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日本語(PDF形式:1.7MB)
平成22年度調査報告
地球温暖化技術普及等推進事業(第二次)
報
告
書
2011年3月
株式会社
日本総合研究所
「地球温暖化技術普及等推進事業(第二次)
」報告書
-
1.
目 次 -
サマリー ...................................................................................................................... 3
本調査の背景等 ........................................................................................................ 3
1.1.
1.1.1.
本調査の背景 ........................................................................................................ 3
1.1.2.
本調査の目的 ........................................................................................................ 3
省エネプログラムへの日本メーカーの参入可能性の検討 ...................................... 4
1.2.
1.2.1.
メキシコのおける電球・家電製品の流通・販売状況 .......................................... 4
1.2.2.
日本メーカーの状況 ............................................................................................. 4
1.2.3.
FIDE省エネプログラムの概要 .............................................................................. 4
1.2.4.
省エネプログラムへの日本メーカーの参入 ........................................................ 5
1.2.5.
二国間オフセットメカニズムの活用による資金提供スキームとその課題 ......... 5
資金提供スキームに適用するMRV方法論の検討.................................................... 6
1.3.
1. Summary .............................................................................................................................. 7
1.1. Background and objective of the study ................................................................... 7
1.1.1. Background of the study ......................................................................................... 7
1.1.2. Objective of the study ........................................................................................... 7
1.2. Consideration of a possibility for Japanese manufacturer’s participation to
energy-saving program .......................................................................................................... 8
1.2.1. Distribution and selling situation regarding electric bulb / home electric
appliances in Mexico............................................................................................................ 8
1.2.2. Situation of Japanese manufactures ..................................................................... 8
1.2.3. Outline: FIDE’s energy-saving program .............................................................. 9
1.2.4. Japanese manufacturer’s participation to energy-saving program ................ 9
1.2.5. Funding scheme and its issue in terms of bilateral offset mechanism ......... 9
1.3. Consideration on MRV methodology applied to funding scheme ........................... 10
2.
メキシコにおける温室効果ガス排出および気候変動対策の状況 ..............................11
2.1.
メキシコの基本情報................................................................................................11
2.1.1.
経済発展・人口等の状況.....................................................................................11
2.1.2.
産業 .................................................................................................................... 13
2.2.
温室効果ガス排出の状況 ....................................................................................... 16
2.2.1.
温室効果ガス排出量の推移 ................................................................................ 16
2.2.2.
部門別の温室効果ガス排出の状況 ..................................................................... 16
2.3.
気候変動対策の概況............................................................................................... 20
-1-
2.3.1.
気候変動対策特別プログラムの策定と温室効果ガス排出量目標の設定........... 20
2.3.2.
NAMAに関する取組み ........................................................................................... 23
2.3.3.
メキシコ政府による具体的な温室効果ガス排出削減活動................................. 24
3.
省エネプログラムへの日本メーカーの参入可能性の検討 ........................................ 26
メキシコにおける電球・家電の流通・販売状況 ................................................... 26
3.1.
3.1.1.
電球 .................................................................................................................... 26
3.1.2.
家電 .................................................................................................................... 28
3.1.3.
日本メーカーの状況 ........................................................................................... 31
省エネプログラムの実施状況 ................................................................................ 32
3.2.
3.2.1.
FIDE省エネプログラムの概要 ............................................................................ 32
3.2.2.
FIDE電球交換プログラムの入札条件 ................................................................. 35
3.3.
省エネプログラムへの日本メーカーの参入 .......................................................... 40
3.4.
二国間オフセットメカニズムの活用による資金提供スキーム ............................. 41
3.5.
資金提供スキームを実現するための条件・留意点・解決すべき課題 .................. 43
4.
資金提供スキームに適用するMRV方法論の検討 ..................................................... 45
4.1.
既存方法論の分析 .................................................................................................. 45
4.1.1.
高効率照明 ......................................................................................................... 45
4.1.2.
省エネ家電 ......................................................................................................... 46
4.2.
MRV方法論 ............................................................................................................ 48
4.2.1.
適用条件 ............................................................................................................. 48
4.2.2.
バウンダリー ...................................................................................................... 49
4.2.3.
追加性 ................................................................................................................. 50
4.2.4.
排出削減量 ......................................................................................................... 50
4.2.5.
クレジット期間 .................................................................................................. 51
4.2.6.
モニタリング ...................................................................................................... 51
4.2.7.
事前調査・モニタリングの基本方針とサンプリング数 .................................... 52
4.3.
排出削減量の試算 .................................................................................................. 52
4.4.
資金提供スキームの実効性分析 ............................................................................ 53
-2-
1.サマリー
1.1. 本調査の背景等
1.1.1. 本調査の背景
京都議定書は、主に先進国から構成される付属書Ⅰ国に温室効果ガスの排出削減を義
務付ける枠組みである。途上国の非付属書Ⅰ国は、排出削減を義務付けられていないも
のの比較的、経済・社会システムが発達している一部の非付属書Ⅰ国では、独自に緩和
活動に取組んでいる。それらの活動の一部は 2013 年以降の京都議定書に続く枠組みにお
いて NAMA(Nationally Appropriate Mitigation Actions by developing country parties)
として位置づけられ、新しい排出権として認められる可能性がある。
メキシコは BRICs のブラジル・ロシアと並ぶ中進国の一つであり、石油と米国向けの
自動車・電機電子製品の輸出が主な産業である。GDP は通貨危機や世界的な景気後退に
より一時的な足踏みがあったものの、一貫して伸び続けている。人口は 2001 年に 1 億人
を超え、2009 年には 1 億 755 万人となっており、経済規模と同様に人口も一貫して増加
傾向にある。経済・人口の伸びは温室効果ガス排出量の増加に繋がっており、メキシコ
の温室効果ガス排出量は 1990 年には約 5 億 t-CO2 であったが、2006 年には約 7 億 1,500
万 t-CO2 となり、16 年間で 1.43 倍に増加している。
増加し続ける温室効果ガス排出量に対して、メキシコでは、PECC(Programa Especial de
Cambio Climático:気候変動対策特別プログラム)を 2008 年 7 月に発表し、自ら設定し
た 2050 年・50%削減目標の達成に向かって、家庭部門を対象とした省エネプログラムの
展開、風力発電の推進、高効率薪ストーブの普及など様々な取組みを開始しつつある。
これらの取組みの一部は NAMA に位置づけられる見込みであり、二国間オフセットメカ
ニズムが連携することは、当メカニズムの国際的な信頼性を高めていく上で有用である
と考えられる。
1.1.2. 本調査の目的
本調査は、メキシコ政府が推進する高効率照明・省エネ家電製品普及促進プログラム
(以下、
「省エネプログラム」とする)に二国間オフセットメカニズムを組み合わせる事に
より、日本の優れた電球・家電製品をメキシコの一般家庭等に普及させ、家庭部門にお
ける省エネルギー・温室効果ガス排出削減を実現するスキームの実現可能性を検討する
ものである。具体的には以下の事項について調査・検討を行った。
・ 省エネプログラムへの日本メーカーの参入可能性の検討
・ 資金提供スキームに適用する MRV 方法論の検討
-3-
1.2. 省エネプログラムへの日本メーカーの参入可能性の検討
1.2.1. メキシコのおける電球・家電製品の流通・販売状況
メキシコでは、おおよそ 2 億 9,000 万個の電球が使われており、その大半が白熱電球
および電球型蛍光灯である。従来は価格の安い白熱電球が主流であったが、政府等の電
球型蛍光灯普及推進プログラムや電球型蛍光灯の価格低下などにより、電球型蛍光灯の
シェアが徐々に増加している状況にある。2010 年には 4,000 万個の電球が販売され、そ
の内訳は白熱電球:2,800 万個、電球型蛍光灯:1,200 万個と推計されている。電球型蛍
光灯の流通としてはスーパーが約 50%を占めており、ホールセールクラブ等が約 30%、ホ
ームセンターが約 20%となっている。
メキシコでは電機電子産業が発展している上、製品の値下がりと所得の増加もあって、
家電製品はメキシコの家庭に広く普及している。普及率は軒並み高く、2008 年の時点で
冷蔵庫:82.8%、洗濯機:53.2%、テレビ:93.1%、オーディオ機器:83.0%、DVD プレー
ヤー:55.8%となっている。冷蔵庫は 1996 年に初めて年間販売台数が 100 万台を超え、
その後は順調に販売台数が増加し、2007 年には年間 188.5 万台が販売されている。エア
コンについては、値下がりにより一般的な家電製品となっており 2010 年には年間 85.5
万台が販売されている。
1.2.2. 日本メーカーの状況
メキシコおいて、電球あるいは白物家電を販売している主要な日本メーカーは 2 社で
あった。
A 社は日本国内において電球型蛍光灯のトップシェアを持っているメーカーであり、
メキシコにおいても 2011 年 3 月から販売開始する予定である。エアコンについては、
2010
年から冷房専用機を取り扱っており、一定の販売台数となっている。将来的にはインバ
ータを搭載した冷暖兼用機を投入する予定である。冷蔵庫については地域性が強いため
取り扱っていない。
B 社は LED 電球において先駆的な取組みを進めている企業である。メキシコを含む全
世界で白熱電球を代替する照明として、電球型蛍光灯ではなく、LED 電球を推進してい
るため、電球型蛍光灯の取り扱いはない。家電関連では、エアコン、冷蔵庫については
メキシコでは取り扱っていない。
本 FS 調査にて日本メーカーの参入可能性を検討する FIDE の省エネプログラムは、電
球・冷蔵庫・エアコンが対象であるが、FIDE の認証を取得していることが条件となるた
め、省エネプログラムへ参入できる商品は、調査時点では A 社の電球型蛍光灯のみであ
った。したがって、本 FS では電球型蛍光灯を中心に検討を進めた。
1.2.3. FIDE 省エネプログラムの概要
FIDE の省エネプログラムは、白熱電球を電球型蛍光灯へ交換する活動と効率の悪い冷
-4-
蔵庫・エアコンを高効率なものへ買い換える活動の 2 つから構成されている。
電球交換は、低・中所得世帯を対象に無償で電球型蛍光灯を配布し白熱電球を交換す
るプログラムである。1 世帯あたり 4 つの白熱電球を交換所に持ち込むと 4 つの電球型
蛍光灯と交換できるというものであり、交換された白熱電球は管理下で破壊され、再び
市場に出回る事がないため、確実に白熱電球を電球型蛍光灯に代替できる仕組みとなっ
ている。
高効率冷蔵庫・エアコンへの代替については、低所得世帯を対象に効率の悪い冷蔵庫・
エアコンを買い換える際に、月間電力消費量に応じて、高効率冷蔵庫・エアコンを買う
際に利用できる割引クーポンと低利融資枠を用意し、より効率の良い製品を購入するよ
う誘導するものである。
1.2.4. 省エネプログラムへの日本メーカーの参入
電球交換プログラムは 2011 年 4 月から順次 2,290 万個(5,725,000 セット)の電球の交
換を開始するスケジュールとなっており、2011 年 2 月に入札が実施された。日本メーカ
ーA 社では、本プログラムへサプライヤーとして参入する方向で検討を進めてきた。し
かし、FIDE が示した入札条件・仕様が特殊であったため A 社の既存製品の仕様と合致せ
ず、新たに FIDE の技術仕様に合わせた製品を設計する必要があり、それらの対応に時間
を要したため、結果的には、今回の入札に参加することはできなかった。二国間オフセ
ットメカニズムのスキームを理解し、積極的に日本メーカーである A 社の電球型蛍光灯
を採用することを望んでいたメキシコの入札予定企業(C 社)が居たが、対応のために十
分な時間が確保出来ず、C 社も、結局、別の電球メーカーD 社とチームを組んで入札に参
加することとなった。C 社によると A 社の電球は D 社の電球と価格面ではほぼ同等であ
り、競争力を持っていることから、二国間クレジットは本プログラムを実施する企業等
にとって、A 社の電球型蛍光灯を採用するインセンティブとして十分に機能するもので
あったとしている。
1.2.5. 二国間オフセットメカニズムの活用による資金提供スキームとその課
題
メキシコ政府は、二国間オフセットメカニズムについては総じて好意的であり、日本
の技術・製品および資金により、メキシコの温室効果ガス排出削減が進むことに期待を
寄せている。一方で、メキシコ政府は、二国間オフセットメカニズムについては、メキ
シコ政府が行っている温室効果ガス排出削減活動に組み込まれるべきものではなく、こ
れらの活動に連携するもののプログラムの設計や運用には直接影響を与えない形で活用
されるべきものと考えている。
省エネプログラムに二国間オフセットメカニズムを連携させるためには、あくまでも
日本側独自の取組みとして日本メーカーの製品による排出削減量をクレジット化するこ
-5-
とに加え、そのクレジットに対して資金提供することによってプロジェクト参加者のイ
ンセンティブとするようなスキームが求められているのである。
二国間オフセットメカニズムの存在自体は、メキシコ政府が実施するプログラムへの
日本メーカーの参入を後押しするものの、後付で資金提供をするだけではプログラムに
おいて優遇される事はなく、本当の意味で日本メーカーの参入を後押しする力とはなり
得ない。メキシコ政府のプログラム形成に深く関与していくためにも早期に制度を詳細
化することと複数の関係者間の情報・意見を集約してプログラムを作っていく、コーデ
ィネーターが求められている。
1.3. 資金提供スキームに適用する MRV 方法論の検討
現在、電球交換プログラムに適用可能な CDM の方法論は通常規模方法論の AM0046、小
規模方法論の AMS-II.C および AMS-II.J の 3 種類である。AM0046 は 2007 年に方法論と
して認証されたものの現在までに国連登録された案件は無く、パイプラインに 2 件が存
在しているのみである。一方、AMS-II.J は 2008 年に方法論として認証され、これまで
に通常プロジェクトとして 10 件、プログラム活動として 1 件が登録され、パイプライン
