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第4回企業価値向上表彰 選考アンケートの分析結果 2016年2月24日 株式会社東京証券取引所 上場会社表彰選定委員会事務局 Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 1 分析にあたって • はじめに – – • 選定プロセス – – – – • 企業価値向上表彰は、高い企業価値の向上を実現している上場会社のうち、資本コストをはじめとする投資 者の視点を強く意識した経営を実践している上場会社を表彰する制度です。 表彰会社の決定にあたっては、2回にわたるアンケートに基づく定性的な選考と資本生産性に関する定量的 な選考を組み合わせて、会社を選抜しています。本稿では、当該アンケートの結果を分析し、選考の過程で 選抜した企業群の特徴について考察を行います。 スクリーニング:全東証上場会社(約3,500社)の中から、過去数年間のエクイティ・スプレッド(ROE-株 主資本コスト)の平均値または成長率が良好な400社程度を選定。 一次選抜:スクリーニングされた400社程度(一次アンケート対象会社)に対して簡易なアンケートを実施。 アンケートの内容と財務数値などを踏まえて、50社程度を選定。 二次選抜:選抜された50社程度(二次アンケート対象会社)に対して、企業価値向上を実現するための 経営の実践状況を確認する詳細なアンケートを実施。アンケートの内容と財務数値などを踏まえ、数社をファ イナリストとして選定。 大賞・優秀賞決定:投資家やアナリストからの意見募集や経営陣へのインタビューなどを踏まえ、大賞・優秀 賞を決定。 分析協力 – アンケート結果の分析は、一橋大学大学院商学研究科の円谷昭一准教授の協力を得て行いました。 Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 2 1.アンケート対象会社の財務面の特徴 2.アンケート対象会社の体制面の特徴 Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 3 高い収益性により高ROEを実現 東証1・2部上場会社、一次アンケート対象会社、二次アンケート対象会社ごとに、 ROEの平均値を、売上高利益率、財務レバレッジ、総資産回転率の3つの要因に分解 して比較した。 選定段階が進むにつれて、高い資本生産性を備えた会社の割合が高まっており、その要 因として最も際立っているのが売上高利益率である。つまり、選考過程に残る優れた企業 群は、収益性の高さによって高い資本生産性を実現していることが分かる。 売上高利益率 平均値 ニ次アンケート 11.18% 会社 一次アンケート 7.83% 会社 東証1・2部 ROE 平均値 4.41% 0% 1.77 会社 20.57% 会社 一次アンケート 2.09 会社 一次アンケート 17.03% 会社 15% 財務レバレッジ 平均値 ニ次アンケート ニ次アンケート 10% 5% 東証1・2部 2.02 0倍 1倍 2倍 3倍 総資産回転率 平均値 東証1・2部 7.16% ニ次アンケート 1.21 会社 0% ROE 10% 収益性 売上高 利益率 Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 20% 安全性 財務 レバレッジ 効率性 総資産 回転率 一次アンケート 1.3 会社 東証1・2部 1.1 0回 1回 2回 4 ROEは年々向上 東証1・2部上場会社と今年度のアンケート対象会社の過去5年間のROEの推移をみ ると、アンケート対象会社の方がROEの伸びが大きい。アンケート対象会社は、以前から ROEは高かったが、その後も継続的にROEを向上させてきている会社群であるといえる。 なお、これらの会社群は、財務レバレッジが低下傾向となっており、自己資本比率を高め ながらROEを向上させてきたことが分かる。つまり、内部留保の積み増しで財務の健全性 を進める一方、資本の効率活用や成長投資に余念がない姿が浮き彫りとなる。 売上高利益率 平均値推移 15.0% 10.0% 5.0% 0.0% t=-4 25.0% ROE 平均値推移 3.00 20.0% 2.00 15.0% 1.00 t=-3 t=-2 t=-1 t=0 財務レバレッジ 平均値推移 0.00 10.0% t=-4 5.0% 1.50 0.0% t=-4 東証1・2部 t=-3 t=-2 t=-1 t=0 一次アンケート会社 ニ次アンケート会社 ※ 最新決算期をt=0として過去5年間の単純平均を取った。 Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 t=-3 t=-2 t=-1 t=0 総資産回転率 平均値推移 1.00 0.50 0.00 t=-4 t=-3 t=-2 t=-1 t=0 5 株主資本コストを上回る収益性を確保 株主の期待収益率である「株主資本コスト」を一定の前提条件の下で試算して、ROEとのスプレッド(差)を算出した。この数 値は、「エクイティ・スプレッド」といい、株主が期待するリターンをどれだけ上回って利益を創出しているかの尺度となる。 エクイティ・スプレッドについてみても、アンケート対象会社は、ROEの水準と同様に、過去3年間で東証1・2部上場会社を大 きく上回って推移している。 20% エクイティ・スプレッド 平均値推移 15% 10% 5% 0% t=-2 東証1・2部 ニ次アンケート会社 Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 t=-1 t=0 一次アンケート会社 6 設備投資も株主配分も積極的 アンケート対象会社の設備投資や株主還元の状況についてみると、総資産に占める設備投資額の比率及び純資産配当率 (DOE)は東証1・2部上場会社を大きく上回る水準となっている。 選考過程に残る優れた会社群が、成長投資を続けながら高ROEを実現しつつ、一方で株主への還元にも余念がない姿が浮 かび上がる。