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幼子といっしょのタウナイ 写真1 トラクターのキャビンに幼子を乗せ春のタウナイ 写真2 サイレンを鳴らし、走り抜ける消防車 1 あぜ道歩きを始めた3月初旬の日曜日。幼子が若いお父さんとトラクターに乗っている。 びっくり。 そのような光景は日常茶飯事、驚くのは認識不足か。しかし、次の2話が脳裏をよぎる。 一つは、牧草畑の作業中にトラクターで吾子を轢死させた話。二つは、水田地帯の高齢女 性農業者が語る、次のような若い頃の子育て。 「まー、なー、親(義祖母・義母)がみてて、自分じゃ、仕事べしてたから、乳飲ませ っちゅときと夜ぐらいだいな、自分の子みるのは」。 「いっとー上の子とはね、おばさん(義祖母)が昼間はみてんの」、「んで、こんだー、 二人目なったら、その中のおばさん(義母)が、こんだみるようなった。だから、稲 刈なんちっとさ、ノロシ(稲架)の下へ、ほら、すく(敷く)もん持ってって、寝れ ば、そこへ寝せといて、いくらかノロシカケだの、上のおばさんもやったんだいね」。 <授乳には田や畑に連れて来るんですか>(筆者の質問) 「そう、そう。でー、あまり小さいときは、ほら、あのー、ウチ(家)へ、ほ、乳飲ま せ来るんだ」。 (田植や稲刈など多忙時は、鍵をかけてない玄関脇の部屋に幼子を独りで寝かせている ので)「“赤ん坊ー、盗まれちゃうぞ”なんて言われてさ」。 すなわち、昔も多忙時は幼子を田や畑に連れて行ったり、独りで寝かせたり、いつの世 も臨機応変に子育てしている。 そのTPOを考慮する子育ての一つに当該事例がある。キャビンをつけ、幼子にも快適 な環境を設えるトラクター性能が臨機応変を可能とした。農業に必須の農業機械発展が、 子育てを助けることもある。 たまたま、消防車がサイレンを鳴らし、脇を走り抜けて行った。幼子の記憶に末永く残 るであろう。 <写真と本文は『技術と普及』2008 年4月号にも掲載> <撮影場所>栃木県下野市 <撮影年月日>2008 年 3 月 9 日 <撮影者>有馬洋太郎 2