分析 →総括支店(店所安全委員会)で運転者同席 のうえ事故審議会(事故調査、原因分析、対 策)→中央安全衛生委員会(年 4 回)の報告 事項として審議。これとは別に当該運転者お よび上長を本部に呼び、その都度教育してい る(事故惹起者特別教育) 。 ・事故者への指導は添乗教育を行い、下車勤務 は店所の指導員が行っている。 ・飲酒運転防止として、朝の点呼時にアルコー ルチェッカーで点検している。違反をしたら 懲戒。 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと ・事故事例分析はその都度行っているが、各店 所で 5 〜 6 人で行う事故事例分析は、事故を 起こした当事者、 車両、 場所等全員がよく知っ ている内容のため自分に置き換えやすく、効 果が大きい。他の事例だと他人事になってし まう。 ・事故防止に重要なのは、経営者や管理者が安 全意識を持つこととドライバーの危険感受性 を育成すること。 ・交通安全教育の取り組みへの効果は即座に目 に見えてこない。1 〜数年遅れで事故発生件 50 D社 業種 :トラック事業 創業 :1943 年 車両台数:5,608 台 従業員 :5,429 名 (ドライバー 3,690 名) ・最近の若者との(同士の)コミュニケーショ ●交通安全活動 ン方法の確立が重要と考え、各事業所の管理 者に自分の情報網を作らせ、点呼時に得た情 ・安全手帳を作成し、それぞれの事故防止に関 報を話のネタに会話を重ね、心を開かせてい する諸規則、その他心得を箇条書きにして 1 る。 項目ごとに読みやすく記載している。 ・交通安全情報は交通安全専門冊子およびイン ・事故防止は労使で取り組んでおり、事故防止 ターネットから収集している。 委員会等は労使で運営している。 ・毎週2〜3回の教育機会を設けさせており、 ・パンフレットや社内報(事故の報告が掲載さ 教育方法は各事業所に任せている(ビデオ教 れる安全日誌)を電車内のぶら下がり広告程 育、個別指導、実車を使ったベテランドライ 度の分量で事故の内容等についてインパクト バーからの技術の伝承─冬の峠道の走り方、 のある書き方で紹介している。 視線の置き方─等) 。 ・精神面のケアは各事業所の管理者の日々の管 ・研修の大きなテーマは本社が決める。細かい 理にゆだねている。事故を発生させた従業員 内容(タイミング、時間)は事業所に任せて は、金銭、人間関係(男女、家庭内) ・健康 いるが、資料等は本社で作成している。 などに問題・悩みのある場合が多い。 ・事故の分析結果によって教育する対象者を絞 り、効率的に行った結果、事故の件数が 10 <表彰制度> 年前と比較して 3 分の 1 に減少した。 ・無事故期間が 5、10、15、20、25、30 年で表 ・研修の重点対象は新規採用、若年者で、次に 彰している。その都度に報奨金、20 年で海 熟年者(中堅クラス)としている。 外旅行を与えている。 ・研修教材は手作り。従業員へインパクトを与 ・交通違反等、社内規定を一定回数違反したド えるには目で訴える画像(動画)が一番効果 ライバーは、2 泊 3 日の交通教育を自社の教 がある。数値等は大まかでもよい。材料は自 育研修所で受講(座学、実車、夜間等)させ 社の事故を中心としている。警察等へ問い合 ている。月間5〜6人程度が受講対象となっ わせれば事故防止につながる資料提供は相談 ている。 にのってくれる。 ・警察関係の講師は、管理者には役に立つが、 ●交通安全教育・管理 職業ドライバーへは内容のポイントがずれる こともあり、他で起きた出来事に聞こえ心に <教育・研修> 響かず、ドライバーへの教育効果は少ない。 ・日常のコミュニケーションは、朝礼、点呼で ・飲酒のチェックは口頭で確認している 行っている。規定項目以外にドライバーの健 (チェッカー使用は義務ではない) 。 康・精神状態の確認を重要視している。 ・飲酒運転が発覚した場合は解雇としている。 51 D社 ●事故への対応 <現状> ・事故件数は 10 年前の 3 分の 1。うち人身事 故は2〜3件でここ数年ほぼ横ばいの状態。 ・過失相殺があるもの、金額の大小に限らず賠 償費用が発生したものは全て有責事故とカウ ントしている。 ・ 2005 年には事故件数が 0 件の月が 2 回あっ たことを考えると、1 件でも発生する月は件 数が多いと考えている。 ・発生頻度が高いのは交差点での事故。 <対応> ・事故の発生現場を写真、作図によりパソコン の投影資料とし、ドライバーへの事例研究に 活用している。 ・本社のスタッフが事故類型別に事故現場写真 等の CD-ROM を作成し、全国支店へ巡回し て教育している。 ・事故があって当たり前という考え方では駄 目。必ず事故を「ゼロ」にできる。 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと ・繰り返しの安全教育が重要だと考え、 「そこ にいるのが家族であれば安全運転するだろ う、相手を思いやる心を持って運転せよ」と 言い続けている。 ・心の安全教育および道徳心を養う教育が必 要。 52 E社 業種 :トラック事業 創業 :1950 年 車両台数:4,000 台/日が稼動 (協力会社分含む) 従業員 :2,561 名 各事業部の下に現場に一番近い営業部(5 〜 ●交通安全活動 6 箇所の事業所を管轄する)があり、安全指 導員をおいている。また、本部部署とは別に ・リーフレット作成提供等、具体的な指示を出 各事業部ごとに安全指導センターを設置し、 している。現場だけで対応するのは難しい。 現場経験が長いドライバーや班長等を実技中 ・標語ポスター掲示、リーフレット配布を行っ 心の講師として、事業所主催の研修に派遣し ている。ポスターについては年末に標語募集 ている。さらに各事業所には日常の添乗指導 をし、毎回 4,000 〜 5,000 件程度の応募がある。 ができるよう安全運転指導者を 1 人おくよう コンクールを行い優秀作品を標語として採用 に指導している。 し、図書券を渡している。 ・社有車の持ち帰りは絶対禁止としている。 ・原則として全社の全車両にデジタコをつけて いる。安全に関していえば点数評価(100 点 <研修・教育> 満点)が出るので、ドライバー同士で競い合 ・教育資料は交通安全専門誌等から流用して作 う等、広い意味での意識向上に効果があがっ 成している。また、トラック協会で発行して ている。導入当初の 1 ヶ月程度はドライバー いるトラック事故事例を入手している。 ・交通安全関係情報の入手は、小冊子やイン から不満が出ていたが慣れれば問題ないよう ターネットから行っており、警察関係からの である。 入手は少ない。 ・毎月発行の社内広報誌で、家族にも読んでも ・毎月本社から「安全・QA ニュース」を出し らえるような交通安全に関係の特集を組むこ て、事故事例集、再発防止方法などを絵や写 とがある。 真で紹介している。小集団活動を熱心にやっ <表彰制度> ている事業所は壁に張り出したり回覧する等 ・無事故期間が 1,3,5 年の時に個人と事業所 している。 に対して報奨金を渡している。 ・自社のドライバーに教育する場合は、協力会 社のドライバーも参加できるよう門戸を広げ ●交通安全教育・管理 ている。 ・本社や事業部から各事業所に出向いて出張 <訓話> 教育を行っており、各現場の路上で添乗指導 ・「事故を起こせば仕事がなくなる」を事業所 等を実施している。指導者の養成は、自社研 等で話している。 修所の専任スタッフで、全国トラックドライ バーコンテストの優勝者や元教習所指導員が <管理> 行っている。 ・現場の運行管理者は係長クラス。全国6つの ・ドライバーの意識向上のために、最低限でも 53 E社 月に1回、職場懇談会という形で研修を行っ めると 25 〜 30 件/年程度。件数カウントに ている。会社の情報(経営上の問題等)を前 は自損事故を含んでいる。状況に応じて延着 半に報告し、後半に交通安全に関して事故事 等を事故件数にカウントしている。 例を使った KYT 等を行っている。給料日等 ・事故の内容:交差点付近の事故が多く、わき の営業所への戻りが早い日に行っているよう 見等の不注意、 「だろう運転」が原因。