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「RFIDの普及に伴う経済・産業・社会への影響」
RFIDの普及に伴う経済・産業・社会 への影響 日本政策投資銀行 調査部次長 鍋山 徹 2004年7月9日 RFIDの普及に伴う経済・産業・社会への影響 1.技術と社会の関係 2.RFIDがもたらすインパクト 3.海外におけるRFIDを取り巻く状況 1.技術と社会の関係 IT技術- RFID -は GPT(General Purpose Technology) 1775 蒸 気 船 ・ 蒸 気 機 関 車 鉄 道 ・ 蒸 気 船 の 実 用 化 経 済 的 循 環 技 術 的 循 環 第1次産業革命 1875 大 西 洋 定 期 船 ・ 大 陸 横 断 鉄 道 ・ 製 綱 法 1900 化 学 製 品 ・ 電 気 機 器 ・ 内 燃 機 関 1925 大 衆 用 自 動 車 ・ 飛 行 機 ・ A M ラ ジ オ 1950 テ レ ビ ・ ラ ジ オ ・ 冷 蔵 庫 ・ 映 画 産 業 第2次産業革命 (注) :突破局面、 :成熟局面、 :開発段階から実用段階への伝播 (資料)中央公論社 村上泰亮「反古典の政治経済学・下−二十一世紀への序説」に加筆 1975 耐 久 消 費 財 の 大 衆 化 ・ 世 界 的 航 空 網 2000 半 半 導 導 体 体 ・ バ イ オ ・ 新 素 材 2025 情 報 メ デ ィ 綿 紡 績 ・ 綿 織 機 1850 1825 1800 ア の 大 衆 化 2050 分 分 子 子 素 素 子 子 ・ 環 境 PCや通信と融合して 大衆化する点が「鍵」 第3次産業革命 実 用 段 階 研 究 段 階 IT技術- RFID -は GPT(General Purpose Technology) 半導体の技術進歩(ミクロ化)。今後25年間でIT の大衆化が起きる。その黎明期 企業は生産(研究所)部門で投資回収する時代 から、流通部門で投資回収する時代へ 対策はソフト化=SCM→(例)ITS。自動車業界 のテレマティックス。ITを活用したサービス分野 の拡大(顧客囲込み) →アフターサービスの重点化等の顧客情報管理 に威力を発揮 技術と社会の関係 ミクロ化の次は、「かたい技術から柔らかい技術 へ」(2025∼50年) 改善されない住空間 溢れる電化製品 技術と社会の関係 産業 社会 過去 技 術 物質的な豊かさ ソフト化 グローバル化 機能性 半導体 情報(IT) 現在 未来 サービス 高度化・ミクロ化 軽量化 小型化 ex. 高機能材料 バイオテクノロジー ネット化 RFID 環 =「楽」になる (衣 食 住) 絶対的ニーズ 境 BLUR BLURの法則 の法則 利便性 快適性 安全性 社会性 (環 境) 相対的ニーズ ライフスタイルの変化 精神的な豊かさ (資料)日本政策投資銀行『DBJournal』No.1,2000年1月 真・本物志向 善・健康志向 美・差別化志向 (自己実現志 向) =「楽」しい ( 見 聞 録) 高度消費社会の未来 明確な進路を見失った状態(景気はまだら模様) 供給(企業)側⇒需要の多様化、細分化、短期化、 流動化に対応した、柔軟で機動性の高いマーケ ティング、商品開発、多品種少量生産可能な生 産組織 需要(消費者)側⇒機能性に加えて、デザイン性、 ライフスタイル提案、自己表現性、ブランド性など、 多元的な役割を商品、サービスに求める パイが縮小する社会(勝者と敗者が背中合わせ) ITと産業社会の関係 産業面への影響⇒①ビジネスのあり方、②企業 構造、③雇用形態、④労働市場など相対的な変 革と適応 社会面への影響⇒①社会生活、②対人関係の 変貌 技術革新⇒バイオ、ロボット、ナノ、宇宙・大深度 地下・海洋などの産業分野は、制御、測定、シ ミュレーション、分析、モデル化などでITを基礎と して成り立つ 2.RFIDがもたらすインパクト IT革命がもたらすインパクト ITが具体的にどのような製品、サービスとして、 いかなる形で人々に受容されるかは、 ①産業社会の成熟度合い、 ②人口構成をはじめとする社会構造のあり方、 ③変化の方向性、 ④文化(どのような情報、コミュニケーションに価 値を置くか) によって大きく異なる。 