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黒毛和種雌子牛に適した人工哺乳方法の検討 The Optimum Method

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黒毛和種雌子牛に適した人工哺乳方法の検討 The Optimum Method
愛 知 農 総 試 研 報 39: 45-49 (2007 )
Res.Bull.Aichi Ag ric.Res.Ctr. 39: 45-4 9(200 7)
黒毛和種雌子牛に適した人工哺乳方法の検討
森下
*
*
忠 ・ 瀧澤 秀 明 ・ 榊 原隆 夫
*
摘 要 : 黒 毛 和 種 雌 子牛 に つ い て 、 初期 発 育 に 優 れ た 人工 哺 乳 方 法 を 検討 し た 。 当 場 で生 産
さ れ た 黒 毛 和 種 雌 子牛 17頭 を 3 区 に分 け 、 12週 齢 ま で飼 養 し た 。 対 照区 の 6 頭 は 、 12齢 ま
で 母 子 同 居 で 自 由 哺 乳 と し た 。 定 量 区 の 4 頭 は 、 代 用 乳 を 600g/ 日 で定 量 給 与 と し た 。 多
給 区 の 7 頭 は 、 代 用 乳 量 を 600g/日 か ら 始 め 、 100g/週 ず つ 増 加 さ せ て 最 高 で 900g/日 給 与
し 、 最 大 哺 乳 期 間 を 3 週 間 と し た 後 、 6 週 目 以 降 は 600 g/日 に 減 ら した 。 人 工 哺 乳 時 の 離
乳 は 、 人 工 乳 を3 日 間 連 続 し て、 700g/日 摂 取 した 時 を 目 安 と した 。
1 多 給 区 で は 、 哺乳 期 間 中 は 対 照区 と 同 等 の 発 育 を示 し た 。 定 量 区は 、 他 区 に 比 べ発 育
が劣った。
2 定 量 区 お よび 多 給 区 の 濃 厚飼 料 の 摂 取 量 は、哺乳 量 に 関 係 な く4 週 齢 頃 か ら 多く な り 、
7 週 齢 ま で 差が な か っ た 。
3 多 給 区 は 定 量 区に 比 べ 、 飼 料 摂取 量 が 早 く 多 く なる 傾 向 に あ り 、そ の た め 離 乳 時期 は
定 量 区 の 70.0日 に 対 し 、 多 給区 は 54.9日 と 早く な っ た 。
4 下 痢 の 発 生は 哺 乳 量 に 関 係し な か っ た 。
以 上 の 結 果 か ら 、段 階 的 に 哺 乳 量を 増 加 さ せ 、 そ の後 減 少 さ せ る 人工 哺 乳 方 法 は 、哺 乳
期 間 中 の 発 育 に優 れ る こ と が 明ら か と な っ た 。
キ ー ワ ー ド : 黒毛 和 種 、 雌 子 牛、 人 工 哺 乳
The Optimum Method for Artificial Suckling
in Japanese Black Heifer Calves
MORISHITA Makoto, TAKIZAWA Hideaki and SAK AK IBARA T aka o
A bs t ra ct : This study was conducted to investiga te the effective artificia l suckling method
of Ja panese bla ck heifer calves. Sev enteen calves w er e divided into 3 gr oups, a nd were
a ssig ned to one of three tr ea tm ents until 12 weeks of a ge. Six calves of group 1 were
housed with their dam s for 12 w eeks. F our ca lves of group 2 suckled 600 g/day of
c om mercia l m ilk replacer. F or group 3, sev en calves suckled m ilk repla cer 600g /day for
f irst 1 w eek and f rom 7 w eeks of a ge until weaning. F rom 2nd week b irth, feeding
a mount of milk repla cer was increased 100g /w eek until 900 g/day at 4 w eeks of age,
m axim al suckling per iod w as kept during 3 w eeks. The w ea ning wa s at w hen calves in
a rtificial suc kling groups had c onsum ed star ter 7 00g/da y for 3 days consecutively.
1 . Body w ei ght ga ins of g roup 3 wer e si mila r to that of group 1 . Body w eight ga ins in
gr oup 2 were lower than those in the other groups.
2. Starter intake of both artificial groups was increscent a t 4 weeks of age, appr oxim ately.
Sim ilar increm ent wa s observ ed until 7 weeks of a ge.
