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第1章 基本属性(小島克久)

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第1章 基本属性(小島克久)
第 1 章 基本属性
国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部 第三室長 小 島 克 久
要旨
調査対象者に関する基本的属性を、①人口・世帯に関する状況と②社会経済的状況について各国比較
を行った。前者については、結婚している者の割合は日本と韓国で高く、アメリカ、フランス、スウェ
ーデンでは同棲している者の割合が高い。しかし、両者を合計した配偶者がいる者の割合は、各国とも
60%台となっている。子どもの数を見ると、日本と韓国で 2 人が多く、その他の国では1人から 3 人ま
でがバランスよく分布している一方で、子どもはいない者も多くなっている。居住している世帯の規模
別の割合を見ると、日韓で規模の大きな世帯に居住する者が多く、欧米では規模が小さな世帯に住む者
が多い。特にスウェーデンやフランスでは1人世帯に居住する者が多く、アメリカでは2人世帯に居住
する者の割合が高い。後者について、就業状況を見ると、各国とも常勤の被雇用者が最も多いが、韓国
では自営業者が多くなっている。その形態を問わず職業のある者の割合を見ると、特に女性では、日韓
でM字型カーブの一端を見ることができる。職業のある者のうち、常勤雇用者の割合を見ると、男性で
は韓国で低く、女性では年齢とともに日韓でこの割合が低下する傾向が見られる。夫と妻の就業状態に
ついてみると、夫妻とも就業は欧米で多く、夫のみ就業は日韓で目立っている。夫妻ともに就業してい
る者の割合を男女・年齢階級別で見ると、日韓でこの水準の低いことが目立っている。1週間の労働時
間を見ると、韓国が男女とも最も長く、フランスは最も短い方に位置している。男女・年齢階級別に週
50 時間以上就労する者の割合を見ると、韓国で男女ともに高くなっている。日本は男性でこの割合が韓
国に次いで高く、さらにアメリカがこれに次いでいる。女性についてみると、韓国以外ではこの割合は
10%を下回っており、女性の長時間労働は男性と比べて極めて少ない。教育程度についてみると、各国
とも高等教育を受けている割合が高く、男女年齢階級別では、フランスの割合が高くなっている。
1.人口・世帯に関する状況
(1)配偶者がいる者の割合
結婚に関しては第 2 章で詳細に分析するが、配偶者の有無に関する状況についてまず見ていく。結婚
している(現在、配偶者あり)者の割合は、日本が 68.3%、韓国が 64.4%、アメリカが 34.1%、フラ
ンスが 47.7%、スウェーデンが 37.4%となっている。結婚していないが、同棲している者の割合はアメ
リカ、フランス、スウェーデンで高く、それぞれ 30.9%、17.1%、29.4%となっている。日本と韓国で
はこの数値は低く、法律婚という形態が主流を占めていることが分かる。その一方で、アメリカ、フラ
ンス、スウェーデンでは、同棲等の法律上の結婚以外の形態が、社会的に受け入れられており、これが
こうした数値の高さの背景になっているものと思われる。両者を合わせた数値(結婚の届け出の有無と
は関係なく、
一緒に生活している者の割合)
を見ると、
日本が 69.2%、
韓国が 65.5%、
アメリカが 65.0%、
フランスが 64.8%、スウェーデンは 66.8%となっている。なお、離婚または死別した者の割合はアメリ
カで 10.8%と高くなっている。
(表 1-1)
。
61
表1-1 配偶関係別に見た割合
日本
韓国
アメリカ
結婚している(現在、配偶者あり)
68.3%
64.4%
34.1%
結婚していないが、同棲している
0.9%
1.1%
30.9%
離婚または死別した
4.0%
0.9%
10.8%
結婚も同棲もしていない
26.8%
33.6%
24.2%
合計
100.0%
100.0%
100.0%
フランス スウェーデン
47.7%
37.4%
17.1%
29.4%
6.7%
5.6%
