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大阪大学大学院 工学研究科 張 承賢
2012年 8月13日 2012年度夏季教職特別講座「教育と人間」 海外の教育動向 ‐韓国の(英語)教育について‐ 大阪大学大学院 工学研究科 張 承賢(JANG Sunghyon) [email protected] 目次 1.韓国の学校制度 2.韓国の受験制度 3.韓国の教育事情 ‐私教育(塾など) ‐英語教育(幼稚園、外国語高校、大学校) 4.韓国の学校環境 ‐教師と生徒の関係 ‐学校内暴力 1.韓国の学校制度 初等学校 ! 中等学校 " 高等学校 " 大学校 # 1. 初等学校 私立学校の数が少ない。学校数、児童数ともに全体の1パーセント程度 2.中等学校 中学校の公立と私立の比率は,3:1となっている。 3. 高等学校 韓国の高校は日本の普通化高校に該当する「一般系高校」と 日本の職業系専門高校に相当する「専門系(実業系)」、及び 体育・芸術系の「芸体能系高校」に分かれる。 高校入試を緩和するため、一般高校の「高校入試平準化」が実施された。 高校平準化 「高校平準化」とは 「高校入試の点を基準として抽選により順次学群内の高校に生徒を配分」、 激化した高校入試を抑えるためにかくして機械的に高校の均質化を図り、序 列をなくすというもの。 国立・公立・私立学校を問わず全面的に制度を実施する。 問題点 ①韓国での大学進学熱は上昇を続けた。そこで、学区の階層性が大学進学 実績に反映された結果、少しでも進学実績のよい地区の高校に子どもを進学 させるべく引越しをする家庭が続出した。 ②急速な教育の量的拡大に対して平等性の問題(教育機会の平等性、学力 水準などの地域・階層間格差の平等性)、また一方では大学を始めとして、国 際競争いにおける優越性の工場という課題が指摘されている。 解決策 平準化政策の補完という形で英才教育を行う新しいタイプの学校の設立。 韓国における高校の多様化 特殊目的高校 特性化高校 英才高校 自立型私立高校 自律化高校 開放型自律高校 表1 韓国における高校の多様化 熊谷信司「韓国における高校の多様化と高校生の生活」、2009、P35 特殊目的高校は120校あまり、特性化高校は500校あまり、自律化高校は109校が 既に設置されている(2010年) 2.韓国の受験制度 進学率: 87.9%(2008年) ※日本:68.1% 共通試験:修学能力試験 (College Scholastic Ability Test, CSAT) 年に1 回11 月に1 日間で実施される。 追試験・再試験は実施されない。 受験者数: 57.4 万人(2004 年)、内訳 現役 41.1 万 人、浪人 16.3 万人。7 対3。 全大学(386 大学、2003 年時)で採用されている。 ※ 推薦入試A:試験の成績を利用しない推薦入試 ※ 推薦入試B:共通試験の成績を資格試験的に利用して合否を決定する推薦入試 表2 CSAT-2005 の科目(2004 年11 月実施) 林篤裕、「韓国の大学入試制度とわが国への示唆」、P2-3. 表3 CSAT-2005 の時間割 (2004 年11 月実施) 3.韓国の教育事情‐私教育 韓国の高校生は大学受験に向けて長時間勉強している。 家庭や塾(「学院(Ha-gwon)」)、学校においても正規の授業時間以外に放課後も補充 授業や図書室などの自習で夜遅くまで学習する生徒が多い。 韓国の高校生の平日の「学校」での学習時間は「11時間以上」が約38%となる 表4 私教育費規模、参加率及び参加時間 自治体国際化協会、「韓国の近代教育政策」、2009、P3 韓国の私教育事情 韓国の私教育費、家計に占める割合は日本の3.4倍(韓国大手紙・朝鮮日報09年10月19日の記事抜粋) 韓国銀行によると、急増する私教育(塾や予備校などの学校外教育)費負担のため、韓国の家計 消費に占める教育費の割合が2000年の5.4%から今年上半期には7.4%へと2.0ポイント高くなったこ とを明らかにした。韓国の教育費の支出割合は、昨年の米国(2.6%)、日本(2.2%)、イギリス(1. 4%)、フランス(0.8%)、ドイツ(0.8%) など主要先進国と比べてみても、3倍から9倍高い。 英語における私教育事情 初等学校学生ための私教育費の中で、英語教育の規模が一番大きく、全体の34%を占めている。 初等学校における英語私教育の特徴は家計の収入の増加に従い、参加率と教育費ともに増加する 傾向がみられる。 例えば、月平均家計所得が100万ウォンの場合、参加率は19.6%、教育費は1.6万ウォン、300万 ウォン~400万ウォンの場合、参加率は63.1%、教育費は10.2万ウォン、700万ウォン以上では参加 率が69.4%、教育費は16.3万ウォンである。 事例紹介 夏休み中の国内英語キャンプ 韓国大学生の英語教育動向 最近、韓国では語学研修(英語)のために海外へ行く大学生が増えている。 留学先:アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス等 目的 語学研修の目的 比率 就職のため 52% 英語能力(実力)の向上 32% 大学、大学院入試のため 20% 英語資格試験(TOEFL,TOEIC等) 15% 多様な文化体験 8% ※複数応答者:27%、 EDM留学センターの調査より 大学生の85%が外国語勉強をしていると答え、その中で76.5%が英語の勉強をしている。 1日平均の勉強時間は2時間6分、1ヶ月の教育費は12万3000ウォンである。 韓国大学生の就職動向-1 韓国大学生の就職動向-2 韓国大学生の就職動向-3 日本企業で求められるTOEICスコア 韓国企業で求められるTOEICスコア 4.韓国の学校環境 教師と生徒の関係 ・弟子去七尺師影不可踏(弟子七尺去って師の影を踏まず) ・恩師の日(5月15日) 先生に感謝と敬意を表す日であり、一般的に恩師の日に学 生や父母が教師に対し花束(カーネーション)などの贈り物をす る。先生の恩恵という歌も歌う。 恩師の日の様子 学級崩壊、学校暴力問題 教権の墜落 最近、先生の指導、注意に対し、暴力を振るなどの反抗する事件が相次いでいる。 学校内暴力 いじめを始め、様々な暴力行為が増加している。 2010年の「学校暴力実態調査」によると全体生徒の11.8%が学校暴力を受けたこと があると答え、11.4%の生徒は学校暴力に参加したことがあると答えた。 最も多い事例として「パンシャトル」、「卒業パン」、「ネット上での暴力的な書き込み」 などがある。 学校内暴力を受けた生徒の中、約30%が自殺したいと考えたことがあると答えた。 また、52%の学生は学校に行きたくない「登校拒否」と感じたことがあると答えた。 教師の社会的な地位 ▶ 2000年前後から大学入試で「師範大学」、「教育大学」の人気が上昇。 ▶ 小学生4500名、中学生4500名、高校生7000名を対象に行った調査によると15.7% の小学生、19.8%の中学生、13.4%の高校生が「教師になりたい」答え、いずれも1位 に選ばれた。「Teacher tops popular job list ‐Korean Herald 2007.11.16」から抜粋」 ▶ また配偶者の理想的な職業 として「男は女教師・女は公務員」が1位に選ばれる。 その理由としてリストラなどの心配がない安定性と業務上のストレスが少ないなどが挙 げられる。 一方、最近は「少子化」による生徒数の減少に伴う教員定員の減少のため、教員任 用考試(国公立教員資格試験)の競争率が数十~数百倍まで上昇することがあり、就 職難が深刻化する。