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第4章 やってはいけない!センサ&計測回路設計
第4章 やってはいけない!センサ&計測回路設計 やってはいけないÛ 電源電圧や温度が低下すると信号が出力されなくなる フォト・インタラプタの出力は十分に増幅する ● マウス・ホイールの回転方向検出のしくみ クタ−エミッタ間電圧が降 マウスのホイールやカメラの AF リングには,光学 式のエンコーダが内部に組み込まれています.図 1 に 下(0.2 V)して,フォト・ ダイオードの光出力が低下 そのしくみを示します.リングが矢印の方向に回転す ると,フォト・インタラプタ PH1 と PH2 の光が,AF リ したからです. 図 4 に示すように,フォト・ダイオードに流れる電 ングなどといっしょに回転する歯によって遮られます. 図 2 に示すのは,PH1 と PH2 の出力波形です.PH1 と PH2 は,互いの出力の位相差が 90 °になるように取 流が減ると,光出力が急に低下するポイントがありま す.また,LED の V F には温度特性がありますから (ΔVF /ΔTA = 1.5 mV/℃) ,低温ではさらに悪化します. り付けられています. 図 3 に示すのは,PH1 と PH2 とマイコンとの接続です. ● 対策 図 4 に示したように,フォト・インタラプタの出力 ● フォト・インタラプタの出力が出ない? 電圧は,光出力とともに低下する可能性があります. 試作台数を増やしていくと,フォト・インタラプタ の出力が出ないセットが出てきました. また歯の止まる位置によっては,光が遮られて,出力 が中間電位になることがあります. 原因はばらつきで,電源電圧の低いセットでは,2 個のフォト・ダイオード(2 VF ≒ 2.2 V)と Tr1 のコレ したがってフォト・インタラプタの出力は,ヒステ リシスをもつ回路(図 5)を挿入するなどして十分増幅 配線 PH1 LED PH2 してやる必要があります.図 5 の回路は,光出力 1.24 V で“H”→“L”,1.12 V で“L”→“H”となり VCC リングに連動し て回転する歯が LEDの出す光を さえぎる 光 ます.ヒステリシス量は R6 で変更できます. 〈漆谷 正義〉 +3V PH1 R4 VF フォト・トランジスタ 1k EE-SV3 (オムロン) 図 1 光学式エンコーダが回転方向や回転数を検出するしくみ R2 PH2 EE-SV3 2相出力 (PH2) 1.3 Vph K 1.2 VF 1.1 1 順電圧 VF[V] 光出力電圧 Vph [V] LEDCNT +3V PH1 A EE-SV3 C 2.2 2 E R1 100Ω R2 33k C1 C2 10μ 0.1μ R4 R3 15k 220Ω 中間レベル にもなる しきい値 電圧の設定 R5 10k 3 3.3 4 5 フォト・ダイオード電流 6 OPアンプの代 わりにコンパレ ータを使っても よい 2 3 R7 47k ENC1 I C1a 1 LM358 (ナショナル セミコンダ クター) R6 100k VCC マイコン Tr1 DTC 144 (ローム) ヒステリシス 電圧の設定 7 ID [mA] 図 4 フォト・インタラプタ内のダイオードに流れる電流と光出力 164 1k 電源電圧が低下したり温度が下がると出力 (Vph)が出なくなる 図 2 ロータリ・エンコーダの出力波形 0 2 33k ENC2 図 3 フォト・インタラプタとマイコンとの接続 誤差 ±30゜ t 3 R3 100Ω Tr1 UN9211 (パナソニック) t マイコン R5 R1 270゜ 90゜ ENC1 Vph 33k 360゜ 1相出力 (PH1) VCC 図 5 確実に動作するフォト・インタラプタとマイコンのインタ ーフェース回路 2005 年 11 月号 特集*やってはいけない!電子回路設計 やってはいけないÜ 光が当たると OP アンプが正しく動作しない 微小信号回路にガラス・パッケージの半導体は使わない ● 症状 ません. トラブルを起こしたのは,ソーラ・カーの補助バッ テリに入出力する電流を積算して,残量を表示する装 ● 原因 置です. 電流検出には,発熱と熱起電力による誤差などが気 ると,表示値が動くことに気づきました. 手で作った影をいろいろ動かして,変化するところ になったものの,シャント抵抗を使いました.この装 を探してみると,行き着いた部品は入力の保護ダイオ 置では,50 A までを想定して,1 mΩのシャント抵抗 を使い,電流は 10 mA 単位で読むことにしました. ードでした.使ったダイオードは 1S1588 です.装置 のふたは光の通るパンチング・メタルです. さて,静電気や結線ミスで過大入力などストレスを 加えると,OP アンプを傷める恐れがあるので,図 1 透明なガラスのパッケージの外から見える四角いチ ップ(1S1588)が,微小な電流を発電してしまい,二 のように入力回路に保護ダイオードを入れました.図 つのダイオード間に生じた電流差が無視できない誤差 2 に示すようなシリコン・ダイオードの特性を利用し て,OP アンプに 0.7 V 以上加わらないようにしたの になって値を狂わせていました. ● 対策 基板の上に人の影がかか です. 徹夜でテストして問題なし.屋内の作業場で繋ぎ込 図 3 に対策後の回路を示します. 透明でないダイオードとして,とりあえず手元にあ みと電気的な動作テストを行いました.動作に問題は ありません.ところが屋外にあるテスト・コースに車 った 2SC1815 のベース−コレクタ間をダイオードの代 わりに入れて,周囲の定数も少し手直ししました. 〈安藤 友二〉 を出して,計器の電源を入れてみると,まともに電流 値が表示されません.ふらふらと数値が動いて安定し シャント抵抗側と コンピュータ側は絶縁 センス電圧は 最大電流50A 最大50mV OP07 (アナログ・デバイセズ) R2 R 3 1k 20k R1 シャント 抵抗1mΩ 0.1μ D1 D2 V -F フォト・ カプラ コンバータ カウンタ コンピュータ処理 積算して電荷量を 求める R4 22k +15V 1S1588×2 −15V COM DC-DC + コンバータ − CPU側5V OP07を保護するために 追加したダイオード 電流 図 1 バッテリの入出力電流を積算して残量を表示するシステムを作ったが,表示値が安定しない 10k 2SC1815(東芝)×2 1k 入力 OP07 0.22μ 出力 12k 電圧 約0.7V以上はクランプされる 50mVではほとんど電流は流れない 図 2 ダイオードの電流−電圧特性を利用して OP アン (図 1 の D1 と D2 ) プの入力保護を行った 2005 年 11 月号 トランジスタのベース-コレクタ間を ダイオードとして利用 図 3 トランジスタを使った OP アンプの入力保護回路 165