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北海道庁・北海道開発局主催 第2回「意見を聞く会」議事録

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北海道庁・北海道開発局主催 第2回「意見を聞く会」議事録
北 海 道 庁 ・北 海 道 開 発 局 「第 2回 W TO農業交渉に関する意見を聞く会 」の 概 要
日
時:平成12年11月2日(木)14:00∼16:40
場
所:札幌サンプラザ2F高砂の間
政府側出席者:三野北海道開発局次長、石田北海道農政部農業企画室長、柄澤国際貿易機
関室長
参
加
者:地方自治体、農業団体、消費者団体等 142名
(農 業 者 ) 今回の「農業提案の基本方向について」の中にあるセーフガードの件に関して、
農産物は非常に季節性があり腐敗しやすく、短期間に生産者にものすごく大きな打撃
を与えやすいという説明があります。まさにその通りだと思います。しかし、現状の
セーフガードの運用に関しては、今の国内の運用規定だとか、そういった部分では非
常に発動される条件が整わないということです。私たち、特に北海道においては野菜
も主力品目がたくさんあり、長ねぎだとか、玉ねぎだとか、そういった部分で非常に
大きな影響が出ていますので、是非とも国内法でも改善できるところは早急に改善し
てやっていただきたいと思います。
また、ついこの間、アメリカでは、同じようにやはり輸入農産物に困っているとい
うことで、特にオレンジジュースなどの加工品まで含めてセーフガードが発動できる
ような体制を議会で取るというようなことが新聞に出ておりました。諸外国でもそう
いったふうに対策を採っているんですから是非とも日本でも出来るようにお願いした
いと思います。
(農 林 水 産 省 ) ご意見について、さっき説明を端折った面があるので、ちょっとご説明さ
せていただきたいと思います。
セーフガードの問題は、正確に言うと3つ段階があると思います。一つは、提案の
中にどういうことを盛り込んでいくかどうかということです。「提案する」というこ
とは、国際ルールそのものに問題があるのではないか、各国に適用されている一般セ
ーフガードそれ自体に問題があるのではないか、という問題意識です。
先ほど申し上げたように、農産物と鉱工業品を一緒くたにしているというところに
問題があって、季節性があり、腐敗しやすいといった性格を持っている農産物につい
ては制度を若干仕分けて作ってもらわないと上手くいかないのではないか、こういう
国際ルールの問題が提案に盛り込まれているというのが1番目の問題だと思います。
2番目の問題は、今、まさにご指摘頂いたように国内の制度が悪いのではないか、
一般セーフガードという国際ルールはあるものの、国内の制度が、例えば調査に時間
がかかるようになっているとか、各省の間の手続きが煩雑だといった問題があるので
はないか、ということが2番目の問題であると思います。
3番目の問題としては、協定もあり、国際ルールもあり、国内の制度もあることを
前提にして、それをもっと使えばいいじゃないか、ということ。現在は調査すらして
いないと申し上げましたけれども、今の国内制度であっても、もっと、制度は制度と
してもっと使えばいいのではないか、運用の面で実際にちゃんと使ってないじゃない
かというような問題意識が3番目としてあると思います。
私どもとしては3つともやらなければならない問題だと思っています。1つ目の問
題は提案に今盛り込もうということです。それから2つ目の国内制度の問題は確かに
制度にどこか問題があるかもしれません。従いまして、現在、私どもは制度を所管し
- 1 -
ている大蔵省、通産省と話し合いを始めています。どこに問題があるのか、あるいは
問題はないのか、そこはまだ判然としないところがありまして、関係省庁の間で問題
点の洗い出しのようなことをやっています。これで、もし問題がどこかにあれば、直
していこうじゃないか。法律改正になるのか、あるいは内規のようなものを直せばい
いのか、まだ、そこはちょっと分かりませんけれども、それをとにかく洗い出して改
善すべき所は改善する、これは当たり前の事だと思います。
それから3点目も当たり前の事で、今の制度は制度としても、どんどん適用する努
力が足りないんじゃないかというご指摘がありますので、これも遅ればせながらとい
いますか、今、突貫工事で全国の輸入の実態、あるいは価格の実態について大至急調
査をかけております。もし、その結果、今の制度であってもできそうだということに
なればやっていきたい。これはもう、大蔵省も通産省も大変協力的で、一緒に汗を流