には通常プロジェクト:41 件、プログラム活動:3 件が存在している。
これらの方法論を分析した結果、小規模 CDM 方法論の AMS-II.J をベースとして、これ
を一部改変した方法論を作成した。具体的には、以下の点について改変を行った。
・ 適用条件:現在は電球型蛍光灯のみとなっているが、LED 電球等の他の高効率照明に
も適用可能とする。
・ モニタリング:使用時間については、AMS-II.J では規定値の 3.5 時間があるが、正
確性を向上させるために使用時間をモニタリング項目に含める。
・ 排出削減量を推定するための EX ante の調査を必須としない(サンプル家庭を特定し
ベースラインを設定する調査は必要)。
電球交換プログラムによる排出削減量は、既存調査などから諸条件を設定し、本方法
論を適用すると 40.4 万 t-CO2/年となった。また、既に普及している電球型蛍光灯の削
減効果をベースラインに織り込むと 37.9 万 t-CO2/年となった。仮に全て日本メーカー
の電球型蛍光灯が配布された場合は、電球型蛍光灯の寿命の 7.8 年間で 295.6 万 t-CO2
のクレジットが創出可能であると考えられた。
-6-
1. Summary
1.1. Background and objective of the study
1.1.1. Background of the study
Kyoto Protocol is a framework of “greenhouse gas emission reduction commitment” for
Annex I Parties, consisting of mainly developed countries. Emission reduction is not required to
Non-Annex I Parties consisting of developing countries. However, some of them where economy
and social systems are comparatively developed are voluntarily taking mitigation actions. A
certain kinds of the actions are considered as NAMAs (Nationally Appropriate Mitigation
Actions by developing country parties) which will come after Kyoto Protocol and they could be
approved as a new carbon credit.
Mexico is a more developed country (MDC) ranking with Brazil, Russia and other BRICS
countries. Her main industries are oil as well as exportation of automobile / electrical and
electronics to the USA. GDP is consistently growing, though there was a temporarily standstill
due to currency crisis and global recession. Population was more than 100 million in 2001 and
reached more than 107.55 million in 2009, consistently growing along with its economic growth.
The economic and population growth resulted in increase of greenhouse gas emissions: Mexico
emitted approximately 500 million tons-CO2 in 1990 and approximately 700 million tons-CO2 in
2006 – the emissions increased 1.43 times in 16 years.
In order to correspond to the increasing greenhouse gas emissions, Mexico declared PECC
(Programa Especial de Cambio Climático) in July 2008. She is now about to launch various
actions such as development of energy-saving program for residential sector, promotion of wind
power generation and spread of efficient wood-burning stoves, in order to achieve their own
voluntary target for carbon emissions reduction: 50% less by 2050.
Some parts of these actions are expected to be regarded as NAMAs. So to it is considered to be
effective for would-be bilateral offset mechanism to link with these actions in order to enhance
its international credibility.
1.1.2. Objective of the study
The study is to consider feasibility of such scheme that realizes energy saving / greenhouse gas
emission reduction among residential sector by spreading Japanese high-quality electric bulb /
home electric appliances to general Mexican’s households – via combining “the spread of high
efficiency lighting / energy-saving home electric appliances program (hereinafter referred to as
energy-saving program)” and bilateral offset mechanism. Following points were studied and
considered especially:
・ Consideration of a possibility for Japanese manufacturer’s participation to the energy-saving
program.
-7-
・ Consideration of MRV methodology which is applied to the funding scheme.
1.2. Consideration of a possibility for Japanese manufacturer’s participation to
the energy-saving program
1.2.1. Distribution and selling situation regarding electric bulbs / home electric
appliances in Mexico
In Mexico, approximately 290 million bulbs are currently used and most of them are
incandescent bulbs (IB) and compact fluorescent lamps (CFL). Currently IBs are mainly used
because of their low prices. However, a share of CFL is gradually increasing due to a
government’s program promoting the use of CFLs as well as lowering their prices. In 2010, 40
million electric bulbs were sold: 28 million IBs and 12 million CFLs. An approximate share of
distributers is 50% by grocery supermarket, 30%by wholesale club, and 20% by home
improvement store.
Home electric appliances are widely distributed into Mexican households because electrical
and electronics industries are developed, product price is becoming lower, and personal income is
increasing. Penetration rate is stably high: refrigerator (82.8%), washing machine (53.2%),
television (93.1%), audio equipment (83.0%), and DVD player (55.8%) at the time of 2008.
Annual sales amount of refrigerators reached more than one million in 1996 for the first time and
grew steadily thereafter, reaching 1,885,000 in 2007. Air conditioner is also becoming popular
due to price decline. Its annual sales amount was 855,000 in 2010.
1.2.2. Situation of Japanese manufactures
There are two major Japanese manufacturers selling electric bulbs or home appliances in
Mexico.
One of the companies, Company-A, has the largest share of CFL in Japan and it is going to
launch CFL in Mexico from March 2011. Regarding air conditioner, the company started selling
air-cooling equipment from 2010 and has marked constant unit sales. It is planning to sell air
conditioner for both cooling and heating use with inverter technology in the near future. The
company is not handling refrigerator because refrigerator requires different characteristics for
each region.
The other companies, Company-B, is a pioneering company in of LED lighting. They are not
handling CFL because they believe LED should be promoted as an alternative to IBs globally
including Mexico. In terms of home appliances, the company is selling neither air conditioners
nor refrigerators in Mexico.
FIDE’s energy-saving program, for which feasibility of Japanese manufacturer’s entry is
considered by this study, is targeting on electric bulb, refrigerator, and air conditioner. In order
-8-
to apply to the program, the products are required to have FIDE’s certification.
Only can
Company-A’s CFL satisfy the requirement at this moment. So this study is mainly focusing on
CFL.
1.2.3. Outline: FIDE’s energy-saving program
FIDE’s energy-saving program consists of following 2 activities: (1) replacing IBs with CFLs,
(2) trading in inefficient refrigerator and air conditioner for efficient ones.
The former is a program to replace IBs with the CFLs for low-income and moderate-income
households for free. 4 IBs are replaced with 4 CFLs per household in replacement office. The
replaced IBs should be broken down under supervision so that they will not come into the market
again, realizing a complete replacement of IBs with CFLs.
The latter is a program targeting on low-income and moderate-income households as well.
When they are going to replace inefficient refrigerator and air conditioner, discount coupon and
low-interest loan will be offered to them based on monthly electric bill.
1.2.4. Japanese manufacturer’s participation to energy-saving program
Electric bulb replacement program will be launched in April 2011 to replace 22.9 electric bulbs
(5,725,000 sets) in order of precedence. The bidding took place in February 2011 and a Japanese
manufacture (Company-A) was considering to participate to the program as a supplier. However,
FIDE’s terms of reference for bidding were too specific to meet with the Company-A’s existing
products spec. It took time for Company-A to design a new product which would meet with
FIDE’s technological specification and eventually they were not able to participate in the bidding.
There was a Mexican company (Company-C) planning to join the bidding and expecting to adopt
Company-A’s CFL.
However, company-C ended up choosing another electric bulb manufacture
(Company-D) due to the delay of Company-A.
1.2.5. Funding scheme and its issue in terms of bilateral offset mechanism
Mexico’s government is generally showing positive attitude to the bilateral offset mechanism
and expecting to improve their greenhouse gas emission reduction by utilizing Japanese
technologies, products and funds. On the other hand, Mexico’s government has an idea that
bilateral offset mechanism should be built outside of their original greenhouse gas emission
reduction activities.
It seems that the government does not want to modify their original
program design or operation.
In order to link the energy-saving program with the bilateral offset mechanism, the Japanese
side is required to independently produce credits of greenhouse gas emissions by using Japanese
products and also to design a scheme that can create incentives to participants (of the project) by
-9-
providing funds to the credits.
Bilateral offset mechanism provides an opportunity for Japanese manufacturers to participate
in the program implemented by the Mexican government.
However mere funding for
would-be emission credits will not give Japanese manufacturers an advantage over the program
and cannot guarantee Japanese manufacturers’ participation in the real sense. In order for
Japanese manufactures to participate in Mexican governmental programs, it is convinced that a
coordinator-type person or entities collecting information and opinions from various players
concerned are required to build up the program itself at the very early stage of program
development.
1.3. Consideration on MRV methodology applied to funding scheme
There are 3 CDM methodologies which can be applied to the electric bulb replacement
program at this point: AM0046 (large scale methodology), AMS-II (small scale methodology),
and AMS-II.J (small scale methodology). Even though AM0046 was approved as methodology in
2007, there is no case/project registered as CDM project so far and there are just 2 cases/projects
in pipeline. On the other hand, AMS-II.J approved as methodology in 2008 has 10 cases
registered as regular project, one as program activity, 41 as regular project in pipeline, and 3 as
program activity in pipeline.
As a result of analysis on the above-mentioned methodologies, a new, modified methodology
was established by using AMS-II.J (small scale methodology) as a base. The modified points
are as follows:
・ Applicability: AMS-II.J is applicable to CFL only. However, the modified one can be applied
to other high-efficient lightings such as LED and etc.
・ Monitoring: AMS-II.J uses the fixed hours (3.5 hours) in terms of hour of use. However, the
modified one includes hour of use as monitoring items in order to improve accuracy.
・ EX-ante study is required to estimate greenhouse gas emissions in the modified methodology
(Note that it is necessary to conduct a study which is to specify sample households and to set
up baseline).