28.6%
27.6%
100.0%
100.0%
次に、配偶者がいる者(結婚の届け出の有無とは関係なく、一緒に生活している者)の割合について、
男女年齢別に見ていくことにする。男性の場合、20∼29 歳では韓国と日本でこの割合が低い。この割合
は、韓国で 8.9%、日本で 23.9%となっているが、他の国が 33.7%∼47.3%であることと比較すると、
これらの国でこの年齢階級の有配偶率が著しく低いことが分かる。30∼39 歳では各国の有配偶率は
66.3%∼75.9%となり、国による格差は 9 ポイント程度になる。そして、40∼49 歳では韓国が 93.3%と
突出しているが、他の国では 72.7%∼82.0%と 10 ポイント程度の格差に収まっている。女性でも 20∼
29 歳で日韓の有配偶率が顕著に低く、韓国では、36.7%、日本では 39.4%である。この水準自体は男
性よりも高いが、他の国は 49.7%∼55.4%であることと比較すると、他の国との格差が大きいことが分
かる。30∼39 歳では韓国が 95.8%と突出しているが、他の国では 69.4%∼78.8%と 9 ポイント程度の
範囲に収まっている。40∼49 歳の場合では韓国(97.4%)とともに日本も突出している(90.5%)が、
50.0%
69.4%
78.1%
78.1%
23.9%
40.0%
日本
韓国
アメリカ
フランス
スウェーデン
39.4%
36.7%
43.7%
33.7%
47.3%
60.0%
55.4%
54.8%
49.7%
70.0%
78.8%
93.3%
80.0%
73.6%
72.7%
75.7%
66.8%
71.3%
66.3%
75.9%
72.1%
90.0%
82.0%
100.0%
30.0%
95.8%
図1-1 配偶者がいる者の割合(男女・年齢別)
日本, 90.5%
韓国, 97.4%
アメリカ, 76.3%
フランス, 70.2%
スウェーデン, 72.0%
他の国は 70.2%∼76.3%と 6 ポイント程度の範囲に収まっている(図 1-1)
。
10.0%
8.9%
20.0%
0.0%
20∼29歳
30∼39歳
40∼49歳
20∼29歳
男
30∼39歳
女
62
40∼49歳
(2)子どもの数
子どもの数について、結婚等の経験がある者(結婚、同棲のいずれもしたことがない者を除いたもの)
についてみると、次のようになる。平均値では各国とも 1.7 人台であり、国による格差は見られない。
子どもの人数別の分布を見ると、国による格差が見られる。まず、子どもが 2 人の割合が日本と韓国で
高くなっており、それぞれ 42.6%、60.1%と他の国が 30%程度であるのと比較して非常に高くなって
いる。1人の割合を見ると、日本で 25.4%と最も高く、次いでアメリカの 21.1%、韓国の 20.7%、フ
ランスの 19.3%、スウェーデンの 17.2%となっている。3 人については、スウェーデンの 19.1%が最も
高く、韓国の 9.1%が最も低い。その他の国は 16%台となっている。その一方で、子どもはいない者の
割合は、アメリカ、フランス、スウェーデンで高く、それぞれ、22.0%、21.6%、21.7%となっており、
日本や韓国の 2 倍程度の水準となっている。その背景には、結婚形態の多様化等があるものと思われる
(図 1-2)
。
図1-2 子どもの数(結婚等の経験がある者)
100%
90%
80%
11.5%
0.4%
3.2%
9.1%
0.1%
0.9%
9.1%
16.8%
70%
60%
50%
42.6%
22.0%
21.6%
21.7%
2.4%
5.3%
2.4%
6.8%
1.8%
4.6%
16.4%
16.9%
19.1%
32.5%
32.9%
34.0%
21.1%
19.3%
17.2%
60.1%
40%
30%
20%
10%
25.4%
20.7%
日本
韓国
アメリカ
フランス
スウェーデン
0%
(1.76)
(1.72)
(1.70)
(1.77)
(1.71)
不詳
子どもはいない
5人以上
4人
3人
2人
1人
(3)居住世帯の規模
調査対象者が居住している世帯の規模別の分布を各国別に見ると、次のようになる。まず、1人暮ら