先駆的、先端的IT社会⇒米国、韓国、北欧(ス ウェーデン、フィンランド) (資料)木村忠正「ネットワーク・リアリティ」岩波書店 2004年3月 IT革命がもたらすインパクト 「情報ネットワーク社会」=「電車で小さい液晶画 面を見ながら親指を忙しく操作する社会」「カメラ 付き携帯電話で、スナップショットや短いビデオク リップを互いに送りあう社会」「不正コピーした音 楽・映像をブロードバンドで共有しあう社会」にす ぎないのではないか? ただし、砂上の楼閣ではない。日常社会や産業 経済活動の不可欠な要素→電子メール、携帯メ ール、写真メール、ウェブホームページ、オンライ ンショッピング等 (資料)木村忠正「ネットワーク・リアリティ」岩波書店 2004年3月 ITに期待された役割 ①サービス産業の効率化、生産性の向上 ②情報ネットワークを基盤とした新たな情報 ③知識産業の発展、等により、一定の量産効果 に基づいて、垂直階層化よりはむしろ水平文化 しながら、新たな利便性、豊かさを広くもたらす 現時点では、携帯電話、モバイルインターネット は企業の囲い込み先行によるもの。一部に、交 通情報、飲食情報、小売店からのお知らせという 情報が消費者に伝わっているに過ぎない (資料)木村忠正「ネットワーク・リアリティ」岩波書店 2004年3月 RFIDがもたらすインパクト −航空、貨物、アパレル− 利便性 ・顧客サービス(「手ぶら旅行」、荷物チェック) ・ロストバゲージ 生産性、コスト削減 ・貨物管理 操作の効率化 ・ミスへの対応、作業時間の短縮(一括読みとり) ・耐久性 セキュリティ(情報読み書き機能の活用) ・個人認証でのテロリスト密入出国の食い止め (資料) 刈屋大輔「第3部バブルに釘刺す現場からの報告」 MAY 2004 LOGI-BIZ RFIDがもたらすインパクト −図 RFIDとネットワークシステム− 大 (広域) セキュリティ、ヘルスケア (GPSなどを利用した GPSなどを利用した 迷子捜索など) セキュリティ (GPSなどを利用した GPSなどを利用した 盗難品追跡など) 空 トレーサビリティ (バーコード、 RFID 、GPSを GPSを 利用した商品移動履歴管理) 間 イベントサービス ( RFID 、GPSなどを利用した GPSなどを利用した 情報提供など) 生態調査、ペット管理など (バーコード、RFID 、GPSを (バーコード、RFID、 GPSを 利用した動物の調査・管理) オフィスコラボレーション (バーコード、 RFID 、などを 利用した資産管理、コンテンツ 共有など) 小 (ローカル) セキュリティ、ヘルスケア (カメラ、赤外線センサーなどで オフィス・宅内のモニター、 入出管理) 物 動物 人 (資料) 藤吉栄二 「ユビキタスネットワークとセンサーの新しい可能性」 (一部修正) 知的資産創造 2004年7月号 3.海外におけるRFIDを取り巻く状況 ドイツ Metro Group 02年 4月 Future Store Initiativeに着手 03年 4月 未来型店舗実現プロジェクトの開始 舗) ) (RFID、セルフチェックアウト、電子棚ラベルなど(Extraの未来型店 目標① 顧客の買い物体験を改善して売上げを向上させる。 目標② SCMでプロセス改善と欠品の少ないオペレーションの実現。 →ケース、パレット単位のICタグ張り付け →店舗内:一部の商品(米ジレット社カミソリ刃、米P&G社シャンプー、米 クラフトフーズ社チーズ、CD、DVD、ビデオテープ、オーディオ テープなどマルチメディア商品)のICタグ張り付け ∼04年11月 主要取引先100社に、全品のケース、 パレットにICタグ添付要請 →商品購入後もタグ情報が生きていることで懸念されるプライバシー問題に 対応するため、顧客が店舗を出る前に、ICタグを無効にするキオスクの 設置を検討 (資料)青野秀夫、尾崎伸作「Metro GroupにおけるRFID実験の概要」RFIDテクノロジ 2004/4 米国 Wal-Mart Stores 03年 6月 RFID導入明言 03年11月 「ガイドラインと要求条件」を配布 04年中 予 一部の倉庫と店舗でテスト予定 05年 1月予 取引先上位100社にICタグ添付要請 06年末 予 その対象を全取引先に拡大 一連の取組みに30億ドル投資し、80億ドルの効果 ①在庫管理の改善、②在庫の可視化、③運用の 改善、④商品紛失への対応、⑤資産の追跡 窃盗:売上2087億ドル×1.7%=35億ドルの損害 欠品: −〃− ×0.5%=10億ドルの機会損失 (資料) 大矢昌浩、岡山宏之他「ICタグは使えない」 MAY 2004 LOGI-BIZ 英国 Tesco 03年 9月 第1フェーズの実証実験終了 