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腎不全に対する治療法 - 東京慈恵会医科大学 腎臓

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腎不全に対する治療法 - 東京慈恵会医科大学 腎臓
腎不全に対する治療法
< 透析と腎移植 >
東京慈恵会医科大学
腎臓・高血圧内科
山本裕康
慢性腎臓病の病期(ステージ)分類
病期
糸球体濾過量
定義
(ml/min/1.73m22)
1
腎症はあるが、
機能は正常以上
2
軽度低下
60 - 89
中等度低下
30 - 59
高度低下
15 - 29
3
T
4
5
D
腎不全
≥ 90
< 15
各ステージにおいて移植患者の場合にはTを、また
ステージ5においては透析患者にDを付す
NKF K/DOQI clinical practice guidelines (Am J Kidney Dis 39 (2 suppl 1):S1-S266, 2002
Definition and Classification of CKD: A Position Statement from KDIGO(Kidney Int 67:2089-2100, 2005)
腎不全に伴う尿毒症
精神症状
中枢神経系
消化器系
末梢神経系
血液
内分泌系・代謝系
眼症状
循環器系
皮膚症状
筋萎縮・骨病変
電解質異常
慢性腎不全に対する透析の開始基準
合計点:60点以上長期透析療法への導入適応
1.臨床症状
①体液貯留 ②体液異常 ③消化器症状
④循環器症状 ⑤神経症状⑥血液異常 ⑦糖尿病性網膜症
3個以上:高度30点・2個:中等度20点・1個:軽度10点
2.腎機能
・血清クレアチニン8mg/dl以上(またはCcr10ml/分未満)
・5∼8mg/dl未満(またはCcr10∼20ml/分未満)
・3∼5mg/dl未満(またはCcr20∼30ml /分未満)
30点
20点
10点
3.日常生活障害度
・尿毒症症状のため起床出来ない:高度 30点
・日常生活が著しく制限される:中程度 20点
・通勤通学/家庭内労働が困難となった場合:軽度
10点
−厚生省・厚生科学腎不全対策研究事業1993−
末期腎不全に対する腎代替治療
血液透析
腹膜透析
腎移植
血液浄化療法の歴史
• 現時点で末期腎不全患者に対する腎代替療
法として、血液透析、腹膜透析、腎移植の3つ
の方法が確立している。
• しかし、この3つの治療法が出揃ったのは1960
年代であり、今日まで腎不全の主要な治療法
として、それぞれ使われる薬剤や機器が改良
され発展してきた。
腹膜透析の歴史
1672 Amsterdam : 腹水の除去
腹膜透析 の歴史
• 1918年: Ganterは、胸水をとって生理的食塩液を
入れると、頭痛など腎不全の症状が改善すること
に気づいた。
• 1920年代:もう一つの人工腎臓的手法として腹膜
灌流が開始された。
• 1930年代:透析液の工夫により、実際の臨床で成
功例が多く報告された。
1978年:CAPDについてTIME誌が掲載
(Karl D. Nolph, Perit Dial Int 22:608-613, 2002)
腹膜透析の基本原理
透析液バッグ
接続チューブ
チタニウムア
ダプター
排液バッグ
カテーテル
浸透圧による水分の除去
ブドウ糖による除水
血液
腹膜透析液
水
ブドウ糖
水
腹膜
腹膜透析患者さんの1日
腹膜透析患者さんの1日
血液透析の歴史
• 1912年:史上初の人工腎臓実験 (Abel/米国)
• セロファンはなく、コロジオンというニトロセルロースを
透析膜として使用。
• 血液を固めないために、ヒルからとったヒルジンを使用。
血液透析用透析膜
(ダイアライザー)
人工腎臓の中には人工膜でできた髪
の毛より細いストロー状の管が8,000
∼10,000本入っており、その1本1本
の中を血液が流れ、その外側に透析
液が流れる。人工膜には極めて小さ
な穴がある(半透膜)。小孔はNa、
Kなどの電解質、クレアチニン、BUN
などの毒素、水分を通すが、赤血球、
たんぱく質、細菌などは通さない。
従って、人工膜を介して血液と透析
液を接触させると、透析液へ毒素が
移動し、透析液中に含有させた必要
な物質(Ca・重炭酸など)は透析液か
ら体内へ補充される。
血液透析の仕組み
内シャント:
動脈と静脈を吻合
血液透析と腹膜透析(CAPD)
血液透析
• 基本は週3回・1回4∼5時間施行
• 医療スタッフの管理下で浄化効率が良い。
• 体内変動が大きく循環動態に影響あり。
• 重症患者ではICUで緩徐な持続浄化を行う。
腹膜透析(CAPD)
• 毎日24時間かけて血液を浄化する。
• 自己管理による在宅透析。
• 食事制限はやや緩やか(残腎機能の保持と関係)
• 浄化効率は劣る。
• 体内変動は少なく循環動態は安定。
人工腎臓と透析との相互発展
• 腹膜透析と血液透析は相互に発展してきた。
• 腎移植もやりやすい環境が生まれた。
– 準備して待機できることが出来れば、腎移植を
受けられるチャンスが増える。
• 腎移植の発展を助けたのが人工腎臓であり、
たとえ移植後ダメになっても、透析に戻れる
という安全ネットがあるという意味で重要。
わが国における慢性透析患者数の推移
わが国における慢性透析患者数の推移
(人)
300000
257,765
248166
250000
237710