自社 である。 車両が直進、相手車両が右折のパターンが多 い。また、追突も多い。 ・ 15 〜 20 の協力会社の管理者を集めた安全協 ・事故の特徴:若年者は車両感覚がつかめない 議会をつくり、 上記同様に研修を行っている。 こと、ベテランは「だろう運転」が原因によ ・新人研修、入社 1 〜 3 年後研修を自社研修所 る物損が多い。 で行い、それ以外は各事業所単位で教育を 行っている。 <対応> ・一般的な教育(社内・外講師による講習会、 ・どんな小さな事故でも毎月役員会報告となっ 交通安全ビデオ上映、運転適性診断、運転 実技講習、添乗指導、KYT、ヒヤリハット、 ている。発生状況、怪我の具合、営業所での 事故事例分析等) を行っており、 事業所によっ 対策、事故図(パソコン等で自前で作成)等 ては所轄の警察を活用している。 を説明・報告している。その翌日には各ブ ・「添乗指導」と「呼称運転」は教育効果が大 ロック会議(部長会)で報告され、各管轄事 きい。呼称運転は会社規則でドライバーの義 業所へおりていく。3日程度で役員会報告が 務としている。 全営業所へ伝わる。 ・日常のコミュニケーションは通常の朝夕の点 ・被害事故(無過失事故)でも報告させ、対策 呼の他、荷物の積み降ろし等の終了時や往復 会議で分析している。 「人」と「環境」と「管 路途中の決まったドライブインから、時間管 理」の点で分析し対策を策定している。 ・事故惹起者には個別の面談に加えて自社の研 理も兼ねた電話連絡時にとっている。連絡す 修所で教育を1週間受けさせている。 る場所を決めておけばある程度の時間管理が ・各事業所で起きた事故についての分析等は、 できる。 ・会社への連絡に携帯電話は使わせておらず、 事実の正確な記載、恣意的な報告書の作成防 会社に自動的に繋がるテレホンカードを発行 止、専門的な視点からの分析をするため、事 し使わせている。 業部の人間を立ち会わせ報告書を作成してい る。 ・アルコールチェッカー検査を出発前、帰社時 に行っている。プライベートも含めて飲酒運 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと 転が発覚した場合は懲戒。 ●事故への対応 ・ 35 年継続している呼称運転は、漫然運転が <現状> なくなり効果がある。声を出すことによって ・事故件数:ここ 5 年間は横ばいで、自社 800 確実な安全確認ができ、確認する習慣づけが 台分では 3 〜 4 件/年、協力会社分車両を含 できれば事故は減る。導入以降、事故件数は 54 3 年単位で半減した。車内は 1 人なので、声 を出しても恥ずかしくなく呼称しやすい。 ・小さな事故でも簡単に済ませてはいけない。 経営者や所長等が「これだけの台数が走って いるのだから事故の 2,3 件はしょうがない」 と考えていると「自社は事故を起こしても平 気」とドライバーに思われてしまい事故が減 らない。「事故は絶対に無くすという姿勢」 を見せるべきである。 55 F社 業種 :バス事業 創業 :1942 年 車両台数:486 台 従業員 :850 名 ●交通安全活動 ●交通安全教育・管理 ・ポスター等を掲示しているが、それだけで効 <訓話> ・社是に「みんなで無事故」 、その他に「無事 果があるとは思えない。他の指導とあわせる 故の誓い」があり、毎日朝礼時に唱和してい ことにより効果が増大すると思う。 る。 ・ポスター掲示、パンフレット配布よりも口頭 指導のほうが相手の反応をみることができて ・カンパニー制の担当役員が、年 4 回の交通安 よい。運送業界の場合、ドライバーは読み書 全運動時に営業所 10 箇所へ出向いて朝に訓 きすることを嫌がる傾向がある。口頭指導や 話をしている。また、節目に運行管理者 50 映像を見せるほうが効果がある。 名と意識的に会話して意識啓発をしている。 ・年に 2 回程度、従業員の家族へ会社から健康 ・社長の安全への考えは「人を絶対怪我させて 管理やアルコール関連の内容について手紙を はいけない」 、 「安全は何事にも優先する」で 出している。 ある。 ・地域活動として、横断歩道での交通安全活動 <管理> (旗振り等)に参加している。 ・運行管理者は各営業所 4 〜 8 人(統括運行管 ・表彰制度があり、効果はあると思う。半年に 理者 1 名を含む) 。 1 回、対象者には報奨金を支給している。 ・運行管理者をサポートする班長制度(乗務員 ・エコドライブを実践することで荒い運転にな 7 名につき班長 1 名)を設けている。 らないことから、安全性も高まっている。年 に 3 回、1 日かけてエコドライブ研修も行っ ・ドライバー同士の情報交換は各自で休憩時に ている。最初はアイドリングストップだけ 行っている。会社として正式な場は設けてい だったが、プロとして運転方法の変更に取り ない。しかし、この情報交換はかなり効果が 組んでおり、エンジン回転数の低減やエンジ あると認識している。 ・点呼の場面は一番重視しており、日常の指示 ンブレーキの活用等積極的にエコドライブを 命令は点呼で行っている。また、休憩時に事 行っている。 故多発者、勤務態度の悪い者等問題のある乗 ・運転記録証明を年 1 回とっているが、バスド 務員を中心に「声がけ」をしている。 ライバーは他業種のドライバーと比較してプ ・点呼・声がけは、決められた内容以外にその ライベートも含めて圧倒的に違反者が少ない 人の特性に応じた内容で行っている。 ので、事故・違反の抑止にはあまり効果がな ・全員の出勤時間が異なること、また旅客事 い。重大な事故・違反がないか確認のために 業者の場合は運行管理者 1 人と運転者 1 人の とっている。 相対で点呼をすることになっているので、個 56 人的な内容のコミュニケーションをとりやす ・小集団講習会は実施しているが、 「しゃべり」 い。 だけでは理解度が低くなるため、映像教育に 切り替えた。オリジナルの資料を作ってパ <研修・教育> ワーポイントで教育している。また、運転し ・指導目標を毎日変えて指示している。点呼時 ているところをビデオに撮り、それを当該運 にその日のテーマに沿った内容で、本人から 転者に見せ再度教育指導している。 自分なりの目標を考えさせている。 ・運転動作は瞬間的な判断が必要で、静止画を ・研修は年 2 回の任意参加業務研修会のほか、 長時間見せると答えが分かってしまうため、 強制的に月 2 回、営業所のドライバー 10 名 KYT は 3 秒程度見せて危険を予知させてい 程度を集めた定期的な研修を実施している。 る。KYT はできれば動画を見せて教育する これは 3 年に 1 回は必ず受けるような仕組み のが望ましく、そのように取り組んでいる。 になっている。定期教育の場所は自社会議室。 KYT 感覚は人によって違うので効果は人そ ・任意参加業務研修(1 時間30分程度)はト れぞれである。 ピック的な内容が中心である。出席率は全ド ライバーの 1 割程度。研修会の場所は各営業 <教材・情報> 所会議室。 ・バス事業用の教育教材は少なく、一般ドライ ・外部講師は、損保会社から毎年 1 回来ても バー用教材では役に立たないので、自社で作 らっている。以前には自動車教習所や警察関 ることが求められ困っている。指導者の倫理 係者から講師を招いていたが、講話の内容が 観、あるべき姿、道徳観を教えることもなか バスのドライバー用になっておらず、ポイン なか難しい。 ・車間距離の保持は、交通事故原因の要素に トがずれているのでやめた。 なっていると考えているので、車間距離が測 ・新人へは、基礎研修 4 週間、路線研修 2 週間 れるような仕組み(機材)が簡単に手に入れ の合計 6 週間で実施している。 ばよい。 ・事故惹起者への教育は 4 種類あり、 毎月 1 回、 ・ドライブレコーダーは、バス業者として活 前月事故を起こした要教育者には小集団教育 用できるものが現在ない。バスは乗用車やト を 1 日かけて実施している。 ラックとは指導ポイントが異なる。 ・人身事故、逆突、追突の事故惹起者には聴き 取り指導を義務づけている。1 日から数日か ・道交法改正等の情報はバス協会から入手して けて面接をし、事故当日の仕事開始前から時 いる。