...

東京都自転車走行空間整備推進計画(表紙・目次 1章~5章)

by user

on
Category: Documents
2

views

Report

Comments

Transcript

東京都自転車走行空間整備推進計画(表紙・目次 1章~5章)
東京都自転車走行空間
整備推進計画
平成24年10月
東 京 都
「東京都自転車走行空間整備推進計画」の策定にあたって
東京都は、快適で利便性の高い都市、安全で美しいまちの実現を目指し、首
都圏三環状道路や都市の骨格を形成する幹線道路、水害から都市を守る河川、
都民にゆとりと潤いを創出する公園などの都市基盤の整備を進めている。
これら都市基盤整備の一つに、道路整備の一環として、より一層進めていく
べき自転車走行空間の確保がある。自転車は、鉄道や自動車とともに都市内に
おける主要な交通手段としての役割を担っており、利用が拡大している。
一方、近年都内における自転車が関連する事故の割合が増加しており、交通
ルールを守らない自転車利用者の問題が大きな社会的関心を集めている。誰も
が安全に通行できる道路環境を実現するには、自転車が車両であるとの認識の
上、車道通行時の左側通行や歩道通行時の歩行者優先など、交通ルールの徹底
を図るとともに、自転車走行空間を整備する必要がある。
東京都では、これまで整備してきた 100 キロメートルに加え、「2020 年の東
京」計画において、平成 32 年までに新たに 100 キロメートルを整備することと
している。
このたび、この計画を実現するため、道路の幅員や利用状況に応じ、車道の
活用を基本とした自転車道や自転車レーンなどの整備手法と安全性・利便性向
上の視点から選定した優先整備区間などを取りまとめた「東京都自転車走行空
間整備推進計画」を策定した。
今後、この推進計画に沿って、計画に位置づけた既設道路約 100 キロメート
ルはもとより、新設・拡幅道路においても自転車走行空間の整備を積極的に推
進し、誰もが安全で安心して利用できる道路空間を創出していく。
平成 24 年 10 月
東京都技監(建設局長兼務)
目
次
1
目的と位置づけ
1
2
基本的な考え方
3
3
自転車利用を取り巻く現状
7
3.1 自転車保有台数と自転車利用の推移
10
3.2 交通事故状況
11
3.3 放置自転車等の状況
13
3.4 交通手段に占める自転車の割合
14
3.5 自転車の利用状況
17
3.6 自転車トリップの特性
18
3.7 自転車ODの現状
19
4
21
これまでの整備実績
4.1 車道を活用した自転車レーンの整備
23
4.2 広い歩道における自転車走行空間の整備
23
4.3 水道敷や河川敷を利用した自転車歩行者専用道路の整備
24
5
25
整備目的
5.1 歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して
通行できる道路空間の創出
27
5.2 CO2 削減など環境への寄与
28
5.3 自転車利用による健康増進への寄与
29
5.4 自転車走行環境の利便性向上による観光振興への寄与
30
6
31
整備手法
6.1 整備手法の分類
32
6.2 整備手法の選定
35
6.3 幅員構成
38
7
舗装及び標識・路面標示
43
7.1 自転車レーン(普通自転車専用通行帯)の路面標示
44
7.2 自転車通行部分の舗装
44
7.3 通行案内標識・路面標示シート等の設置
45
8
47
優先して整備する区間
8.1 自転車走行空間のネットワーク化に向けて
48
8.2 優先して整備する区間の考え方
49
8.3 2020 年(平成 32 年)までの整備計画
56
8.4 優先整備区間以外の取り組み
58
9
60
事業推進に向けた方策
9.1 国や区市町村との連携によるネットワーク化
61
9.2 交通管理者との連携
63
9.3 街路樹との共存
64
参考資料
66
1 目的と位置づけ
1
目的と位置づけ
自転車は、子どもから高齢者まで、日々の通勤・通学や買い物など、手軽に利用され
る交通手段である。また、地球温暖化等、環境問題に対する意識が高まる中、環境へ
の負荷が小さい交通手段として見直され、さらに近年の健康志向の高まりとともにそ
の利用が拡大している。
一方、自転車に関する事故と交通規制に関する道路交通法の変遷を見ると、昭和 30