しが多いのは、フランスとスウェーデンであり、それぞれ 19.6%、19.5%となっている。アメリカでは
11.8%であるが、日本や韓国では 10%を下回っている。その一方で 5 人以上の世帯に居住する者が多い
のは日本であり、31.6%となっている。日本では 4 人世帯に住む者も多く、その割合は 28.5%と 20 ポ
イント近くの差があるとはいえ、韓国の 47.8%に次いで多い。2 人世帯に居住する者が最も多いのは、
アメリカであり、その割合は 26.4%となっており、以下、スウェーデン(21.2%)
、フランス(21.0%)
63
が続いている。日本と韓国はこれよりも少なく、それぞれ 10.6%、8.5%にとどまっている。3 人世帯も
アメリカで最も多い(24.0%)が、今度は日本(23.6%)と韓国(22.6%)がこれに次いでおり、フラ
ンス(20.0%)
、スウェーデン(19.6%)はこれら 2 つの国よりも低い割合となっている。このように、
欧米では、1人や2人といった小規模世帯に住む者が多く、日本と韓国では規模の大きな世帯に居住す
る者が多い。その背景には、日本や韓国といった東アジアでは三世代同居が家族形成の規範として機能
している部分があることを考えることができる(図 1-3)
。
図1-3 世帯人員数
80%
14.8%
15.4%
24.0%
23.3%
24.2%
24.0%
20.0%
19.6%
21.0%
21.2%
19.6%
19.5%
31.6%
70%
60%
50%
13.8%
スウェーデン
16.5%
90%
フランス
100%
28.5%
47.8%
40%
22.6%
26.4%
5.5%
8.5%
3.6%
11.8%
韓国
アメリカ
23.6%
日本
30%
20%
10%
0%
10.6%
不詳
5人以上
4人
3人
2人
1人
2.社会経済的状況
(1)就業状況
各国別に就業状況(就業していない者も含む)を見ると次のようになる。全ての国で最も多いのは常
勤の被雇用者であり、日本で 46.1%、韓国で 32.1%、アメリカで 52.7%、フランスで 51.0%、スウェ
ーデンで 53.3%となっている。自営業の割合が高いのは韓国であり、27.0%となっており、自営の専門
職、自由業が多いのがアメリカ(10.8%)となっている。近年、我が国ではパートタイマー等の非正規
就業者が増加しているが、パートなどの常勤でない被雇用者の割合を見ると、日本が 16.9%とスウェー
デン(17.6%)に次いで多く、以下、フランス(11.0%)
、アメリカ(8.6%)
、韓国(6.5%)となって
おり国による格差が大きくなっている(表 1-2)
。
64
表1-2 各国別に見た就業状況
日本
韓国
アメリカ フランス スウェーデン
農林漁業(家族従業者を含む)
1.2%
1.3%
0.5%
1.6%
0.3%
自営業(商工サービス業等)
10.4%
27.0%
11.6%
5.2%
6.8%
自営の専門職・自由業
1.5%
1.2%
10.8%
3.8%
1.9%
常勤の被雇用者
46.1%
32.1%
52.7%
51.0%
53.3%
パート等の常勤でない被雇用者
16.9%
6.5%
8.6%
11.0%
17.6%
その他の仕事
1.5%
0.5%
0.5%
3.2%
1.1%
失業中(求職中)
2.1%
1.3%
2.1%
7.3%
5.2%
学生
3.0%
10.8%
3.2%
5.0%
11.1%
家事
14.6%
18.0%
7.1%
8.5%
1.1%
仕事はしていない
2.8%
1.4%
2.9%
3.4%
1.8%
合計
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
(2)職業のある者の割合
上記の結果から、その形態を問わず職業のある者の割合を男女・年齢階級別に見ると、次のような傾
向が見られる。男性の場合、20∼29 歳では国による大きな格差が存在する。最も低い韓国で 52.4%、
最も高いアメリカで 83.0%となっており、格差は 31 ポイント程度に達している。30∼39 歳、40∼49
