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1 接続カリキュラムの作成にあたって

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1 接続カリキュラムの作成にあたって
1 接続カリキュラムの
接続カリキュラムの作成
カリキュラムの作成にあたって
作成にあたって
三田市には、公私立あわせて20の幼稚園と9つの保育園所があります。幼稚園については、平
成22年度より公立幼稚園園区の自由化が図られ、希望によって市内のどの幼稚園にも通える環境
が整いました。また、保護者の就労等の事情により、保育園所に通う園児も少なくありません。就
学前の施設において、市内のさまざまな地域から園児が通っている状況が見られます。
また、市内には20の公立小学校がありますが、全児童数が10名の小規模校から、ニュータウ
ンでは児童数が750名近くにのぼる学校もあります。農村部の小学校においては、近隣の幼稚園
からの入学生が大半を占める一方で、ニュータウン地域の小学校では、公私立幼稚園・保育園所の
10園所以上から児童が入学するというところもあります。
幼稚園、保育園所から小学校へ入学するにあたって、昨日まで年長組として年下の子のお兄さん
お姉さん役を務めていた子どもたちが、一番年少の1年生という立場に置かれることとなります。
昨年度、保育園所・幼稚園や小学校 1 年生担任の先生方を対象に実施した子どもの育ちに関するア
ンケートからは、幼稚園や保育園所での多くの経験により成長した園児の中に、小学校入学時には、
不安を抱え、できないことに戸惑う姿がみられました。中でも、多くの幼稚園や保育園所から子ど
もたちが集まってくる小学校においては、子どもたちの経験の違いから、生活や学習に関するルー
ルの定着、まわりとの関係づくり等、一からのスタートとなってしまうこともあるようです。
しかしながら、子どもたちには幼稚園や保育園所の生活や遊びの中で小学校以降の生活や学習に
つながる力がしっかりと育まれています。接続期において、「育ち」と「学び」の連続性を保障す
るカリキュラムを実践することによって、就学前の保育・教育とつながりのある小学校教育が展開
され、子どもたちも安心して小学校生活をおくり、自身の力を十分に発揮していくことができると
考えます。
本カリキュラムでは、主に就学前4か月と入学後2か月の6か月間をつなぐ「アプローチカリキ
ュラム」
「スタートカリキュラム」という2つのカリキュラムのほかに、
「保幼・小連携の取組の推
進」や「特別支援教育の充実」の視点を加えました。
「保幼・小連携の取組の推進」では、入学にむけての心理的段差の解消や小学校をより身近に感
じられるような連携の取組について、合同学習や日常的な交流活動等、市内各小学校におけるこれ
までの取組の中から紹介しています。
「特別支援教育の充実」では、新しい環境への適応により困難さを抱える、支援の必要な子ども
たちに、どのような支援や指導を行っていくのがよいかを、巡回相談等で相談を受けることが多い
事例を挙げながら説明しています。あわせて、環境が変わっても子どもの安心につながるように、
個別の指導計画などが支援をつなぐ有効なツールとなるよう、作成のポイントについて記載してい
ます。そして、学びやすく生活しやすいユニバーサルな環境づくりにむけても提案しています。
このカリキュラムが多くの先生方に活用され、市内の幼稚園、保育園所と小学校が広く深く連携
を図りながら、三田の子どもたちに豊かな「育ち」と「学び」が保障されていくことを期待するも
のです。
-3-
2 接続カリキュラムの
接続カリキュラムの基本理念
カリキュラムの基本理念 ~三田市が
三田市が進める保幼
める保幼・
保幼・小連携~
小連携~
(1)三田市の現状
現在の保育・教育においては、子どもたちが自ら学び、自ら考える「生きる力」の育成を重視し、
保育所保育指針、幼稚園教育要領、小学校学習指導要領、中学校学習指導要領にも示されていると
おり、発達や学びの連続性を踏まえた実践を行う必要があります。
三田市においては、平成19年度より幼児・児童・生徒の発達の過程及び保育・教育の連続性を
