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プレスリリースとFAQ - 公立はこだて未来大学
1 報道資料 公立はこだて未来大学 2016/08/09 公共交通・移動分野のスマート化技術〈SAV〉の 社会実用を目指し、本格的な大学発ベンチャー第 1号として「株式会社未来シェア」を設立 公立はこだて未来大学の研究開発シーズである公共交通・移動分野のスマート化技術 SAV:Smart Access Vehicle (呼称=サブ)の社会実用化を推進することを目的に、 本格的な大学発ベンチャー第1号として、株式会社未来シェア(本社:北海道函館市) が、2016 年 7 月 21 日に設立されました。本学副理事長・教授である松原仁(まつば ら・ひとし)が、同社の代表取締役社長を務めます。 また、プロジェクトの実証実験用アプリケーション開発を担ってきた株式会社アットウ ェア(本社:神奈川県横浜市)の松舘渉(まつだて・わたる)取締役が、新会社の代表 取締役を務めます。 SAV は、公共交通をはじめとする都市の多様な移動手段をクラウドサーバで一元管理 し、ユーザのデマンド(呼び出し)に応じていつでもリアルタイムで配車ができ、ユー ザが乗降場所を任意に指定できるといった、完全自動制御フルデマンド型サービスを実 現するシステムです。小規模エリアから大都市圏まで、スケールフリーな構築・運用が 可能です。本学では 2011 年より、函館地域での実証実験等に基づく研究開発を、国立 研究開発法人 産業技術総合研究所や名古屋大学の研究者らとの共同研究により進めて きました。実用化へ向けた十分な開発成果を得たこと、全国の自治体や企業等からの実 用化開発に関する引き合いが増えてきたことから、実運用を見据えた開発、実運用サー ビスの事業化を強力に推進し、社会的要請に円滑かつ迅速に応えていくことを目指し て、大学発ベンチャーを設立することとしました。これまで本学には、教員や学生が個 人で立ち上げた広義の大学発ベンチャーは存在しましたが、大学の技術シーズをもとに 組織的に立ち上げる本格的な大学発ベンチャーは第1号となります。 ■開発背景 SAV の基本技術は、中島秀之 前学長(現・東京大学特任教授、本学名誉学長)が、国 立研究開発法人 産業技術総合研究所時代の 2001 年頃から手掛けた、デマンドバス配車 シミュレーション研究[注 1]に遡ります。その後、コンピュータの計算能力、サーバや ネットワーク技術の発展、携帯端末等の普及、及びシステム実運用の低コスト化が急速 に伸展したこと、また超高齢社会や地方創生等の課題において交通・移動の効率性・利 便性向上の問題解決が急務となってきたことを背景に、本学の重点研究プロジェクトと して社会実用を見据えた研究開発をスタートさせました。函館地域をフィールドに社会 実証実験を推進するために、2011 年 3 月に NPO スマートシティはこだて(理事長: 松原仁)を設立、2011 年度より学長主導の重点研究プロジェクトを立ち上げ、2012 年 度には国立研究開発法人 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(JSTRISTEX)の問題解決型サービス科学研究開発プログラムの採択を受け( 2015)、函 館地域でのパーソントリップ調査と各種移動データに基づくシミュレーション解析 (2012 年度)、函館地域でのフルデマンド交通 SAV システムの社会実証実験(2013 年度秋/2014 年度春)を実施し、多数の論文発表、講演報告を行っています[注 2]。 1 2 実証実験用ステッカー 車載タブレット オペレーションセンター [注 1] 野田五十樹・太田正幸・篠田孝祐・熊田陽一郎・中島 秀之「デマンドバスはペイするか?」