229538
219183
206134
197213
200000
185322
175988
167192
154413
150000
143709
134298
123926
116303
103296
100000
88534
83221
50000
3631
215 301 949 1826
0
1-A-2
6148 9245
80553
73537
66310
59811
53017
47978
42223
36397
32331
27048
22579
18010
13059
1
9
7
5
1
9
8
0
1
9
8
5
1
9
9
0
1
9
9
5
2
0
0
0
2
0
0
5
(年)
日本透析医学会編:わが国の慢性透析療法の現況(2005年12月31日現在)
年別透析導入患者の主要原疾患の推移
年別透析導入患者の主要原疾患の推移
16000
患 者 人 数
14000
糖尿病性腎症
12000
10000
8000
慢性糸球体腎炎
6000
4000
腎硬化症
2000
0
83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 0
1
2
3
4
5
(年)
4A-2
日本透析医学会編:わが国の慢性透析療法の現況(2005年12月31日現在)
維持透析患者の臨床的特徴
糖尿病性腎症による腎不全の増加
腎硬化症も徐々に増加
新規に透析に導入する患者 ⇒ 高齢化
平均導入年齢=65歳以上
慢性腎不全に対する透析療法
• 急性期から慢性期の治療として確立した。
• 透析療法により生命予後は確保される。
• 合併症の予防と治療をしっかり行えば、
更に予後は改善するだろう。
透析療法の代表的合併症
• 骨代謝異常
• 心臓・脳血管系の合併症
• 腎性貧血
• 長期透析に伴うアミロイドーシス
• CAPDによる腹膜機能低下
腎臓の働き
透析療法で
ある程度
代償できる
透析療法では
代償できない
1.老廃物の排泄
2.水分の調整
3.電解質の調節
4.酸塩基平衡の調節
5.血圧の調節
6.造血ホルモンの分泌
7.ビタミンD3の活性化
腎移植術
腎移植
• 完成された非自己の臓器を移植し、その機能の恩恵
を享受する極めて効率的な治療。
• 基本的には、全ての腎不全患者が腎臓移植の対象と
なる。
• 現状では免疫抑制剤が必須のため、活動性感染症あ
るいは進行性の悪性腫瘍を合併している場合は除外。
• 国内での腎臓移植費用は350∼400万円、健康保
険が適用され、全額公費で行われる 。
• 献腎移植・生体腎移植とも、ドナー不足が最大の問題。
腎不全治療:
透析療法と腎移植の比較
生存率:透析療法 < 腎移植
生活の質:透析療法 < 腎移植
医療費:透析療法 > 腎移植
世界では腎不全治療法として何を選択しているか
100%
80%
60%
血液透析
68.7%
40%
腹膜透析 8.5%
20%
腎移植
22.8%
0%
(Moeller S. et al. Nephrol Dial Transplant 17:2071-2076, 2002)
血液型と臓器移植
血液型適合移植
・血液型適合
・血液型適合不一致
血液型不適合移植
腎移植における管理のポイント
• 適切なドナー(提供者)を選択
• 術前の十分なレシピエント(患者)評価
– 体液バランス・循環動態・感染症・・・
• 的確な血管吻合・血液環流量の確保
• 必要十分な免疫抑制療法
• 拒絶反応の早期診断(腎生検)と治療
• 感染性合併症の早期診断と治療
ドナー選択の条件
1.年齢が70歳以下である
2.次の疾患を有しないこと
高度の高血圧
糖尿病
腎疾患
脳腫瘍以外の悪性腫瘍
全身性の細菌性・ウイルス性感染性疾患
3.尿所見が正常であること
4.腎機能が正常であること(末期の上昇は除く)
5.温阻血時間が 60分以内であること
(腎移植マニュアル1993より Cosimi B, 1983)
腎移植臨床登録集計統計:2001年までの腎移植症例追跡調査
年代別の生着率
生着率
-82年
83-91年
92-01年
%
100
(a)生体腎移植
1年
74.1
91.7
94.4
5年
54.9
75.2
83.4
80
10年
41.9
55.6
69.6
15年
34.2
41.9
-
1982年以前
(N=1369)
1983-1991年
(N=3622)
1992-2001年
(N=3889)
60
40
20
0
0
10
20
30
年
腎移植前後の生活
• 入院前には、検査のため、何回か通院が必要。
• 入院から退院まで約1ヶ月間の入院期間。
• 透析は腎移植を実施するまで継続。腹膜透析の場合は
原則としてカテーテルは移植手術と同時に抜去。
• 手術前から免疫抑制剤を開始、減量するが継続が必要。
• 免疫抑制剤の副作用に注意。
腎移植前後の生活
• 定期的な外来通院が必要。拒絶反応の兆しや腎機
能低下が認められた場合には入院治療。
• 万が一、激しい拒絶反応を起こし、制御不可能と
なった場合には、やむを得ず移植腎の摘出をする
こともありうる。
• 移植後に、もともと腎臓病が移植腎に再発する可
能性があり、その治療が必要。
総合的な腎不全医療
腎不全治療には、腹膜透析、
血液透析、腎移植 の3つの
選択肢があります。
それぞれの利点と欠点を十
分に理解し、常に最善の生
医療を受けることが大切です。
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