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ニューヨーク発 「原発事故時の農業対策プログラム」 入手! “農業者には
『農業集落のための放射 線緊急事態情報』 (発行:ニューヨーク州放射線対応計画) この小冊子は、近隣の原子力発電所に おける万一の放射線緊急事態に、農業関 成されています。農業関係者(農家、食 者が協力し、包括的な緊急対応計画が作 なえるよう、州と郡の緊急事態管理担当 関係者の皆様には必要に応じて助言を行 にお答えするために作られました。農業 係者の皆様がお持ちになるであろう疑問 ターに移動し、備蓄飼料と非汚染水を与 する②可能であれば、他の家畜もシェル ①乳畜を屋内に移動し、飼料や水を確保 ります。 下の予防措置を講じていただく場合があ 故が万一起きた場合、農家の皆様には以 及ぼす可能性があります。このような事 本誌副編集長・浅川芳裕 品加工業者、流通業者)については、乳 える③屋外の飼料は覆いをするか、屋内 の対策について理解しておいてくださ 守るために資料をお読みになり、緊急時 することになります。ご自身やご家族を チームが事態に対処し、住民をサポート ま す。 緊 急 時 に は 訓 練 を 受 け た 対 策 時に用いるような)を着用する⑦汚染地 作業時には、一時的に保護服(農薬散布 た葉物野菜の外葉を切り取る⑥屋外での 産物は徹底的に洗浄し、汚染にさらされ いをする⑤汚染区域から持ち込まれた農 の備蓄に努め、井戸、天水桶、タンクに覆 に移動する④家畜用に少しでも多くの水 マ い。 ま た、 放 射 線 緊 急 事 態 に は ご 自 身、 域内の農家の皆様には、必要な予防策を ㎞)圏内の皆様を対象としてい 製品や農作物の保護に重点を置き、 ご家族、 従業員の皆様が何をするべきか、 線撮影装置、カラー テレビ、煙探知機、原子力発電所等があ 人工放射線源には 太陽、土壌、建築資材、食品があります。 射線に分けられます。自然放射線源には 放射線とはエネルギー形態のひとつ で、発生源によって自然放射線と人工放 放射線とは? 追加してお知らせします。 放射線緊急事態とは、原子力発電所か らの放射能の偶発的放出を言います。家 放射線緊急事態とは? 市場局にお問い合わせください。 理事務所、またはニューヨーク州農業・ は、農業改良普及センター、緊急事態管 事前に計画してください。詳細について イル( 50 畜や農産物の品質と市場価値に悪影響を X 図だ)。その前提として平時から、「国 民にとって重要な食料を汚染から保 護する重要な使命が農業者にはあ る」との認識が米国政府にあっての ミッション発令である。 震災から半年、農業者は被害者で ありながら、一部の消費者から放射 能汚染を広げる加害者との誹りを受 ける立場に置かれている。被害者と して農業界がいくら団結しても、こ の動きは変えられそうもない。個別 農場の対応方法は様々ある(特集を ご覧いただきたい) 。 日本、 そして国民にとっ 有事の際、 て農業界のミッションとは何なの か、考えるためのヒントとしても活 用いただきたい。 ニューヨーク発「原発事故時の農業対策プログラム」入手! “農業者には農産物汚染から国民を守るミッションがある” 前 号 連 載 へ の 反 響 は 大 き か っ た。 なかでも米国の農家向け原発事故対 策について詳しく知りたいとの要望 が多数を占めた。しかも、今回の事 故の影響をさほど受けていない地域 か ら の 問 い 合 わ せ が 目 立 っ た。「 日 本政府の対応は杜撰過ぎる。米国の 情報を参考に今のうちから県や市町 村の対して、事故を想定した計画と 対策を求めていきたい」などの声だ。 そこで今回、ニューヨーク州発行 の「農業集落のための放射線緊急事 態情報」を紹介する。ニューヨーク 州に限らず米国各州では原発事故時 の 対 応 に つ い て、 小 冊 子 や ホ ー ム ページ上で情報公開されている。ま た、平時から地元の農業改良普及セ ンターにも担当者がいる体制になっ ている。