して、やれるものをやっていこうという感じになっています。その結果どうなるか、
勿論現時点では分からない訳ですが、3つとも取り組んでいるということを申し上げ
たい。
それともう一つは、「輸入が増えているから何とかしてくれ」というお気持ちは分
かるわけですけれども、一般セーフガードというのは輸入が増えたことによって、国
内の産業に損害が生じているということをちゃんと証拠をもって立証しなければなら
ないわけです。相手の国に対して輸入を止めたり関税を上げたりするというのは大変
なことですから、そういう状態になっているということをちゃんと証拠をもって立証
するということが必要なんですが、非常に難しいということは、ご理解頂きたいと思
います。と言いますのは、価格は下がっているという事実を見つけるのは簡単なので
すけども、それが輸入によるものなのか、あるいは国内の需給が悪いのか、消費が悪
いのか、それは分からないんです。経済現象ですから。勿論、そのお立場にいる方は、
「これは輸入が原因に決まっている」とおっしゃるわけですけれど、本当にそうだと
いう証拠を見つけるということは容易な作業ではありません。ですから、そういった
地道な調査が必要になるわけですが、そういったことを私どもは今、一生懸命やって
いますので、その結果、明らかに輸入によって何か損害が生じているということがち
ゃんと分かれば、制度があるわけですから、使うべきだ、というのは当然であり、現
在色々と取り組んでいるところですので、ご理解頂きたいと思います。
(農 民 団 体 ) 基本的な交渉のスタンスということでは、主にこの5点、特にその中の農業
の機能の評価、あるいは安全保障の観点、このことが各国共通認識になれるのかとい
うところが、私は今回の交渉の中でポイントだと思っています。それで、農水省も努
力されて、いわゆる何十カ国の機能フレンズという枠組みも出来てきている。
しかし、私も実際にEUなどへ行ってみて、やはり、日本の貿易に対する不満、工
業品の売りつけがひどいとか、バランスの問題を非常に向こうから指摘されるわけで
す。我々が行っても、そういうことを頭から言われる。ですから、この点は非常に大
変な事だと思っています。
せっかく多面的機能等の認識を深める枠組みが出来たのですから、国内的にもしっ
かり位置づけしていく必要があると思います。その位置づけの最大のポイントは、現
在所得政策をどう組むかという論点がちょっと出てきているようですけれども、具体
的に先程の世論調査にあるような、農業への評価というものを国民は支持している訳
で、その支持しているということを国内の農業政策の中にどうやって位置づけていく
かを明確に示すということであり、そうしないと私はやはり国民に具体的に分からな
いと思うんです。
- 2 -
ですから、簡単に言えば価格政策から所得政策に移っていくという、こういうプロ
セスが一つはあると思うんですが、その所得政策をどのように組むのかを、やはり、
もうすでに明示すべき時です。そのことによって、交渉を続けていく中に、足下がし
っかりしているというその前提ができる訳ですから、これを一つ、提言というか早急
な対策として求めておきます。
もう一つ、交渉の過程の中で、やはり日本の場合、貿易国という観点で、どうして
も農業の部分というのは今日まで裾へ寄せられているというか、やはり、通産にして
も外務にしても、私たちから見ると農業問題というものをちょっと横に置かれて来て
いるんじゃないかと思います。そういう観点で、基本法が自給率の向上、あるいは生
産の増大、農村の振興というものを位置づけているわけですから、例えば今のセーフ
ガードの問題、それからMA米の問題、アクセスの問題、これらについても今のWT
Oルールの中では、何らかの代償だとか措置というものも当然検討されなければなら
ないのですが、基本法が示したような政策の仕組み、組立に基づいて、関係者の意思
疎通がしっかり出来ていないと、外国に足下を見られて、押し込まれてしまうのでは
ないか、という懸念を持っています。 今年末までに、わが国の提案を提出するとい
うことでありますから、そういう部分での国内での合意、詰め、それが私は最低限必
要だ、と思っています。総論的な部分ですが、その点に全力を尽くして頂きたいと思
います。
(農 林 水 産 省 ) 最初におっしゃられた、この基本的方向というものが各国、それから日本
の国内の両方で、十分理解されることが必要であるというご指摘は本当にその通りだ
と思います。私ども、ご紹介頂いたように春から途上国30カ国以上になりますが、
手分けをして行脚し、私どもの考えを言い込んでいます。また、多面的機能フレンズ