年代からの急速なモータリゼーションの進展により、自転車が関係する交通事故が急
増したことを受け、昭和 45 年5月に道路交通法が改正され、自転車の歩道通行を可能
とする新たな交通規制が行われることとなった。これにより、自転車と自動車の走行
空間の分離が進み、自転車が関係する交通事故は減少した。
しかしながら、近年、自転車利用者の増加とともに、全事故に占める自転車関連事故
の割合は増加している。こうした状況を受け、平成 20 年6月、歩道上の安全確保と自
転車が関係する自動車事故の削減を目的として道路交通法が改正され、自転車の歩道
通行可能要件が明確化された。さらに、平成 23 年 10 月、警察庁より「良好な自転車
交通秩序の実現のための総合対策の推進について」の通達が出され、自転車利用者の
マナー向上はもとより、歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して通行できる
道路の利用環境整備が喫緊の課題となっている。
本計画は、自転車走行空間の整備目的や整備手法を提示するとともに、優先して整備
する区間などを取りまとめている。
2
2 基本的な考え方
2 基本的な考え方
自転車は、広く都民に利用される重要な交通手段の一つである。近年、買い物や通学
など、日常的な近距離の移動だけでなく、通勤時における比較的長い距離の移動や健
康増進のためのサイクリングなど、自転車の利用が拡大してきている。こうした中で、
全事故に占める自転車関連事故の割合は増加しており、歩行者、自転車、自動車のそ
れぞれの安全と安心が確保された自転車走行空間の整備に対する都民の期待が高まっ
ている。
一方、自転車利用の拡大につれて、区市町村や民間企業によるレンタサイクルや複数
の駐輪場で自由に貸出・返却ができるコミュニティサイクルの社会実験等、自転車活
用の新たな取組も広がりつつある。
こうした背景を踏まえ、歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して利用できる
環境づくりを進めるためには、都、区市町村、交通管理者をはじめとした関係機関が
連携し、自転車走行空間の整備、自転車交通ルール・マナーの周知徹底、区市町村に
よる駐輪対策等に、ハード、ソフト両面から総合的に取り組む必要がある。
建設局は道路管理者の立場から、歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して通
行できる道路空間を創出するため、ハード対策として自転車走行空間の整備を推進す
るとともに、区市町村が行う駐輪対策等の着実な取組と連携を取っていく。あわせて、
ソフト対策として、自転車交通ルールの周知徹底やマナー向上に向けた啓発を行って
いく。
今後は、道路ごとの構造上の特性や利用状況をとらえて、自転車走行空間の整備を積
極的に進めていく。
歩行者、自転車、自動車は、移動速度や特性が異なるため、交通安全の観点から、歩
行者、自転車、自動車それぞれの通行空間を確保できる場合には、構造的に分離した
自転車走行空間の整備を行う。道路幅員が狭いなど、構造的に分離した通行空間の整
備が困難な場合には、車道を活用した自転車レーンや歩道内での分離などにより自転
車走行空間の整備を行うこととする。
都は、
「2020 年の東京」計画において、道路・港湾・空港など世界トップクラスのイ
4
ンフラを整備するとともに、ビジネスや観光の拠点となる都心駅周辺のまちづくりを
推進し、東京の国際競争力を高めるとし、その施策の一つに自転車走行空間の整備を
掲げている。
自転車走行空間は、道路の利用状況等を踏まえ、自転車交通量が多く安全性を向上さ
せる必要がある区間や、観光スポット及び集客施設を結ぶ区間等で優先的に整備する
など、誰もが安全で快適に行き交うことができる道路空間を確保し、都市の活力を引
き出す整備を進めていく。
5
3 自転車利用を取り巻く現状
3 自転車利用を取り巻く現状
自転車は、通勤・通学や買物などの日常的な利用に加え、環境負荷の少ない交通
手段として評価され、健康志向の高まりとともにその利用が拡大している。
一方、自転車利用の増加とともに、自転車利用者のマナー違反や交通ルールを無
視した無謀な走行などにより、全事故に占める自転車が関連する事故の割合は増加
傾向にある。また、電動アシスト自転車の普及により、長距離の移動も容易になっ
