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サービス産業におけるイノベーションと生産性向上に向けて 報告書

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サービス産業におけるイノベーションと生産性向上に向けて 報告書
サービス産業におけるイノベーションと
生産性向上に向けて
報告書
平成19年4月
サービス産業のイノベーションと生産性に関する研究会
(事務局 : 経済産業省 商務情報政策局)
目次
Ⅰ.サービス産業を取り巻く状況 ............................................................................................. 4
1.サービス産業の重要性と低い生産性.............................................................................. 4
【コラム】米国よりも低い我が国サービス産業*の生産性とその要因 ................................. 11
2.サービス産業が重視される背景とその要因 .................................................................. 12
Ⅱ.横断的な枠組み作り −横断的パッケージの必要性−.................................................... 21
1.サービス産業の低い生産性の背景............................................................................... 21
2.特性を踏まえた自由な民間活力発揮のための横断的な枠組み作り−競争促進のための市
場環境整備−の重要性 .................................................................................................... 22
3.イノベーションと生産性向上に向けた施策の方向 .......................................................... 24
【コラム】誤解を招く生産性の捉え方 ............................................................................... 25
Ⅲ.政策パッケージ .............................................................................................................. 26
1.「経験と勘」に頼るサービスから「科学的・工学的手法」によるサービスへ........................ 26
1.1 サービス分野における科学的・工学的アプローチの拡大....................................... 26
1.2 サービス提供プロセスの改善............................................................................... 39
2.サービス提供者と消費者等をつなぐ仕組み作り ............................................................ 50
【コラム】米国顧客満足度指数(ACSI)の概要 ................................................................. 64
3.サービス産業における人材育成について...................................................................... 67
4.サービス産業におけるIT活用 ....................................................................................... 81
5.サービス産業のグローバル展開................................................................................... 87
6.サービス産業による地域活性化 ................................................................................... 92
7.サービス産業への投資の拡大/新規参入の促進 ......................................................... 95
8.サービス産業の実態把握と統計整備............................................................................ 98
9.政府による相談窓口などの整備 ................................................................................. 106
Ⅳ.サービス産業生産性協議会の役割............................................................................... 107
1.産学官が連携して取り組む共通のプラットフォーム...................................................... 107
2.サービス産業生産性協議会の活動内容 ..................................................................... 107
1
はじめに
サービス産業は、日本経済の7割近く(GDP・雇用ベース)を占める非常に重要な産
業である。少子高齢化など社会構造変化に対応したサービス需要の増大、製造業中
心に業務のモジュール化が進むことによるアウトソーシングの拡大、更に、公的市場
の民間開放や規制改革による新たなサービス市場の拡大などを背景に、今後もサー
ビス産業の重要性は高まり、一層の市場拡大が見込まれる。
しかし、このようなサービス産業の役割の拡大にもかかわらず、その生産性の伸び
が、我が国製造業と比べて、そして海外のサービス産業と比べて相対的に低いことが
指摘され、サービス産業にイノベーションと生産性向上を如何に達成するかが、我が
国経済の発展にとって重要な課題となっている。
本研究会は、産学官が連携して取り組む共通のプラットフォームとして構築される
「サービス産業生産性協議会」の設立に向け、①サービス産業を取り巻く共通課題に
ついて検討を行い、②それらの課題についての官民の役割分担を考え、③(個々の
企業としての取組の他に)広く民間においてどのような活動が期待されるかを検討し、
④同協議会の役割に関する基本構想を策定することを目的とし、設けられた。
サービス産業のイノベーションと生産性の向上のためには何を行うべきかを議論す
るにあたっては、以下の四点に留意しつつ検討を行った。
<現場と事例>
○ サービス産業の現場からの意見と数多くの事例分析をもとに、いわば「現場主義」
の検討を行うことである。具体的には、のべ百数十名の産業界の関係者や学会
の有識者の御意見と国内外の幅広い先進的事例の収集とその分析を踏まえて
議論を行った。
<横断的枠組み作り>
○ これまで、個別産業に着目した議論が行われてきているが、今回は初めての試み
として、サービス共通の特性を考え、横断的な枠組み作りを目指した。
<如何にダイナミズムを生み出すか>
○ 必ずしもダイナミックな変化、イノベーションを生み出す環境が整っていないサー
ビス産業で、如何にしてサービス産業にダイナミズムを呼び起こすか、との視点を
重視した。しかし、この点は今後の幅広い政策展開とサービス産業生産性協議会
での活動に依るところも大きい。
2
<新たな視点>
○ サービス分野における科学的・工学的アプローチ、製造業ノウハウの活用など、
新たな視点で、サービス産業の活性化を考えた。
このような視点から、本報告書では、科学的・工学的アプローチの拡大、サービス
提供者と消費者をつなぐ仕組み作り、人材育成など幅広くサービス産業のための市
場環境整備などの具体的取組を検討した。重要なのはここでの横断的な検討事項を、
官民の適切な役割分担の下で、どのように実行していくかである。また、サービス産
業は多様で多分野にわたり、その具体的取組にあたっては個別業種毎の施策と、そ
れぞれの個別業種の事情に応じた「横断的」取組が、官民、そして官においては、関
係省庁の連携と協力の下で行われることが重要である。
今後、政府とサービス産業生産性協議会が、関係者を広く巻き込んで、サービス産
業のイノベーションと生産性向上のダイナミックな展開を作り出していくことが必要で
あり、期待される。
【サービス産業のイノベーションと生産性に関する研究会メンバー】
座長 牛尾治朗
ウシオ電機㈱代表取締役会長
秋草直之
富士通㈱代表取締役会長
新井民夫
東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻教授
伊藤元重
東京大学経済学部・大学院経済学研究科教授
小林栄三
伊藤忠商事㈱代表取締役社長
斎藤敏一
㈱ルネサンス代表取締役社長執行役員
桜木君枝
㈱ベネッセコーポレーション常勤監査役
西本甲介
㈱メイテック代表取締役社長兼CEO
橋本和仁
東京大学先端科学技術研究センター所長
村上輝康
㈱野村総合研究所理事長
(肩書きは研究会発足時)
研究会では、有識者(約 20 名)、企業関係者(約 100 名)等のサービス産業の現場からの御
意見と、サービス産業における様々な事例分析をもとに議論を行った。
は、研究会委員と有識者、企業関係者の意見、コメントの一部をそのまま紹介したもの
である。研究会委員の意見については、委員名を記載した。その他いただいた御意見につい
ては、関係業界の名前を記載した。
3
Ⅰ.サービス産業を取り巻く状況
1.サービス産業の重要性と低い生産性
<高まるサービス産業*の重要性>
三次産業は、日本経済の7割近く(GDP・雇用ベース)を占める重要な産業である。
このうち、サービス産業(狭義)のGDPに占める割合も、1990 年の 41%から 2000 年
には 44%まで拡大してきている。
さらに、①少子高齢化など社会構造変化に対応したサービス需要の増大、②製造
業を中心に業務のモジュール化が進むことによるアウトソーシングの拡大、③公的市
場の民間開放や規制改革による新たなサービス市場の拡大などを背景に、今後もサ
ービス産業の重要性は高まり、一層の市場拡大が見込まれる。
消費動向についても、医療福祉サービスや携帯電話をはじめとする通信分野の支
出の増大など、家計消費に占めるサービス分野の金額、割合は増加している。
<世界各国でも高まるサービス産業*の重要性>
サービス産業*の重要性の増大は、我が国だけではない。世界各国でも、サービス
産業*の対 GDP 比は拡大しつつある。
(※)サービス産業*の実質 GDP に占める割合の推移(90 年→02 年)
日:61.7→67.9%、 米:70.2→70.9%、 EU15:59.0→62.8%、 中:31.3%→41.7%
対
対
名
名
目
目
G
G
D
D
PP
製造業
(%)
45
日本
カナダ
ドイツ
イギリス
40
(%)
80
米国
フランス
イタリア
75
70
35
サービス産業
日本
カナダ
ドイツ
イギリス
74.1
66.8
64.0
62.1
65
30
60
26.2
25
24.3
55
20
20.0
19.3
18.2
50
58.6
59.1
59.1
45
18.8
14.4
15
40
10
1970
1975
1980
1985
1990
1970
1995 (年)
1975
日本
カナダ
ドイツ
イギリス
35
1980
1985
1990
1995(年)
サービス産業
製造業
(%)
40
雇
雇
用
用
米国
フランス
イタリア
(%)
80
米国
フランス
イタリア
73.9
75
74.5
72.8
70
30
73.7
65
24.1
25
55
20.5
18.6
17.1
20
15
15.0
63.1
62.2
62.6
60
23.6
日本
カナダ
ドイツ
イギリス
50
14.7
45
10
米国
フランス
イタリア
40
1980
1985
1990
名目GDPのグラフ
出典:通商白書2002(原資料:OECD
「Labour Force Statistics」)
(備考)ドイツは、旧西ドイツのデータ
1995
2000 (年)
1980
1985
1990
1995
2000 (年)
雇用のグラフ
出典:通商白書2002(原資料:国際連合「National Account Statistics」)
(備考)1.ドイツは、1990年までは旧西ドイツ、1991年以降はドイツのデータ。
2.フランスについては、被雇用者(employee)のデータを使用。
3.サービス産業は、「卸・小売(レストラン、ホテルを含む)「運輸・通信」
「金融・保険・不動産」「地域・社会・個人サービス」の合計。
製造業とサービス産業の各国比較(対名目 GDP、雇用)
※ 当資料内で「サービス産業」が三次産業を指す場合には*を付すこととする。
4
サービス産業*の経済全体に対する重要性が増すにつれ、先進諸国のみならず、中
国等アジア諸国でもサービス産業*を政策的にも重視する動きが見られる。
「マルコム・ボルドリッジ賞(大統領賞)」(1987年)
−アメリカの企業の競争力強化を目指した国家品質賞
−サービス産業についても対象。99年より、教育・ヘルスケア部門を創設。
【対象となる主な表彰部門】サービス/中小/教育/医療 等
米国
「Innovate America(パルミサーノ・レポート)」(2004年12月発表)
○「サービスサイエンスを学問領域として認識する。大学、短大、産業界が連携してカリキュラムを構築したり
専門家を育成することを支援する。」
○「IT革命によって、製造業の主な部分はサービス業となってきている。競争力のある会社ほど製品とサービ
スを融合させている。製品に付随してサービスを提供することによって製品とサービスの価値体系を変え、収
入源を転換していくことができるからである。」
民間等の取組
○UC BerkeleyやIBM等を中心としたサービスサイエンス研究への取組
「サービス指令」
EU
○EU域内市場においてサービス業が他のEU加盟国において「設立」及び「一時的な移動」に際し直面する
障壁を取り除くことを狙いとした指令。(現在加盟国が国内法令整備中)
−手続きに関してEUの調和された水準まで単純化
−「設立の承認」について、無差別の原則を適用 など
「サービス指令」のインパクトアセスメント
・EU域内の更なる貿易投資拡大
・中小企業の域内事業活動にも好影響
・域内市場の貿易の障壁はイノベーションの障害にもなる
・雇用についてはネガティブな影響
「第11次5ヶ年計画」(2005年9月発表)
中国
【目標】
GDP中のサービス産業の割合:3%増加 (40.3%→43.3%)
サービス産業の就業者の比率:4%増加 (31.3%→35.3%)
(2005年→2010年目標)
○生産者向けのサービス業
・交通・運輸業、物流業、金融サービス業、情報サービス業、ビジネスサービス業を強力に発展させる
○消費者向けのサービス業
・商業貿易、不動産業、旅行業、公共事業、コミュニティサービス、スポーツ産業を発展させる
○「独占を打破し、透明・平等で規範化された参入許認可制度を設立する。
サービス業の発展を上位に置き、サービス経済を主とする産業構造を構築する必要がある。」
「2006年経済運用の基本方向」
韓国
○サービス産業の新しい成長動力化推進
・サービス産業の競争力強化対策の効果を測定する評価指標の開発
・運輸、情報通信、金融・保険、流通等の主要サービス産業別に生産性実態調査を実施し、生産性向上対策を
確立
「企画予算処方針」(2006年)
○サービス政策の策定や人材養成に当たる「社会サービス向上企画団」が7月27日に発足。
○現在サービス分野で90万人の雇用が不足しており、企画団の活動により、雇用の創出が進むと期待されて
いる。
米国、EU、中国、韓国におけるサービス政策
5
<製造業と比べて、低いサービス産業*の生産性の伸び>
ほとんどの先進諸国においても、サービス産業の生産性の伸びは製造業より低い
が、中でも日本は、伸びの差が大きく、経済成長における課題となっている。
労働生産性上昇率(1995∼2003)
米国
3.3%
2.3%
製造業
サービス業
英国
2.0%
1.3%
ドイツ
1.7%
0.9%
日本
4.1%
0.8%
(資料)OECD compendium of Productivity Indicator 2005 より作成
製造業の労働生産性上昇率(1995-2003)
8.6 8.3
6.0 5.8
5.3
4.3 4.2 4.1 4.0 3.9
3.6 3.3
3.1 3.1 2.7
2.6 2.5 2.5 2.2 2.2
2.0 2.0 1.7 1.6
1.5 1.2
1.0
0.2
Po
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%
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
サー ビス産業の労働生産性上昇率(1995-2003 )
%
サービス産業の労働生産性上昇率(1995-2003)
5
4
3
2
1
3.8
2.9
2.3 2.3 2.2
2.0 1.8 1.8
1.7
1.4 1.3 1.3
1.1 1.0 1.0 1.0 0.9
0.8 0.8 0.6
0.5 0.4
0.1 0.1 0.1 0.1
0
-0.2
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(出典) OECD compendium of Productivity Indicator 2005
製造業とサービス産業の労働生産性上昇率の各国比較
6
<生産性向上が特に必要なサービス産業(狭義)>
グローバル競争、規制改革による新規参入・競争や技術革新により生産性が向上
している通信、金融保険業といった産業に比べ、サービス産業(対事業所・対個人サ
ービス、流通物流等)の生産性の伸びは低い。従って、三次産業の中でも、特にサー
ビス産業(狭義)の生産性向上が課題である。
通信
金融保険
サービス
(狭義)
出典:国民経済計算 JIPデータ
業種別生産性推移(円/人) 1980∼2003
<伝統的にものづくりが重視される社会背景>
日本では「ものづくり」が重要ということについては、一般的なコンセンサスがあるが、
サービス産業は、やや軽視されているのではないかという指摘がある。
【ものづくりと比べて、軽視されるサービス産業】
・日本では「ものづくりが重要」ということについて経済界・国民の間にコンセンサスがあるがサービスについてはそれ
がない。(村上委員)
7
【参考】サービス産業とは
サービス産業*とは、いわゆる三次産業を指すことがあり、この場合には、一次・二次産業以外の非
常に幅広い業種を含む。一方、対個人・対事業所サービス等といった狭義のサービス産業を指してサ
ービス産業と呼び、これを政策対象とすることも多い。当資料内でサービス産業が三次産業を表す場
合には*を付すこととする。
実質GDPの推移
就業者数の推移
100%
100%
80%
80%
66.2%
60%
60.0%
69.6%
66.8%
60%
40%
40%
20%
31.9%
0%
1.9%
1.3%
1993
2003
一次産業
二次産業
32.5%
20%
29.1%
27.2%
7.6%
0%
6.0%
1993
出典:国民経済計算
三次産業
2003
一次産業
二次産業
三次産業
産業別GDP、就業者数推移
(※)サービス産業(医療、介護、教育、流通、物流、対個人・対事業所サービス等)の全産業に占める割
合は、1990 年の 41%から 2000 年には 44%まで拡大。
一次産業(農林水産), 2.1%
三次産業
(その他)
22.2%
二次産業
(製造業・鉱業・建設業)
34.3%
1990
三次産業(サービス)
※表中の
サービス業の業種
41.4%
一次産業(農林水産), 1.9%
三次産業
(その他)
25.4%
二次産業
(製造業・鉱業・建設業)
28.9%
2000
0%
10%
三次産業(サービス)
43.8%
69%
第3次産業
69%80%
40%
50% 三次産業
60%
70%
図 サービス産業の割合
20%
30%
90%
100%
「サービス」の内訳と業種による伸びの差(2000 年/1990 年の付加価値額の比により計算)
1990
単位:兆円 粗付加価値額(95年固定価格評価 実質表)
農林水産業
製造業・鉱業・建設業
その他
サービス
全産業内
割合(1990)
全産業内
割合(2000)
00年/90年
(%)
9.4
2.1%
1.9%
97%
161.0
146.2
34.3%
28.9%
91%
不動産
45.8
55.5
9.8%
11.0%
121%
電力ガス水道・廃棄物処理
15.8
16.1
3.4%
3.2%
102%
金融保険
20.8
26.0
4.4%
5.1%
125%
運輸(貨物運輸等除く)
通信・放送
12.9
7.3
12.3
17.0
2.7%
1.6%
2.4%
3.4%
95%
234%
その他・分類不明
その他計
三次産業
3次産業
2000
9.7
1.6
1.2
0.3%
0.2%
75%
104.2
128.1
22.2%
25.4%
123%
医療・保険・社会保障・介護
17.4
18.2
3.7%
3.6%
105%
教育・研究
24.0
24.1
5.1%
4.8%
100%
対個人サービス
対事業所サービス
32.9
33.8
32.4
46.6
7.0%
7.2%
6.4%
9.2%
98%
138%
125%
流通(卸小売)
56.4
70.3
12.0%
13.9%
物流(貨物運輸・倉庫・こん包)
11.2
10.5
2.4%
2.1%
94%
公務
15.4
16.8
3.3%
3.3%
109%
その他の公共サービス
サービス計
2.8
193.9
2.7
221.5
0.6%
41.4%
0.5%
43.8%
96%
114%
三次産業計
3次産業計
298.2
349.7
63.6%
69.2%
117%
全産業計
468.9
505.3
100.0%
100.0%
108%
医療は、国公立、公益法人、医療法人。社会保障は、社会保険事業、社会福祉
物流は、鉄道貨物輸送、道路貨物輸送、貨物運送取扱、倉庫、こん包
出典:経済産業研究所「長期接続産業連関表」
対個人サービスは、娯楽サービス、飲食店、旅館その他の宿泊所、その他対個人サービス
対事業所サービスは、広告調査情報サービス、物品賃貸サービス、自動車・機械修理、その他対事業所サービス
8
(※)対事業所サービスは、労働者派遣の付加価値の伸びが 167%など大きな伸びを見せる。他方、個人
向けサービスの映画館、劇場がそれぞれ 58%、82%に減少する一方で、美容業、冠婚葬祭業はいず
れも 142%,に増加するなど業種毎にばらつきがある。(2000 年/1990 年の比率)
付加価値額から見たサービスの伸び
業種別に見た付加価値額の比(2000年/1990年)
付加価値の減少している業種例
付加価値の伸びている業種例
情報サービス
貸自動車業
物品賃貸業(除貸自動車)
労働者派遣サービス
卸売
美容業
冠婚葬祭業
金融
417%
323%
233%
167%
143%
142%
142%
111%
映画館
不動産賃貸業
ハイヤー・タクシー
不動産仲介・管理業
鉄道貨物輸送
劇場・興行場
バス
倉庫
58%
67%
70%
75%
75%
82%
86%
91%
経済産業研究所「長期接続産業連関表」にもとづき作成
事業所向けサービス(水色網掛け)
・事業所向けサービスは、労働者派遣の付加価値の伸びが 167%など大きな伸びを見せる。
(2000 年/1990 年の比率)
個人向けサービス
・個人向けサービスは、映画館、劇場がそれぞれ 58%、82%に減少する一方で、美容業、冠婚葬
祭業はいずれも 142%,に増加するなど、伸びている業種もあれば、そうでない業種もあり、新陳
代謝の多い業種ともいえる。(2000 年/1990 年の比率)
雇用からみたサービスの伸び
業種別に見た就業者の変化
サービス業基本調査(総務省)の中から、89年以降一貫したデータの取得可能な業種をもとに作成
事業所向けサービス
・建物サービス業、ソフトウェア業、警備業といった事業所向けサービスで就業者数の顕著な伸
びが見られる。
個人向けサービス
・理容業、パチンコホール、ゴルフ場といった個人向けサービスの就業者数は減少傾向にある。
ただし、冠婚葬祭業は微増傾向にあり、個人向けサービスでは業種毎にばらつきが見られる。
9
家計消費からみたサービスの伸び
家計消費に占めるサービス分野への支出の推移(金額、割合)
全国消費実態調査(総務省)をもとに作成
消費全体に占める割合の推移
全国消費実態調査(総務省)をもとに作成
・
・
サービス分野(交通、通信、光熱費も含め、商品に対する支出以外の広い分野を
カバーする)に対する支出は、金額、割合ともに増加している。
業種毎に見ると、特に保健医療サービス費、教養娯楽サービス費と携帯電話の
普及が著しい通信費が顕著な伸びを見せている。
10
【コラム】米国よりも低い我が国サービス産業*の生産性とその要因
サービス産業の対米比較における生産性は総じて低い。主な生産性格差の要因は
以下のものが考えられる。(マッキンゼー等の分析)
①対個人サービス
総じて展開規模が小さくチェーン化が進んでいない。そのため、ノウハウの欠如、
質の情報不足による弊害も生じており、チェーン化された米国と比べ低い生産率にと
どまる。
②コンピュータ関連サービス
カスタマイズされたソフトウェア・サービスをハードと共に継続的に納入するプレー
ヤーが多く、プレーヤーの入れ替えが米国より少ないため、競争が促進されない。効
率的な開発手法の導入が遅れている。
③卸売・小売業
生産性の低い小規模事業者が半数以上を占める。マーケティング力・調達能力が
弱く、情報システム・非効率な人員配置の改善インセンティブも不足している。
④ホテル・外食
展開規模が小さく、チェーン化が進んでいない。一方、米国ではチェーン化により、
規模の利益を享受し、効率的なオペレーションを実現している。
⑤運輸
小規模事業者が多く、運搬ロットが小口、集客力分散のため実車率が低い、物流
ルートが最適化されない等の問題により、非効率な経営が続いている。米国に比べ、
小型トラックの比率が高い。
11
2.サービス産業が重視される背景とその要因
新ビジネス創出への期待、社会経済・ライフスタイルの変化、地域経済発展への貢献、
製造業のモジュール化によるアウトソーシングの拡大、日本ブランド発信への期待等
がサービス産業がより重視される背景にあるものと考えられる。
<新ビジネスの創出>
開業率は、製造業よりもサービス産業*が総じて高い。サービス・イノベーションの普
及拡大は、新規開業率を押し上げる契機となり、また、新規開業は、サービス・イノベ
ーションそのものでもある。
・サービス産業は設備投資額が少ないため、新規参入する企業が多い。そのため、ベンチャー施策を推進するこ
とが重要。(有識者)
・アメリカでも新規に上場している企業は多いが、NASDAQ と JASDAQ を比較すると、新規に上場しているサービス
産業の企業の割合は、JASDAQ の方が多いのではないか。(有識者)
業種別開業率(平成13年10月からの32か月の平均)
12.0%
第3次産業(サービス産業)
10.0%
10.0%
8.0%
6.5%
5.6% 5.5% 5.4%
6.0%
3.9%
4.0%
2.0%
3.9%
3.6%
2.9%
2.8%
2.5%
1.9%
1.7%
1.2%
・ガ
業
ス
業
ー
ビ
事
ス
援
ー
ビ
サ
合
育
,学
サ
業
祉
支
療
医
習
複
ス
教
飲
食
店
動
,宿
泊
,福
業
業
産
業
険
不
融
金
卸
売
・小
・保
売
輸
業
業
業
信
通
報
情
運
業
道
業
・熱
供
給
製
・水
造
設
建
鉱
業
業
0.0%
電
気
業種は新産業大分類(日本標準産業分類(2002年改訂)を利用
出典:平成16年事業所・企業統計調査
業種別開業率(平成 13 年 10 月からの 32 ヶ月の平均)
12
<製造業の競争力を大きく左右>
製造業を中心に、業務がモジュール化し、このモジュール化された業務のアウトソ
ーシングが拡大するなど、製造業におけるサービスの役割が増大し、サービス産業
が製造業の競争力を大きく左右することとなってきている。この傾向は、製造業の中
間投入に占めるサービス産業のウェイトの増加からも読み取ることができる。
モジュール化された業務に IT を活用することにより、一層の効率化、高付加価値化
も可能となってきている。例えば、コールセンター等の地方展開に見られるように、物
理的地域を越えたモジュール化・アウトソーシングが進展している。また、アウトソー
シングの需要に応え事業支援サービス等が増加している。
(※)パルミザーノ・レポート、2004 より抜粋
IT革命によって、製造業の主な部分はサービス業となってきている。競争力のある会社ほど製品とサ
ービスを融合させている。製品に付随してサービスを提供することによって、製品とサービスの価値体系
を変え、収入源を転換していくことができるからである。
・科学的・工学的手法のサービス産業への適用は、長期的に見て重要。いろいろな手法が別の業界にはあり、サ
ービス業に製造業のノウハウを適用するという取組はとても重要。「製造業のサービス化」、「サービス業の製造業
化」の2つがこれから進んでいくだろうと考えている。(新井委員)
製造業の中間投入に占めるサービス部門の割合
100%
90%
19.6
21.8
26.0
29.3
31.3%
29.8%
64.5%
65.8%
80%
70%
60%
50%
70.6
63.7
64.0
40%
62.0
30%
製造業の中間投入に占めるサービス
産業*の割合は、80 年→04 年で 19.6%
→29.8%に増加。
20%
10%
7.5
12.8
9.1
7.6
4.3%
4.4%
1990
1995
2000
2004
0%
1980
1985
第一次産業
第二次産業
第三次産業(サービス部門)
製造業の中間投入に占めるサービス部門の割合
出典:通商白書 2002(「総務省産業連関表」、「経済産業省産業連関表(延長)」より作成)
13
<ライフスタイルの変化/新たな担い手の出現>
少子高齢化やライフスタイルの変化に伴って、福祉・子育て支援などの新しい需要
が拡大している。
また、女性や高齢者の労働参加や福祉・子育て支援等社会的課題対応の新たな担
い手として NPO や地域での組合活動などの重要性が増大している。
OECD の調査(※)で、一般的に GDP に占めるサービス産業の比率が高まるとともに女性の参加率も高ま
る傾向にあることが分析されている。
(※) GROWTH IN SERVICES, Fostering Employment, Productivity and Innovation, OECD
・女性労働力、シニア層をどう活用するかということを重視している。製造業では女性やシニア層活用へのバリアが
高く、サービス産業に吸収力がある。(桜木委員)
・NPO・消費者団体による評価が、一般の消費者におけるサービスの品質評価に与える影響が大きい。(有識者)
<地域経済発展に果たすサービス産業の役割>
サービス産業は地域の雇用を生み出し、同時に、地域のブランド力を高める重要
な産業である。
地域におけるサービス産業の役割は、以下の 3 類型に分類できる。
①IT活用による地理的制約を越えたサービスの提供【地理的制約解消型サービス】
例:コールセンター、データセンター、リモートメンテナンスセンター等
②地域ブランド向上に寄与するサービス産業【地域ブランド創出型サービス】
例:観光、コンテンツ
③地域の新たなニーズに応えるサービス産業 【地域内需対応型サービス】
例:健康・福祉、育児支援
(※)卸・小売業、製造業が全地域で減少しているのに対し、サービス業における就業者数はいずれの地
域においても増加が見られる。
(※)地域のブランド力 とサービス業の比率には正の相関関係が見られる。
・今後はコールセンターにとどまらず、BPO(Business Process Outsource)分野の地方展開が進むと思う。問題は
自治体が誘致企業にばかり支援策を講じるのみならず、地域の企業に新しいサービスを進出させ、首都圏の顧客
を獲得させるという方向も目指されるべき。(人材派遣産業関係者)
14
出典:内閣府「地域別に見た最近のサービス業の動向」、および総務省「労働力調査」より作成
(九州は沖縄を含む)
就業者数の増減率
地域のブランド力と県内総生産に占めるサービス業の比率
出典:内閣府「地域の経済 2005」
15
<ブランドとソフトパワーの強化に貢献>
我が国だけでなく、世界各国でサービス産業が各国のブランドやソフトパワー強化
に貢献している。
しかし、例えば我が国のコンテンツは、国際的に高い評価を受ける一方、コンテンツ
産業の海外市場展開には課題も多い。
(※)コンテンツの海外売上の割合は米国が 17.8%にのぼるのに対し、日本は 1.9%に留まる。
日本は、外国人観光客の受入れ数では、中国、香港、マレーシア、タイ、シンガポ
ールといった国々にも後塵を拝している。
(※)日本からの海外旅行者数が 1,754 万人に上るのに対し、日本への外国人観光客数は 733 万
人にとどまる(平成 17 年)。(外国人観光客目標 2010 年 1,000 万人)
(※)平成16年の日本の外国人旅行者受入数 614 万人は、世界で30位、アジアの中で7位。
コンテンツに関する各国比較(2004 年)
コンテンツ規模
GDP
コンテンツ/GDP
海外売上/コンテンツ
日本
0.1 兆ドル
4.6 兆ドル
2.2%
1.9%
米国
0.6 兆ドル
11.7 兆ドル
5.1%
17.8%
世界
1.3 兆ドル
40.9 兆ドル
3.2%
N.A.