3 . Conc entrate intake of group 3 tended to b e higher than that of gr oup 2. Calves were
w ea ned at 70.0 a nd 59 .9 days from birth in group 2 a nd group 3, respectively.
4 . D iarrhea r ate w as not a ffec ted by suc kling method.
T hese results suggest that the artificial suckling method of group 3 is suitable to
J apa nese b lack heif er calves.
K ey words: Japanese blac k, Heifer calves, Artificial suckling
*
畜産研究部
(2007.9.10 受 理 )
46
森下 ・ 瀧澤 ・榊 原: 黒毛 和種 雌子 牛に 適し た人 工哺 乳方 法の 検討
間は2.6m ×4.4mのペ ンで管 理し、 昼間は母 子とも に運
緒 言
動場へ 放した 。生後1 週齢以 降に、 母牛の盗 食を防 止す
近 年、酪 農家にお ける胚 移植の普 及や和 牛繁殖 農家で
の早 期の母 子分離技 術の導 入により 、人工 哺乳さ れる黒
るため の隔柵 をペン内 に設け 、母牛 の飼料と 分離し て子
牛用飼 料を給 与した。
毛和 種産子 が増えて いる。
定量 区と多 給区の子 牛は、 分娩後 48時間以 内に母 子分
子牛 の人 工哺乳 につ いて は、「 定時 、定 量、 定温 」が
基本 とされ てきた。 しかし 我々は前 報
1)
離し、 独房で 管理した 。初乳 摂取状 況を確認 し、十 分飲
で 、黒毛 和種雄
めてい ないと 思われる 個体に は、乳 牛の凍結 初乳ま たは
子牛 を定量 哺乳した 場合、 母子同居 による 自然哺 乳に比
粉末初 乳を給 与した。 代用乳 は、市 販の和牛 用代用 乳を
べ、 初期生 育が劣っ たこと を報告し た。そ こで我 々は、
6倍の 温湯で 希釈し、 哺乳バ ケツま たはバケ ツから がぶ
黒毛 和種雄 子牛の人 工哺乳 について 検討し 、哺育 前期に
飲みで 給与し た。
哺乳 量を段 階的に増 加させ ることで 、自然 哺乳産 子と同
等の 発育と なること を報告 した。
定量 区は母 子分離後 、代用 乳を1 回300gの 定量と し、
1日2 回給与 した。
こ のこと は、雌子 牛につ いても同 様に考 えられ る。し
多給 区は、 母子分離 後、表 1のプ ログラム のとお り、
かし 、雌子 牛は雄に 比べ体 重が小さ く、雄 と同様 に哺乳
1回の 哺乳量 を50g/週 ずつ増 量し、 1日2回 給与し た。
した 場合、 初期の飼 料摂取 量が少な い。そ のため 、黒毛
最高哺 乳期間 (450g/回) は3週 間とし 、6週目 より300
和種 雌子牛 に適した 人工哺 乳方法に ついて 検討し た。
g/回に 減らし た。
定量 区およ び多給区 では、 離乳の 目安を人 工乳を 3日
材料及び方法
間連続 700g摂 取した時 点とし、3 ∼5日 かけて離 乳した。
定量 区およ び多給区 の子牛 には、 生後3日 目に貧 血予
1
試験区 の概要
防とし て鉄剤(ネ オトシ フェロ ン・200、デ ンカ製薬( 株)
)
試 験には 、当場で 人工授 精により 生産さ れた黒 毛和種
5mL、ビタ ミンE剤( ビタミ ンイー注 、日 本全薬 工業( 株)
)
雌子 牛を用 いた。試 験区は 、哺乳量 を一定 にした 定量区
2mLお よびビ タミンAD 3E剤(デ ュファ フラル-フォ ルテ、
(4 頭)と 、表1に 示した ように段 階的に 哺乳量 を増加