詳細は、以下の翻訳に譲る が、特記すべきは事故発生時、汚染 地域の農業者は政府の緊急要員に任 命される点だ(宇宙人から侵略を受 けたときのハリウッド映画さなが ら、名もなき一般市民が突然、重要 なミッションを与えられる、あの構 80 第3回 翻訳文献:Radiological Emergency Information for the Agricultural Community 発行元:New York State Radiological Preparedness Program 40 農業経営者 2011 年 10 月号 "被曝農業時代"を ず同様です。過度 の 放 射 線 照 射 は 有 害 で さい。原子力発電所から マイル圏内の まずはラジオから流れる緊急警告シス テム(EAS)の指示をよく聞いてくだ 放射能汚染とは 、 放 射 性 物 質 が 不 要 な 場所に存在するこ と を 言 い ま す 。 農 業 に ヨウ化カリウム剤の摂取といったアドバ 避、または地域からの立ち退き、さらに イプに応じて、避難所への移動や屋内退 ジが流れます。居住地域や緊急事態のタ 動するべきか、具体的なEASメッセー 住民には、身の安全を守るためにどう行 れば、防護された水として使用できます。 いをした井戸、タンク、貯水槽に保管でき ロ内のサイレージ等を言います。水は覆 耐 久 性 の あ る 容 器 に 保 存 し た 穀 類 や、 納屋に貯蔵したヘイ、また密閉したサイ 防護した飼料や水とは? おける主な懸念は 、 食 品 や 水 資 源 が 汚 染 イスが出されます。事態を伝える報道に ります。放射線の 影 響 は 発 生 源 に 関 わ ら ある場合もありま す 。 される可能性です 。 さ ら に 、 放 射 性 物 質 常に耳を傾けて下さい。 放射能汚染とは? に直接触れた人や 動 物 は 、 健 康 上 の 問 題 緊急事態の発生をどのように 知るのでしょうか? 畜には他の家畜よりも長い期間、備蓄飼料 はい。優先的にシェルターに移動し、汚 染のない飼料や水を与えてください。乳 動物の保護措置についてはニュースメ デ ィ ア を 通 じ て 発 令 さ れ ま す。 家 畜 を を与えなければならない場合もあります。 戻り家畜の世話をするよう手配すること 避難指示を受けた場合、一時的に農場に 場局、販売業代表者が農家、農業団体と ともに製品の安全性を判断し、それらが 果物と野菜への汚染の影響は? 販売可能かどうかを報告します。 汚染が疑わしい場合は、製品が市場に 出回る前に検査を行なわなければなりま せん。 果物と野菜が汚染されていた場合、 洗浄できる場合があります。園芸野菜を 洗浄する最も効果的な方法は水で洗い流 すことです。表面汚染は根や塊茎には影 響しません。 ジャガイモやニンジンなどの野菜は通 常通り洗浄し皮をむけば、十分な除染が できているはずです。 土地の除染のため土壌に 処置が必要でしょうか? おそらく必要ありませんが、状況を判 断したうえで必要であれば州や郡の担当 戻ることができるのでしょうか? 緊 急 事 態 後 も 警 戒 を 続 け て く だ さ い。 大規模な放射線緊急事態が発生した場 を与え続けることです。 家 禽 を 守 る 方 法 は 他 の 家 畜 と 同 様 で、 シェルターに移動し汚染のない飼料と水 家禽類を守る方法とは? シェルターに移動し、汚染のない飼料と 水を与えることは保護手段となりえま す。原発から マイル圏内の畜産農家が ずれかの手段で通 知 さ れ ま す 。 急事態が発生し た 場 合 、 原 子 力 発 電 所 から マイル圏内 の 農 家 に は 、 以 下 の い ①緊急警報システム(EAS)によるメッ が可能です。 放射線緊急事態において、 動物を 保護するための最良手段とは? はい。政府の緊急要員として戻ること ができます。緊急事態管理事務所とのこ 合、食料、水および飼料は使用前に徹底 イ ル( ㎞ ) 以 内 に 設 置 さ れ て い ま す。 分 間 聞 こ え た り、 サイレンは大きな 高 音 が 途 切 れ な く 響 き ま す。 サ イ レ ン 音 が ついての情報もあわせてお受け取りくだ す。また、ご自身を危険から守る方法に や情報を入手してください。 普及センターに絶えず連絡を取り、指示 ある) 。 