大切にしながら、保幼・小・中学校園所11年間を見通した保育・教育の実践、連携活動を推進し
ています。年度の初めや終わりには、市内全ての保育園所・幼稚園・小学校・中学校管理職や教員
による研修会を実施し、年間の連携活動計画を立てながら中学校区を中心とした取組を進めていま
す。
連携
連携
小学校
小学校
連続した育育育育ちちちち
連続した学学学学びびびび
地域
中学校
家庭
保幼・小接続期
保育園所・幼稚園
中でも保幼・小連携においては、5歳児と一つ上の1年生や4月に最高学年になる5年生との交
流活動を中心に、各校園所でさまざまな工夫をし、実践しています。1年生との合同学習、小学校
への体験入学は、すべての小学校で行われており、その成果として、子どもたちは、小学校入学時
にすでに安心感を得ており、新しい環境への不安を和らげることにつながっています。
しかし、幼児期の遊びや生活を中心とした活動と、小学校での時間割に基づいた学習との違いが
あり、入学期に戸惑いを見せる様子もうかがえます。
遊びを通して学ぶ幼児期の教育活動から、教科学習が中心の小学校以降の教育活動への移行を図
-4-
り、教育活動通しての「育ちと学びの連続性」を考える時、これまで以上に就学前の保育・教育に
おいて小学校生活へ円滑に接続できる教育課程の編成が必要となるのです。
(2)カリキュラム作成の基本的な考え
保幼・小をつなぐ接続カリキュラムの作成にあたっては、対象期間を就学前12~3月、入学後
4~5月とし、就学前、小学校それぞれに以下のような内容をポイントとしました。
<各保育園所・幼稚園>
<市内全小学校>
卒園所・入学
12 月~3 月
4 月~5 月
保幼小の
保幼小の交流から
交流から相互理解
から相互理解を
相互理解を図る
各小学校区での連携会議の推進
幼児と児童の交流・教師間の交流
「就学前接続期の
アプローチカリキュラム」
アプローチカリキュラム
「小学校入門期の
スタートカリキュラム」
スタートカリキュラム
つながりを意識
つながりを意識した
意識した保育
した保育・
保育・教育
「保幼小接続期のカリキュラム」を活用して
就学前保育・教育
○それぞれの保育
○それぞれの保育を
保育を充実するとともに
充実するとともに、
するとともに、小学校につながる
小学校につながる教育内容
につながる教育内容を
教育内容を明確にした
明確にした上
にした上
で、育ちや学
ちや学びを促
びを促していく。
していく。
○12月
○12月~3月は、子どもたちの育
どもたちの育ちを確認
ちを確認しつつ
確認しつつ、
しつつ、小学校での
小学校での生活
での生活を
生活を意識し
意識し、その
基盤をつくる
基盤をつくる保育
をつくる保育を
保育を展開する
展開する。
する。
○幼稚園教育要領や
幼稚園教育要領や保育所保育指針を
保育所保育指針を基本とし
基本とし、
とし、保育園所および
保育園所および幼稚園
および幼稚園の
幼稚園の枠を越え、
子どもの発達特性
どもの発達特性に
発達特性に応じ、必要な
必要な経験や
経験や体験を
体験を考える。
える。
○小学校で
小学校で意欲をもって
意欲をもって学
をもって学ぶことにつながる保育
ぶことにつながる保育の
保育の中心になる
中心になる遊
になる遊びを通
びを通して、
して、小学校
の教育内容や
教育内容や生活内容に
生活内容に興味関心が
興味関心が持てる取組
てる取組を
取組を工夫する
工夫する。
する。
小学校教育
○基本的生活習慣を
基本的生活習慣を中心に
中心に、就学前保育・
就学前保育・教育での
教育での児童
での児童の
児童の生活の
生活の様子を
様子を知り、小学校
での指導
での指導に
指導に生かす。
かす。
○児童が
児童が安心して
安心して学習
して学習することに
学習することに慣
することに慣れていくために、
れていくために、「育
「育ち」や「学び」のつながり
を意識し
意識し、就学前保育・
就学前保育・教育の
教育の成果を
成果を生かした指導内容
かした指導内容と
指導内容と指導方法を
指導方法を工夫する
工夫する。
する。
-5-
