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車両の関数の定義
第3回講義「離散構造1」 [1] 前々回の課題の解説 [2] 関数(1) ・定義域と値域 ・関数のグラフ ・関数の合成 関数(1) 私たちは sin x, cos x, ex などの実数関数(実関数)を知って いる。より一般に,関数はものごとの対応を表現する方法の 一種であり,「もの」に対して対応する「もの」を一意に求め る操作である。これは集合と並ぶ基本概念である。 例えば,車の「排気量」と「定価」の間や,学生の「身長」と 「体重」の間にも大まかな対応がある。しかし,それらの対 応は一意ではない。一方,「車」から「排気量」への対応や, 「学生」と「学籍番号」の対応は一意である。このような一意 の対応を関数(function)もしくは写像(mapping)という。 関数は定義域(domain)と値域(codomain)と呼ばれる2つの 集合の間に定義される。関数 f の定義域が集合Aであり値 域が集合Bであるとき,f はAの要素にBのある要素を一意 に対応させる。このような f はAからBへの関数と呼ばれる。 【定義3.1(関数)】 集合Aから集合Bへの関数 f はAの各要 素にBのある要素を一意に対応させ f:A⟶B と表される。関数 f によってa ∈ A が b ∈ B に対応するとき f:a⟼b と表す。 関数 f により a ∈ A が b ∈ B に対応することは b f(a) とも 表される。 f(a) を f による要素aの像(image)と呼ぶ。関数 f の定義域と値域はそれぞれ dom(f) と codom(f)と表される。 また,f の定義域 dom(f)の任意の部分集合A’ に対して f(A’) {b : ある a ∈ A’ に対し b f(a)} を f によるA’の像(image)と呼ぶ。 f による dom(f)の像 f(dom(f)) は関数 f の像(image)と呼ば れ,Im(f) とも表される。すなわち, Im(f) である。 {b : ある a ∈ dom(f) に対し b f(a)} dom(f) codom(f) f a b f(a) Im(f) 関数 f の定義域dom(f), 値域codom(f), 像Im(f) の関係 一般に,Im(f) ⊆ codom(f) であることに注意すること。 ex. 自然数nを自然数2n 1に対応させる自然数NからNへ の関数を f : N ⟶ Nとする。このとき f : n ⟼2n 1 と表すこ とができる。また,f(n) f(0) f(A’) 1, f(1) 3, f(2) 2n 1 と表すこともできる。 5 であり,A’ {0, 1, 2} とすると {1, 3, 5} である。f の像 Im(f) は奇数Oである。 ex. 実数上の加算 はR RからRへの2変数関数 : R R ⟶ Rであり : (x, y) ⟼ x y と表すことができる。最初の は関数を表す記号として,2 番目の は加算を表す演算子として用いられている。 関数 f の定義域と値域がともに集合Aであるとき,f はA上 の関数と呼ばれる。 Q1. 指数関数f(x) ex は実数R上の関数である。 f の像 Im(f) はどうなっているか。 Q2. f(x) x は実数R上の関数であるか否か。 否の場合,定義域 dom(f) はどのように定めたらよいか。 また,そのとき f の像 Im(f) はどうなるか。 関数の同一性: 2つの関数 f と g があったとき,f と g が等しいと言われる のはどのようなときであろうか。 【定義3.2(関数の同一性)】 任意の関数 f と g は定義域と 値域がそれぞれ等しく,かつ任意の要素の f による像と g による像が等しいとき,等しい(equal)と呼ばれ f g と表す。 Q3. 次の2つの自然数N上の関数 f と g は等しいか否か。 f(i) i(i 2) (mod 2), g(i) i2 (mod 2) ただし,自然数 i と正の自然数 n に対し,i (mod n)は i を n で割った余りを表す。 関数のグラフ: 定義域Aから値域Bへの関数 f は,f のグラフ(graph)と呼ば れる,Aの要素とBの要素の対からなる集合 graph(f) で表 現できる。 