の地域別に問い合わせ電話番号が記して せください(編集部注:ニューヨーク州 ニューヨーク州農業・市場局にお問い合わ 詳細は郡の緊急事態管理事務所、お近 く の 農 業 改 良 普 及 セ ン タ ー、 ま た は 地域の緊急事態管理事務所、農業改良 普及センター、ニューヨーク州農業・市 食肉や乳製品が安全かどうかは どうしたら分かりますか? さい。 緊急事態後には何が起きるか? 者からお知らせします。 シェルターに移動し、安全な飼料と水 を与えることが汚染から動物を守る最良 の手配については農業改良普及センター 的に検査する必要があります。農業改良 家畜が汚染した飼料や水を摂取する と、その汚染物質の一部が動物の体内に 吸収されることになります。放射性物質 はこうして、食肉や乳製品として人が消 費する食品に入り込む可能性があるから です。 動物の世話のために一時的に農場へ の方法です。 生乳の汚染を回避するため、 職員がサポートします。農場への立ち入 や緊急警報ラジオ 局 が 各 発 電 所 か ら マ 緊急警報ラジオの メ ッ セ ー ジ が 聞 こ え た りが許可されるとカードが発行されま メッセージは地元 ラ ジ オ 局 で も 発 信 さ れ る場合があります が 、 各 原 子 力 発 電 所 の 主たるEASラジオ局は次の通りです ( 編 集 部 注 : 省 略。 地 域 別 に 3 つ の 局 の 周波数が記してある)。 なぜ水と飼料を防護する 必要があるのでしょうか? 乳蓄の世話を優先して行ないます。 帯メールの一斉配 信 ⑤ さ ら に 、 サ イ レ ン 乳蓄は特別な措置が 必要でしょうか? が生じる可能性が あ り ま す 。 10 セージ②電話③戸 別 訪 問 に よ る 通 知 ④ 携 10 りした場合は、直 ち に 緊 急 警 報 シ ス テ ム 10 のラジオ局に合わ せ て 下 さ い 。 E A S の 3 緊急事態に 何をするべきでしょうか? 農業経営者 2011 年 10 月号 41 50 16 」 ー ル ブ ン ア シ ル プ 「 た 後編) 世界が認め ( 法 方 減 低 ” 牛 ム ウ による“セシ *引用論文『The use of Prussian Blue to reduce radiocaesium contamination of milk and meet produced on territories affected by the Chernobyl accident. Report of United Nations Projecct E11 IAEA, 1997』 あることを述べた。今月号では、そ 前回、家畜へのプルシアンブルー ( 以 下、 ) の 投 与 方 法 が い く つ か が は、塩塊という選択もある。 ノルウェーでは毎年2・ 年以来、 5%の を含む約100 の塩塊が 万頭を超える羊に用いられてき た。 塩 塊 は 放 牧 シ ー ズ ン を 通 し て、 山の厳しい天候に耐えられるよう強 固に作る必要がある。植物のナトリ いやすいだからだ。 は、塩を舐めに塩塊に立ち寄ること ン)を飼料に添加する方法よりも扱 性試験の結果や社会的な受容性につ 00頭の家畜に ウム含有量が少ない地域の羊や牛 い て も 触 れ る。 (編集部註:本文中 を習慣としている。 年以来、ノル 塩塊が使用されており、セシウムは ウェー山岳地方の牧草地ではこの 毎シーズン2分の1に低減する。 が与えられ Bifege の「現在」表記は、原文執筆時の1 た。 配合飼料施設が利用できる場合 は、濃厚飼料へ直接混入する方法が )にすると、体重 ~ 日当たりの塩摂取量を1g(1日当 たり ㎎の ㎏の子羊の放射性セシウムレベル は %低減し、1日 gにすると肥 育牛でも同様の低減がみられる。塩 で 給 餌 す る 家 畜 に 特 に 適 し て い る。 法は集約的生産システムや、手作業 料を与える必要があるため、この手 えられてきた。家畜には毎日濃厚飼 使用する際は、生乳と肉中のセシウ がいるのが常だ。したがって塩塊を の中には塩塊に関心を持たない個体 その頻度に依存する。