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P-3 - 日本大学理工学部
平成 22 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集 P-3 合同数問題と楕円曲線 The congruent number problem and elliptic curves 辻岡 温子1 1 合同数問題 与えられた面積に対して、3 辺が有理数の直角三角形が存在するかどうかを、楕円曲線という問 題との関連について述べる。整数の辺の直角三角形の例として (3, 4, 5) を考えると、この面積は 6 であるが、与えられた任意の面積に対し常にこのような直角三角形が作れるとは限らない。3 辺の 長さが有理数 a, b, c であり、面積 5 である直角三角形を考えてみる。 ab 面積は 5 なので、 = 5 即ち、ab = 10 である。 2 また、ピタゴラスの定理より、 a2 + b2 = c2 . ゆえに ( ( a+b 2 a−b 2 )2 a2 + 2ab + b2 c2 + 20 = = = 4 4 ( )2 c +5 2 a2 − 2ab + b2 c2 − 20 = = 4 4 ( )2 c −5 2 )2 = c となる。x = ( )2 とおくと 2 ( x−5= a−b 2 ( x+5= )2 a+b 2 、 )2 であることから、 x − 5, x, x + 5 が有理数の 2 乗になるような有理数 x を求める問題になる。このような x を考えることは y 2 = (x − 5)x(x + 5) = x3 − 25x (1.1) が有理数解を持つかどうかを考えることになる。(1.1) の有理点から実際に上記の三角形を探すこ とが、楕円曲線の有理点を求める問題に帰着される。楕円曲線 (1.1) 上の自明な点は (−5, 0) , (0, 0) , (5, 0) であるが、3 点は一直線上にあるため、三角形を作らない。少し探すと (−4, 6) が見つかるだろう。 (1.1) と点( − 4, 6)における接線の方程式 1 日大・院・数学 1 1317 平成 22 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集 y= 23 41 x+ 12 3 との交点を求めることにより、 x= となる。ゆえに c = 1681 = 144 ( 41 12 )2 , y= 62279 1728 41 2 400 9 ,a = , b2 = , 面積 5 の直角三角形の辺 (a, b, c) は 6 9 4 a= 20 3 41 , b= , c= 3 2 6 である。つまり直角三角形 (40, 9, 41) の辺を 6 で割ったものである。 このように、整数 n > 0 が有理数辺の直角三角形の面積となりうるかどうかを考究する問題を合同 数問題と言う。 上記のような合同数問題と楕円曲線との関連については、1983 年に Tunnel[1] によって考察され ている。 定理.(Mordell-Weil) E を Q 上定義された楕円曲線とし、E(Q) を E の Q 有理点の集合とおく。 このとき、E(Q) は有限生成アーベル群である。 したがって、アーベル群の基本定理より、 E(Q) ∼ = Zr ⊕ F (r ≥ 0、r ∈ Z) とあらわせることがわかる。ここで F は torsion point の集合で有限集合になる。r ∈ Z を E(Q) の階数(rank)という。r を求めるのは一般に容易ではなく、任意に大きくできるかどうかさえま だわかっていない。 系. rank (E(Q)) = 0 のとき、有理点は有限個に限る。rank (E(Q)) ≥ 1 のとき、無限個の有理 点をもつ。 参考文献 [1] J.B.Tunnell, A classical Diophantine problem and modular f orms of weight 3/2. Invent. Math.,72 (2) : 323-334, 1983. [2] L.C.Washington, Elliptic curves, number theory and cryptography, Chapman & Hall/CRC, 2008. [3] J.H.Silverman, T he arithmetic of elliptic curves, Springer-Verlag,GTM 106,1986. 2 1318