交通安全専門誌からの情報は研修資料 系列に聴取して、その内容を記録して原因究 に活用している。 明、再発防止の教育をしている。また、聴き ・科学的な視点(心理学等)での専門的な情報 取り記録等には指導者、惹起者ともに捺印さ がほしい。それらをドライバー向けに我々が せている。 アレンジして研修等で伝えたい。 ・自動車事故対策機構の運転適性診断をもとに 運行管理者が個別にカウンセリングをしてい <飲酒運転防止> る。添乗指導も行っており、個人指導が一番 ・飲酒チェックは運行前の点呼時にアルコール チェッカーで確認している。営業所で証拠を 効果がある。 57 F社 握りつぶさせないように、アルコールチェッ <対応> カーの結果は本部にほぼリアルタイム(1 分 ・小さい事故の初動対応は各店所の営業課で 以内)に伝わるようにインターネット経由で 行っている。事故分析・フィードバックは本 管理している。現場(運行管理者)では多少 社の労務指導チームが担当している。 ・分析結果は事故当事者へのフィードバックと のことならバスを出してしまいたいという心 教育資料として利用している。 理が働くが、それを防ぐためにそのような対 ・当社から 1 円でも費用が出た事故はすべて乗 応となっている。 ・アルコールチェックに引っかかるのはほと 務員に責任のある事故として対応している。 んどが前日の「残り酒」である。また、飲酒 なお、 クレームは事故とは別勘定にしている。 以外でもチェックに引っかかることもあるた ・事故の内容は全て次の日の朝には役員・営 め、疑義が生じた場合は血液検査を行うこと 業課長へイントラネット経由で報告・配信さ となっている。 れ、ドライバーへは点呼時に情報が提供され ている。また、事故以外のヒヤリハットも役 ・飲酒・酒気帯び運転は絶対に許されない行為 員等へ報告されている。 であり、飲酒・酒気帯び運転をした場合は懲 ・静止物接触事故の原因は、分析の結果、「バ 戒解雇。 リアフリー対応の新しい車両は、ツーステッ ●事故への対応 プ車両とハンドル・運転席の位置が 15 セン チ程度右へずれて、運転席が下がっているた <現状> め、目線の位置がずれて車両感覚がつかみに ・バスの人身事故は車内転倒事故がほとんどだ くい」ことであった。 が減りつつある。 ・注意喚起で少し効果があがったが、気をつけ ・後退時接触事故と静止物接触事故の件数が昨 るポイントを正確かつ具体的に伝えてやらな 年度比で増加した。今年度これらを減らすべ いと、どこに気をつけてよいか分からず、効 くキャンペーンを行った結果、現在まで 4 割 果は上がらない。 程度減っている。 ・バスは咄嗟に、また簡単に相手から逃げられ ・物損事故は昨年度増加してしまったが、今年 ないため「当てられ事故」が多い。動いてい は事故全体でみると昨年度比 2 割減である。 れば過失が発生し、事故としてカウントする ・物損事故で多い原因は、後退時接触事故の場 ので、乗務員からは不満が出る場合もある。 合は「急ぎ行動」 (特にベテランドライバー) 。 ・同業他社と比べて自社の事故件数は多いと 休憩に早く入りたいという心理が原因であ 思っている。ただし、事故のカウント基準が る。発生場所は車庫内のみ。 違う(当社は事故カウント基準は厳しい)の ・事故発生の時間帯は昼休憩を終えたときが多 で一概にはいえない。 く、事故多発者の特徴に業務経験年数は関係 ない。午前中はほとんどなく、最後の 1 便で 事故を起こすことも多い。原因は急ぎ行動。 58 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと ・企業の風土づくりが重要である。上司も部下 も安全への考え方は一緒で終始一貫していな いといけないが、 その調和をとるのが難しい。 ・管理者全員が同じことをいうべき。安全は正 しい行動を身につけさせないとできない。 ・一番効果があった方法は、乗務員に声をかけ 正しい指導をすること。各種方法を試した結 果これが効果があった。バスドライバーは運 転技術を持っているので、メンタル部分の教 育が重要と感じている。 ・教育を継続することで効果があがっており、 ヒヤリハット自体が少なくなっている。 ・経営者が安全に対して信念を持ち一生懸命 やっていても、現場の運行管理者が本気で経 営者の思いをドライバーへしっかり伝えてい ないと意味がない。企業の交通安全は運行管 理者がキーパーソンである。 59 G社 業種 :住宅建設販売 創業 :1967 年 車両台数:34 台 従業員 :41 名(ドライバー 39 名) ●交通安全活動 ●交通安全教育・管理 ・運転記録証明書を年 2 回取りつけ、運転免 <研修・教育> ・ 2 年ほど前から毎朝礼で交通安全に関する 許証の有効期間や違反・事故の確認をしてい 「今日の取り組み」を社員が日替わりで順番 る。 に発表している。前日の無事故・無違反の確 ・交通安全を中心とした社内広報誌(A4 サイ 認報告を習慣づけている。 ズ1枚)を毎月発行している。季節の話題や 運転免許更新時期の呼びかけ、事故・違反の ・入社 3 年までの若い従業員の事故や違反が多 情報を掲載している。読んで、見てもらうた いことから、入社前(11 月から)から新人 めの工夫としてお薦め本の紹介なども掲載し 教育を月に 1 回行っている。KYT 等の安全 ている。 運転教育用ビデオを見せてレポートを提出さ ・交通安全協会の無事故・無違反チャレンジコ せたり、入社時に 1 日かけて外部実技研修を ンテストに全員で参加している。自社独自で 受けさせている。また、配属時に安全運転決 も期間を設定して無事故にチャレンジしてい 意宣言を提出させている。 る(無事故・無違反チャレンジカレンダー: ・全社員については、年に 1 回、警察の講話を 期間 3 ヶ月) 。コンテストに参加することで 受けさせている。また、春秋の全国交通安全 自分たちが率先して無事故・無違反を達成し 運動時に社内講師による集合研修受講の機会 ようと意識が盛り上がり、また自分達の努力 を設けている。損保会社からも講師を招いて の結果が分かりやすい。 おり、社内講師が言っても効き目がないこと を社外講師(損保)に言って聞かせてもらっ ・交通安全運動期間中に地域活動等に参加させ ている。 ている(社休日に新人および事故違反者が参 ・ KYT ビデオ等は定例の合同会議(全社員) 加)。 において適宜見せている。 ・表彰制度は過去 1 回行ったが、 「無事故無違 ・日ごろの活動において同乗者が運転指導を 反、安全運転で当たり前」との考えにより廃 行っている。危険運転者については会社に報 止した。 告される。 ・管轄警察署交通課と交通安全協会と連携・協 ・研修教材は一般的なものを使い、自社用にア 力して取り組んでいる。同管轄内の他社安全 運転管理者との交流(安全運転管理者の外部 レンジして使っている(自社の事故事例等)。 委員会、研修会等)で情報交換をしている。 ビデオや無事故・無違反チャレンジカレン ダー等は損保から提供されたものを使用して いる。 ・業務用車両は個人の車両を使用している。私 60 有車のほうが社有車よりも大事にされる分、 である。 事故は減った。燃料代は全額補助だが、社内 ・交通事故防止には経営者とドライバーが共に 違反点数に応じて補助制限がある。違反が重 安全意識を持つこと、事故の悲惨さをドライ なれば車両使用の制限がかかり、最終的には バーに認識させること、運転マナーを向上さ 解雇される。 せることが重要である。 ・飲酒運転防止対策は機会のあるときに講話等 を行っている。 交通事故・違反後の処分 ●事故への対応 1. 交通事故 a. 加害事故について ① 事故発生後、1ヶ月間車両使用禁止(この間 必要な交通費は、個人負担)。 ② 年間2回目の事故発生で、3ヶ月間車両使用 禁止(交通費の扱いは上に同じ)。 ③ 年間3回目の事故発生で、1年間車両使用禁 止(交通費の扱いは上に同じ)。 ※ ②・③でいう年間は、最初の事故発生日を起 算日とする。 b. 被害事故について 被害事故であっても年間3回以上の発生の場 合、事故を誘発させる原因を本人も持っていると 判断し、1ヶ月間の車両使用禁止とする(この間 必要な交通費は半額個人負担)。 <現状> ・被害事故を含めてカウントしている。 ・交差点でのわき見・車間距離不保持による追 突、接触が目立つ。 <対応> ・事故情報はまず日報で社内に伝わる。 その他、 社内通達、月刊広報誌でも伝わる。事故分析 結果は社内通達や合同会議で全社員に伝えて いる。当該事故者には個別指導をしている。 2. 交通違反 ◦違反を犯せば、必ず報告する。報告なくして後 日、運転記録証明書等で発覚した場合は車両の 使用禁止を命ずる。 ◦報告書は「始末書」の形式で社長宛に所属長を 通じ、安全運転管理者を経て提出する。 ◦年間2回の違反で、車両使用禁止1ヶ月間、3 回違反で車両使用禁止3ヶ月。 ※ ここでいう年間は、最初の違反日を起算日と する。 ・事故、違反をした人は休日を使って安全運転 実践研修(ビデオ搭載車での実車訓練、ディ スカッション形式での受講者の運転上の危険 動作チェック)の受講が義務づけられている。 研修費用は自己負担(16,000 円程度) 。 ・事故の過失が大きい人は一定期間の車両使用 禁止(詳細は右の「交通事故・違反後の処分」 参照)。 3. 事故者、違反者は その年の春、秋に実施されている交通安全運動 期間中のキャンペーン、もしくは交通安全大会に 出席し、ボランティア活動する。 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと 4. 車両使用制限を受けたものは、 使用制限後の車両許可1週間前には社内免許制 度として外部の安全運転実技講習受講を義務づ け、教習所教官の合格判定があれば車両使用を許 可する。 ・過去に起きた人身死亡事故(自社は無責)の 話をすると効果があり、身近(自社)におき た事故の話であること、事故内容そのものよ り、その後の対処についての大変さを理解す 5. 本規定は運転免許証所有の全ての社員に適 用する。 以上 ることで事故防止意識が高まった。 ・安全運転教育は組織のカラーを採用時点から はっきりと示し、また継続して取り組むべき 61 H社 業種 :タクシー事業 創業 :1950 年 車両台数:108 台 従業員 :275 名 (ドライバー 244 名) ・全員研修の場で社長から表彰され、特に本 ●交通安全活動 人が気をつけていることを一言発表させてい る。 ・死亡事故(1999 年)がきっかけで 2001 年か <健康管理、家庭への働きかけ> ら大々的に対策をはじめた。 ・普段の生活態度について教育している。点呼 ・知覚不全事故を撲滅し、知覚万全の方法を具 時に寝不足等を外見から判断。事故の大きさ 体的に示した。 で原因が「居眠り」か「よそ見」かが分かる。 ・毎月、「社内ニュース」を営業所に貼り、事 故の重点目標(多かった事故をゼロにする) ・家族あっての乗務員という考えから乗務員の や道交法改正関係を掲載している。グッズ、 家族(奥さん、お母さん等)へ誕生日に花を ポスター、旗は常に掲げている。乗務員の意 贈っている。無事故の乗務員も家族や周りが 識の向上効果というよりは「会社は常に交通 あるから無事故でいられると言っている。費 安全について考えているんだ」ということを 用は年間 80 万円くらい使っている。 ・頼れる同僚が多ければ精神面でも仕事の不満 アピールするためである。 ・運転記録証明書を年 1 回、乗務員の同意の上 がなくなると考え、 6 年前に指導教官制度(新 会社の費用でとっている。それにより安全運 人等の愚痴などを聞く)を作ったが、人材不 転について忘れていることを思い出させてい 足によりこちらの思うように機能していな る。 い。新しい仕事を始めて壁にぶつかることも あり、 それが事故につながることが多いので、 <経営・活動理念> 指導教官制度を充分に機能させたいと考えて ・「安全を全てに優先させる会社」 「お客様を いる。 大切にする会社」 「風通しの良い会社」を経 ・その他の精神衛生面として、組合と会社と協 営理念としている(2004 年の秋から) 。 調し、2 ヶ月に 1 回話し合いをして小さい労 ・「事故をゼロにする」という意識は社内の乗 働問題をつぶしている。 務員以外のスタッフでは高まっており、ほぼ ・健康面では、再検査該当者に対して役員が面 完璧に浸透している。あとはいかに全てのド 接を行っている(産業医よりも役員のほうが ライバーに強い信念を伝えられるかが課題。 従業員のことを分かっているから) 。 全てのドライバーに伝わればその部分は成功 ●交通安全教育・管理 と思っている。 <表彰制度> <研修・教育> ・表彰制度あり(2002 年度に変更) 。年間 300 ・運行管理者 5 人が乗務員への直接の教育係と 万程度の予算(64 頁参照) 。 なっている。役員が集合教育(明け番研修) 62 点データがあればありがたい。 で事故件数や事故分析結果を用いて啓蒙して いる。 ●事故への対応 ・翌日、翌々日の点呼で発生した事故を伝達す る。乗務員採用は養成乗務員のみ(1996 年 から)のため、新人教育には特に力を入れ、 <現状> 新人研修カリキュラムの中で会社の幹部全員 ・些細な事故(細かい傷)まで自損事故扱いに してカウントしている。 が各々時間を持ち、会社の考え方を植えつけ ている。集合研修(年に 6 回実施)では事故 ・事故件数の推移……2001 年度:218 件、2002 事例、ドライブレコーダーを使った KYT 訓 年度:174 件、2003 年度:149 件、2004 年度: 練を行っている。新人に対しては 13 日間の 165 件。 ・新人が多く入った年(2004 年)に事故件数 研修を行い、そのうち 3 日間は事故に関する が増えた。事故は 1 年未満の新人(リストラ ことを教育している。 等で転職してきたタクシードライバー未経験 ・他に行っている研修は、社内・社外講師によ 者)が圧倒的に多い。 る講義形式講習会、自社のウイットネスで作 成したビデオによる集合研修、事故者・高齢 ・後方不確認による事故が一番多い(車線変更 者・新人を対象とした運転適性診断、新人・ 時、方向転換時:タクシー特有の事故)。前 事故惹起者を対象とした運転実技講習(事故 方不注意による事故(追突)の原因は「わき 惹起者は教習所) 、新人に対する添乗指導、 見」が多い。 ・自損事故の原因は、 「会社の車」だから傷つ 事故事例分析など。なお、自社以外の講師の けてもよいと考え、大事にしないこと。全額 方が研修効果があがる。 自己負担にすれば間違いなく減ると思うが、 ・各種教育は基本的に自社の会議室(数人入れ 組合との関係でやっていない。事故を起こ る程度の広さ)を利用している。 さない人は会社の車も大事にしており、可愛 ・人(性格など)を見ながら教育・研修しない がっている。 と効果が出ない場合がある。したがって基本 的に教育・研修はオーダーメイドである。 <対応> ・飲酒運転防止については、点呼時にアルコー ・事故に関する情報は教育・指導結果を含めて ルチェッカーで確認をとっている。 全て社長まで報告が行くようになっている。 <教材・情報> ・事故惹起者は直ちに乗車勤務を禁止し、翌 ・研修教材は自社ウイットネスのデータ等以 日に教育を受けさせている(原因追求、対策 外、タクシー特有の事故を収めたビデオ、日 検討、カウンセリング) 。なお、乗車してい 本交通心理学会大会での発表内容も参考にし ない教育中でも内勤として給料は支払ってい ている。 る。また、事故多発者は最終的には解雇とし ・交通安全関係の情報は、運輸局・交通安全協 ている。 会・タクシー協会から入手し乗務員へ伝えて ・飲酒運転はプライベートでも懲戒としてい いる。他に交通専門誌からも情報を得ている。 る。 ・人身だけでなく物損事故について事故多発地 63 H社 ・これまで一番効果があった対策は、乗務員よ ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと りもスタッフがその気になること。そしてそ れを実践したこと。また、事故はなくせるも のと考えること。 その考えがあって始めて グッズが生きる。 ・どんな教材を使おうが、ドライバー 1 人ひと ・自分なりの交通安全の考え(方法)を 1 つで りが事故を起こしてはいけないという気持ち を持つこと、 乗務員の意識付けが重要である。 