共立製 薬㈱) 1mLを臀 部筋肉 に注射 した 。
2)
させ る多給 区( 7頭)を設定 した。また、対 照区(6頭)
とし て、生 後5か月 まで母 子同居で 飼養し た過去 の試験
デー タを用 いた。試 験区分 、試験期 間、供 試数お よび出
生時 体重を 表2に示 した。
3
調 査期間 および調 査項目
調査 期間は 、各子牛 出生時 から12週齢(84日)ま でと
した。
(1) 体格測 定
2
飼養管 理方法
体重、体高お よび胸 囲を測 定した。定量区 と多給区 は、
各 区とも 、生後1 週齢以 降に濃厚 飼料お よび粗 飼料を
体重は 出生時 に測定し 、以降 は2週 間毎に測 定した 。体
給与 した。 濃厚飼料 は市販 の人工乳 を用い 、乾草 はカッ
高およ び胸囲 は、出生 から2 週間後 に測定し 、以降 は2
トし たチモ シー乾草 を用い た。給与 した飼 料の成 分を表
週毎に 測定し た。
3に 示した 。人工乳 および チモシー は、一 定量給 与し、
対照 区は、 体重は出 生時に 測定し 、以降は 4週間 毎に
食べ 尽くし た時点で 追加す る方法で 給与し た。水 はバケ
測定し た。体 高および 胸囲は 、出生 から4週 間後に 測定
ツま たはウ ォーター カップ で自由飲 水とし た。
し、以 降は4 週毎に測 定した 。
対 照区の 子牛は、 20週齢 まで母子 同居で 管理し た。夜
表1
生
後
0週齢
1
2
3
4
5
6
7
:
:
:
:
12
多給区の飼養プログ ラム
1)
代用乳
300g
350
400
450
450
450
300
2)
表2
試 験区の 概要
人工乳
乾草・水
区 名
摂
取
状
況
に
応
じ
て
増
量
不断給与
対照区 母子同 居 1998. 7∼2000.1 1
定量区 人工・定 量 2001. 7∼2001.1 2
多給区 人工・多 給 2005. 3∼2007. 1
1)6倍の温湯で希釈、1日2回給与
2)人工乳を3日間連続700g摂取後、3∼5日かけ離乳
哺乳方 法
試 験期 間
供試 数 出生時 体重
頭
6
4
7
1)平 均± 標準偏 差
表3
代用乳
人工乳 1)
チモシー
供試飼料
(原物%)
DM
CP
TDN
87.5
87.5
89.8
26.0
21.0
6.7
102.0
77.0
56.3
1)日本標準飼料成分表(2001年 版)より
kg
24.8±3.3 1)
25.8±3.9
30.1±4.1
47
愛 知 県 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 第 39号
(2) 飼料 摂取量
の平均 は、対 照区24.8kg、定 量区25.8kg、多 給区30.1kg
代 用乳、 人工乳お よび乾 草の給与 量から 残飼量 を差し
と、多 給区が 他区に比 べ約5 kg大き かった。 多給区 は、
引い て飼料 摂取量を 求めた 。
8週齢 時まで 対照区と 同等の 体重増 加や体高 の伸び を示
飼 料摂取 量から乾 物(以 下DM)摂 取量、 粗蛋白 質(以
したが 、以降 は対照区 が優れ る傾向 にあった 。定量 区の
下 CP) 摂取 量、 可消 化養 分総 量(以 下TDN)摂 取量 を算
胸囲と 体高は 、発育推 定値の 下限値 前後で推 移した 。定
出し た。
量区は 、生後 4∼6週 齢時に 発育停 滞する傾 向が見 られ
(3) 下痢 発生状況
た。多 給区は 、生後8 週齢以 降に発 育停滞す る傾向 にあ
下 痢の発 生につい て、目 視により 確認、 記録し た。
った。
(4) 経済 性
体格 測定の 各項目に ついて 、4週 齢間ずつ の1日 増加
飼 料摂取 量から飼 料費を 算出した 。飼料 単価は 前報と
量を 表4 に示 した 。0-4週齢 間の 1日 体重 増加 量は、 定
同じ とし、 原物1kg当たり 、代用乳 403.0円、 人工乳 74.