出典:世界銀行HP、DCAJ 白書 2006、DCAJ調査データ
国内マーケット
海外マーケット
映画
2005年
映画興行収入
観客動員数
邦 画
邦画シェア
05年 41.3%
ハリウッド
1982億円
約1.6億人
・2005年の興行収入は
89.9億ドル(前年比5.8%
減)
・2005年の米国の映画館
入場者数は14.0億人と3
年連続の減少
・外国からのリメイク権
購入が活発化
洋 画
05年 米180、
韓64、仏50(本)
欧州
米国内の国別映画
シェア
米国(単独)
86.0%、
欧州との共同製作
8.5%、
欧州 3.1%、
その他 2.4%
アジア
2005年の興行収入
英国 7億7030万ポンド(横ばい)
ドイツ 7億4500万ユーロ(16.6%減)
仏 11億3420万ユーロ(13.8%増)
イタリア 6億1400万ユーロ(7.2%減)
・人口比の動員数でみると、日本より
はるかに多い。(英仏では1人当たり年
間3回程度)
2005年の興行収入
中国 2億4800万ドル
(33.3%増)
韓国 88億700万ウォン
(3.6%増)
インド 動員数約36億人
(2004年)
アニメ
2005年
アニメ業界売上高 2205億円(前年比6.4%増)
うち海外売上高 192億円(前年比4.3%増)
微増傾向
ゲーム
家庭用ゲーム市場(2005年)
ソフトウェア 3141億円(前年比0.6%減)
ハードウエア 1824億円(前年比51.8%増)
オンラインゲーム市場(2006年)
市場規模596億円(前年比62%増)
欧米市場の飛躍的市場拡大と
日本製ソフトのプレゼンス低下
(かつて世界の6割→2∼3割)
韓国が非常に強く、
米国も追い上げ
コンテンツ産業の輸出入概要図
16
75,121
フランス
53,599
スペイン
46,077
41,761
37,071
アメリカ
中国
イタリア
27,755
21,811
20,618
20,137
19,373
19,150
16,826
15,708
15,629
14,290
13,989
12,212
11,651
11,617
9,648
9,164
8,580
8,328
8,324
7,912
6,982
6,815
6,710
6,590
日本は世界で第30位、
6,138
アジアで7位
6,061
5,998
5,900
5,818
5,746
イギリス
香港
メキシコ
ドイツ
オーストリア
カナダ
トルコ
マレーシア
ウクライナ
ポーランド
国 ・地 域
ギリシャ
ハンガリー
タイ
ポルトガル
オランダ
ロシア
サウジアラビア
シンガポール
マカオ
クロアチア
アイルランド
南アフリカ
ベルギー
スイス
日本
チェコ
チュニジア
アラブ首長国連邦
韓国
エジプト
0
10,000 20,000 30,000
40,000 50,000 60,000 70,000 80,000
千人
世界観光機関(UNWTO)資料に基づき国際観光振興機構作成
外国人旅行者受入数の国際ランキング(平成 16 年)
<サービス産業もグローバル化の例外ではない>
コールセンター・情報サービス・メンテナンスなど、多様な分野における海外へのア
ウトソーシング拡大事例に見られるように、国境を越えたサービス提供が増大してお
り、サービス産業もグローバル競争の下に置かれてきている。
(※)我が国のサービス収支は一貫して赤字で推移(約 2.5∼6 兆円の赤字)
(※)ソフトウェア産業においては、図に示すとおり、大幅な赤字を記録
・サービス分野でも日本語のカベが外からの競争に対して機能しなくなっている。国際化という視点をどう扱うかも
課題ではないか。(村上委員)
・日本のサービス企業が海外にも打って出るには、日本人が得意とする質の高いサービス、ホスピタリティが武器
となるのではないかと考える。 (斎藤委員)
・グローバル化が避けられない。具体的には大学教員を外人に開放するとか、9月入学制にするとかが課題とな
る。生産性という観点では設置基準(の運用)の柔軟化が求められる。(伊藤委員)
17
【海外への進出事例】
J社(旅行)
中国で海外旅行事業を強化
中国で中国人を対象顧客とする海外旅
行事業を強化する。日本だけでなく欧州、
カナダなど中国人に人気のある旅行先
についてニーズにあった商品・サービス
を提供する。
M社(タクシー)
ハイヤー営業を計画
合弁会社を設立しハイヤー営業に
関する教育等をバックアップする
予定。
A社(コンテンツ:音楽)
中国で歌手発掘から育成まで
北京に日中韓合弁で芸能プロダクショ
ンを設立。アーティストや作詞家、作曲
家の発掘、育成やマネジメント、海外
音楽、映像原盤権のライセンス販売等
を行う。
B社(教育)
幼児教育で上海の出版社と教材開発
中国のA社と共同で幼児向け教育に関する共同
研究を実施し、その成果をA傘下の出版社にライ
センス供与するロイヤリティビジネスを展開。
<参考> 日系進出企業数(全産業)
中国への進出企業数:19,779社
インドへの進出企業数:328社
出典:JETRO
国境を越えたサービス提供の増大(中国・インド関連)
18
世界貿易に占めるサービス貿易の割合は約 20%に至る1。国際的な取引拡大に伴
い、市場参入障壁が新たな通商問題ともなってきている。
日本のサービス*収支は一貫して赤字で推移
2000
2002
2005
サービス収支
-494
-598
-264
貿易収支
1237
1155
1033
単位 100 億円 出典:財務省「国際収支状況」
3500
2947
3000
2895
2500
輸出
輸入
2000
1500
1000
500
93
92
2002年
2003年
0
(単位:億円)
出典:(社)電子情報技術産業協会、(社)日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会、(社)情報サービス産業
協会
「ソフトウェア輸出入統計調査 2003 年実績」
我が国のソフトウェア貿易は大幅な赤字
第1モード(越境取引)
第1モード(越境取引
消費者
サービス提供
第2モード(国外消費)
提供者
提供者
消費者
消費国
消費国
拠点
サービス提供
消費者
の設
置
消費者
第4モード(自然人の移動)
第3モード(拠点の設置)
拠点
移動
自然人
提供者
消費者
消費国
サービス提供
移動
提供者
自然人
消費国
サービス貿易の4態様(WTO「サービスの貿易に関する一般協定」)
1
外務省HPより抜粋(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/service/service.html)
19
我が国から見たサービス貿易上の主な障壁例
障壁例
内容
モード
AV 規制(EU)
放映の過半を欧州作品とする指令
《第1モード》
外国製映画の上映日数規制(韓国)
年間上映日数の20%を自国作品とする規制
《第1モード》
外国製映画の数量規制(中)
外国製映画の輸入は 20 本/年
金融分野の外資参入規制(米)
卸・小売フランチャイズ規制(中)
州法により、いくつかの州において外資の金融
機関の支店・代理店の設置が規制(禁止)
WTO 加盟時に約束した外資規制等の撤廃
金融、電気通信分野、流通等における外資参
外資参入規制(ASEAN)
入規制
《GATT 及び第1、
2モード》
《第3モード》
《第3モード》
《第3モード》
出典:2006 年版 不公正貿易報告書
FTA/EPA 交渉サービス分野における市場開放要求内容
対象国
内容
モード
フィリピン
看護師の受入れ
《第4モード》
タイ
SPA セラピストの受入れ
《第4モード》
WTO サービス分野における紛争事例
紛争事例
電機通信規制【米 vs 墨】
内容
モード
メキシコ電気通信規制が、墨最大手 Telmex と米 Sprint 連
合の優位を基礎づけているとして米が提訴。
オンライン賭博
米がクレジットカード会社による送金に規制を課した結果、アン
【米 vs アンティグアバブーダ】
ティグアバブーダが多大な損害を受けたとして米国を提訴。
《第1モード》
《第1モード》
出典:2006 年版 不公正貿易報告書
20
Ⅱ.横断的な枠組み作り
−横断的パッケージの必要性−
1.サービス産業の低い生産性の背景
<サービス産業に共通の特性>
サービス産業は多様である。しかし、他方で、サービス産業は、 「無形性」(目に見
えない) 、 「同時性」(提供と同時に消滅)などの共通の特性を持つ。
また、サービス産業は新たなニーズに対応して生まれる若い産業が多く、中小企業
比率も高いという「新規性・中小企業性」という特性もある。
サービス産業の低い生産性は、これらの特性から来る、グローバルな競争に晒さ
れていない産業が多い、市場が地域に限られる、消費者等に品質等の情報が行き渡
りにくい等の市場環境が背景にあると考えられる。
【参考】サービス産業の特性
無形性(目に見えない)
情報の非対称性があるため、
①消費者に情報が行き渡らず十分な競争が起こらない。
②消費者の視点・信頼性抜きには、市場の発展は望めない。
【無形性(目に見えない)】
・保育業界においては、a)相性の良いベビーシッターが継続的に訪問するのではなく違った人が訪問、b)前日まで
担当者がわからない、c)赤ちゃんに怪我を負わせる、d)遅刻する、などのサービス品質上のクレームが多い。(育
児サービス産業関係者)
同時性(提供と同時に消滅)
競争が限定的なため、
①貿易財としての性質を持たないため、製造業に比べ、グローバルな競争に晒されていない。
(※)但し、近年のIT技術の進展により、多くのサービス産業が急速にグローバルな競争下におかれるよう
になってきている。
②地域に市場が限られているため競争が不十分である。
③製造業に比べ、研究開発が活発でない。
④知財が保護されにくいため、ノウハウが真似されやすく、新たなサービスのノウハウに対するプレミ
アムが比較的早く消滅する。
【同時性(提供と同時に消滅)】
・サービス産業はちょっと工夫をすればとりあえず事業が成り立ってしまう。製造業は研究開発をしないと生き残れ
ないが、サービス業はそうではない。それだけにさらに組織的に研究を深めようという取組がサービス産業では生ま
れにくい。(斎藤委員)
新規性・中小企業性
市場が若く、中小企業が多いため、
①体系的なサービス産業人材育成(中高等教育など)、またはそのためのカリキュラムなどの整備が
遅れている。このため、担い手となる人材の育成が進んでいない
②ITの活用も進んでいない
③産業自体の信頼性も課題
④その他(伝統的な「ものづくり」に対する信頼性の方が高く、サービス産業がやや軽視される社会的
背景など)
【新規性・中小企業性】
・サービス産業は、まじめにコツコツ積み上げなくても上手く儲かってしまうことがある。このため一部にモラルや倫
理観の欠如などの問題が発生し、産業全体のイメージを悪くしている場合がある。サービス産業に対してネガティ
ブな印象をもたれている場合は、優秀な人材も集まらず悪循環が生じる。(有識者)
21
2.特性を踏まえた自由な民間活力発揮のための横断的な枠組み作り−競争促進
のための市場環境整備−の重要性
<サービス産業は多様だが、サービス産業の共通の特性に着目した横断的取組が
重要>
サービス産業は、多様で多分野にわたる。しかし、サービス産業は共通の特性も持
つ。その特性を捉えた業種横断的な取組を展開し、サービス産業全体が「幅広く、自
由に」動ける枠組み作りを行うことが重要。
【サービス産業が自由に動ける仕組み作りを!】
・サービス産業は、非常に多様、また多分野にわたる。教育、介護をはじめ、幅広いサービス産業が自由に動け、
発展できるような枠組み作りが重要。(牛尾座長)
<民間活力の発揮が基本−競争促進のための市場環境整備−>
イノベーションと生産性向上のためには、自由な民間活力発揮が基本。このために
は、サービス産業の特性を踏まえて、適切な官民の役割分担の下、競争促進のため
の市場環境整備を推進することが必要。
【草の根運動は民に、政府は仕組み作りを。】
・草の根からの生産性向上は基本的には民間の取組がまず基本であり、政府の役割は制度・仕組みに関わるとこ
ろが重要。(伊藤委員)
・民主導をあまり強調すると、「どうしてよいかわからない」という状況になる可能性。むしろ政府がもっと前面に出
て、「このような取組を進める必要がある」とか、「協議会の取組が政策に反映される」などとはっきりさせた方が、
企業はついて来やすいかもしれない。(桜木委員)
<規制改革の取組とともに求められる競争促進のための市場環境の整備>
サービス産業の生産性の伸びは低い。これは、サービス産業では、国際的な競争
にさらされていないものが多く、新たに生まれた若い産業が多いことや、商品と異なり
サービスは目に見えないといったサービス産業の特性から、市場環境が必ずしも整っ
ていないことが背景にあるものと考えられる。規制改革の更なる取組とともに、幅広
い競争促進のための市場環境の整備が必要。
(※)諮問会議民間議員提案から抜粋
4次にわたる3カ年計画によって規制改革が進められてきたが依然として岩盤の如き規制が残っている。それは、
健康・医療・保育・教育など生活に密着した分野であり、消費者の潜在的ニーズが高い分野の規制。
【規制緩和だけではなく、市場環境整備も必要】
・規制緩和だけでは、新規参入は活発化しない。規制改革会議で進められる制度改革に併せて、市場環境の整
備を行う必要がある。(伊藤委員)
22
<イノベーション創出の視点>
地道な生産性向上の取組のみならず、数十年先を睨んだ先端的で、新しい事業分
野を開拓するようなイノベーションをサービス産業の分野でも視野にいれることが必
要。
【10 年∼20 年先を見越した先の尖った取組を!】
・地道な生産性向上も必要だが、5∼10年後をにらんだような先端的な尖った取組が生まれることも有効。(伊藤
委員)
<サービス産業にダイナミックな変化をもたらす原動力は何か>
どのようなメカニズムでダイナミックなイノベーションを起こすかが重要。例えば、
「構造改革」、「社会構造変化」、「外国からの刺激」の 3 つが挙げられる。
ダイナミックな変化、イノベーションのためには、このようなグローバルな競争など
のきっかけが必要だが、サービス産業の場合、必ずしもこのような条件がそろわない。
しかし、産学の連携や競争促進のための市場環境整備などを通じて、ダイナミックな
変化を促すための仕組み作りが必要。
【ダイナミックな視点が重要】
・どういうメカニズムでダイナミックなイノベーションを起こすかということが重要。何かブレークスルーになるものを現
実問題として考えておかなければ、絵に描いた餅で終わってしまう。(伊藤委員)
【参考】ダイナミックなイノベーションのために
構造改革
例えば、IT業界においては、ADSLに繋げるという決定をしたとたんにブロードバンドが広まった。ま
た、不動産の証券化・流動化を決定した際にも大きな影響があった。(伊藤委員)
産学連携がイノベーション創出の1つのエンジンとなりうる。全体を見渡せて、企業と大
学との間に入れるトランスレーターとなる人材を如何に育成するかが重要。(橋本委員)
社会構造変化
技術革新や、高齢化といったような社会構造の変化が起こった際に、否応なく対応せざるを得なくな
った結果生じるもの。(伊藤委員)
業務の「見える化」ができると、工夫の手だてがわかる。例えば標準化、効率化という議
論があったが、社会構造の変化の中で、この部分は絶対に必要であり、避けて通れない。
サービス産業の従事者は、自ら主体的に取り組んで行く必要があると思う。(小林委員)
外国からの刺激
外国の取組事例から刺激を受け成長するもの。日本の製造業が発展したのは外国から刺激を受け
たためとも考えられ、サービス産業においても同様の取組が必要ではないか。(伊藤委員)
グローバルな競争が生じつつある分野もある。グローバルな競争にさらされていない産業
も、意識するか否かを問わず、いずれはグローバルな競争に置かれる。このような認識を
持つべきだ(有識者)
23
3.イノベーションと生産性向上に向けた施策の方向
<生産性向上のために>
サービス産業の生産性向上のためには、①効率性の追求とともに、②顧客満足度
向上やホスピタリティなどサービス品質向上に取り組むことも重要。
効率性の追求については、「サービス産業における科学的・工学的アプローチの拡
大」「製造業ノウハウの活用によるサービス提供プロセスの改善」などの取組がより
有効と考えられる。
※ただし、科学的・工学的手法、製造業ノウハウの活用は必ずしも効率性を追求するだけのものでは
なく、顧客満足度等の改善、向上のために、これらの取組が行われることも多い。
【サービス産業の製造業化】
・科学的・工学的手法のサービス産業への適用は、長期的に見て重要。いろいろな手法が別の業界にはあり、サ
ービス業に製造業のノウハウを適用するという取組はとても重要。もともと、「製造業のサービス化」、「サービス業の
製造業化」の2つがこれから進んでいくだろうと考えている(新井委員)
また、顧客満足度の向上やホスピタリティを含めたサービス品質向上も通じた付加
価値向上・新規ビジネス創出のためには、サービス提供者と消費者の間の情報と信
頼をつなぐ「信頼性向上のための情報提供の仕組み作り」「品質評価のための分野
横断的ベンチマーキングの構築」にも取り組むことが必要と考えられる。
その他、人材育成等の取組が、効率性、品質向上の双方に有効と考えられる。
【分母(効率性・コスト)と分子(需要創造)】
・コスト、合理化という分母的なもの、イノベーション、需要創造といった分子的なものを比べると、どうしても我々は
生産性向上の達成の為にはてっとり早い分母的なものを対象に選ぶ傾向がある。しかし、サービス産業でイノベー
ションをおこすためには、分子的なものをどう学問化していくか、協議会においてどう取り組むか、またそこに対する
刺激が重要だ。(斎藤委員)
24
【コラム】誤解を招く生産性の捉え方
生産性の定義
生産性は、市場における価値創出の際に使用される資源について、その活用の効
率を表すもの。
したがって、生産性向上のためには、効率向上(生産性の分母に着目)と付加価値
向上・新規ビジネス創出(生産性の分子に着目)が両輪となって追求されることが必
要。
(※)OECD によると、「生産性(Productivity)」は、「産出物を生産諸要素の1つによって割った商として定
義されている。
(※)一般的には、生産性というと、労働を投入量として測った生産性(労働者1人1時間あたりの生産性)
=「労働生産性(Labor Productivity)」を指すことが多い。
【生産性の定義−分母と分子―】
・生産性の定義をもう一回思い出すと、分母に労働者数×労働時間、分子に名目 GDP が来るが、どうしても
我々は分母に注目しがちである。すなわち、コスト、合理化という分母的なもの、イノベーション、需要創造とい
った分子的なものを比べると、どうしても我々は生産性向上の達成の為にはてっとり早い分母的なものを対象
に選ぶ傾向がある。異論があるかもしれないが、生産性に関する学問においても、分母的なものを計量化し、
数値化するというところから、最初に発展してきたように思う。(斎藤委員)
「生産性=効率性」の誤解
通常、生産性の議論になると、分母に着目する「効率向上」に目が向きがちだが、
分子に着目する「付加価値向上・新規ビジネス創出」の向上も重要。企業の独自性や
創造性が付加価値向上に結びつくための環境整備が必要。
【「付加価値」という概念も重要】
・サービス企業は、顧客のニーズを捉えつつ社会的貢献をするという使命を重視しているところが多いので、効率
性のみを前面に出すと、経営者の共感を得られなくなる恐れがある。製造業が取り組んできたような面の意義は
認めつつ、どのような点を強調することがサービス企業の意欲を喚起しやすいかという視点が重要。サービス企業
はいかにニーズを先取りして、他人のやっていないことをやるかということを常々考えており、その中から差別化・独
自性を競っている。その意味では「付加価値」という角度から企業を引っ張ってはどうか。(桜木委員)
【生産性の考え方】
品質と信頼性(品質情報の提供)
生産性=
付加価値の向上・新規ビジネスの創出
効率の向上
人材育成など
科学的・工学的アプローチ
製造ノウハウの活用
25
Ⅲ.政策パッケージ
1.「経験と勘」に頼るサービスから「科学的・工学的手法」によるサービスへ
1.1 サービス分野における科学的・工学的アプローチの拡大
1.1.1 今なぜ、サービス工学・科学なのか
<サービス需要の増大>
少子高齢化などの社会構造の変化に対応して、個人が求めるサービスは多様化し、
その需要も拡大した。一方、ビジネスの分野においても、生産性向上とイノベーション
促進や業務の効率化を図るためのアウトソーシング等により対事業所サービスが普
及・拡大するとともに、グローバルな競争激化に伴い、製品とサービスを組み合わせ
たソリューションを提供する高付加価値ビジネスへのシフトが進んでいる。また、所得
水準の向上に伴い、グローバルなサービスに対する需要が拡大しつつある。
<IT関連技術等の飛躍的な進歩>
IT関連技術等の発展により、同時に取扱いが可能な情報量が飛躍的に増大し、そ
の伝達手段も発展し、提供可能なサービスの質・量が大幅に変化した。この結果とし
て、サービス経済化の進行が加速した。
<国際的なサービス科学・工学への関心の高まり>
このような背景の中で、2004 年 12 月に米国の競争力評議会が発表した報告(パル
ミザーノ・レポート)において、「サービス分野における研究開発投資が十分でない」こ
とが指摘されて以来、サービス分野におけるイノベーション、品質の向上等のための
研究が、サービス分野共通の研究分野として注目されるようになった。
【パルミザーノ・レポートにおけるサービス・サイエンス(関連の記述抜粋)】 (2004 年7月)
・コンピュータ・サイエンスが、効率的な IT をあらゆるビジネス部門に対し提供する原動力となったのと同様に、 人
的パフォーマンスの改善、組織の効率性と生産性向上のために「サービス・サイエンス」という新たな学問の研究
が行われている。GDPの約70%がサービス部門より創出されている一方、サービス産業のR&Dは米国のR&D
投資の3分の1という不均衡が生じている。
・サービスが米国の生産と雇用において優勢である中で、サービス経済におけるイノベーション加速化のために
我々はどのように投資すべきか。
26
【IBM及びオラクル社他による報道発表資料(2007年3月28日)】
・
IBM、オラクル社、TPSA(Technology Professional Services Association)、SSPA(The Service & Support
Professionals Associations)その他15の企業と大学関係者は、「サービス研究イニシアティブ」を立ち上げる。
・
イニシアティブの狙いは、技術産業におけるサービスに関する研究、開発、イノベーションに対する投資を増加
させることにある。
<サービス分野への科学的・工学的アプローチ適用>
我が国においては、交通分野における混雑・渋滞緩和、都市工学の分野における
研究の蓄積等を通じて、工学分野とサービスのつながりが徐々に深まってきた。しか
し、その研究活動と分野の広がりは依然十分ではなく、産学連携も進んでいない。こ
のため、科学的・工学的手法を用いてサービスの持つ諸問題を解決し、生産性の向
上とサービス・イノベーションを実現しようとする取組、サービス工学・サイエンスの研
究開発と成果の普及を促進することが必要である。
<米国と比較して日本のサービスへの研究開発投資は少ない>
米国では、研究開発費の非製造業の割合が43%に上るのに対し、日本は12%に
満たない。
米国企業の業種別研究開発支出(2002年)
日本企業の業種別研究開発支出(2004年度)
その 他の 非製 造 業
コンピューター・ 電子機器 工業
その他非 製造業
サ ービス業
情報 通 信業
金融・保 険・不 動産業
情報産 業
非製造 業
1,908億ドル
輸送 機械工業
専門的・ 科学的 ・技術的 サービ
ス業
製造 業
コンピューター・電子機器工業
輸送機械工業
化学工業
電気機器工業
その他製造業
専門的・科学的・技術的サービス業
情報産業
金融・保険・不動産業
その他非製造業
電気 機 械工 業
電 気機 械 工業
自 動車 工 業
医 薬品 工 業
化 学工 業
その 他の 製 造業
情 報通 信 業
サ ービス 業
その 他の 非 製造 業
非製造 業
118,479億円
(1,095億ドル)
その 他の 製 造業
製造業
化 学工業
その他 製造業
米国:製造業
57%
非製造業 43%
自 動車 工業
化学 工 業
電気 機器工 業
医 薬 品工 業
日本:製造業
88%
非製造業 12%
出典:米国企業についてはNSF統計(2006年7月)
日本企業については総務省統計(2005年12月)
図1.1 日米の業種別研究開発支出の比較
【日本にも科学的・工学的手法を!】
・日本経済が持続的に成長していくためには、サービス経済の活性化のための科学的な方法論を追求する必要
がある。(有識者)
27
1.1.2 「サービス科学・工学」とは
<これまでのサービスに関する研究>
従来より、交通工学における渋滞緩和、都市工学における利便性を考慮した都市
設計、ロボット技術の分野等においてサービスに関連する研究などが、行われてきて
いる。
しかし、サービス分野全般にかかる研究は十分には行われておらず、その研究分
野や研究手法についても依然発展途上にある。
【サービス科学・工学の重要性】
・サービス産業はちょっと工夫すればとりあえず事業が成り立ってしまう。製造業は研究開発をしないと生
き残れないが、サービス産業はそうではない。それだけにさらに組織的に研究を深めようという取組がサ
ービス産業では生まれない。(斎藤委員)
<幅広い関連分野>
サービス工学に関係する分野は、数理工学、交通工学、機械工学、情報工学など
先端的な分野から、日常生活で触れるような技術の応用など幅広い分野にまたがっ
ている。その中で、IT関連技術は重要な役割を担っている。
<今後発展するサービス科学・工学分野>
サービス開発・生産・設計分野に加えて、今後は、人間の生活理解・支援やサービ
ス特有の顧客満足度向上につながる研究分野の重要性が増すと考えられる。(→参
考1)
【有識者コメント】
・東京大学のサービス・イノベーション研究会では、今後の課題として大きく4つの研究の方向性を示し
ている。①価値の可視化、②組織行動・知識の可視化、③サービスの最適化、④サービス価値の創造
である。「見える化」、「最適化」や「新しいサービスを作りあげる方法」をまさに考えているところだ。(新
井委員)
・顧客満足でなく、次のステージである顧客「感動」の創出が今後のテーマである。・・・サービスは、人的
サービス→工業化されたサービス→人的+感動のサービスへと変遷している。(大学関係者)
28
【参考1】サービス科学・工学とは
<サービス関連研究の相関>
(2007年1月)
図1.2 サービス工学研究の位置づけ(東京大学人工物工学研究センターHPより)
「サービス工学研究会設立趣意書」より
(東京大学人工物工学研究センター 2001年10月)
【背景】
○地球環境問題への関心が高まり、・・・・脱物質化の手法が必要とされるようになってきた。・・・全体の中で、知
識やサービスのコンテンツを増大し、脱物質的に要求充足を実現することが有効・・・・・。
○・・・生産の単純な海外移転による際限なき低価格化を指向するのではなく、・・・物質・エネルギー集約型で生産
中心型の産業構造・企業経営から、知識・サービス集約型で設計開発中心型・・・が求められている。
○・・・我が国の第3次産業の国際競争力、生産性は相対的に劣ることが指摘されている。・・・第2次産業、第3次
産業においてもサービスが軽視されてきた。・・・100%サービス産業化することはありえない。・・・強力な第2
次産業のためにはサービスインフラを提供する強力な第3次産業の存在が必要・・・・
【サービス工学の狙い】
○工学は、交通、都市計画などの範囲でサービスを扱ってはきたが、サービスを生み出すシステムの構造や機能
にその関心が留まっていた。いかにも工学的と言える「サービス設計」、「サービス生産」、「サービス開発」とい
う概念は工学の中で議論されてこなかった。
○サービスも人工物と同様に「設計」、「生産」、「開発」という活動が認められること、・・・サービスと製品の両面が
あるとき、その両者の間の境界が徐々に薄くなってきたこと・・・・従前にもまして、サービスを活発化させるため
にも工学的手法が必要であり、「サービス工学」が必要になる。
「サービス・サイエンス」
(科学技術動向(2005年12月号)「サービスサイエンスにまつわる国内外の動向」:日高一義 IBM 客員研究官より)
【サービス・サイエンスの目的】
サービスに対し、科学的な分析手法、効率的なマネジメント手法、生産性を最大限高めるための工学的な生産
方法を提供し、サービスの特性に起因するところの諸問題を解決し、生産効率をあげ、また、イノベーションをシス
テマティックに生み出す枠組みを見いだす
【サービス・サイエンスの研究課題】
・サービス・イノベーション・マネージメント
・サービスのテスト
・サービスの効率を上げるテクノロジー
・サービスの価格設定
・サービスの生産性の測定
・サービス・プロジェクトのリスクマネージメント
・対事業所サービスの質と効率向上のための方法論とツール
・オペレーションズリサーチと全体最適
・計算組織論
【知識の融合としてのサービス・サイエンス】
・ビジネス、自然科学、工学、社会科学の知識と方法論の融合
29
1.1.3 科学的・工学的アプローチが活かされる事例と分析
サービス分野への科学的・工学的アプローチ適用に関する事例をその内容(技術
的内容、効果等)について、比較・分析すると、例えば、以下の類型に分けることがで
きる。(→参考2)
①サービス提供の過程で、「技術」が「人」に代替する
②サービス設計を技術が支援する
③認知工学等を活用して、顧客の視点でより質の高いサービスを実現する
④従来のサービスをモデル化し、そのプロセスを工学により最適化する
⑤市場化された新しい技術を活用してサービスを提供する
⑥他分野では既に普及している技術をサービス提供に活用する など
また、適用している技術のレベルを見ると、先端的・革新的な技術(例:ロボット技
術や認知工学)から、既に市場化されている技術(例:位置測定技術(GPS))や既に
普及している技術の応用(例:一般に使用されている通信技術等)まで多岐にわたっ
ている。(→参考3)
30
【参考2】サービス分野への科学的・工学的アプローチ適用6分類
①サービス提供の過程で、「技術」が「人」に代替する
従来人が行ってきたサービス生産又は提供のプロセスなどにロボットやその他の自動化技術を
活用することにより、より品質の高いサービスを効率的に提供することを実現する。
②サービス設計を技術が支援する
サービスCADを活用して、サービスの設計を行ったり、金融工学を活用することにより、金融商
品を開発する。
③認知工学等を活用して、顧客の視点でより質の高いサービスを実現する
アイトラッキング(眼球運動測定技術)など認知工学をサービス商品の開発や提供プロセスに
活用し、よりサービス利用者の視点に立った品質の高いサービスを実現し、顧客のニーズに応え
る。
④従来のサービスをモデル化し、そのプロセスを工学により最適化する
サービス提供プロセスなどを情報化・知識化し、数理工学の計算モデル等を活用することによ
り、最も効率が高い場合のサービス提供の姿を明らかにし、実際のサービス提供に役立てる。
⑤市場化された新しい技術を活用してサービスを提供する
GPSやRFID(Radio Frequency Identification)など市場化された新しい技術を、サービス分野に
活用して、新たなビジネスモデルを提案したり、既存のサービスの品質を高める。
⑥他分野では既に普及している技術をサービス提供に活用する
既に他分野では普及し活用が当たり前となっているような技術を、既存のサービス提供に活用
して、新たなビジネスモデルを提案する他、既存のサービスの品質を高める。
31
【参考3】サービス産業への科学的・工学的アプローチの適用事例
サービス提供の過程で、「技術」が「人」に代替する
①ロボットスーツ
高齢者の歩行支援をはじめとした、医療福祉分野における需要拡大を見込み、着用者の身体
機能を強化するロボットスーツを開発し、実用化した。
②ロボット遠隔手術システム
ロボット技術と通信技術の飛躍的向上により、大西洋を越えた遠隔手術を可能にしている。
③空中遠隔モニタリング
無人航空機(ラジコンヘリ技術)を活用して、危険地域における調査・監視等のモニタリングを実
施している。
④ゲーム感覚のリハビリ機器
運動機能や脳機能の活性化を目的としたリハビリテーション機器を、ゲーム機メーカーが開発
し実用化した。
⑤受付ロボット
受付ロボット(24時間電話受付ポータルプラットフォーム)が実用化されている。
サービス設計を技術が支援する
⑥サービス設計CAD
サービス提供プロセスのモデルを分析し、パラメーター化し、その重み付けを行い、サービスの
設計や最適化を支援する。
⑦金融商品開発
金融工学を用いて金融商品を開発する。
認知工学等を活用して顧客の視点でより質の高いサービスを実現する
⑧駅構内の標識研究
認知行動計測システムを活用して、駅における客の行動分析を行い、適切な位置や大きさの
標識をおくことで、駅構内の混雑緩和をはかり、駅利用者の満足度向上を実現している。
⑨アイトラッキングによる消費者の視点分析
眼球運動測定装置により、消費者の眼球の動きを測定・分析し、その結果が広告・ポスター、ホ
ームページやパッケージ等のデザインに活用されている。
32
従来のサービスをモデル化し、そのプロセスを工学により最適化する
⑩エアラインの搭乗時間の最短化
航空機の折り返し時間短縮化のため、乗客の搭乗モデルを構築し、その時間を最短化するた
めの研究を実施し、実用化している。
⑪エアラインの座席と価格の最適化
最適化技術等の工学的手法を活用して、座席の供給数とその価格と、利益の関係をモデル化
し、利益が極大化する座席の供給数とその価格を設定し増収につなげている。
⑫MLBのスケジューリングの最適化
スケジューリングはパーフェクトゲーム!