Greenhouse gas emissions that can be gained as a result of the electric bulb replacement
program would be 404,000 tons-CO2/year, subject to the conditions which would be set up
based on the existing studies and the modified methodology. And also, if taking reduction effect
of CFLs which were already distributed into account to fix the baseline, the result will be
379,000 tons-CO2/year. Finally, if Japanese manufacturer’s CFL whose life is 7.8 years should
be distributed to all households, it is estimated that 2,956,000 tons-CO2 credits can be
generated.
- 10 -
2.メキシコにおける温室効果ガス排出および気候変動対策の状況
2.1. メキシコの基本情報
2.1.1. 経済発展・人口等の状況
メキシコの 2009 年の購買力平価ベース GDP は 1 兆 4,657 億ドル(世界 11 位・出典:IMF)、
一人あたり購買力平価ベース GDP:13,628 ドル(世界 59 位・出典:IMF)となっている。一
人あたり購買力平価 GDP で比較した場合、 BRICs のブラジルおよびロシアとほぼ同じ水準
となっている。近年、急速に経済発展を遂げている国の一つに挙げられており、BRICsに
続く経済発展が期待される国家グループの NEXT11(ネクストイレブン:イラン、インドネ
シア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピ
ン、ベトナム、メキシコ)に含まれている。
1980 年以降、メキシコの GPD は増加傾向にあり、特に石油価格の上昇により経済が好転
した 1988 年以降や北米自由貿易協定(NAFTA)が発効した 1994 年以降に大きな伸びを示して
いる。一方、1994 年末に発生した通貨危機や 2008 年半ばからの世界的な景気後退により、
1995 年および 2009 年はマイナス成長となっているなど、直線的な右肩上がりではなく、
景気後退も経験している。
図表 1
メキシコの購買力平価ベース GDP の推移
購買力平価ベースGDP
単位:10億ドル
2,000
1,500
1,000
500
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
0
出典:IMF
メキシコの人口は 2001 年に 1 億人を超え、2009 年には 1 億 755 万人となっている。
1980~2009 年間の平均年間人口増加率は約 1.6%となっており、人口は一貫して増加傾向
にある。メキシコ国家人口評議会(CONAPO)の推計によると今後もメキシコの人口は増え
続け、
2040 年頃に 1 億 2,300 万人程度に達した後、
ピークアウトし 2050 年には 1 億 2,190
万人になるとしている。
- 11 -
図表 3
- 12 -
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
単位:100万人
図表 2
メキシコの人口の推移
120
人口
100
80
60
40
20
0
出典:IMF
メキシコの人口予測
出典:国家人口評議会(CONAPO)
2.1.2. 産業
メキシコの産業の特徴は、従来から開発が進められてきた石油産業に加え、自動車産
業および電機・電子産業を中心とする製造業が牽引していることと日本と同様な輸出型
の産業構造であることが挙げられる。
メキシコにはトヨタ、日産などの主要な自動車メーカーが進出しており、2010 年には
日系企業合計で約 61.6 万台の乗用車を生産している。メキシコ全体では約 226 万台の乗
用車生産台数であり、日本(2010 年:約 830 万台)の約 1/4 程度となっている。乗用車生
産台数は世界的な景気後退により 2009 年に約 60 万台減少したものの 2010 年には前年比
50%の増加により急回復しており、乗用車生産台数は増加傾向にある。
乗用車生産台数の 83%が輸出向けであり、米国向けを中心とした製造輸出拠点に位置
付けられている。かつては米国への輸出が輸出台数の 90%弱を占めることもあったが、
近年では、成長市場の南米が占める割合が増加しており、2010 年の輸出台数に占める割
合は北米(米国・カナダ):76%、南米:11%、欧州:9%となっている。
図表 4
メキシコにおける企業別乗用車生産・販売台数
出典:メキシコ自動車工業会(AMIA)よりメキシコ日本商工会議所経済調査委員会作成
メキシコの電機電子産業は、自動車産業と並ぶ主要な製造業であり、主な製品として
は、カラーテレビ・携帯電話・コンピュータなどが挙げられる。自動車と同様に生産さ
れた製品の大半は輸出されており、主に米国向けとなっている(約 80%程度)。
カラーテレビは、2009 年に景気後退を受けて輸出金額は 2008 年の 199.9 億ドルから
164.7 億ドルに減少したものの輸出数量はほぼ横ばいの 3,441 万台となった。2010 年は
- 13 -
第三四半期までで 3,000 万台弱の輸出台数となっており、順調な増加となっている。
その他の電子機器では、携帯電話の輸出金額・数量が減少しているものの競争力の強
い EMS(電子機器受託製造サービス)企業の工場が多いことからコンピュータの輸出金
額・数量が大きく伸びている。これを上回るのが、近年、工場が増加している大型白物
家電である。冷蔵庫・フリーザーは 2010 年には前年比で輸出金額:36.1%、輸出金額:
171.2%とめざましい伸びとなっており、輸送コストの点から競争力の強い米国市場向け
の輸出を増加させている。
図表 5
メキシコにおける主要電機電子製品の輸出状況
出典:メキシコ経済省通関統計よりメキシコ日本商工会議所経済調査委員会作成
メキシコの産業は、自動車および電機電子の輸出状況等に示されている様に、米国市
場に強く依存する構造となっている。2000 年前後と比較すると輸出において米国向けが
占める割合は低下しつつあるものの、依然として 80%程度を占めており、米国経済がメ
キシコ経済へ与える影響は非常に大きなものとなっている。米国経済の好不調がメキシ
コ産業の浮沈を決めてきたとも言え、実質 GDP 成長率の推移は米国の動きに高い相関を
示している。
米国経済の好不調の影響の他に、米国市場における他国との競合もメキシコ経済に大
きな影響を与えている。近年、米国では電機電子製品を中心に中国からの輸入が増加し
ており、輸送にコストがかからない電子部品や軽量な家電製品を中心に中国製品のシェ
アが増加し、相対的にメキシコ製品のシェアが減少している。
一方で、従来から生産輸出拠点として投資がされてきた自動車や冷蔵庫・フリーザー
が輸出金額・数量を伸ばしていることからもわかるように、製造コストと輸送コストの
両面で競争力を持つ分野は数多くある。南米等の新たな市場へシフトしていくことも考
え合わせれば、メキシコの産業は今後も高い成長の可能性を持っているといえる。
- 14 -
図表 6
メキシコの仕向国別輸出割合の推移
出典:経済省貿易統計より JETRO 作成
図表 7
メキシコと米国の実質 GDP 成長率の推移
出典:米国:商務省経済分析局(BEA)、メキシコ:国立統計地理情報院(INEGI)より JETRO
作成
- 15 -
2.2. 温室効果ガス排出の状況
2.2.1. 温室効果ガス排出量の推移
メキシコの 2006 年における温室効果ガス排出量は約 7 億 1,500 万 t-CO2 となっている。
京都議定書の基準年である 1990 年には約 5 億 t-CO2 であったことから、16 年間で 1.43
倍に増加したことになる。メキシコの温室効果ガス排出量が増加している背景には、順
調な経済成長や人口増加がある。今後も経済成長および人口増加が見込まれており、こ
れらを前提としつつ、温室効果ガス排出量を抑制していくことが課題となっている。
図表 8
メキシコにおける温室効果ガス排出の推移
出典:INE(Inventarios Nacionales de Gases de Efecto Invernadero. México.)
2.2.2. 部門別の温室効果ガス排出の状況
メキシコの温室効果ガス排出量を部門別に見るとエネルギー起源分野では交通:
20.4%、製造業:8%となっている。発電は 21%を占めており、単独の部門としては最大
の排出量となっている。非エネルギー起源分野では、森林・土地利用変化:9.9%、農業:
6.4%、廃棄物処理:14.1%となっており、日本の温室効果ガス排出量に占める割合(11%
程度)と比較すると、非エネルギー起源分野が大きくなっている。
最終消費部門別では、自動車:19.04%、家庭:6.87%、業務:3.9%、製鉄:4.5%、セ
メント:4.45%、その他産業:12.28%、石油・ガス精製:11.53%となっている。日本に
比べ、家庭や業務など民生部門の占める割合が低く、石油・ガス精製を含む産業部門が
占める割合が高くなっている。
温室効果ガスの種別では、二酸化炭素(CO2):69.5%、メタン(CH4):26.1%となって
いる。メタンの占める割合が大きくなっているのは、主要な産業である石油産業におい
て原油の掘削時に大量の随伴ガスが発生し、その主成分がメタンであることに加え、農
業(畜産)や廃棄物処理からも大量にメタンが発生しているためである。
- 16 -
図表 9
メキシコにおけるセクター別温室効果ガス排出の状況(2006 年)
運輸
自動車
家庭
発電
業務
二酸化
製鉄
炭素
セメント
その他
その他産業
製造業等
漏洩
石油・ガス精製
工業プロセス
土地利用変化
森林・土地利用変化
メタン
農業
廃棄物処理
出典:Mexico’s Fourth National Communication to the United Nations Framework
Convention on Climate Change
温室効果ガス排出量において大きな割合を占めている発電部門では、発電量が増加傾向
にある。1990 年には 100.2TWh であったが、2008 年にはほぼ倍の 207.9TWh まで増加し
ている。更にメキシコエネルギー省の予測では、2024 年には 365.3TWh まで増加すると
見込まれており、温室効果ガス排出量を削減する上で、電力消費の抑制は重要な課題とな
っている。
電力消費量の増加は、
主に家庭部門と産業部門からもたらされている。
生活水準の向上、
人口・世帯数の増加、経済発展が主要因であろう。発電時における温室効果ガス排出量を
削減すると共にこれら両部門における電力消費量を抑制することが温室効果ガスの排出量
を抑える上で重要である。
- 17 -
図表 10
発電電力の推移と将来予測
出典:Electricity Sector Outlook 2009 – 2024.SENER
図表 11
部門別販売電力量の推移と将来予測
出典:Electricity Sector Outlook 2009 – 2024.SENER
- 18 -
図表 12
人口の推移と将来予測(再掲)
出典:CONAPO
図表 13
世帯数の推移と将来予測
出典:CONAPO
- 19 -
2.3. 気候変動対策の概況
2.3.1. 気候変動対策特別プログラムの策定と温室効果ガス排出量目標の設定
メキシコ政府は、2008 年 7 月に国家開発計画(2007~2012)の一部として気候変動対策特
別プログラム(PECC:Programa Especial de Cambio Climático)を発表し、2050 年に BAU
比で温室効果ガスを 70%削減(2000 年比 50%削減)する目標を掲げると共に、具体的な取組
み内容を策定している。また、非付属書Ⅰ国としては、唯一、継続的に温室効果ガス排出
量および国内取組みを報告する National Communication を UNFCCC へ提出している
(2009 年には第四版の National Communication を提出)。温室効果ガス排出量の削減目標
を持たない非付属書Ⅰ国の中で、メキシコは最も気候変動対策の実施に積極的な国の一つ
であり、2010 年 11~12 月に開催された COP16 で議長国を務めたのは周知の事実である。
図表 14
メキシコにおける気候変動への取組み
出典:Mexico’s Policy towards a Low Carbon Economy
気候変動対策特別プログラム(PECC)は、
「長期ビジョン」
・
「緩和活動」
・
「適応」
・
「気
候変動対策の主流化」にて構成されている。このうち、
「長期ビジョン」と「緩和活動」
については、具体的な数値目標や活動の内容が明記されている。
「長期ビジョン」については、気温上昇を 2~3℃以内に抑制するために大気中の CO2
濃度を 450ppm 以下にする必要があるとする IPCC の評価報告書に基づき、2050 年におけ
る人口一人あたりの温室効果ガス排出量を 2.8t-CO2 とし、国全体で 3 億 3,900 万 t-CO2
の目標を設定している。2050 年における BaU での温室効果ガス排出量は 10 億 8,900 万
t-CO2 とされているから、これを PECC およびそれに続く取組みにより 70%削減する計算
になる。2050 年目標に向かって、中間地点である 2020 年および 2030 年の目標も設定さ
れており、2020 年には BaU:8 億 8,170 万 t-CO2 に対して、20.6%削減の 7 億 t-CO2、2030
- 20 -
年には BaU:9 億 6,940 万 t-CO2 に対して、41%削減の 5 億 7,150t-CO2 となっている。
PECC の「緩和活動」は 2008~2012 年に実施されるもので、この緩和活動により、メキ
シコの温室効果ガス排出量は BaU のベースラインから離脱し、2050 年目標に向かう緩和
活動シナリオの軌道に切り替えられるとしている。
図表 15
メキシコ政府の温室効果ガス排出削減目標
出典:SPECIAL CLIMATE CHANGE PROGRAM 2009-2012 MEXICO Executive summary
「緩和活動」においては、風力発電の推進や 60 万台の高効率薪ストーブの普及など具体
的な活動内容とそれによる温室効果ガス排出削減効果とが示されている。森林、石油・ガ
ス、発電、建物、運輸、廃棄物、農業、産業の部門毎に合計 85 の活動が掲げられており、
これらを全て実施することにより、2012 年には 5,065 万 t-CO2/年の温室効果ガス排出量の
削減が可能になると見積もられている。
緩和活動による削減目標を部門別に見ると、最も大きいのはエネルギー生産部門の
1,803 万 t-CO2 で 1/3 弱を占めている。次いで農業・森林及びその他土地利用部門の 1,529
万 t-CO2 となっている。エネルギー利用部門の削減目標は、1,187 万 t-CO2 で、これは主
に運輸と家庭・商業部門における緩和活動で達成される計画となっている。
- 21 -
図表 16 PECC における主な緩和活動とその削減目標
出典:SPECIAL CLIMATE CHANGE PROGRAM 2009-2012 MEXICO Executive summary
- 22 -
図表 17 PECC における緩和活動の部門別の GHG 削減効果
出典:SPECIAL CLIMATE CHANGE PROGRAM 2009-2012 MEXICO Executive summary
2.3.2. NAMA に関する取組み
メキシコは、2010 年 11~12 月に行われた COP16 にて、PECC の一環として実施するプロ
グラムの中で、NAMA:Nationally Appropriate Mitigation Action に位置付ける 4 つの
重点分野を発表し、その取組みを加速させようとしている。4つの重点分野として掲げ
られたのは、住宅、交通、セメント産業、鉄鋼産業であり、いずれも対象が広範囲にわ
たり対策が難しいものか、部門としての温室効果ガス排出量が多いものである。
具体的にどのようなプロジェクトを NAMA として認定するかについては、SEMARNAT(メ
キシコ環境省)が中心となり、SENER(メキシコエネルギー省)や SRE(メキシコ外務省)等
と連携して、基準作りや MRV に関する検討を進めているところである。
メキシコ政府は NAMA について、温室効果ガス排出削減を加速する手段の一つに位置付
けており、NAMA プロジェクトを通じて、温室効果ガス排出削減活動を浸透させ、技術的
なスケールアップを推し進めることを目指している。例えば家庭部門では、中長期的な
展望として、低所得者向けのエコ住宅プログラム(名称:
“Green Mortgage”(「緑の住宅
- 23 -
ローン」)と “Ésta es tu casa”(「あなたの家」))を都市計画に取り込むことを通じ
て、一層の温室効果ガス排出削減に結びつけることをメキシコ政府は狙っている。
図表 18
メキシコ政府が設定する NAMA の重点領域
出典:Mexico’s Policy towards a Low Carbon Economy
2.3.3. メキシコ政府による具体的な温室効果ガス排出削減活動
メキシコでは、省エネルギー・温室効果ガス排出削減を推進するために、1989 年に省
エネルギー委員会(CONAE)を設立し、同時に発電部門における省エネプログラム(PAESE)
を開始している。翌 1990 年には電力会社および民間企業等が出資して信託ファンドの
FIDE(Fideicomiso para el Ahorro de Energía, Trust Fund for Electricity Savings)
が設立された。以後、FIDE が実施主体となって、電力消費における省エネルギーを進め
るための様々な政府および民間連携プロジェクトが実施されることとなった。
これにより、既に、民間及び公共セクターに関わる様々な省エネプログラムが実施さ
れており、近年では、非効率な白熱電球から高効率な電球型蛍光灯への切り替えや高効
率冷蔵庫・エアコンへの買換えを促進するプログラムに力が入れられている。
1995~1998 年に、GEF(Global Environment Facility:地球環境ファシリティ)の
支援により電力公社の CFE(Comision Federal de Electricidad)が実施した ILUMEX と
呼ばれるプログラムは、初の高効率照明普及推進プログラムである。このプログラムで
は、温室効果ガス排出量を削減するために、Guadalajara 市と Monterrey 市において、
260 万個の電球型蛍光灯(CFL:Compact Fluorescent Lamp)を製造原価以下で販売する
ことで家庭に普及させることが企図された。
- 24 -
1998~2004 年には、FIDE が全国規模で同様なプログラムを実施し、860 万個の電球
型蛍光灯が家庭に普及することとなった。
2002~2008 年には CFE および民間電力企業の LyFC(Compañía de Luz y Fuerza del
Centro, S.A.)が CFL 販売促進策として、購入時に割引を行うクーポンを発行するプログ
ラムを実施し、これによって合計 310 万個の電球型蛍光灯が販売された。
2009 年には、新しい省エネプログラムとして、電球型蛍光灯および高効率冷蔵庫・エ
アコンの普及促進により 2009~2012 年の 4 年間で 7,871 GWh の電力削減を目標とす
る“Para Vivir Mejor” (“To Live Better”:「より良く生きるために」の意)と呼ばれる
プログラムが開始された。本 FS 調査にて二国間オフセットメカニズムとの連携を検討
している 4,580 万個の白熱電球を電球型蛍光灯に切り替える省エネプログラムは、この
“Para Vivir Mejor”の一貫として具体化されたものである。
図表 19
メキシコ政府による省エネルギーへの取組み
年
1989
主な出来事・取組み
・ CONAE (National Commission for Energy Savings)の設置
・ PAESE (Power Sector Energy Savings Program)の開始
1990
・ FIDE (Trust Fund for Electricity Savings)の設置
1995
・ Minimum energy performance standards (MEPS) を NOM (Normas Oficiales
Mexicanas) が制定
・ Global Environment Facility (GEF) による高効率照明プロジェクト (ILUMEX)
の開始
1999
・ 政府ビルにおける省エネプログラム (APF Program) の開始
2005
・ 政府による省エネキャンペーンの実施
2008
・ 持続可能なエネルギー利用法の制定
2009
・ 電球型蛍光灯および高効率冷蔵庫・エアコン普及促進プログラム“Para Vivir
Mejor” (To Live Better)の開始
・ PRONASE (National Program for the Sustainable Use of Energy) の開始
2010
・ FIDEによる白熱電球交換プログラムの開始
出典:CONAE. Programas de Eficiencia Energética en México, 2005 and MGM Innova.
- 25 -
3.省エネプログラムへの日本メーカーの参入可能性の検討
3.1. メキシコにおける電球・家電の流通・販売状況
3.1.1. 電球
メキシコ政府の推定では、電球による電力消費はメキシコの電力消費の 18%を占めて
おり、そこから推定される電球(白熱電球や電球型蛍光灯、蛍光菅など)の数はおおよそ
2 億 9,000 万個となっている。メキシコにて一般的に利用されている電球は白熱電球お
よび電球型蛍光灯であり、従来は価格の安い白熱電球が主流であったが、政府等の電球
型蛍光灯普及推進プログラムや電球型蛍光灯の価格低下などにより、電球型蛍光灯のシ
ェアが徐々に増加している状況にある。主な電球メーカーは PHILIPS・GE・OSRAM および
各小売チェーンが中国で OEM 生産しているプライベートブランドであり、2010 年には
2,800 万個の白熱電球と 1,200 万個の電球型蛍光灯が販売されたと推計されている。
電球は主にスーパーやホームセンター、ホールセールクラブ(会員制持ち帰り卸売店)
、
コンビニ等で販売されている。ただし、コンビニでは白熱電球のみの取り扱いであり、
白熱電球と電球型蛍光灯の両方が販売されているのは、スーパーやホームセンター、ホ
ールセールクラブ等である。電球型蛍光灯の流通としてはスーパーが約 50%を占めてお
り、ホールセールクラブ等が約 30%、ホームセンターが約 20%となっている。
電球型蛍光灯は、明るさ(出力)、色、寿命をパラメータとして、様々なバリエーショ
ンが存在する。メーカーごとにこのパラメータの組み合わせは微妙に異なっており、メ
ーカー間の価格を単純に比較することは難しくなっている。
図表 20
電球型蛍光灯の主なパラメータ
パラメータ
明るさ
内容
・ 11W、13W、15W、20W、23W、25W、26W など、白熱電球の明るさのバ
リエーションに合わせて製品が揃えられている。
・ 製品が充実しているのは、
白熱電球 60W 相当の 13W、75W 相当の 20W、
100W 相当の 23W である。
色
・ 以下の 2 種類が主な色となっている。