【定義3.3(関数のグラフ)】 任意の関数 f : A ⟶ B に対し, f のグラフ graph(f) を graph(f) とする。 {(a, b) : a ∈ A, b ∈ B, b f(a)} ex. A {1, 2}, B {2, 3} とし,AからBへの関数 f を f : i ⟼i 1 とする。このとき graph(f) {(1, 2), (2, 3)} である。 Q4. 定義域 A {0, 1, 2, 3, 4} から値域Zへの関数 f を f : i ⟼ i2 1 とする。 関数 f のグラフ graph(f) の外延的定義を示しなさい。 グラフによる関数の再現: 関数 f : A ⟶ B のグラフ graph(f) は,A B の部分集合であ るが,次の2つの性質を持つ。 任意の a ∈ A に対し,(a, b) ∈ graph(f)となる b ∈ B が存 在する。 任意の a ∈ A と任意の (a, b1), (a, b2) ∈ graph(f)に対し, b1 b2 が成立する。 そこで,関数 g: A⟶B を,g(a) b,ただし,(a, b) ∈ graph(f) となるように定める。このとき,f g となり,graph(f)から f が再現できることがわかる。 関数による集合の表現: 集合に対し,要素がその集合に含まれるか否かを表現す る特性関数と呼ばれる関数X(a)を定義する。すなわち,集 合Aは A {a : XA(a) 1}となり,関数XA(a)で表現できる。 【定義3.4(特性関数)】 任意の集合Aの特性関数XA(a)を XA(a) 1 (a ∈ A の場合) 0 (a ∉ A, a ∈ U の場合) とする。 Q5. 普遍集合をU {0, 1, 2, 3}とし,A {1, 2} とする。 このとき,集合Aの特性関数XA(a)を求めなさい。 関数の合成: 集合に対する操作で新たな集合が生成できたように,関 数に対する操作で新たな関数を生成することができる。こ こでは,関数の合成(composition)を定義する。 【定義3.5(関数の合成)】 任意の関数 f : A ⟶ B と任意の 関数 g : B ⟶ C に対し,a ∈ A を g(f(a)) ∈ C に対応させる関 数を f と g の合成関数とする。g ∘ f : A ⟶ C であり, g ∘ f : a ⟼ g(f(a))である。 Q6. 次の自然数N上の関数 f と g で g ∘ f と f ∘ g を求めよ。 f : n ⟼ 2n 1, g : n ⟼ 2n dom(f) codom(f) = dom(g) codom(g) dom(g ∘ f) codom(g ∘ f) f g 関数 f と関数 g の合成関数 g ∘ f g ∘ f 関数 f と関数 g に対して, g ∘ f と f ∘ gは一般には異なる。 さらに, g ∘ fが関数であっても f ∘ g は関数と定義されない かもしれない。すなわち,関数の合成では交換律が成り立 たない。しかし,関数の合成は結合律を満たす操作である。 【定理3.1(合成関数の結合律)】 任意の関数 f, g, hに対し,合成関数 g ∘ f および h ∘ g が 定義されるとき h ∘ (g ∘ f) (h ∘ g) ∘ f である。したがって()をはずして表されることが多く, h ∘ g ∘ f : a ⟼ h(g(f(a))) である。 Q7. 次の自然数N上の関数 f, g, h が f : n ⟼ 2n 1, g : n ⟼ 3n, h: n⟼ n 1 で与えられるとき,関数の合成 h ∘g ∘ f および f ∘g ∘ h を 求めよ。 第3回講義課題 【復習課題】 問題1.定義域が実数R,値域が整数Zであるような関数の定義を 3種類考えてみなさい。 問題2.第3回講義ノートにあるQ1~Q7のすべてに答えなさい。 第3回講義課題(続き) 【予習課題】 問題1.定理4.1(単射の保存)を証明せよ。 (教科書 p.61の3.14(a)で「1対1」を「単射」と読み替えること) 問題2.定理4.6(全射の保存)を証明せよ。 (教科書 p.61の3.14(b)で「上への」を「全射」と読み替えること) 問題3.A {a, b} から B {1, 2, 3} へのすべての関数からなる 集合 BA を求めなさい。