たほか、ロードレーサーと言われる高速移動が可能な車種など、自転車の仕様も多
岐にわたっている。「10 年後の東京」における政策展開への関心でも、「自転車走
行空間」が上位に位置づけられるなど都民の関心は高く、安全で安心して通行でき
る自転車走行空間の整備が求められている。
平成 19 年には、歩道上の安全確保と自転車が関係する交通事故の削減を目的とし
て、道路交通法が一部改正(平成 20 年6月1日施行)された。この改正により、自
転車が歩道を通行することができるのは、道路標識などにより歩道を通行すること
ができるとされている場合のほか、児童及び幼児や 70 歳以上の高齢者が運転する場
合など、自転車の歩道通行に関する要件が明確化された。しかしながら、平成 21 年
7月に実施した都政モニターアンケートでは、約8割の人が自転車を乗る際に、
「主に歩道を走行している」と回答しており、歩道内で歩行者と自転車が混在して
いるのが現状である。
このような現状や自転車に関する事故傾向を踏まえ、平成 23 年 10 月には警察庁
において、自転車は「車両」であるということの徹底を基本的な考え方とした「良
好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」の通達が出されたと
ころである。
8
63.5%
耐震化
震災対策・危機対応
57.6%
自転車走行空間
57.0%
54.7%
無電柱化
歩道走行
77%
53.4%
高齢者への対応
医療の充実
n=381
51.4%
緑の保全
【質問】:車道と歩道の区別のある道路で、あなたが
自転車に乗る場合の走行位置についてお答え
ください。
47.7%
46.1%
雇用・生活支援
治安対策・消費者対策
44.7%
東京湾再生
44.1%
0%
図 3-1
車道走行
23%
10%
20%
30%
40%
50%
【回答】: A
B
60%
70%
主に車道を走行している
主に歩道を走行している
88 件
293 件
80%
「10 年後の東京」における政策展開への関心
図 3-2
自転車利用者の走行位置
出典:「都政モニターアンケート」東京都生活文化スポーツ局
平成 21 年 7 月
出典:「都政モニターアンケート」東京都生活文化局
平成 23 年 12 月
9
3.1 自転車保有台数と自転車利用の推移
都内における自動車保有台数がほぼ横ばいであるのに対し、自転車保有台数は増
加傾向にある。平成 20 年度における自転車保有台数は 900 万台であり、最近 10 年
間で約 1.3 倍に増加している。
さらに、電動アシスト自転車の出荷が増加するなど、多種多様な自転車が、通
勤・通学や買い物、スポーツ、レジャーなど様々な目的で、幅広い年齢層に利用さ
れている。
(万台)
1,000
800
600
733
741
836
818
836
879
865
900
699
694
707
550
549
549
547
548
544
544
545
542
539
531
523
517
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
自転車保有台数
自動車保有台数
400
200
0
図 3-3
東京都における自転車・自動車の保有台数
出典:自転車保有台数は、自転車の国内市場動向調査((社)日本自転車協会)より抜粋(平成 20 年調査終了)
自動車等保有台数は、国土交通省関東運輸局東京運輸支局調
(万台)
(万台)
1000
450
900
400
800
700
350
671
653
628
600
599
566
300
519
454
500
445
483
250
200
400
150
300
200
100
100
50
0
0
H12
H13
H14
H15
図 3-4
H16
H17
H18
H19
H20
全国における車種別出荷台数
出典:(社)自転車協会会員統計
10
合計
軽快車
子供・幼児車
ミニサイクル
マウンテンバイク
電動アシスト車
スポーツ車
その他
3.2 交通事故状況
都内における自転車が関係する交通事故は、その発生件数でみると、ここ数年減
少傾向にあるが、全交通事故が大幅に減る中で、その占める割合は増えており、平
成 23 年には、全体の 37.3%を占めている。
また、歩行者と自転車、自転車同士の事故件数は、ここ数年減少傾向にあるが、
都内においては年間で約 2,300 件発生している。