03年11月 03年末∼ 無線タグの導入計画を公表 第2フェーズの実証実験開始 (最も注目しているのは物品の紛失) (周波数帯(915MHz→ 868/869MHz)の検証/納入業者との連携) →日用品大手の米Kimberly-Clark社、米Procter & Gamble社,英 Unilever社,米Gillette社,飲料大手の英Diageo社の納入業者5社 ∼04年末 ICタグ導入拠点の段階的拡大 (最終的に30地点の物流センターと900店以上の店舗にシステムを導入) 06年 9月∼ 取引先上位100社にICタグ添付要請 (ケースレベル) (資料)高橋史忠「本格化する欧州流通大手の無線タグ実証実験,英Tesco社は2004年末までに約1000拠点 に拡大」日経エレクトロニクス)03年12月9日 (RFIDテクノロジホームページ(http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NE/NEWS/20031205/2/) 欧米流通大手によるRFID実用化計画 ケース / パレットのレベルのICタグ導入 ・ドイツ ・米国 ・英国 Metro Group 2,370 Wal-Mart Stores 5,064 Tesco 2,318 04年11月 05年 1月 06年 9月 商品単品レベルのICタグ導入 ・プライバシー情報の漏洩問題 (資料) http://www.boycottgillette.com /pressrelease12-22.html ・米消費者権利団体が反発:「CASPIAN」ホームページ ・BOYCOTT GILLETTE:I would rather grow a beard. ・BOYCOTT BENETON:I’d rather go naked. (資料) 大矢昌浩、岡山宏之他「ICタグは使えない」 MAY 2004 LOGI-BIZ 米国 DoD(米国防総省) 03年10月 RFID導入計画発表 (米軍に物資を納入する業者は、個品単位、最低でもパレット単位でICタグ を添付。土砂や液体のようなバルク品を除くすべての物資が対象) 04年 2月 04年 05年 無線タグ・サミットを開催して、産業界 の意見などを吸い上げる 6月 無線タグ導入に関する方針を決定 1月 予 無線タグを付けた物資のみ受付 RFID導入のための要件 コスト:ICタグ@1∼10円。商品の表面印刷の段 階で、直接チップを刷り込むタイプのタグ開発 性能面:読み取り精度、一括読み取り、被覆性、 通信距離 セキュリティ:プライバシー情報の漏洩 盗難による在庫紛失= Shrinkage →米国では毎年1.8%前後発生 →商品の流れの「可視化(Visibility)」 Shrinkage 図 米国の流通業の売上金額に占めるシュリンケージの割合 2 .0 0 1 .9 5 1 .9 5 1 .9 1 1 .9 0 シュリンケージの割合 ︵%︶ 1 .8 8 1 .8 7 1 .8 5 1 .8 0 1 .8 3 1 .8 0 1 .7 9 1 .7 7 1 .7 5 1 .7 2 1 .7 0 1 .6 9 1 .7 0 1 .6 5 1 .6 0 1 .5 5 1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 1 (資料)フロリダ大学「2002 National Retail Security Survey」May 2004 LOGI-BIZ (15P) 2 0 0 2 Shrinkage 取引業者の ごまかし 5% 管理および 書類上のミス 15% 従業員による窃盗 48% 万引き 32% (資料)フロリダ大学「2002 National Retail Security Survey」May 2004 LOGI-BIZ (15P) さいごに Key Word 自立性(ビジョン) 社会性(コモンズ) 関係性(コミュニケーション) 柔軟性(フレキシビリティ) 「ユビキタス」の意味するもの 『「ユビキタス」と言うと、「いつでも」「どこでも」とつ いIT産業側は考えてしまいそうですが、もっとも重 要なのは、「□□でも」という観点だと思います。』 『ブロードバンド社会のコンテンツを二つに分けるこ とが大事だと思います。 それは、「□□□□のためのコンテンツ」と、「□□ のためのコンテンツ」です。』 C&C振興財団 佐々木元はじめ理事長 (資料)木村忠正「ネットワーク・リアリティ」岩波書店 2004年3月