としてEU、スイス、ノルウェー、韓国、モーリシャスといった国と連携を強化して
います。
そういった努力を国際的にしていますし、国内的にも縷々申し上げたように本日の
ような機会を出来るだけ設けて、私ども自身が出張して広く我々の考えを包み隠さず
申し上げ、その上でご意見を頂き、それを反映して考えたものをまた、こうやってお
示しするということを、これは正直言って大変ですが、絶対やらなければいけない。
そういうことをやって初めて本当の意味で国民の総意を反映したような農業提案にな
ると信じていますので、私どもも不断に取り組んでいます。
また、貿易立国で農業がちょっと端っこじゃないかというようなご指摘がありまし
た。過去にどういう経緯があったか、その評価は色々あると思いますが、少なくとも
今は、私どもが考えていることというのは全く、本当に外務省にしても通産省にして
も同じです。これは私ども、今回のこういった一連の取り組みの中で、例えば経団連
の幹部の方にもご説明したり、色々な経済界の方にも勿論ご相談していますが、そう
いった方からも、「こういった考え方がおかしい」というのは一回も聞いたことがな
いわけです。何か農業が他のものの足を引っ張ってるとか、農業だけが変なことを言
っているとか、そういう見方というのは、過去はあったかもしれませんけれど、今は
全くそういうことはありません。ですから、先ほどのセーフガードの問題にしまして
も何にしても、今、非常に良好に各省足並みを揃えて農業の問題に取り組んでいます
ので、そこは農業だけが端っこでどうのこうのと言うことは、今は少なくとも絶対な
いと思っていますので、その点はご安心頂きたいと思います。
それから、途中でおっしゃられた国内の農業政策に具体的にどう位置づけていくか。
価格政策から所得政策という改革が明確に示され、位置づけられるべきだというご指
- 3 -
摘は全くごもっともなお話しです。昨年の新農業基本法が出来て以来、色々な政策が
一つ一つ見直されてきていますが、やはり、今、一番重要な問題、次のステップとし
て一番考えなければいけないことは、正におっしゃられたように、所得政策というか、
経営安定対策というものを構築していかなければならないという認識でいます。これ
は、私が担当ではありませんが、担当部局がかなり集中的に色々な検討を進めていま
す。いつ頃姿が明らかになるか、今はちょっと分かりませんが、いずれにしても何ら
かの形の横断的な、品目毎と言うよりも、横断的な形の経営安定対策といいますか、
所得対策といいますか、そういうものを構築していく必要があるし、それを出来るだ
け早くお示しして実際に行っていくということが必要だという認識は全く私どもも同
じですので、ご理解頂きたいと思います。
(農 民 団 体 ) 今、最後の方に言われた国内策の方向、位置づけ、室長もそういう認識とい
うことで、是非努力をお願いしたいと思います。
しかし、経営安定策ということと、所得政策というものが必ずしも一致しないと言
いますか、現実がそういう状況なわけです。ですから多面的な機能、あるいは国土環
境保全ということが国民合意として、世論調査にありますように評価され、いいと位
置づけられれば、やはり農業の継続、経営継続、耕作継続という、そういう観点で、
今の経営安定対策というものから、もう一歩進んで国内政策はやるべきだと思います。
具体的には、やはり、面ということに対する多面的機能の評価というもの、そこを
もっとしっかりした位置づけ、展開をしていくべきだと思っています。具体策として
は、これから色々とあるんだろうと思いますけれども、そういう点をしっかりお願い
したいと思っています。
(農 林 水 産 省 ) 正にご指摘の通りと思います。これは、直接交渉の問題というよりも私ど
もの政策方向一般のご指摘だと思いますので、そういったご意見をすぐに持ち帰りま
して、担当部局に伝えまして、おっしゃられたような方向で努力するように致したい
と思います。
(農 業 団 体 ) 一つは要望です。関税の問題の所で加工農産物の関税水準について、食品産
業の健全な発展に配慮という形で明記頂きありがとうございます。しかし、現在ハイ
ファットチーズの問題がWTOでも色々と問題になっていると思います。これは関税
の水準の問題というよりも、関税の品目分類の問題だと思いますが、「チーズとは言
っても、実態はバターではないか、品目分類を厳格にしろ」というようなことをどこ
かに盛り込んでいただけないかという要望です。
それから質問が2つありまして、一つは8月の「意見を聞く会」における他の方の
ご質問で、生馬鈴薯の植物検疫制度に基づく輸入解禁の手続きについて強い要望が出
ていたと思うんですが、そういうことを交渉提案の中に何らかの形で盛り込むことが