電球色:白熱電球の色に近い色温度 2,700K 前後

蛍光灯色:蛍光灯そのものの色温度 6,500K 前後
・ 一般的な上記の色の他にやや電球色に近い色温度 4,100K の蛍光灯
色を GE のみが販売している。
寿命
・ 白熱電球の 1,000 時間を基準として、白熱電球の何倍の寿命である
かが表示されている。
・ 3,000~12,000 時間の製品があり、大半が 8,000 時間以下である。
- 26 -
図表 21
電球型蛍光灯のバリエーションの例
いずれも 20W の
蛍光灯色である
が、寿命が 3 倍(=
3,000 時間。以下
同じ)、6 倍、12 倍
と異なっており、
価格も寿命が長い
ほど高い(ただし、
寿命が長いほど割
安)
図表 22
流通
メキシコにおける電球の流通の例
外観
電球売り場
メキシカーナ(中所
得者向けのスーパ
ー)
ソリアナ(中所得者
向けのスーパー)
ホームデポ(専門的
なホームセンター)
- 27 -
メ キ シ コ 政 府 は 、 2010 年 12 月 に 白 熱 電 球 の 販 売 収 束 に 関 す る 法 令
(NOM-038-ENER-2010)を出しており、本法令が完全に実施された場合、2016 年 12 月末ま
でにはほぼ全ての白熱電球がメキシコでは販売することが出来なくなる見通しである。
図表 23
白熱電球の販売禁止スケジュール
明るさ
販売収束時期
100W 以上
2012 年 12 月末
75W 以上
2013 年 12 月末
40W 以上
2014 年 12 月末
40W 以下 Lumen 2,600lm 以上
2015 年 12 月末
40w 以下 Lumen 1,950lm 以上
2016 年 12 月末
3.1.2. 家電
家電は主にデパートやスーパー、ホームセンター、専門店にて販売されている。所得階
層によって利用する店舗は異なるが、デパートやスーパーにて購入されるケースが多い。
メキシコでは電機電子産業が発展している上、製品の値下がりと所得の増加もあって、
家電製品はメキシコの家庭に広く普及している。普及率は軒並み高く、2008 年の時点で冷
蔵庫:82.8%、洗濯機:53.2%となっている。白物家電と比較しもて AV 家電の普及率は高く、
テレビ:93.1%、オーディオ機器:83.0%、DVD プレーヤー:55.8%となっている。
販売台数も年々増加している。
冷蔵庫は 1996 年に初めて年間販売台数が 100 万台を超え、
その後は順調に販売台数が増加し、2007 年には年間 188.5 万台が販売されている。エアコ
ンについては、値下がりにより一般的な家電製品となっており 2010 年には年間 85.5 万台
(窓用エアコン:36 万台、スプリットタイプエアコン:44.5 万台、パッケージエアコン:5
万台)が販売されている。
なお、エアコンについては、従来は価格の安い窓用エアコンが主流であり、2003 年頃か
らスプリットタイプエアコン(日本において広く家庭向けに販売されている室内機・室外機
が分離したタイプ)がメキシコでも販売されたものの、長らくシェアを伸ばすことは無かっ
た。しかし、中国製の安価なスプリットタイプエアコンが出回り始めると共に、2009 年に
関税が撤廃されたこともあって、現状ではスプリットタイプエアコンが主流になりつつあ
る。2010 年の時点における窓用エアコンとスプリットタイプエアコンの販売比率は
42%:58%で、ややスプリットタイプエアコンが多い程度であるが、今後、スプリットタイプ
エアコンのシェアが大きく伸び、2015 年には 20%:80%程度になることが見込まれている。
- 28 -
図表 24
メキシコにおける商品・サービスの普及状況
出典:INEGI「家計調査」より JETRO 作成
図表 25
メキシコにおける冷蔵庫の販売状況
(単位:1,000 台)
出典:Garcia, Noe. Eficiencia Energética en México- Una década de Retos. CANENA,
Marzo 2010.
また、気温や湿度などの気象条件によってエアコンに求められる機能が異なってくる。
メキシコは北緯 20~30 度に位置する熱帯であるため、基本的には年間を通じて暑い日が多
- 29 -
く、最高気温が高い地域が多くなっている。北部・北西部・南東部では最高気温が高くこ
れらの地域では年間を通じて暖房が必要ないため冷房専用機が適している。一方、北東部
では最高気温は高いものの冬期には気温が大きく低下するため、暖房需要があり、エアコ
ンも冷暖兼用機が適している。以上から対象となる地域の人口を割り出すと、冷房専用機:
約 4,285 万人(全人口の 41.5%)、冷暖兼用機:993 万人(同じく 9.6%)となり、今後、エア
コンの本格的な普及に向けて、メキシコには大きな需要ポテンシャルが存在すると言える。
図表 26
メキシコ各州の平均最高気温とエアコンの種類の関係
平均最高気温
(単位:℃)
北部
北東部
:冷房専用機
北西部
南東部
:冷暖兼用機
種別
冷房専用機
冷暖兼用機
地域
人口
比率
北部
5,751,500
5.6%
北西部
17,959,510
17.4%
南東部
19,135,577
18.5%
小計
42,846,587
41.5%
北東部
9,935,936
9.6%
合計
52,782,523
51.1%
出典:Mexican Meteorological System および日系メーカー提供情報より作成
- 30 -
3.1.3. 日本メーカーの状況
メキシコには、メキシコで創業し、南米等に広く展開する mabe に加え、欧米系メーカー
とアジア系メーカーが進出している。
電球については、世界的に一定のシェアを持っている PHILIPS、GE、OSRAM が進出してい
る。一方、小売各チェーンは、中国の OEM メーカーへ製造委託したプライベートブランド
の電球型蛍光灯を数多く取り扱っており、売り場にはナショナルブランドとプライベート
ブランドの両方が陳列されているケースが多い。
冷蔵庫については、全ての価格帯において mabe、SAMSUNG、LG 電子が豊富なラインナッ
プを取りそろえており、GE は大容量の高額帯の製品が中心となっている。
エアコンについては、メキシコシティにおける現地調査ではほとんどの店舗で取り扱い
がなく、唯一、デパートにて LG 電子製のスプリットタイプエアコンが展示されていた程度
である。メキシコシティは高地のため、気候が穏やかで通常はエアコンを必要としないた
めである。カンクンなどの南東部やバハカリフォルニアなどの北部は暑さが厳しく、
SAMSUNG や LG 電子、中国メーカー製のエアコンが普及している。
図表 27
メキシコにおいて各製品を製造している主要なメーカー
製品
主要なメーカー
電球
PHILIPS、GE、OSRAM
冷蔵庫
mabe、SAMSUNG、LG 電子、GE、Whirlpool、大宇
エアコン
SAMSUNG、LG 電子、AUX
メキシコおいて、電球あるいは白物家電を販売している主要な日本メーカーは 2 社であ
った。
A 社は日本国内において電球型蛍光灯のトップシェアを持っているメーカーである。こ
れまで海外メーカーとのアライアンスの関係から、海外での電球型蛍光灯の販売を見合わ
せていたが、2010 年 10 月から世界的に販売を開始しており、メキシコにおいても 2011 年
3 月から販売開始する予定である。エアコンについては、2010 年から冷房専用機を取り扱
っており、一定の販売台数となっている。将来的にはインバータを搭載した冷暖兼用機を
投入する予定である。現在取り扱っているエアコンについては、FIDE の省エネ家電認証を
取得するプロセスが複雑で取得できていないため、省エネプログラムへの参加が出来てい
ない状況である。冷蔵庫については地域性が強いため取り扱っていない。
B 社は LED 電球において先駆的な取組みを進めている企業である。メキシコを含む全世
界で白熱電球を代替する照明として、電球型蛍光灯ではなく、LED 電球を推進しているた
め、電球型蛍光灯の取り扱いはない。家電関連では、パソコンを取り扱っているもののエ
アコン、冷蔵庫についてはメキシコでは取り扱っていない。
- 31 -
本 FS 調査にて日本メーカーの参入可能性を検討する FIDE の省エネプログラムは、
電球・
冷蔵庫・エアコンが対象であるが、FIDE の認証を取得していることが条件となるため、省
エネプログラムへ参入できる商品は、調査時点では A 社の電球型蛍光灯のみであった。し
たがって、本 FS では電球型蛍光灯を中心に検討を進め、冷蔵庫・エアコンについては、限
定的な取扱とすることとした。
図表 28
メキシコにおける日本メーカーの製品取扱状況
メーカー
取扱状況
電球:電球型蛍光灯を 2011 年 3 月から販売開始予定
A社
エアコン:冷房専用機を 2010 年から販売
冷蔵庫:取り扱い予定無し
電球:LED 電球を 2010 年から販売
B社
エアコン:取り扱い予定無し
冷蔵庫:取り扱い予定無し
3.2. 省エネプログラムの実施状況
3.2.1. FIDE 省エネプログラムの概要
既に述べたように、メキシコでは 1995 年から家庭部門における省エネ・温室効果ガス排
出削減を目的に電球型蛍光灯の普及促進に努めてきた。従来の取組みは電球型蛍光灯を製
造原価程度で販売するか一定数を上限に購入した電球型蛍光灯の数に応じて代金の一部を
返金するクーポンの配布をするものであった。2009 年には新しい省エネプログラム“Para
Vivir Mejor” (To Live Better)が開始された。本プログラムは 4,580 万個の白熱電球を
電球型蛍光灯に代替し、190 万台の非効率な冷蔵庫・エアコンを高効率なものへ代替する
ことを目指していることから、より強力な取組みが求められることとなった。
そこで、白熱電球から電球型蛍光灯への代替については、従来のような購入補助ではな
く、低・中所得世帯を対象に無償で電球型蛍光灯を配布し白熱電球を交換するプログラム
が立案された。1 世帯あたり 4 つの白熱電球を交換所に持ち込むと 4 つの電球型蛍光灯と
交換できるというものであり、交換された白熱電球は管理下で破壊され、再び市場に出回
る事がないため、確実に白熱電球を電球型蛍光灯に代替できる仕組みとなっている。
高効率冷蔵庫・エアコンへの代替については、低所得世帯を対象に効率の悪い冷蔵庫・
エアコンを買い換える際に、月間電力消費量に応じて、高効率冷蔵庫・エアコンを買う際
に利用できる割引クーポンと低利融資枠を用意し、より効率の良い製品を購入するよう誘
導するものである。高効率冷蔵庫・エアコンとして認定されるためには、FIDE の省エネ家
電認証プログラム(日本における省エネラベル制度と類似の制度)にて認証を取得する必要
がある。
認証を取得した家電には FIDE 認証取得を示すラベルを貼ることが出来ると共に省
- 32 -
エネ性能を示したシートラベルを貼ることが出来る。消費者はこのラベルにより、高効率
冷蔵庫・エアコンを容易に見つけることが可能になり、省エネ性能で製品を比較すること
が出来るようになっている。
図表 29 FIDE 省エネ家電認証プログラムの認証および性能表示ラベル
基準製品に対する省エネ性能を
表示(例の場合は 10%優れる製品
であることを表示)
省エネプログラム全体で 514 万 t-CO2 の温室効果ガス排出削減を見込んでおり(5 年間)、
この削減量はメキシコ全体の温室効果ガス排出量(2006 年)7 億 1,100 万 t-CO2 の 0.7%に相
当する。
図表 30
プログラム名
省エネプログラムの概要
概要
GHG 削減効果
(5 年間)
1,125 万戸の低・中所得世帯を対象として、
電球交換プログラム 4,580 万個の白熱電球を同数の電球型蛍光灯
328.9 万 t-CO2
に交換・回収するプログラム(2 年間実施)
低所得世帯を対象として、190 万台の低効率
省エネ家電普及促進 冷蔵庫およびエアコンをクーポンや低利融
プログラム
資により高効率な機器へと買換えることを
促進するプログラム(4 年間実施)
- 33 -
185.1 万 t-CO2
省エネプログラムは FIDE が SENER(メキシコエネルギー省)からの委託を受けて運
営・管理しており、実際に電球型蛍光灯を調達して、白熱電球と交換し、収集した白熱電
球を破壊するなどのプログラムの実施は、外部に委託する事となっている。
日本メーカーが省エネプログラムへ参加するためには、FIDE から直接プログラムの実
施の委託を受けるか、あるいは FIDE から委託を受けた企業等へ電球型蛍光灯を供給する
サプライヤーとして関与するかの 2 つの方法がある。もっとも前者の場合、後述するよう
に、
入札の条件を満たすことは日本メーカーにとってはかなりハードルが高い。
このため、
後者、つまり、電球型蛍光灯の供給者としての立場で参加することが日本メーカーにとっ
ては現実的である。この場合、日本製品を配布した数に応じてクレジットを発行すること
とすれば、FIDE から委託を受けプログラムを実施する企業等に日本メーカーの電球型蛍
光灯を採用することに対するインセンティブが生まれる。すなわち二国間オフセットメカ
ニズムが連携することによって、日本メーカーの省エネプログラムへの参加が促されるの
である。
図表 31
電球交換プログラムの実施フローと二国間オフセットメカニズムとの連携案
メキシコエネルギー省
(SENER)
省エネプログラムと二
資金
メキシコ公信用財務省
(プログラム設計)
国間オフセットメカニ
・世銀等(予算化)
委託
ズムが連携可能かを検
討
省エネ信託基金(FIDE)
(プログラム運営・管理)
委託
資金
企業等(流通・メーカー)
メキシコ
天然資源環境省
二国間
電球型蛍光灯
サプライヤー
(プログラム実施)
クレジット
電球型蛍光灯提供・ 日本メーカーの製品を採用
二国間オフセットメカニズム
日本政府
販売
白熱電球回収
一般家庭
することにより、二国間クレ
ジットが獲得でき、追加的な
収入が得られる。
省エネプログラムに
て見込んでいた以上
の削減も可能に
- 34 -
3.2.2. FIDE 電球交換プログラムの入札条件
省エネプログラムは世界銀行等の支援を受けて行っていることから、プログラムを実施
する企業等は国際入札にて決定することとなっている。メキシコ全国において 2,290 万個
(5,725,000 セット)の電球型蛍光灯をスケジュール通りに配布することが求められること
から、入札条件は非常に高いレベルが求められるものとなっている。FIDE の入札仕様書に
示されている主な入札条件は以下の通り
図表 32
電球交換プログラムの主な入札条件
受託事業に適用する規則
参加する需要家の
条件
・ 現在の支払期間より 2 期前までについて電気料金の支払い
を延滞していないこと。
・ 過去に FIDE が実施した電球型蛍光灯配布プログラムにて
電球型蛍光灯を受領していないこと。
・ 使用できる状態の白熱電球を 4 つ提供できること。
・ 電力公社の請求書と公的 ID を提示できること。
事業実施者の条件
・ 月ごとの供給目標数に合致した電球型蛍光灯を供給できる
こと。
・ 白熱電球の交換方法について、必要な雇用やインフラ構築
まで含めて構築すること。
・ 電球型蛍光灯の配布プロセスを実施中において、電球型蛍
光灯の技術仕様を保証すること。
・ 参加する需要家に全ての必要書類が揃っていることを確認
すること。
・ 電球の交換について、登録管理をソフトウェアにて行うこ
と。
・ 白熱電球の収集・破壊を確実に行うこと。
・ 電球型蛍光灯の寿命を 2 年間保証すること。
・ 白熱電球の収集・破壊の環境影響について管理すること。
・ 参加する需要家の不満や正当な保証請求を受け付ける窓口
を作ること。
電球型蛍光灯の配布プロ
セスに関する情報
最低必要条件
・ 電球型蛍光灯は入札文書に規定された技術仕様に適合させ
ること。
・ プログラムのスケジュールにしたがって、メキシコ国内全
- 35 -
域で同時に電球型蛍光灯を配布すること。
数量
・ 合計 2,290 万個(5,725,000 セット)の電球型蛍光灯を 4 つ
ずつ 1 つのパッケージにして配布すること。
標準
・ プログラムはメキシコ国内で実施できるものにすること。
供給者の状況
・ 入札者は認証された研究所で 5 つの電球型蛍光灯を用いて
試験を行い、技術提案書を提出すること。
配布計画
・ 電球型蛍光灯の配布は、提示された輸送手段によって実施
すること。落札者は電球型蛍光灯の配布に伴って発生する
全ての廃棄物に責任を持つこと。
訓練
・ 電球交換に関与する従業員に対して、交換プロセスで発生
する偶発事故に対応できる様に電球型蛍光灯の特徴や取扱
方、安全対策についてトレーニングすること。
環境マネジメント
・ 入札者は環境マネジメント計画について提出できること。
計画
パッケージの必要
条件
・ 電球型蛍光灯のパッケージは、再生紙のボール紙で、4 つ
の電球型蛍光灯を収納できること。
・ パッケージは以下の技術仕様を明示していること:光束、
効率、演色、色温度、平均寿命、ベースタイプと保証。
・ パッケージには以下の文言についてスペイン語で記載する
こと。