カーネギーメロン大学の T 教授らに代表される S 社が、スケジュール作成上の多様な制約条件
を加味して最適化された2005年の年間試合スケジュールを作成。
市場化された新しい技術を活用してサービスを提供する
⑬タクシー乗務員の行動分析
優良タクシードライバーのノウハウ共有で効率化
GPSシステムを活用して、月に100万円以上を売り上げる優秀乗務員の走行パターンを調べ、
その軌跡を分析。研修などで活用し、ノウハウを共有。
⑭GPS活用による新しいプライシングモデル
車両を高精度で追跡可能な GPS を開発し、従来不可能であったより少額単位、時間帯別課金、
ロケーション別の課金を可能とする社会インフラを実現し、道路通行料徴収、渋滞管理、自動車
保険等の分野と協力した新たなビジネスモデル展開の可能性が追求されている。
⑮遠隔医療画像診断支援
医療機関で撮影した CT、MRIの医療診断画像をデジタル回線で伝送し、専門医が詳細かつ正
確に読影し、その結果を翌営業日までに電子ファイルで送信するサービスが提供されている。
⑯物流システムの遠隔監視
全国各地のユーザーが所有する自動倉庫等の物流システムを集中センターで一括して遠隔監
視するシステムが実用化されている。
他分野では既に普及している技術をサービスの提供に活用する
⑰金融マッチングサイト
オークションサイトのビジネスモデルを活用し、資金の貸し手、借り手のマッチングを行うサイト
が構築され、実用化されている。
⑱葬祭用遺影写真デジタル加工&配信
全国1,000カ所以上の葬儀社、葬儀会館をネットワーク化し、365日遺影写真の合成を30分
で配信するサービスが実用化されている。
⑲地域テレワークオフィス
地方においてテレワーク・コールセンターが設置・運営され、地域活性化にも貢献している。
33
【参考4】サービスへの科学的・工学的アプローチの適用6類型の
サービス提供プロセスにおける位置づけ
(新井委員提出資料)
<科学的・工学的アプローチはサービスのあらゆるプロセスに有用>
1.1.3において示した6つの類型を、サービスプロバイダー(提供者)からサービ
スレシーバー(利用者)にサービスが提供される過程のどことの関連が深いか(どの
部分に科学的・工学的アプローチが適用されているのか)について考察すると、次の
ような関係があることがわかる。
(注)下図中の①∼⑥は次の6類型をさす。
①サービス提供の過程で、「技術」が「人」に代替する
②サービス設計を技術が支援する
③認知工学等を活用して、顧客の視点でより質の高いサービスを実現する
④従来のサービスをモデル化し、そのプロセスを工学により最適化する
⑤市場化された新しい技術を活用してサービスを提供する
⑥他分野では既に普及している技術をサービス提供に活用する
④
③
サービスプロバイダー
サービスレシーバー
①
⑤
② ⑥
図1.3 6分類のサービスプロセス上の位置づけ
1.1.4 科学的・工学的アプローチ適用を成功させるための鍵
<科学的・工学的アプローチ適用促進のために何が必要なのか>
サービス科学・工学を具体的に適用している事例について、その経緯や背景を踏
まえて成功したきっかけが何であったのかについて分析した。
34
この事例に基づく、科学的・工学的アプローチ適用の成功要因を整理した結果を見
ると、今後類似の事例を普及・展開していくために政策的措置が必要なテーマとして、
以下の4テーマが浮き彫りとなっていることがわかる。
①先端的・革新的な研究開発支援
②産学連携の強化
③サービス分野への科学的・工学的アプローチ適用促進のための実証実験の実施
④異業種・異分野間の連携促進のためのマッチング機会の創設及び成功事例の普及
啓発
これらの4テーマにおける取り組むべき政策的な課題への具体的な対応は次のと
おりである。
<サービス工学研究ロードマップの策定>
特にサービス特有の、顧客行動分析を通じた顧客満足度向上につながる先端的
な研究開発(人間工学や認知工学等)について重点的な取組が必要である。
【サービス研究ロードマップ】
・経済産業省が作成している技術戦略ロードマップにはサービス分野が取り上げられていない
ので、今後サービス分野のロードマップを作成すべき。(有識者)
<先端的・革新的分野における研究開発支援>
先端的分野における研究開発については、サービス分野における科学・工学の適
用を担う人材の育成を図るとともに、サービスに関連する研究全体の中で位置づけと
目標をロードマップ等により明確にした上で、研究開発を支援することが必要である。
交通分野における混雑緩和のための数理工学等、これまで分野別に取組が進ん
できているサービスに関連する研究開発分野においても一層の研究開発推進の努
力が必要である。
35
工学アプローチを適用に成功した要因と類似事例拡大のために必要な施策・支援
事 例
成功の要因
類似例展開のために
必要な施策・支援
ロボット・スーツ
ロボット先端分野における研究開発
福祉分野における需要に着目し、機能をその需要に対応させた
ロボット等先端的・革新的な技術開発推進
産学連携による技術の産業界への移転
ロボット手術システム
ロボット先端分野における研究開発・実証・信頼性確保
大容量・高速・高信頼性通信技術の開発
ロボット等先端的・革新的な技術開発推進
産学連携による技術の産業界への移転
空中遠隔モニタリング
既存の技術(無人航空機)、各種センサーの有効活用の検討
潜在する新たな用途への気づき
裾野レベルの技術の新用途への目利き
技術の供給サイドの意識向上
ゲーム感覚のリハビリ
リハビリにゲーム感覚を導入するという意識・気づき
異業種間の連携
理学療法士など実際にリハビリの現場で
そのサービスを行う者の意識向上
ロボット技術の普及
成功事例の調査・普及啓蒙
サービス設計への工学の導入
サービス設計分野における研究開発推進
事例を用いたモデルの実証、結果の普及
サービス設計先端分野における研究開発推進
具体的な事例を用いたモデルの実証、結果の普及
金融工学の発展に向けた環境整備
(研究拡大、研究費、研究人員の増大等)
駅の標識設定へのサイエンス導入という意識
認知工学の進展
認知工学の研究開発推進
認知工学の適用事例の創出・普及
受付ロボット
サービス設計CAD
金融商品開発
駅構内の標識研究
アイトラッキングによる
消費者の視点分析
認知工学の進展
エアライン/搭乗時間
の最短化
搭乗時間短縮が利益拡大につながることへの意識(気づき)
搭乗時間短縮のための計算モデル構築(サイエンスの導入)
広告・デザイン等へのサイエンス導入意識
認知工学の研究開発推進
認知工学の適用事例の創出・普及
産学連携
サービスプロセス効率化へのサイエンス導入意識
成功事例の調査・普及啓蒙
MLBのスケジューリング
座席と価格の設定による利益極大化計算への計算機モデル導入
競合他社における類似のモデル導入による成功例があったこと
サービスプロセス効率化へのサイエンス導入意識
成功事例の調査・普及啓蒙
エアライン/価格と座席
の最適化
MLB側の意識(計算機モデルをつかって最適スケジュールを策
定しようという意識)
産学連携(TLOによる技術移転促進)
成功事例の調査・普及啓蒙
優秀な乗務員の行動を科学的に解析しようという意識
GPS技術の市場化(価格の低下)
GPSの研究開発
GPSの技術の用途に関する研究
成功事例の調査・普及啓蒙
GPSの有効活用を念頭においたビジネスモデル
(GPSの活用、駐車場、混雑緩和等の要素をビジネスモデル化)
成功事例の調査・普及啓蒙
大容量高速高信頼性通信技術の確立
遠隔診断に関するビジネスモデル確立
成功事例の調査・普及啓蒙
SCMの普及
一括監視型のビジネスモデル確立
成功事例の調査・普及啓蒙
金融マッチングサイト
オークションサイトを見ての応用事例の発見
既存技術の活用
成功事例の調査・普及啓蒙
葬祭用遺影写真
デジタル加工&配信
既存ネットワーク技術の活用
同業者のネットワーク化を行うことへの気づき
成功事例の調査・普及啓蒙
既存技術の活用
機能が都市部にある必要がないことの発見・意識
成功事例の調査・普及啓蒙
タクシー/優良乗務員
の行動分析
GPS活用による
新たなプライシングモデル
遠隔医療画像診断支援
物流システムの遠隔監視
地域のテレワーク
オフィス
図1.4 サービスへの科学的・工学的アプローチ適用に成功した要因の分析
36
<産学連携の強化>
既に製造業と大学との間で連携はかなり進展し、大学の研究資源が新製品の開
発・製造技術の高度化に活用されているが、サービス分野では、産学連携への取組
は、未だごく一部の事例が見られるにとどまっている。大学の資源がサービス産業に
も活かされることが、科学的・工学的アプローチが浸透するためには不可欠である。
その際は、サービス産業への技術移転を行うためにニーズとシーズのマッチングの
際の目利きとなる人材(トランスレーター)育成等の産学連携強化のための取組が必
要である。
【産学連携が絶対にサービス産業のイノベーションのエンジンになる/トランスレーター】
・ニーズとシーズの間をマッチングして、トランスレーションできるようなシステムが非常に重要。産学連携が
絶対に1つのエンジンとなりうる。トランスレーターはかなりきめ細かく作らなければならないのだが、そのよ
うな能力のある人はたくさんいる。個々の技術者、研究者が出て行く前に、全体を見渡せて、企業と大学と
の間に入ることのできるトランスレーターとなる人材が非常に重要である。(橋本委員)
(※)【これまでの産学連携の事例】駅構内の人の流れのシミュレーション
・大学が有する複雑系のシミュレーションを用いた技術で、駅構内の広告・看板がどの程度通行人の視野
に入るかと言う測定を目的にシステムを開発。現在では、駅の設計変更や工事の手順を考える際にも利
用されており、大規模の駅の設計変更を行う際にも、この技術が用いられている。
・駅の設計変更や工事の手順を考える際にも用途があり、現在は、田町駅や品川駅のように大規模な駅
の設計変更を行う際にも、この技術が用いられている。
<サービスへの科学的・工学的アプローチ適用促進のための実証実験>
新たに市場化された技術(GPS や RFID 等)の活用や、サービスにおいて有効なサ
ービス生産・提供プロセスの最適化等については、潜在的な可能性があり、実証実
験の実施、成果の普及・啓発が有効である。
<異業種・異分野間の連携促進のためのマッチング機会の創設/成功事例の普及・
啓発>
既に普及している技術の活用を加速させるためには、成功事例(サクセスストーリ
ー)の普及、啓発等を通じて、サービス事業者に「気づき」をもたらす、異業種、異分
野間の連携を促すことが有効である。
37
1.1.5 具体的取組
【具体的取組】
①サービスサイエンス、サービス工学のためのサービス研究・技術ロードマップの策定(政府による取組)
サービス分野における研究開発促進のため、その指針となり、道筋を示すことになり、学会、産業界において
研究に携わる者が自らの研究の位置づけの理解に役立てることが可能なコミュニケーションツールとして、サー
ビスサイエンス、サービス工学のためのサービス研究・技術マップ/ロードマップを策定することとし、平成19年
度よりそのための作業グループを設置し、ロードマップ策定に着手する。
②サービス研究拠点の整備(政府による取組)
我が国において、大学、研究所、産業界等において行われているサービス関連の研究のハブとして、サービス
工学について研究開発を行う拠点を産業技術総合研究所等に整備する。
③先端的・革新的分野における研究開発推進(政府による取組)
従来の製造分野において研究開発が既に進んでいる分野とは異なり、サービス分野特有の顧客満足度向上
につながる顧客行動分析に役立つ先端的な分野(認知工学、人間工学等)において重点的に研究開発を推進
する。その際、例えば、産業技術総合研究所における研究開発や新エネルギー・産業技術開発機構の提案公
募型事業を活用する。
④産学連携の強化・推進(政府による支援・協議会における取組)
サービス分野における産学連携促進のために積極的に取り組む。例えば、新エネルギー・産業技術開発機構
の大学連携促進のための事業を活用するとともに、平成20年度以降サービス産業の実態に応じた類似制度の
創設や、既存制度の拡充・有効活用の可能性について検討し、サービス分野における産学連携を推進する。
また、産業界、大学TLO窓口等が集い、サービス分野における産学連携や技術移転の実例について意見交
換を行う場を設ける等、大学及び産業界の連携強化をいかに進めるかについて検討する。
⑤サービス分野への科学的・工学的アプローチ適用の実証実験(政府による支援)
サービスの提供プロセスの最適化のための数理モデルの構築には、さらに適用可能なサービス分野が多数あ
る。このようなサービスの提供プロセスに工学を導入する実証実験を、平成19年度より実施し、モデルケースと
してPRすることで、類似の適用事例拡大を図る。また、近年市場化が進んできたGPS、RFID等の技術をサー
ビス分野で活用していく実例をあわせて平成19年度より実証実験を行う。
平成19年度より政府が実施するサービス分野における科学的・工学的アプローチ適用に関する実証実験の
内容・結果及びその評価について、協議会メンバーと情報共有を行うことにより、類似の事例の普及・展開を後
押しする。
⑥成功事例の調査・普及啓発/異分野間の連携促進(協議会による取組)
他の分野では既に十分普及している技術を有効活用するため、成功事例の調査を実施し、とりまとめた結果
の普及・啓発を図る。科学的・工学的アプローチの潜在的ユーザーと提供者のマッチング機会を創設し、異業
種・異分野連携の促進を図る。
38
1.2 サービス提供プロセスの改善
∼製造管理ノウハウによるサービス産業革命∼
1.2.1 「製造管理ノウハウ」がサービス産業への処方箋
<製造管理ノウハウの展開の現状>
従来、製造業においては、「トヨタ生産方式」に代表されるように製造現場を起点と
した効率化・品質管理のための製造管理ノウハウが研究され、数多くの事例が展開
されてきた。(→参考1)
しかし、これまでサービス産業においては、こうした製造管理手法の活用事例は少
なく、サービスプロセスの改善(サービス提供の効率化、サービス品質の向上)に関
する方法論も確立していない。
【なぜサービス産業では展開されない?】
・昔、製造業の QC を銀行等ホワイトカラーに入れようとして反発を受けた。これは管理的手法と見られたことが要
因。国鉄での生産性運動における労使紛争を連想する人も多い。(大学関係者)
・「サービスは製造業とは異なる」という発想ではなく「どちらも同じものである」という発想からスタートすることが重
要。(大学関係者)
<サービス産業における製造管理ノウハウ導入の方向性>
近年、サービス産業においてもいくつかの製造管理ノウハウを適用することで、品
質の向上や作業効率の向上等を達成し、生産性を向上させる事例が生まれ始め、製
造管理ノウハウの導入をサービス業にコンサルティングする企業も現れ始めている。
(→参考2)
【導入は少しずつだが進んでいる】
・製造業の強みをサービス産業に活かすという観点もあるのではないか。米国では病院にトヨタ方式を活かした例
もある。(情報産業関係者)
しかし、製造業における多くの製造管理ノウハウは、サービス分野では未だその手
法が幅広く活用されている状況にはない。製造管理ノウハウを分析整理し、サービス
産業へのノウハウの更なる活用を図ることによって、サービス産業の生産性向上が
期待できる。
【導入の方向性は?】
・サービス分野で一から積み重ね始めるよりは、まず製造業から吸い取れるところを吸収することが即効性があ
る。旅館業については、例えば厨房のプロセスは接客的活動ではなく、生産プロセスそのものである。(観光産業
関係者)
・サービスプロセスの中で製造業のノウハウを応用できる部分はあるだろうが、「応用できる部分」と「応用できない
部分」をきちんと整理することが必要。(コンサルティング業界関係者)
39
【参考1】製造業における主要な製造管理ノウハウの整理
①製造プロセス分析(オペレーション)
作業手順を分解し、それぞれの作業が始まってから終了するまでの時間、手待ち時間等
を分析し、作業を遅延させる原因の改善を図ることにより、生産期間の短縮化(作業効率の
向上)を図る手法。具体的には、より効率的な作業レイアウトの提示、作業者、在庫の減少
等が可能となる。
②インダストリアル・エンジニアリング手法
作業員の動作を詳細に分析することにより、動作の無駄を排除し、作業効率を高める手
法。具体的には、動線分析、動作に要する時間分析、作業の付加価値度合いに応じた稼
働分析等を行うことにより、付加価値の低い動作を可能な限り削減することが可能となる。
③見込み生産等による生産工程管理
需要予測に基づく生産計画を立て、その計画に基づき生産活動を実施するとともに、常
時需給状況を確認することにより、予測との乖離が生じた場合には、生産統制をかけていく
方法。
④在庫管理システム
かんばんシステム等の活用により、在庫量を必要最小限に抑える方法。
⑤自動化生産技術(ロボット等)の活用
人の活動や作業を機械や装置に置き換えることにより、生産効率を高める方法。
⑥品質管理システム
製品の品質を管理するための手法であり、顧客ニーズにあった製品設計を行うよう管理
する「設計品質」と設計どおりの製品が製造されていることを管理する「適合品質」の組合
せからなる。これによって、顧客ニーズに適合した製品を許容できる一定のバラツキの範囲
内で供給することが可能になる。また、組織的活動としては、QCサークルやシックスシグマ
運動(単なる精神面での運動論ではなく、品質管理の上で、多変量回帰分析や因子分析等
の統計解析・数学的手法を多用する点が特徴)を活用することも行われている。
⑦フレキシビリティー
部品の共通化や応用動作の効く生産設備の活用、フレキシブル作業工程の設計、多能
工(多作業持ち)の活用等により環境変化に対する対応力を高める方法。
⑧研究開発マネジメント
ステージゲート方式等の研究開発管理手法の活用により、研究開発の成果が上がりや
すくなるマネジメントを実施。
⑨ABC、スループット会計等の管理会計手法
企業活動総体としての収支状況の分析ではなく、製造活動毎の収支状況を分析すること
により、製造活動の改善策、適切な価格付け方針を得ることが可能となる。
40
【参考2】サービス産業への導入事例
総菜にジャスト・イン・タイムの隠し味
①R社(総菜小売)
自動車メーカーより生産管理のプロをスカウトし、効率的な生産体制を構築。工場への発
注から店舗への配送までの時間を大幅に短縮し、生産ラインにおいても、人の動きの分析
に基づいたレイアウト変更等を行うことで生産性向上に大きな成果。
病院にもカンバン方式
②I病院(医療)
トヨタ生産方式のコンサルタントを導入し、患者の待ち時間を削減。これまで予約のある患
者も無い患者も同じ医師が診ていたが、これを予約患者と予約無し患者の担当医を分け
ることで一人の医師あたりの仕事量を平準化し、診療待ち時間を大幅に短縮。
クリーニングの常識を製造管理ノウハウで「洗い直し」
③N社(クリーニング)
それまで工場に大規模の洗浄・乾燥システムを導入し効率化を図っていたが、持ち込まれ
る衣類は多種多様。そこで、これまでの大量一括生産型システムを撤去し、かんばん方式
を取り入れた多品種小ロット洗浄機等を導入することで「多品種少量生産」体制へ移行。
展示会場も病院もホテルも、インダストリアル・エンジニアリングで再設計
④F社(イベント業)
コンサルタントを導入し、展示会場設置のパーティション組み立て作業の調査を実施。作業
動作の分析を通じて、習熟訓練・作業動線の短縮・人員計画の見直しを図り、合理的な組
み立て手順の検討と標準作業書を作成。
⑤K病院(医療)
コンサルタントを導入し、受付や会計部門の調査を実施。患者の待ち時間ストレスを増すこ
となく、受付の編成・レイアウト・組み合わせを検討し、時間帯毎の患者数に応じたきめ細
かい体制の確立を目指す。
⑥Yホテル(ホテル)
コンサルタントを導入し、客室清掃作業の効率化に着手。作業動作の分析を通じて、作業
動線の短縮や重複作業の削減を図り、合理的な作業手順を検討し、標準作業書を作成。
41
1.2.2 処方箋「製造管理ノウハウ」の分類・整理と事例
<製造管理ノウハウの分類と整理>
製造管理ノウハウは、サービス提供する顧客との接点が高い部門(顧客対応部
門)、バックヤード機能を提供する部門(後方部門)、経営戦略の策定や組織管理に
関わる部門(経営・管理部門)といったサービス産業における適用が想定される局面
によって分類と整理が可能と考えられる。(→参考3、図1.5)
【まずは分類と整理】
・サービス分野で一から積み重ね始めるよりは、まず製造業から吸い取れるところを吸収することが即効性があ
る。旅館業については、例えば厨房のプロセスは接客的活動ではなく、生産プロセスそのものである。(観光産業
関係者)
・サービス産業に関する政策を考えるに当たっては、「製造業とはどのような理由でどう違うのか」という点について
様々な視角から分析することが必要ではないか。(政策研究機関関係者)
<製造管理ノウハウ適用の可能性が高い部門>
この中で、製造管理ノウハウについては、後方部門を中心にサービス産業におい
ても適用の可能性が高いと考えられる。
また、この分類を踏まえつつ、サービス産業への製造管理ノウハウの適用事例(ベ
ストプラクティス)を収集し、普及していくとともに、サービス産業への特性を踏まえた
新たな適用事例を開発することも重要。
【後方部門には即効薬】
・欧米ホテルの人件費は売上げの30%程度であるのに対して日本のホテルは45%を占める。お客様の目に触
れない後方部門の生産性向上は最重要課題である。(観光産業関係者)
<サービス産業が先行している部門>
他方では、顧客対応部門において有効なノウハウについてはサービス産業から製
造業が学んでいる例もあり、サービス産業が先行している部分もあると考えられる。
【サービス業だって負けてない】
・サービスプロセスの中で製造業のノウハウを応用できる部分はあるだろうが、「応用できる部分」と「応用できない
部分」をきちんと整理することが必要。(コンサルティング業界関係者)
42
【参考3】製造管理ノウハウのサービス産業への適用部門別分類
後方部門への適用を想定
①製造プロセス分析(オペレーション)
サービスは同時性の特性を有しているため、製造業と比較すると、サービスを生み出す工
程は短期間かつ単純となる傾向がある。しかし、その効率性を高めるためには、作業工程
を遅延させる原因を発見し、それを排除する分析手法は有効である。
②インダストリアル・エンジニアリング手法
作業者の動線分析等を行うことにより無駄な動作をあぶり出し、削減を図る手法であるが、
労働集約的な性質を有するサービス産業においては、その活用を通じて得られるメリット
は非常に大きいと考えられる。例えば、病院、ホテル等のバックヤードにおいて、本手法を
活用することで生産性向上が可能なことが明らかとなっている。
③見込み生産等による生産工程管理
無形性を有するサービス自体を在庫管理することは困難であるが、モノの提供を伴うサー
ビスの場合には、当該モノの製造に当たり、売れ筋の管理、需要予測システムなどを導入
する場面などに適用が考えられる。
④在庫管理システム
無形性を有するサービス自体を在庫管理することは困難であるが、モノの提供を伴うサー
ビスの場合には、当該モノの製造に当たり、在庫量を必要最小限に抑えるために、バーコ
ード管理を導入する場面等に適用が考えられる。
⑤自動化生産技術(ロボット、IT等)の活用
バックオフィス機能においては、ベルトコンベア等のロボット技術を活用することにより、作
業効率を高めることや高いサービス品質を提供することが可能となる。
⑥品質管理システム(適合品質管理)
サービスは、無形性、変動性等の特性を有しているため、サービス品質レベルの再現性を
高めるため、マニュアル化を活用することにより、適合品質管理を行うことが有効と考えら
れる。
経営・管理部門への適用を想定
⑦研究開発マネジメント
サービスの無形性といった特性に鑑み、テクノロジー・プッシュ型の研究開発よりもディマン
ド・プル型の研究開発が有効に機能すると考えられる。ただ、多くのサービス業においては、
研究開発は活用されていないことが多く、例えば実験店舗において新サービスをテストマ
ーケットしてみるなどの方法により研究開発を実施することは、有効と考えられる。
43
※以下は製造管理手法の一つではあるが、サービス産業においても既に取組が進んで
いる事例が見られるもの。
顧客対応部門への適用を想定
⑧品質管理システム(設計品質管理)
多様な顧客ニーズに応えるとの観点から、顧客毎に顧客満足度を測定し、その後の改善
に反映させるシステムの導入に力を入れることが有効と考えられる。顧客対応部門におけ
る適用が想定されるが、サービス産業においても既に取組が進んでいると思われる。
⑨フレキシビリティー
サービスは同時性の特性を有するため、サービス提供の現場においても、顧客の多様な
ニーズにきめ細かく応える体制を整えることが、高いサービス品質を維持する上で重要と
なる。このためには、単能工ではなく多能工を育成することが重要となる。顧客対応部門に
おける適用が想定されるが、サービス産業においても既に取組が進んでいると思われる。
経営・管理部門への適用を想定
⑩管理会計手法(ABC、スループット会計等の管理会計手法)
サービス企業は、顧客接点の部分に重点をおいていることが多く、バックヤードを含めた企業
活動全体を含めた経営管理が行われていないことが多い。このような場合には、部門別の効
率性を高めるための管理的手法を導入することが有効と考えられる。経営・管理部門における
適用が想定されるが、大手企業を中心にサービス産業においても既に取組が進んでいると思
われる。
44
「製造業における製造管理ノウハウ」の分類と事例
製造業における
製造管理ノウハウ
後方
部門
【総菜小売R社】総菜生産工程に、高さ
調節可能な作業棚を導入し作業効率を
高めるなどトヨタ生産方式を活用。
後方
部門
工場内における就業者の動線分析等を行うことにより無
駄な動作をあぶり出し、それらの削減を図る手法である
が、本手法に関しては、特に労働集約的な性質を有する
サービス業においては、活用に得られるメリットは非常
に大きいと考えられる。
【K病院】受付窓口の編成・レイアウト等
の見直し。
【Yホテル】客室清掃手順を効率化。
【イベント業F社】ブース組み立てで、無
駄を減らし、2/3程度の作業者数にす
る作業手順を導入。
後方
部門
無形性を有するサービス自体を在庫管理することは困
難であるが、サービス提供に当たり、モノの提供が伴う
場合には、当該モノの製造に当たり、投入資材の管理、
売れ筋の管理、需要予測システムなどを導入する場面
などに適用が考えられる。
【ホームセンターK社】豊田自動織機の
専門チームにより、売れ行きの正確な管
理と陳列位置や搬出時間帯の見直し等
により在庫管理を改善。
後方
部門
無形性を有するサービス自体を在庫管理することは困
難であるが、サービス提供に当たり、モノの提供が伴う
場合には、当該モノの製造に当たり、在庫量を必要最小
限に抑えるために、投入資材の管理、バーコード管理な
どを導入する場面などに適用が考えられる。
【病院経営後方支援N社】病院向けの物
品管理支援サービスにより在庫コスト削
減。日本赤十字病院や済生会病院など。
在庫量はバーコードで管理。
バックオフィス機能においては、ベルトコンベア等のロ
ボット技術を活用することにより、作業効率を高めること
や高いサービス品質を提供することが可能となる。
【旅館K】配膳輸送システム。
【旅館A】顧客のきめ細かい要望をタイム
リーに伝達するための手段としてカメラ
システムを活用。
サービスは、無形性、変動性等の特性を有しているため、
特にバックヤード機能については、サービス品質レベル
の再現性を高めるため、マニュアル化を活用することに
より、適合品質管理を行うことが有効と考えられる。
【衣料小売S 】毎月更新される1000
ページのマニュアル作成。
【Fホテル】グローバル運営基準書作成。
【外食産業J社】顧客満足度を青、赤、白
のカードを使い社内に迅速に流通するシ
ステム活用。
サービスの無形性といった特性に鑑み、テクノロジー・
プッシュ型の研究開発よりもディマンド・プル型の研究開
発が有効に機能すると考えられる。サービス業において
は、研究開発の活用は少ないが、実験店舗において新
サービスをテストする等の方法も有効と考えられる。
【衣料小売S】・ 【銀行B】新事業の研究と
して実験店舗の活用。
【外食産業S】店内レイアウト検討のため
の研究開発センターの設置活用。
【インダストリアル・エンジニアリング】
作業員の動作を詳細に分析することにより、
動作の無駄を排除し、作業効率を高める手
法。
【生産工程管理(見込み生産等)】
需要予測に基づく生産計画に沿って生産
活動を実施するとともに、予測との乖離が
生じた場合には、生産統制をかけていく手
法。
【在庫管理システム】
かんばんシステム等の活用により、在庫量
を必要最小限に抑える手法。
【自動化生産技術(ロボット等)】
人の活動や作業を機械や装置に置き換え
ることにより、生産効率を高める方法。
後方
部門
【品質管理システム(適合品質管理)】
不良率を許容範囲内に抑えるために製品
設計、検査工程等を活用する手法。
後方
部門
【研究開発マネジメント】
ステージゲート方式等の研究開発管理手
法の活用により、研究開発の成果が上がり
やすくなるマネジメント手法。
これまでの
サービス産業への適用例
サービスは同時性、無形性の特性を有しているため、製
造業と比較すると、サービス創生行程は単純となる傾向
があるが、それでも、サービス創生プロセスの効率性を
高めるため、サービス作業工程を分析する視点を導入し、
ボトルネックを排除することは有効であると考えられる。
【製造プロセス分析(オペレーション)】
作業手順毎にサイクルタイム、アイドルタイ
ム等を分析し、ボトルネックを改善。スルー
プットタイムの短縮化を図る手法。
サービス産業への
適用イメージ
適用
局面
経営・管理
部門
以下は製造管理手法の一つではあるが、サービス産業においても既に取組が進んでいる事例が見られるもの
顧客対応
部門
多様な顧客ニーズに応えるとの観点から、顧客満足を
高めるために顧客毎に顧客満足度を測定し、その後の
改善に反映させるシステムの導入に力を入れることが有
効と考えられる。
顧客対応
部門
サービスは同時性の特性を有するため、サービス提供
の現場においても、顧客の多様なニーズにきめ細かく応
えることのできる体制を整えることが、サービス品質を維
持する上で重要となる。このためには、単能工ではなく
多能工を育成することが重要となる。
経営・管理
部門
サービス企業は、顧客対応の部分に重点をおいている
ことが多く、バックヤードを含めた企業活動全体を含め
た経営管理が行われていないことが多い。部門別の効
率性を高めるため、作業部門別の管理会計を導入し、
部門別の効率性を高める方策をあぶり出すことが有効
と考えられる。
【品質管理システム(設計品質管理)】
製品開発に品質機能展開、価値工学、デ
ザインレビュー、コンピュータ・シュミレー
ション等を活用する手法。
【フレキシビリティー】
部品の共通化や応用動作の効く生産設備
の活用、フレキシブル作業行程の設計等に
より環境変化に対する対応力を高める手法。
【管理会計手法(ABC、スループット会計
等)】
総体としての収支分析ではなく、活動毎の
収支状況を分析することにより、改善策、
適切な価格設定方針が得られる手法。
図1.5 製造業における製造管理ノウハウの分類と事例
45
0
1.2.3 処方箋「製造管理ノウハウ」展開への課題・検討事項
現状は、サービス産業において、製造管理ノウハウはその手法が幅広く活用されて
いる状況にはない。しかし、我が国が誇る世界の最先端を行く「ものづくり」分野にお
ける生産性向上のノウハウのサービス分野への導入促進が効果的であると考えられる。
【日本の誇る製造業ノウハウをサービス業へ】
・ITサービス産業についてもこれまで、サービスの可視化、認証、スキル標準、人材育成、モデル約款などの取組
を一連のセットとして進めてきた。このようなパッケージがサービス産業一般についても適用可能。ITサービス産業
と同じアプローチがサービス産業一般にも展開できるであろう。(村上委員)
・製造業ノウハウのサービス業への展開・サービスの工業化が重要。IT企業においても工場では、1秒・1銭単位での効
率化をしようと努力しているのに、例えばSEの世界に入ると、1時間・1万円単位での議論となる。(秋草委員)
今後、サービス産業における製造業ノウハウの導入普及を図るため、官民が適切
に役割を分担して、活用事例を積み上げ等その後押しを行い、サービス産業の生産
性向上につなげていくことが期待される。(→図1.6)
【活用事例の積み上げが重要】
・2007年はものづくりの優秀な人材が退職して世の中に出てくるのでサービス産業にとっては大きなチャンス。こ
の人達が製造業のノウハウをサービスに広げていければ大きな効果が期待できる。(大学関係者)
その際、製造管理ノウハウ導入に係るコンサルティング企業やサービス産業事業
者に対し、サービス産業への導入に向けた動きを促進するとともに、独自に導入が困
難と考えられる中小企業者へ配慮をすべきである。
【適切な役割分担が重要】
・サービス産業のほとんどの業種で製造管理ノウハウが適用可能と思われるが、200名以上の従業員、30億円
以上の売上規模がなければコンサルティング・フィーの費用対効果の問題等もあり、企業にとってはコンサルティン
グの依頼が困難というのが現状である。(コンサルティング業界関係者)
<「普及・啓発型」と「研究・実証型」の分類>
サービス産業生産性協議会において、適用が容易で普及・啓発に主眼をおいて取
り組むもの(「普及・啓発型」)と、適用には研究や実証支援後の普及・啓発が望まし
いもの(「研究・実証型」)に分けて展開を促進するのが適当である。
<サービス産業生産性協議会の取組>
サービス産業生産性協議会は、「普及・啓発型」を中心に、適用パターンの整理と
わかりやすい提示や、製造管理ノウハウを他企業に導入できる人材をネットワーク化
し、サービス産業への導入促進に努めることが有効である。
<政府の取組>
政府においては、「研究・実証型」を中心に、適用のための研究・実証事業を支援し、
成功事例の創出、活用方策の開発や、独自に導入が困難と考えられる中小企業に
ついて、導入促進につながる環境の整備を行うことが必要である。
46
製 造 業 にお け る 製 造 管 理 ノウハ ウ の 展 開 にお け る 具 体 的 イ メ ー ジ
製造業における製造管理ノウハウ
製造プロセス分析
インダストリアル
・エンジニアリング
生産工程管理
在庫管理システム 自動化生産技術
適合品質管理
研究開発
マネジメント
設計品質管理
フレキシビリティー
普及・啓発
民間の主体的取組
(協議会等における取組)
官による取組支援
管理会計手法
研究・実証
ベストプラクティスの
普及・啓発および
製造業OB人材・
企業のネットワーク化
製造管理ノウハウの
活用方策の分析
中小企業基盤整備機
構等の相談窓口にお
ける支援体制の整備
製造管理ノウハウ活用方
策の研究と実証事業
による成功事例の積
み上げ
図1.6 製造業における製造管理ノウハウの展開における具体的イメージ
47
1.2.4 具体的取組
(1)製造管理ノウハウの「普及・啓発」の促進
製造管理ノウハウのサービス業における適用パターンを整理し、わかりやすく提示する
ことや、製造管理ノウハウを他企業に導入することのできる人材をネットワーク化しサービ
ス業における導入を促進する等の以下の取組を行う。
①ベストプラクティスの普及・啓発(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会は、製造業ノウハウ導入のベストプラクティスの事例を収
集・整理し、その知見を共有する場を構築する。この中から特に先進的な事例、優良な
事例を選定し、ベストプラクティスとしてシンポジウム等を通して普及・啓発を促進する。
②製造業OB人材・企業のネットワーク化(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会は、製造業OB人材・企業をネットワーク化し、製造管理ノウ
ハウを導入しようとする事業者が活用しやすくするために広く公表する。
【製造業の強みをサービス産業に活かす】
・2007年はものづくりの優秀な人材が退職して世の中に出てくるのでサービス産業にとっては大きなチャンス。こ
の人達が製造業のノウハウをサービスに広げていければ大きな効果が期待できる。(大学関係者)
③中小サービス事業者に対する支援:中小企業基盤整備機構等の相談窓口における支
援体制の整備等(政府による支援)
・製造管理ノウハウのサービス産業への導入にあたり、独自に導入が困難と考えられる
中小企業者に対する効果的な支援を行うため、中小企業基盤整備機構やその他の中小
企業関係機関の窓口においてサービス事業者向けに適切なアドバイス等の支援ができ
るよう体制を整備する。
・中小企業基盤整備機構は、中小企業者に対し、製造業ノウハウ導入に関するコンサル
ティングを行う専門家を派遣し、その費用の一部を支援する。
・中小基盤整備機構は、中小企業大学校等において、中小サービス企業向けのインスト
ラクター養成のための講座を開設する。
48
(2)製造管理ノウハウの「研究・実証」の支援
製造管理ノウハウにおいて、サービス業への適用のための研究・実証事業を支援し、活
用方策の開発、成功事例の創出を行うため、以下の取組を推進する。
①サービス産業における活用方策の分析(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会は、サービス産業への適用に当たって、研究や実証支援を
経た後に普及・啓発していくことが望ましいもの(「研究・実証型」)の整理を行う。
②サービス産業における活用方策の研究(政府による支援)
政府は、サービス研究センター等の場において、製造管理ノウハウのサービス産業への
適用にあたり、適用範囲の拡大や技術的障壁が高いものについての活用方策の研究
を、産学連携を推進すること等により実施する。
③実証事業による成功事例の積み上げ(政府による支援)
政府は、製造管理ノウハウの活用成功事例を積み上げるため、ビジネス性実証支援を