できているのか、どうなのか、それを教えていただきたい。二つ目はSBS米の関係
です。2000年のミニマム・アクセス76万7千トンのうちSBSは10万トンとなっ
ており、一応、国家貿易の下で、適正な市場評価を得る手法ということでSBSが入
っているという説明を受けているんですけれども、この10万トンという数字は何か
のWTOの協定に基づく義務なのか、それとも、これはあくまで国内の問題といいま
すか、日本の国内の手続きの中でいじれる問題なのかどうか、そのことについて2つ
ご質問したいと思います。
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(農 林 水 産 省 ) 最初、ご要望としておっしゃられましたハイファットクリームチーズの問
題です。これは私どもも問題を承知していまして、まさにおっしゃられたように実態
は限りなくバターであるということが、これはWTOではなくて関税分類の問題を議
論するHS委員会のほうで、もう日本の主張がかなり通ってきておると私は承知して
います。確か今月末辺りにまたHS委員会がありまして、そこで、何らかの結論が出
され、どこの国も留保ということにならなければ、日本の主張が通ったということに
なります。おそらくその結果に従って、どこかの段階で、国内の一定の通達のような
ものを変更し、国内の関税の分類の仕方の問題ですので、運用を変えていけばいいの
でないかという類の問題だと思います。従いまして、全く、端的に言えば国内の制度
をちょっと運用を変えるという類の性質の問題ですから、農業交渉の提案として入れ
ていくものではないと思います。
と言いますのは、農業交渉の提案に入れるということは何らかのWTO上のルール
が支障になっていることであり、関税分類はについては国内の制度を変えればいいと
いう問題ですので、提案をするようなことにはならないのではないかという認識でい
ます。
それから次におっしゃられた生馬鈴薯の問題です。私どもの今度の提案についての
基本的な考え方としては、さっきご説明いたしましたように市場アクセスにしても国
内支持にしても、これは一般的なルールの問題として提案する事項に留まるんだろう
と思います。ですから、その中で、例えばおっしゃられたような特定の産品について、
問題を逐一、提案の中に、これはこうすべきだ、これの関税はこうすべきだ、という
ことまで最初のこの交渉提案では入れるのは馴染まないんじゃないかと思います。勿
論、交渉がどんどん進んでいった段階で、後半戦の話として、どこかの国が、日本の
特定の品目について関税をこうしてくれ、ああしてくれ、あるいは検疫の問題を指摘
してきたり、そういうことは当然ありうる話です。しかし、それはかなり後ろのほう
の段階だと思います。私どもはまず、現在検討している交渉提案を年末までに各国が
みんな出し終わったら、来年以降は、それをまず分析するような議論をして、まず、
ルールの問題を話し合っていく。その上で、後半戦になって品目毎の色々なリクエス
ト・オファーを出し合い、これはいい、とか、これは駄目です、という話しに至ると
いう段階で、出て来るものは出て来るんじゃないかと考えています。
それから、最後におっしゃられたSBS米の問題です。現在の10万トンというの
はWTOルールの問題では全くありません。これは関税割当の一つの手法で、日本が
そういう手法がいいからやっているだけの話です。従って、この何万トンをSBSで
やるかということも、全く純粋に国内の問題であり、食糧庁の色々な判断の下に、全
体の中で、SBSや一般輸入の量を決めているだけの問題です。
(農 民 団 体 ) UR農業合意に際して、日本だけでないのかもしれないですけど、関税譲許
税率方式を採りました。この譲許税率方式というのは、そもそも農産物には馴染むの
かどうか。工業製品等は、非常に機械的に、段階的に生産性が向上していくものであ
り、それに見合った段階的な関税の引き下げというのが譲許税率方式であり得るんだ
ろうと思います。
しかし、農産物あるいは農業というのは、そういう譲許税率の下げ幅に応じて生産
性向上がちゃんとついていってないような状態ではないか。そういうことからすれば、
農産物にこの譲許税率を採ること自体が問題があるのではないかと考えられます。
そこで、質問として、今回の提案の中で関税水準については品目毎の柔軟性が確保さ
れるように配慮していくと、こういうお話も書いてありますけれども、これはどうい
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う意味を言っているのかということをお伺いしたいと思います。