量区に 比べ多 給区が有 意に大 きかっ た(p<0.05)。8-12週
5円、チ モシー乾 草47.3円とし た。
齢間に は、各項目 で多給区 が有意 に小さ かった(p<0.05)。
対 照区に ついては 、母牛 が黒毛和 種の平 均的な 産乳を
3)
行っ てい ると想 定し 、母乳 1kgを生産 する のに必 要な
TDNを0.36kgとし て、母 牛用飼 料(TDN72%、CP14%、単価
53.5円)に 換算して 飼料費 に加えた 。
2
飼 料摂取 量
試験 期間中 の飼料摂 取量を 種類別 、成分別 に表5 に示
した。 人工乳 の給与量 の推移 を図4 に示した 。
(5) 統計 処理
定量 区およ び多給区 は、人工乳 とチモ シーの摂 取量が、
各 区間の 平均値に ついて 、t検定 により 差の検 定を行
った 。
対照区 より有 意に多か った(p<0.05)。また、 飼料成 分に
ついて も、各 項目で定 量区、 多給区 ともに対 照区よ り有
意に多 かった (p<0.05)。
試験結果
定量 区およ び多給区 では、 人工乳 の摂取が 多くな り始
める時 期は概 ね4週齢 頃で、 7週齢 まで差が なかっ た。
1
体格測 定
7週齢 以降の 摂取量は 、多給 区が定 量区に比 べ多い 傾向
期 間中の 体重の推 移を図 1、体高 の推移 を図2 、胸囲
にあっ た。対 照区の人 工乳摂 取量は 、定量区 に比べ 7週
の推 移を図 3に示し た。各 図中には 、黒毛 和種雌 子牛の
発育 推定値 の範囲
kg
80
4)
を点線 で示した 。各区 の出生 時体重
cm
100
対 照区
対 照区
定 量区
定 量区
多 給区
多 給区
85
50
70
週齢
20
0
4
8
0
4
12
図3
図1
体格測定項目の1日増加量
0-4週齢
対照 区
定量 区
85
多給 区
75
65
週齢
0
4
図2
胸囲の推移
体重の推移
表4
cm
週齢
12
8
8
体高の推移
12
4-8週齢
8-12週齢
体重 (kg/日)
対照区 0.71±0.28ab1,2)0.58±0.23a
定量区 0.50±0.06b
0.71±0.20a
多給区 0.65±0.10a
0.59±0.03a
0.86±0.17a
0.67±0.16b
0.69±0.12b
体高 (cm/日)
対照区
定量区
多給区
0.23±0.12a
0.21±0.03a
0.21±0.04a
0.20±0.04a
0.23±0.07a
0.13±0.07b
胸囲 (cm/日)
対照区
定量区
多給区
0.33±0.09a
0.40±0.07a
0.36±0.07a
0.31±0.04a
0.39±0.10b
0.26±0.08a
1)平均±標準偏差
2)異符号間に有意差あり(p<0.05)
48
森下 ・ 瀧澤 ・榊 原: 黒毛 和種 雌子 牛に 適し た人 工哺 乳方 法の 検討
齢以 降で、 多給区に 比べ5 週齢以降 で有意 に少な かった
今回、 予備試 験の段階 で雄子 牛と同 じ方法で 雌子牛 を哺
(p<0.05)。
乳した が、定 量区と差 がなか った。 その原因 は、採 食量
離 乳は、 定量区で 70.0± 6.6日、多給 区で54.9±4.9日
が雄子 牛に比 較して少 ないた め、哺 乳量が早 く少な くな
とな った。 代用乳給 与量は 、定量区 で38.0kg、多 給区で
ること で、栄 養が不足 したと 考えら れる。そ こで、 最大
38.6kgとな った。
哺乳期 間を3 週間とし て、本 試験を 行った。
3
多給区 は対照 区と同様 な推移 を示し ている。 多給区 の平
図1 ∼3よ り、8週 齢まで の体重、体高お よび胸囲 は、
下痢発 生状況
12週齢ま での下痢 の発生 回数は、 定量区 、多給 区とも
均離乳 日数が 54.9日( 約8週 )であ ることか ら、哺 乳期
延べ 8頭ず つだった 。対照 区では、 明らか な下痢 の発生
間中の 成長は 、対照区 と同等 であっ たと考え られる 。定
は確 認され なかった 。