歳では国による格差は小さくなり、この割合は全ての国で 90%を超える水準に達している。女性では男
性と異なる傾向が見られる。20∼29 歳では、この割合の水準自体は男性よりも低い。しかし、最も低い
韓国の 54.7%から最も高いアメリカの 76.2%と男性ほどではないが、21 ポイント程度の格差が存在す
る。30∼39 歳になると国による格差はさらに大きくなる。最も低い韓国が 45.4%である一方で、最も
82.9%
76.5%
65.4%
64.8%
日本
韓国
アメリカ
フランス
スウェーデン
45.4%
60.6%
76.2%
83.0%
95.5%
98.6%
94.8%
90.9%
92.1%
56.5%
63.2%
60.0%
52.4%
70.0%
54.7%
80.0%
71.1%
63.0%
90.0%
77.8%
100.0%
95.1%
97.2%
94.5%
95.0%
90.7%
図1-4 職業のある者の割合
日本, 73.0%
韓国, 65.3%
アメリカ, 83.6%
フランス, 74.3%
スウェーデン, 87.9%
高いスウェーデンが 82.9%と、格差は 27 ポイント程度にまで拡大する。この中で、日本は韓国に次い
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
20∼29歳
30∼39歳
40∼49歳
20∼29歳
男
30∼39歳
女
65
40∼49歳
で低い 60.6%となっている。40∼49 歳になると、韓国や日本で割合が上昇するため、国ごとの格差は
縮小し、最も低い韓国で 65.3%、最も高いスウェーデンで 87.9%と、格差は 22 ポイント程度になる。
その中で、日本は 73.0%とフランス(74.3%)に近い水準となっている。このように、女性で職業のあ
る者の割合を見ると、日本と韓国では、30∼39 歳で割合が低下し、40∼49 歳で割合が上昇するという
M字型カーブの一端を見ることが出来る。その他の国では、年齢とともに上昇傾向にあり、女性の社会
進出の状況に欧米と日韓で違いがあることがわかる(図 1-4)
。
職業のある者といっても、その形態は自営業から常勤雇用者、パートやアルバイトといった非正規就
業まで多様である。そこで、職業のある者のうち、常勤雇用者の割合を男女・年齢階級別に見てみよう。
男性の場合、韓国で低く、その他の国の間で格差が小さい傾向が見られる。まず、20∼29 歳では韓国が
52.2%であるのに対して、その他の国では、アメリカの 68.8%からフランスの 75.2%と格差は 7 ポイン
ト程度である(日本は 70.3%)
。30∼39 歳では、韓国は 51.2%であるのに対して、その他の国はアメリ
カの 63.0%からスウェーデンの 81.4%に分布している(日本は 73.1%)
。そして、40∼49 歳では韓国
は 40.7%である一方で、アメリカの 59.4%から日本の 73.8%の間に分布している。女性では、日本と
韓国で年齢とともにこの割合が低下する傾向が見られる。20∼29 歳ではスウェーデンの 54.1%から韓
国の 74.8%の間に分布しており、韓国が最も高く日本も 64.1%と最も低いスウェーデンを 10 ポイント
程度上回っている。30∼39 歳では韓国が 40.2%と最も低くなる。最も高いのはアメリカの 60.0%であ
り、格差も 20 ポイント程度に拡大している。その中で日本は 42.1%と韓国に次いで 2 ポイント差で低
くなっている。そして、40∼49 歳では韓国の 21.0%からフランスの 59.8%へと格差は 39 ポイント程度
図1-5 常勤雇用者の割合
アメリカ, 54.7%
フランス, 59.8%
スウェーデン, 57.5%
日本, 35.8%
韓国, 21.0%
54.1%
42.1%
40.2%
40.0%
60.0%
57.0%
54.8%
74.8%
70.3%
72.6%
40.7%
50.0%
64.1%
59.4%
66.6%
71.8%
81.4%
63.0%
72.7%
73.1%
51.2%
60.0%
70.3%
70.0%
52.2%
80.0%
68.8%
75.2%
75.0%
90.0%
73.8%
