式 辞 春の嵐もおさまり、校庭の桜の花びらが日の光を集めながら乱舞

式
辞
春の嵐もおさまり、校庭の桜の花びらが日の光を集めながら乱舞する今日の佳き日に、大洲
市からは、大洲副市長であられます「小島 健市」様、また大洲市教育委員会 教育委員長で
あられます「叶本 正」様をはじめ、多くの御来賓の皆様の御臨席を賜り、平成二十八年度 愛
媛県立長浜高等学校の入学式が、かくも盛大に、この新しい体育館で挙行できますことを、深
く感謝申し上げます。
さて、さきほど入学を許可した四十二名の皆さん、入学おめでとう。君たちは七十七年の歴
史と伝統を持つこの長浜高等学校に、本日入学されました。在校生はもとより、本校職員一同、
君たちの入学を、心から歓迎いたします。ただ今、この瞬間から、君たちが居なければ、この
長浜高校は成立しません。君たちが入学してくれたことによって、本校は昨日までとは異なる、
新たな一歩を踏み出したことになるのです。在校生八十八名、新入生四十二名、計一三〇名が
一つになって、小さくとも存在感のある、新しい長浜高校を、元気一杯に、作り上げていきま
しょう。
保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。心からお喜び申し上げます。
そして、人生で最も美しい三年間を、本校で共に過ごしていただくことに、深く、深く、感謝
申し上げます。
さて、この新たな門出を祝して、一三〇名の在校生に、校長として、２つのお願いをしてお
きたいと思います。
一つ目は、『粘り強さを身につけてほしい』ということです。
「ぼやき」で有名なプロ野球解説者「野村 克也」氏は戦後初の、しかもキャッチャーとし
ては世界で初めての３冠王になりました。そんな彼も、プロ野球１年目は契約金０円のテスト
生として入団し、成績は１年間でたった 11 打数０安打５三振だったそうです。ホームランど
ころかヒットすら一本も打てなかったのです。シーズン終了後、解雇通告まで受けましたが、
頼み込んで、もう１年間だけ契約をしてもらいました。砂を詰めた一升瓶で筋力を鍛え、遠投
で肩を強化するなど、必死の努力によって、翌年は２軍で打率２位の成績をあげることができ
たそうです。でも、１軍に入ることができたのは、その次の３年目からでした。 もし、１年
目であきらめていたら、あの輝かしい成功は、手にしていなかったでしょう。
一方で、こういう人もいます。
iPS 細胞を作り、ノーベル生理・医学賞を受賞した山中教授は、普通の人が 20 分で終わる
手術に、２時間もかかるほど不器用だったそうです。そのため、仲間の臨床医にとって足手ま
といとなり、「山中」ではなく「ジャマナカ」と言われ、臨床医をあきらめたそうです。とこ
ろが、この不器用さの別の一面である、粘り強さが、研究医となって花開きました。なりたか
った臨床医には見切りを付け、より自分に適した研究医の道を、粘り強く、選び直したという
意味で、彼も決してあきらめなかった一人といえるでしょう。
大きな事をなす人は、必ずや、大きな試練に遭います。そして、それを粘り強く乗り越えて
いくものです。皆さんも、長浜高校で色々な経験をし、自らを見つめ、鍛え、自分の人生を、
粘り強く、切り拓いていく、その出発点にしてもらいたいと願っています。
二つ目は、『言葉を大切にしてほしい』ということです。
私が尊敬する作家の「芹沢光治良(せりざわ こうじろう)」氏は、その著書で「言葉は人間にだけ与え
られた、神からの贈り物です。意地悪を言ったり、喧嘩をしたりするために与えられたのでは
なく、相手をいたわり、勇気づけるために与えられたものです」と書いています。
きれいな言葉は、きれいな心を集めます。醜い言葉は、醜い心と引き合います。心が荒んで
くると、言葉も荒んでくるものです。スマホの世界を見てください。
人は、一つの言葉で傷つきもしますが、たった一つの言葉で、生きる勇気をもらうこともあ
るのです。このことは十代の君たちだからこそ、実感できるのではないでしょうか。
できるなら、この長浜高校に通う一三〇名総ての生徒が、美しい言葉で互いに励まし合い、
その輪が地域に広がって、優しい言葉が行き交う大洲･長浜地域になれば、校長としてこんな
に嬉しいことはありません。
以上、『粘り強さを身につけてほしい』ということと『言葉を大切にしてほしい』この２つ
のことを、校長としてのお願いとしておきます。
最後になりましたが、保護者の皆様、私ども教職員一同は、一丸となって、お子様の教育に
取り組む所存でございます。しかし、そのためには、保護者の皆様の御理解と御協力が必要で
あることは、申すまでもありません。どうか温かい御支援と、御協力を賜りますよう、お願い
申しあげます。
それでは、新入生の皆さん。皆さんが、本日の想いを忘れることなく、本校で学ぶことの誇
りを胸に、健康で有意義な高校生活を送ってくれることを祈念いたしまして、式辞といたしま
す。
平成二十八年四月八日
愛媛県立長浜高等学校長
上田 敏博