(農 林 水 産 省 ) 譲許税率ということのご質問ですが、ちょっと私が誤解しているのかもし
れませんけれども。普通私どもが譲許税率と言った場合の意味は、英語ではバインド
と言いますが、例えば20%というのをバインドしたら、それが国際的に上限になる
ということです。そこから上げてはいけませんよ、ということを、縛る、バインドす
ると言い、それを譲許と日本語で訳しているわけです。ですから、そういう意味で言
えば、ルールとしてバインドするかしないかというのは、決めの問題であり、譲許そ
れ自体は、農産物に馴染むのかとか、工業製品に馴染むといった議論とは直接に関係
ないと思います。
ただし、ご質問の意図は、関税を段階的に下げていくのは馴染まないんじゃないか
いうご趣旨で、譲許とおっしゃったのでないかと思います。そう言った問題意識から
すれば、ウルグアイラウンドの時は「農産物全体で36%、最低でも15%、6年間
で下げる」ですから平均すれば、大ざっぱに言えば毎年6×6=36で6%ずつ下げ
なさいというルールになっていましたが、わが国の場合、確かにご指摘のように、そ
の通りに生産性が向上しているかどうかというと、勿論そうではないと思いますし、
36%下げた結果、色々なところに色々な影響が出て来ているのが事実だと思います。
ですが、なかなか我が国から関税を全く下げるべきでないといった提案は、率直に
言って書きにくい面がありますので、分かりにくいかもしれませんけれども、今の提
案の表現では「品目毎の事情に配慮した柔軟性の確保」と言っています。これは要す
るに「重要なものはあまり下げられない、中には下げられるものがあるかもしれない
けれど、下げられないものは下げられない」と、端的に言ってしまえば、そういうこ
とを含んでいるわけでして、問題意識は同じだと思います。
どんどん関税を下げていくということをやって行けば、国内の農業というものはど
んどん成り立たなくなっていくわけですから、そういう意味で、関税が唯一残された
カードだとご説明申し上げましたが、この関税水準を機械的に下げたり、一律に下げ
たりすることはできないということをこの提案としてお示ししているつもりです。
ただ、交渉は勿論相手があることであり、「そんなことない。別にあなたのところ
の生産性が上がろうと下がろうと、そんなことは知ったことでないので、とにかく貿
易自由化すべきだ。どんどん関税化をゼロに近づけていくべきだ」と主張する国がた
くさんあるわけです。
(個 人 ) 「消費者、市民社会への関心への配慮」ということについてです。ずっと前に農
水省が配られた「WTO交渉への基本的姿勢」というような冊子を北海道庁から頂い
たことがあります。それを見ていたら、EUなどが非常に積極的に交渉の中で提案し
ている食品の安全の問題について、日本の政府は本テーマでなくて少し横に寄せたテ
ーマとして取り組んで来ていると感じたのですが、今日ここで色々と伺って、非常に
安心しました。冒頭言われたように、各世論調査の中でも非常に国産食品へのご関心
が高い。それから、今年の夏は、非常に食品について異物混入など色々な問題が起き
て、非常に関心が高まっている。そういう中、消費者、市民社会への配慮というのが、
基本的な方向の中にガチンと組み込まれているのか、いないのか、ちょっとご説明い
ただければありがたい。
(農 林 水 産 省 ) 先ほど、あまり詳しく説明できなかった点ですので、質問して頂いてよか
ったと思います。私ども「消費者や市民社会の関心への配慮」というのは、まさに基
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本的な方向にガチッと入れているつもりです。今の資料の2枚目の所に交渉に臨む基
本的姿勢というところがあり、ここに5点、基本的な方向を掲げていますが、ここに
まさに「消費者・市民社会の関心への配慮」というのを入れています。で、これは提
案の一つの大きな柱と考えています。
ただ、最後に出てくるし、何となくちょっと端っこなのかなぁと思われる方もいら
っしゃるかもしれないので、ちょっと補足的に申し上げます。今、我々がやっている
のは、あくまで農業交渉です。我々が今、交渉の対象としているWTO農業協定は、
関税をどうするとか、国内の補助金をどうするとか、輸出補助金をどうするとか、そ
ういう分野のルールになっているわけです。勿論それを変えていくという議論は当然、
あるわけですが、現在のルールになっています。
実はこの安全性については、WTOに農業協定と別にSPS協定というのがありま
す。これは動植物、それから人間に対する検疫も含めた検疫制度を国際的に調和させ
るための協定です。これは農業協定のほかにあるわけです。