しかし、群れ 回)することが求められ、有効性は 塊は十分に摂取(毎日または週に数 旧ソ連諸国では、農場で配合した濃 塩塊が用いられてきた 行なう必要がある。旧ソ連諸国では ム137のモニタリングと並行して 厚飼料に る。 年以降、 が、その使用が近年公式に承認を受 低減効果は2分の1に低減するに留 塩塊 まるとはいえ、給餌法は他よりはる けた。この方法では、他の手法と比 濃厚飼料が入手できない場合や放 牧が広範囲、長期間に及ぶために濃 べ生乳と肉中のセシウム137濃度 厚飼料を与えることが難しい条件で 42 農業経営者 2011 年 10 月号 与えるだけのフェロシンが、汚染地 域内の農家に配布された。ロシアで を投与するほうが便利 は、 Bifege だと考えられてきた。 度に大量の 粉末を配布しなければならず、純粋 れぞれの方法を説明した上で、 実際に用いられた畜産産地における よりも量の多い粉末(フェロシ な の毒 t 最もコストがかからず便利だ。こう の扱いについて農家に特 PB 1 30 990年半ば当時を指す) PB 25 すれば、 別な指示を与える必要がない。この 方法で反芻動物に給餌した場合の有 年より㎏当たり1 効性が試験でも実証されている。ノ ルウェーでは、 を含んだ特別な濃厚飼料が与 10 飼料に直接添加 または濃厚飼料に配合する 89 30 を添加して使用してい の 88 家 畜 数 の 少 な い 小 規 模 農 場 で は、 粉末の を穀物や濃厚飼料、粗飼料 89 94 について解説する。気になる セシウムの低減ならびに経済的効果 1 年には約60 PB PB に添加する方法を用いることができ る。旧ソ連諸国では、フェロシンや 頭当たりに毎日2~3g 94 ■ Bifege → 10%のフェロシンと90%の セルロースの混合物 40 PB PB をこの形状で牛に与えてき Bifege た。ウクライナでは1993年と ■ フェロシン → 95%の FCF と 5%の KFCF の混合物 PB PB 年に 、 牛 ■ フェロシアン化第二鉄(FCF) → Fe₄〔Fe(CN) ₆〕₃ PB PB 1 ■ フェロシアン化第二鉄カリウム (KFCF) → KFe〔Fe(CN) ₆〕 50 90 PB PB ■ フェロシアン化第二鉄アンモニウム (AFCF) → NH₄ Fe〔Fe(CN) ₆〕 g 2 1 ■ PB 化合物の基礎知識 "被曝農業時代"を かに簡単だ。 年、ベラルーシ政府 様に、生乳中の放射性セシウム濃度 れる場合、毒性作用はない。 ■ が投与された動物の生乳や肉を 食した場合、 による健康への悪 は の放出速度に依存した。適度な 影響はないと予想される。 はゴメル地域において 万個の塩塊 放出速度を保つためには少なくとも は、ベラルーシ、ロシア、ウクライ を6%含 ボリ2個を与える必要がある。ノル 個 当 た り 重 量 5 ㎏、 むフェロシン)を使用し、翌年には した。一方、ウクライナではこの手 ナの試験で用いられたものと類似し ベラルーシ、ロシア、ウクライナで 実施された 実験結果 PB 0 のセシウム汚染牛乳になるとこ 減少した。施用から 日後にボリか 射 性 セ シ ウ ム 濃 度 は 3・5 分 の に 肉牛に200gのボリ2個を与え て 日後に屠畜した場合、肉中の放 ができるようになる。 に「クリーン」な生乳をつくること ろだが、この処置のおかげで放牧中 Bq らの 放出速度が高まったため、こ は、ベラルーシ、ロシア、ウクライ ンの終わりに開始した初期実験で れた牧草地での放牧においてボリ投 のため、肉牛では、中程度に汚染さ の頃に高い低減効果が見られた。こ は必要な用量を毎日摂取させる ことが重要であり、そのため第一胃 射性セシウム含有量を低減させる 頭に始まった。研究は農産物中の放 の放射性セシウムを低減する 牧草地で放牧した家畜の生乳や肉中 試験が行なわれた。それには、汚染 る。 育に代わる有効的な肥育法になりえ 与と組み合わせる方法は、屠畜前2 内で持続的に放出するボリはセシウ 他、誤って内部被曝した人の体内線 リの潜在的な有効性が示された。こ ム 吸 着 剤 と し て 適 し て い る。 