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from Paris
Selling Japan インバウンド動向 海 外 の 訪 日 旅 行 ト レ ン ド パリ発 フェラーリとルノー) について、通常財の価格に対する高級財 の最低価格の倍率平均値を算出すると22倍になるという。 この指数をホテルや食事に当てはめれば、ホテル1泊550ユ ーロ以上、食事(ワインなし)110ユーロ以上をデラックスと考 フランスにおける 富裕層の動向 えることができる。2人をベースとすれば部屋代と食事代で 770ユーロとなり、日本であれば1人1泊6万円の高級旅館に 相当する。 次いで、マーケット・セグメントについてだが、ひとくちに富 裕層と言っても、以下のようなセグメントが提示されている。 ●スーパーリッチ=①昔ながらの富豪・貴族(比較的高年 齢で、伝統的な西欧風の豪華さが好み)、②スポーツ、芸 JNTO(国際観光振興機構)パリ観光宣伝事務所長 平田徹郎 術、経済分野における若年スーパーリッチ層 ●“普通の”富裕層=①先進国の富裕層、②新興国の 富裕層(イメージや流行に敏感。好奇心と貪欲な購買欲) 、 ③「ワンショット」 (一生の思い出に豪華旅行を買う人々。価 格に敏感で、ツアーガイドやアドバイスを好む) 51 ○ 本物志向に応える工夫を そして、ラグジュアリー・マーケットを取り込むためには、以 下のような点に考慮した旅行商品の開発が必要である。 ①カスタマイズ (個人の好みに合わせること) =いろいろな 場面で「自分は大切な顧客として認識されている」 と感じさ せること。顧客の好みをデータベース化し、滞在後のフォロ 高級旅館は「和のホスピタリティ」の粋 ーアップからホテル客室の家具の配置換え、模様替えまで、 好みに合わせたサービスを提供すること。 ビジット・ジャパン・キャンペーン (VJC) の中でも 「和のホス ②自分だけの経験=多くの人々が知らない未踏の地、あ ピタリティ」 を盛り込んだ質の高い「日本ブランド」 を構築し、 るいは隠れた場所を訪ねること。都会であれば特別なイベ 外国の富裕層(ラグジュアリー・マーケット) を日本に旅行客 ントに招待されること。 として誘致する戦略が関心を集めている。富裕層の取り込 ③親しみやすさ=そこに住んでいるかのような、目立たな みは経済効果の面にとどまらず、観光デスティネーションとし い親しみやすい場所での宿泊は顕著な傾向。自炊もでき てのブランド価値の向上、国全体のサービス水準向上のた るレジデンス・タイプの部屋に自由に滞在しつつ、ホテルの めにも有効であり、各国とも注目している。本稿ではODIT サービスも受けられることも人気。家族向けには、ベビーシ (フランス設備省所管の観光に関するシンクタンク) の報告書 を参照しつつ、フランスの観光行政機関、観光業界の認識 を紹介する。 ッターの用意も必要。 ④本物との触れ合いやエコロジーへの配慮=人々や自 然との本物の触れ合いがあること。快適さと両立する範囲 で、環境の保護に注意が払われていること。 from Paris 90万人のマーケット規模 全世界の2006年の海外旅行者数は8億4000万人に達し ⑤癒し=スパでのエステは新たな文化となっており、癒し はラグジュアリーの基本要素。 ⑥プライバシーの保護、セキュリティ対策=スーパーリッチ た。このうちの2000万人が年間2万ユーロ以上をヴァカンス 層への対応として、エレベーターの専用利用等による、他の に費やし、世界のヴァカンス消費額の30%を占めている 顧客からの分離。ヘリコプターでの移動に対応した発着場。 (ODIT報告書) 。また、フランスの大手ツアーオペレーター さて最近、 『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かる Jet Toursは、最高級の旅を紹介するパンフレット 「Secret」の か』 という本が評判になっているが、ラグジュアリー・トラベル ターゲットを世帯課税所得8万ユーロ以上の富裕層(約90万 は高級フレンチのモデルに属する。客単価は高いが、その 人、全人口の1.5%に当たる) としており、顧客1人当たりの平 ぶん人材、施設における十分な初期投資が不可欠である。 均売上額は3100ユーロに達している。 JNTOパリ事務所では今年度、12月の「International 一方、価格面でラグジュアリー・マーケットを捉えるアプロ Luxury Travel Market」への出展を予定しており、こうした ーチもある (設備省観光局のEurostaf委託調査) 。自動車 活動を通じて「日本ブランド」の発信と、世界の富裕層の取 など高級財と通常財の区別が比較的明確な商品(たとえば り込みに努めていきたい。 66 T MAY. 21, 2007