も持っている人は、他の交通安全対策ができ このような考えを分かっている人が増えたか るし、安全に関する全てにつながっていると ら事故が減ってきていると思っている。特に 思う。事故多発者は事故を自分以外のせいに 新人は事故を「対岸の火事」と思っている。 することが多く、運が悪いとか他人事のよう みんなが分かってくれるまで会社のトップが に考えている節がある。 「安全第一」、 「安全を全てに優先させる」と いう旗をおろさず、掲げ続けることが大事。 無事故コンクール表彰制度 1.表彰基準 実車 2 万キロごとに表彰 ・期間を定めない ・違反、苦情については別途定める 2.表彰の時期 2 ヶ月 1 度の全員集会において、受賞基準(資格)達成者をその都度表彰 3.表彰金額 実車 2 万k 2 万円 以降 2 万kごとに 1 万円加算 4.実施要領 ① 各人に「チャレンジ手帳」を配布 ② 毎月「月次ランキング表」により実車キロを各人に配布中の「チャレンジ手帳」に追加記入し常に自分の 持ちkを明確にしておく。 ※ この部分の事務管理が極めて重要になる。毎月の実績が追記されていないということは無事故記録に関心 を持たせていないことにつながる。 ※ 担当が代わろうが代わるまいが絶対継続する事務体制が必要 備考 事故惹起の場合、手持ち実車キロを事故の内容、程度によって減算。従って、1 回の事故でゼロに戻らないこ とがある。なお、違反・苦情については内容により手持ち実車 k より減算する(事故調査委員会開催)。 64 I社 業種 :自動車部品製造業 創業 :1946 年 車両台数:業務車両 42 台 マイカー 856 台 従業員 :880 名 いる。 ●交通安全活動 ●交通安全教育・管理 ・従業員の意識高揚策として、月 1 回の交通安 全ニュースの発行、セーフティステッカーの <管理> 車両貼付、交通安全掲示板への交通安全宣言、 ・安全運転管理は、 方法(体制、 制度) 、 車、 人(能 ポスターの掲示、パンフレットの配布などを 力向上、意識高揚)の 3 つと考えている。 行っている。これらは忘れたことを思い出さ ・冬用タイヤ装着義務期間の制定をし、随時 チェックしている。 せる効果がある。 ・管理を十分に行うため、業務車両にはドライ ・交通安全標語を募集して優秀作を表彰してい ビングアドバイザー(レコーダー)を取りつ る。 ける方向で検討中。 ・エコドライブ活動を行い、部署単位でエコド ・社内へはフルノーマル車でないと乗り入れを ライブ競争をさせている。運転者にとって、 禁止している。 何かしら運転を意識することは、運転のマン ネリ化を防ぐことができる。 <研修・教育> ・業務用車両運転許可制度を設けている。学科 ・全国交通安全運動時に管理職への教育を行っ と実技のテストに合格した者のみに運転を許 ている。 可している。 ・新人教育、春秋の全国交通安全運動の教育、 ・ 100km を超える運転業務の場合の交代運転 安全運転体験学習、 安全運転ラリーへの参加、 制度を設けている。 ・ DAY ライト運動を導入している。 教習所での研修(社内免許保持者対象)。全 ・マイカー通勤者に通勤経路のヒヤリハットポ 従業員へは KYT(65 頁参照) 、全職場で集 合研修。 イントを報告させて 「通勤道路の危険マップ」 ・主に安全運転管理者向け講習に、警察、損保 を作成し、従業員へ配布している。 会社から講師を呼んでいる。内部講師より効 ・地域への貢献として、通学路等への乗り入れ 果あり。講師も使い分けが必要。 禁止、看板設置等を行っている。 ・一般の従業員は交通安全教育を受ける機会が <交通安全組織> 少ないので、いかに機会を増やして安全意識 ・社長の下の安全衛生委員会内に交通部会(労 を保たせるかがポイントである。 使半々)を設けている。トップ自ら交通安全 ・交通安全情報の入手は、警察、交通安全協会、 に関して訴える機会は多い。 交通安全専門誌からで、特に交通安全専門誌 ・ 4 半期ごとに業績報告会を全社員に行う際 の比重が大きい。安全運転管理者講習時の資 に、その場で交通安全を訴える機会を設けて 料として活用している。 65 I社 ・全従業員へは携帯電話、ナビの危険性の呼び 齢別・時間別等による原因究明および当事者 かけを、営業所勤務者・外部派遣者には違法 指導の資料として利用している。研修の資料 駐車対策を指導している。 (KYT 研修等)にも使っている。研修資料は ・危険感受度診断テストを定期的に実施してい 自社事故データによるオリジナルで、外部資 る。新人や事故惹起者にも受けさせている。 料はほとんど使っていない。 ・講話よりもビジュアル的なもののほうが集中 ・事故対策に運転記録証明書を活用できないか 力も持続し効果あり。内部研修資料もそのよ 模索中。活用できれば違反者を集中的に研修 うにしている。 できる。安全運転ラリーに参加すれば運転記 ・事故がなくならないのは、意識の程度と失う 録が入手できるので、意識づけができる。研 ものの有無の違いによる。 修対象者はある程度絞らないと効果がない。 ・飲酒運転防止対策に「飲酒運転事故処分ガイ ・被害事故(人身)が多いので、防衛運転(か ドライン」を制定した(67 頁参照) 。 もしれない運転)について教育する必要を感 ・事故による考課への反映、処罰等はない。ま じている。 た、無事故・無違反表彰制度はないが今後の ・事故調査において、ドライバーの記憶が曖 導入を検討している。 昧であるため真の事故原因に迫れないことか ら、ドライブレコーダーの導入を検討してい ●事故への対応 る。 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと <現状> ・マイカーにおける事故も報告させている。加 害、被害の関係なく報告(カウント)してい る。事故カウント基準は本人責任金額 20 万 ・会社が率先して実行しているところを示すこ 以上、全治 7 日以上の怪我(業務車両は本人 とが重要。また継続することも重要だが、た 過失1%以上) 。 だし、時代にあった対策をするべきで、交通 ・事故件数(人・物合計) ……2002 年度:10 件、 安全意識が低下しないよう(マンネリ化しな 2003 年度:16 件、2004 年度:10 件。 いよう) 、常に対策にも変化が必要。新たな ・多発している事故(形態・原因)……交差点 施策、教育、啓発活動等いろいろと試してみ での出会い頭・安全確認不足、交差点手前で ることが重要である。 の追突・前方不注視やわき見、駐車場内自損 ・事故者予備軍(違反者)を研修することが重 事故・周囲の確認不足。 要である。 ・ 1 月、2 月に多い(雪の影響) 。年齢層は 10 ・事故の感性を高めることが重要だと思うが、 代および 20 代が多い。 その効果的な方法が見つからないのが悩みで ある。 <対応> ・事故が発生した都度交通安全ニュースが発行 される。 ・事故分析結果は、危険箇所マップの作成、年 66 「飲酒運転事故処分ガイドライン」制定 事故の程度 当事者 処分内容 管理者 (部・課長) 飲酒運転で物損事故をし た場合 出勤停止 譴責 飲酒運転で人身事故をし た場合 諭旨解雇 譴責の上減給 飲酒運転で死亡又は重篤 な人身事故をした場合 懲戒解雇 経営者 担当役員…譴責 安全担当…譴責 社 長…譴責の上減給 担当役員…譴責の上減給 安全担当…譴責の上減給 社 長…譴責の上減給 譴責の上減給 担当役員…譴責の上減給 安全担当…譴責の上減給 ※飲酒運転は、酒気帯び運転・酒酔い運転の程度を問わず ※就業中、就業外の区別を問わず 67 J社 業種 :バス事業 創業 :1928 年 車両台数:176 台 従業員 :289 名 (ドライバー 204 名) 間中に全職員を対象に事故防止研修会を 2 時 ●交通安全活動 間、1 日 2 回、2 日で 4 回に分けて行ってい る。年末年始については、各職場で 20 名弱 のグループをつくり、エコドライブ運動へも ・交通安全活動については労働組合とは協力体 参加している。グループごとに研修会を行っ 制をとっている。 ・組合側と管理者が各 5,6 名集まって月に1 ており、管理者が同席し、指導している。今 回「事故防止対策会議」を開催し、事故分析 年は入社 10 年前後のドライバーを対象に別 や安全活動について話し合っている。 