〔資料〕幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について(報告)平成22年11月
幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議(文部科学省調査研究機関)より
○幼児期から児童期にかけては、学びの基礎力を培う時期であり、互いの教育を見通し、連続性・一貫
性のある教育を行う必要がある。
○幼児期から児童期への発達や学びの連続性の姿を「学びの自立」
「生活上の自立」
「精神的な自立」の
3つの自立の視点から共通理解し、教育課程の接続を考える必要がある。
○幼児期も児童期(低学年)も発達の連続性から、直接的・具体的な対象とのかかわりを通して、学び
の芽生えから自覚的な学びへ円滑な移行が図られるようにすることが大切である。
幼児期
「学びの芽生え」
児童期
「自覚的な学び」
幼児期における遊びの中での学び
学ぶということを意識しているわけ
ではないが、楽しいことやすきなことに
集中することを通じて様々なことを学
んでいくこと。
小学校における各教科等の授業を通した学習
学ぶということについての意識があり、集中する時間とそう
でない時間(休憩の時間等)の区別がつき、与えられた課題を
自分の課題として受け止め、計画的に学習を進めること。
↓
児童期のはじめには、「自覚的な学び」を確立しながらも、
楽しいことや好きなことに没頭する中で学ぶ意欲を育てる活
動を取り入れることが必要。
幼児期には、
「学びの芽生え」から「自
覚的な学び」へ意識できるような活動を
計画することが必要。
↓
学びの芽生えから自覚的な学びへの円滑な移行を図る教育活動は、発達の段階を考慮して、直接的・具
体的な対象とのかかわり(人・ものとのかかわり)の中で行う必要がある。
人とのかかわり(幼児期の終わり)
人とのかかわり(児童期)
幼児の興味・関心や生活、協同性の育
ち等の状況を踏まえ、教職員が方向づけ
た課題を自分のこととして受け止め、相
談したり互いの考えに折り合いをつけ
たりしながら、クラスやグループみんな
で達成感をもってやり遂げる活動を計
画的に進める。
幼児期における「人とのかかわり」の指導の状況や実際の子
どもの発達や学びの状況を十分把握しつつ、学校教育活動全体
を通じ、与えられた課題について友だちと助け合いながら、自
分が果たすべき役割(学習や仕事)をしっかりと果たすといっ
た集団規範性の形成を図る活動を計画的に進める。
その際、幼児の思いや考えから豊かな学びを展開していくな
どといった幼児期の教育の方法を取り入れていく。
ものとのかかわり(幼児期の終わり)
ものとのかかわり(児童期)
幼児の興味・関心や生活等の状況を踏
まえて教職員が方向づけた課題につい
て、発達の個人差に十分配慮しつつ、こ
れまでの生活や体験の中で感得した法
則性、言葉や文字、数量的な関係などを
組み合わせて課題を解決したり、場面に
応じて適切に使ったりすることについ
て、クラスやグループみんなで経験でき
る活動を計画的に進める。
幼児期における「ものとのかかわり」の指導の状況や実際の
子どもの発達や学びの状況を十分把握しつつ、各教科等の指導
を通じ、日常生活に必要な基礎的な国語の能力、生活に必要な
数量的関係の正しい理解や基礎的な処理能力、生活にかかわる
自然事象についての実感的な理解と基礎的な処理能力、生活に
かかわる自然事象についての実感的な理解と基礎的な能力、音
や音楽のよさや面白さを感じ取りながら表現・鑑賞する能力、
身近な自然物や人工の材料の形や色などから発想や構想の能
力などの育成を図るための活動を計画的に進める。その際、幼
児期の教育の方法を取り入れていくことも考えられる。
人やものとのかかわりを支えるために重要な役割を担う言葉や表現
言葉や表現は、学びの基礎力を育む上で極めて重要であり、学びの基礎力が育まれる中で言葉や表現も
発達していく。
こうした言葉や表現の重要性を踏まえ、言葉や表現を通じて他の子どもや教職員・保護者とのやりとり
を行うことで、気づきや思考を深めようとする活動が展開されるよう、留意することが必要。
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