平成 23 年中に発生した自転車が関係する交通事故は、自転車利用者の多い日中
の時間帯が過半数を占め、特に通勤・通学のピークとなる朝・夕時に多発してい
る。年齢別では、20 歳代、30 歳代、40 歳代と 65 歳以上の高齢者が多い。
(千件)
50.0
40.0
25.9%26.0%
27.3%
29.0%29.7%
30.4%30.6%
33.0%
31.7%32.5%
自転車事故発生件数
26.1 25.5
24.4
20.4
20.0
(%)
40.0%
30.0%
27.8 28.1 28.4 27.8 28.4 27.8
30.0
34.8%
36.8%36.9%36.2%37.3%
22.3 21.3
20.5
20.0%
全事故に占める自転車関
連事故の割合
16.2 16.7
10.0%
10.0
0.0
0.0%
H9
H10
H11
H12
H13
図 3-5
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
東京都における自転車が関係する事故件数及び事故割合
出典:警視庁資料(HP)(平成 23 年)
(件)
2,000
1,814
1,800
1,556
1,536
1,600
1,378
1,573
1,574
1,651
1,491
1,389
1,385
1,434
1,400
1,271
1,200
1,000
929
887
961
899
954
993
1,016
1,095
1,166
1,073
1,039
1,010
歩行者対自転車
自転車同士
800
600
400
200
0
H12
H13
H14
H15
図 3-6
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
東京都における自転車同士及び自転車と歩行者の事故件数
出典:警視庁資料(HP)(平成 23 年)
11
(件)
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
0~2時
2~4時
4~6時
図 3-7
6~8時 8~10時 10~12時 12~14時 14~16時 16~18時 18~20時 20~22時 22~24時
東京都における自転車に関する時間別事故件数
出典:警視庁資料(HP)(平成 23 年)
(件)
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
小中学生
15歳~19歳
図 3-8
20歳代
30歳代
40歳代
50歳代
60歳~64歳
東京都における自転車に関する年齢別事故件数
出典:警視庁資料(HP)(平成 23 年)
12
65歳以上
3.3 放置自転車等の状況
都内の駅周辺に放置されている自転車等の台数は、自転車駐車場の整備等によ
り、過去最高だった平成2年の約 24 万3千台と比べ、平成 23 年では約4万2千
台と約6分1まで減少したが、放置状況の解消には至っていない。
歩道における放置自転車は、都市や道路の景観を損なうだけでなく、歩行者や車
いす利用者などの通行の大きな障害となっている。
(万台)
50.0
(万台)
100.0
88.4 89.8
45.0
[
65.1
放 35.0
61.6
置
59.4
57.6
台 30.0 53.5 54.6
数
24.3 24.1 23.5 23.2
25.0
21.9 20.9 21.2
21.0
72.6 74.2
75.2 77.0 75.1 75.3
90.0
80.0
70.0
60.0 駐
車
50.0 可
能
40.0 台
数
]
19.9 19.7 20.1 20.0 19.8
20.0
17.1
15.0
15.0
13.4
11.4
10.0
30.0
10.0
8.5
6.4 5.3
4.8 4.2
5.0
0.0
20.0
10.0
0.0
H元 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23
放置台数
駐車可能台数
図 3-9 東京都内の駅周辺における放置台数と駐車可能台数
出典:「駅前放置自転車の現況と対策」東京都青少年・治安対策本部(平成 24 年 7 月)
図 3-10 歩道通行の障害となる放置自転車(北区赤羽駅周辺)
13
]
68.1
70.4 70.3 70.9
84.2 84.4
[
40.0