“Programa Luz Sustentable”(持続可能な照明プロ
グラム)


“Prohibida su venta” (販売禁止)
フリーダイアル(01-800)あるいは webpage(落札者の
情報、保証請求を含む情報)

“Este programa es público, ajeno a cualquier
partido político. Queda prohibido el uso para fines
distintos a los establecidos en el programa”(本
プログラムは公的なもので、いずれの政党も関与して
いません。電球型蛍光灯を本プログラムの実施以外に
使うことを禁止します)

電球型蛍光灯についての説明


“Usa menos electricidad”(省エネです)
“Ilumina igual que un foco incandescente de
100W”配布される電球型蛍光灯は 100W の白熱電
球と同じ明るさです。
- 36 -

“Dura más tiempo”(より長くもちます)

“Te ayuda a ahorrar”(これは節約に繋がりま
す)

電球型蛍光灯を適正に使うためのアドバイス

以下の組織のロゴを明示: Vivir Mejor, GOBIERNO
FEDERAL, SENER, SEMARNAT, CFE, FIDE.
・ パッケージの寸法は高さ:16cm、幅:30cm、奥行き:7.5cm
とすること。
配布地点の設置に関する
情報
最低必要条件
・ 電球型蛍光灯の配布地点は、店舗の中に設置すること。対
象となる店舗は配布計画の達成に十分な来客数が確保され
ていること。
・ メキシコ国内に 950 カ所以上の配布地点を設置すること。
・ 白熱電球は配布地点にて収集すること。
・ 入札者は以下の技術提案が可能である。

交換ブースを設置する店舗名

実施責任者名

配布地点の住所

電話番号

メールアドレス

実施スケジュール

配布地点数
・ 配布地点には、十分な人員と配布物資を揃えること。
・ 配布地点には少なくともインターネットに繋がったパソコ
ンを 1 台以上用意すること。
配布地点の設置
・ 配布地点には以下を明示すること。

“Programa Luz Sustentable”(持続可能な照明プロ
グラム)