この安全性の問題に直接関係することとして、各国の衛生基準や検疫の貿易ルール
をどうするのかが国際的に問題になるわけで、これらについてはSPS協定に色々な
ことが書いてあります。勿論農業交渉は、農業に関係すれば、どんなことを議論して
もいいんだと思いますから、私どもはこの問題を農業提案の中に入れていこう、皆さ
んのご関心が高い分野ですから入れていこうということです。しかし、交渉の中に入
っていきますと、実際に議論するのは農業協定とは別の協定のことを議論することに
なります。では、今のSPSというルールが何か大変日本にとって問題なのかという
と、直接ものすごく問題があるというルールにはなっていません。日本が必要だと思
う衛生基準なり検疫のルールがあれば、それは基本的に別に国際的に問題なく実施出
来ることになっています。何が何でも他の国と同じ衛生基準にしなさいというルール
にはなっていませんので、日本の条件から考えれば、これは必要だということがちゃ
んと言えれば、そういうルールを導入できることになっています。このため、「一義
的にどこが不満なのか、どこを見直したらいいと主張するのか」と言われると、すぐ
には答がないような状況です。
ですから、我々はこの提案で何を言っていくかというと、「安全性みたいなことが
重要です」というのは当然言った上で、「既存のSPSといったルールをもう一度総
ざらいして、本当に各国の衛生とか、我々の健康とか、そういうことに問題がないル
ールなのかどうかをまずちょっと検証しようじゃないか」ということを提案し、その
上でもし問題があれば、それは改めていくべきだ、という考え方です。他の分野は
「直接これはこうすべきだ」という提案になりますから、安全性の問題を一格下だと
見ているわけでは全然ないのですが、ちょっと制度的に変わった角度の問題になりま
すので、そういう意味で、最後の方に出て来るという側面があるということは、ちょ
っと申し添えたいと思います。
(個 人 ) ちょっと抽象的な全体的な質問になるかもしれないですけれど、冒頭室長が前回
のシアトル交渉に出られた時に催涙弾が投げ込まれるとか、話されました。ぼくらも
新聞で色々見ました。最近色々なジャーナリズム、それから論壇などで、特にフラン
スの動きが相当激しく伝えられて、ほくらもそれを読む訳です。フランスの農民や農
民組合、それから、フランスの食文化と言ったことに対するフランス国民の関心が非
常に高い。それがセットされて、今のグローバリゼーションに対して非常に激しい意
見が飛び交っているとか、フランスの農林水産大臣が、フランスの国民のそういった
世論を様々な会議の中で、「フランスの食文化を守るためにフランスの農業を守って
- 7 -
いこう」というようなことを国民にメッセージをしているという話なども最近読みま
した。
今、発表された世論調査を見て、日本でも国民の国産食品に対する関心が非常に高
い。私もそう思ってます。そういうことを全体的に、単に農業団体や生産者だけの直
線的な主張ではなく、もっと食文化とか、そういう視野から見て、このWTO交渉に
どうやって臨むか、そういう何かもう少し全体的な姿勢と言うか、もっと極端に言う
とグローバリゼーションということに対して農林水産省はどういうお考えを持ってい
るのかというところが、余りよくメッセージされなかったと思うので、非常に抽象的
な質問ですけれども、ちょっとお考えを聞かせていただきたいと思います。よろしく
お願いします。
( 農 林 水 産 省 ) まさにフランスなどはよく、マクドナルドの店が攻撃されて壊されたりし
ていてあのようなアメリカ文化みたいなものに対する反発が非常に強いですし、自分
たちの食文化というものを非常に大切にするところだと思います。また、食文化のみ
ならず、自分の国の言語を始め文化そのものを非常に大切に考えている国だと思いま
す。そういったことが多分ヨーロッパのECの交渉姿勢にも表れてきているのです。
我が国、農林水産省としてどうなんだというご指摘です。まず、食文化という点で考
えた場合、私ども、随分昔からのことですが日本型食生活というものをもっと見直し
て評価すべきだとこの10年来色々なところで言って来ています。これはご存じの方
も多いと思いますけれども、戦後パン、肉、油脂や乳製品をいっぱい食べるようにな
って、どんどんコメの消費量が落ち、魚も野菜も食べなくなったというようなことが
あります。健康の観点もありますし、それから、勿論国産品の消費拡大というような
観点もありますし、食料自給率の向上という観点もあるわけですが、そういった意味
でお米を食べるとか、魚とか野菜とかもっと食べようじゃないかというようなことを
ずっと言って来ているつもりです。これは一種の伝統的な日本の食文化をもう一回見