77.4 78.9
82.0
3.4 交通手段に占める自転車の割合
(1)
都市圏規模の交通手段に占める自転車の割合
都市圏規模別の全交通手段の利用割合は、都市規模が大きくなるほど鉄道利用
の割合が高く、自動車利用の割合が低くなっている。大都市圏では公共交通機関が
発達しているため、自動車の移動は少なく、鉄道による移動が高いものと考えられ
る。また、自転車の利用割合では、都市圏規模による大きな差は見られず 10~
16%の割合となっている。
鉄道
13.6%
全国
三大都市圏
(100万人以上)
地方中枢都市圏
徒歩
21.1%
鉄道
27.7%
徒歩
24.3%
鉄道
9.4%
地方中核都市圏 鉄道
(50万人以上) 3.5%
0%
バス
自転車 2.9%
14.5%
自動車
44.9%
徒歩
26.1%
自動車
25.4%
自動車
44.0%
徒歩
19.2%
自動車
55.8%
20%
鉄道
徒歩
40%
自動車
バス
3.9%
自転車 バス
10.9% 6.8%
自転車 バス
15.5% 2.8%
60%
自転車
自転車
16.1%
バス
80%
自動二輪車
2.9%
自動二輪車
2.7%
自動二輪車
2.7%
自動二輪車
3.3%
100%
自動二輪車
図 3-11 都市圏規模における交通手段に占める自転車の割合
全国:98 都市の集計
三大都市圏:東京区部、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市(7 都市)
地方中枢都市圏:札幌市、広島市、福岡市・北九州市(4 都市)
地方中核都市圏:仙台市、浜松市、熊本市、鹿児島市(4 都市)
出
典:「平成 11 年全国都市パーソントリップ調査」国土交通省 都市・地域整備局
14
(2)
東京都と関東圏の交通手段に占める自転車の割合
東京都と関東圏の全交通手段の利用割合をみると、東京都は関東圏に比べ鉄道
利用の割合が高く、自動車利用の割合が低くなっている。また、自転車の利用割合
をみると、東京都は関東圏に比べ利用割合が高くなっている。
鉄道
42.3%
東京都
徒歩
23.0%
鉄道
30.0%
関東圏
0%
自動車
14.3%
徒歩
22.0%
20%
鉄道
自動車
29.0%
40%
徒歩
自転車
15.5%
60%
自動車
自転車
バス 自動二輪車
3.1%
1.6%
自転車 バス 自動二輪車
14.0% 3.0%
2.0%
80%
バス
100%
自動二輪車
図 3-12 東京都と関東圏における交通手段に占める自転車の割合
関東圏:東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県・茨城県・群馬県
出 典:「第五回東京都市圏パーソントリップ調査」東京都市圏交通計画協議会
15
(3)
東京都の交通手段に占める自転車の割合
東京都における全交通手段の利用割合は、平成 10 年から平成 20 年までの 10 年間
で鉄道の割合が増加しており、自動車の利用割合が低下している。
平成 20 年における自転車の利用割合は、東京都全体で 15.5%、区部で 14.5%、
多摩地域においては 18.6%となっており、鉄道、徒歩、自動車とともに主要な交通
手段となっている。
平成10年
(第四回)
鉄道
36.5%
平成20年
(第五回)
徒歩
23.8%
20%
鉄道
自動車
14.3%
徒歩
23.0%
鉄道
42.3%
0%
自動車
19.3%
40%
徒歩
60%
自動車
自転車
自転車
15.7%
バス 自動二輪車
2.8%
2.0%
自転車
15.5%
バス 自動二輪車
3.1%
1.6%
80%
バス
100%
自動二輪車
図 3-13 東京都における近年 10 年間の交通手段に占める自転車の割合
※東京都発(着地は都外も含む)と東京都着(発地は都外も含む)を対象として集計
出典:「第四回東京都市圏パーソントリップ調査」
「第五回東京都市圏パーソントリップ調査」東京都市圏交通計画協議会
鉄道
42.3%
東京都
徒歩
23.0%
鉄道
47.6%
区部
徒歩
23.0%
鉄道
27.0%
多摩
0%
自動車
14.3%
徒歩
23.2%
20%
鉄道
徒歩
自動車
10.5%
自動車
25.5%
40%
60%
自動車
自転車
自転車
15.5%
自転車
14.5%
自転車
18.6%
80%
バス
バス 自動二輪車
3.1%
1.6%
バス 自動二輪車
2.9%