以下のロゴ

Gobierno Federal, SENER, SEMARNAT, CFE, FIDE,
Vivir Mejor

フリーダイアル

参加者向けの事前説明
- 37 -
電球型蛍光灯による白熱
電球交換に関する情報
最低必要条件
・ 参加者は、4 つの白熱電球を同数の電球型蛍光灯と交換で
きる様にすること。
・ 2011 年中に 2,290 万個(5,725,000 セット)の電球型蛍光灯
を配布すること。
・ 毎月の配布スケジュールは以下の通り。
・ 参加者のデータは SIP システムで管理すること。参加者の
管理には電力公社の請求に記載されている RPU ナンバー
(公的 ID ナンバー)を使うこと。
入札提出物
技術提案
・ 完全実施までのスケジュール
・ 電球型蛍光灯のサンプル(5 個)
・ 電球型蛍光灯サンプルの試験結果
・ 電球型蛍光灯に関する技術提案
・ 電球型蛍光灯の配布計画
・ 電球交換の詳細なプロセス
・ 提案内容の実施フロー
・ 環境マネジメント提案
・ 環境マネジメント計画
・ 電球型蛍光灯の保証
・ デザインに関する提案
・ 規格 NOM-017-ENER/SCFI-2008 に含まれる内容に適合させ
ることに同意する文書
・ 配布地点の場所
・ 配布地点を店舗内に設置することに関する契約書
・ 廃棄物の最終処分方法と処分場の場所
出典:FIDE 入札仕様書
上記の入札仕様書以外にも配布する電球型蛍光灯の技術仕様を定義した文書があり、電
球型蛍光灯の仕様としては、以下などが必要条件となっている。
・ 明るさ:23W(100W の白熱電球に相当)
・ 色温度:4,100K
- 38 -
・ 寿命:10,000 時間
以上の様に、プログラムの実施者としても高い運営能力や配布地点を設置する店舗の確
保などが求められるだけでなく、電球型蛍光灯の技術仕様についても細かく規定されてお
り、FIDE が求める仕様で高い品質のものを一定価格以下で調達しなければならない。した
がって、電球交換プログラムへ入札できる企業は単独では難しく、企業連合(主幹企業、サ
ポート企業、配布地点設置企業、電球型蛍光灯サプライヤー等で構成)を形成する必要があ
ることに加え、主幹企業には電球型蛍光灯に関する一定水準の知見が求められる。電球交
換プログラムの入札仕様書を入手した企業は 54 社いたものの、実際に入札へ参加した企業
は 5 社(内 1 社は後に入札を取り消した)であり、FIDE の入札条件を満たすことが容易では
なかったことを物語っている。
本プログラムへの日本メーカーの参入については、FIDE から直接プログラムの実施の委
託される受託企業になることは、流通との交渉や白熱電球破壊・処分体制の構築など負荷
が大きいため準備に時間を要する上、プログラム実施者としての責任を負わねばならず、
リスクも大きい。一方、FIDE から委託を受けた企業等へ電球型蛍光灯を供給するサプライ
ヤーとして参入する場合は、FIDE の技術仕様に合わせた電球型蛍光灯を設計・製造するこ
とに集中できることから、高い専門性と生産能力を十分に活かして、比較的短期間で参入
することが可能である。
図表 33
電球交換プログラムの実施において必要と想定されるプレーヤーとその役割
主幹企業
・FIDEとの窓口
・技術的サポート、資金調
達、物流システムの構築
など提案内容全般を担
当
サポート企業
・環境マネジメント計画の
立案
・物流システムの構築支
援
電球型蛍光灯
サプライヤー
- 39 -
配布地点設置企業
(コンビニエンスストア等)
・物流システムの構築・運
営
3.3. 省エネプログラムへの日本メーカーの参入
本プログラムは 2011 年 4 月から電球交換を開始するスケジュールとなっており、早期に
プログラムを実施する企業等を決定し、準備を進める必要があった。2011 年 1 月 17 日に
2,290 万個(5,725,000 セット)の電球型蛍光灯を配布する企業等を決定する入札が実施さ
れる予定であったが、FIDE の入札条件に対して入札者予定者からの質問が想定よりも多く、
回答に時間を要する技術的な理由から 2011 年 2 月 9 日に入札が延期となった。入札後 2
月末~3 月初旬には落札者が決定する予定である。選定基準は電球型蛍光灯の価格と電球
交換事業全体の実施計画の実現可能性である。
電球型蛍光灯を 2010 年 3 月から販売開始する予定の日本メーカーA 社では、本プログラ
ムへサプライヤーとして参入する方向で検討を進めてきた。しかし、FIDE が示した入札条
件・仕様が特殊であったことと A 社の電球型蛍光灯の省エネ性能が高すぎたために(具体的
な課題は以下参照)、A 社の既存製品の仕様と合致せず、新たに FIDE の技術仕様に合わせ
た製品を設計する必要があり、それらの対応に時間を要したため、結果的には、今回の入
札に参加することはできなかった。
・ 色温度:4,100K:一般的には 2,700K の電球色あるいは 6,500K 前後の蛍光灯色が通常
のラインナップで A 社ではこの色温度の電球を持っていなかった。
・ 消費電力:23W:100W の白熱電球に相当する 23W の電球型蛍光灯を配布する様に指定さ
れていたが、A 社の電球はエネルギー効率が良く、22W が 100W の白熱電球に相当する
明るさになるため、仕様に合わなかった。
二国間オフセットメカニズムのスキームを理解し、積極的に日本メーカーである A 社の
電球型蛍光灯を採用することを望んでいたメキシコの入札予定企業(C 社)が居たが、入札
準備に年末年始を挟むなど時期も悪く、FIDE の技術仕様の電球を用意する時間が十分に確
保できなかった。このため、最後まで可能性を探っていた C 社も、結局、別の電球メーカ
ーD 社とチームを組んで入札に参加することとなったのである。
現在、A 社では、FIDE の仕様に適合した電球型蛍光灯を開発しつつあり、2011 年末ある
いは 2012 年に実施予定の 2 回目の入札に参加する方策を検討中である。
二国間オフセットメカニズムは制度として確立していないため、二国間クレジットの収
入を見込んで電球型蛍光灯の価格を安くするなど、事業計画にクレジット収入を織り込む
ことは現時点では難しい。しかし、C 社は二国間クレジットによる収入を通常の収入に加
えて獲得できるボーナスとして捉え、日本メーカーの製品を採用したいとの意向と持って
いる。A 社の電球は C 社によると D 社(海外の電球メーカー)の電球型蛍光灯と価格面では
ほぼ同等であり、競争力を持っていることから、二国間クレジットは本プログラムを実施
する企業等にとって、A 社の電球型蛍光灯を採用するインセンティブとして十分に機能す
るものになると C 社は述べている。加えて、A 社の電球型蛍光灯は、以下の特徴を持って
おり、欧米およびアジア OEM メーカーの製品と比較しても環境性能に優れた製品であるこ
- 40 -
とから、二国間オフセットメカニズムを活用して、省エネプログラムに日本メーカーの製
品を採用させることは意義があると考えられる。
・ 高効率:通常は 23W で 100W の白熱電球相当となるが、22W で 100W の白熱電球と同じ明
るさとなる。
・ 鉛フリー:RoHS が施行されている欧州以外でも鉛フリーの製品を供給(他メーカーで
は、欧州向けには鉛フリーにしていても、欧州以外には鉛を含む製品を販売している
ケースがある)
・ 高寿命:白熱電球の 10 倍の 1 万時間の寿命。欧米メーカーの電球は 3,000~8,000 時
間程度。
3.4. 二国間オフセットメカニズムの活用による資金提供スキーム
メキシコ政府(省エネプログラムを所管する SENER(メキシコエネルギー省))は、二国間
オフセットメカニズムについては総じて好意的であり、日本の技術・製品および資金によ
り、メキシコの温室効果ガス排出削減が進むことに期待を寄せている。一方で、メキシコ
政府は、二国間オフセットメカニズムについては、省エネプログラムなどのメキシコ政府
が行っている温室効果ガス排出削減活動に組み込まれるべきものではなく、これらの活動
に連携するもののプログラムの設計や運用には直接影響を与えない形で活用されるべきも
のと考えている。
この背景には、メキシコ政府は PECC 等に基づいていくつかの温室効果ガス排出削減プロ
グラムを既に企画検討しており、それらを大きく変更する様な事は避けたいという意向が
あるのではないかと推測される。このため、省エネプログラムに二国間オフセットメカニ
ズムを連携させるためには、あくまでも日本側独自の取組みとして日本メーカーの製品に
よる排出削減量をクレジット化することに加え、そのクレジットに対して資金提供するこ
とによってプロジェクト参加者のインセンティブとするようなスキームが求められている
のである。しかも、二国間オフセットメカニズムから発行されるクレジットの代金を前払
いするような形での資金提供をする場合を除き、日本メーカーが優遇されるような制度変
更や追加措置は期待できない。現時点で日本メーカーに求められるのは、メキシコ政府側
が制度設計したスキームに、まずは純粋にビジネスベースで対処してくことである(資金
提供のあり得るスキームについては図表 34 を参照)
。
以上のように、二国間オフセットメカニズムの存在自体は、日本メーカーの参入を後押
しするものの、今回の電球交換プログラムのようにメキシコ企業が実施主体となり、日本
メーカーがサプライヤーの立場で参加する場合は、二国間オフセットメカニズムによって
どの程度の利益があるのかが明確にならない限り、メキシコ企業や政府に対して、本当の
意味で日本メーカーの参入を後押しする力とはなり得ない。このため、早期に制度の詳細
化が求められている。
- 41 -
図表 34
電球交換プログラムにおいて想定される二国間オフセットメカニズムによる
資金提供スキーム
③
日本政府
①
CFLメーカー
②
提案・応募
実施計画
実施機関
(FIDE)
世界銀行
代金
CFL
資金提供
白熱電球
企業
連合等
コンビニ/
家電量販店/
ショッピング
センターなど
委託・支払い
消費者
CFL
連携スキーム
内容
①FIDE 等の政府や関係機
・ 日本メーカーの製品による排出削減量に応じて FIDE 等へ
関へクレジットを発行
クレジットを発行。
・ FIDE にとっては、クレジット発行量が増加するため、入札
条件として、日本メーカーの製品に特徴的な条件を指定す
るインセンティブが生まれる。
・ しかし、メキシコ政府は既存プログラムの設計変更に繋が
るような関与は望んでいないため、実現性は低い。
②プログラムを実施する
企業等へクレジットを発
行
・ 日本メーカーの製品による排出削減量に応じてプログラム
実施企業へクレジットを発行。
・ プログラム実施企業にとっては、日本メーカーの製品を使
うほどクレジット発行量が増加するため、日本製品を採用
するインセンティブが生まれる。
・ クレジット収入を追加収入と見なせば、手間対利益にて評
価できるので、排出権に詳しい企業等であれば魅力を感じ
る可能性がある。
③電球型蛍光灯を供給す
る日本メーカーへクレジ
ットを発行
・ 日本メーカーの製品による排出削減量に応じて電球型蛍光
灯を販売する日本メーカーへクレジットを発行。
・ 日本メーカーにとっては、クレジット収入を見込んで製品
価格を安くすることで競争力を高められるインセンティブ
がある。
・ しかし、電球交換プログラムの事業実施責任を負うことの
リスクが大きく、実現性は低い。
- 42 -
なお、二国間オフセットメカニズムを NAMA と連携させることについては、メキシコ政府
は現時点では NAMA の制度設計に入った段階であり、どのようなプロジェクトを NAMA とし
ていくのか、
クレジットを発行する NAMA はどのようなものにするのかなどの詳細について
は、今後の検討に委ねられている。その際、二国間オフセットメカニズムにおいて検討し
ている MRV 方法論は NAMA においても参考となるものであり、NAMA として認定したプロジ
ェクトが二国間オフセットメカニズムの対象になっているならば、その MRV 方法論が共用
化されていくことも想定される。NAMA については、インドネシアの REDD+のように途上国
側の検討が進んでいるものもあるが、メキシコにおいてはまだそこまでの検討が進んでお
らず、今後、検討を本格化するに当たって、資金面・技術面・知識面における先進国のサ
ポートが期待されている。このため、二国間オフセットメカニズムによる資金提供スキー
ムと NAMA を連携させられる可能性は十分にあるものと考えられる。
3.5. 資金提供スキームを実現するための条件・留意点・解決すべき課題
二国間オフセットメカニズムによる資金提供スキームを実現する上で最優先に解決すべ
き課題は、日本メーカーの製品が参入可能な省エネ・温室効果ガス排出削減プログラムを
組成することと、二国間オフセットメカニズムの制度を具体化することである。
電球交換プログラムでは、FIDE が A 社の既存製品には無い仕様の電球型蛍光灯を入札条
件にて指定してきたことから、A 社は入札への対応に遅れ、A 社に対して関心を持っていた
C 社との協業の機会を逃してしまう結果となった。なお、A 社の代わりに参加した D 社は
FIDE の仕様にほぼ近い製品を持つ唯一のメーカーであったため、C 社のサプライヤー選定
過程において D 社は大きなアドバンテージを持つこととなった。ただし、D 社以外のメー
カーも今回の入札には参加しており、D 社でなければ参加できない条件ではなかった(仕様
が公表されてから、開発・試験をすることで入札に間に合わせることが可能だった模様)。
メキシコ政府の意向や C 社の行動に示されているように、二国間オフセットメカニズム
は、途上国にとって十分に魅力的な提案であり、また、途上国が実施する緩和活動(NAMA)
に日本メーカーが関与するきっかけ、インセンティブとしても効果的なものになるとの評
価を得ている。しかし、途上国が NAMA として独自に制度設計を進めているプログラムは、
二国間オフセットメカニズムとの連携を前提にしたものではなく、また、その構想や設計
段階では、欧米やアジアのメーカー等様々な主体が関与していることが推察される。この
ため、NAMA を含む途上国が実施する省エネ・温室効果ガス排出削減プログラムには、今回
の入札のように、必ずしも日本メーカーから見て合理的でない条件・仕様が含まれる可能
性が高い。したがって、途上国が実施する NAMA 等のプログラムへ日本メーカーが積極的に
参加し、二国間オフセットメカニズムとの連携を強めていくためには、ファイナンスを含
め省エネ・温室効果ガス排出削減プログラムを構想する段階から日本側が積極的に関与し、
日本メーカーの製品との親和性が高い条件・仕様へと誘導していくことが重要になる。
- 43 -
しかしながら、現状、日本のメーカーにはプログラムを組成するノウハウや対応できる
人員等の経営資源が不足しているケースが多い。このため、途上国政府と日本メーカーの
間に立ち、双方から情報収集をしつつ、ファイナンス面も含めてプログラムを発掘・構築
していくコーディネーターのような存在が必要になるだろう。コーディネーターには、京
都メカニズム等のクレジット創出システムや日本メーカーの製品に対する十分な知見を持
つことに加え、途上国政府や関係機関、プログラムを実施する企業等と円滑なコミュニケ
ーションが取れる能力も求められる。
これまで CDM プロジェクトを開発してきた企業や ODA
等の海外支援に従事してきた企業などがコーディネーターの候補と考えられる。コーディ
ネーターを通じて途上国における二国間オフセットメカニズムに対する理解促進も期待で
きることから、このような情報収集活動やコーディネーション活動を支援するメニューの
構築が必要である。
二国間オフセットメカニズムについては、日本企業に加え、メキシコの政府機関や省エ
ネプログラムの実施主体となる候補企業からも強い関心を集めていた。強い関心は具体的
な制度の中身やプログラムの組成への関心に繋がっており、多くの質問を受けることにな
った。多くの質問を受けたものの、制度について多くのことが決まっていないため、例え
ば「クレジットの発行プロセスはどの程度簡素化されるか?」、「クレジットの価格の目安
は?」
「
、日本メーカーの製品の定義は?」などの重要な質問に明確な返答が出来なかった。
これらの質問に答えることが出来ない限り、特に民間企業では二国間クレジットの収入を
見込んでプロジェクトを行うため、積極的に取り組むべきか否かのビジネス上の判断が出
来ず、様子見になってしまう可能性が高い。メキシコ政府もどの程度の資金が利用できる
のか、どのような技術が使えるのかによって関与の仕方を変えてくる可能性が高い。
二国間オフセットメカニズムに関係する全ての関係者の動きを加速するためには、二国
間オフセットメカニズム自体の制度設計を早期に明確化し、二国間クレジットの買取価格
の目安と合わせて十分な情報発信をすることが必要である。
- 44 -
4.資金提供スキームに適用する MRV 方法論の検討
4.1. 既存方法論の分析
二国間オフセットメカニズムによる資金提供スキームに適用する MRV 方法論を検討す
るにあたっては、CDM にて確立されている既存の方法論を分析し、利用できるところを
取り込みつつも、プロジェクト活動自体には不要であるが CDM のルール上は必要となっ
ている部分について厳格性への影響を考慮しながら削除できるものは削除し、簡易で使
いやすい MRV 方法論へと調整していくことが最も効率的である。
CDM には、想定排出削減量に応じて、通常規模(Large scale)と小規模(Small scale)
があり、方法論についてもそれぞれで別のものが用意されている。小規模方法論はシン
プルに作られており、プロジェクト登録に要するコストが抑制されるように制度設計さ
れている。しかし、一部の小規模方法論は非常に複雑なものもあり、小規模方法論であ
れば簡易で使いやすい MRV 方法論になるというわけではない。
4.1.1. 高効率照明
家庭部門を対象に白熱電球を電球型蛍光灯へ交換し、消費電力量を削減する温室効果
ガス排出削減活動は、CDM に適用できる方法論がいくつかあり、実際に国連登録されて
いるプロジェクトもある。
現在、電球交換プログラムに適用可能な CDM の方法論は通常規模方法論の AM0046、
小規模方法論の AMS-II.C および AMS-II.J の 3 種類である。AM0046 は 2007 年に方法論
として認証されたものの現在までに国連登録された案件は無く、パイプラインに 2 件が
存在しているのみである。一方、AMS-II.J は 2008 年に方法論として認証され、これま
でに通常プロジェクトとして 10 件、プログラム活動として 1 件が登録され、パイプライ
ンには通常プロジェクト:41 件、プログラム活動:3 件が存在している。
図表 35 既存の類似 CDM プロジェクトにおける利用方法論(電球交換)
出典:UNFCCC 登録データおよび UNEPFI 資料より作成
AM0046 が使われていない背景には、通常規模方法論であるため、プロジェクトサイズ
を大きくしなければプロジェクトのコスト効率が悪いことと電球型蛍光灯を導入した家
- 45 -
庭で照明の電力消費量の測定が必須になっていることが挙げられる。最低でも電球型蛍
光灯を導入した世帯としていない世帯のそれぞれ 400 世帯において消費電力量をモニタ
リングしなければならず、非常に手間とコストがかかるものとなっている。例えばパイ
プラインにあるエクアドルのプロジェクトでは、照明用に電力計を用意し、その測定デ
ータを電話回線にて送信するシステムでモニタリングすることとされている。インフラ
が整っているとしても電力計や回線使用料など様々なコストが追加的に必要となり、プ
ロジェクトコストを捻出するにはある程度規模を大きくしなければならなくなってしま
