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「PCSK9 LDL 受容体をめぐる新たな金脈発見か?」
平 成 24 年 12 月 25 日 阿 比 留 教 生 先 生 テ ー マ 抄 読 会 「PCSK9 LDL 受容体をめぐる新たな金脈発見か?」 引用文献: The Lipid 23: 403-409 2012, Nat. Genet. 34: 154-156 2003, PNAS. 101: 7100-7105 2004, Nat. Genet. 37: 161-165 2005, NEJM. 354: 1264-1272 2006, Curr Atheroscler Rep 12: 308-315 2010, PNAS. 102: 5374-5379 2005, Nutrition, Metabolism & Cadiovascular Disease 21:853-843 2011, Giugliano RP, et al. Lancet E-Pub Nov 2012. Koren MJ, et al. Lancet E-Pub Nov 2012, D Sullivan, et al. JAMA E-Pub Nov 2012, Circulation 126: 2408-2417 2012, NEJM 366:1108-1118 2012, Lancet 380:29-36 2012, NEJM 367:1891-1900 2012, Nature Med 18:633 2012. 今年の年末に名だたるメジャー論文に取り上げ話題をさらっている、脂質異常症に対する抗 PCSK9 抗体療法。 今回は、この抗 PCSK9 抗体の基礎研究から臨床研究の結果を紹介します。 家族性高コレステロール血症(FH)の3番目(LDLR, ApoB に次ぐ)の原因遺伝子として同定された PCSK9 は、 プロ蛋白質転換酵素ファミリーの 9 番目で主に肝臓に発現していま す。LDL 受容体(LDLR)は肝細胞表面で LDL-C と結合し肝細胞に取 り込まれたのち、エンドゾームの酸性環境で受容体と解離しリサイク ルされます。PCSK9 は自己分解することで分泌蛋白となり、LDLR に 結合し肝細胞に取り込まれます。この PCSK9- LDLR はエンドゾーム でも結合が乖離せずリソゾームに送られ分解されるため、LDL-R の 分解が進みます。 ヒトではすでに PCSK9 遺伝子に複数の変異が認められ、gain of function では高コレステロール血症と関連し、 loss of function では低コレステロール血症と心血管イベント減少との関連が明らかになりました。また、スタチン 服用患者は PCSK9の発現増強を介してスタチン効果が低減し(6%ルール)が、PCSK 阻害はそれを凌駕するこ とが示唆され、現在、PCSK9 標的治療は、多方面のアプローチが精力的にすすめられています。 創薬として Gene silencing、モノクローナル抗体、Peptide mimics などが開発中です が、AMG145 (Amgen) , REGN727(Aventis/Regeneron)の二つの抗体が 先行し、その phase 2 の結果が相次いで報告されました。対象は、FH 、 ヘテロ FH 患者や、スタチン不耐、スタチンで目標未達成の高コレステロ ール血症患者で、AMG145、REGN727 の皮下投与は、いずれも用量依 存性に LDL-C レベルを確実に低下させました。またこの低下効果は、ス タチン増量やエゼチミブ併用を凌駕するもので、有害事象も少なく、頑固 な脂質異常症には、かなり有望な治療薬であることが証明されました。 iPS 細胞開発の山中教授がノーベル賞受賞が決まった時のコメントで「遠藤先生(スタチン発見)より先に取る とは思っていなかった。。」と述べたように LDL-受容体をめぐる研究では、多くのノーベル賞が輩出され、さらに スタチンの売り上げは全世界で3兆円にせまる勢いだそうです。どんな頑固な高コレステロール血症も寛解させ る PCSK9標的治療、、この先一体どうなるのか、目が離せません。ただ、もし承認されても、この抗 PCSK9 抗体 治療、年間 200 万円ほどかかるようです。スタチンジェネリックだと 1 万円前後ですが、、皆さん使います?? (文責:阿比留)