直そうということに等しいんじゃないかと思います。
次に、グローバリゼーション、全体に対する考え方、非常に大きなご質問ですが、今
回ご紹介した交渉に臨む基本的な姿勢の中で「各国の多様な農業の共存」というのが
重要なコンセプトだとさっきも申し上げました。ここに私どもの考え方を表している
つもりです。というのは、グローバリゼーション自体を全否定するということは勿論
できないわけですし、WTOのような組織そのものが、国際的なルールを作るという
場ですから、何をグローバリゼーションと言うかは人によって違うんだと思いますが、
色々なことを国際的に調和させていくこと自体を否定することは出来ないと思うので
す。
問題なのは、農業で言えば各国のまさに多様な農業、さっきもオーストラリアの農業
だけじゃないんだということを申し上げましたが、まさに日本のように「狭いかもし
れない、サイズは小さいかもしれない、それから家族農業かもしれん。しかし、そう
いうタイプの農業がずっと、何千年も続いて来ている。そういうことを全否定はでき
ないだろう」ということを、この短い言葉ですけれども「各国の多様な農業の共存」
ということに込めているつもりであり、そこから農業交渉をスタートさせるべきだと
いう基本的な考え方を持っているつもりです。
( 農 政 局 ) ちょっと補足致しますと、ご承知だと思いますが、新しい食料・農業・農村
基本法の中でも、食をかなり全面に出しており、それから農村文化の伝承という条文
も入れてあります。2つ流れがありまして、一つは農水省と文部省が食の教育という
- 8 -
ようなことで色々と議論をし始めて、各農政局など出先機関でもやっているところが
あります。ですから、そういう運動が一つ。それから、厚生省との間で食生活指針と
いうことで、今まで別々にやっていたのを、一緒にやっているということで、これは
新しい動き。ですから、直接今回の農業提案の中には入っていませんが、その前段階
で食料・農業・農村基本問題調査会の答申や新しい基本法全体にその流れが入ってい
ますので、今回はWTOの直接の農業交渉の提案ということでむしろ入ってない。
それで、これはまた全然余談ですけれども、アメリカがだいぶ前から日本型の食生活
を見直してマクガバン報告などが出てますけれども、元々は日本のいわゆる食生活、
日本人が陰のライターだと言われています。そういう意味で逆輸入されてきていると
いう面もあります。戦後色々な形で日本の病気が段々徐々にアメリカに似て来ている。
今まで、ガンだったのが、段々循環器系統になってきていることも含めて、食と健康
との関係というのは、今、農水省が厚生省ともよく勉強していこうという動きになっ
ています。
( 個 人 ) 遺伝子組換えのことでちょっとお聞きしたい。最後のところに、「コーデック
ス食品規格委員会において国際規格を策定」と書かれているんですが、前回、シアト
ルの時はアメリカとEUが激しく論議して、それはそのままで終わっているんでしょ
うが、日本としては、どういう姿勢で取り組もうとしているのか。こういった規格が
定まれば、それに応じて普通輸入と同じ様な扱いをしていこうとするのか、今回、色
々提案される中で、そういったものの位置づけをどうしていくのか、ちょっとお聞か
せ願えればと思います。
( 農 林 水 産 省 ) いわゆるGMOについてのお尋ねですが、私ども、このGMOの問題と
いうのは3つの観点から考える必要があると、前から申し上げています。
一つは、これはやはり重要な画期的な技術であることは間違いないので、その可能性
を利用できるところには利用するというのは、まず一つ言える点です。
二つ目は、やはりどんな可能性があろうとも、人間にとって、あるいは環境にとって
安全であることが大前提であると思います。ですから、この安全であるということが
確保されること、当然のことですけれども、それが2番目の観点です。
三つ目は、消費者が「どういうものか知りたい。だから、何か情報をくれ、あるいは
そのものに表示してくれ」という問題が当然あるわけです。これは安全かどうかとい
う話と別に、「仮に安全であっても私はそれは食べたくない」という人は当然いるわ
けなので、安全かどうかという話でなくて、それがどういうものであるのか、GMO
なのか、GMOでないのか、それをきちんと表示する、あるいは情報提供する、とい
う観点がやっぱり必要ではないか、というのが3点目です。
以上の3点を踏まえて、色々なことにずっと取り組んできているつもりですが、今、
ご指摘がありましたコーデックスの話については、これは今申し上げた3点の内で3
番目の問題だと思います。3番目の表示のルールの問題について、今国際的には、F