1.4%
バス
3.4%
自動二輪車
2.1%
100%
自動二輪車
図 3-14 東京都における平成 20 年の交通手段に占める自転車の割合
※東京都発(着地は都外も含む)と東京都着(発地は都外も含む)を対象として集計
出典:「第五回東京都市圏パーソントリップ調査」東京都市圏交通計画協議会
16
3.5 自転車の利用状況
東京都における自転車利用の移動目的は、77.7%が代表トリップ(自転車で直接
目的地まで移動)として利用され、21.8%が鉄道端末トリップ(駅まで自転車を利
用して移動)として利用されている。また、代表トリップのうち、自転車利用状況
の割合は、外出先からの帰宅が 41.4%、自宅から私事が 23.2%、私事が 14.6%と
なっている。
代表トリップ
77.7%
東京都
鉄道端末
21.8%
代表トリップ
80.4%
区部
鉄道端末
19.2%
代表トリップ
72.3%
多摩
0%
20%
バス端末
0.4%
バス端末
0.6%
鉄道端末
27.1%
40%
代表トリップ
バス端末
0.5%
60%
鉄道端末
80%
100%
バス端末
図 3-15 東京都における自転車トリップの内訳
代 表 ト リ ッ プ:自転車で直接目的地まで移動するトリップ
鉄道端末トリップ:駅まで自転車で移動し、電車を利用するトリップ
バス端末トリップ:バス停まで自転車で移動し、バスを利用するトリップ
出
典:「第五回東京都市圏パーソントリップ調査」東京都市圏交通計画協議会
東京都
12.4% 3.3%
2.2%
23.2%
41.4%
2.8% 14.6%
区部
12.5% 2.9%
2.2%
23.1%
41.0%
3.4%
多摩
12.3% 4.1%
2.2%
0%
23.6%
20%
自宅-勤務
自宅-通学
42.5%
40%
自宅-業務
60%
自宅-私事
15.0%
1.5% 13.9%
80%
帰宅
勤務・業務
100%
私事
図 3-16 東京都の代表トリップにおける自転車利用状況の割合
出典:「第五回東京都市圏パーソントリップ調査」東京都市圏交通計画協議会
17
3.6 自転車トリップの特性
東京都における自転車の移動距離(トリップ)は、1~2km のショートトリップ
が最も多く、9割以上の自転車利用が5km 以内の利用となっている。また、区部は
比較的トリップ長が短く、多摩はトリップ長が長い傾向にある。
トリップ頻度
累計トリップ
2,500,000
100%
90%
2,000,000
80%
70%
1,500,000
60%
50%
40%
1,000,000
30%
20%
500,000
10%
0
0~1
1~2
2~3
3~4
4~5
5~6
6~7
7~8
8~9
9~10
トリップ頻度 東京都
トリップ頻度 区部
トリップ頻度 多摩
累計トリップ 東京都
累計トリップ 区部
累計トリップ 多摩
10~
0%
km
図 3-17 東京都における自転車の距離別のトリップ頻度
出典:「第五回東京都市圏パーソントリップ調査」東京都市圏交通計画協議会
18
3.7 自転車 OD の現状
東京都における自転車の動き(OD)は、区部や多摩東部において、発生集中密度が
高く自転車が多く利用されている。一方、中心区部(山手線内部)や多摩南部、奥
多摩では自転車の発生密度が低い。また、自転車利用の移動範囲では、周辺区部の
主要駅、及びその周辺へ向かうショートトリップが多いとともに、一定エリア内の
地域的な自転車での移動も多い。
竹の塚
高島平
福生
保谷
小岩
浅草
吉祥寺
立川
新宿
府中
西葛西
八王子
品川
《凡例》
: 10[TE/ha]未満
: 10~ 30[TE/ha]
: 30~ 50[TE/ha]
蒲田
: 50~100[TE/ha]
:100~150[TE/ha]
:150~200[TE/ha]
:200[TE/ha]以上
図 3-18 東京都における自転車発生集中密度
※ある地域において、出発する移動と到着する移動を合計した密度
竹の塚
高島平
福生
保谷
小岩
浅草
吉祥寺
立川
新宿
府中
西葛西
八王子
品川
《凡例》[発生集中密度]
: 10[TE/ha]未満
: 10~ 30[TE/ha]
: 30~ 50[TE/ha]
蒲田
: 50~100[TE/ha]
:100~150[TE/ha]
:150~200[TE/ha]
:200[TE/ha]以上
《凡例》[OD表]
:150トリップ以上