100.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
20∼29歳
30∼39歳
40∼49歳
20∼29歳
男
30∼39歳
女
注:職業のある者の中で常勤雇用者が占める割合
66
40∼49歳
日本
韓国
アメリカ
フランス
スウェーデン
へとさらに大きくなっている。日本は 35.8%と韓国に次いで低くなっている。女性の場合、韓国と日本
でこの割合の年齢による低下の程度が著しく、日本の場合は、女性の就業は常勤雇用以外の非正規就業
等が多くなっている様子が、韓国の場合は自営業やその家族従業者が多くなっている様子がうかがえる
(図 1-5)
。
(3)夫と妻の就業状態
今回の調査では配偶者がいる者に対して、配偶者の就業状態を尋ねている。その結果を元に、夫と妻
の就業状態(夫妻ともに就業、夫のみ就業、妻のみ就業、夫妻ともに非就業)についてまとめると、以
下のようになる。夫妻ともに就業している割合を見ると、スウェーデンで 74.9%と最も高く、以下アメ
リカ(73.4%)
、フランス(64.0%)
、日本(57.2%)
、韓国(45.8%)となっている。日本や韓国で高い
のは夫のみ就業で、それぞれ 40.9%、52.3%となっており、この割合は欧米諸国で 15.0∼29.2%である
のに比べると顕著に高くなっており、夫婦の就業構造においても欧米と日韓で違いを見ることができる
(図 1-6)
。
図1-6 夫妻の就業状態
100%
90%
80%
20.3%
29.2%
40.9%
15.0%
52.3%
70%
60%
50%
40%
30%
74.9%
73.4%
64.0%
57.2%
不詳
夫妻ともに非就業
妻のみ就業
夫のみ就業
夫妻ともに就業
45.8%
20%
10%
スウェーデン
フランス
アメリカ
韓国
日本
0%
夫妻ともに就業している者の割合を配偶者のいる男女・年齢階級別に見ると以下のようになる。男性
の場合、全ての年齢階級を通じて、この割合が最も低いのは韓国である。20∼29 歳では 31.4%、30∼
39 歳では 39.3%、40∼49 歳では 42.6%となっている。日本は 20∼29 歳以外で韓国に次いで低くなっ
ており、20∼29 歳では 53.6%、30∼39 歳では 43.1%、40∼49 歳では 62.2%となっている。その他の
国については、アメリカが 75%程度で安定している一方で、フランスでは 20∼29 歳で 60%程度である
67
他は 70%程度である。そしてスウェーデンでは、年齢とともに上昇し、20∼29 歳の 44.9%から 40∼49
歳の 85.8%となっており、後者はこの年齢階級では最も高い水準である。女性の場合、20∼29 歳では
日本が最も低く 33.9%、韓国が 39.1%となっている。30∼39 歳、40∼49 歳では韓国が最も低く、それ
ぞれ 41.8%、64.1%となっている。日本も韓国と同様に年齢とともに上昇し、それぞれ、53.8%、70.6%
となっている。その他の国について見ると、アメリカは 20∼29 歳で 65.6%と最も高くなっているが、
30∼39 歳、40∼49 歳では 2 番目に高くなっており、それぞれ、66.9%、80.7%となっている。スウェ
ーデンでは、30∼39 歳、40∼49 歳で最も高くなっており、それぞれ 78.1%と 87.8%となっている。フ
ランスではおおむね 6 割程度の水準となっている。このように、男女・年齢階級で見ても、日韓でのこ
日本, 70.6%
韓国, 64.1%
アメリカ, 80.7%
フランス, 66.7%
スウェーデン, 87.8%
の割合の低さが目立っていることがわかる(図 1-7)
。
図1-7 夫妻ともに就業している者(配偶者がいる者)の割合
66.9%
55.3%
53.8%
日本
韓国
アメリカ
フランス
スウェーデン
41.8%
65.6%
59.7%
54.5%
33.9%
39.1%
62.2%
31.4%
40.0%
42.6%
50.0%
43.1%
39.3%
44.9%
53.6%
59.4%
70.0%
60.0%
75.0%
71.4%
75.0%
74.6%