ノ ル 量を低減するために ~3カ月間に通常行なわれる屋内飼 ウェーで実施された大規模な実地試 するものであった。 これらの実験では、施用された家 畜の健康、栄養状態に関しても詳細 健康障害や栄養欠乏は見受けられな 果を実際に裏付ける目的と起こり得 証する目的があった。 か っ た。 ま た、 血 液 パ ラ メ ー タ ー、 体重増加、乳生成に関しても、 施 に調査を行なった。ボリに起因する 94 る毒性学的または生物学的問題を検 ~ 験 で は、 持 続 性 ボ リ の 使 用 に よ り、 小動物、家畜、人間を対象にした 実験が行なわれた。 はセシウム吸 91 ウクライナで行なわれた調査で は、 年 の 5 月 と 7 月 に ボ リ を 2、 PB れを受けて、 群れ全体の放射性セシウム濃度が低 着剤としての使用に加えて、タリウ の効 下した。投与6週間後の生体モニタ ム中毒の治療解毒剤として推奨され PB ている。さらに、フェロシアン化合 ンの主要期間中に、生乳中の放射性 3個ずつ与えたところ、放牧シーズ した結果となった。 用を受けない家畜の生育記録と類似 に低減し セシウムが2~4分の 5月、7月および8月または9月 ルーピンが育つ砂壌土の畑に投与さ 実地試験ではボリが施用された家 畜 の 糞 は 堆 肥 と し て、 オ ー ト 麦 や 物は食品添加物(例えば食卓塩の凝 てい る 。 施用家畜の糞尿 のセシウム濃度は高いが、砂土では れた(編集部註: ると、施用された家畜から検出され 回、200gのボリを3個与え 研究の結論は下記のように要約す ることができる。 に減った。施用されなけ ウェーでは現在、牛、羊、トナカイ ~5分の 植物がセシウム吸収する率が低いた らさない。 れば、ℓ当たり約1100~120 PB め。詳細は本誌2011年7月号 頁参照) 。 30 た生乳中の放射性セシウム濃度は3 されており、乳牛と肉牛にも重量2 ■実験的または治療的に人に使用さ 1 ■動物の健康と生産に悪影響をもた の た。 PB 固阻止剤)としての使用が許可され PB の使用を検討 %の 6~8週間にわたって放出された A を含むボリは、少なくとも カ月間、動物の第一胃に留まった。 20 により、肉中の放射性セシウ ム 濃 度 は ~ % 低 減 し た。 ノ ル 1 15 91 3 体の1%未満であった。 ~ リングで効果を示さなかったのは全 年の夏季に実地 ナの汚染した実地においても、 ボ 国際チェルノブイリ・プロジェク トの一環として、 年の放牧シーズ PB ( ウェーで使用されているボリの組成 法が広く使用されることはなかっ ていた。図1・図 は汚染牧草を食 す酪農牛におけるボリ投与効果を示 す。 の毒物学的見地 1 tの を含む塩塊 た。ロシアでは現在、 が汚染地域の集団農場で使用されて いる。 持続性ボリ(大型丸剤) 2 化合物の代謝効果と毒物学的影 響の可能性に関する研究は 年代初 60 塩塊を乳牛、肉牛にも使用 PB PB 90 PB 93 80 にボリを定期的に与えることが許可 50 00gのボリが与えられた。羊と同 農業経営者 2011 年 10 月号 43 60 PB 30 PB PB PB PB 90 PB 1 33 3 PB 2 A F C F F C F は、はじめの生育期に ボリ中の は植物中放射性セシウムを2分の を与えた に 低 減 し た が、 次 の 生 育 期 に は 目 立った低減はなかった。 、 ~ %の重晶石のミ %の蜜ロウを含むこ ま ボリ t PB 年には を含む濃厚 年には を含む塩塊 年には1万6000頭の牛に 年には9000頭、 PB PB PB 乳中の放射性セシウム汚染が3分の に低減できた場合、この食品を消 る牛乳や食肉からのものであると仮 の放射性セシウム汚染を3分の に 減 ら す こ と が で き れ ば、 全 体 で 約 %の放射線量が低減できることに なる。土壌から牧草へセシウムが多 く移行する地域の場合は、この全体 的な放射線量の低減は大きくなる (およそ %超)であろう。 減、二つ目は資源の節 一つは放射線量の低 ゴ リ ー に 分 類 で き る。 