図 3-19 東京都における自転車発生集中密度と自転車の移動状況
※出発する移動と到着する移動間を結び図化
19
4 これまでの整備実績
4 これまでの整備実績
東京都はこれまで、車道を活用した「自転車レーン」や、既存の広い歩道で歩行
者と自転車の通行部分を植樹帯等により分離する「構造的分離」、カラー舗装によ
る「視覚的分離」や、スポーツ・レクリエーションに資する「自転車歩行者専用道
路」の自転車走行空間を整備してきた。
上野
西国分寺
三鷹
立川
新宿
渋谷
八王子
品川
:自転車レーン
:自転車歩行者道
:自転車歩行者専用道路
:国道整備完成箇所
図 4-1 整備完成区間(平成 23 年度末)
表 4-1 自転車走行空間の整備実績(平成 23 年度末)
名称
整備延長(km)
車道を活用した自転車レーンの整備
8.7km
広い歩道における自転車走行空間の整備
58.9km
水道敷や河川敷等を利用した自転車道の整備
44.4km
合計
112.0km
22
4.1 車道を活用した自転車レーンの整備
渋谷区幡ヶ谷地区の特例都道 431 号角筈和泉町線(旧玉川水道道路)や、平和橋通
りなどにおいて、車道を活用した自転車レーンを警視庁と連携して、8.7km(施設延
長)整備してきた。
図 4-2
車道を活用した自転車レーン
(左:旧玉川水道道路、右: 平和橋通り)
4.2 広い歩道における自転車走行空間の整備
自転車が安全で快適に走行できる利用環境を整備するため、既存の広い歩道で自転
車の歩道通行部分と歩行者の通行部分を物理的に分離する構造的分離や、カラー舗装
による視覚的分離により、東八道路や浅草通り等において 58.9km(施設延長)の自転
車走行空間を整備してきた。
図 4-3 広い歩道でのカラー舗装による視覚的分離
(左:東八道路(構造的分離)、右:浅草通り(視覚的分離))
23
4.3 水道敷や河川敷を利用した自転車歩行者専用道路の整備
スポーツ・レクリエーションを目的とした自転車歩行者専用道路としては、多摩の
自然を回遊する多摩湖自転車道や、隣接する県と連携してネットワークを形成する江
戸川自転車道、芝川自転車道を 44.4km 整備してきた。
図 4-4
スポーツ・レクリエーションを目的とした自転車歩行者専用道路
(左:江戸川自転車道、右:多摩湖自転車道)
24
5 整備目的
5 整備目的
歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して通行できる道路空間を創出する
ため、次の4つの視点から、自転車走行空間の整備を推進していく。
自 転 車 走 行 空 間 の 整 備
整 備 を 進 め る 4 つ の 視 点
1. 歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して通行
できる道路空間の創出
2. CO2 削減など環境への寄与
3. 自転車利用による健康増進への寄与
4. 自転車走行環境の利便性向上による観光振興への寄与
26
5.1 歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して通行できる道路空間
の創出
自転車走行空間の整備により、歩行者、自転車、自動車の通行部分を分離し、誰
もが安全で安心して通行できる道路空間を創出する。
平成 18 年7月の都政モニターアンケートによると、全体の7割近くの人が、歩行
中に自転車に接触・衝突された、あるいはされそうになった経験を持つ。また、自
転車利用に関する行政の取組に対する要望では、「自転車専用道路の整備」や「歩
道と車道の分離」が上位に挙げられている。これは、歩道上で歩行者と自転車が輻
輳している現状や自転車の走行空間が十分に整備されていないことが原因と考えら
れる。歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して利用できる道路空間の整備
が強く求められている。
0
10
20
30
43.1
自転車専用道路の整備
41.1
駐輪場の整備
ある
(3回以上)
36.8%
ない
33.1%
35.9
歩道と車道の分離
27.3
放置自転車の撤去
25.9
交通違反の取締りの強化
11.3
自転車の交通安全講習の実施
4.3
損害保険加入の啓発
ある(1回)
18.8%
ある(2回)
11.3%
図 5-1
歩行中、自転車に接触・衝突