量区 と比 較す ると 、多 給区 は0-4週齢 間の 体重 増加が 有
意に多 く、こ の間の哺 乳量の 差によ ると考え られた 。こ
4
経済性
のこと から、 雄子牛よ り最大 哺乳期 間を延長 した本 報の
経 済性に ついて表 6に示 した。定量区 および 多給区 は、
対照 区に比 べ有意に 飼料費 が高かっ た。対 照区の 母牛の
3)
方法が 、雌子 牛には適 当と考 えられ た。
図4 に示し たように 、人工 哺乳中 の黒毛和 種雌子 牛の
乳 生産 量は 、12週 齢ま でに 556kgと 推 定さ れ 、生 乳生
人工乳 の摂取 が増え始 める時 期は、 哺乳量に 関係な く概
産に 必要な 飼料費は 14,884円と試算 された 。その ため、
ね4週 齢頃で 、7週齢 まで差 がない 。従って 、6週 齢ま
対照 区の母 牛の乳生 産分を 含めた飼 料費は 、17,248円と
では十 分に哺 乳するこ とが、 増体性 の改善に なると 考え
試算 した。
られる 。また 、7週齢 以降の 人工乳 の摂取量 は、哺 乳方
法によ り差が あり、哺 乳量を 6週齢 以降減量 する多 給区
考 察
が、定 量区に 比べ多い 傾向に あった 。哺乳期 間中の 代用
乳の量 が、その 後の採食 量に影 響し、液 状飼料(代 用乳)
黒 毛和種 の人工哺 乳につ いては、 乳牛を 借り腹 とした
から固 形飼料 (人工乳 )へ順 調に切 り替えら れたと 考え
胚移 植の広 まった1980年以 降に各地 で試験 研究が なされ
られる 。固形 飼料への 切り替 えは離 乳時期に 影響す るた
てい る。し かし、こ れらの 多くは雌 雄混合 で、性 を区別
め、代 用乳を 多給して いるに もかか わらず、 多給区 の離
して 検討さ れていな い。わ ずかに、 鳥飼ら
6)
ら
5)
およ び若田
の報告 で、雄子 牛につ いて検討 され、 小田ら
7)
の報
告で 、雌雄 による哺 乳期間 の差が示 されて いる程 度であ
る。
乳は定 量区よ り約2週 間早く なり、 作業性か らも有 利と
なった 。
一方 で、8-12週齢間 の体高 と胸囲 は、定量 区に比 べ多
給区が 有意に 小さかっ た。定 量区は 10週齢ま で哺乳 され
雌 雄の差 は、出生 時体重 に現れる 。雄子 牛につ いて報
ており 、この 哺乳期間 の長さ による 影響と思 われる 。小
7)
告し た前報 の平均体 重は、 30.9kgで あった 。本報 での全
田ら
体の 平均体 重は27.2kgで、 約3kgの 差があ った。 全国和
するべ きだと 述べてい る。し かし、 前報の雄 子牛の 平均
4)
は、雄 子牛と比 較して 、雌子 牛の哺乳 期間を 長く
牛登 録協会 の発育推 定値 で は、出生時 平均体 重は雄 39.
離乳日 数50.3日と比較 して、 多給区 の離乳日 数には 差が
0kg、 雌29.9kgと なっ てお り、 約9 kgの 差があ ると され
ない( p<0.05) 。こ のため、離乳時期 を遅ら せるこ とで、
てい る。
体 重の差 は採食量 に影響 する。前 報では 、雄子 牛の哺
乳量 を段階 的に増や し、最 大哺乳期 間を2 週間と した。
kg/ 週
15
対照区
定量区
多給区
12
b
b
b
b
b
b
9
b
b
b
6
3
ab
-
b
b
a
a
6
a a
b
a
a
飼料摂取量
対照区
定量区
種類別
代用乳
人工乳
チモシー
24.4±11.5a
11.6± 5.8a
成分別
DM
CP
TDN
31.7± 9.3a
5.9± 2.3a
25.3± 8.1a
a
表6
a
対照区
2
4
8
10
図4
人工乳給与量の推移
(kg)
多給区
38.0± 4.6a1、2)38.6± 4.1a
57.6±15.4b
65.0± 8.9b
26.9± 5.8b
25.3± 7.3b
107.8±13.1b
23.8± 2.3b
98.2± 9.6b
113.4± 9.8b
25.4± 1.4b
103.7± 6.7b