メニューでの対策を考えている。 ・エコドライブ運動をやっても事故防止につな ・意識づけのためポスターや看板、旗を掲げて がっているかは不明。 ただし、 考え方は変わっ いる。 てきており、重大事故は発生していない。 ・地域活動については、グループによるバス停 ・講習会の内容は、時代にあった研修を取り 付近の清掃や交通安全運動期間に役員、組合 入れている。最近は高齢者事故が多いこと 代表が横断歩道に立つようにしている。 から高齢者疑似体験をさせたり、救急救命に ・小集団活動での研修は、グループごとにバラ ついては全職員に資格を持たせている。車両 バラの頻度で行われている。 火災やバス・ジャック対応などもとり入れて ●交通安全教育・管理 いる。警察交通課長や損保会社社員、航空機 の客室乗務員などを講師として呼んで講習を <管理> 行っている。年 4 回のうち 2 回は自社の事例 ・「今日も一日無事故で帰って来い」と点呼の を中心とした内容にしており、参加者に自分 後に声をかけている。これの積み重ねが無事 自身で考えさせ、 発表させることもしている。 故につながる。 ・研修では、ぜひ触れておきたい事故事例の概 ・出庫点呼時は自主点呼をしている。個人のそ 要をペーパーで配って、 「気をつけるポイン の日の目標を自分で決めて言わせている。特 ト」 、 「なぜ起きたか」等を討議させてグルー にテーマは決めていない。 プごとに発表させている。 ・朝出勤時に免許証等の提示とともに顔色な ・受講者側に「また同じ研修か」と思われてし どをみて健康チェックをしている。顔色を まうこと、研修内容のマンネリ化を危惧して チェックするために、点呼場の照明はかなり いる。ドライバーから必要と思われる研修内 明るくしてある。 容をヒアリングしており、ヒヤリハット研修 などの要望があがっている。ドライバーにヒ <研修・教育> ヤリハット、原因、対策を報告させ、まとめ ・新人の教習期間は1ヶ月とっている。 たものを研修会で利用し、ヒヤリハット地図 ・事故防止について年 4 回、交通安全運動期 にも反映させた。 68 ・人身が関わればその日のうちに報告される ・事故多発者にはシミュレーション室で研修さ せている。自社で起きた事故を素材にして研 が、軽微な事故は数日かかることがある。 修資料を作り、プロとして「ここまで」やっ ・事故の件数(人・物損) :2002 年度・28 件、 て欲しいということを伝えようとしている。 2003 年度・24 件、2004 年度・25 件。ほぼ横 ・教育効果は事故件数の減少として目に見えて ばい。自損事故や僅かでも過失のある事故を いる。ドライバーの意識が向上している。 カウントしている。自社の件数目標と比較し ・古い人と新しい人の情報の交流はドライバー ては多いと感じている。人身事故は車内事故 がほとんどである。 控え室で行われている。新人には控え室で積 極的に先輩たちと話すように指導している。 ・事故の特徴は、車内転倒事故、特に高齢者の ・損保会社によるドライブレコーダーによる診 転倒事故が多い。その他に固定物への接触事 故がある。 断は自分の運転が分かり、効果もあって評判 ・事故惹起者の特徴としては、嘱託職員(ドラ がよかった。 ・無事故・無違反継続期間が 1、3、5、7、10、 イバー)の事故が多い。バスに慣れていない 13、15 年で表彰している。最高で数万円の ための事故がここ 1、 2 年多発している。また、 商品券や旅行券を渡している。また、無事故 入社 10 年前後のドライバーの事故が多いが、 バッジ(年数に応じて色が変わる)も渡して 自社の場合は特定の職員であることが多かっ おり、これらについては効果は出ている。 た。 ・自社の事故のほとんどが漫然運転で、ぼんや <飲酒運転防止> りして事故を起こすことが多い。気持ちの問 ・アルコールチェックは出勤時、出庫時、入庫 題が多い。 時に酒を飲まない、飲めない人にも実施して ・家庭問題などが常に心にひっかかっているド おり、出勤 9 時間前の飲酒は禁止している。 ライバー等による心理面が原因で起きた事故 家族宛に健康管理、特に飲酒運転防止の要請 が多発した。しかし、個人の問題のため、会 文を送付し家庭でも協力してもらっている。 社としてはその部分に手を出すことができな また、チェックは 2 人体制で行っているが、 い。 個人の水筒等の中身までは確認できない。 ・今のドライバーは昔のドライバーのようなプ ・飲酒運転は懲戒、酒気帯び出勤は当日の乗務 ロ意識・プライドが希薄である。 停止、さらに当日を含み 5 日以上出勤停止と なる。出勤停止の間に処分を検討する。道交 <対応> 法上は問題とならない程度でも検知器の針が ・事故が起きたら速報を出し、併せて毎月の 事故防止目標に加えている。また、大きい事 ふれたら上記処分を行っている。 故については壁新聞にも掲示し、他のドライ ●事故への対応 バーへは朝の点呼時に必ず伝えている。 ・職場に組合を代表する事故審議委員がおり、 <現状> 事故の当該者への個人指導後は、事故者に代 ・事故報告は些細な内容(軽微なもの)まで経 わって事故担当者と話し合いながら事故者の 営トップに報告される。 過失や処遇を決めていく。 69 ・月に1回、管理者が集まって会議をしている が、その場でも対策を含めた報告がなされる。 ・十数年無事故でいることの大変さを承知して いるので、例えば 15 年間無事故者がたまた まミラーを壊した場合などは事故とカウント しない等、場合・相手に応じて処置も変える ことがある。ただし事故の原因や対策をしっ かりと把握することが前提である。杓子定規 的に対応するだけではなく、今後の教訓とし て活かしてもらうよう対応している。 ・小さな事故でも萎縮させるような対応をする ことは望ましくないと考えている。 ・営業所長が事故分析をして報告書を作成して いる。事故担当が内容を確認し、過失がある 場合は当該ドライバーを呼んで指導する。 ・先ず営業所長がドライバーを指導教育し、そ の内容が運輸管理係の事故担当にあがってく る。あがってきた資料をもとに事故防止のた めの指導をしながら原因と対策を検討し、場 合によってその場にドライバーを呼んで指導 している。その後、今後の対策を組合側の代 表と話して決めている。 ・事故多発者には段階的な処分・指導教育を行 い、最終的には給料カットとなる。 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと ・これだけ継続して教育しているから、これく らいの事故で済んでいる。 ・教育を継続することでドライバーの意識が向 上し、変化してきたことが事故の減少につな がる。 70 K社 業種 :トラック事業 創業 :1974 年 車両台数:約 2,000 台/日が稼働 従業員 :1,036 名 習会を行っている。ビデオ上映、KYT、事 ●交通安全活動 故事例分析の教育効果が大きかった。 ・教材は自社で作成したものを中心に活用して いるが、全体的に教材不足である。ビデオは ・安全衛生委員会を設置し、労使合同で取り組 古いものしかないので、損保会社やトラック んでいる。毎月 1 回開催している。 協会、警察から最新のものを借りている。 ・対外的に安全への取り組みをアピールできる ・各種教育を行うことによって従業員の安全意 よう安全性評価事業 (Gマーク) の認定をとっ 識が向上した。 ている事業場もある。 ・従業員は基本的にフレックス出勤のため各事 ・交通安全情報の入手は、インターネット、新 業所では毎日昼礼を行い、月 1 回は全員で朝 聞、交通安全専門誌、警察からであるが、主 礼を行っている。 にインターネットや交通安全専門誌からの入 手が多い。 ・他の会社に比べれば安全に対する意識、雰囲 ・従業員の家族から標語やポスター等の募集を 気はあると思う。 している。 ●交通安全教育・管理 ●事故への対応 <訓話> <現状> ・安全衛生週間には社長からの訓示あり。ビデ ・前方不注意による一般道での追突事故、交差 オ、テープ等で全社に流している。 点での接触事故が多い。 ・担当役員が機会ある度に訓話等をしている。 ・社内目標を事故ゼロ件としているので、自社 <管理> (協力会社分を含む)の事故件数は多いと考 ・管理は本社総務部門が行っている。 えている(2004 年度:47 件(人・物含む))。 ・社用車の持ち帰りは原則認めていない。 ただし、自社社有車レベルでは年間 3 件程度 の事故件数である。 <研修・教育> ・事故者は新人(入社 10 年以内)が多い。ド ・ドライバーへは常に次の注意を与えている。 ライバーの入れ替わりが激しいことが理由と ①防衛運転、②運転中の携帯電話使用禁止、 推測している。 ③スピードの出しすぎ注意、④適正な車間距 <対応> 離、⑤脇見運転禁止 ・重大事故は必ず社長まで報告がいく。 ・年に 1 回は交通安全教育をするよう全事業所 に指示している。研修場所は社内会議室等。 ・事故分析をし、総務安全掲示板で毎月の事故 ・社内・社外講師(警察、損保会社)による講 事例報告をしている(場所、状況、原因、対 71 策等)。 ・事故件数については従業員の半数程度は知っ ている。社内掲示板、中央安全衛生委員会で 伝達している。 ・社有車で事故を起こした場合 1 ヶ月間の乗車 停止となる。 ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと ・事故防止には経営者、管理者、ドライバー全 員が同じ安全意識を持たないといけない。 ・危険感受性を高めることが重要である。 ・事故の悲惨さを認識させることが重要であ る。 72 L社 業種 :食品製造販売 創業 :1889 年 車両台数:220 台 従業員 :500 名 (ドライバー 250 名) ス会社に自社の事故データがあり、安全指導 ●交通安全活動 の専門スタッフもいるため、安全運転講習で それらを活用して具体的な指導をしてもらっ ている。本部での事故の分析結果は研修時に ・運転免許証を月 1 回確認して、公私を含めた 使っていない。 違反・事故のヒアリングをしている。チェッ ・交通安全に関する各種情報もリース会社から クの結果は毎月本部に報告されている。運転 入手している。 記録証明は年 1 回とっている。 ・安全管理担当者からは、事故件数や道交法改 ●交通安全教育・管理 正、飲酒運転違反防止等の啓発として、これ らの情報を随時各部署の所属長(支店長等) <訓話> にメール発信をし、各従業員へ伝達されるよ ・本部長からの交通安全の訓話は、月 1 回の営 うにしている。情報としては末端の社員まで 業会議の中で行われている。 伝わっている。 ・ドライバーとのコミュニケーションは各職場 ・実際に自分たちが出向いて研修をすることは の朝礼で行っている。 ほとんどない。本部がそこまでやると現場で は「やらされ感」を受けるので、できるだけ <管理> 現場の所属長等に行ってもらっている。所属 ・車両はすべてリースしている。効率化の観点 長からの直接指導のほうが効果がある。本部 で社有車の持ち帰りも認めている。運転日誌 は黒子でよい。 は書かせているが、提出は月に 1 回。乗った ・今後は交通安全に関するかわら版の作成を考 分について現場では毎日つけさせている。 えている。 ・飲酒運転が発覚した場合は懲戒となる。 <研修・教育> ●事故への対応 ・新人に対しては入社から半年間の研修期間中 に継続して行っている。配属1ヵ月後にもう 1 度フォロー研修として教習所に行かせてい <現状> る。学生時の自家用車と社会人の営業車の運 ・ 1 年に 2 〜 3 人、決まった人が複数回事故を 起こしている。 転では質が違うので早い段階で意識・確認さ ・ピーク時の事故件数と比較すると半減した せている。 が、年間 30 件は一般企業と比べても事故率 ・節目(5、10 年目等)の研修は個別にはやっ は高い。 ていない。従業員は年に 1 回程度研修を受け ・事故を起こしている人は、かつては若者が圧 ている。 倒的に多かったが、去年あたりからは 30 代 ・社員研修はリース会社に依頼している。リー 73 L社 後半の事故が増えてきているので、原因を解 ある程度個別事例紹介はやっているようであ 明していかなければならない。新人研修およ る。 び年1回の研修受講だけでは交通安全意識が ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと 希薄になってきているのかもしれない。 <対応> ・会社の車だからぶつけても良い、事故を起こ ・車両事故内規を決めている(下記参照) 。 ・事故場所は圧倒的に駐車場が多い。多少でも しても良いという意識があると運転マナーの 過失があれば事故としてカウントしている。 向上は望めない。ドライバー本人の意識づけ が重要。 ・プライベートの事故、違反までは立ち入って ・厳しい内規以外では、車内の整理整頓をさせ いない。 ・ 1 年以内に 2 度以上事故を起こすような事故 ることで運転マナーの向上に繋がった。状況 多発者は教習所で 1 日かけて安全運転研修を は本部の者が各営業所に随時チェックをしに 受けることになるが、罰ではなく安全運転へ 行っている。 汚い車両は事故率が高かったが、 の意識づけの意味で実施している。 その後は事故件数は減少傾向にある。 ・教習所での研修はテクニックではなく、 「な ・運転する当事者の意識が一番だが、意識づけ ぜ事故を起こしたか」という精神的な部分か をするにあたって所属長等上司の意識が重要 ら原因をつきとめてくれるのでよい。 である。 ・事故の分析や事故者本人に対する事情聴取は 本部でやっている。分析結果 (事故の傾向等) はメール等で各事業所へフィードバックして いる。 ・事故全体の中での傾向値は出しているが、個 別の事例紹介まではしていない。 各支社では、 近畿管内車両事故内規 近畿管内社員で社有車両による有責事故(=運転者本人に多少でも過失がある事故であり、100%被害事故以外 は有責事故となる。以下、事故という)を起こした者は以下の対応とする。 1.1 年以内に 2 度以上の事故を起こした者は、教習所にて 1 日間安全運転研修を受講することとする。 2.事故を起こした者は、事故発生の翌日より 1 週間車両の使用を禁止する。使用停止期間中は各事業場車両担 当者に車両の鍵を預けることとする。 3.事故による車両修理中の代車は原則手配しない(2.による 1 週間の使用停止期間後についても手配しない。 使用停止期間後に車両が必要な場合は部支店内車両で対応することとする)。 4.事故を起こした者については、 車両に所属長(場合により総務担当者)が半日程度同乗し、運転技術等のチェッ クを行うこととする(同乗者はチェック表に記入し、総務部宛て提出すること)。 5.交通法規は遵守すること。飲酒運転・携帯電話使用中の事故については懲戒処分とする。 74 M社 業種 :トラック事業 創業 :1944 年 車両台数:3,000 台 従業員 :4,000 名(ドライバー) ている。自車に乗って起きた事故に関しての ●交通安全活動 み管理している。 <情報> ・ポスター掲示、パンフレットの配布をしてい ・交通安全に関する情報は、同業他社数社の るが特段の効果があるとは思えない。 ・デジタコを利用したエコドライブ運動を実施 安全管理者で構成された委員会で収集してい しており、当然、事故の低減も狙っている。 る。また、交通安全専門誌やトラック協会か ・ドライブレコーダーの利用は交通事故対応や らの情報も活用している。インターネットか らの情報はこれらのフォローとして使ってい 事故防止の検証で有効である。 る。 <表彰制度・懲罰制度> ・今後欲しい情報は、他社の取り組みやその結 ・社員を対象に表彰制度を導入している。一定 果。現在は、同業他社の委員会で取り組み方 の効果はあると思う。無事故者には報奨金を 法やその結果を確認しあえている。 渡し、社内報で氏名を掲載し周知している。 <研修・教育> ・家族への働きかけとして、事業所単位で手紙 ・ドライバーの注意力を高めるために、指導で などを他の資料につけて送っている。 は深呼吸するなり、動作を言葉に出させ「一 ●交通安全教育・管理 拍おく」ことを教えている。呼称法や声を出 すことで刺激が脳に伝達され安全確認が意識 <訓話> づけされる。かなり認識力が強まっている。 ・担当役員が年1回全社員が集まる場で 3 事故 ・研修の場所は主に自社の会議室を使用し、多 防止運動(荷物、労災、交通)について訓話 人数の場合は公共の場を活用している。ドラ している。 イバーはそれなりの腕をもっているので実技 ・企業の風土はまだまだ足りないと感じる。 研修はほとんど行っていない。むしろメンタ ・事故防止とは再発防止、防衛運転である。 ル部分に関する研修のほうが効果がある。教 習所やドライバーコンテストでの実技研修は <管理> 一定の効果があるが、実際の実務とは違う、 ・ドライバーとのコミュニケーションは現場の よそ行きの運転となってしまう。 管理者に任せている。各支店に安全課があり ・新人研修は現場で添乗指導を最低 6 回やり、 総勢で 16 名の安全管理者がいて、その下に チェック項目をクリアするまでは 1 人で運転 各所長、運行管理者がいる。 させない。それでも事故が多い。環境の変化 ・当社のドライバーは4つのタイプがあり、社 が原因と思われる。腕(技術)はあるが、環 員、協力会社、派遣会社、アルバイトとなっ 境の変化で気持ちが不安定になり、事故を起 75 M社 こしてしまっている。 ●事故への対応 ・ KYT、ヒヤリハット体験報告、事故事例分 析を行っているが、その場にいるドライバー が他の人の考えや意見を聞くことによる様々 <現状> な波及効果を狙っている。 ・些細なちょっと注意すれば起きない事故が ・ドライバー自身が考える教育をしている。車 発生している。いわゆるヒューマンエラー系 は自分の意識で動かすものであり、事故を起 の事故、不注意事故である。交差点等での左 こさない運転をするのも自分の意識である。 右の不注意事故や構内の事故、駐車中のサイ ・研修では「事故を起こしたら会社が責任をと ドブレーキ不十分の事故が多い。車が縦横に れるのはお金の部分だけで、あとのことはド 出るところは注意力が偏って事故が起きてい ライバー本人に覆いかぶさる」 と言っており、 る。 これは結構効果があるようだ。また、加害者 ・死亡事故はこの 6 年間で1件あった。それ以 の家族が、一家心中をしたときに、その奥さ 外は人身事故はない。物損事故のみである。 んが残した遺書を一文字ずつ投影資料に写し ・事故件数は去年 15%増えたが今年になって て読ませると効果がある。視覚効果も考えて 減っている。ドライバーの交代も多いため原 研修している。 因は不明。 ・外部へ講師依頼したが、画一的な話だったの ・発生した事故のうち入社1年目の人が起こし で以後やめた。損保会社の講習内容は管理者 た事故が 70%を占めている。10 年目の人の には役に立つがドライバーに対してはそのま 事故は増えてきているがそれほどではない。 までは使えない。ドライバー用にアレンジし むしろ入社 30 年以上の高齢者の事故が増え て聞かせている。 ている。若い頃のように体がいうことを利か なくなっていることを意識しない行動が原因 <教材> の1つ。このようなパターンが大きな事故に ・教材はすべて手作り。市販品はヒントとして つながる。 いるだけ。1回作ってしまえば、 あとはちょっ ・自社の事故件数はゼロが目標だから現状は多 としたアレンジや微修正で対応ができる。色 いと思っている。 を変えるだけでも効果あり。 ・事故のカウント基準は交通事故のみだが、過 ・いつでも手に入る(見られる)市販の教材で 失が少しでもあれば事故とみなしているので はなく、静止画を動かす工夫等「今この場で 件数は多い。 しか見られない」 という資料に変えることで、 ・車両の変化も事故原因の 1 つで、1日に何度 人間の意識の中に入りやすい。 も大きさの違う車に乗る場合、大型から小型 ・ 自 分 た ち に 身 近 な 事 故 の 情 報 が 欲 し い。 の車両に乗り換えた時に油断して事故が起き ショックの大きい事故を見せることが大事。 ている。 できるだけ生のものを見せる。ショック療法 が効き目あり。人間は落ち込まないと考えな <対応> い。 ・自社のドライバーは年齢層が高いため、今は 高齢者の安全教育に力を入れている。自分自 76 身を知るという教育をしているが、勤続・経 ・ペーパーテスト結果は悪いが事故を起こさな 験年数が長く、それぞれプライドを持ってい い地域がある。これは道路環境によるものが るからこちらの言うことをなかなか聞かな 大きい。運転には自分自身が原因のものと環 い。 境が原因のものがある。例えば東京のドライ ・スライド等を利用して自分で考えるような バーは安全運転に関するレベルは上だが、相 仕組みで教えている。KYT や事故の具体的 対的に相手(車)が多いから他の地域より事 な例を示したり、ブレーキで止まるまでの時 故は多く起きている。 間がどれくらいかかるか等具体的に示してい ・起きた事故の分析結果は、研修資料に使って る。ただし、対応については強制していない。 いる。事故内容はトップまで速報であがって 強制して分かるなら事故はないはずであり、 いる。 まずドライバー本人にいかに分かってもらう ・1ヶ月に1回は安全衛生委員会があり、そこ かがポイント。 で詳細報告している。事故が起きたら職場従 ・1回の研修では対象 5,60 人くらいで2時間 業員全員で事故について討議し注意点・対策 が集中できる限度である。今年度の研修受 を出し合う。議事録をつくり支店にあげて、 講者(800 人程度)で事故を起こしたのは 12 そこで月1回審議をし、その地域分をまとめ 名のみ(軽微な事故) 。研修を受講していな て本部にあげている。審議会で対処内容の検 ければもっと増えていたと思われるので、効 討をし、可否を決めて安全衛生委員会へ報告 果は出ていると判断している。 している。 ・研修は各支店・営業所に出向いて行ってい ・他のドライバーへは各職場の安全衛生委員会 る。まずペーパーテストをやり、その場で答 で原因、対策の検討をさせることで周知させ え合わせをし、自分がどれくらい分かってい ている。 ないかを分からせる。ショックを与えてから ・全ドライバーへの伝達は月1回の衛生委員会 教え始める。最初にドライバー本人たちにい 後に行っている。原因、対策も決まらないう かに自分の認識と実際が違うかというショッ ちに事故内容を全ドライバーへ知らせること クを与えておかないとこちらの言うことを分 は、かえっておかしな方向に行くと考えてい かってくれない。 る。ただし、当該職場ではすぐにしっかりと ・高齢者以外の人には、適性診断結果に基づ した対応をさせている。 き現場の所長が面談をし、本人に知らしめて ●重要だと思うこと・ 効果があったと思うこと いる。研修機会は約 3 年に 1 度程度。毎年全 員を対象に研修を受けさせることは困難であ る。 ・他の研修は事業所単位で独自に行っている。 ・運転する本人と直接いろいろな話をすること 土地の事情は現場の人間がよく分かっている が重要。間に人が入ると 10 の内容が 8 となっ ので、足りない部分を本部の研修が補ってい たり、間違った内容が伝わる可能性がある。 る。現場の研修についてはあくまで自主性に ドライバーに直接伝えることでさらに効果が 任せているので、現場の研修の取り組みは地 出る。 域による温度差が大きい。 ・交通安全は、最後は個人の意識の問題に行き 77 M社 着く。ドライバー個人の意識を変える手伝い をするのが我々管理者の仕事である。 ・適性診断の結果を本人が自覚しているかどう かが重要である。無事故・無違反で何十年と 運転している人が適性診断結果が悪い場合も 多々ある。それを研修等で教えてあげること が大切である。 ・教育する側がどこかで妥協すればドライバー も妥協する。 78 企業における交通安全対策の現状 2 0 0 6 年 6 月 初 版 2 0 0 8 年 3 月 第 2 刷 2 0 0 9 年 3 月 第 3 刷 2 0 1 2 年 2 月 第 4 刷 社団法人 日本損害保険協会 業 務 企 画 部 自動車・海上グループ 〒 101−8335 東京都千代田区神田淡路町 2 − 9 電 話 03 − 3255 − 1943 FAX 03 − 3255 − 5115 E-mail:[email protected] 本書の転載・複製に際しましては、上記へご一報いただければ幸いです。 2009.03 200 KC