AOという農業に関する国際機関と、それからWHOという健康の関係の国際機関の
二つが共同で設けている委員会であるコーデックスという場所で、どういった表示ル
ールを国際的に作っていくかという議論がずっとされています。
それはそれで議論が進んでいるわけですが、実は我が国は、昨年の始めに成立しまし
たJAS法の改正の中で、日本における遺伝子組換えの表示のルールというものを既
に決めています。これはもう来年の4月から適用する施行するということになってい
ます。
- 9 -
コーデックスの検討を待っておれないと、日本は日本できちんとした表示ルールを作
るんだという判断を致しまして、「こういうものはちゃんとGMOならGMOと書き
なさいと、非GMOは非GMOと書きなさいと、分からないものは不分別だというふ
うに書きなさい」と大ざっぱに言えば、そういった様なルールを決めて、国際的なル
ールに先立って、そういった区切りをして進めているということです。
( 農 業 団 体 ) ちょっと漠然とした質問かもしれませんけれども、今年、食料・農業・農
村基本計画で生産目標なり、自給率の目標なり、そういったものが設定されています。
これは国内の生産とか消費の色々なあり方なり、色々な取り組みの強化というものも、
前提になっていますけれども、国際的にこれから交渉をするにあたり、これらの目標
というものが、交渉にあたってどの様な位置づけなり背景になってくるのか、ちょっ
と確認をさせていただきたいと思います。
( 農 林 水 産 省 ) この新しい基本法や新しい基本計画に書かれていることを、基本的な姿
勢としては支障なく進めて行けるようにWTOのルールを決めていく。国内で決めた
ことをそのまま支障なくできるような国際ルールを作るというのが、今回WTO交渉
に臨む大基本姿勢です。
今ご指摘の自給率目標の問題について、どうやって目標を達成していくのかというと、
まさに今おっしゃられたように生産者の努力であり、消費者の努力であり、あるいは
国の政策努力であり、ということが全部組み合わさって達成できる。これは消費のあ
り方によって自給率が動きますので、ある意味では当然のことなんですけれども、そ
ういう位置づけがされていますので、政府の具体的な政策だけで何かこれが実現でき
るわけではない、ということだと思います。
従いまして、今度のWTOの交渉の中で、例えば国内支持のルールというのが出来上
がると思いますけれども、その国内支持のルールを作る時に、今ある施策、あるいは
今後導入がされそうだと思われる施策が、例えば大きく削減が迫られるだとか、そう
いうことにならないような国内支持のルールを作っていくことを頭に置きながら、色
々な交渉をしていくということになります。
ただ、原点として、自給率を引き上げていくためにどういう具体的な施策があるかと
いうと、先ほど申し上げたように生産者の努力と消費者の努力と組み合わさって初め
て実現できるものなので、具体的に、これとこの施策があればいいとか、そういう単
純な問題にはなりません。色々な施策を想像しながら、その制約にならないように国
内支持のルールの交渉に臨んでいく必要があります。
これは難しいわけですが、交渉期間中、そういうことを念頭に置いたやり方をやって
いくということだと思います。ちょっと抽象的なお答えで申し訳ありません。
( N G O ) 今日お話を聞かせていただいて素晴らしいと思いました。私はどちらかと言
えば消費者の立場なんですけれども、政府の外交というものに対しては非常に不信を
持っています。これまでずるずると常に後退してきているというふうにしか見えてお
りませんので、はたして本当にこの通りやってくれるのか、と。是非、国内の食の自
給ということも含めてやっていただきたい。
アンケートというのは非常に消費者は素敵なことを答えるような性格がありますが、
今回のアンケート結果の数字を本当に維持するということは、本当に今おっしゃった
様に総論的なところで色々な組み合わせをしていかなければならないと思うんです。
でも、そのためには、まず、WTOへ行く時に、是非、ひるまないで、成果を出して
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頂きたいと希望します。
( 農 林 水 産 省 ) 私どもに対する激励だと思いますので、頑張ってやっていきたいと思い
ます。よろしくご支援頂きたいと思います。
(以
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上)
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