1)平均±標準偏差
2)異符号間に有意差あり(p<0.05)
c
b
a
表5
週齢
12
経済性
定量区
1,2)
飼料費 2,364±787a
20,875±862b
1)平均±標準偏差
2)異符号間に有意差あり(p<0.05)
(円)
多給区
21,597±1,123b
49
愛 知 県 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 第 39号
雌子 牛の増 体性をさ らに改 善する可 能性が 示唆さ れた。
引用文献
多 給哺乳 では、消 化性の 下痢の発 生が懸 念され る。し
かし 、今回 の試験で は哺乳 期の下痢 は、哺 乳量に 関係し
1. 森 下忠 ,瀧 澤秀 明, 石井 憲一 ,松 井誠 .初 期発育 に
な かっ た。 そのた め、 100g/週程 度の 哺乳 量の 増加 は消
優 れ た黒 毛和 種雄 子牛 の人工 哺乳 方法 .愛 知農 総試 研
化管 への負 担は少な いと考 えられた 。
経 済性で は、飼料 摂取量 の多い多 給区で 飼料費 が高い
傾向 にあっ た。多給 区と定 量区を比 較する と、代 用乳の
摂取 量には 差がない 。多給 区は、そ の他の 飼料摂 取量が
報 .36, 75-80(2004)
2. 松本大 策.さ らによく なる子 牛生産 .東京.(株 )日
本 畜産振 興会, 43-47(2002)
3. 農 林水 産省 農林 水産 技術 会議 事務 局編 .日 本飼料 標
多い ため、 飼料費は 高くな ったが、 有意差 はなか った。
準
また 、多給 区と対照 区を比 較すると 、多給 区が有 意に飼
(2000)
料費 が高い が、母牛 の泌乳 量分の飼 料費を 加味す ると、
差 は約 4,000円と 少な くな った。 この ほか 対照 区で は、
母子 同居の ため母牛 の発情 回帰が遅 れやす いとの 報告も
8)
あり 、多 給区 が必ず しも 経済的 に不利 とは 考えら れな
かっ た。
肉 用 牛 (200 0年 版 ). 東 京 . 中 央 畜 産 会 , 51-5 5
4. 黒 毛和 種正 常発 育曲 線. 社団 法人
全 国和 牛登録 協
会 ,(2004)
5.鳥 飼善 郎, 道後 泰治 .早 期離 乳が 黒毛 和種 雄子牛 の
哺 育育成 期の発 育に及ぼ す影響.兵庫農 技研報( 畜産).
30,1-4(1994)
以 上のこ とから、 黒毛和 種雌子牛 の哺乳 方法と して、
6. 若 田雄 吾, 林希 史雄 ,佐 伯拡 三. 胚移 植に より生 産
段階 的に哺 乳量を増 やし、 最高哺乳 期間を 3週間 とする
さ れ た黒 毛和 種子 牛( 雄・去 勢) への 人工 哺乳 がそ の
方法 が、哺 乳期の増 体性を 改善する ため、 より適 してい
後 の 発 育 に 及 ぼ す 影 響 . 愛 媛 畜 試 研 報 . 1 4, 35-3 6
ると 結論づ けられた 。
多 給区で は、表4 に示した ように、8週齢 以降の 体重、
(1997)
7. 小 田頼 政, 塚本 章夫 ,中 村行 雄, 辻誠 之, 溝口豊 ,
体高 および 胸囲の伸 びが鈍 化してお り、12週齢以 降でも
山 本 洋, 岸戸 武夫 ,森 大二. 受精 卵子 牛の 哺乳 期間 が
体重 増加は 対照区に 劣って いる。今 後は、 黒毛和 種雌子
育 成期の 発育に 及ぼす影 響.岡 山総畜 セ研報. 1, 7-12
牛の 哺乳期 間につい て引き 続き検討 すると ともに 、離乳
(1990)
後の 飼養管 理につい て、さ らに検討 する必 要があ ると考
えら れた。
8. 居 在家 義昭, 岡野 彰,島 田和 宏,大 石孝 雄.肉 牛に
お ける 分娩 後の卵 巣機 能回 復に 及ぼ す早 期離 乳及 び黄
体 形成 ホル モン放 出ホ ルモ ン類 縁化 合物 投与 の影 響.
中国農研 報2.35-42(1988)
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