う。
一方、最も利用されている AMS-II.J では、電球の消費電力量をモニタリングする必要
はなく、使用時間についても 3.5 時間の規定値が利用可能である。このため、モニタリ
ングの負荷は非常に小さく、配布された電球型蛍光灯のワット数が正確に記録されてい
れば、規定値を利用して消費電力量を算定し、排出削減量を決定することが可能である。
小規模方法論であるため、規模の制約はあるもののプロジェクトコストを抑制できるこ
とから多くのプロジェクトにおいて利用されている。
AM0046 および AMS-II.J に共通の課題としては、各方法論が適用できる高効率照明に
ついて、電球型蛍光灯のみを指定しており、例えば LED 電球などのより高効率な照明に
ついては方法論が利用できないことが挙げられる。これについては、LED 電球に適用で
きない事や将来的に様々な高効率照明が開発されることをふまえると白熱電球と同等の
照度を確保しながらも、消費電力が少ない照明に適用できるように変更すべきであると
考えられた。
CDM の方法論は通常規模・小規模方法論いずれも保守的に作られている。このため、
基本的な方法論の構造は守りつつ、保守的な部分について実測方法を工夫して実際の排
出削減量に近づけることが必要であると考えられた。
4.1.2. 省エネ家電
家庭部門を対象に非効率な冷蔵庫・エアコン等の家電を省エネ家電に代替することに
より、消費電力量を削減する温室効果ガス排出削減活動は、CDM に適用できる方法論が
いくつかあるものの、実際に国連登録に至ったプロジェクトは存在していない。
現在、省エネ家電普及促進プログラムに適用可能な CDM の方法論は通常規模方法論の
AM0070 および AM0071、
小規模方法論の AMS-II.C および AMS-III.X の 4 種類である。
AM0070
および AM0071 は 2008 年に方法論として認証されたものの現在までに国連登録された案
件は無く、
AM0070 のみがパイプラインに 1 件のプロジェクトが存在しているのみである。
AMS-II.C は省エネ系の CDM プロジェクトにおいて利用されている方法論であり、高効率
な冷蔵庫・エアコンを導入するプロジェクトは無いものの、それ以外の CDM プロジェク
トの登録件数は 10 件となっている。AMS-III.X は 2008 年に方法論として認証されたも
のの、CDM プロジェクトとして登録されたものは無く、パイプラインにプロジェクトが 1
- 46 -
件存在しているのみである。
図表 36
Methodology
AM0070
AM0071
AMS-II.C
AMS-III.X
既存の類似 CDM プロジェクトにおける利用方法論(省エネ家電)
Name
Manufacturing of energy
efficient domestic
refrigerators
Manufacturing and
servicing of domestic
and/or small commercial
refrigeration appliances
using a low GWP
refrigerant
Demand-side energy
efficiency activities for
specific technologies*
Energy Efficiency and
HFC-134a Recovery in
Residential Refrigerators
No. of projects
Pipeline
Registered
1
0
No. of PoAs
Pipeline
Registered
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
* 本方法論は、多くの技術に適用可能。家庭部門の冷蔵庫・エアコンを対象としたプロジェク
トは無かった。
出典:UNFCCC 登録データおよび UNEPFI 資料より作成
これらの方法論が使われていない背景には、適用条件として例えば冷媒の利用につい
て 1 種類のみに限定するなどの条件が設定され、かつ変更が認められないことやモニタ
リングにおいて、冷蔵庫・エアコンを導入した家庭で家電の消費電力量を測定する必要
があるなど、CDM プロジェクトを実施することによる制約やモニタリングの費用・手間
かかることがあると考えられる。更に省エネ系の CDM プロジェクトは、HFC・N2O 破壊な
どの化学系やメタンガス破壊の廃棄物系と比較すると費用・手間対効果が悪いものが多
く、プロジェクト組成が相対的に少ないことも影響していると考えられる。
一 方 、 AMS-III.X は 方 法 論 名 称 「 Energy efficiency and HFC-134a recovery in
residential refrigerators(家庭用冷蔵庫のエネルギー効率改善及び HFC-134a の回収)」
が示すように省エネによる温室効果ガス排出削減に加えて、冷媒の漏洩回避による温室
効果ガス排出削減を上乗せできる方法論であり、省エネ系の CDM プロジェクトよりも費
用・手間対効果が向上している。しかし、AMS-III.X 自体は適用条件が厳しく、モニタ
リングの負担も大きいため実際には CDM プロジェクトとして登録されたプロジェクトは
現時点では無い。AMS-III.X の省エネ系+化学系という方法論は、家電の流通・回収・
廃棄を一体的に管理できるプロジェクト実施者であれば、より多くの排出権が獲得でき
ることから、魅力的な方法論である。日系メーカーとメキシコの流通が協業するなど、
一体的な管理体制を作ることは可能であることから、適用条件やモニタリング項目を適
- 47 -
正化することにより、二国間オフセットメカニズムにおいて、より多くの排出権を獲得
できる方法論にすることが可能であると考えられた。
AMS-III.X に関連した方法論としては、CDM 以外に VER でも開発がされている。CAR:
Climate Action Reserve は主に米国において利用されている VER であり、カリフォルニ
ア州地球温暖化対策法における 排出量取引制度等にて利用できることから、実際にプロ
ジェクト開発が盛んに行われている制度である。CAR にはフロンのクロロフルオロカー
ボン(CFC)を破壊することにより温室効果ガスを排出削減する方法論である「Article 5
Ozone Depleting Substances Project Protocol.」がある。クロロフルオロカーボン(CFC)
は大気中へのフロン排出を禁止・抑制するモントリオール議定書の対象物質であるため
京都議定書では対象外とされているが、生産のみが規制されているため、CAR では既存
のクロロフルオロカーボン(CFC)が大気放出されることが規制されていないことを考慮
して、方法論が作成されている。本方法論の特徴としては、冷蔵庫がリサイクルされる
ために実際にクロロフルオロカーボン(CFC)の回収・破壊が後に実施されたとしても冷蔵
庫が回収された時点で排出権が発行可能な点である。この規定により、冷蔵庫のリサイ
クルが実施され、クロロフルオロカーボン(CFC)が回収された日を正確に特定する必要が
無いため、プロジェクト実施者の負荷は大きく軽減されることとなっている。このよう
な実際のビジネスフローを考慮した方法論の設定は、具体的にプロジェクトを実施する
上では重要であり、MRV 方法論においても参考となるものである。
世界的に最も利用されている VER である VCS:Voluntary Carbon Standard においても
同様にフロン破壊に関する方法論「Greenhouse gas emission reductions by recovering
and destroying ozone depleting substances (ODS) from products」が開発中である。
本方法論は 2010 年 3 月に提案され、現在、審査段階にある。本方法論は CAR と異なり、
冷媒あるいは発泡剤として使われている ODS:ozone depleting substances の CFC と HCFC
の回収と破壊を対象としている。適用条件としてはこれらのガスのすべてあるいは一部
が大気放出されている場合としている。VCS の方法論は CAR と比較すると自由度が高く
なっており、方法論の適用可能性を広げる点で参考となる。
4.2. MRV 方法論
二国間オフセットメカニズムの MRV 方法論については、実際に FIDE の省エネプログラ
ムにおいて、日系メーカーが参入できる可能性があるものは電球交換プログラムのみで
あったことから、実際のプログラムへの適用を考慮するなどの詳細な検討は電球交換プ
ログラムを対象とするものに限定して行った。電球交換プログラムに適用する MRV 方法
論は、既存方法論を分析した結果、AMS-II.J をベースとして作成した。
4.2.1. 適用条件
本方法論は、以下の適用条件を全て満たす場合に適用することが出来る。
- 48 -
1.家庭部門において、電球型蛍光灯にて白熱電球を代替する活動であること。
2.使用する電球型蛍光灯は安定器が分解できない構造であること。
3.プロジェクト活動に使用する電球型蛍光灯は他のプロジェクト活動にて利用されてい
るものでないこと。
4.交換する電球型蛍光灯の明るさは交換される白熱電球の総ルーメン数と同等かそれ以
上であること。総ルーメン数は国内/国際的な基準に基づいて決定される。該当する基準
がない場合は、
「白熱電球の基準ルーメン数」に示したルーメン数を用いることが出来る。
「白熱電球の基準ルーメン数」に該当するワット数が無い場合には各ワット数の間を線
形に結んだ数値を用いることが出来る。
5.使用する電球型蛍光灯は標準的な仕様の電球で、他の電球と識別可能な標識を付ける
こと。
6.プロジェクト計画書(PDD)において、電球型蛍光灯の配布方法に関する説明がなされて
いること。
7.プロジェクト計画書(PDD)において、電球型蛍光灯による排出削減量のダブルカウント
を防ぐ方法が説明されていること。
図表 37
白熱電球の基準ルーメン数
4.2.2. バウンダリー
プロジェクトバウンダリーは県や市などの行政区画によって定義される。ただし、電
気の排出係数が異なる場合には、異なるバウンダリーとして扱わなければならない。プ
ロジェクトがいくつかのステップにて進行する場合には、プロジェクト開始日毎にバウ
ンダリーを設定しなければならない。
- 49 -
4.2.3. 追加性
電球交換プログラムを実施する場合、電球型蛍光灯は無償あるいは製造原価程度で家
庭に配布あるいは販売される。プロジェクト実施者は電球型蛍光灯の費用を回収できな
いため、クレジット収入を得る以外にプロジェクトを実施するインセンティブは無い。
したがって、本プロジェクトタイプについては追加性があることは自明である。
政府が実施するプログラムの場合、収益性等を考慮していない。しかし、NAMA として
実施されるプログラムについては、追加性があると見なされることから、同様に追加性
があると判断できる。
4.2.4. 排出削減量
プロジェクトの実施にあたって、事前調査は必須ではない。プロジェクトの実施によ
る排出削減量の算定はモニタリング結果に基づいてベースラインとプロジェクトの差分
によって求められる。
プロジェクト活動による消費電力抑制量は以下の(1)式にて算定する。
記号
定義
単位
ES y
年間消費電力抑制量
kWh 年
Q pj,i
プロジェクト活動にて配布された電球型蛍光灯
個
の数量
i
電球型蛍光灯の出力数の種類
n
出力 i の電球型蛍光灯の数量
個
LO i,PJ
電球運転変数
TD y
年間系統ロス
%
P i,BL
出力 i の電球型蛍光灯と同等のベースラインと
W
なる白熱電球のカタログワット数
P i,PJ
プロジェクトにて導入する出力 i の電球型蛍光 W
灯のカタログワット数
O i,BL
出力 i の電球型蛍光灯にて交換される白熱電球
時間/日
のベースラインにおける 1 日あたりの使用時間
O i,PJ
プロジェクトにて導入する出力 i の電球型蛍光 時間/日
灯のプロジェクトにおける 1 日あたりの使用時
間
- 50 -
プロジェクト活動による排出削減量は以下の式にて算定する。
記号
ES CO2,ELEC
ER y
定義
単位
電力排出係数
t-CO2/kWh
年間排出削減量
t-CO2/年
電力排出係数については、プロジェクトにて算定する必要はなく、プロジェクト実施
国にて公表している排出係数や直近に登録された CDM プロジェクトにて使用されている
排出係数を利用することが可能である。プロジェクト開始から 3 年前までの排出係数を
利用可能とする。
4.2.5. クレジット期間
クレジット期間の開始日は電球型蛍光灯を導入した日とする。プロジェクト期間の終
了日は、プロジェクトにおいて導入した電球型蛍光灯の 50%以上が寿命を迎えた日とす
る。電球型蛍光灯の寿命については、電球型蛍光灯の種類(ワット数)ごとに決定する。
プロジェクトの実施がステージ毎に区分されている場合は、それぞれのステージ毎に
プロジェクト期間を決定する必要がある。この場合は、ステージ毎にモニタリングデー
タを収集する必要がある。
4.2.6. モニタリング
モニタリングには以下の活動が含まれる。
1. サンプル家庭を対象とするベースライン調査
2. 配布する電球に関する調査
3. プロジェクト実施後調査
「1. サンプル家庭を対象とするベースライン調査」については、調査員がサンプル家
庭を訪問し、インタビューおよび目視にて以下の項目を調査する。
・ 世帯を同定するための基本情報
・ 昨年 1 年間の電力料金請求書
・ 照明利用に関するインベントリー(電球の種類、出力、1 日当りの利用時間など)
・ 主な電気利用設備のインベントリー(冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、エアコンなど)
「2. 配布する電球に関する調査」については、プロジェクト実施期間中、以下の項目
- 51 -
について記録する。
・ プロジェクト活動にて配布した電球型蛍光灯の数量およそ付帯情報(メーカー、モデル、
出力、配布日など)。
・ 電球型蛍光灯と引き替えに受領した白熱電球の数量と出力
・ プロジェクト活動にて配布された電球を受領した人を明確に区別できるデータ
「3. プロジェクト実施後調査」
については、ベースライン調査とほぼ同様な調査となり、
以下の項目について調査する。本調査は 1 年ごとに行い、配布した電球型蛍光灯の 50%
以上が寿命を迎えるまで実施する。
・ ベースライン調査と同じ世帯であること(引っ越していて別の世帯になっている場合
などは、その世帯をベースラインと実施後調査の対象から除外する)。
・ 交換した電球型蛍光灯に関するインベントリー(電球の種類、出力、1 日当りの利用時
間など)。
・ 配布した電球型蛍光灯が利用され続けていることの確認。
4.2.7. 事前調査・モニタリングの基本方針とサンプリング数
本プロジェクト活動にて実施する各種の調査・モニタリングについては、以下の基本
方針にて実施する。
・ サンプリング数については、90%の信頼区間と 10%の標本誤差を確保することとする。
したがって、サンプリング数は最低 100 以上とする。
・ サンプリングは統計学的にしっかりとした妥当なものなければならない。
・ インタビューを受ける人はランダムで選出する。
・ 調査は家庭を訪問して実施する。
・ インタビューの回答者は 12 歳以上とする。
・ プロジェクト計画書(PDD)にはベースライン・実施後調査の詳細を記述する。
実際にプロジェクトを実施するにあたっては、上記の基本方針・サンプリング数に基
づいて事前調査計画およびモニタリングプランを策定する。事前調査計画およびモニタ
リングプランでは、具体的なサンプリング方法、回答者・世帯の管理・特定方法、機器
管理台帳などを作成し、電子的に管理する必要がある。
4.3. 排出削減量の試算
電球交換プログラムによる排出削減量は、電力消費抑制量に電力の排出係数を乗じる
ことで算出される。メキシコの電力排出係数は、直近に登録されたメキシコの CDM プロ
ジェクト(El Verde landfill gas recovery project, registered on 27 October 2010)
にて用いられている 0.5126 tCO2/MWh を用いて算定する。
- 52 -
各家庭にて利用されている白熱電球の加重平均ワット数は INEGI(Instituto Nacional
de Estadística y Geografía)のデータを用いて試算すると 55.1W であった。現状におい
て一般的な家庭では、照明の使用時間は 1 日当り白熱電球:3 時間、電球型蛍光灯:3.
5 時間となっており、電球型蛍光灯が 30 分ほど長くなっている。電球型蛍光灯の寿命を
10,000 時間とすると毎日使うと仮定した場合、7.8 年間の寿命となる。
以上のスペックの 23W の電球型蛍光灯を 2,290 万個配布する今回の電球交換プログラ
ムに適用すると以下の計算式となり、電力抑制量は 788GWh/年と試算された。
788GWh に電力の排出係数を乗じると 788×512.6=40.4 万 t-CO2 となり、一定規模の
削減が可能であることが示唆された。プログラムの対象となる家庭の内、一部の家庭で
は電球型蛍光灯を無償では受け取らず購入する可能性があり、プログラム活動が無くて
も電球型蛍光灯が普及していた可能性がある。したがって、40.4 万 t-CO2 の排出削減量
をプログラム参加主体数で補正する必要がある。これまでにメキシコにて行われた調査
などから、約 140 万個に相当する温室効果ガス排出量については、購入されると仮定す
ると 40.4 万 t-CO2×(21.5/22.9)として、補正した結果、37.9 万 t-CO2 のクレジットが
創出可能であると判断された。
4.4. 資金提供スキームの実効性分析
省エネプログラムへの参加を目指していた A 社の電球型蛍光灯については、ビジネス
ベースで十分な競争力を持っていたことから、省エネプログラムへの参加に際して、特
段、不利になる可能性は低い。
省エネプログラムでは、2,290 万個、5,725,000 セットの電球型蛍光灯を配布すること
から、1 セットあたりの温室効果ガス排出削減量は 37.9 万 t-CO2/5,725,000 セット=
0.066t-CO2 となる。仮に二国間オフセットメカニズムのクレジット価格が 2,000 円
/t-CO2 の場合、1 セットあたり 0.066×2,000=132 円が得られることになる。23W の電
球型蛍光灯は店舗では 40~80 ペソ(≒270~540 円)にて販売されており、1 セットあたり
では 160~320 ペソ(1,080~2,160 円)程度となっている。省エネプログラムでは、大量
の電球型蛍光灯が調達されるため、大幅な値引きが実施されると見込まれるため、これ
らの価格よりも調達される電球型蛍光灯の価格は低いと考えられる。そのため 1 セット
あたりの利益幅は非常に小さなものになると考えられ、二国間オフセットメカニズムに
よる追加収入はある程度大きなものになると想定される。したがって、省エネプログラ
ムの実施を受託した企業から見ると日系メーカーの電球型蛍光灯は、価格的には欧米・
- 53 -
アジア OEM メーカーとほぼ同じであり、品質でも優れている上に少ない利益を底上げで
きる魅力があり、資金提供スキームは十分に実効性があると考えられた。
以上
- 54 -
<参考 現地調査概要>
メキシコにおける現地調査は 2011 年 1 月 24 日~1 月 29 日の日程で行った。以下にヒア
リング先と調査内容をまとめた。
・ 出張目的