電子情報通信学会技術 研究報告. AI, 人工知能と知識処理 102(613), 31-36, 2003-01-22/野田五十樹・篠田孝祐・太田正幸・中島秀之 「シミュレーションによるデマンドバス利便性の評価」情報処理 学会論文誌 49(1), 242-252, 2008-01-15 [注 2] 研究業績はスマートシティはこだてプロジェクトのウエ ブサイト参照 http://sav.smartcity-hakodate.jp ユーザ端末画面 ■今後の展開 設立初年度は、地方都市や大都市圏での運用を見据えたフィージビリティースタディと して実証実験を行い、2 年目から本格的なサービスの供用開始を目指します。またこれ に並行して、革新的なスマート技術の研究開発に取り組み、SAV と他領域(物流、観 光、医療など)とのサービス連携、次世代自動運転技術やシェア型サービスとの融合化 等、未来型サービスの追究を目指します。 ■株式会社未来シェア 社 会社概要 名:株式会社未来シェア 英語名: Mirai Share Co., Ltd. 資本金:100 万円 設立:2016 年 7 月 21 日 本社所在地:北海道函館市本町 6 番5号 事業内容:SAVS 研究開発、運用サービス及び各種連携サービスの提供、コンサルティ ング、ライセンシング等 役員: 代表取締役社長 松原 仁 (公立はこだて未来大学 副理事長・教授) 監査役 牧野 隆志(株式会社アットウェア 代表取締役) 代表取締役 松舘 渉(株式会社アットウェア 取締役) ■報道に関する問合せ先 公立はこだて未来大学 社会連携センター Email:[email protected] Tel:0138-34-6549 ■会社に関する問合せ先 公立はこだて未来大学 松原研究室 Email:[email protected] Tel:0138-34-6125 ■関連リンク スマートシティはこだてプロジェクト ウエブサイト http://sav.smartcity-hakodate.jp 株式会社アットウェア ニュースリリース http://tech.atware.co.jp/miraishare/ 2 1 (参考)株式会社未来シェアに関する FAQ Q こうした公共交通・移動のクラウドシステムの研究開発や事業化などに特化したベンチ A 世界中にありません。Uber(ウーバー)が類似のサービスを提供していますが、基本 ャー企業は、国内でほかにはないと言っていいのでしょうか? 的にはタクシーに特化しています。 今回の技術方式でほかにないと言える新しい点は、「リアルタイム 完全自動 フルデマンド」のす べてを可能にするシステムの実運用を目指す点です。 ・ リアルタイム:現在実運用されているほとんどのデマンド交通は、事前予約(前日まで∼1時間程 度前まで)が必要となっています。本システムでは事前予約が必要なく、走行中または待機中の車両 の中から最適な車両を見つけて、柔軟かつ効率的にコースを変更できることが特徴です。ほんの数 例、リアルタイムでの配車を行っている例もありますが、小規模でユーザ数も少ない過疎地域に限ら れているのが現状です。 ・ 完全自動:現在実運用されているほとんどのデマンド交通は、コールセンターのオペレーター等に よる人手を介した配車制御となっています。ルート計算等の部分的なシステムを導入している事例は ありますが、デマンド(予約発注)∼受付∼配車・ルート変更等、すべてのプロセスをコンピュータ で完全自動制御するシステムは初めてです。特に、デマンドをリアルタイムで受け付け、配車の最適 化計算を行いながら新しいデマンドを受け付け、ルート変更を加えていくことができることが最大の 特徴です。 ・ フルデマンド:定義はやや曖昧ですが、一般的に「フルデマンド」というとき、停留所や時刻表を 固定せず、乗り降りの場所と時間を自由に指定できる、いわゆるドア・ツー・ドアのタクシー類似の サービスを指して使われています。これについてはコミュニティバスという名称の下、すでに多数の 都市・地域で運用されていますが、そのほとんどは限られた小規模エリアの過疎地域です。中規模都 市の運用例としては、岡山県総社市の事例が知られていますが、こちらの場合は、市内の3つのエリ アの周辺部から中心市街地を結ぶ放射状の路線が設定されていて、そこを基軸に配車していくこと、 おおむね1時間に1本程度という制約が設けられています。 