80.0%
75.8%
68.3%
90.0%
78.1%
85.8%
100.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
20∼29歳
30∼39歳
40∼49歳
20∼29歳
男
30∼39歳
40∼49歳
女
(4)労働時間
日本の少子化の背景には、子育て期にある男性の労働時間の長さにあることが指摘されている。それ
では日本を含めた各国の労働時間の状況はどのようになっているのであろうか。まず、1週間の平均労
働時間(以下、労働時間)を男女・年齢階級別に見ていくことにする。労働時間が最も長いのは韓国で
あり、男性では 20∼29 歳で 55.46 時間、30∼39 歳で 57.01 時間、40∼49 歳で 57.23 時間となってい
る。女性でも 20∼29 歳で 48.45 時間、30∼39 歳で 52.30 時間、40∼49 歳で 56.38 時間と、女性の 20
∼29 歳を除いて、労働時間は 50 時間を超えている。その一方で労働時間が男女ともに短いのは週 35
時間労働が制度化されているフランスである。男性の場合全ての年齢階級で最も短くなっており、20∼
68
29 歳で 36.89 時間、30∼39 歳で 37.56 時間、40∼49 歳で 39.65 時間となっており、韓国よりも 17∼
19 時間程度短くなっている。女性の場合でも労働時間は短くなっており、20∼29 歳で 33.01 時間、30
∼39 歳で 34.17 時間、40∼49 歳で 34.32 時間となっているが、30 歳以上では日本の方が短くなってい
る。その背景には、日本の女性の就業形態としてパートやアルバイト等の非正規就業が多いことが影響
しているものと思われる。その他の国の状況を見ると、男性では、日本、アメリカ、スウェーデンの順
に長くなっており、特に日本では 30∼39 歳、40∼49 歳で労働時間は 50 時間を超えている。女性では、
20∼29 歳で男性と同じ国の順番となっているが、
その他の年齢では韓国以外では大きな格差は見られな
い(表 1-3)
。
表1-3 男女・年齢階級別平均労働時間
日本
男
女
20∼29歳
30∼39歳
40∼49歳
20∼29歳
30∼39歳
40∼49歳
47.96
51.29
50.57
39.96
33.07
32.05
韓国
55.46
57.01
57.23
48.45
52.30
56.38
アメリカ
44.63
44.43
44.56
37.37
36.78
37.85
フランス スウェーデン
36.89
37.56
39.65
33.01
34.17
34.32
40.37
41.42
42.17
35.04
35.68
35.59
韓国の労働時間が 50 時間を超える長いものとなっていたが、次に、週 50 時間以上就業している人の
割合を男女・年齢階級別に見ていくことにする。男女ともにこの割合が高いのは韓国であり、男性では
20∼29 歳から順に、47.7%、49.0%、50.3%となっており、女性でも 20∼29 歳から順に、33.2%、41.4%、
57.1%となっている。韓国に次いでこの割合が高いのは日本であるが、韓国との違いは男性のみでこの
割合が高いことである。男性の 20∼29 歳から順にこの割合を見ると、27.5%、34.3%、31.9%となって
おり、韓国との格差は 14∼20 ポイントである。女性の場合、20∼29 歳から順に 8.7%、3.6%、6.3%と
なっており、韓国との格差は 24∼51 ポイント程度と著しく大きくなっている。既に見たように、韓国
の場合、常勤の被雇用者も多いが、自営業者が他の国に比べて多く、パートタイムという働き方も他の
国よりも少なくなっている。そのため、いったん就業した場合、男女を問わず長時間の労働時間になる
ものと思われる。なお、その他の国の男性についてみると。アメリカでは、20∼29 歳から順に 19.6%、
14.3%、14.5%となっており、フランスでは 2.8%、2.9%、8.3%、スウェーデンでは 7.6%、6.4%、9.8%、
となっている。その他の国の女性では、アメリカ、フランス、スウェーデンともに 10%を下回る割合と