0.4
図 5-2
自転車利用に関する行政の取り組みへの要望
出典:「都政モニターアンケート」
東京都生活文化スポーツ局
されたあるいはされそうになった経験
出典:「都政モニターアンケート」
東京都生活文化スポーツ局
6.8
その他
特にない
平成 18 年 7 月
図 5-3
自転車走行空間の整備が必要な箇所
27
50 [%]
40
平成 17 年 7 月
5.2 CO2 削減など環境への寄与
自転車走行空間の整備により、環境への負荷の少ない自転車の利用を促進し、
CO2 削減に寄与する。
CO2 削減をはじめとする温暖化対策は、地球規模で取り組むべき重要な課題である。
自転車は、近距離の移動に優れるとともに、排気ガスを出さない環境負荷の少な
い都市内の有効な交通手段の一つである。
環境にやさしく誰でも手軽に利用できる自転車の利用環境を整えることで、自転
車の利用を促進し、CO2 の削減に寄与していく。
徒歩
0
自転車
0
5
鉄道
19
乗合バス
45
自家用乗用車
0
図 5-4
10
20
30
40
50
(g-C/人キロ)
CO2 排出量の比較 1 人を 1km 運ぶのに排出される CO2
出典:「国土交通省ホームページ」
28
5.3 自転車利用による健康増進への寄与
自転車の利用環境を整備しスポーツやレクリエーション等を目的とした自転車の
利用を促すことで、人々の運動を通した健康増進に寄与していく。
自転車は、近年の健康志向の高まりとともにその利用が拡大している。さらに、都市
内の交通手段だけでなく、スポーツやレクリエーションを目的とした利用も多い。特に、
自転車に乗る目的として、「運動不足解消になり健康によい」という理由が上位に位置
づけられている。
例えば、20 歳の成人男性(体重 50.0kg)が自転車で1時間走行した場合、192kcal の
エネルギーを消費し、20 分間のジョギングと同程度の運動効果がある。
都民が自転車を気軽に利用しやすい環境を整備し、健康増進に寄与していく。
所要時間が短いまたは一番早く
目的地に行ける
71%
42%
運動不足解消になり健康によい
41%
交通費・ガソリン代が節約できるから
40%
移動中の立ち寄り等に便利
39%
目的地が自転車で行きやすい
21%
自転車に乗るのが好き
20%
クルマを持っていない
19%
移動経路が自転車で走りやすい
17%
気分転換・ストレス解消になる
図 5-6 スポーツやレクリエーションを
目的とした自転車利用(多摩湖自転車道)
10%
災害等で公共交通が止まっても移動できる
9%
エコ運動に取り組みたいから
目的地から帰る際、天気が悪いとき代わり
の交通手段が確保されている
体重
5%
50kg
60kg
30分
96kcal
110kcal
1時間
192kcal
219kcal
3時間
575kcal
658kcal
走行時間
6%
その他
0%
図 5-5
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
自転車を利用する理由
出典:国土技術政策総合研究所
平成 24 年 1 月実施の web アンケート結果より抽出
80%
※20 歳・男性が運動した場合
図 5-7
自転車利用時の消費カロリー
出典:「第 6 次改定日本人の栄養所要量について」 厚生労働省
29
5.4 自転車走行環境の利便性向上による観光振興への寄与
歴史、文化など多くの魅力ある観光資源や公園等を自転車走行空間で接続し、移
動を容易にすることで、観光振興にも寄与していく。
地域内に点在する観光スポットを自転車走行空間で接続し、近距離の移動に優れ
る自転車を活用した施設間の移動を容易にすることで、観光振興にも寄与していく。
国際通りや浅草通りでは、上野公園や浅草寺、東京スカイツリーなどの観光スポ
ットを結ぶ自転車走行空間の整備を進めている。この地域では、地元区がレンタサ
イクル事業を実施し、観光スポットを巡る交通手段を提供しており、自転車走行空
間を整備することにより、相乗効果が期待できる。
国際通り
隅
上野公園
浅草寺
田
川
東京
スカイツリー
浅草通り
図 5-8
凡例
両国
国技館
レンタサイクル
(兼 自転車駐車場)
自転車駐車場
上野・浅草エリアにおける自転車走行空間と観光スポット
上野動物園
図 5-9
浅草寺
上野・浅草エリアにおける観光スポット
30
東京スカイツリー
Fly UP