今のところ、以上のすべてを満たしたシステムを実運用可能にしているものは、我々の SAV のみ といえます。海外の調査は網羅的には行っていませんが、少なくとも代表的な文献や報告書等を調べ る限り、そういうシステムが実運用されている事例は世界的に見てもまだありません。SAV はスマー トシティへの変革のための支援技術です。変革を志向する行政・民間等のパートナーと共に開発を行 い、コストパフォーマンスと顧客満足度の最適化を追求します。公共交通の効率化のみならず、脱ク ルマ化による環境負荷削減や中心市街地活性化など、持続可能な都市・地域社会の交通・移動インフ ラの可能性を追求していきます。 Q A 実運用の際には、どれくらいの規模の都市を想定しているのでしょうか? 大きければ大きいほど良いという計算結果が出ています。京都や東京、ニューヨー ク、ロンドンなどで有効です。 SAV は、基本的にはスケールフリーな技術です。小規模なコミュニティ交通から、中規模・大規模 な都市まで運用が可能です。小規模でもウエブアプリ感覚で安価なコストで気軽に導入できる一方、 大規模な都市の公共交通インフラを一元的に管理制御できるシステムとしても活用できます。多様な 規模の都市への運用を目指していますが、そのためには、技術だけでなくその社会実装による問題点 を、それぞれの都市の事情に応じて解決し、カスタマイズを図っていく必要があります。 Q フルデマンドリアルタイム完全自動制御とすることで、従来のデマンド交通よりどれく らい効率化が図られるのでしょうか? 3 2 A 大都市のデマンド交通がありませんから、比較できません。従来の公共交通よりは効率 化できますが、具体的数字を出すには公共交通の具体的利用の実態調査(自家用車も含め) が必要です。 実証実験とシミュレーションによる優位性(例えば、従来のデマンド交通は発車前の事前予約が必 要なのに対して、SAV は呼べば5分以内に来るサービスを想定など)は確認されています。従来のコ ミュニティバス型の小規模なデマンド交通では、フルデマンドリアルタイム完全自動制御にすること の効果が測定できません。先述した 2003 年の論文の計算機上のシミュレーションでは、むしろ一定 以上の規模でオペレーションすることで効果が上がってくるという結果が出ています。 Q SAV 導入によるメリットはどのようなところにあるのでしょうか? A 具体的なメリットとしては、例えば次のようなことが挙げられます。 ・空で運行しているバスがなくなる(ガソリン代の節約や大気汚染軽減) ・バス停で待たなくても良い(高齢者も外出しやすい 時間を有効に使える) ・タクシーより安い(バスとタクシーの良いところが合わさる) ・自家用車より便利(駐車場不要、代行不要、飲んで帰れる) ・タクシー運転手の収入が増える(客待ちや流しをしなくても良い) 大規模なコールセンターで人件費をかけるよりも、自動制御で圧倒的にコストパフォーマンスの高 いオペレーションが可能ですが、そもそも従来のデマンド交通はほとんどが過疎地・小規模エリアで の運行、オペレーターはせいぜい数人程度であり、その業態をそのまま効率化することが我々の目的 ではなく、デマンド交通の可能性を多様なサイズのエリアに広げていくことを目指しています。 いまや全国ほとんどすべての路線バスは赤字経営で、公金投入が必須の状態です。路線や台数が減 ったとしても、ユーザの利便性や快適性を減じないためには、デマンド技術の投入拡大が必須です。 路線バスの会社では人件費を抑えるためにどうしても大型・中型バスでの運用が中心になっています が、これからはもっと小さな単位で融通の効く交通・移動システムへのシフトが求められます。業界 の業態改革も含めて、取り組んでいかなければならない課題です。法規の壁がありますが、Uber(ウ ーバー)のような個人自家用車の乗り合いシェアサービスを融合していくことも可能です。 Q 実運用した場合、スマートフォンやタブレット端末を持っていない人は利用できないの A スマホやタブレットからの利用が便利ですが、どうしても使いたくない人、使えない人 でしょうか? 向けには電話で予約するためのコールセンターを併用します。 4