なっており、これらの国では女性の長時間労働はほとんど見られないことがわかる(図 1-8)
。
69
韓国, 57.1%
図1-8 50時間以上就労する者の割合
49.0%
47.7%
アメリカ, 5.4%
フランス, 3.3%
スウェーデン, 2.5%
2.9%
2.8%
2.6%
3.6%
8.7%
8.3%
9.8%
日本, 6.3%
31.9%
14.5%
3.1%
1.0%
6.1%
2.8%
10.0%
2.9%
6.4%
7.6%
20.0%
14.3%
19.6%
27.5%
30.0%
34.3%
40.0%
33.2%
41.4%
50.0%
50.3%
60.0%
日本
韓国
アメリカ
フランス
スウェーデン
0.0%
20∼29歳
30∼39歳
40∼49歳
20∼29歳
男
30∼39歳
40∼49歳
女
(5)教育程度
調査対象となった国はいずれも OECD 加盟国であり、教育も相当程度普及している。調査では、調
査対象者に教育程度について尋ねている。国により教育制度は多様であるので、ここでは、初等教育(日
本の中学校程度)
、後期中等教育(日本の高等学校程度)
、高等教育(日本の大学、短期大学程度)の 3
つに分類し、調査対象者の教育程度別の割合を見てみる。その結果を見ると、各国とも高等教育を受け
た者の割合が高く、フランスが 61.3%で最も高く、以下、アメリカ(56.5%)
、日本(52.6%)
、スウェ
ーデン(48.7%)
、韓国(43.5%)となっている。後期中等教育の割合を見ると、韓国(52.5%)が最も
高く、以下スウェーデン(42.3%)
、日本(42.1%)
、アメリカ(41.2%)
、フランス(17.9%)の順とな
っている。初等教育の割合はフランス以外で低くなっている。フランスでは初等教育の割合が 20.8%と
他の国よりも高くなっているが、これは学校には通ったが、一般高等教育を受けるための資格を取って
いない者が相当数いることが背景にある(図 1-9)
。
図1-9 教育程度
100%
80%
52.6
43.5
56.5
48.7
61.3
60%
40%
52.5
17.9
4.0
2.3
韓国
アメリカ
20.8
8.6
スウェーデン
4.8
日本
20%
0%
42.3
41.2
フランス
42.1
注:各国の教育水準を以下のように統一した。
アメリカ 初等教育・・・・・・・中学校
後期中等教育・・・・・高校/職業訓練校
わからな 高等教育・・・・・・・短期大学、四年制大学、
大学院/高等専門学校
い
フランス 初等教育・・・・・・・学歴(資格)なし、小学校卒業、中学卒業
後期中等教育・・・・・一般高校卒程度、技術教育/職業教育
高等教育
高等教育・・・・・・・職業適性証書、職業教育卒業証書、
大学教育課程、修士課程/博士課程
スウェーデン 初等教育・・・・・・・中学、高等義務教育
後期中等 後期中等教育・・・・・高校
教育
高等教育・・・・・・・大学、大学院/高等専門学校
日本 初等教育・・・・・・・中学校
初等教育
後期中等教育・・・・・高等学校
高等教育・・・・・・・専門学校、短期大学、大学、大学院
韓国 初等教育・・・・・・・中学校
後期中等教育・・・・・高校
高等教育・・・・・・・短大、四年制大学、大学院
70
各国とも高等教育を受けた者の割合が高いが、これを男女・年齢階級別に見るとどのようになるので
あろうか。男性では、20∼29 歳では高等教育をまだ終えていない者もいるためか、他の年齢階級よりも
全体的に低めであり、フランス(53.7%)が最も高く、以下、日本(50.4%)
、アメリカ(45.2%)
、韓
国(38.7%)
、スウェーデン(36.3%)となっている。30∼39 歳でもフランスが 64.1%と最も高く、以
下、日本(57.6%)
、アメリカ(55.2%)
、スウェーデン(54.7%)
、韓国(51.0%)となっている。40
∼49 歳では国により水準が 30∼39 歳よりも上下する国があるが、最も高いのはフランスの 63.7%であ
り、アメリカ(62.6%)がこれに次いでいる。以下、日本(51.0%)
、韓国(49.8%)
、スウェーデン(42.4%)
となっている。