MGM Innova 社との方法論の検討

省エネプログラムの詳細調査

メキシコにおける家電市場の調査

省エネプログラム参加に向けた日系メーカー現地法人の意見交換・調整
・ 現地調査出張者

株式会社日本総合研究所 創発戦略センター 主任研究員 三木 優

株式会社日本総合研究所 創発戦略センター 主任研究員 井上 岳一
・ 現地調査日程

期間
2011 年 1 月 24 日~1 月 29 日
1 月 24 日
成田国際空港発-メキシコシティ国際空港着
1 月 24 日~1 月 28 日
SHERATON MARIA ISABEL HOTEL & TOWERS 泊
1 月 28 日~1 月 29 日
メキシコシティ国際空港発-成田国際空港着

主なスケジュール
1 月 25 日
MRV 方法論に関する打合せ
1 月 26 日
スーパー、ホームセンター等で電球・家電販売の様子を
視察
1 月 27 日
政府・日系メーカー等との意見交換
・ 日程別調査内容
詳細な調査内容(日時、訪問先/調査先、面会者、調査概要)は下表のとおりである。
日時
訪問先/調査先
面会者
調査概要
2011 年 1 月 25 日(火)
10 時 00 分~12
MGM Innova Mexico
MGM Innova
時 45 分
Office
・
Alfredo Nicastro
・
Alejandro Rueda
・
Fabiola
Villa Ma
- 55 -
・MRV 方法論に関する検討
Vanessa
・
Gautan(Argentine
から電話で参加)
15 時 00 分~16
MGM Innova Mexico
MGM Innova
時 30 分
Office
・
Fabiola
・
Vanessa
省エネプログラムおよびメ
キシコ家電市場に関する調
Villa Ma
査レポートに関する打合せ
17 時 30 分~20
MGM Innova Mexico
MGM Innova
時 00 分
Office
・
Alfredo Nicastro
施状況および日系メーカー
・
Alejandro Rueda:
の参入可能性に関する打合
・
Fabiola
せ
・
Vanessa
FIDE 省エネプログラムの実
Villa Ma
日時
訪問先/調査先
面会者
調査概要
2011 年 1 月 26 日(水)
9 時 30 分~14
・
Elektra
各家電量販店・スーパ
時 00 分
・
SORIANA
ー・ホームセンターの電
・
Liverpool
球・家電売り場を視察
・
Commercial
・
電球および家電販売の販売
実態の調査
・
白熱電球および電球型蛍光
灯の価格調査
Mexicana
・
Home Depot
16 時 00 分~17
東 芝 メ キシコ オフィ
東芝
時 15 分
ス
・
・
Carlos
Canales
Buendia
・
Luis
LED 電球の市場動向に関す
る意見交換
・
Ernesto
二国間オフセットメカニズ
ムとの連携に関する意見交
Espinosa
換
Hernandez
・
Alexsandro
F.
Ilbanez
日時
訪問先/調査先
面会者
調査概要
2011 年 1 月 27 日(木)
10 時 00 分~11
SENER オフィス
時 30 分
SENER
・
Marchelo Benecchi
Loyola
・
・
FIDE 省エネプログラムの実
施状況
・
Fabiola E. Gomez
NAMA 等の緩和活動に関す
る意見交換
Brechtel
14 時 30 分~17
Panasonic de Mexico
Panasonic de Mexico
時 30 分
オフィス
・
Masumi Hirose
・
Kazunori Shimizu
- 56 -
・
FIDE 省エネプログラムへの
対応状況に関する意見交換
・
Yasuyuki Iwasaki
・
Daichi Nishihata
・
Ejectivo Finanzas
・
Shigeo Endo
パナソニックライティ
ング社
・
笠島氏
18 時 30 分~19
MGM Innova Mexico
MGM Innova
時 30 分
Office
・
Marco Monroy
キシコ家電市場に関する調
・
Maria Moroy
査レポートに関する打合せ
・
Alfredo Nicastro
・
Fabiola
・
省エネプログラムおよびメ
Vanessa
Villa Ma
・ 調査結果概要

方法論の検討

MGM は国連 CDM プロジェクトに数多く関わってきたコンサル会社であり、方
法論に関する知見には確かなものがあることが確認できた。

方法論は、FIDE 省エネプログラムにて実際に使えるものであることと、他の
プロジェクトにも横展開可能であることを考慮して検討されており、事前調
査・モニタリンを含め、実現性が考慮されたものを作ることができた。

モニタリングプランと電球の回収の部分に関して、更に詳細な検討をするこ
とを依頼した。

冷蔵庫・エアコンの方法論については、両方に適用できる方法論を構築する
こととなった。

省エネプログラムの詳細調査

入札が遅れている理由や仕様の詳細についてヒアリング

メキシコ人(特に低所得者)は、白熱球に近い温かい色を好むという調査結
果から、FIDE は 4,100K という特殊な色の仕様を出しているとのこと

既に発表されている仕様条件を変更させるような依頼をするのは得策ではな
いとのアドバイスがあった

家電市場の調査

白熱電灯は一部のコンビニで販売しているが、家電流通の主体となるのは、
スーパーや量販店。
- 57 -

CFL(電球型蛍光灯)
、冷蔵庫、エアコンに関して、取り扱いメーカーや価格
帯の調査を行った。視察対象は、高級スーパーモール Liverpool、大衆向け
スーパーSoriana、Commercial Mexicana、家電量販店 Elektra、ホームセン
ターHomeDepo。

エアコンは Liverpool 以外では扱いがなかった(LG 製のみ)
。冷蔵庫、CFL
も日本製はなく、
冷蔵庫では韓国メーカー
(Samsung、
LG)と米国メーカー(GE、
Whirlpool)が強く、現地メーカー(MABE)も浸透。CFL では欧州メーカー
(Philips、Osram)が圧倒的に強く、米国メーカー(GE)、韓国メーカー
(Samsung)も一部店舗で取り扱いがあった。後は中国製のノンブランドが主
流。

省エネプログラム参加に向けた日本企業現地オフィスとの調整

エアコンについては A 社のみ販売。ただし、販売を再開して間もなく FIDE
認証を取得したモデルはなく、今回のプログラムへの参加は困難。また、冷
蔵庫については、取り扱いのある日本メーカーはいない。このため、CFL の
プログラムへの参加が中心的な検討課題となった。

B 社は LED に特化した販売戦略をとっているため、今回のプログラムへの参
加は難しい。

A 社は参加の意欲が高いが、FIDE が示した入札の仕様に合う現行製品がない
ため、2 月 9 日を締め切りとする1回目の入札への参加は難しい。2011 年 10
月に行われる予定の 2 回目の入札に向けて、取組み方策を検討中。

また、両メーカーとは、今回のプログラムとは別の、新たなプロジェクトの
あり方についてディスカッションした。両メーカーとも、二国間オフセット
のスキームと絡めた家電普及プロジェクトには強い関心を示していることが
わかった。
- 58 -
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