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高貴な血統を持つ「バタバタ」サウンド

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高貴な血統を持つ「バタバタ」サウンド
高 貴 な 血 統 を 持 つ「 バタバタ」サ ウンド
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以前、ベガスの有名なクラシックカーコレク
る。マネージャー氏にしても「ア
ア・カブリオレだけの世界に浸れ
ションホールのマネージャーと会った際、
「コレク
バルト1台で、僕のクルマが1ダ
ること請け合いだ。つまり、屋根のな
ションの中で、一番好きなクルマはどれ?」
とう
ース養える」
と自慢気だったこと
いぶん低められた重心と、RRというパッ
っかり尋ねてしまった。彼は間髪いれず「アバル
を思い出した。
ト」だと答え、その後、延々と礼賛の理由を聞
かされ辟易した記憶がある。
その彼に、普段乗っているクルマについて尋
ケージ、そしてカルマン特有のドライビングポ
もともと、カルマン・ギアは
ジションが独特のフィーリングを生み出すので
ビートルの最上級カブリオレ
ある。今ほど安全性にナーバスでない時代のク
「ヘブ・ミューラー」に代わるラ
ルマ、とくにオープンカーは、生身をさらけ出す
ねてみたら「カルマン・ギア」
と意外な答えが返
クシュリーモデルとして開発され、スタイリング
感覚が気持ちいいものだが、このカルマン・ギ
ってきて驚いた。
「コレクションのクルマはたいて
をイタリアのスタジオ「ギア」が担い、ボディの
ア・カブリオレも同様だ。
いが、ハイパワーだったり、ワンオフだったり、な
製造・架装をドイツのカロッセリー「カルマン」が
エンジンパワーは目覚しいものとは言いがた
にかしらスペシャルだ。それも悪くないけど、毎
行なうという贅を尽くした出自を誇る。が、70年
いが、現代の流れに遅れをとるような場面は多
日乗ったり、触ったりするにはカルマン・ギアみ
代のアメリカ西海岸でブームに火が点いたこと
くないだろう。
たいな方が気楽(イージー)
なんだよね」
から、日本ではポパイ世代から絶大な支持を得
また、試乗車は1971年式だが、前述のように
カルマン・ギアは、1955年にデビューを果
ることになった。中でもカブリオレは、サーファ
パーツの心配は無用だし、実用車ベースなので
たし、その後、何回かの改良が加えられ、74
ー文化のアイコンでもあり、ビートル・カブリオレ
深刻なトラブルも少ないと思われる。同年代の
年の生産終了までに40万台がロールアウトし
と並んで当時のステイタスシンボルだったとい
クルマに比べれば「破格の維持費」というのも
たと記録されている。ご存知のとおり、シャシ
っても過言ではない。
大いに頷ける。
ー、エンジンなどビートルから多数のパーツが
流用されているため、世界中どこでも修理に
困ることはない。
ビートルとも356とも違う
さて、
久しぶりに対面したカルマン・ギアは、
それゆえ、カルマン・ギアの愛好家は皆「クラ
ショップ の手によって車高が下げられ、ポ ル
シックカーとしては破格の維持費」
と口をそろえ
シェタイプ のアロイホイール やクロームも鮮
タマ数はそれほど多くはないようだが、専門店
を覗けばまだまだ上玉にめぐり合えると言う。
手に入れた後は、カスタマイズしたりレストアし
てピカピカにしたりと、とても楽しめる1台だ。
Text:石橋幸樹/Photo:丸山博人
やかなクロスマフラーなどが 装
備された、さながら正統的なCal
ルックだ。
ボリュームこそ穏やかだが、テー
ルエンドから吐き出されるエグゾー
ストは紛れもなくVW一族の「バタ
バタ」サウンド。懐かしさすら感じ
させるこの音だけで、和めてしまう
といったらオーバーだろうか。
オルガンタイプのペダルはどれ
も固陋な踏み応えながら、エボナ
イト製の細いステアリングリムに
手をはわせると、当時の高級車だ
ったことが思い出される。ビニール
製のシートも心なしか、ビートルの
それよりも高級感すら漂っている。
走り出せば、ビートルとも、ポル
シェ356とも違ったカルマン・ギ
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カルマン・ギアのデビューは1955年。カブリオレはその2年後に
登場した。ともに魅力的なルックスで人気を博し74年まで生産
されていたが、さすがにビートルやタイプⅡ(バス)に比べると、
現在の中古車流通は少ない。価格はVWフラット4搭載車の掟
にならい、古い年式ほど高価。ディテールが微妙に異なる50年
代のものは、状態がいいと300万円を超えるケースもある。逆
に最終期付近のクルマは、大型化されたテールレンズや角張っ
たプレスバンパーがクラシカル感を損ねるためか安価で、100
万円でも存分に走れる個体が手に入るようだ。なお、タイプⅢ
ベースのカルマン・ギアも存在したが、直線的なボディが当時
から人気薄で、現在はほぼ絶滅状態となっている。
きょとんとした表情に得も言
われぬ親しみを感じさせるカ
ルマン・ギア。艶やかなブラッ
クボディはニューペイント。フ
ラットレッドのインテリアとキ
ャンバストップも張り替え済
みだ。試乗車は1971年式だ
がディテールは60年代半ば風
にモディファイされている。
“ガ
スバーナー”ホイール、カドロ
ンツインキャブ、クイックシフ
ターなども装備して、価格は
198万円。
車両協力=フレックスオート世
田谷店 Tel. 03-3703-2419
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