通じ、効果の高い適用のあり方を検討する。
【製造業の強みをサービス産業に活かす】
・欧米ホテルの人件費は売上げの30%程度であるのに対して日本のホテルは45%を占める。お客様の目に触
れない後方部門の生産性向上は最重要課題である。(観光産業関係者)
・基本的なリーン生産手法を学んだ人を養成し、伝道師として手法を広げる事は可能ではないか。我々が企業に
コンサルする際も全社員に教えることはできないので、実験店舗をつくりそこで伝道師を養成して社内にネズミ算
式に広げて効果を拡大している。(コンサルティング業界関係者)
49
2.サービス提供者と消費者等をつなぐ仕組み作り
∼情報の非対称性などの特性を踏まえた付加価値向上と市場拡大のために∼
2.1 サービス産業における品質問題の背景
<サービスの品質特性>
サービスは、生産と消費が同時に起こり(同時性)、また、触れることができない(無
形性)など、製品とは異なる性質を有している。このため、消費者がサービスの品質を
事前に、あるいは提供時に確認することが難しい。
一方で、サービスの品質は、誰が誰にいつ提供するかという個別の事情に左右さ
れやすい(変動性)。サービスを提供する人や時期が異なった場合に、サービスの品
質が変動しやすいといった特性があり、サービス提供者側において一定の品質を維
持することが難しい場合がある。
特に、消費者取引においては、消費者とサービス提供者との間の情報の非対称性
から、消費者にサービス選択のために必要な情報が十分に行き渡りにくい。
【サービスの品質特性】
・サービスの生産性向上には、サービスの工業化・可視化・透明化がキーポイントとなるのではないか。(秋草委
員)
・サービス産業においては、品質が事前にチェックできないというのが本質的な問題として存在するため、結局は
「信頼性」が重要である。「信頼性向上のための仕組み作り」という点が、重要な鍵になると考える。(村上委員)
・米国はサービスの生産性は高いかもしれないがサービスの質は低い。生産性向上により効率性は高まるかもし
れないが、サービスの質が向上するとは限らない。サービスの質向上のための取組と効率性向上のための取組は
切り分けて考えるべき。(大学関係者)
このため、消費者はサービスの購入前にその品質に基づく比較を行うことが難しい
ため、サービス提供者は、品質に見合った価格設定よりも、外見的な要因やイメージ
等品質以外の要因により競争を図ろうとする傾向もある。
【品質以外の要因で競争】
・サービス産業は商品の中身が見えないため、情報を適切に得られない。そのため、テレビコマーシャルなどの情
報に簡単を鵜呑みにしがちだ。(有識者)
・テレビコマーシャルで有名なあるサービス事業者と契約した消費者から、従業員はほとんど素人であった、対応
が極めて悪かったなどの苦情相談が寄せられている。(消費者相談関係者)
・派遣・請負業について、現状では、労働者の社会保険加入を行わず、その分低価格でユーザー企業と契約す
るベンダー企業も存在し、同時にそれを一時的に求めるユーザー企業が存在するなど、コンプライアンスのために
適正なコスト負担をしているベンダー企業の競争環境が整っていない。(派遣・請負業界関係者)
50
<品質への期待と現実のミスマッチ−需要の拡大を阻害している可能性−>
消費者が、期待する品質のサービスを十分に得られない場合には、サービスに対
する信頼性が低下し、消費者は実際にニーズがあるにも関わらずサービスの購入を
ためらうようになるため、潜在需要に見合った市場が広がって行かない可能性があ
る。
(※)消費の拡大を阻害する恐れ
・結婚相手紹介業を利用することを考える要因についてのアンケート調査において、「料金体系が透明になること」が3
4%、「サービス内容がわかりやすいこと」が24%との回答が高い割合を示している。(平成18年 少子化時代の結婚
関連産業の在り方に関する調査研究におけるアンケート調査)
・エステティックサロンについて、不明瞭な料金システム、施術の安全面、本当に説明とおりの効果があるのかなどとい
った点について不信感や疑問をもっている消費者が少なくない。(平成15年 エステティック産業の適正化に関する
報告書)
・保育業界においては、a)相性の良いベビーシッターが継続的に訪問せずに別の人が訪問してくる、b)前日まで担当
者がわからない、c)赤ちゃんに怪我を負わせる、d)遅刻する、などのサービス品質上のクレームが多い。(保育サービ
ス業界関係者)
また、消費者は購入前にサービスの品質を確認することが困難であるため、サー
ビス購入後に品質に関する消費者の期待感と現実とのミスマッチが生じやすい。その
結果、消費者トラブルが発生しやすくなっている。そして、消費者トラブルが多発して
いる場合には、業界全体に対する信頼性を損ない、業界全体に対する需要を抑制す
ることとなっている可能性がある。
(※)消費者トラブルの発生
消費者からの苦情・相談をとりまとめた独立行政法人国民生活センターの PIO-NET によると、平成17年度の総相談
案件は127万5千件であり、このうち、サービス分野の相談件数は73万8千件(58%)なっている(詳細:→参考1)。
<サービス産業における悪循環の可能性>
消費者がサービスの品質を事前に、あるいは提供時に確認することが困難である
ことにより、ミスマッチやトラブルが頻発し、そして消費者によるサービスに対する信頼
性が低下していく。
また、サービスの品質に対する低い信頼性は、サービス産業全体に対する印象や
評価に影響を及ぼし、その結果、サービス産業に優秀な人材が集まりにくい、広報が
困難な場合があるなど、需要減にとどまらない悪循環に陥る可能性もある。
【業界イメージ向上の重要性】
・健全な業界で働くことも働く人の幸福に関わる。特に人材ビジネスでは、どの業界のどの会社に行けば安心して
働けるか分からないという状態は極めて不健全。従って、新しい業界団体を立ち上げ、お客様の安心と同時に、
この業界の中で安心して働ける取組を行っている。これも「幸福」という視点につながると考える。(西本委員)
・業界の健全化という意味では、アンフェアなところを摘発してほしい。これは行政に期待したいところでもある。だ
が、法整備が追いついていない状況では、業界団体は、法整備がなされてなくても実態ベースで、働く人、顧客
に安心を与えられる手段になりうる。(西本委員)
・結婚相手紹介業のネガティブイメージの払拭のためには、業界として、消費者からの信頼感の構築に向けた取
組が必要となるが、例えばテレビCM等は、放送業界の自主規制によりテレビCMを行うことができないのが現状。
(結婚相手紹介業界関係者)
51
【参考1】消費者トラブルの状況
①概況
消費者からの苦情・相談をとりまとめた独立行政法人国民生活センターの PIO-NET によ
ると、平成17年度の総相談案件は127万5千件であり、商品を除く役務についての相談件
数は73万8千件(58%)なっている。
このうち45%には、サービスの品質に起因する苦情・相談も含まれていると考えられる
ものであり、さらに、その半分が個別の事業規制法により規制されていない業種に係るもの
である。
なお、身に覚えのない代金請求等に係る「電話関連サービス」と「サラ金・フリーローン等
金融関連サービス」等サービスの品質には直接関係のないと考えられる苦情・相談が約5
5%(全体の約 32%)を占めている。(→表2.1)
②相談内容
事業規制法により規制されていないサービス業のうち、相談件数が多い業種の相談の
内容についてみると、主に営業上の課題とサービス内容の課題についてのものが多いが、
その主な理由は以下のとおり。
a)長期間・前金制で提供されることが多く、中途解約やその際の返金額等について問題
が生じやすい。
b)同一サービスであっても個人によって効果が異なるため、期待感と現実におけるミスマ
ッチが生じやすい。例えば、エステティック産業においては、解約などの相談に関する
「中途解約や返金額、勧誘方法等営業上の課題」が約7割、「サービスへの期待感と現
実のミスマッチ等サービス内容の課題」 が約 3 割となっている。(→表2.2)
具体的なトラブルの例は以下のとおり。
③事例
中途解約や返金額、勧誘方法等営業上の課題に基づくトラブル事例
a)痩身エステを25万円払って契約。1回施術を受けた後解約したが、解約料を10万円と
言われた。解約料は不当に高く不満。
b)結婚相手紹介業者と3か月前に1年間の契約をした。解約を申し出たが返金額は支払
額の3分の1と言われた。納得できない。
期待感と現実におけるミスマッチ等サービス内容の課題に基づくトラブル事例
c)エステサロンで肌診断を受け美顔エステを契約。5回ほど通ったが全く効果が実感でき
ない。
d)成婚率が高いとの広告を見て約20万円払って入会した。毎月8人のプロフィールが送
られてくるが、自分の希望する人は全くいない。
e)結婚相手紹介サービス会員の半数弱は「期待はずれ」と感じている。
52
表2.1 消費者相談
総件数
商品全体
1 2 7 .5 千 件
5 1 万 8 千 件 4 1 %
役務全体 身に覚えのない代金請求
28万 1千 件
等電話関連サービス等
7 3 万 8 千 件 5 8 % サ ラ 金 等 金 融 関 連 12万 6千 件
合 計
40万 7千 件
55%(全 体 の 32%)
そ れ 以 外 の 役 務
33万 1千 件
4 5 % ( 全 体 の 26 % )
(出典:国民生活センターPIO−NETデータに基づき経済産業省作成)
表2.2 エステティック産業における相談・苦情の内訳
大分類
中分類
件数
契約・解約
【中途解約や返金額、勧誘方法
販売方法
等営業上の課題】
(小計)
15,325件
価格・料金
2,262件
役務品質・性能
【サービスへの期待感と現実に 接客対応
おけるミスマッチ等サービス内容
安全・衛生
の課題】
表示・広告
法規基準
%
10,455件
4,870件
73.2%
1,188件
812件
693件
418件
244件
(小計)
5,617件
26.8%
合 計
20,942件
100%
(出典:国民生活センターPIO−NETデータに基づき経済産業省作成)
53
2.2 サービス産業における品質の「見える化」
<品質の「見える化」による競争環境の整備>
サービスの品質問題を解決するためには、サービスの品質が少しでも目に見える
ように工夫することが重要であり、これにより消費者はサービスの品質を客観的に評
価することが可能となる。さらに、サービスの品質が客観的に評価されることは、消費
者のみならず、事業者や投資家などの第三者にとっても望ましいことである。
【品質の見える化】
・サービスの生産性向上には、サービスの工業化・可視化・透明化がキーポイントとなるのではないか。(秋草委
員)
・サービス産業においては、品質が事前にチェックできないというのが本質的な問題として存在するため、結局は
「信頼性」が重要である。「信頼性向上のための仕組み作り」という点が、重要な鍵になると考える。(村上委員)
・生産性だけにとどまらず、生活の質を如何に高めるかという視点、顧客の受ける便益・顧客の評価も併せて、サ
ービス産業を測る物差しを考えるべきではないか。(斎藤委員)
サービスの品質に基づく合理的な競争環境が整備されることは、適切な価格競争
の前提であり、これにより、サービス産業の品質や生産性の向上を図ることが可能と
なる。
例えば、サービスの品質に関する情報を提供することにより、消費者がどのサービ
スが自分にあっているかを判断できるようになるとともに、消費者がトラブルに巻き込
まれずに、安心してサービスを利用できるようになる。
【品質評価と信頼性確保の仕組み】
・サービス業でも、まず個人が、次に組織がやってきて順番にレベルを高めていくことが必要。しかし、サービス業
ではその評価指標が必ずしも多くない。特に、クォリティの評価指標について、個別の企業から業界、そして業界
間で、決めていくことが重要である。(新井委員)
・サービス業では、「顧客満足度」という視点、顧客側での QCFD(Quality, Cost, Flexibility, Delivery)は何かという
視点を導入すべき。(新井委員)
・サービス産業は情報の非対称性がある。供給サイドではなく消費者側に立った施策が必要ではないか。質の信
頼性、透明性の確保を図る仕組みを作る必要があるのではないか。品質確保のための第三者評価機関や評価
サービスの設置、消費者団体との連携を検討すべし。(大学関係者)
(※)経済財政諮問会議(平成19年2月16日)民間議員提案から抜粋
「消費者ニーズの高い分野こそ、供給者の創意工夫を高めるために規制を緩和し、それとセットで事
後的監視を強化」「(事後的な監視機能を高めるものとして)消費者の視点からサービスの質を評価
する第三者機関の整備・強化」
54
2.3 サービスの品質での競争を促すために
<評価指標についての現状と潜在的ニーズ>
消費者の立場からは、サービスの品質に関して事業者間の比較が可能となるよう
な評価指標に対するニーズがある。
【消費者による事業者間の比較】
・当社は介護分野で ISO の取得を試みているが ISO は手続き論が中心。本来は提供するサービス自体の評価基
準を作り、消費者が比べられるようにするべき。(桜木委員)
・消費者がベビーシッター企業を選ぶ際の判断基準となる情報開示が十分でない。区役所に問い合わせがあっ
た場合、区役所はベビーシッター協会を紹介し、協会は単に会員リストを提供しているだけ。良いサービスを提供
している企業がどこかは消費者にわからない。良いサービス提供企業に対する認証制度があっても良いのではな
いか。(保育サービス関係者)
・格付けによる評価は難しい面もある。宿泊客の一人一人の状況によりその評価する対象は異なる。ランキングに
中立性を持たせようとすればするほど評価結果はあいまいになり、迫力のないものになると考えられる。(観光産
業関係者)
このため、事業者によるサービスの品質の向上のための取組として、顧客満足度
調査などが普及している。ただし、その調査法や活用法は、事業者によって異なって
いる。
【事業者による顧客満足度調査】
・サービスの品質を向上あるいはサービスの効率を高めるための取組として、サービスの自己チェック(毎月1回、
委員会を開催)及び顧客満足度調査(毎年、利用者の約 1/3 対象)を行っている。ただし、顧客満足度調査に
ついては、傾向分析程度に留まっている。(介護サービス産業関係者)
・定量的な数値ではなく、顧客一人一人の具体的な満足度を重視している。そのために行っているのは「ふれあ
いカード(投書)制度」。単なるアンケートではなく、フリーハンドで記入していただくようになっている。いただいたカ
ードは一週間以内に店舗に掲示し回答している。(フィットネス産業関係者)
・温泉、ホテルの顧客満足度指標の例として、ある旅行代理店が各旅館を利用したユーザーにはがきで満足度
を項目毎(食事、温泉など)に旅館を通さず直接調査。四半期毎に集計し、高得点の旅館をHPにアップ、その旅
行代理店のオススメに入れるということを行っており、旅館へのインセンティブにつながっている。(研究機関関係
者)
また、既に一部のサービス産業分野においては、顧客満足度などの視点からサー
ビスの差別化を可能とするための格付けが行われているものの、その範囲は限定さ
れたものであり、消費者における信頼性も様々である。(→表2.3)
さらに、ホテルなど、市場がグローバル化しており国際比較が求められる分野の格
付けの必要性についての議論も長く行われている。(→表2.4)
一方、大学や病院など、公的なサービス分野に関する評価については、潜在的な
ニーズも高く、各種雑誌などにおいても様々な格付けが行なわれている。(→表2.5、
表2.6)
55
<諸外国における事例>
米国、韓国などにおいては、民間が主体となって、政府からの収入を得つつ、幅広
い事業者を対象とした調査により顧客満足度指数が作成されている。(→参考2)
例えば、米国においては、業種横断的に顧客満足度調査を実施し、毎年、200社
以上に及ぶ幅広い業種の企業に関する顧客満足度指数を調査公表している。
これにより、消費者や投資家などの企業をとりまくステイクホルダーに対し、サービ
スの品質の変動傾向や資産価値指標を提供することにより、消費者の視点からの基
礎的統計的データの提供、ベンチマークの提供、顧客資産やサービスの品質の見え
る化、競争を通じたサービスの品質の向上などを行っている。
また、政策立案者に対しては、経済状況の評価や各種施策の影響を観察するため
の基礎的統計的データを提供している。
なお、現在のところ、我が国ではこのような顧客満足度指数についての取組はなさ
れていない。
【諸外国におけるサービスの品質の評価】
・日本版CSIは必要。CSIで商品・パッケージについての定義をはっきりさせることが重要だ。(秋草委員)
・信頼性はコストではなく、資産だという考え方がでてきているが、サービス産業はその考え方が非常に重要で、信
頼性をどう作り込むかが鍵になる。(村上委員)
・顧客は一種のオフバランス資産であり企業価値のインパクトも高い。したがって論理的には高い顧客満足度は
株主価値を高めるという図式が描かれる。しかし、投資家や株主が企業の顧客価値を評価する指標が存在しな
かった。そこで 1994 年、ミシガン大学クレズ・フォーネル教授を中心に「全米顧客満足度指数(ACSI)」が考案さ
れ、四半期毎に「ウォールストリートジャーナル」紙に発表されるようになった。今では対象企業のみならず、ウォー
ル街からも熱い視線が注がれている。これまで社内のミクロ指標として利用されていた顧客満足度が社外のマク
ロ指標としても広く活用されるようになれば顧客戦略は自ずと進化していくことになろう。(ハーバードビジネスレビュ
ー2002July)
<顧客満足度指数の整備に向けて>
今後、我が国でも、サービスの品質について、異なる事業者間や異なるサービス分
野の間でも比較が可能となるような横断的ベンチマーキング(日本版 CSI(Customer
Satisfaction Index:顧客満足度指数))を整備していくことが必要であり、各国で実施
されている顧客満足度指数を参考に、客観性・信頼性の高い運営体制と調査統計モ
デルを構築していく必要がある。
また、CSI の調査対象企業のみならず、それ以外の企業に対しても同様の CSI 測
定モデルを開放し、中小企業を含むより多くの企業がこれを有効に活用できるような
体制を整えていくことが重要である。
56
【参考2】 諸外国の顧客満足度指数
①米国顧客満足度指数(ACSI)
・ ミシガン大学ビジネススクールが1994年に開発。公的サービスも含めた43業種
(200社以上)を対象として、毎年調査公表。
・ 運営予算は年間約200万ドル。年間50万ドルの政府からの収入。残りは会員企
業の資金にて運営。
→政府サービスに対して民間とのベンチマークを求めた大統領令を踏まえ、民間
との比較が可能な国レベルの広範な顧客満足調査としてACSIが各種連邦機関
による公的サービスの業績評価に利用されている。
②韓国顧客満足度指数(NCSI)
・ 韓国生産性本部が ACSI の統計モデルを活用し1998年より導入。
・ 年間20万ドルから30万ドルの政府からの収入。これは全予算の約 30%に相当。
残りは会員企業からの収入で運営。
③その他各国の顧客満足度指数 利用状況
・ EU:2004年に顧客満足度指数の研究調査を実施(予算規模40万ユーロ(約60
00万円))
・ スウェーデン(SCSB : Swedish Customer Satisfaction Barometer):1989年より導
入。
・ 台湾、ニュージーランド:試験段階。
・ シンガポール:試験版導入予定。
表2.3 格付けの例
格付け会社等
格付けの名称
対象分野
特 徴
オリコン㈱
オリコンCSランキングエステティック
結婚情報
結婚プロデュース
人材派遣
人材紹介
英会話
携帯電話サービス顧
㈱J.D.POWE
携帯電話サービス
客満足度調査
R Asia Pacific
等
等
㈱日経BP
・分野毎に利用者の満足度を構成する評価項目を確定
・過去数年間の当該サービス利用者にアンケートし、ランキングを決
定
・CSランキングを広告サービスとして利用(ランキングを表示したサ
イトから当該サービス提供事業者のホームページに入った場合に事
業者に課金されるシステム
・電話機、企業イメージ、通信品質・エリア、非音声機能、各種費用、
顧客対応力の6つのファクターで満足度を測定
コンピュータ顧客満 アプリケーション関連
足度調査
独自OS系サービス
ネットワークサービス
・調査対象は、大手から中堅・中小企業に至る1万社 以上
・IT関連サービスからハード・ソフトに至る全22分野で顧客満足度を
算出
等
57
表2.4 世界のホテル格付け・基準について
地域
格付け主体
対象
ランク
数
根拠
備考
フランス
国
ホテル
5
設備・規模
外国語
客室数、バストイレの装備、従業員の外国語力、レストラン、エレ
ベーター、スイートルームの装備等を評価。サービスの質につい
ては問わず。
スペイン
国
ホテル(国営含ま
ず)
3
設備・規模
外国語
同上。
中国・北京
北京観光局
ホテル
5
設備・規模
北京オリンピックに向け、収容能力を急拡大中。
欧米等21カ国
ミシュラン
(民間企業)
ホテル・レストラン
3
設備
サービス
格付は1926年からの伝統。匿名で宿泊や料理の専門家が専属評
価者として自らお金を払って実際に食事や宿泊をした上で評価。
評価方法の一貫性の維持等にノウハウ発揮。
アメリカ・カナダ
Mobil(民間企業)
AAA(全米自動車協会)
ホテル・レストラ
ン・スパ
5
設備
サービス
北米9000のホテルが対象。匿名の専門スタッフが実際に宿泊し
評価。他にインターネット上の格付けもあるが左記2つが最も浸透
している。
イギリス
イギリス観光局関係機関
ホテル・宿泊所・
公園等
5
設備
サービス
30年の歴史。障害者への対応能力も別途4段階で評価。
日本
国
ホテル、旅館
1
設備
規模
外国語
「国際観光ホテル整備法」に規定された基準を満たせば、(社)日
本観光協会に登録できる。全国のホテル(8686軒)・旅館(59754
軒)のうち、ホテル1124軒、旅館2007軒登録済み。
表2.5 大学等の格付け実績
調査名
調査企業名
等
表2.6 病院の格付け実績
調査名
調査項目・調査方法の概要
企業が選ぶ大学
日経産業新
聞
研究水準の高さ、産学連携、社会人教育等の評価項目について、国内
主要企業に対しアンケート調査を実施。評価した企業の多い順にランキ
ング。
ザ・大学ランキング
週間ダイヤモ
ンド
実質競争率、難関試験(司法試験、国家Ⅰ種、公認会計士)突破力評価、
教員一人当たり学生数・科研費、役員・管理職出現率等の項目について、
それぞれの数値の偏差値を算出し、ランキング。
役に立つ大学
週間ダイヤモ
ンド
上場企業等に対し、採用したい学生に出会う確立が高い大学について4
段階評価のアンケート調査を実施。平均値を偏差値化してランキング。
本当に強い大学
週間東洋経
済
私立大学に調査票を送付し、その回答をもとに、①財務力、②経営革新
力、③人材創出力、④研究力について点数化し、合計点でランキング
全国50大学「就職力」ラン
キング
大学・学部別「出世力」全
データ
「頼れる」大学ランキングT
op30
ビジネススクール調査
国内MBAランキング(企
業側から)
国内MBAランキング(取
得者側から)
Yomiuri W
eekly
プレジデント
調査企業名等
調査項目・調査方法の概要
「アエラ選定のよい病院ベス
ト100」
朝日新聞WEEKLY
AERA
日本医療機能評価機構の認定病院389施設を対象に、患者側に重要と思
われる15項目のの平均値を高い順に並べ「認定病院ベスト100」を選出。
日経病院ランキング
日本経済新聞社
「患者にやさしいか」、「安全を重視しているか」、「医療の質を重視している
か」、「経営が安定しているか」の4点について全国主要病院の病院長にアン
ケートし、病院の総合力を評価しランキング。
日経ビジネス、日経メディカ
ル共同調査
「良
い病院」ランキング
日経ビジネス・日経メ
ディカル
日本医療機能評価機構の認定病院を対象に、医師の評価(アンケート)、患
者の評価(アンケート)、機構の評価の3方向からの評価を統合しランキング。
全国優良病院ランキング
日経メディカル(日経
BP社)
開業医に対してどの病院がよいかをアンケート調査し、ランキング。
患者が決めた!
いい病院全国ランキング
オリコン・エンタテイメ
ント
株式会社
実際に受診患者11万人へのアンケートにより、他の人に推薦できる医療機
関、医療水準、医師の説明等8項目の評価結果によりランキング。
全国病院<実力度>ランキ
ング
宝島社
主要病院7600施設へアンケート調査し、治療後の「ケア」「リハビリ」を重視し
た視点で、病院の人員、体制を評価し、ランキング。
いい病院全国ランキング
2006
週刊朝日
厚労省の手術基準を満たした医療機関を対象に、手術件数が多い病院をよ
い病院として評価してランキング。
医師がすすめる最高の名医
講談社
主要3140病院の手術数からよい病院を抽出。
全国名医・病院徹底ガイド
主婦と生活社
インフォームド・コンセント、患者のQOL、医師への信頼、チーム医療、専門
医としての知識、の視点でアンケートして、評価。
行きたい病院・満足した病院
読売ウィークリー
関東、関西の主要204病院の「憧れ度」「満足度」を、住民2万人へのアン
ケート調査により評価。
有名私立大学の卒業生の就職希望企業と、それらの企業への実際の就
職者数から「就職力」をポイント化してランキング
上場企業の社長の出身大学・学部を調査し、その数を、当該大学・学部
の卒業生数で除した結果に基づいてランキング
日経ビジネス
上場企業の部長職に対し、①過去10年間にレベル向上、②産学連携に
積極的、③国際性が豊か、④部署で卒業生が活躍等の項目についてそ
う思うかアンケート調査。その結果に基づきランキング。
日経産業新
聞
実際に社員を派遣した実績のある主要企業に対し、①カリキュラムの充
実、②教授陣の質、③MOT教育に注力、④研究教育施設が優れている
等についての評価をアンケート調査し、ランキング。
国内主要企業に対してアンケート調査
日経キャリア
マガジン
MBA取得者に、もう一度MBAに通えるとしたらどこを選ぶか質問。その
結果に基づきランキング。
58
2.4 信頼されるサービス産業に
<信頼性向上のための情報提供の仕組みの必要性>
企業が提供する製品・サービスに関する信頼を獲得する方法としては、品質管理
にかかわる経営活動のプロセス管理手法の認証手段であるISO9000等の手法が
存在し、サービス分野の企業においても取得が進んでいる。
一方で、サービスのアウトカムについて評価を行うことにより、消費者トラブル等を
抑制することを目的として、民間によって認証制度が運用されている例がある。しか
し、これらの認証制度がどこまで客観的信頼性を獲得しているか必ずしも明らかでな
い。
また、エステティック業、 結婚相手紹介業等の分野においては、現在、認証制度
の整備に向けた関心が高まりつつある。
【認証制度の在り方】
・具体的には、「民間による認証の導入」が1つの鍵だと思うが、既に民間による認証の導入が動き出している産
業と、そうでない産業とがある。協議会で認証導入に取り組む時には、複数の認証が併存する状況になるだろう。
認証するからには悉皆(しっかい)性が大事なので、あるものは全部認証できるような仕組みにしていくべき。その
ためには、協議会で行う認証と、民間で既にある程度行っている認証とどういう関係になるか、認証機関の認証の
仕組みを事前に考えていくことが重要。(村上委員)
・品質評価や信頼性向上のための仕組み作りを今後形作っていく中で忘れてはいけない視点として、企業なり業
種なりが持っている付加価値を如何に見出しているか、独自性やプラスの側面を如何に目に見える形にしていく
かという観点が非常に重要。(桜木委員)
<民間における情報提供の仕組み作りに向けて>
サービス産業の信頼性向上のための情報提供の仕組み作りにあたっては、政府
の規制の安易な導入を避け、産業界による自主基準の策定や認証制度の構築等民
間による仕組み作りを支援していくことが基本であり、そのための環境整備や支援の
あり方について検討することが重要である。(→図2.1)
また、この場合においても、事業者による新規参入を阻害したり、競争環境を阻害
することのないようなルールとする必要がある。
さらに、サービス産業に対する消費者からの信頼性を確保するためには、個別のト
ラブルを円滑かつ迅速に解決できる仕組みが重要であり、そのため、民間による裁
判外紛争解決(ADR)機関が重要な役割を果すものと考えられる。公正で、中立的な
ADR 機関の在り方、ADR 機関の創設の支援について検討することが必要である。
(→図2.2)
例えば、業界ニーズの高いエステティック業、結婚相手紹介業等について、サービ
ス産業生産性協議会の場を活用し、これを推進する
59
消費者
公表
業界
紛争解決
認証基準
通知
業界自主基準
支援
政 府
認定
認証手続き等
の認定基準等
・業界自主基準策定支援
・認証ガイドライン策定
等
ADR
認定機関
相談事例の分析
注:認定基準等の作成は生産性協議会等の場で検討か。
連携
サービス産業生産性協議会
図2.1 サービス品質認証の制度的イメージ
ADRとは
仲裁、調停、あっせんなどの、裁判によらない紛争解決方法
仲裁:当事者の双方が紛争の解決を第三者に委ね、その判断に従うことによって争いを
解決すること。仲裁契約を締結すると、裁判所に訴える権利を失うことになる。
調停・あっせん:紛争を解決するため、第三者が当事者を仲介し、双方の合意によって紛
争の処理を図ること。「あっせん」が当事者の自主的解決に比重が置かれるのに対
し、「調停」は調停機関が積極的に当事者間に介入する。
<業界・分野別ADR>
調停・あっせん
仲裁
<横断的ADR>
・日本商品先物取引協会
・家電等のPLセンター
等
・日本知的財産仲裁センター
・指定住宅紛争処理機関
・不動産適正取引機構 等
・商工会議所
・消費者団体のADR
・ECネットワーク(ネット取引)等
・(社)日本商事仲裁協会
(業界の声)
・ 公正な先例が出されることは消費者とのトラブル解決に有益
・ ADR維持のための資金負担メカニズムを構築することが必要
・ 業界が資金負担する場合、ADRの中立性確保が課題
・ Eコマースの分野でADRを用意することにより消費者の信頼を得ている例があり、
他の分野でも有効ではないか。
図2.2 民間による裁判外紛争解決手続(ADR)
60
2.5 具体的取組
(1) 日本版 CSI(Customer Satisfaction Index:顧客満足度指数)の整備・普及
ACSI(米国顧客満足度指数)などを参考としつつ、日本版 CSI を構築するとともに、
CSI の多様な活用と普及に向けた取組を行っていく。
①開発ならびに運営体制の構築(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会は、各国で実施されている顧客満足度指数を参考に、
産業界、学界等と連携しつつ、日本版 CSI の開発、運営組織についての検討を行う。
②普及に向けた取組(協議会による取組)
上記により整備された運営組織は以下の取組を通じその普及を図る。(→図2.3)
a) 多様な利用サービスの整備
日本版 CSI の普及を図るためには、ACSI(米国顧客満足度指数)のように多様な利
用サービスを整備し、活用しやすい環境を提供することが必要である。調査公表の対
象となる企業に対しては、公表スコアの根拠となる詳細な分析データを提供し CSI 活
用の支援を行うと同時に、公表調査の対象外企業に対しても、同一 CSI モデルを利
用した調査・解析サービスを提供するなど、広範なサービスを整備していく。
b) 中小サービス企業の利用支援
日本版 CSI の普及のためには、大企業のみならず中小サービス企業等も活用でき
るよう、サービス産業生産性協議会や各種組織・団体等を活用し、CSI 活用のための
相談体制など、きめ細かな体制を整備する。
c) 企業の CSI 活用支援
日本版 CSI の理解と活用を促進する、企業に対する教育プログラム等を提供する
ことにより、CSI の一層の普及とその有効活用を図る。
(※)米国や韓国とベンチマークとの制度的整合性を確保し、公的サービスなどの国際比較を可能にすることも検討。
(韓国では米国のサービス水準をベンチマーキングし、競争力強化を図る指標としても活用。)
(※)公共サービスも指数化の対象とし、価格だけでなく、質の評価も対象とすることも検討。
③日本版CSIの整備に対する支援(政府による支援)
サービス産業生産性協議会が開発したCSIの多様な活用と普及に向け、各種組
織・団体等を活用し、CSI活用のためのコンサルティングを提供する相談体制の整備
等、普及に向けた取組を支援する。
【サービス品質の評価】
・サービス業では、「顧客満足度」という視点、顧客側での QCFD(Quality, Cost, Flexibility, Delivery)は何かと
いう視点を導入すべき。(新井委員)
・日本版CSIは必要。CSIで商品・パッケージについての定義をはっきりさせることが重要だ。(秋草委員)
・信頼性はコストではなく、資産だという考え方が出てきているが、サービス産業にはその考え方が非常に重
要で、信頼性をどう作り込むかが鍵になる。(村上委員)
61
CSIの意義
消費者視点の
基礎的統計的データの提供
従来の供給者視点の経済指標に対
して、消費者視点の指標としての側
面を補うもの
標準的な統一された手法で幅広い
業種を計測・集計することにより、消
費者の視点で捉えた商品・サービス
の質の基礎的統計的データとなる
ベンチマークの提供・
顧客資産の可視化
サービスの質の可視化・競争
を通じたサービスの質の向上
企業間・業種間で比較可能・時系列
のベンチマーキングを与える
顧客満足に対する支出をコストとし
てだけでなく投資として評価する指
標を与える
従来の財務指標だけでなく、顧客資
産という非財務指標を可視化する
サービス・商品の質が可視化される
ことで購入の意思決定に役立つ
指数の存在が競争を促進し、サービ
スと商品の質の改善に繋がる。
生産性協議会を中心とした日本版CSI
の開発・整備
生産性協議会を中心とした日本版CSIの開発・整備
CSIの幅広い普及促進
多様な利用サービスの整備
多様な利用サービスを整備し企業が
活用しやすい環境を提供する
調査公表の対象となる企業に対して、
公表スコアの元となる詳細な分析
データを提供しCSI活用の支援を行う
調査対象外企業に対しても、同一CSI
モデルを提供し、同様のCSI活用を可
能とするサービスを整備する
中小企業のCSI利用支援
大企業のみならず中小企業等が
CSIを利用できる体制を整備する
生産性協議会や各種組織・団体を
活用し、CSI利活用の支援窓口を設
置するなど、中小企業の利用を支援
する
図2.3 CSIの意義と普及イメージ
62
企業のCSI活用の促進
日本版CSIの理解と活用を促進する
教育プログラム等を提供することで、
企業へのCSIモデルの一層の普及と
その有効活用を図る
(2)サービスを認証する仕組み作り
民間によるサービスの認証制度等サービスの内容や品質を「見える化」する取組が
重要であり、サービス産業生産性協議会はその取組を支援する。
①業界による自主的な取組への支援(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会は、各業界による自主基準等の策定を支援する。
②第三者認証制度構築への支援(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会は、認証ガイドラインの策定等を通じ、民間による第三
者認証制度の構築を支援する。
さらに、サービス産業生産性協議会は、専門機関の知見も活用しつつ、認証機関
が適切に認証を行う体制、能力等を有していることを認定する枠組みを構築する。
③ADR のメカニズム構築への支援(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会は、上記活動と連携して、サービス提供者と消費者の
間のトラブルを民間の裁判外紛争解決で処理する枠組みについて、望ましいADR実
施体制、資金負担等について検討し、その構築を支援する。なお、検討にあたっては、
ADR 機関の公平性、中立性を確保することが必要である。
④認証やADRのメカニズムなどの実証事業による支援(政府による支援)
政府は、サービス産業生産性協議会での検討の結果に沿って民間において構築さ
れた認証や ADR のメカニズムが実際に有効に機能するかどうかを見極めるため、必
要に応じ適切な事業を支援する実証事業を行う。
【認証制度とADRの在り方】
・「民間による認証の導入」が1つの鍵だと思うが、既に民間による認証の導入が動き出している産業とそうでな
い産業とがある。協議会で認証導入に取り組む時には、複数の認証が併存する状況になるだろう。認証するから
には悉皆(しっかい)性が大事なので、あるものは全部認証できるような仕組みにしていくべき。そのためには、協
議会で行う認証と、民間で既にある程度行っている認証とどういう関係になるか、認証機関の認証の仕組みを事
前に考えていくことが重要。(村上委員)
・評価基準が重要。独自性・サービス品質を競っても、それが消費者に見えなくては何もならない。消費者がサー
ビスを評価するための土台をどのように作るかが課題。(桜木委員)
・業界が資金負担する場合、ADR の中立性確保が課題。(大学関係者)
・いくつかの分野で ADR を用意することにより消費者の信頼を得ようとしている例があり、他の分野でも有効では
ないか。(ADR関係者)
63
【コラム】米国顧客満足度指数(ACSI)の概要
1.ACSI とは
ACSI(American Customer Satisfaction Index=米国顧客満足度指数)は、消費者の
満足度を測る指標で、ミシガン大学ビジネススクールが1994年に開発し、以降毎年
調査公表されているものである。現在調査業種は43業種200社以上であり、さらに
連邦政府機関も調査の対象になっている。
ACSI National, Sector, and Industry Scores:
Q4 2005 – Q3 2006
ACSI
74.4
Utilities
72.4
Information
68.6
Transportation &
Warehousing
72.3
72 Energy
Utilities
Accommodation &
Food Services
75.8
Health Care &
Social Assistance
74.1
63 Newspapers
73 Motion Pictures
69 Broadcasting
TV News
74 Software
70 Fixed Line
Telephone
Service
65 Airlines 66 Wireless
74 Hospitals
71 U.S.
Telephone
Postal
Service
Service 63 Cable &
83 Express
Satellite TV
Delivery
E-Business
76.5
Manufacturing/
Durable Goods
80.1
77 Personal
Computers
80 Electronics
(TV/VCR/DVD)
81 Major
Appliances
81 Automobiles
& Light
Vehicles
70 Cellular Telephones
Retail Trade
72.4
Manufacturing/
Nondurable Goods
82.3
73 News &
Information
76 Portals
79 Search
Engines
75 Hotels
77 LimitedService
Restaurants
Finance &
Insurance
73.9
Public
Administration/
Government
65.8
62.7 Local
Government
72.3 Federal
Government
83 Food
Manufacturing
83 Pet Food
84 Soft Drinks
82 Breweries
78 Cigarettes
80 Apparel
76 Athletic Shoes
84 Personal Care
& Cleaning
Products
E-Commerce
79.6
75 Banks
75 Life Insurance
68 Health
Insurance
78 Property &
Casualty
Insurance
74 Supermarkets
69 Gasoline
Stations
75 Department &
Discount
Stores
74 Specialty
Retail Stores
76 Health &
Personal Care
Stores
81 Retail
78 Auctions
76 Brokerage
77 Travel
図2.4 ACSI の対象業種とその業種別 ACSI スコア
2.ACSI の調査手法
ACSI の調査は、1社あたり 200 名以上、のべ 65,000 名以上の消費者に対して、原
則電話による聞き取りで行われており(E-commerce 等では Web による調査も存在)、
顧客は各質問に対して満足度等に応じたスコア付けを行う。スコアは他社の商品サ
ービスと比較して付けられるのではなく、顧客の期待、質や価値への認識といった要
素を顧客満足度とリンクさせ、これに基づいて顧客サービス指標を算出するものであ
る。さらにこの指標を、苦情件数やカスタマーロイヤルティ(価格感度と顧客維持率か
ら計算)などの値を考慮して精緻化することで、顧客維持率から再購入率の予測を行
い、顧客資産として算定することが可能となっている。こうして企業毎に算出されたス
コアは更に業種・産業・全産業の各段階のスコアに集計され、それぞれ 100 点満点で
算出される。(業種・産業等に集計する際には売上高規模に応じて加重平均される)
64
調査項目
期待値
質
価値
苦情
手法
購入前の商品・サービスの評価により測定
商品・サービスの全体の質、信頼性、ニーズ充足度等により測定
商品・サービスの質に対する支払額の評価、支払額に対する質の
評価によって測定
苦情の有無、苦情時の企業対応などにより測定
カスタマーロイヤリティ 商品・サービスの再購入意向などにより測定
出典:ACSI ホームページ
図2.5 ACSI スコアの算出モデルとその調査項目概要
2006年第一四半期調査結果例(ホテル)
出典:ACSI ホームページ
図2.6 ACSI スコアの例
3.ACSI の特徴
①消費者視点の基礎的統計的データの提供
標準的な統一された手法で幅広い企業を調査することで、業種、産業、国レベルに
わたる比較可能な指標となり、供給者視点である「売上高」や「産出量」といった従来
からある経済指標に加え、顧客が知覚する「質」という消費者視点に立った、経済状
況の評価や各種施策の影響を観察するための基礎的統計的データを提供している。
②ベンチマークの提供・顧客資産の見える化
企業間・業種間で比較可能な時系列のベンチマーキングを与えると同時に、顧客
満足に対する支出をコストではなく投資として評価する指標を与えており、従来の財
務指標だけでなく、顧客資産という非財務指標を見える化するものとなる。
65
③サービスの質の見える化・競争を通じたサービスの質の向上
サービス・商品の質が見える化されることで消費者の意思決定に役立つと同時に、
指数の存在が企業の競争を促進し、サービスと商品の質の改善に繋がることが期待
される。
4.ACSI の活用事例
①政府サービス評価における ACSI の活用
米国では NPR(国家業績評価)の取組において、1993 年大統領令 12862 号「顧客
サービス標準の設定」が出され、連邦政府に対して、顧客に焦点を合わせること、ビ
ジネス分野における最高の実施例と同水準の顧客サービス水準を策定・実施するこ
と、等が定められている。これを踏まえ、民間との比較が可能な国レベルの広範な顧
客満足調査として ACSI が各種連邦機関の業績評価に利用されている。このように民
間企業のみでなく政府サービスの評価においても ACSI が利用されている。
IRS hears the voice of the customer…
• Commitment to customer service
• Increased awareness and usage of e-filing
Customer Satisfaction Up 14 Points
連邦政府ACSI
図2.7 IRS(内国歳入庁)における
ACSI の活用
図2.8 連邦政府の ACSI スコアと
産業全体の ACSI スコアの推移
②マクロ的分析の例
●製造業とサービス業の比較
製造(81.3)のほうがサービス(72.6)よりもスコアがよい。
●競争と CSI の関連性
地域独占性の高い業種やスイッチングコストの高い業種は CSI が低い。(航空、携
帯電話、ケーブル TV など) 一方乗換えが容易な食品業界は CSI が高い。
●企業合併の CSI への影響
サービスでは合併は CSI を下げる傾向(銀行統合で支店が減るなど)があるが、そ
の CSI の低下が一時的であった業種(銀行等)と、電話事業のように下がったままの
業種もある。これは統合により競争がなくなり、顧客サービスの質が低下したことを示
唆している。一方で製造業での合併は CSI を向上させている。
66
3.サービス産業における人材育成について
∼何故、人材育成なのか?∼
3.1 サービス人材の問題点
<人こそがサービス産業の最大の価値>
製造業では、機械装置が中心となって製品を製造するため、品質や効率はその機
械装置に依存する。
一方、サービス産業では、人が中心となってサービスを生産・提供することから、製
造業とは異なり、その品質や効率は人に対して、より大きく依存する。このため、サー
ビス産業の品質や効率の向上のためには、優秀な人材の獲得と育成の両面が重要
となる。
しかしながら、新しい産業である、人材の流動性が高いなど、サービス産業のいく
つかの特性から、人材の確保と育成においてもいくつかの課題がある。
【人材育成が不可欠!】
・当社では人こそ資産だと考えており、人材育成には特に力を入れている。(フィットネス産業関係者)
・サービス産業では、知恵と質を兼ね備えた人材育成が重要。(桜木委員)
<新しいサービス産業と体系的な教育>
サービス産業は、消費者のニーズの変化に伴い、絶えず新たなサービスが生まれ
提供されるため、産業分野として比較的新しい分野が多い。このため、製造業には、
工学部・理学部といった学問体系が大学等教育機関にあるが、サービス産業には、
学問体系が確立されておらず、また、産業界において求められる人材像が明確でな
いことなどから、カリキュラムの体系化も十分とは言えない。
また、学部・学科が存在する場合でも、現場のニーズに即したカリキュラムになって
いないとの指摘があるなど、専門人材の育成のための体制は十分に整っていない状
況にある。
【歴史の浅いサービス産業】
・日本の大学における観光学科は、基本的に押さえるべき学問としての体系が確立されておらず、学校間
のムラが大きい。カリキュラムも各校でまちまちである。このようなことでは、採用する企業側も困るし、学
生にも甘く見られて良い生徒が集まらない。(観光産業関係者)
・新人には法定研修に加えてノウハウ等を教えているが、やはり現場で苦労を経験させる必要がある。新
人教育の一環として、先輩社員を指導員に指名し、直接ノウハウを教える「兄貴分制度(仮称)」を実施して
いる。(タクシー業界関係者)
67
<「経験と勘」によるサービス−サービス工学の必要性−>
サービス産業においては、従来から、個人や組織の「勘と経験」に頼る傾向が見られ、
サービスの品質や効率に関する分析や問題解決の方法は、必ずしも科学的・合理的
な根拠に基づくものでない場合がある。
欧米においては、積極的にサービス工学の研究や教育が進められており、既に学
問領域としてサービス工学が認知されるとともに、カリキュラムとして実践されている
大学もある。
しかしながら、日本では、最近になってサービス工学の研究や教育に重点を置い
た教育機関が現れ始めてきたところであり、サービス産業界におけるサービス工学の
手法の活用は十分には進んでいない。(→参考1)
【サービス工学の未活用】
・経済産業省が工学的アプローチや資料透明性の向上などの具体的な課題を取り上げたのは良いこと。
サービスに関心を持ち始めた工学系の学者は、東大では最近急に増えてきたが、他大学ではなかなか見
つからない。(新井委員)
・サービス工学については、工学側の視点というよりは、マーケティングの側から見るべき。工学はサービ
スをデザイン(モデル)化しようとするが、それだけではイノベーションは生まれない。イノベーションが生ま
れる環境、つまり偶発が生まれる環境をつくることが重要。(大学関係者)
<サービスの経営人材>
サービス産業においては、例えば、観光経営分野や医療分野における医師などの
人材について、当該専門分野の知識や技能の教育が行われている場合であっても、
経営という観点からの教育は必ずしも十分に行われていないとの指摘がある。(→参
考2)
サービス産業においては、現場での経験は豊富でも、経営に必要な知識やノウハ
ウを十分に得ることなく、やがて経営者になる場合がある。
一方、MBA等の経営人材育成のための専門教育機関においては、経営全般に関
する基本的体系的な知識に比べ、個別産業の現場における特性や実態を踏まえた
実践的教育が必ずしも十分に行われてこなかったとの指摘がある。
【経営人材の教育機会の不足】
・医療機関においては、長年現場で診療に携わっていた医師が突然院長に指名され経営者となるため、経
営についてしっかりとした教育を受ける機会はほとんどない。(病院関係者)
・社会福祉関連の学科が増えているが、ビジネスという観点が薄く、産業育成に繋がっていない。(大学関
係者)
・MBA人材には、市場動向や競合状況を分析でき、効果的な販路計画、投資計画をたてられることを期待
するが、日本のMBAでは十分育成されていないのではないか。(情報産業関係者)
・ファイナンス系、金融系の人材ニーズは高いが、そこに重みを置くMBAコースが少ない。(人材紹介関係
者)
68
<人材の流動性>
サービス産業は、比較的新しい分野が多いこと、産業界において求められる人材
像が明確でないことなどから、教育機関のみならず産業界においても人材育成の手
法が必ずしも確立していない。
さらに、近年、雇用形態が製造業も含め産業全体で大きく変化してきているが、特
に、比較的若い産業であるサービス産業においては、パートやアルバイトなどの流動
性の高い非正規社員に労働力を大きく依存する業態となっているものも多く見られ
る。
このため、サービス産業においては、企業内における長期的な人材育成に対する
投資インセンティブが低く、また、当該業界として、あるいは取引企業との協力などに
よる人材育成に対する取組も十分には行われていないとの指摘がある。
【人材の流動化に伴う人材育成の困難性】
・サービス業では、需要変動を吸収するためには、パート・アルバイトを活用せざるを得ない。これらの人に
いかに働きがい、インセンティブを与えるかが重要。(研究機関関係者)
・技術者派遣業界内においては、人材の流動性が高いため、人材の流動化を前提とした人材の育成・活用
システムの構築が社会全体として必要。(西本委員)
<サービス産業における悪循環の可能性>
サービスは、生産と消費が同時に起こり(同時性)、また、触れることができない(無
形性)など、製品とは異なる性質を有している。このため、消費者がサービスの品質を
事前に、あるいは提供時に確認することが困難であり、その結果、期待感と現実との
ミスマッチが生じやすい。
このようなミスマッチが頻発することにより、消費者によるサービスに対する信頼性
が低下していく。
また、サービスの品質や信頼性が低い状況は、サービス産業全体に対する印象や
評価に影響を及ぼし、その結果、サービス産業に優秀な人材が集まりにくいという悪
循環に陥っている可能性がある。
【人材と品質と信頼性に係る悪循環】
・フィットネス業界には、体育学部出身者が少なくない。採用活動に当たっては、製造業と比べた時のサー
ビス産業に対する家族のイメージを気にかける学生もいて困惑することがある。(フィットネス産業関係者)
・学校教育においても「モノ作りを尊重すべし」というような風潮があり、モノ作り分野に就くことを重視し、サ
ービス分野については意識が低い。教員もそのような意識の者が少なくない。(大学関係者)
69
【参考1】大学におけるサービス工学の研究・教育例
海外におけるサービス工学教育のカリキュラム例
欧米では、いくつかの大学において既にサービス工学が学問領域として認知され、カリキュラムとして実践されている。
カリフォルニア大学バークレー校
テキサス大学
<オペレーションズ・リサーチ・マネジメント・サイエンス学部>
<サービス・オペレーション・マネジメント>
(1)経済システムにおける意志決定
○経済活動におけるサービスの役割
マクロ経済学、上級ミクロ経済学、経済統計と経済指標、工業統計・品質管理・予測
手法
○サービスの本質
(2)製造業とサービス業における意志決定
○新しいサービスの開発
生産システム分析、創業手順設計と分析、ロジスティクス(物流)とサプライチェーン
マネジメント、線形計画法、工業統計・品質管理・予測手法
○サービスを支える設備
(3)社会システムにおける意志決定
○サービスとの出会い
社会学、社会学方法論入門、同中級、工業統計・品質管理・予測手法
○インターネットサービス
(4)アルゴリズムによる意志決定
○サービスにおける需要予測
データ構造、複雑な問題と効果的なアルゴリズム(アルゴリズム設計論)、計算可能
性と複雑さ、順列組み合わせと確立論
○待ち行列の管理
○サービスの品質
○サービス施設配置
○待ち行列理論と受容能力の設計
日本におけるサービス工学教育の事例
日本では、サービス工学の研究・教育を行っている大学はあまりないが、最近では、サービス工学の研究や教育に重点を置
いた教育機関が現れ始めている。
①東京大学人工物工学研究センターにおいては、サービス工学研究部門がおかれ、サービス創造の方法論の確立と様々なサービスシステム開発、その体系化などに取り
組んでいる。
②早稲田大学大学院ファイナンス研究科においては、金融工学とリスクマネジメント、ファイナンスのための数値解析、ファイナンスのための確率過程等、金融工学に重点を
おいたカリキュラムを構成している。
③北陸先端科学技術大学院大学では、サービスサイエンス論を新設した。サービスの基本概念と最新理論、その応用について理解を深め、サービス・イノベーションの実践
的知識を習得し、幅の広いイノベーション人材を養成することを目指している。
④一橋大学国際企業戦略研究科では、サービス・マネジメントがマーケティングの観点から研究され、教育されている。
70
【参考2】大学等におけるサービス産業人材(観光経営人材)育成のためのカリキュラ
ム整備状況
【観光関連学科の設置状況】
観光関連学科数
32学科。 うち、経営分野の教科を一つでも持つ学科数
20学科。
<上記の経営分野の教科を一つでも持つ20学科を分析した結果>
旅館等の生産性を向上する上で、必要とされるスキルのうち、管理会計、収益管理、作業工程管理などの分
野に属する教科については、ほとんど教えられていない。
これらの教科については、今後教材開発を含むカリキュラムの整備が期待されている。
【既存教育機関でカバーされている部分】
既存のMBAのカリキュラムで
カバーされている部分
A.経営
意志決定
(狭義の経営)
管理
環境分析他
B.ホスピタリティ
C.地域づくり
コミュニケー
ション
ホスピタリティ
事業
ホスピタリティ
文化
観光地計画
(地域単位の
魅力づくり)
地域計画
(狭義の地域づくり)
既存の観光系学部のカリキュラムで
カバーされている部分
(出典:集客交流経営人材育成事業ワーキンググループ資料)
71
3.2 サービス産業における人材育成を巡る課題
<サービス人材の体系的な教育に向けた産学間における対話>
大学における教育は、これまで学問的に体系化された知識を中心としてきている。
一方で、大学側としては、産業界において求められる人材像が明確に伝えられてい
ないという声があり、産学双方の意思疎通が図られていないという課題が見受けられ
る。(→参考3)
さらに、製造業に比べ、サービス産業の社会的イメージが低く、また、各サービス産
業の歴史も比較的浅いことなどから、大学においては、産業界のニーズに対応したよ
り実践的な知識についての教育の重要性があまり認識されてこなかった。
近年、観光、コンテンツ、福祉などのサービス分野では、社会的なニーズの変化に
も対応し、学部・学科が新たに設置・増加されつつあるが、今後は、他のサービス分
野も含めた教育体系の充実に向けて、産業界と大学等教育機関の対話を進めていく
ことが重要である。(→参考4)
こうしたサービス産業の質的・量的な高まりのニーズに対応した人材育成は、教育
機関としての大学にとっても今後成長の見込まれる分野になると考えられる。
【サービス産業人材を育成する教育体制の充実】
・対個人サービスを発展させるためには、生産性向上だけではなく、イノベーションをどう起こすかなどとい
うテーマも重要。その際に、人材育成や教育を考えると、やはり大学の中にサービス産業を研究する部門
を作っていくことが必要。(斎藤委員)
・大学の学部や学科においてサービス産業のカリキュラムはできていないが、大学におけるカリキュラムは
ディシプリンであり、そこにサービス産業のような各論的なものを持ち込むよりは、それがきちんと存在し、
そこからどのように各論を抽出できるかという仕組み作りが重要。(橋本委員)
<サービス工学のススメ>
これまでの大学の活動においては、学際領域の活動、特に、社会科学系学部と理
工系学部との連携の歴史は浅く、主に自然科学や工学の分野で活用されてきた分析
手法を、サービスにも応用するという視点の重要性が認識されてこなかったものと思
われる。
また、このような工学的手法のサービス分野への応用に関する研究の成果を評価
する学界や産業界の枠組みも形成されておらず、このためサービス工学に関する研
究・教育に対する取組が十分になされてこなかった。
今後は、サービス工学の研究の重要性が認知されるとともに、その研究が拡大し
ていくことが求められる。
また、大学等教育機関においてサービス工学の教育が行われるよう、教育内容の
充実が図られていくことが重要と考えられる。
72
【サービス工学に関する研究・教育】
・「モノを作る」ことと「サービスを作る」ことは、100%同じではないが、共通部分は相当ある。工学系の人
も、サービスに限定する必要はないが、「価値を作り出す」という意味で貢献する場は多くあると思う。その
際には、工学系だけでなく、様々な所とコラボレーションを行っていくことが大事で、今の大学は制度的にも
やりやすくなっており、将来的にも期待ができる。(新井委員)
・電子カルテをとってみても、理工学者にとってみると、医学・医療面からどういうニーズがあるのかわから
ないという問題がある。ニーズとシーズのマッチングの行えるトランスレーターの存在が極めて重要。(橋本
委員)
<専門技術と経営技術のバランス>
産業界においては、現場における実践的な技能や知識だけでなく、幅広く体系的
な経営能力を持った経営人材が不可欠である。
大学等教育機関においても、サービス分野における固有の専門的な知識や技術
の教育に加えて、経営ノウハウなどの知識についてもバランス良く教育されることが
期待されている分野も存在する。また、経営学部やビジネススクールにおいては、経
営面全般についての教育に加えて、個別のサービス分野に関する教育も充実するこ
とが期待されている。
今後は、教育内容の充実、サービス産業における経営トップやマネージメント層、
さらにはこれらの将来の候補者に対する教育機会の充実を図ることにより、専門技術
と経営技術の双方の知識を備えた人材を育成することが重要と考えられる。(→参考
5)
【専門技術と経営技術のバランス】
・大学の観光学科の教授には、ホテル業のGMのOBや社長経験者がおり、数十人で団体を作っている。フィ
ットネスや介護でもこういう取組を行うのも一つの手立てだと考えられる。(斎藤委員)
・純粋に若い頃から学問をしてきた研究者による研究のみならず、実際に実践してきた人の「経験」を取り入れ
た学問体系を開拓し、大学にも理解を求めて分野を作っていく取組も必要。これが、業界団体の研修等の努
力とも相まって、生産性を高めるのにプラスに働くと考える。(斎藤委員)
73
<サービス産業の人材育成のためのプラットフォーム構築に向けて>
サービス産業は、人材の流動性が高く、また消費者のニーズの変化に伴い絶えず
新たなサービスが生まれ提供されることなどから、これまでの企業内における長期的
な社内教育に代替する人材育成のメカニズムが必要と考えられる。
特に、サービス産業のイメージ低迷による人材確保の問題や、絶えず変化する消
費者ニーズを的確に把握できる人材が必要であるとの課題に対しては、産業界にお
ける積極的な取組が重要となる。
例えば、個別企業を超えて、業種内やあるいは業種横断的に共通とされるスキル
やノウハウについては、個別企業単独で対応するよりも、産業界のニーズを踏まえつ
つ関連業界が協力して取り組むことが効果的であると考えられる。
その業種に必要となる共通のスキル標準の策定、そのスキルに関する能力評価制
度の確立などは、業界共通の人材育成のためのプラットフォームになるものと期待さ
れる。(→参考6)
また、このような人材育成のプラットフォームは、サービス産業に従事する人材、あ
るいは将来を希望する人材に対して、自らの能力向上のために必要な教育内容を明
確にするものであるため、将来のキャリアアップのためのモチベーションを高める上で
も有効と考えられる。
【産業界における人材育成】
・アルバイトは学生であるため入れ替わりが激しく、店舗内及び店舗間で能力格差が生じやすい。フィットネ
ス業界共通のスキル標準があるとありがたい。(フィットネス産業関係者)
・チェーンストア業界では、棚卸しのサービス会社が活用され始めている。業界全体で棚卸しの作業を取り
仕切れるスーパーバイザーの育成を図ることが課題としてあがっている。(研究機関関係者)
・BtoBの企業において顕著だと思うが、サービス産業だけでなく、サービス産業のユーザーとなっている企
業の生産性を上げることに寄与できるかという視点が重要。これが、各論になると、業界標準の取組となる
のかもしれない。(西本委員)
・人材育成については、「消費者の視点を伝えられる人」、「消費者とサービス提供者の間に入る人」という課
題が重要。(橋本委員)
74
【参考3】大学と産業界の意思疎通の現状
どちらかという
と多い, 55
非常に多い,
13
非常に少ない,
458
どちらかという
と少ない, 248
「推薦枠において、具体的な推薦基準を提示している企業はどのくら
いありますか」に対する大学関係者の回答。
(出所:経済産業省委託調査2006年)
【参考4】サービス分野の学部・学科の設置状況
観光分野
現在、私立大学において32の観光関連学科が設置されている。また、一部の国立大学においても観光振興に資する人
材の育成のための大学院や学部の創設について検討が行われているところである。
【設置例】
○立教大学 観光学部 観光学科
○市立高崎経済大学 地域政策学部 観光政策学科
○和歌山大学 経済学部 観光学科(平成19年4月設置予定)
等
コンテンツ分野
平成16年度以降、およそ10のコンテンツ関連学部・学科等が設置されている。
【設置例】
○デジタルハリウッド大学院「デジタルコンテンツ研究科デジタルコンテンツ専攻」
○東京大学大学院情報学環「コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム」
○早稲田大学総合研究機構「コンテンツ・プロデュース研究所」
○東京芸術大学大学院「映像研究科(映画専攻)」
福祉分野
社会福祉系の関連学部・学科の設置数は200以上にのぼる。
【設置例】
○東北福祉大学 総合福祉学部 社会福祉学科
○東京福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科
○城西国際大学 総合福祉学部 福祉経営学科
○桜美林大学 健康福祉学群 社会福祉専修
等
75
等
【参考5】教育コースの創設が必要とされる分野の例
①医療経営人材:医療実務のみならず経営技術にも精通し、社会が求める質の高い医療サービスを提供する。
平成17年度には、産学官で連携して、医療機関経営に必要なスキル要件を設定し、標準テキストとケーススタディ教材を開発した。
これを受け、東京大学大学院では、既に医師らを対象とする医療経営講座を開設しており、またその他の大学においても、専門職大学院開設について検討が進めら
れているところ。
平成18年度は、全日本病院協会、九州大学、大阪大学、京都大学等において、標準テキストの改良や「TQM」「医療機関の事業再生」「病院のIT化」「医療現場の
ナレッジマネジメント」等をテーマとし、ケーススタディ教材の充実を図っているところ。
②観光集客交流経営人材:旅館・ホテル等の観光分野において、個々の事業者の経営力を強化する。
北海道大学、和歌山大学、立命館アジア太平洋大学において、人材ニーズ等に対応した実践的な教育カリキュラム・標準テキストの開発のための実証事業を実施
しているところ。
③地域経営人材:地域に存在する様々な資源をコーディネートし、地域全体の魅力を向上させる。
実際に地域経営に取り組んでいる者の行動分析などから地域経営人材に求められるスキル要件の整理を実施しているところ。
【参考6】共通のスキル標準・能力評価制度による人材育成
経理・財務分野
・ 日本CFO協会では、経済産業省が作成した「経理・財務サービス・スキルスタ
ンダード」を基に「経理・財務スキル検定」を構築。
・ 本検定を導入する企業は84社に上り、企業内昇格基準や採用基準に検定結
果を採用するなど、業種横断的に経理・財務分野の人材のキャリアアップパス
の構築に活用され始めているところ。
〔受験者推移〕
実施日時
第1回検定
第2回検定
第3回検定
(2005年11月∼ (2006年5月∼6 (2006年11月∼
12月)
月)
12月)
総受験者数
1,593人
1,462人
76
2,760人
【参考7】サービス産業における人材育成を巡る背景と課題の整理
<サービス産業の人材を巡る背景>
<人材育成における課題>
産業としての歴史の浅さ
(専門人材育成体制の未確立)
大学等の高等教育機関において、サービス
産業人材を育成する学部・学科が不足
サービス工学研究が不十分
サービス工学の未活用
サービス工学が教育に導入されていない
経営人材の教育機会の不足
専門分野特有の知識教育は行われているが、
経営に関する知識教育は行われていない
人材の流動化に伴う人材育成の困難性
産業界における人材育成体制が不十分
サービス産業界における人材と
品質と信頼性の好循環に向けて
77
3.3 具体的取組
(1) サービス産業人材を育成する体系的な教育体制の充実と産学間における対話
の促進
産学双方の対話と連携を図り、より実践的なニーズに対応したサービス産業人材を
育成するための教育体制を充実させる。
①サービス産業界に求められる人材ニーズ・人物像の明確化(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会などの場において、サービス産業界における人材に対
するニーズを把握するとともに、求められる人物像(知識・スキル・技術など)、企業
における将来のキャリアパスを明確にする。
②サービス産業人材を育成する教育体制の充実に向けた産学間における対話の促
進(協議会による支援と政府による取組)
産業界は、人材の育成に必要となる知識・スキル・技術について、大学等教育機関
との産学連携による対話を通じ、教育体制整備に向けた働きかけ・支援を行う。
政府は、このような産業界ニーズについて、産業界と大学等教育機関との対話の
促進に資する働きかけを行うとともに、教育体制の充実に向けた取組を支援する。
ⅰ)産学の連携により、例えば以下のような分野において、教育の充実について検
討を行う。
・サービス工学などサービス産業人材の育成の充実
・サービス産業に密接に関連する教育の充実
・医学部における医療経営、観光学部におけるホテル経営、体育学部における
スポーツクラブ経営など、サービス産業毎の固有の専門知識のみならず、経
営技術にも精通した経営人材の育成の充実
ⅱ)サービス工学に関する研究に対する支援を通じ、サービス産業界におけるその
重要性の認知とサービス工学手法の活用を促進する。
【産学連携でサービス産業の質を高める】
・社会福祉関連の学科が増えているが、ビジネスという観点が薄く、産業育成に繋がっていない。(大学
関係者)
・工学系の技術とサービスとが十分、相互に促進する要素がある。また、工学に限らず、領域を越えた
接合の中に新しい創造がある。異分野の組み合わせがサービス産業の質を高めることは十分ある。
(牛尾座長)
78
(2)産業界における戦略的人材育成
−サービス産業人材育成プラットフォームの構築−
業種内や業種横断的に共通とされるスキルやノウハウを明確化し、より戦略的に人
材を育成していくための体制を整備する。
①ニーズに対応した人材スキル標準の作成(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会において、個別企業を超えて業種内や業種横断的に
共通とされるスキルやノウハウについて、より戦略的に人材を育成していくため
に、産業界が求める人材ニーズを明らかにするとともに、スキルレベルを整理し、
スキル標準を作成する。
※ 厚生労働省においては、業種別、職種・職務別にスキル標準を整理した「職業能力評価基準」を策定し
ており、ホテルやスーパーマーケット、フィットネスクラブ等サービス関連の業種についても、その範囲
を広げているところ。こうした既存の「職業能力評価基準」を活用することで効率的にスキル標準を作
成することも一案。
②人材育成のための共通プラットフォームとしての能力評価制度(試験・検定)の構
築支援 : ジョブカードの活用など(政府による支援と協議会による取組)
政府は、スキル標準に加え、能力評価制度(試験・検定)の構築のための支援を行
う。こうした評価システムの下では、企業が労働者のキャリアアップに応じた処遇シ
ステムを構築したり、企業の枠を越えた能力評価・人材活用が可能となるため、労
働者の能力開発意欲を向上させる効果も期待できる。
また、底上げ戦略で決定した「ジョブカード制度」の具体化をサービス分野において
図るため、「サービス産業生産性協議会」参加企業の積極的協力を促しつつ、制度
を構築していくことも必要である。
③共通教育プログラムによる効率的な人材育成(政府による支援)
政府は、このようなスキル標準と能力評価制度から成る人材育成のための共通プ
ラットフォームの構築が進むとともに必要となる、業界や職種毎に共通の教育プロ
グラムや教材の充実を図る支援を行う。これにより、人材の流動性が高い産業界
においても効率的な人材育成が可能となる。
79
【業種・業界横断的な人材教育インフラの整備状況】
業種・業界
スキル標準
能力評価制度(試験・検定等)
《注1》
《注2》
経理・
財務分野
経理・財務サービ
ス・スキルスタンダ
ード(平成15年)
経理・財務スキル検定(平成1
6年度)
スーパーマ
ーケット業
職業能力評価基
準(平成16年度)
スーパーマーケット検定(平成
16年度)
フィットネス
産業
検定制度構築に向けて検討中
−
−
−
各種商品卸
売業
ボウリング
業
職業能力評価基
準(平成17年度)
職業能力評価基
準(平成16年度)
職業能力評価基
準(作成中)
職業能力評価基
準(作成中)
−
−
−
−
学習塾
−
学習塾講師能力評価〈認定)シ
ステム(平成17年度)
−
ホテル業
《注1》 国又は国の支援により作成
共通の教育プログラム・教材
・ 会社「経理・財務」の基本
テキスト
・ やさしくわかる経理・財務
の基礎知識 等
・ S検ベーシック2級・1級
・ S検マネジャー3級・2級
等
《注2》国が立ち上げを支援し、現在は民間において実施中
④幅広いサービス産業への展開
政府は、上述の分野に加えて、産業界による人材育成ニーズが見込まれる製造技
術者派遣・請負、電気製品修理業、事務系バックオフィス(人事・総務等)、流通ロ
ジスティック等の分野について、業種や職種毎に共通する人材育成の在り方につ
いて検討を行う。
⑤独自ノウハウ等の取り扱い
他方で、企業の提供するサービスの差別化に資するノウハウや当該サービス
の提供に密接に関わる能力については、複数企業が共同で行うべき性質のも
のではなく、またその能力については、当該企業でしか開発できないものや、
当該企業内でしか有効ではないものであることが多いことから、個別企業毎
に人材育成システムを構築する。
【標準スキルに対する業界ニーズ】
・厚生労働省の職業能力評価制度事業により職業能力評価基準を策定した。業務の整理と体系化がな
されたことによる中小フィットネス企業のサービスレベルの底上げ、キャリアパスを明確化することによ
る優秀な人材の獲得等を期待している。(フィットネス産業関係者)
・業界標準スキルという点については、調理師についてはそのようなニーズが高いと思う。一方で、接客
人材については、当社としてはあまりニーズを感じない。(観光産業関係者)
80
4.サービス産業におけるIT活用
4.1 サービスにおけるIT活用の重要性
サービスは、「無形性」(目に見えない)、「同時性」(提供と同時に消滅)などの特性
を有することから、その内容・品質に係る情報提供、評価が適正に行われにくいとい
う特性を有する。したがって、情報の不完全性を補い、市場機能を発揮させる上で IT
の活用が重要である。
電子商取引・電子タグなどの効果的な活用により、関係者間の情報の共有を進め
ていくことが、製造業のみならず流通業を始めとするサービス業の生産性を向上させ
る上でも重要である。
サービス業の太宗を占める中小企業においては、特にITの有する情報発信力を効
果的に活用することにより、新規市場の開拓につなげることが可能と考えられる。
4.2 IT投資の必要な背景
労働力人口が減少する中、IT投資は生産性・TFPの向上にこれまでも大きく貢献。
特に、2000 年以降、ほぼTFPと IT 投資の2要素が経済成長を牽引している。
5
(%)