これらの会社群は、前掲のとおり、持続的にROEを高めながら、財務健全化も進めている。自己資本比率の上昇 を上回るペースで売上高利益率を伸ばしており、その背景には、積極的な設備投資が寄与しているものと考えられる。 総資産に占める設備投資額比率 平均値 ニ次アンケート 4.95% 会社 一次アンケート 会社 東証1・2部 4.76% 4.29% Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 純資産配当率(DOE) 平均値 ニ次アンケート 5.57% 会社 一次アンケート 会社 東証1・2部 4.10% 2.35% 7 1.アンケート対象会社の財務面の特徴 2.アンケート対象会社の体制面の特徴 Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 8 経営計画を策定し、投資家視点の経営指標を設定 経営計画の策定状況について、全上場会社(日本IR協議会「IR実態調査」2014年版)とアンケート対象会社を比較した。 2015年において、一次アンケート対象会社の94.9%が経営計画を策定、二次アンケート対象会社の73.3%が経営計画を 公表しており、いずれも全上場会社を上回っている。また、二次アンケート対象会社の6割が経営計画においてROEを目標指標 に掲げており、その目標値の水準も高い。 経営計画の策定の有無 2015一次ア ンケート会社 IR実態調査 2014 3.3% 94.9% ンケート会社 2014一次ア 経営計画の公表の有無 1.8% 2.8% 93.7% 3.3% 81.4% 0.0% 3.5% 策定している 策定予定 ンケート会社 2014二次ア ンケート会社 IR実態調査 15.3% 50.0% 2015二次ア 100.0% 2014 0.0% 策定していない 73.3% 61.2% 26.7% 38.8% 66.2% 33.8% 50.0% 公表している(予定含む) 100.0% 公表していない ROEの採択率と平均目標値(二次アンケート会社) Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 2014年 2015年 ROE採択率 45.8% 60.0% 平均目標値 15.3% 15.9% 9 資本コストを意識して経営 資本コストの認識の状況について、全上場会社(日本IR協議会「IR実態調査」2014年版)(経営計画を策定している会 社に対して行った質問)とアンケート対象会社(2014年の一次アンケート対象会社、2015年の一次アンケート対象会社) を比較した。 2015年の一次アンケート対象会社をみると、52.7%の会社が資本コストを認識し、具体的な数値として把握しており、全上場 会社と比較すると、資本コストを意識して経営に取り組んでいる比率が高いといえる。 資本コスト認識水準 2015一次ア 52.7% ンケート会社 2014一次ア 19.8% 48.3% ンケート会社 IR実態調査 41.0% 2014 0.0% 19.2% 20.1% 50.0% 27.5% 32.5% 38.9% 100.0% 資本コストを認識しており具体的数値を把握している 資本コストを認識しているが具体的数値は把握していない 資本コストを認識していない Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 10 業績連動報酬を導入 アンケート対象会社における業績連動報酬の導入の状況についてみると、2015年は、経営クラスでは報酬が業績に「全額連 動している」「ある程度連動している」が全体の82.2%に達している。(二次アンケート対象会社に対する設問) 2014年と2015年を比較すると、どの階層でみても、業績連動報酬の比率が上昇している。 一般社員クラス2015 7% 60% 一般社員クラス2014 2% マネージャークラス2015 57% 7% 18% 11% 経営クラス2014 8% 15% 71% 10% 20% 30% Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 40% 14% 50% 60% 70% 80% 4% 0% 6% 6% 11% 65% 4% 0% 6% 6% 13% 69% 経営クラス2015 0% 18% 73% 部門長クラス2014 4% 8% 18% 65% 9% 9% 0% 14% 71% マネージャークラス2014 4% 部門長クラス2015 24% 全額連動している ある程度連動している どちらともいえない 連動しているとは言い難い 全く連動していない 7%0% 6% 6% 90% 100% 11 社内への浸透の状況 自社の経営目標(経営計画)と資本コストの概念について、社内研修等で説明を行なっているかどうかについての設問を集 計した。(二次アンケート対象会社に対する設問) 経営目標(経営計画)については、ほぼ全ての会社が社内研修等で社内へ浸透させている。さらに、資本コスト概念につい ては、4割の会社が社内研修等により社内へ浸透させている。 経営目標についての社内への 資本コスト概念についての社内への 浸透の状況 100% 2% 90% 80% 浸透の状況 100% 90% 40% 説明していない 80% 70% 70% 60% 60% 50% 社内研修等で説明している 40% 30% 説明していない 62% 50% 社内研修等で説明している 40% 30% 58% 社内研修等で説明を行うほか、社内 20% LAN等で周知している 10% 0% 20% Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016 社内研修等で説明を行うほか、社内 LAN等で周知している 10% 0% 2015年 29% 9% 2015年 12 【お問合せ先】 東京証券取引所 上場部内 上場会社表彰選定委員会事務局 電話:03-3666-0141(代表) 電話:050-3377-7012(直通) Copyright Ⓒ Tokyo Stock Exchange, Inc. 2016