よる実益は主に3カテ 示したが、この手法に 少させることはすでに れた作物の汚染度も減 糞が堆肥として与えら レベルを低減し、家畜 セシウム吸着剤に よって肉や生乳の汚染 低減できるであろう。 ように %、またはそれ以上、即時 物を使用すれば、放射線量は先述の る。このような人々のために にまわしていることが報告されてい が規制値を超えている生乳も自家用 は、多くの零細農家は放射能レベル であるが、特に現在の経済情勢下で シウムを含む肉や生乳の販売は違法 るため、暫定規制値を超す放射性セ 残念ながら、実状はこれよりも複 雑である。高い値の内部被曝を避け 使用による多大な資源の節約 化合 約、最後に心理的・社 会的な利点だ。 達成可能な 放射線量の低減 理論的には、肉と生 の使用は、現在、生乳や肉のセ シウム汚染目的で、別の手段に費や されている資金を大幅に節約でき 44 農業経営者 2011 年 10 月号 に低減し、肉では3~6分の 年ウクライナ政府は 費する人への放射性物質濃度も 分 で低減した。 ロシアからフェロシンを購入するた 内部被曝であり、その %が消費す 年間線量の %が外部被曝、 %が に減少されることになる。人の の の需 要は6tと推定されている。 の予算を計上したが、実際の め、 4 万 米 国 ド ル( 2 ~ 3 t 相 当 ) 3 安定しなかったりした。ボリには %の ネラ ル 、 ~ ~ とが推奨されている。 400 90 家畜の糞を投入する利点を明確にす 600 1 PB る研究がさらに必要である。 800 95 60 ウクライナ、ベラルーシでの 化合物の活用 1,000 85 定してみよう。この場合、生乳と肉 ウクライナでは、 年にリウネ地 域の の村落で、 年にジトーミル 1,200 15 ベラルーシでは ~ 年の3年 間、毎年約 tの を3万頭の牛に た。ボリ中のロウ配合に関しては何 とリウネ地域の の村落で実地試験 を与え、 ■図2 PB(ボリ3個)施用による生乳中のセシウム137濃度変化(Bq/㎏) 94 セシウム吸着剤使用の利点 被験対象:ウクライナ Velikiye Ozera村にある個人農場の実験用牛。1群15頭。 平均と標準偏差。ボリは実験開始日と60日後投与。 94 射 性 セ シ ウ ム 濃 度 が 2 ~ 4・5 分 の 被験対象:ウクライナ Lugovoye村にある個人農場の実験用牛。1群10頭。 平均と標準偏差。ボリは実験開始日と60日後に投与。 1 PB PB のボ ウクライナで使われた合成 リはノルウェー農業大学で開発され 通りも試験された。原型で使用され が行なわれた。計6500頭の乳牛 を施用した。 200 使用した。 たのは蜜ロウの代用となるロウ混合 飼料4000tが生産された。 400 1 1 にボリとフェロシン粉末の両方を与 600 1 PB 15 200 えた。フェロシンによって生乳の放 800 70 1,400 80 95 15 60 物で、旧ソ連諸国で簡単に入手でき 対照群 60 93 75 93 95 93 27 10 PB 対照群 ボリ3個 1,600 91 84 77 70 28 35 42 49 56 試験開始日からの日数 21 14 7 0 0 70 63 56 28 35 42 49 試験開始日からの日数 21 14 7 0 0 ボリ2個 1,000 94 PB る。しかし、 の放出速度があまり 1,200 33 20 PB 25 PB 1 77 PB PB にも遅かったり、第一胃内で形状が ■図1 PB(ボリ2個)施用による生乳中のセシウム137濃度変化(Bq/㎏) "被曝農業時代"を 定すると、人の消費( カ月の放牧 示のは困難だ。しかし、ベラルーシ に 関 す る こ と が 多 か っ た。 つ ま り、 る。セシウム吸着剤使用の費用対効 シーズン中、1日頭につき いた。多くの心理的混乱はストレス 人 々 は 個 人 的 に 危 険 を 制 御 し た り、 産を想定)に適した生乳を約180 汚染のない牧草地を要する)がこの とウクライナでは、毎年3万500 果は、現行の牧草地汚染レベル、吸 0ℓ生産するための追加コストは9 に起因し、環境の変化を制御できな ℓの生 着剤の製造及び流通コスト、吸着剤 手順を踏んでいる。 