TFP
労働投入
非IT資本投入
IT資本投入
4
3
2
1
0
1985-90
1990-95
1995-00
2000-04
-1
図4.1 経済成長に占めるTFP、労働投入、非IR資本投入、IT資本投入の割合
しかし、日本の場合、米国と比べると、IT投資と生産性上昇の相関係数は低い。こ
の傾向は、特に非製造業において顕著である。
表4.1 IT投資と生産性上昇の相関係数の日米比較
製造業
非製造業
日本
0 .1 9
0 .0 3
米国
0 .3 5
0 .4 1
(出 所 )JC ER デ ー タ ベ ー ス
米 商 務 省 " F ix e d A s s e t s T a b le s ''、 " G D P b y In d u s t r y D a t a ''
81
<新しいサービス産業を生み出すIT>
ITを活用した情報サービス産業において、BPO(Business Process Outsourcing)、リ
モートメンテナンス、ネット経由のソフトウェア機能の提供(SaaS : Software as a
Service)などの新しい産業が生じているのみならず、ITの活用により、地理的・時間的
限界を超える形で新たな形態のサービス産業が続々と生み出されつつある。
【具体的事例】
様々な例が見られる遠隔監視技術
○ITを活用した遠隔監視
物流システムA社は、全国各地のユーザーが所有する自動倉庫等の物流システムを、滋賀県設置のセンタ
ーにて24時間365日体制で遠隔監視。
○空中遠隔モニタリンスシステムの開発による新たな監視サービスの提供
有人機や人が入れない危険な低空領域での無人点検や状況調査・監視業務を行う空中遠隔モニタリング
システムの開発により、従来のサービス範囲を越えたサービスの提供を効率的に提供。
手術は遠方の名医
○ITを活用した遠隔医療
ロボットテクノロジーと通信技術の飛躍的向上によって、大西洋を越えた遠隔手術に成功。
<新しい競争を生み出すIT>
ITを活用して、自社の業務処理(ビジネスプロセス)の一部を外部の業者にアウトソ
ーシングする BPO(Business Process Outsourcing)が導入される事例が増加するなど、
IT を活用することによって地域を越えたサービスの提供が様々な形態で可能となり、
新しい競争が生み出されている。
また、ITを活用することにより、ユーザーによるサービス品質の評価をリアルタイム
に可視化することが可能となり、サービスの品質評価の向上、健全な競争の促進に
つながる。
【具体的取組】
自宅が仕事場
○ITを活用した在宅テレワーカーの活用による地域を越えたサービスの提供
I 社は、自宅を拠点に働く委託スタッフを 在宅ワーカー として登録し、データエントリ、Web リサーチなど
様々なアウトソーシング業務に参画。
82
<サービスの特性を補うITの活用>
サービスは、「無形性」(目に見えない)、「同時性」(提供と同時に消滅)などの特性
を有することから、その内容・品質に係る情報提供、評価が適正に行われにくいとい
う特性を有する。したがって、情報の不完全性を補い、市場機能を発揮させる上で IT
の活用が重要である。
【具体的事例】
消費者による品質評価
○IT を活用したサービス品質の評価
実際に飲食・宿泊サービス等を利用した人たちの口コミ(レビュー)やランキングを参考に、おすすめ情報を
検索することが可能な無償のWebサービスが、消費者の支持を得て急成長している。
<業務の可視化による顧客満足度・効率化につながるITの活用>
【コールセンターの可視化による業務の効率化、顧客満足度の向上】
・電気電子機器の保守サービス業において、ナンバーディスプレイ機能による顧客の即時確定や、顧客とのやりと
りの文字化、顧客データベースとの連携により、顧客が電話口で同じ内容を繰り返す必要がなくなり、顧客満足
度、業務処理の生産性が向上した。(有識者)
・サービス要員が携帯電話からホストコンピュータに進捗情報をインプットし、マッピング機能も活用することにより、
作業場所と進捗状況をリアルタイムに把握できる仕組みを構築。サービス要員の稼働率向上により生産性が向
上。当該位置情報はWeb上で顧客にも開示され、顧客がリアルタイムで進捗状況を確認できるサービスにも適
用。(有識者)
<電子商取引や電子タグによる企業情報の「ネットワーク化」>
デジタル化の進展、インターネットや標準言語の普及などにより、技術的には電子
商取引や電子タグなどを利用した組織・企業間での情報流通がより容易になってきて
おり、取引の迅速化や事務コストの削減、在庫の圧縮等が実現されてきている。他方、
製品安全、環境、化学物質管理などの分野で、複数の関係者間での情報共有や、製
品販売後の製品の流れの捕捉等が必要になり、情報システムの利用による対応が
始まりつつある。今後、社会全体として重複投資を避け、相互運用性を確保しながら、
情報を共有する仕組みを構築することが必要となっている。
【電子タグの導入による店頭の生産性向上と顧客満足向上の実現】
・百貨店の婦人靴売り場で電子タグを導入。靴箱につけた電子タグを読み取り、倉庫を往復しなくとも売り場で在庫情
報を確認できるようにすることで、接客サービスを向上。「欲しいものがすぐ探せる売場」「品切れのない売場」を実現。
在庫データをオープンにした方が試着・購入の確率も向上。店員を倉庫へ往復させることを遠慮していた顧客が、デー
タを見た上で、試着・購入を行っている模様。(「顧客への可視化」)
<中小サービス企業におけるIT活用の推進>
サービス業の太宗を占める中小企業においては、特にITの有する情報発信力を効
果的に活用することにより、新規市場の開拓につなげることが可能と考えられる。
83
4.3 具体的取組
①IT人材育成(政府などによる取組)
●実践的かつ先端的な人材育成手法の確立、実践
めざすべき高度IT人材の具体像と求められるスキルを明確にした上で、情報工学系知識と金融工学や経営
工学等の非情報工学系知識の同時獲得をめざすダブルメジャー教育を推進する。また、ソフトウェア工学手法
やモデリング手法等の実践的かつ先端的なソフトウェア開発・管理手法について、独立行政法人情報処理推進
機構において開発を進めるとともに、その開発成果のより一層の普及を図る。
●客観性の高い人材評価メカニズムの構築
産業界に浸透しつつあるスキル標準と、IT関係の知識・スキルを客観的に測る情報処理技術者試験とを統
合することにより、各企業の枠を超えた客観的な人材評価メカニズムを構築する。また、情報処理技術者試験
における新たな試験区分として、広く社会人一般に求められる基礎的な知識を問うエントリ試験を創設する。
●高度IT人材育成のための推進体制づくり
高度IT人材育成のロードマップと行動計画を作成するほか、高度IT人材育成手法の開発を行う常設の組織
として、産業界、教育界、政府それぞれの代表者が集まる「産学官協議会」を設置する。また、プロジェクトマネ
ージャやアーキテクト等、各専門分野の高度IT人材による自立的なコミュニティ活動を推進する。
②安心・安全の確保(セキュリティ・プライバシー)(協議会による取組と政府による支援)
IT活用の大前提として、消費者の安心・安全が確保されることが不可欠。顧客情報の収集・活用に際しては、
「個人情報保護法」を踏まえつつ情報の保護と利用のバランスに的確な配慮を図ることが必要。「個人情報保
護法」の見直しについては、現在、「国民生活審議会」において検討されているほか、本年3月には「個人情報
の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」改正版を公表したところ。
こうした中、国際化する脅威への対応に加え、我が国の国際競争力強化基盤を整備し、かつ、国内外で経
済社会が直面し続けるであろう多面的「変化」に的確に対応していくため、産業構造審議会情報セキュリティ基
本問題委員会において、2007年3月に「グローバル情報セキュリティ戦略」(案)が取りまとめられた。同戦略
(案)においては、「世界最高水準の『高信頼性社会』実現による経済・文化国家日本の競争力強化と総合的な
安全保障向上」と、「我が国経済社会が直面し続ける『変化と挑戦』を支える情報セキュリティの実現」という基
本目標の達成に向け、以下のような施策を含む、3つの戦略(戦略1:情報セキュリティ先進国の実現、戦略2:
情報セキュリティ政策のグローバル展開、戦略3:国内外の変化に対応するメカニズムの確立)を提示している。
・ 業務効率化、技術流出防止等に資する情報セキュリティ対策をベストプラクティス事例集として提供
・ 中小企業向け簡易チェックツールの作成等を通じた中小企業の対策の底上げ
・ ソフトウェアの機能をインターネット経由でサービスとして提供する SaaS(Software as a Service)の普及に対
応し、サービス提供者が具備すべきセキュリティ上の要件や評価手法等に関するガイドラインの作成
・ 国内外の関連データ等の収集、分析、発信等を行うための中核組織として、国内関係機関に「情報セキュリ
ティ分析部門」(仮称)を創設
③ITの利用・活用促進のために必要な研究開発・展開(情報大航海プロジェクトなど)(政府に
よる取組)
ITの発展により、多種・大量の情報の蓄積・流通が可能となっているが、真にユーザーが必要とする情報を、
簡便かつ効率的に検索・解析することができなければ「情報の海」に埋まってしまい、生産性の向上やイノベー
ションの実現に結びつかないため、産学官が連携して、情報検索・解析の基盤技術の開発及び具体的なサービ
スモデルへの展開を進める。
84
④経済社会インフラとしての電子商取引・電子タグ基盤の整備(協議会などによる取組と政府
による支援)
電子タグの関連規格の国際標準化や低価格技術の確立、ブロードバンド環境の普及、電子商取引の標準言
語の開発などにより、技術的には業界を超えた情報共有が可能となっている。製品安全、環境リサイクル、化学
物質管理といった社会的課題に対応するため、電子商取引や電子タグの活用による企業・業種・業界の壁や
直接の取引関係を超えた情報共有の仕組みを構築する取組を推進することにより、先端的な経済社会インフ
ラを整備し、経済社会生活全般での生産性向上を図る。①電気・電子、②繊維、③建材・住宅設備産業にお
いて先行的な取組を開始し、関連企業などで共有すべき情報の流通、開示のあり方、データベースや電子タグ
の活用のあり方などについて、産業横断的なルールづくりを推進する。また、関係省庁の連携の下、更に幅広く
他の分野に拡大する。
⑤IT経営、特に中小サービス企業のIT活用の促進(政府による取組)
●「中小企業IT経営ロードマップ」の策定・普及
中小企業の規模、業種に応じたIT導入のベンチマークとして「中小企業IT経営ロードマップ」を策定・普及する。
●地域密着・出前型支援の展開の充実化
中小企業が直面するIT活用の問題・課題について、地域に配置した専門家を企業の求めに応じて派遣又は常
駐させて、必要な指導・助言を行うことができるような体制を整備する。
●インターネットを活用したサービスの提供の促進
インターネットを活用し、経営・財務管理等に手軽に取り組めるサービスの活用を促す。また、セキュリティの確
保、当事者間の契約の明確化等、当該サービス提供の円滑な普及を促すための環境を整備する。
●IT経営研修の充実、サービス産業向け重点化
中堅・中小企業の経営改革のための研修会について、特にサービス産業向けの研修内容の充実を図るととも
に、研修開催数を倍増する。
⑥ソフトウェアの有効利用による投資効率、生産性、競争力の向上に向けた取組(政府による
取組)
IT化の進展により、知識・ノウハウ、製品やサービスの機能がデジタル化され、ソフトウェアやシステムに組み込
まれていく傾向が強まっている。研究・開発、設計、製造、販売、流通、バックオフィスといった様々な企業活動
から、企業活動の成果である最終製品そのものまで、ますます多くの機能がソフトウェア化しており、今や企業活
動は IT そのもの。一方、サービス産業も含めた我が国企業は「垂直統合・囲い込み」による差別化戦略が特
色。これが競争力を支えていることも事実であるが、差別化や新たな付加価値の創出につながらない部分も全
てオーダーメイドで開発し、IT投資に必要以上のコストをかけ、①開発費の増加や信頼性確保の課題の発生、
②我が国のソフトウェアのグローバル展開の遅れにもつながっており、IT投資による生産性が低い要因となって
いる可能性がある。
我が国産業全体の生産性向上、競争力強化のために、差別化につながる「競争領域」と「非競争領域」に峻
別することにより、IT 投資の「選択と集中」で効率化を図り、ソフトウェアのグローバル展開を進めることが必要。
●業種・製品毎(業務や仕様)の標準化とイノベーションの推進
標準化や、他社との協働作業の一歩を踏み出せない分野について、議論の場の設定や研究開発を促進(自
動車、半導体、ロボット 他)
85
●ソフトウェアの再利用・共同化・製品化のための環境整備
優れたソフトウェア製品の開発・普及を担う人材育成、ソフトウェアの再利用を進めるための知的財産権の移
転促進、産業界の意識改革、業種横断的な情報交換のための場の設定に取り組む。
●政府での取組促進
政府調達においても、知的財産権の民間への移転制度(今国会で審議中)を活用し、再利用・共同化・製品
化の実践を検討。
86
5.サービス産業のグローバル展開
5.1 サービス産業のグローバル化を巡る環境
<サービス産業もグローバル競争の例外ではない>
サービス産業は従来人の手により生産され、利用者に提供されるものが多く、また、
グローバルな競争環境におかれていなかったこと等の理由により、生産性が総じて
低い。こうした労働集約的で生産性の低いサービスが依然多い一方で、IT技術の飛
躍的進展等により、国境を越えたサービスの提供が増加しただけでなく、我が国のサ
ービス産業の海外進出等が進んでいる。また、海外からのサービス産業の国内参入
による我が国サービス産業のグローバル化も不可避の流れであり、グローバルな競
争を通じて我が国のサービス産業の生産性向上・イノベーションも促進される。
【事例】大西洋を越えたロボット遠隔手術システム
・ロボット技術と通信技術の飛躍的向上により、大西洋を越えた遠隔手術を可能にしている。
・また、インド、中国には、既に多くの企業が進出しており、日本への参入も活発化。
【グローバル化は不可避】
・グローバル化が避けられない。(伊藤委員)
【高度人材の有効活用】
・我が国としても外国人を使わざるを得ない時代になる。その際の視点としては、「安いから外国人を使う」と
いうものではなく、「優れた人材を日本に呼び寄せる」というものであるべき。(西本委員)
<グローバルなレベルでの人口増大、所得増大に伴うサービス需要の増大>
我が国においては少子高齢化の進行、人口の減少等により市場の縮小が見込ま
れる分野であっても、グローバルなレベルでは、将来的に需要の増大が見込まれると
ころも多く、我が国サービス産業のグローバル展開の余地は大きい。
日本の外食市場規模(単位:億円)
中国の外食市場規模(単位:万元)
290000
8000
280000
7000
270000
6000
5000
260000
4000
250000
3000
240000
2000
1000
230000
0
220000
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
図5.1 日本と中国の外食市場規模の推移(出所:外食総研等)
87
<規模の経済性が機能するサービスのグローバル展開>
製造業と同様に、規模の経済性が機能しうる我が国発のサービス分野の中に、国
際的な競争力のある分野が存在すると考えられる。特にサービス・プロセスのマニュ
アル化・標準化が十分に進んでいる分野においてグローバル市場における事業展開
の可能性がある。
<日本の強みを活かしたサービスのグローバル展開の可能性>
サービスの設計、生産においてきめ細かい対応を行う「匠の心」に加えて、サービ
ス産業において重要となる顧客満足度向上に最大限の配慮を行うことに価値をおく
「もてなしの心」、「ふるまいの心」が我が国には伝統的に存在し、我が国のサービス
産業にはグローバルなレベルでの競争力がある可能性がある。
・日本のサービス企業が海外にも打って出るには、日本人が得意とする質の高いサービス、ホスピタリティが
武器になるのではないかと考えられる。(斎藤委員)
<海外貿易投資環境関連情報の収集・提供>
我が国のサービス産業の積極的な海外進出を促進するため、海外の貿易投資環
境に関する情報収集・提供活動の強化が重要である。
(※)日本貿易保険(NEXI)を通じた知的財産権等ライセンス保険の取組
映画ビジネス、国際電気通信回線のレンタルなどライセンスビジネスの国際展開を支援するため、ライセン
シーの不払いや送金規制の導入により、知的財産権等のライセンスに係るロイヤリティーの回収が出来ない
場合の損失をカバーする保険を販売しているところである。
【サービス貿易の障壁】
・外国輸入映画の割当、アニメ放送の規制を行っている国がある。(有識者)
【海外の貿易投資環境の情報】
・海外進出(インド、東南アジア)に当たっては、現地情報(法的要件等)の収集に苦労している。こうした情
報が入手しやすい仕組みがあるとありがたい。(タクシー業関係者)
88
【海外への進出事例】(再掲)
J社(旅行)
中国で海外旅行事業を強化
中国で中国人を対象顧客とする海外旅
行事業を強化する。日本だけでなく欧州、
カナダなど中国人に人気のある旅行先
についてニーズにあった商品・サービス
を提供する。
M社(タクシー)
ハイヤー営業を計画
合弁会社を設立しハイヤー営業に
関する教育等をバックアップする
予定。
A社(コンテンツ:音楽)
中国で歌手発掘から育成まで
北京に日中韓合弁で芸能プロダクショ
ンを設立。アーティストや作詞家、作曲
家の発掘、育成やマネジメント、海外
音楽、映像原盤権のライセンス販売等
を行う。
B社(教育)
幼児教育で上海の出版社と教材開発
中国のA社と共同で幼児向け教育に関する共同
研究を実施し、その成果をA傘下の出版社にライ
センス供与するロイヤリティビジネスを展開。
<参考> 日系進出企業数(全産業)
中国への進出企業数:19,779社
インドへの進出企業数:328社
出典:JETRO
国境を越えたサービス提供の増大(中国・インド関連)
89
WTOサービス協定(GATS)の概要(150国・地域加盟)
(2)コミットメントを行った分野について守るべき義務
1.4つのモード(第1条)
①国内規制(第6条)
(1)越境取引(モード1)
加盟国は約束を行った特定の分野でサービス貿易に影響を
与える全ての措置が合理的、客観的、公平に運用されるよう
確保する。
ある加盟国の領域から他の加盟国の領域へのサービス提供
(2)国外消費(モード2)
②支払い及び送金(第11条)
ある加盟国の領域における他の加盟国のサービス消費者への
サービス提供
国際収支を擁護する場合を除き、加盟国はGATSの下で国
際的支払い及び送金に関する制限をしてはならない。
(3)商業拠点(モード3)
ある加盟国のサービス提供者による、他の加盟国の領域におけ
る商業拠点を通じたサービスの提供
(4)人の移動(モード4)
ある加盟国のサービス提供者による、他の加盟国の領域におけ
る自然人を通じたサービスの提供
③市場アクセス(第16条)
具体的なコミットメントにより初めて義務の内容が定まるもの
a)サービスの供給者の数の制限、b)サービスの取引総額・
資産総額に関する制限、c)サービスの総産出量に関する制
限、d)サービス提供者の雇用者数に関する制限、e)企業形
態制限、f)外資制限 等
加盟国は、各サービス分野、モード毎にこれらの措置をとらな
い約束を行うか、全面的/部分的留保を行うかを約束表に明
記する。
2.主要な規定
(1)全ての分野に関連して守るべき義務
④内国民待遇(第17条)
①最恵国待遇(第2条)
他の加盟国のサービス及びサービス供給者について内国の
サービス及びサービス供給者と比較して不利でない待遇を与
えること。内国民待遇の付与も約束表により内容が決まるも
の。
全ての国に対して同等の待遇を与える義務
(例外)
・域内のサービス貿易自由化協定に加わる場合 等
⑤追加的約束(第18条)
②透明性(第3条)
サービスに関連する法律、規則等の公表を一般義務化これによ
り、手続きの不透明性による障壁を除去可能。
市場アクセス、内国民待遇の対象とならない措置であっても、
加盟国間の個別の交渉により、自由化約束の対象とすること
が可能。
図5.2 WTOサービス協定(GATS)の概要
国・地域
状
況
マレーシア
2006年7月発効
タイ
2005年9月大筋合意。早期の署名を目指す。
フィリピン
2006年9月署名。早期の発効を目指す。
インドネシア
2006年11月大筋合意。早期の署名を目指す。
ASEAN全体
2005年4月交渉開始。
韓国
2004年11月より交渉中断。
チリ
2006年11月交渉妥結。早期の署名を目指す。
シンガポール
2002年11月発効。2007年1月改正について大筋合意。
ベトナム
2006年10月交渉入りを合意。2007年1月第1回交渉。
ブルネイ
2006年12月大筋合意。
湾岸諸国
2006年9月交渉開始。現在交渉中。
インド
2006年12月交渉入りを合意。
スイス
2007年1月交渉入りを合意。
オーストラリア
2006年12月交渉入りを合意。
メキシコ
2005年4月発効。
図5.3 FTA、EPAの締結・交渉の状況
90
5.2 具体的取組
①サービス貿易自由化交渉の積極的推進(政府による取組)
これまでGATT/WTOのサービス交渉は、コンピュータ、音響映像、金融、情報通信等の分野で成果をあ
げてきた。今後とも、マルチの分野におけるサービス交渉において成果があがるよう積極的に交渉に取り組む。
EPA/FTAにおいては、相手国又は地域、関心のあるサービス分野が相互に特定されうることから、交渉に
当たり、よりビジネス最前線での直近のニーズに具体的に対応することが可能であり、FTA/EPAにおけるサー
ビス貿易自由化の交渉にも引き続き積極的に取り組む。
②外国企業による投資促進を通じた我が国サービス産業の生産性向上・イノベーション促進
(政府による取組)
医療・健康サービス分野や観光・集客交流分野等をはじめとするサービス産業分野において、高い生産性や
新たなビジネスモデルによって先進的な事業を展開している外国企業が多数ある。政府の対日直接投資促進
施策の実施に当たり、このような先進的な外国企業を積極的に誘致することで、国内マーケットに刺激を与え、
我が国のサービス産業の生産性向上・イノベーションの促進を図る。また、サービス産業分野を含む我が国に投
資した外国企業の先進的な取組を事例集に取りまとめ、国内外向けに紹介する。
③海外進出を行う事業者への積極的な情報提供やリスク補完などの支援(政府などによる支
援)
サービス産業の海外進出に当たっては、貿易相手国の制度等の貿易・投資関連情報の不足が指摘されて
いる。また事業者の大部分が中小企業であり情報収集力が十分でないという問題がある。
従来より、JETRO等においては、貿易投資に関する相談窓口が設置され、ホームページや関連の資料によ
り情報提供が実施されてきている。また、コンテンツの分野における市場開拓支援等に積極的に取り組んでいる。
その他、海外におけるサービス分野の我が国企業の事業展開を支援するため、日本貿易保険(NEXI)が取り扱
う貿易保険を活用し、代金回収等のリスクを補完しているところである。
今後とも我が国のサービス産業の海外進出を促進する観点から、こうした海外の貿易投資環境に関する情
報収集・提供活動等を積極的に実施する。
④サービス貿易上の障壁、産業界ニーズ吸い上げのためのメカニズム構築(協議会における取
組)
規制が厳しい分野はもちろん、元来規制が少ない又は規制が緩やかなサービス分野においても、海外市場の
進出において、現地の制度等のビジネス環境に適応すること自体が後発他社の進出に対する比較優位を形成
する。進出先市場の制度的課題が問題化されにくいという傾向もある。こうした状況も踏まえつつ、今後、各国・
地域とのサービス自由化交渉において、ビジネス最前線での障壁の明確化を図るための、業界間の情報共有
や、ビジネス側からのニーズ吸い上げのメカニズム構築に努力するとともに、それらのニーズを我が国の交渉へ
の対応検討に役立てていく。
91
6.サービス産業による地域活性化
6.1 地域におけるサービス産業の役割
サービス産業は地域性が強いため、地域活性化との関連でも捉えられるべきであ
る。サービス産業は地域の雇用を生み出し、同時に、地域のブランド力を高める重要
な産業でもある。
公共事業等が細る中で、地域に密着したサービス産業の生産性をどのように向上
させるかが課題。
<地域の3分類>
地域におけるサービス産業の役割は、以下の3類型に分類できる。
①IT活用による地理的制約を越えたサービスの提供【地理的制約解消型サービス】
②地域の新たなニーズに応えるサービス産業 【地域内需対応型サービス】
③地域ブランド向上に寄与するサービス産業 【地域ブランド創出型サービス】
【参考】3類型の特徴
● 地理的制約解消型サービスは、IT技術の進展等に伴う製造業のアウトソーシングの拡大、BPO
等により、拡大している。地域間のみならず、国際的な競争が激化している。
例:コールセンター、データセンター、リモートメンテナンスセンター
● 地域内需対応型サービスは、社会構造変化に伴って生じる産業など。新たな雇用創出が見込ま
れており、需要の拡大に伴って、市場の更なる拡大が見込まれる。
例:健康・福祉、育児支援
● 地域ブランド創出型サービスは、地域のブランド力とサービス業の比率には正の相関関係が見ら
れるところ。異分野連携や産学連携による新規産業が期待される。
例:観光、コンテンツ
この類型毎の特性を踏まえつつ、地域におけるサービス産業の適用事例(ベストプ
ラクティス)を収集し、普及していくとともに、地域におけるサービス産業の新たな機能
に着目し、その振興を通じて地域経済の活性化を図ることが重要である。
また、「中小企業地域資源活用プログラム」や「新連携支援」等の中小企業施策を
活用して支援を実施する。さらに、地域におけるNPO等新たな担い手の活動を支援
していくことも必要と考えられる。
【BPOの地方展開】
・今後はコールセンターにとどまらず、BPO(Business Process Outsource)分野の地方展開が進むと思う。問題は
自治体が誘致企業にばかり支援策を講じること。本来は地域の企業に新しいサービスに進出させ、首都圏の顧客
を獲得させるという方向が目指されるべき。(人材派遣産業関係者)
・産学連携がイノベーションのきっかけとなりうる。産学連携においては、中小企業も多く、地域活性化にも役立
つ。この点から、地方の大学の工学部等を利用した産学連携の取組は非常に重要。(橋本委員)
92
【具体的事例】
自宅が仕事場(地理的制約解消型サービス)
①テレワークセンターI 社(福島県)
テレワーク・コールセンターによる地域活性化、地域人材育成支援事業を展開し、新たな雇用形
態を創出。
関心を高める健康サービス産業(地域内需対応型サービス)
②健康サービス産業協議会設立の動き(大阪府、熊本県)
少子高齢化時代を迎え、都道府県単位で産学官による健康サービス産業協議会設立の動きが
見られる。
高精度な小規模店舗立地判定・売上予測システム(地域ブランド創出型サービス)
③有限会社A社とS大学の例(島根県)
小規模店舗の出店に関して、経験と勘に頼って推測・試算するという従来手法ではなく、商圏や
立地などの各種要因を基に裏付けのある予測値を算出するシステム。新規出店のマーケティング
にとどまらず、既存店の経営改善にも適用可能。
6.2 具体的取組
①中小企業施策を通じた支援(政府による支援)
「中小企業地域資源活用プログラム」や「新連携支援」等の中小企業施策を活用し、新サービスの開発・提
供等に取り組む中小企業を支援する。
②中小企業基盤整備機構等の相談窓口における支援体制の整備(政府による支援)
地域での製造管理ノウハウのサービス産業への導入に当たり、独自に導入が困難と考えられる中小企業者に
対する効果的な支援を行うため、中小企業基盤整備機構やその他の中小企業関係機関の窓口においてサー
ビス事業者向けに適切なアドバイス等の支援ができるよう体制を整備する。
③サービス分野向けの中小企業ファンドの創設(政府による支援)
サービス産業は新たなニーズに応える新規創業が多く、資金調達が困難な場合も多いため、中小企業基盤
整備機構が実施している「がんばれ!中小企業ファンド」を活用し、サービス分野向けのファンドを創設する。
④異分野連携による新規産業の創出支援(協議会による取組)
他の分野では既に十分普及している技術を有効活用するため、成功事例の調査を実施し、とりまとめた結果
の普及・啓発を図る
⑤産学連携の推進と相談窓口の充実(人材育成)(政府による支援)
既存制度の拡充・有効活用等により、サービス分野における産学連携を推進する。
大学の産学連携センターやTLOにおいてサービス専門の相談窓口の充実を支援する。
産学連携の積極的な推進を図る他、大学において研究が進んでいる分野においては、サービス産業への技
術移転を行うためのニーズとシーズをつなぐ目利きとなる人材(トランスレーター)育成を検討する。
⑥IT活用の推進(政府による支援)
専門家を派遣する仕組みを構築。また、電子登録債券制度の普及・促進を通じ、中小企業などのIT化を財
務面から支援する環境を整備する他、ITを活用した経営改革の研修会について、特にサービス産業向けの内容
を充実する。育児や介護に従事する者の就労機会の拡大などを念頭に、テレワークの活用を推進する。
電子タグ、電子商取引システムの円滑な活用の推進によるネットワーク化の他、IT経営応援隊などのサービ
ス重点化により、一層の活用を促す。テレワークの推進にあたっては、関係省庁間での連携強化を図る。
93
⑦新たな担い手のための仕組み作り(支援の検討)
健康福祉、育児支援など、地域活性化や地域における社会構造変化に対応した新たな担い手としての NPO・
LLP 活動のため、団体間の連携関係構築、資金確保を含む事業化へのノウハウ支援などに取り組む仕組み作り
を行うことも検討。
⑧「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律(案)」の
活用(政府による取組)
94
7.サービス産業への投資の拡大/新規参入の促進
7.1 イノベーションを促進する新規参入
サービス産業は新たなニーズに対応して生まれる産業が若い産業が多いが、イノ
ベーション促進、競争の活性化のためには、新規企業の参入が円滑に行われるため
の枠組み作りが重要である。
サービス産業は、製造業など他業種と比較しても新規企業の参入は多く、新規の
上場企業も米国と比較してサービス産業が多い。
【参考1】サービス産業は新規開業が多いが廃業も多く、産業内の回転率が高い。
2004 年現在
期首会社企業数
1,607,648
2,145
299,340
292,422
536
30,150
48,377
16,041
100,151
493,601
94,468
6,822
11,454
46
212,095
合計
鉱業
建設業
製造業
電気・ガス・熱供給・水道業
情報通信業
運輸業
金融・保険業
不動産業
卸売・小売業
飲食店,宿泊業
医療,福祉
教育,学習支援業
複合サービス事業
サービス業
年平均開業 年平均廃業
会社企業数 会社企業数
58,185
88,739
36
103
8,445
14,298
5,887
13,611
21
19
3,065
3,419
1,676
2,432
1,438
1,260
4,478
5,816
14,606
26,807
4,354
5,736
1,616
445
887
826
1
3
11,676
13,966
開業率
廃業率
3.6%
1.7%
2.8%
2.0%
3.9%
10.2%
3.5%
9.0%
4.5%
3.0%
4.6%
23.7%
7.7%
1.6%
5.5%
5.5%
4.8%
4.8%
4.7%
3.6%
11.3%
5.0%
7.9%
5.8%
5.4%
6.1%
6.5%
7.2%
5.7%
6.6%
出典: 2006 年中小企業白書
【参考2】新興上場企業はサービス分野が多い。
水産・農林業
0.0%
鉱業
0.0%
建設業
1.8%
製造業
12.8%
電気・ガス業
0.4%
サービス業
26.7%
新興市場(日本)業種別分布
(ヘラクレス・マザーズ)
水産・農林業
0.6%
鉱業
建設業
4.7%
1.0%
運輸業
0.7%
サービス業
16.7%
不動産業
4.3%
不動産業
5.3%
その他金融業
0.9%
その他金融業
1.4%
保険業
0.7%
証券・商品先物取引業
1.4%
保険業
3.5%
情報・通信業
36.7%
銀行業
0.0%小売業
8.2%
卸売業
5.0%
製造業
38.3%
証券・商品先物取引業
1.1%
銀行業
10.8%
新興市場(米国)業種別分布(NASDAQ)
小売業
5.1%
卸売業
2.7%
2006年4月24日現在 経済産業省調べ
情報・通信業
3.8%
95
電気・ガス業
3.2%
運輸業
2.3%
7.2 サービス産業のイノベーションを支える企業と資金調達の課題
新規参入を発掘・促進していくことが、サービス産業全体のダイナミクスにつながる。
しかし、サービス産業はその新規性のために市場からの信頼性が高くない場合もあり、
固定資産比率も低い状況。また、動産担保を活用した資金調達方法がなじまない事
もあり、その成長に資金面の課題もある。
【イノベーションを促進する資金調達】
・ベストプラクティスのようなものをどのようにインプットするかを考えればよい。サービス産業は非常に幅広く、全部
の分野を一度に動かすのは難しい。取捨選択をして、ダイナミックなピクチャーを描いて見せる方が説得力もある
かとも考える。(伊藤委員)
・地域活性化型で、必ずしもIPOに到達できる見込みの薄い案件も多いので、ファンディングが集まらないと思って
いたが、非常に活性化していて、投資先もサービス事業関係が多いようだ。(小林委員)
【融資関係者からのコメント】
・ITには もの はないので担保になるものがない。(金融機関関係者)
・サービス業は融資のしにくい業種。長期資金の借入に耐えられない。担保の裏付ができない。(金融機関関係
者)
・IT関連はソフト・ハードの新陳代謝が激しい。比較的資金需要があるが、設備そのものが陳腐化が激しく、それ
自体担保にする事ができないので無担保融資で対応。(金融機関関係者)
・サービス業は変化が激しい。(金融機関関係者)
【参考1】最近の優良企業※はサービス業が多い。出典:日本経済新聞社
分類不明, 7
サービス業, 28
化学, 39
10%
7%
石油, 4
不動産業, 8
ガス, 3
1980 年以前設立企業の業種別分布
小売業, 22
5%
機械, 32
8%
商社, 24
6%
倉庫・運輸関連, 3
建設, 14
3%
空運, 1
鉱業, 1
海運, 2
窯業, 6
陸運, 6
鉄道・バス, 8
自動車, 31
8%
情報・通信業, 6
化学, 3
輸送機器, 2
造船, 2
電力, 9
サービス業, 13
精密機器, 15
5%
電気機器, 3
5%
22%
4%
非鉄金属製品, 15
電気機器, 59
4%
15%
情報・通信業, 13
食品, 19
その他製造, 9
医薬品, 16
ゴム, 1
パルプ・紙, 4
繊維, 9
22%
5%
4%
1980 年以降設立企業の業種別分布
※以下の指標を基にランキングを決定
不動産業, 8
【規模】
総資産、売上高、従業員数
【安全性】 株主資本比率、手元流動性比率、有利子負債利子率、キャッシュフロー有利子負債比率
【成長力】 従業員伸び率 3 年、総資産伸び率 3 年、株主資本伸び率 3 年、売上高伸び率
【収益性】 従業員一人当たり利払い後事業利益、売上高営業利益率、株主資本利益率(ROE)、
使用総資本経常利益率
13%
卸売業, 5
8%
小売業, 15
25%
96
7.3 具体的取組
①サービス分野向けの中小企業ファンドの創設(政府による支援)
サービス産業は新たなニーズに応える新規創業が多く、資金調達が困難な場合も多いため、
中小企業基盤整備機構が実施している「がんばれ!中小企業ファンド」を活用し、サービス分野
向けのファンドを創設する。
②中小企業基盤整備機構等の相談窓口における支援体制の整備(政府による支援)
中小企業基盤整備機構やその他の中小企業関係機関の窓口においてサービス事業者向け