女性では20∼29歳ではフランスが59.9%と最も高く、
以下、
韓国
(53.6%)
、
日本
(52.8%)
、
スウェーデン(51.6%)
、アメリカ(50.6%)が続いている。30∼39 歳でもフランスが 66.4%と最も高
く、以下、アメリカ(62.3%)
、日本(55.4%)
、スウェーデン(54.5%)
、韓国(42.8%)となっている。
40∼49 歳ではアメリカが 59.9%で最も高く、以下、フランス(59.1%)
、スウェーデン(50.5%)
、日
本(48.5%)
、韓国(22.6%)となっている。このように見ると、フランスが男女・年齢階級を通じて高
く、アメリカも相当な地位を占めている。日本は中間的な地位を占めている一方で、韓国では女性の年
齢が高いほど、高等教育を受けた者の割合が低い点が特徴的である(図 1-10)
。
54.5
55.4
日本, 48.5
62.3
66.4
42.4
42.8
51.6
52.8
53.6
50.6
59.9
62.6
63.7
51.0
49.8
54.7
55.2
韓国, 22.6
36.3
38.7
40.0
45.2
50.0
51.0
50.4
53.7
60.0
57.6
64.1
70.0
アメリカ, 59.9
フランス, 59.1
スウェーデン, 50.5
図1-10 高等教育を受けた者の割合
30.0
20.0
日本
韓国
アメリカ
フランス
スウェーデン
10.0
0.0
20∼29歳
30∼39歳
40∼49歳
20∼29歳
男
30∼39歳
40∼49歳
女
注:各国の高等教育の範囲は次の通り、日本:専門学校、短期大学、大学、大学院。アメリカ:短期大学、四年
制大学、大学院/高等専門学校。韓国:短大、四年制大学、大学院。スウェーデン:大学、大学院/高等専門学
校。フランス:職業適性証書、職業教育卒業証書、大学教育課程、修士課程/博士課程
71
3.まとめ
調査対象者に関する基本的属性を、人口・世帯に関する状況と社会経済的状況について各国比較を行
った。その結果、以下のようなことが明らかになった。
まず、結婚している者の割合は日本と韓国で高く、アメリカ、フランス、スウェーデンでは同棲して
いる者の割合が高い。また、結婚や同棲の経験がある者の間での子どもの数を見ると、平均では各国間
の格差は見られないが、分布を見ると各国で格差が見られる。特に、日本と韓国で 2 人が多く、その他
の国では1人から 3 人までがバランスよく分布している一方で、子どもはいない者も多くなっている。
さらに、居住している世帯の規模別の割合を見ると、このように、欧米では、1人や2人といった小規
模世帯の住む者が多く、日本と韓国では規模の大きな世帯に居住する者が多い。また、夫と妻の就業状
態についてみると、夫妻とも就業は欧米で多く、夫のみ就業は日韓で目立っている。夫妻ともに就業し
ている者の割合を男女・年齢階級で見ると、日韓でこの水準の低いことが目立っている。また、就業状
況について見ると、各国とも常勤の被雇用者が最も多いが、韓国では自営業者が多く、1週間の労働時
間を見ると、韓国が男女とも最も長く、50 時間以上就業する者も最も多かった。
このような結果から見ると、今回調査した 5 か国は日本と韓国、アメリカ・フランス・スウェーデン
という 2 つのグループに区分することができる。その背景として考えられるものとして、日本と韓国で
は、配偶者と暮らすことと法律婚がほぼ一致しているのに対し、アメリカ、フランス、スウェーデンで
は、結婚の形態が自由になっていること、特に後者の国々では、同棲等の形態に対して社会的に寛容で
あると考えられる。その一方で、前者の国々では、結婚して家族を形成し、老親を扶養するという、家
族に関する規範や、仕事と家庭に関する男女の固定的役割分担が機能し続けている面があるのではない
かと思われる。また、韓国で労働時間が長い背景として、韓国では自営業や家族従業者の割合が高く、
パートタイム労働の割合が低いために、いったん就業する場合は長時間の労働時間になってしまうこと
があるものと思われる。
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