を使用するこ とで必要な牧草地面積は1万500 気力症につながることが認識されて い経験が長期にわたると慢性的な無 手法で投与することによって、牧草 た。これらのデータは、 を適した たときのセシウム137濃度も示し たり ㎏の牧草を摂取した場合(つ いる。これは500㎏の牛が1日当 肉中のセシウム137濃度を示して 草 地 で 放 牧 す る 牛 か ら と れ た 生 乳、 力は間違いなく牧草の、さらに生乳 の投資を行なってきた。これらの努 天然牧草の再播種をするため、巨額 施 肥、 石 灰 散 布 を 行 な っ た う え で、 農 場 に 汚 染 牧 草 を 鋤 き 込 み、 排 水、 比較的汚染のない牧草を提供する ため、旧ソ連3国はそれぞれ、集団 1: リの使用によるコストと利益対比は 場価値を持つことになるため、 には1㎏当たり1ドルの追加 制値に適合する肉を生産する 換算すると、国際的な暫定規 これらのコストを肉牛生産に た り 1 0 0 ド ル の 維 持 費 が か か る。 度が暫定規制値を超す場合、1 当 もとらず、牧草のセシウム137濃 必要となる。加えて、いずれの対策 た。また、事故後数日、数週間の被 ニウムについての不安が見受けられ 核種、特にストロンチウムとプルト 1,400 460 560 186 1,500 105 2,100 700 840 280 2,000 140 2,800 920 1,120 374 3,000 210 4,200 1,400 1,680 560 5,000 350 7,000 3,000 2,800 920 10,000 700 14,000 4,600 5,600 1,860 当 70 加的な牧草地を提供するには1 汚染地域では、セシウムの環境汚 染に関する懸念や、その他の放射性 94 1,000 年間にわたって 280 たり400ドルが 112 234 まり、体重の %)を想定している。 90 700 を施用し 曝線量が長期的な健康にどのように 280 35 また、推奨用量に沿って 中の汚染濃度が1500 いる。 /㎏の と肉の汚染を暫定規制値内に低下さ 費用がかかることになる。そ セントで カ月間投与する方法なら ば、追加コストは すむと見積もられる。 使用による 社会的要因と心理的配慮 17.5 500 の 推 測 で は、 こ の 追 牧草地で放牧した動物でさえ、暫定 せることに貢献しており、長期的に の代替法、つまり を屠畜前 る。このプロセスがどの程度完了し ~ %であるとの報告がある。残りの 経済的で困難または不適切なことが 34 250 が で き る。 規制値を超えない生乳や肉を生産で は家畜の経済的な生産性を向上させ な生乳の価値との費用便益比を計算 %)は、小規模個人農 土地 ( ~ することができる。ベラルーシでは、 で効率の低い農地の除染作業は、非 されるボリは最多で8個、300g の 家のものであることが多く、小規模 をドイツから1㎏当たり7 KFCF 米国ドルで輸入しており、ロシアの ド ル で 輸 入 し て い る。 国際チェルノブイリ・プロ ジェクトでは、汚染地域で被 工場からは ある 。 を増幅させる社会学的、心理 ~ カ月の放牧のシーズンで使用 個人農家の家畜に与えている非汚 染飼料の生産と運搬にかかるコス 学的な要因が確認されてい 曝した人々のあいだで、不安 が 必 要 に な る が、 価 格 は 2・5 ト、および牛を非汚染牧草地に連れ 生乳 肉 EU 年 当 時 )。 投 与 と 輸 送 0 ド ル だ( セシウム137 セシウム137 セシウム137 セシウム137 濃度 濃度 濃度 濃度 (Bq/㎏) ボリ投与後 (Bq/ℓ) ボリ投与後 (Bq/㎏) (Bq/ℓ) ha ha ■表1「牧草地の汚染と、肉や生乳中のセシウム137濃度の関係」及び 「肉やミルクに与えるボリの効果」 10 PB 80 PB 10 となる。 きることを明示している。 て い る の か 明 確 で は な い が、 0~1万8000 に縮小すること 緩和したりする手段はないと感じて を使用しない他手法のコスト間で比 万ベラルーシルーブルである。この の 較検討できる。 