に適切なアドバイス等の支援ができるよう体制を整備する。その際に、資金調達の円滑化に関
する相談も対応することを検討する。
③創業後間もないサービス企業経営者へのアドバイス支援(協議会と政府による支援)
【参考1】ベンチャー中小企業向け出資事業【中小企業基盤整備機構】
● ベンチャーファンド出資事業
アーリーステージにあるベンチャー企業への投資・ハンズオン支援を目的として投資会社等
が設立するファンドに対し、出資を行う。
※ 既に株式を公開した76社のうち、8割以上がサービス業である。
企業名
(株)メディネット
スリープロ(株)
事業概要
公開年月 公開市場
オプトインメール広告配信業 平成14年2月 ヘラクレス
風力発電用風車販売及び売電事業 平成15年3月 マザーズ
コミックの出版及び編集等 平成15年9月 マザーズ
免疫細胞療法総合支援サービス 平成15年10月 マザーズ
平成15年11月 マザーズ
IT支援サービス業
シーズクリエイト(株)
分譲マンションの開発、販売等 平成16年2月 ジャスダック
(株)エルゴ・ブレインズ
日本風力開発(株)
(株)マッグガーデン
(株)ジモス
ディップ(株)
(株)トラスト
平成16年3月 ジャスダック
化粧品等の通信販売
求人ポータルサイトの運営 平成16年5月 マザーズ
平成16年11月 マザーズ
中古自動車の輸出販売
(株)ファーストエスコ 省エネルギー支援サービス等 平成17年3月 マザーズ
平成18年4月 ヘラクレス
(株)ラクーン インターネットサイト運営
(株)アルク
語学教材開発・通信教育 平成18年8月 ジャスダック
(株)アイレップ インターネット広告代理店 平成18年11月 ヘラクレス
投資ファンドの組成及び運営 平成18年12月 ヘラクレス
(株)ゲームオン オンラインゲームの開発、運営 平成18年12月 マザーズ
トラストパーク(株) 駐車場の運営及び管理受託 平成18年12月 福岡Qボード
燦キャピタルマネジメント(株)
●「がんばれ!中小企業ファンド」出資事業
新分野進出、新商品の開発など、新事業展開にチャレンジしている中小企業や当該事業その
ものへの投資・ハンズオン支援を目的として、投資事業を行う企業等が設立するファンドに対し、
出資を行う(映画ファンド・コンテンツファンドなど)。
97
8.サービス産業の実態把握と統計整備
8.1 サービス統計は政策立案や企業活動の基本情報
<統計の整備>
経済におけるサービス産業の重要性が増す中で、その政策立案や企業活動の基
本情報となる統計の拡充が求められており、政府も、改善、充実に向けた取組を行っ
ている。(→参考1)
しかし、新たなビジネスモデルが次々と生まれてくるなど変化が速く、サービス業は
製造事業所におけるメンテナンスサービスなど副業的に行われるものもあり、その統
計把握は容易ではない。産業界の実状を踏まえた統計を充実させるため、政府と産
業界が協力して統計の整備に取り組んでいくことが必要である。また、政府統計だけ
でなく業界統計の充実も期待される。
<生産性>
サービス産業では、生産性を算出するために必要な分野別のデータが十分整備さ
れていない。また、国際的にもその算出手法が確立していないため、業種毎の生産
性の計測が容易ではない。
【生産性を計測できることが生産性向上の第一歩】
・サービス統計の整備が重要。アメリカではサービス分野での雇用の動きを把握できているが、我が国で
はサービス産業をとらえるための統計が不十分である。(牛尾座長)
・生産性を計測する際に必要な基本的データは事業所統計でとれるようにしていくべき。(大学関係者)
また、以下の理由から、サービス産業の統計把握は容易ではない。
①新たなビジネスモデルが随時生まれてくるなど産業構造の変化が激しい。
②サービスの事業所は製造事業所に比べて外見上事業所と判別しにくい、サービス業は製
造事業所におけるメンテナンスサービスなど副業的に行われるものが少なくない。
③業界の統計も製造業や金融業に比べて充実していない。
98
【参考1】
これまでの政府における統計の充実に向けた検討状況と今後の取組は以下のと
おり。統計の種別毎の取組については、参考3を参照。
<これまでの検討状況と今後の取組>
サービス統計を充実する必要性については、以前から指摘されてきている。
●平成16年及び平成17年の「骨太の方針」において、統計の抜本的見直しが記載された。
●これを踏まえ、内閣府において発足した「経済社会統計整備推進委員会」(平成16年∼17年) や、その後継
組織の「統計制度改革検討委員会」(平成17年∼18年)において、統計整備に向けた基本的取組やサービス
統計の整備の必要性が指摘された。
●さらに、総務省に設置された 「サービス統計研究会」(平成17年∼平成18年)において、サービス産業の動態
統計の充実に向けた新しい統計を平成20年創設することについて議論された。
これらの委員会での議論を踏まえ、政府はサービス統計の充実に向けた次のような改善を行う予定である。
【動態統計】
●特定サービス産業動態統計調査(経済産業省)について、調査対象業種を拡充していく。
●特定サービス産業動態統計調査について、正確な調査対象(母集団)の把握を行うため、業界名簿(業界団体
が持つ名簿)に基づく調査から、事業所・企業統計調査名簿(政府の調査員が各事業所を直接訪問して調べた
名簿)にもとづく調査へ移行させる。
●既存の動態統計で把握できないサービス業種を補完する新たな動態統計(サービス産業動向調査(仮称))を
平成20年度に創設する。
【構造統計】
●特定サービス産業実態調査の調査対象業種を順次拡充する。
●平成23年度の経済センサスに先立ち、税務情報の行政記録等を活用し、母集団の充実を平成21年度に行
う。
●平成23年度の経済センサスにおいて、従来の工業統計や商業統計の調査対象業種及び拡充された特定サー
ビス産業実態調査の調査対象28業種を含め、農林漁業を除く全ての事業所及び法人企業を対象とする統計を実
施する。
99
8.2 次々と生まれてくる新しいサービス産業
∼ 日本標準産業分類は統計の礎 ∼
サービス産業においては、新たなビジネスモデルが随時生まれているため、「若
い」産業が多いことが統計把握が難しい一因となっている。
業種毎の統計調査は、日本標準産業分類にもとづいた調査がなされることが多い
ため、日本標準産業分類に明確化されていないこのような産業は、多くの場合、統計
把握がなされない(※1)。
産業界の協力を得ながら常に産業動向を把握し、改訂に際しては、産業の実態に
合わせた的確な改訂を行ってくことが統計の正確な把握の前提となる。
例えば、ゲーム産業は1兆円を超える市場規模であるというデータ(※2)があるに
もかかわらず、日本標準産業分類上は独立の項目となっておらず、例えばゲームソ
フトウェア作成業は「パッケージソフトウェア業」の範疇に含まれている(ただしゲーム
ソフト作成業については、項目を設けるべく、総務省に意見を提出中)。「カルチャー
センター」も 600 億円近い市場規模であるというデータ(※3)があるにもかかわらず、
同様に日本標準産業分類上、「その他の教養・技能教授業」の項目に入っている。
※1 今般取りまとめられた日本標準産業分類第12回日本標準産業分類改定諮問(案)では、中分類「情報サ
ービス業」に、細分類「組込みソフトウェア業」、「ゲームソフトウェア業」を新設。中分類「インターネット付随
サービス業」の細分類に「ポータルサイト・サーバー運営業」、「アプリケーション・サービス・コンテンツ・プロ
バイダ」、「インターネット利用サポート業」を新設、中分類「映像・音声・文字情報制作業」の細分類に「アニ
メ制作業」を新設。今後、統計審議会において審議され9月に答申が出される予定。
※2 デジタルコンテンツ白書 2006(デジタルコンテンツ協会)
※3 平成17年特定サービス産業実態調査(経済産業省)
8.3 「見えにくい」サービス産業
また、サービス産業の「見えにくさ」も、統計の把握を困難にしている。
例えば、正確な統計の把握を行うためには、母集団名簿を充実させる必要がある。
しかし、サービス産業の事業所は、製造業の事業所(工場)と違って、外見上、事業所
と判別しにくい。そのため、的確な母集団把握が難しい。
そして、サービス産業は、機器メーカーにおける機器のメンテナンスサービスなど、
副業的に行われているものが少なくない。既存の動態統計で補完できないサービス
業種を補完するため新たな動態統計を平成 20 年に創設することとしているが、統計
は、事業所毎に主業によって分類された業種を対象として調査しており、サービス産
業以外を主業とする対象を調査する際に、副業として行われているサービス産業の
把握ができない。
100
8.4 業界統計も未整備
サービス産業は中小企業者が多いことに加え、歴史の浅い「若い」産業が多いこと
が挙げられるが、製造業、金融業等では、多くの業界において統計データが収集、公
表されているが、サービス産業については、コンテンツ産業等、比較的業界統計が整
っている分野は別として、このような業界統計は整備されていない。今後、政府統計
だけでなく業界統計も充実することにより、サービス産業のより的確な実態把握がな
されることが期待される。
8.5 統計の充実に向けた取組∼ 政府、産業界、協議会の役割 ∼
統計の充実を図るためには、政府と産業界双方の取組が必要となる。
<政府の取組>
●政府は、必要に応じて改定時には日本標準産業分類の見直しを行うほか、雇用統
計や需要者サイドの統計についても引き続き充実を図っていくことが必要である。
<産業界の取組>
●一方、産業界には、変化が激しく新たに生まれるサービス産業の実態について理
解を求め、統計の見直しや日本標準産業分類の改善について情報提供を行うほ
か、業界統計の整備を進めていくことが必要である。
<サービス産業生産性協議会の取組>
●そして、サービス産業生産性協議会には上記のような官民の取組を支援する役割
が期待される。
・ 日本標準産業分類の見直しや統計の改善の情報交換の場(産業界からのニーズ、
情報を集約し、政府へ提言する場)としての役割
・ 業界統計の整備のために、企業間の連携や業界統計の整備に向けたノウハウを
提供する役割
101
【参考3】各統計の拡充
(1)動態統計
現在行っているサービス産業の動態統計は、特定サービス産業動態統計調査を
始め、商業動態統計調査(経済産業省)、通信産業動態調査(総務省)、建設関連業
等の動態調査(国土交通省)がある。
しかし、日本標準産業分類では、電力・ガス、行政サービスを含めた第三次産業全
体で 231 のサービス業種がある(小分類)が、上述の動態統計がカバーしているのは
66 業種にとどまり半分にも満たない。また、金額ベースでも二割程度(※)しかないの
が現状である。
このため、
①特定サービス産業動態統計調査について、産業分類とは必ずしも一致しない業
界団体名簿に基づいて調査していたものを、平成 20 年度に、比較可能性を向上
する観点から産業分類に基づく調査に改めるとともに、業種を拡充し、小分類 28
業種で調査を行う予定であるほか、
②新たな動態統計(サービス産業動向調査(仮称))を平成 20 年度に創設すること
となっており、
これによって、主要なサービス産業については概括的に実態把握をできることとな
る。
※ 産業連関表(平成 12 年版)の国内生産額をもとに試算。現在動態統計でカバーし
ている産業の国内生産額を全産業の国内生産額で割ることにより推計した。
図8.1 特定サービス産業動態統計調査の日本標準産業分類に即した形での拡充
19年までの調査業種
調査票名
・物品賃貸(リ ー ス)業調査票
・物品賃貸(レンタル)業調査票
・情報サービス業調査票
・広告業調査票
・クレジットカード業調査票
・エンジニアリング業調査票
・映画館調査票
・劇場・興行場、興行団調査票
・ゴルフ場調査票
・ゴルフ練習場調査票
・ボウリング場調査票
・遊園地・テーマパーク調査票
・パチンコホール調査票
・葬儀業調査票
・結婚式場業調査票
・外国語会話教室調査票
20年以降の調査業種 調査業種
各種物品賃貸業
産業用機械器具賃貸業
事務用機械器具賃貸業
の一部(リース部分のみ)
各種物品賃貸業
産業用機械器具賃貸業
事務用機械器具賃貸業
の一部(レンタル部分のみ)
情報サービス業
広告業
クレジットカード業
他に分類されない専門サービス業
※一部(例示なし)
映画館
興行場、興行団
ゴルフ場
ゴルフ練習場
ボウリング場
遊園地
テーマパーク
パチンコホール
葬儀業
結婚式場業
外国語会話教授業
※一部(教室のある者のみ)
・カルチャーセンター調査票
その他の教養・技能教授業
※一部(例示あり)
・フィットネスクラブ調査票
・学習塾調査票
フィットネスクラブ
学習塾
102
ソフトウェア業
情報処理・提供サービス業
各種物品賃貸業
産業用機械器具賃貸業
事務用機械器具賃貸業
広告代理業
その他の広告業
映像情報制作・配給業
クレジットカード業,割賦金融業
デザイン・機械設計業
計量証明業
新聞業
出版業
映画館
興行場(別掲を除く),興行団
スポーツ施設提供業
公園,遊園地
インターネット附随サービス業
音声情報制作業
映像・音声・文字情報制作に附帯するサービス業
学習塾
教養・技能教授業
冠婚葬祭業
機械修理業(電気機械器具を除く)
電気機械器具修理業
自動車賃貸業
スポーツ・娯楽用品賃貸業
その他の物品賃貸業
図8.2
サービス産業に関する動態統計の現状
○モザイク状に統計が実施されているサービス産業分野
33 電気業
55 各種商品小売業
77 その他の教育,学習支援業
34 ガス業
56 織物・衣服・身の回り品小売業
78 郵便局(別掲を除く)
35 熱供給業
57 飲食料品小売業
79 協同組合(他に分類されないもの)
36 水道業
58 自動車・自転車小売業
80 専門サービス業(他に分類されないもの)
37 通信業
59 家具・じゅう器・機械器具小売業
81 学術・開発研究機関
38 放送業
60 その他の小売業
82 洗濯・理容・美容・浴場業
39 情報サービス業
61 銀行業
83 その他の生活関連サービス業
40 インターネット附随サービス業
62 協同組織金融業
84 娯楽業
41 映像・音声・文字情報制作業
63 郵便貯金取扱機関,政府関係金融機関
85 廃棄物処理業
42 鉄道業
64 貸金業,投資業等非預金信用機関
86 自動車整備業
43 道路旅客運送業
65 証券業,商品先物取引業
87 機械等修理業(別掲を除く)
44 道路貨物運送業
66 補助的金融業, 金融附帯業
88 物品賃貸業
45 水運業
67 保険業(保険媒介代理業,保険サービス業を含む)
89 広告業
46 航空運輸業
68 不動産取引業
90 その他の事業サービス業
47 倉庫業
69 不動産賃貸業・管理業
91 政治・経済・文化団体
48 運輸に附帯するサービス業
70 一般飲食店
92 宗教
49 各種商品卸売業
71 遊興飲食店
93 その他のサービス業
50 繊維・衣服等卸売業
72 宿泊業
94 外国公務
51 飲食料品卸売業
73 医療業
95 国家公務
52 建築材料, 鉱物・金属材料等卸売業
74 保健衛生
96 地方公務
53 機械器具卸売業
75 社会保険・社会福祉・介護事業
99 分類不能の産業
54 その他の卸売業
76 学校教育
:月次ベースで売上高について何らかの調査が行われている業種
:月次ベースで売上高について何らかの調査が行われていない業種
(備考)
1.総務省「サービス統計研究会」資料を参考に作成。
2.月次ベースで売上高を把握している「商業動態統計調査」(経済産業省)、「特定サービス産業動態統計
調査」(経済産業省)、「通信産業動態調査」(総務省)、「建設関連業等の動態調査」(国土交通省)
により何らかの調査が行われている業種以外を色付けした。業種は日本標準産業分類中分類レベル。
(2)構造統計
一方、構造統計についても、拡充が進められている。例えば、特定サービス産業実
態調査は、平成 18 年度の7業種から、平成 21 年度の 28 業種に順次拡充する予定
である。
図8.3
特定サービス産業実態調査(経済産業省)の調査業種の拡充
平成18年
391
392
881
882
883
891
899
ソフトウェア業
情報処理・提供サービス業
各種物品賃貸業
産業用機械器具賃貸業
事務用機械器具賃貸業
広告代理業
その他の広告業
平成19年
391
392
881
882
883
891
899
411
643
806
903
平成21年(予定)
ソフトウェア業
情報処理・提供サービス業
各種物品賃貸業
産業用機械器具賃貸業
事務用機械器具賃貸業
広告代理業
その他の広告業
映像情報制作・配給業
クレジットカード業,割賦金融業
デザイン・機械設計業
計量証明業
平成20年または
平成21年に追加
を予定している業
種
103
391
392
881
882
883
891
899
411
643
806
903
401
412
413
414
415
773
774
836
841
842
844
845
871
872
884
885
889
ソフトウェア業
情報処理・提供サービス業
各種物品賃貸業
産業用機械器具賃貸業
事務用機械器具賃貸業
広告代理業
その他の広告業
映像情報制作・配給業
クレジットカード業,割賦金融業
デザイン・機械設計業
計量証明業
インターネット附随サービス業
音声情報制作業
新聞業
出版業
映像・音声・文字情報制作に附帯するサービス業
学習塾
教養・技能教授業
冠婚葬祭業
映画館
興行場(別掲を除く),興行団
スポーツ施設提供業
公園,遊園地
機械修理業(電気機械器具を除く)
電気機械器具修理業
自動車賃貸業
スポーツ・娯楽用品賃貸業
その他の物品賃貸業
(3)雇用に関する統計
雇用に関する統計は、月次ベースでは特定サービス産業動態統計調査、労働力
調査、5 年ごとに行う就業構造基本調査があり、また、サービス業基本調査、事業所・
企業統計調査においても把握が行われている(特定サービス産業動態統計調査は
経済産業省、その他は総務省。ただし、サービス業基本調査及び事業所・企業統計
調査は、経済センサスの開始に伴い、廃止予定)。
これらは、平成 14 年の日本標準産業分類の改訂によりサービス産業についての
項目が大幅に増加するなど、サービス業の実態把握に向けた拡充がなされてきた。
就業構造基本調査におけるサービス分野の項目の変遷
平成4年(21項目)
運輸・通信業
鉄道業
運送・倉庫業
通信業
サービス業
医療業
対個人サービス業
対事業所サービス業
平成9年(28項目)
運輸・通信業
鉄道業
運送・倉庫業
郵便業
電気通信業
映画・娯楽業
整備・修理業
教育
他に分類されないサービス業
その他のサービス業
卸売・小売業、飲食店
卸売業
飲食料品小売業
飲食店
その他小売業
金融・保険業、不動産業
金融・保険業
不動産業
サービス業
医療・保健衛生
社会保険・社会福祉
生活関連サービス業
旅館・その他の宿泊所
娯楽業
整備・修理業
放送・情報サービス業
専門サービス業
(他に分類されないもの)
事業サービス業
教育
宗教、政治・経済・文化団体
その他のサービス業
卸売・小売業、飲食店
卸売業
各種商品小売業
医療・住居関連商品小売業
飲食料品小売業
その他小売業
飲食店
金融・保険業
不動産業
平成14年(57項目)
医療,福祉
情報通信業
医療業
通信業
保健衛生
放送業
社会保険・社会福祉・介護事業
情報サービス業
教育,学習支援業
インターネット附随サービス業
映像・音声・文字情報制作業
学校教育
運輸業
その他の教育,学習支援業
複合サービス事業
鉄道業
郵便局
道路旅客運送業
協同組合
道路貨物運送業
(他に分類されないもの)
水運業
サービス業
航空運輸業
(他に分類されないもの)
倉庫業
専門サービス業
運輸に附帯するサービス業
(他に分類されないもの)
卸売・小売業
学術・開発研究機関
卸売業
洗濯・理容・美容・浴場業
各種商品小売業
織物・衣服・身の回り品小売業 その他の生活関連サービス業
娯楽業
飲食料品小売業
廃棄物処理業
自動車・自転車小売業
家具・ じゅう 器・機械器具小売業自動車整備業
機械等修理業
その他の小売業
物品賃貸業
飲食店,宿泊業
広告業
一般飲食店
その他の事業サービス業
遊興飲食店
政治・経済・文化団体
宿泊業
宗教
その他のサービス業
金融・保険業
外国公務
不動産業
(4)需要サイドから見た統計(家計調査等)
需要者サイドから見た統計としては、毎月行う家計調査と5年ごとに行う全国消費
実態調査の他、購入頻度の少ない高額商品・サービスへの支出などを毎月調査する
家計消費状況調査(いずれも総務省)がある。
品目については、家計調査、全国消費実態調査においては食品をはじめとする日
用品については細かい分類がなされている一方で、それ以外の支出(サービスなど)
については、詳細な分類はなされていない。 また、家計消費状況調査においても、
家電、家具の購入費が中心であり、サービスについては通信、医療を除き、概括的な
ものである。
サービスの項目が拡充されれば、需要サイドから統計についてもより正確な実態
把握が可能となると考えられる。
例1:食料の項目
○穀類
・米
・パン
・めん類
・他の穀類
○魚介類
・生鮮魚介
・塩干魚介
・魚肉練製品
・他の魚介加工品
○肉類
・生鮮肉
・加工肉
○乳卵類
・牛乳
・乳製品
・卵
○野菜・海藻
・生鮮野菜
・乾物・海藻
・大豆加工品
・他の野菜・海藻加工品
○果物
・生鮮果物
・果物加工品
○油脂・調味料
・油脂
・調味料
○菓子類
○調理食品
・主食的調理食品
・他の調理食品
○飲料
・茶類
・コーヒー・ココア
・他の飲料
・酒類
○外食
・一般外食
・学校給食
○賄い費
例2:教育の項目
例3:教養娯楽の項目
○授業料等
○教科書・学習参考教材
○補習教育
○教養娯楽用耐久財
○教養娯楽用品
○書籍・他の印刷物
○教養娯楽サービス
・宿泊料
・パック旅行費
・月謝類
・他の教養娯楽サービス
・(特掲)インターネット接続料
図 8.4 家計調査(総務省)における調査対象品目
104
8.6 具体的取組
①需要サイドの統計の充実/産業実態の統計への反映(政府による取組)
必要に応じ、日本標準産業分類の見直しを行うなどサービス産業に関する統計を充実するほか、雇用統計
や需要サイドの統計について引き続き充実を図っていく等、産業の実態を統計に反映していく。
②統計見直しに必要な情報提供(協議会による取組)
変化が激しいサービス産業の実状について、統計の見直し等に関する産業界のニーズの抽出や情報提供を
行う。
③業界統計整備の検討(協議会による取組)
業界統計のノウハウの共有などを通じて、業界統計の整備に向けた支援を行う。
④サービス産業の生産性に関する研究の推進(政府による支援)
経済産業研究所を中心として、生産性計測や要因分析など生産性に関する研究を推進する。
⑤生産性の計測についての検討(協議会による取組)
サービス産業における生産性算出に関する課題(例えば、生産額の定義、サービス産業における資本投入の
内容の明確化等)を含め、より精度の高い生産性の計測について検討する。
105
9.政府による相談窓口などの整備
<中小企業基盤整備機構等の相談窓口における支援体制の整備>
サービス産業は、新たなニーズに対応して生まれた若い産業が多いことなどから、
政府による施策の相談窓口や実施体制も必ずしも十分ではなかった。
このため、製造管理ノウハウのサービス産業への導入に当たり、独自に導入が困
難と考えられる中小企業者に対する効果的な支援を行うため、中小企業基盤整備機
構やその他の中小企業関係機関の窓口においてサービス事業者向けに適切なアド
バイス等の支援ができるよう体制を整備する。
<サービス研究拠点の整備>
サービスに関して経済学・経営学の分野における研究を行う拠点を経済産業研究
所に整備するとともに、工学の分野について研究開発を行う研究拠点を産業技術総
合研究所等に整備し、相互に連携してこれを行うこととする。
106
Ⅳ.サービス産業生産性協議会の役割
1.産学官が連携して取り組む共通のプラットフォーム
サービス産業生産性協議会は、サービス・イノベーション、サービス産業の生産性
向上に向けて、産業界が中心となり、産学官が連携して取り組む共通のプラットフォ
ームとして、多様なサービス産業界が抱える課題に応える場としての役割を担う。
協議会において、サービス産業の活性化のための活動を幅広く行いサービス産業
のイノベーションと生産性向上のための、ダイナミックな展開を期待。
このため、サービス産業関係者はもとより、サービス産業に関連する製造業や、大
学関係者、関係省庁等幅広い関係者の参加のもとに設立され、活動することが期待
される。
(※)経済成長戦略大綱(平成18年7月の財政・経済一体改革会議(政府・与党))
サービス産業は、日本経済の7割を占めながら、生産性向上で出遅れている。そのため、その生産性を抜本
的に向上させることにより、サービス産業を製造業と並ぶ「双発の成長エンジン」とすることが目標に掲げられた。
具体的には、サービス産業の革新のために、産学官による「サービス産業生産性協議会」を創設し、「日本サー
ビス品質賞」を創設すること、また、サービス生産性研究等を推進する「サービス研究センター」を構築すること
が記述されている。
・サービス産業は、非常に多様化、多分野化している。教育、介護の他、幅広くサービスが自由に動ける枠組み作
りが重要。(牛尾座長)
・草の根からの生産性向上は基本的には民間の取組がまず基本であり、政府の取組は制度、仕組みに関わること
が重要。(伊藤委員)
2.サービス産業生産性協議会の活動内容
(1)普及啓発活動
サービス産業の生産性向上は自由な民間活力の発揮による創意工夫が基本。生
産性向上に役立つ知見やノウハウを収集・整理し、広く共有する。
さらに、この中から特に先進的な事例、優良な事例を 「サービス業300選(仮称)」
として選定するほか、優れたサービス事例を顕彰する。
【参考】「サービス業300選(仮称)」について
「元気なモノ作り中小企業300社」、「頑張る商店街100選」、「ものづくり大賞」などの取組が、これ
まで行われてきたが、サービス産業についてこのような取組は行われていたことはなかった。
そのため、「サービス業300選(仮称)」のような取組を行い、創意工夫に満ちた生産性向上に役立
つ先進的な事例を選定する。選定にあたっては、主に中小サービス企業を対象とし、経済産業省、中
小企業庁などと連携し、選定する。
(※)サービス産業生産性協議会にて、2007 年∼2009 年の 3 年間、毎年 100 選ずつの選定を検討。
107
(2)科学的・工学的手法の導入、サービスプロセスの改善
サービス分野への科学的・工学的アプローチの適用・製造業ノウハウの導入を広
めるため、成功事例の収集・紹介を行うとともに、異業種間の連携、産学連携を生み
出す機会を提供する。
【再掲】【具体的取組】
①産学連携の強化・推進(政府による支援と協議会における取組)
サービス分野における産学連携促進のために積極的に取り組む。例えば、新エネルギー・産業技術開発機
構の大学連携促進のための事業を活用するとともに、平成20年度以降サービス産業の実態に応じた類似制度
の創設や、既存制度の拡充・有効活用の可能性について検討し、サービス分野における産学連携を推進する。
また、産業界、大学TLO窓口等が集い、サービス分野における産学連携や技術移転の実例について意見交
換を行う場を設ける等、大学及び産業界の連携強化をいかに進めるかについて検討する。
②成功事例の調査・普及啓発/異分野間の連携促進(協議会による取組)
他の分野では既に十分普及している技術を有効活用するため、成功事例の調査を実施し、とりまとめた結果
の普及・啓発を図る。科学的・工学的アプローチの潜在的ユーザーと提供者のマッチング機会を創設し、異業
種・異分野連携の促進を図る。
③ベストプラクティスの普及・啓発および製造業OB人材・企業のネットワーク化(協議会による
取組)
製造管理ノウハウのサービス産業における適用パターンを整理し、わかりやすく提示することや、製造管理ノウ
ハウの伝道師となる人材のサービス産業での活躍を促進するため、ベストプラクティスの普及・啓発、製造業O
B人材・企業のネットワーク化、などの取組を行う。
④製造管理ノウハウの活用方策の分析(協議会による取組)
製造管理ノウハウのサービス産業への適用のための研究・実証事業を支援し、活用方策を開発し、展開する
ため、サービス産業生産性協議会は、平成19年度中に、サービス産業への適用に当たって、研究や実証支援
を経た後に普及・啓発していくことが望ましいもの(「研究・実証型」)の整理を行う。
⑤IT人材育成(協議会による取組と政府による支援)
情報技術のみならずサービス産業のユーザーの業務内容に精通した人材育成を産官学が連携して進める。
⑥安心・安全の確保(セキュリティ・プライバシー)(協議会による取組と政府による支援)
顧客情報の収集・活用に際しては、個人情報保護法に則った情報の保護と利用のバランスに的確な配慮が
必要。技術的セキュリティ、組織的セキュリティへの対応を促進するための、環境整備、技術開発を進める。
(3)品質認証など競争環境の整備
消費者からの信頼獲得、サービス・イノベーションへの活発な取組に向けて、サー
ビス品質を巡る競争を喚起するべく、サービス品質の「見える化」に取り組む。
【再掲】【具体的取組】
①業界自主基準等の策定、第三者認証制度やADRメカニズムの構築(協議会による取組)
民間によるサービスの認証制度等サービスの内容や品質を「見える化」する取組が重要であり、サービス産業
生産性協議会はその取組を支援する。具体的には、業界による自主的な取組への支援、第三者認証制度構
築への支援、ADR のメカニズムの構築などの取組を行う。
②日本版CSI(顧客満足度指数)の整備・普及(協議会による取組)
学会、学者等の有識者との連携を図りつつ、各国で実施されている顧客満足度指数を参考に、日本版CSIの
開発、運営組織についての検討を行う。日本版CSIの普及にあたっては、開発・運営体制を構築し、CSIスコアを
公表するだけでなく、CSI普及に向けた多様な取組を行っていくことで、有効な活用と利用拡大を促進する。
108
(4)人材育成
サービス産業が求める人材像を明らかにしつつ、教育過程に期待される内容を検
討するほか、企業の枠を越えた人材育成への産業界の取組を支援する。
【再掲】【具体的取組】
①サービス産業界に求められる人材ニーズ・人物像の明確化(協議会による取組)
サービス産業生産性協議会などの場において、サービス産業界における人材に対するニーズを把握するとと
もに、求められる人物像(知識・スキル・技術など)、企業における将来のキャリアパスを明確にする。
②サービス産業人材を育成する教育体制の充実に向けた産学間における対話の促進(協議
会による支援と政府による取組)
求められる人物像(知識・スキル・技術)について、産業界と大学等教育機関との対話の促進に資する働き
かけを行うとともに、教育体制の充実に向けた取組を支援する。具体的には、産学の連携により、サービス工学
などサービス産業人材の育成、サービス産業に密接に関連する教育、観光学部におけるホテル経営など、サー
ビス産業毎の固有の専門知識のみならず、経営技術にも精通した経営人材の育成の充実について検討を行う
他、サービス工学に関する研究支援を通じて、サービス産業界におけるその重要性の認知とサービス工学手法
の活用を促進する。
③人材スキル標準の作成(協議会による取組)
個別企業を超えて業種内や業種横断的に共通とされるスキルやノウハウについて、より戦略的に人材を育成
していくために、サービス産業生産性協議会において、産業界が求める人材ニーズを明らかにするとともに、スキ
ルレベルを整理し、スキル標準を作成する。
④ジョブカードの活用(政府による支援と協議会の取組)
個別サービス分野毎に業界共通スキル標準の策定を行い、これに対応した人材育成制度・資格制度等を整
備。底上げ戦略で決定した「ジョブカード制度」の具体化をサービス分野において図るため、「サービス産業生産
性協議会」参加企業の積極的協力を促しつつ、制度構築を図る。
⑤IT人材育成(協議会による取組と政府による支援)
情報技術のみならずサービス産業のユーザーの業務内容に精通した人材育成を産学官が連携して進める。
(5)サービス産業の統計整備・実態把握
サービス統計の充実に向けた産業界のニーズの集約、政府への提言を行うほか、
業界統計の整備に向けた企業間の連携や試行的取組を支援する。
【再掲】【具体的取組】
①統計見直しに必要な情報提供(協議会による取組)
変化が激しいサービス産業の実状について、統計の見直し等に関する産業界のニーズの抽出や情報提供を
行う。
②業界統計整備の検討(協議会による取組)
業界統計のノウハウの共有などを通じて、業界統計の整備に向けた支援を行う。
③生産性の計測についての検討(協議会による取組)
サービス産業における生産性算出に関する課題(例えば、生産額の定義、サービス産業における資本投入の
内容の明確化等)を含め、より精度の高い生産性の計測について検討する。
109
(6)その他(市場環境整備など)
規制改革や公的市場の民間開放など、サービス生産性向上に向けた制度的課題
の分析と必要な取組の研究・提言を行う。
【参考】公的規制の改革について
規制改革・民間開放の推進のための重点検討事項に関する第3次答申(平成18年12月25日)
◆福祉・保育分野
(1)保育サービスを利用者がニーズに応じて自由に選択できる環境の整備
○「認定こども園」制度が広く普及するよう、実施状況を把握・評価し、適宜制度を見直すとともに、申請等の手続きの簡素化などを図る【平成19年度以降適宜措置】
○利用者の利便性を向上させるとともに、サービスの向上努力を促す観点から、認可保育所への直接契約方式の導入について検討
○利用者負担を公平化にするため、現行の機関補助方式から利用者への直接補助方式への転換について検討。併せて育児支援関連予算等を統合したものと保険料
を財源とする「育児保険(仮称)」の創設について検討
【上記2項目については、認定こども園の実施状況等を踏まえ、保育所において一体的に導入することの可否について長期的に検討】
(2)セーフティネットとしての生活保護業務の推進
○自立支援業務を中心に社会福祉士などへの外部委託や嘱託等の積極的な活用など各自治体における取組事例の公表【平成18年度以降適宜措置】
◆医療分野
(1)医療従事者の資格制度の見直し
○資質の定期的なチェックの他、医療安全等の定期講習や生涯学習のサポート等、医師の知識・技能と資質向上に資する取組を検討【平成19年度検討・結論】
○患者から納得の得られる知識・臨床上の技能を有する専門医の在り方を検討【速やかに検討開始、平成19年度中に結論】等
(2)医療従事者の労働派遣
○ニーズや常勤職員への負担の影響等を踏まえつつ、医療従事者の派遣労働を可能とすべく検討【平成19年度中に検討・結論】 等
◆教育・研究分野
(1)学校選択の普及促進、教員評価・学校評価制度の確立等
○いじめへの対応、通学の利便性などの地理的な理由、部活動等学校独自の活動等、を理由とする就学校変更の申立についての周知徹底【平成18年度中に措置】
○児童生徒・保護者の意向を反映した教員評価・学校評価の確立等【平成18年度中に措置】等
(2)教育バウチャー構想の実現
○教育バウチャー制度について、今後更に積極的な研究・検討を行う
【引き続き検討、平成19年度以降速やかに結論】
(3)教育委員会制度の見直し等
○「骨太方針2006」及び本年9月の特区本部決定を踏まえ、改正教育基本法の国会論議や教育再生会議の意見も踏まえて、地方教育行政法を改正【平成18年度措
置】
(4)適正な研究費の配分等
○科学技術振興調整費等の配分審査や事後評価を含め、適正な研究費配分のための関係制度の見直し【平成19年度検討・結論】等
※規制改革・民間開放推進会議については、平成 19 年1月 25 日をもって終了。後継組織として、
規制改革会議が立ち上げられ、平成 19 年 4 月 3 日時点で、本会議が 3 回開催されている。
110
111
参考資料
(事例集)
112
事例集目次
1.サービス分野における科学的・工学的アプローチの拡大................................................. 115
1.1 サービス提供の過程で「技術」が「人」に代替.......................................................... 115
①ロボット手術システム ............................................................................................... 115