生乳は、約360万ルーブル(生乳 ℓ当たり2000ルーブル)の市 0~4万頭の家畜(7万~8万 表1は、牧草が㎏あたり250~ 1万 でセシウム137汚染した牧 ha 表1のデータに基づいて、年間の ボリ投与と生産される「クリーン」 ボ PB ha 10 る。これらは人々の無気力感 95 1日当りの 摂取量 (Kbq) 牧草の 汚染レベル (Bq/㎏) 20 3 PB 40 10 PB PB Bq 14 20 ていくコストについて正確に数字で 農業経営者 2011 年 10 月号 45 Bq 70 7 コストが、生産コストと同額だと仮 ※1日1頭につき70㎏の牧草を摂取したと仮定する。 6 1 90 PB 6 PB "被曝農業時代"を 能レベルについての情報やこれらを がある。加えて、生乳と肉中の放射 わかっていない。 国 別 基 準、 基 準、 ・ のコーデックス委員会の推奨とど 影響するかについてははっきりとは 自家用に飼育する家畜の生乳や肉 を 消 費 す る こ と を 違 法 と す る な ど、 ガティブな結果をもたらすものがあ を低減するため、 化合物の使用 に対する技術的、経済的支援がで きるようになった。 化合物の投与は、今後の酪農や プロジェクトの一環として行なわ れた実地試験では、セシウム吸着剤 の実地試験では、汚染牧草地で放牧 究所内実験や集団農場と個人農家で ~ 年 に ベ ラ ル ー シ、 ロ シ ア、 ウクライナの3カ国で実施された研 期吸着性ならびに牧草地や作物へ ■土壌中の と放射性セシウムの長 として利用できることである。 らしたり、ストロンチウム吸着剤 ■ 牛肉生産システムと適合する。ボ リ使用の利点として旧ソ連諸国で 今後期待されるのは、家畜の生産 の使用機会を農家の人々が歓迎して した動物の生乳や肉に含まれる放射 性を向上させる他の化合物添加 いることが科学者にも明白であっ 生乳と肉中の放射性セシウム濃度 ■ 3 カ 国 で 十 分 な 資 金 が 準 備 さ れ、 要がある。 の影響について調査を継続する必 PB ( ミ ネ ラ ル 剤、 駆 虫 薬 等 ) を も た た。 吸 着 剤 の 使 用 機 会 を 得 ら れ な 性セシウム汚染低減に られなかった。 化合物の使 かった「試験対照区」に属した農家 用が非常に有効なことが示された。 化合物を広 からは実際かなりの不満がでてい 分析されないうちに、 を用いた家畜を生理学的、生化 学的に試験した結果、対照家畜と ■ が正常に戻り、結果として相当数の カ 国 で 濃 厚 飼 料、 実験および実地試験の成果 た内容である。 に引用されている報告書と一致し ■これらの点は世界的な科学文献中 の評価のズレは生じなかった。 「化学物質」を使用することに反対 する当然の意見がある一方、放射能 に対する「恐怖」と、他の対策が生 活を乱す不安のほうが大半の被災農 は、 旧 ソ 連 塩塊、持続性放出ボリの形体で動 ■ セシウム吸着剤を用いる際は、その 物飼料添加物として認可された。 家 に と っ て よ り 影 響 力 が 強 か っ た。 吸着方法、効果の科学的かつ技術的 なる。また、利用する農家は地元で ことが許可された。 そのモニタリング支援を受ける必要 して情報が公開されることが前提と ■持続性放出ボリ技術を広く用いる 3 明らかである。 農家が生活の質を向上させることは く用いることで汚染地域の農業慣行 PB 94 根拠、非毒性、家畜への投与法に関 PB 46 農業経営者 2011 年 10 月号 PB ■毒物学の調査では、有害性は認め る。 PB た。この反応が社会科学者によって 使用に関する結論 のように比較すべきなのか、一般国 W H 現 在 使 用 さ れ て い る 対 策 の 中 に は、 F A O 民に提示されるべきである。 EU 心理的、社会的、財政的に著しくネ O PB 90 PB PB 南ベラルーシの小規模農家におけるPB投与による放射性セシウム濃度低減実験の様子。ノルウエー政府と FAO・IAEAの支援によって行われた。写真(上)の機器類はPB化合物からボリを作るための設備。写真(下) はモニタリングの一貫として、参画した科学者が家畜の全身ガンマ線被曝線量を測定している様子。