②空中遠隔モニタリング .............................................................................................. 115
③ゲーム感覚のリハビリ.............................................................................................. 116
④ロボットスーツ.......................................................................................................... 116
⑤旅館........................................................................................................................ 117
1.2 サービス設計を技術が支援................................................................................... 117
①サービス設計 CAD .................................................................................................. 117
1.3 認知工学等を活用して、顧客の視点でより質の高いサービスを実現 ....................... 118
①駅構内の標識研究 .................................................................................................. 118
②アイトラッキングによる消費者の視点分析................................................................. 118
1.4 従来のサービスをモデル化し、そのプロセスを工学により最適化 ............................ 119
①エアライン/搭乗時間の最短化 ............................................................................... 119
②MLB のスケジューリング .......................................................................................... 119
③エアライン/座席と価格の最適化 ............................................................................ 120
1.5 市場化された新しい技術を活用してサービスを提供 ............................................... 120
①タクシー/優良乗務員の行動分析 ........................................................................... 120
②GPS 活用による新たなプライシングモデル ............................................................... 121
③遠隔医療画像診断支援 ........................................................................................... 121
④物流システムの遠隔監視......................................................................................... 122
⑤ファストフードのコールセンター................................................................................. 122
1.6 他分野では既に普及している技術をサービス提供に活用....................................... 123
①金融マッチングサイト ............................................................................................... 123
②葬祭用遺影写真デジタル加工&配信....................................................................... 123
③地域のテレワークオフィス ........................................................................................ 124
2.サービス提供プロセスの改善∼製造管理ノウハウによるサービス産業革命∼ ................. 125
2.1 総菜にジャスト・イン・タイムの隠し味...................................................................... 125
①総菜小売:R社 ........................................................................................................ 125
2.2 病院にもカンバン方式 ........................................................................................... 125
①医療:I病院.............................................................................................................. 125
2.3 クリーニングの常識を製造管理ノウハウで「洗い直し」 ............................................ 126
①クリーニング:N社 .................................................................................................... 126
2.4 展示会場も病院もホテルも、インダストリアル・エンジニアリングで再設計 ................ 126
113
①イベント業:F社........................................................................................................ 126
②医療:K病院 ............................................................................................................ 127
③ホテル:Y................................................................................................................. 127
3.サービス産業による地域活性化..................................................................................... 128
3.1 地域内需対応型サービス ...................................................................................... 128
①健康サービス産業協議会の設立(大阪府、熊本県) .................................................. 128
3.2 地域ブランド創出型サービス ................................................................................. 128
①高精度な小規模店舗立地判定・売上予測システム ................................................... 128
114
1.サービス分野における科学的・工学的アプローチの拡大
1.1 サービス提供の過程で「技術」が「人」に代替
①ロボット手術システム
ロボット手術システムの例:
ロボットテクノロジーと通信技術の飛躍的向上により遠隔医療の実現
ロボット手術システムを利用し大西洋を越えた遠隔手術に成功
(2001年9月 68歳女性の胆嚢摘出手術)
医師: ニューヨーク(米国)
患者:ストラスブール(フランス)
A round distance of
more than 14,000 km
使用したロボット手術システムは、カリフォルニア州に本拠を置く米国C社が製作したもの。
外科医は操縦ハンドルを装備したコックピットのようなコンソールに座り、大西洋横断光ファ
イバーケーブルを介してロボットを操作する。
出典:WIRED NEWS
②空中遠隔モニタリング
空中遠隔モニタリングシステムSの例:
長年培ってきた小型で高性能なラジコンヘリコプターの製造技術を応用し、有人機や人が入れない危険な
低空領域での、無人点検や状況調査・監視業務を行う空中遠隔モニタリングシステムを開発した。
ポイント
以下の用途が想定され、各種の監視業務サービス等の効率化に繋がる。
・送電線路等の高所点検作業での、業務の効率化、コストセーブ。
・危険区域や災害現場での状況調査や空中監視。
・植生や海域等の成育・環境観測。
●主な用途
送電線・鉄塔設備点検
■システムの構成
★安定画像取得
モニタリングシステム
機体仕様
周辺監視
周辺監視
カメラ
カメラ
位置情報
自律制御装置
長距離飛行の場合
中継局
画像切替装置
カメラ安定装置
カメラ安定装置
2.4G無線LAN
(ジャイロ制御)
(ジャイロ制御)
・パン・チルト
・パン・チルト
・Zooming,Focus
・Zooming,Focus
・自動追尾指令
・自動追尾指令
空中監視・防災情報収集
画像処理PC
カメラ制御I/F
CCDカメラ
CCDカメラ
【経緯】
・C大学と共同開発した自律制御技術を基にし
て、H14年4月より、地域産業新生コンソーシア
ムを立ち上げ、空中遠隔モニタリングシステムを
開発。
・H15年7月より、C社との共同研究により送電
線設備の無人巡視・点検業務の効率化とコスト
ダウンを目指したシステムを開発中。
→飛行領域(基地局より3km)の拡大の検討
を行っている。
IRカメラ
IRカメラ
点検・監視
点検・監視
画像の取得
画像の取得
地上局仕様
カメラコントローラ
カメラコントローラ
2.4G無線LAN
インターフェース基板
監視・点検モニター
監視・点検モニター
画像解析PC(制御兼)
画像解析PC(制御兼)
正像化処理
異常検出・診断
点検履歴データベース
115
【運航領域】
・有人機が入れない150m以下の無人区域での
有視界外飛行。
・わずかなスペースの離発着場から即座に飛行
発進可能。
・人が近づけない危険エリアでの運航
③ゲーム感覚のリハビリ
リハビリテーションとエンターテインメントの融合を目指すN社の例 :
K大学と連携し、運動機能や脳機能の活性化を目的としたゲーム機器を開発。転倒予防やバランス維持に重要な
筋力の向上に役立つことが立証された。
※同社は、当機器を設置したデイサービスセンターも運営している。
●一般的な機能回復訓練ではスタッフが付いて強制するが、リハビリテー
ションとエンターテインメントを融合したこの機器では、自発的で、リハビリ
の意識をもたせない。ゲーム機で楽しい時間を過ごすことが、結果として
身体能力の維持や向上につながることが立証されている。
自転車エルゴメーター
ゲーム時
手順
• 「動物の退治」をモチーフとした、軽快な音と共に出現する
4つの動物ターゲットを踏み、得点を競うゲーム機。
• プレイ時間は60秒。序盤はゆっくりとターゲットが出現す
るが、一定の点数を超えるか、一定時間を経過すると動
物の出現スピードが段階的に増加し、運動強度が徐々に
高まるしくみ。
• ゲーム修了後は、5段階のランキング表示と音声による一
言コメントがあり、利用者の向上心と継続意欲を刺激する。
膝屈伸筋トレマシン
図:節電図の推移
図:脳血流の推移
④ロボットスーツ
筑波大発ベンチャーC社、ロボットスーツ量産へ
• C社は高齢者の歩行支援をはじめ、医療・福祉分野での利用増を見込み、ロボットスーツの増産体制を構築
• ロボットスーツは新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の次世代ロボット実用化プロジェクトの一つ
(2006年10月23日/日本経済新聞 朝刊)
筑波大学発ベンチャーのC社は着用者の身体機能を強化する
ロボットスーツの量産体制を整える。来年5月にも新たな研究・
生産拠点を設け、生産能力を現在の約20倍の年間約400体程
度に高める。高齢者の歩行支援をはじめ、医療や福祉分野で
の利用増が見込めると判断した。
つくば市に約3600平方メートルの敷地を確保し研究と組み立
てスペースを持つ施設を建設。来年5月にも稼働させる。建設
資金は年内に実施する第三者割当増資で賄う。
同社のロボットスーツ「HAL」は、高齢者や要介護者など筋
力の衰えた人のリハビリを補助するため開発した。人間の筋
肉が発する微弱な電気信号をセンサーでキャッチし、人間が動
き始める直前にスーツを作動させるので、着用者の足腰や腕
に負担がかからない。重量物を持ち上げるなど様々な使い方
が見込まれている。
116
⑤旅館
高級旅館K屋の例 :
人手頼りであった厨房からの料理の運搬を自動搬送システムで効率化・高速化
●K屋は旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で、 25年間連続No.1にラン
キングされる高級旅館。
●きめ細やかな高品質サービスを、200室以上、約1500名におよぶお客様へ提供。
●大規模な旅館の場合、料理を提供する際の問題点として、お膳の上げ下げに人手を取られ満足な給
仕ができない、料理が冷める、お客様を待たせる、といったサービス品質の低下の懸念。
●自動化推進協会*(JAAA)と連携し、世界初の料理自動搬送システムをI社より導入。調理場から各階
の配膳室まで、自動制御で料理を運び、画期的な省力化を実現。
(*自動化推進協会:生産技術の発展に貢献すべく1972年発足。自動化技術を体系化し、技術の交流・普及等を目的に
メーカー、ユーザー、コンサルタント、学者・研究者の横断組織として活動)
●サービス係の配膳にかかる負担を軽減し、お客様のおもてなしにかける時間を増やすことで、顧客満
足度を向上。
1.2 サービス設計を技術が支援
①サービス設計 CAD
サービス設計支援システム(サービスCAD)の開発
• 従来、製品設計をベースにしたサービス設計のプロセスに、サービスの提供のプロセスを分析・解明し、機能
構造・実態構造に基づき、その内容を機能・属性をパラメータとするモデルによりサービス提供の過程を可視
化することにより、サービス設計支援システムの基礎を構築。
• 本システムによりサービスのプロセスが可視化するとともに、サービス設計における異分野の結合の可能性
や、最適化の支援が可能となる。
機能構造・実態構造の可視化
パラメーターモデル化
コーヒーの量
コーヒーを提供する
3
カップを用意する
カップにコーヒー
を注ぐ
コーヒーの味
1
1
コーヒーをお客
に出す
1
接客の良さ
1
1
3
3
点てる時間
カップの大きさ
取扱の丁寧さ
接客態度
1
コーヒー豆の味
1
建て方
食器(皿)
カップ
湯の量
声の大きさ
(子ひーメーカー)
(ウェイター)
表現
サービスCAD
サービスCAD
3
表情の多さ
東急
コーヒー豆
・統合設計環境
・柔軟・強固なデータモデル
・モデル駆動型↓開発効率化
・システム規模
−サイズ40MB
−行数:約20万行
3
点てる時間
ウェイター
サービスCAD
プラットフォーム
【特徴】
3
5
湯の量
コーヒーを点てる
注文の待ち時間
カップの容積
(ウェイター)
(コーヒー豆)
コーヒーメーカー
設計
材質(皿)
建て方の種類
湯
(コーヒーメーカー)
運びの確実さ
(ウェイター)
117
評価
1.3 認知工学等を活用して、顧客の視点でより質の高いサービスを実現
①駅構内の標識研究
駅構内等の標識案内の方法を人間認知行動分析により研究
• 駅構内等において、いくら標識を充実してもお客様が標識を認識できずに迷ってしまう問題の存在
• 産業技術総合研究所は、鉄道会社と連携し、認知行動計測技術を活用した研究に取組
顧客満足度向上、乗客のスムースな誘導、構内混雑の緩和
ユーザー特性ごと
の問題点の同定
ユーザー特性に対応したガイド
方法の提案
駅・電車内でのユーザーニー
ズの抽出/問題点の抽出
ガイドのプロトタイプの開発
対象分析に基づく対象に応じた
手法の適用化
認知行動計測技術
実フィールドでの行動計測技術
実フィールドでの行動分析
高齢者認知特性評価法
タスク分析手法
②アイトラッキングによる消費者の視点分析
科学的な「消費者の眼」の分析:アイトラッキングによる消費者視点の分析
眼球運動測定装置(アイ・トラッキング) により、消費者の眼球の動きを測定。消費者の無意識下にある情報を
分析。
●従来消費者の嗜好の研究は単純に相手に質問することによって行って
きたが、眼球運動測定装置により、消費者の眼の動きをそのまま記録
し分析することが可能。
●視線追跡や視線滞留時間分析により消費者がどこを見ているか、どこ
が注目されてるかの分析が可能。これにより、ウェッブサイトではその
ナビゲーションが使いやすく設計されているか、広告ではブランドロゴ
や商品をどの程度見ているか、等を測定が可能。
測定対象の例
○印刷記事(雑誌、新聞、ポスター)、商品パッケージデザイン、ブ
ランドロゴ、ウェッブサイト、TVCM等
▼アイトラッキング分析を受けて再構築したウェッブサイトの例
▼スーパーの棚に並ぶ商品を見渡す消費
者の視点のデータ
(出典)JMR生活総合研究所「ネクストビジョン 2005(2004 年 12 月7日開催)より作成
118
1.4 従来のサービスをモデル化し、そのプロセスを工学により最適化
①エアライン/搭乗時間の最短化
米国航空会社A社の例:
•地上における次便までの折り返し時間を短縮することで、機材の稼働率が向上し収入が増大する。
•折り返し時間を短縮する上で、乗客の搭乗時間短縮が重要な役割。
アリゾナ州立大学インダストリアル・エンジニアリング(生産工学)学科と連携し、生産工学やコンピュータ・
シミュレーションを用いて乗客の搭乗時間を短縮する方法を研究。
• 航空会社にとって「航空機は飛んでいるときに収入を生む」もので
あり、地上での折り返し時間を短縮することが重要。
• A社はアリゾナ州立大学と連携し、乗客の搭乗時間を短縮する方
法を研究。
• 搭乗時間は、乗客間の妨げに影響を受ける点に着目。搭乗橋や
機内にカメラを設置し乗客の行動を分析、このデータをもとにコン
ピュータシミュレーションモデルを構築
逆ピラミッド型搭乗モデル
(Reverse Pyramid System)
ビジネスクラス搭乗に続いて、
後方窓側、後方中間と前方窓
側、の順に搭乗し、最後に前
方通路側が搭乗することで乗
客間の妨げを極小化。
例:通路側乗客が先に着席することで・・・
• 窓側乗客の着席の妨げとなる。
• さらにその乗客が、通路を塞ぎ、他の
乗客の妨げになる。
• 研究の結果、他の乗客による妨げが最も少ない「逆ピラミッド型」
搭乗モデルを発案
逆ピラミッド型搭乗モデル採用後、出発遅延が21%減少、
平均搭乗時間が2分減少
出典:WIRED NEWS
②MLB のスケジューリング
米国メジャーリーグにおける試合スケジュール最適化の例:
カーネギーメロン大学のT教授らに代表されるS社に対し、2005年の年間試合スケジュールを作成を依頼。
S社は最適化技術を利用し、スケジュール作成上の多様な制約条件を加味した質の高いスケジュールを作成。
●試合数は1チームあたり162試合、全2430試合にも及ぶ。この試合数を満たすチームの組合わせパターンは膨大
になるため、多くの制約条件を加味した公平なスケジュール作成を人手で行うことは極めて困難。
制約条件の例
ホームからの移動回数、ホーム・アウェイ試合の配列、ロード旅程の短縮化、
連続試合日数上限、TV放映ニーズ、等々
●数理的手法を用いることで最適化されたスケジュールを作成。こうした例は米国メジャーリーグ以外にも、ブラジ
ルやドイツのプロサッカーリーグ、スウェーデンのホッケーリーグ等でも実例がある。
●スケジューリング問題に対する最適化手法は、航空会社のパイロットや客室乗務員、鉄道会社、物流会社等のス
ケジューリングにおいても適用されており、コスト低減等の制約条件を考慮したスケジュール最適化が求められる
様々な分野で応用が可能。
最適化されたスケジュールにより、必要人員・機材、コスト(燃料、賃金等)の低減を通じた
生産性の向上が可能となる
出典:C大学HP
119
③エアライン/座席と価格の最適化
航空会社A社の例:
最適化技術などの工学的手法を用いて価格と供給数を巧みに設定することで収益を極大化
収入最適化の考え方
課題
•航空業界は「在庫」ができず、「増産」が容易でない特徴。生産調整や在庫
調整が可能な小売や製造業界との決定的な差。(サービスの特性)
•ホテルやレンタカー、パイプラインの太さで効率が決まるエネルギー産業な
ども同様。
•しかし、割引チケット等の価格を、どのように座席に配分するのかは担当者
の「経験と勘と度胸」に依存。
座席を最大限市場に開放することを通して収入の最大化を図る必要
対応
レベニューマネジメントの業務サイクル
レベニューマネジメントシステムの導入
米国P社の旅客収入最適化システムを採用。過去の情報をもとに今後の需
要を予測することを可能にするもので、同社のシステムは国際的に約6割の
シェアをもつ。
結果
レベニューマネジメントシステムによる座席コントロールの結果、導入前との
比較で国際線で約20億円の増収効果、国内線で約60億円の増収効果(合
計で約80億円) (システム投資額は約13億円)
出典:
「IT投資マネジメント」キーマンズネット
1.5 市場化された新しい技術を活用してサービスを提供
①タクシー/優良乗務員の行動分析
タクシーH社の例 :
GPSを活用して優秀乗務員の行動データを分析し、ノウハウを共有
●H社は接客サービスを重視した高付加価値サービスにより高い評価をうけるタクシー会社。
●タクシーもコンビニ同様に、曜日、時間、天候等によって顧客のいる場所が変動。こうした知識を蓄
積することが売り上げや稼働率の向上に欠かせない。
例)
「午後早い時間帯はこの区間を巡回していると乗客に会える」
「隣接県に行った場合、東京に空車で戻らない。このエリアで東京行き予約乗客を待つ」
●タクシーに搭載した大手メーカーY社のGPSシステムを活用し、月に100万円以上売り上げる優秀
乗務員の走行パターンを調べ、その軌跡を分析。研修会等の乗務員教育において活用。
●業界平均を上回る高い実車(稼働)率(約50%)を実現。
●高い売上高の実現(乗務員給与水準は東京平均47,000円/日に対して65,000円/日、年収ベー
スで平均600万円)。
120
②GPS 活用による新たなプライシングモデル
衛星を活用したパーソナルなプライシングモデルを計画しているカナダA社の例 :
車輌を高精度で追跡可能なGPS技術を開発。これにより、個々のユーザー(車輛)単位に、従来では困難であっ
た、少額単位での課金、時間帯別課金、ロケーション別の課金などが可能となる見込み。
●A社はGPSにおける雑音の混入や信号の受信ミスを正すアルゴリズムを開発。車の位置を1.5mの誤差の範
囲内で補足可能。このシステムを社会インフラとして活用することで様々なビジネスモデル展開の可能性
●道路通行料徴収、交通渋滞管理、走行距離性の自動車保険システムといった社会インフラともなるシステム
を計画中。
1
一日の中でどの時間にどのエリアが混雑するかをトラッキングし、混雑時間に
混雑地帯を出入りする車には高額の通行料を課す。これにより通行料が安くな
るオフピーク時の利用を促進し、渋滞を緩和。
2
貴重な駐車スペースを用が済み次第空けさせるため、駐車場は最初は安いが
時間の経過とともに駐車料が高くなる。例えば最初の1時間は1分あたり2セン
トだが、2時間目は5セント、それを越えると1分あたり20セントという仕組み。
3
保険会社は個々の車の動きをトラッキングし、それによって保険料金を適切に
補正。例えば、事故が多発する大通りを時速90マイルで走る車は月450ドル
必要だが、安全な裏道をゆっくり走る車は月100ドルといった仕組み。
出典:Business 2.0
③遠隔医療画像診断支援
遠隔医療画像診断支援サービスの例(山口県):
・医療機関で撮影したCTやMRIの医療診断画像を、「山口医療画像研究センター」にデジタル回線(IP-VPN回
線)で伝送し、同センターにおいて山口大学の放射線科専門医が詳細かつ正確な読影を行い、その結果を翌
営業日までに、電子ファイルで依頼元の医療機関に届ける「遠隔医療画像診断支援サービス」を行っている。
「山口医療画像研究センター」の特徴
・山口大学放射線科医による読影(専門性の高い読影、顔のみえる医療の実現)
・地域病診連携の推進
・迅速な読影ニーズへの対応(依頼日の翌日にはレポート参照可能)
・センターによる画像データ・所見の保管が可能
取組の背景
・日本国内には、約13,000台のCTと約5,000台のMRIがあ
るが、放射線科医の勤務ないし関与していない医療施設が
その半数を占めると言われる。
・また、日本放射線専門医会のワーキンググループがヘリ
カルCT(※注)を導入している全国の医療機関7,207施設
を対象に調査した結果、装置を扱う常勤の放射線科医がい
るのはわずか16%しかいないことがわかった。
・中小規模医療施設で放射線科医の雇用は困難であり、大
学病院等へ常勤・非常勤医の派遣依頼を行っても十分な
対応ができていないのが現状。
(※注)ヘリカルCT・・・管球の回転とテーブルの移動を同時
に行なう事で、体をらせん状にスキャンして複数のスライス
を一度に撮影できるCT装置。
121
④物流システムの遠隔監視
物流システムD社の例 :
全国各地のユーザーが所有する自動倉庫等の物流システムを、滋賀県設置のセンターにて遠隔監視
z 近年のSCMの進展に伴い、物流システムの故障発
生率を低減することは極めて重要な課題
z しかし、各企業が専門技術者を抱えて監視を行うこ
とは大きなコスト負担
リモート監視サービスの提供
D社の例
z 幅広い業種の倉庫・配送システムを販売するD社は、
24時間365日体制で全国各地ユーザが所有する
自動倉庫などの物流システムを遠隔監視するセン
ターを滋賀県に設置
z 既存のコールセンターに情報監視センター機能を持
たせることで、顧客データや対応履歴などの情報を
活用した高付加価値サービスを提供すると同時に
運営コストも低減化
⑤ファストフードのコールセンター
ファストフードM社(米国)の例 :
ホノルルの店舗でのドライブスルーのオーダーを、カリフォルニアにあるコールセンターで対応
カリフォルニアのコールセンターでは35人のオペレーターが全国40カ所の店舗からの
オーダーを処理
他社同様事例
z C社(レストランチェーン)も同様のシ
ステムを今年導入予定
z H社(日曜大工用品)はショッピング
カートにスピーカーを装着し、コール
センターにショッピングアドバイスを
求められるシステムを構築予定
出典:NEWYORK TIMES
122
1.6 他分野では既に普及している技術をサービス提供に活用
①金融マッチングサイト
個人間の融資を仲介する「金融オークション」サイトを立ち上げた英国ローン会社Z社の例 :
eBayのようなオンラインオークションのビジネスモデルを資金の貸し手と借り手の仲介に応用。オンラインマッチ
ングシステムを構築し、資金を貸したい人と借りたい人をマッチング。
●オークションサイトのビジネスモデルを応用し、資金を誰かに貸したい人を、資金を借りたい人に引き合わせ
るサイトを構築。
●資金を貸したい人、借りたい人に対して、これまでの銀行やその他の金融機関以外の新たな仕組みを提供。
●貸し手の資金を小口に分割し広く分散してマッチングすることで貸し手のリスクを軽減。
その仕組み
• 資金の貸し手借り手を問わずZ社の会員となり、信用調査会社から信用格付けを得る
• 借り手の格付けや返済期間によってオークション市場が分類され、金利幅が設定される。
• 貸し手は融資残高25000ポンドを上限として、借り手200ポンドを限度として融資する。借り手は複数の貸し手
を見つける必要があるが、双方ともにリスク分散が可能となる。
• 借り手は融資希望額の1%を手数料としてZ社に支払い、自分の該当する市場で融資のビッドをかける。その
際、氏名住所は公開されないが、性別、年齢、資金使途、貸し手へのメッセージ等を表示する。該当する市場
の金利等融資条件の範囲内で、より良い条件の貸し手(複数)を待つ。
• 資金の授受はZ社の口座経由で行う。返済管理、延滞管理、回収業務はZ社が行う。その為の債権回収会社
もある。実際の不履行率は0.05%未満。
出典:Business 2.0
②葬祭用遺影写真デジタル加工&配信
インターネットを活用した画像処理・写真集製作サービスA社の例(広島県):
・葬祭用遺影写真デジタル加工&ビデオ製作ネット配信サービス
全国1,000箇所以上の葬儀社・葬儀会館をネットワークで結び、365日遺影写真の合成を30分程度で配信中。その合成レ
タッチ技術は専門の教育を受けた、オペレーターにより年間約22万枚製作されている。東西2箇所のセンターと全国8箇所の
メンテナンス基地により、重要なセレモニーを安全と写真クォリティーの高さで圧倒的なシェアーを拡大中。
・プロフォトグラファー向け写真集製作サービス
プロのフォトグラファーの作品を、より商品価値の高い写真集に仕上げている。これまで、不可能とされていた一冊からの写
真集をグラビア印刷並みのクォリティーでWEBから提供。
・USAを始めとする海外のプロ写真家からインターネットによる受注
インターネットビジネスの最大の特徴である、何時でも何処からでも注文可能なNET受注はASUKABOOKのサービスを大
きく広げた。当社と契約しているUSAのプロフォトグラファーの数は1万スタジオを超え世界各国でのサービスも開始されてい
る。(現在、USA/AU/韓国/台湾)
・世界で認められた独自のカラーマネージメント技術
USA最大のプロ写真家団体PPA(Professional Photographers of America)においてASUKABOOKの品質の高さが認めら
れHOT-1アワードを受賞。USAにおいても、デジタルフォトの波は急速に高まりつつあり、各種コンベンションへの参加や独自
のセミナーなども積極的に開催中。
※トピックス
・1995年:設立
・1999年:第7回中国地域ニュービジネス特別賞
<(社)中国地域ニュービジネス協議会会長賞>
「デジタル回線を用いた葬儀用遺影写真作製システムの
ビジネス展開」
・2005年:東証マザース上場
123
③地域のテレワークオフィス
福島県I社の例 :
I社ではテレワーク・コールセンターによる地域活性化、地域人材育成支援事業を展開
z I社は、① 共同利用型のテレワーク環境の整備、② 人材育成 のためのプログラムの整備、③ 具体的な業
務を通してプロのテレワーカー育成を支援、を行い地域活性化・地域人材育成のための人的サービスを展開。
z 自宅を拠点に働く委託スタッフを”在宅ワーカー”として登録し、2007年4月現在100名以上がデータエントリ、
Webリサーチなど様々なアウトソーシング業務に参画。
z クライアント企業の顧客戦略に貢献すると同時に、地元産業界との強固な連携を構築し、地域での新たな雇用
機会の創出に寄与。 コールセンターの開設、NTTグループとの業務提携を行っている。
124
2.サービス提供プロセスの改善∼製造管理ノウハウによるサービス産業革命∼
2.1 総菜にジャスト・イン・タイムの隠し味
①総菜小売:R社
自動車メーカーより生産管理のプロをスカウトし、効率的な生産体制づくりに取組。工場へ
の発注から店舗への配送までの時間を大幅に短縮し、生産ラインにおいても、人の動きの
分析に基づいたレイアウト変更等を行うことで生産性向上に大きな成果。
●全国の百貨店向けに総菜を加工し販売する総菜小売R社において、大手自動車メーカー
より生産管理の担当者を招き、効率的生産体制づくりに取組。
●徹底した生産管理により、工場への発注から店舗への配送までの時間を短縮。従来、各
店舗が夜に生産発注して店舗に届くのは翌々日の朝であったが、翌日の朝の配達に短
縮化。生産ラインにおいても、人の無駄な動き、移動距離の長さなどを分析し、レイアウト
変更等を行うことで生産性向上に大きな成果。
製造ラインのレイアウト変更などで生産性が大きく改善
「いわしロースト」の生産時間は、
一個あたり44秒から25秒へと、
半分近くにまで改善。
レタスのカッティングでは生産性が
8%アップ
ライン設備の清掃時間は4ヶ月で3
0%近く短縮
出典:週刊ダイヤモンド2002/12/7号
2.2 病院にもカンバン方式
①医療:I病院
トヨタ生産方式のコンサルタントを導入し、患者の待ち時間削減に取組。これまで予約のあ
る患者も無い患者も同じ医師が診ていたが、これを予約患者と予約無し患者の担当医を
分けることで一人の医師あたりの仕事量を平準化し、診療待ち時間を大幅に短縮。
●コンサルタントを導入し、患者の待ち時間削減に取組。
●これまで予約のある患者も無い患者も同じ医師が診ていたが、これを予約患者と予約無
し患者の担当医を分けることで一人の医師あたりの仕事量を平準化し、診療待ち時間を
大幅に短縮。
患者の待ち時間が大きく改善
従来は予約のある患者も、ない患者も一人の医師が診ていたた
め、診察やそれに伴う事務作業の量に大きなバラツキが発生し、
予約をしても診療が終わるまでどのくらいかかるか分からなかっ
た。
工場における「製品」を病院では「患者」に置き換え、生産指示書にあたる
「かんばん」をカルテに置き換え、製造管理の発想で仕事の流れを再整理
予約患者と予約無し患者の担当医を分けることで一人の医師あ
たりの仕事量を平準化して整理
出典:週刊ダイヤモンド2002/12/7号
患者が診察もされず事務作業も進んでいないという停滞が解消
され、診療待ち時間は2ヶ月でほぼ一時間以内に短縮された。ま
た、患者は診察室の前に掲示された時計盤で待ち時間を把握で
きるようになった。
125
2.3 クリーニングの常識を製造管理ノウハウで「洗い直し」
①クリーニング:N社
それまで工場に大規模の洗浄・乾燥システムを導入し効率化を図っていたが、持ち込まれ
る衣類は多種多様。そこで、これまでの大量一括生産型システムを撤去し、かんばん方式
を取り入れた多品種小ロット洗浄機等を導入することで「多品種少量生産」体制へ移行。
●工場に大規模の洗浄・乾燥システムを導入し効率化を図っていたが、持ち込まれる衣類
は多種多様であり、相応の体制づくりが必要。
●これまでの大量一括生産型システムを撤去し、かんばん方式を取り入れた多品種小ロッ
ト洗浄機等を導入することで「多品種少量生産」体制へ移行。
生産管理の視点から従来の製造プロセスの常識を見直すことで
生産性の向上
毎年衣の替えのシーズンには山のように持ち込まれる洗濯物を
「翌日仕上げ」のうたい文句に基づき徹夜で仕上げていた。
顧客は必ずしも翌日の仕上げを望んでいる訳ではない。顧客に
希望の仕上がりを聞いて処理工程をそれにあわせる方が効率的。
工場に大規模の洗浄・乾燥システムを導入し、それをもって高効
率としていたが、顧客が持ち込む衣類は素材も形も汚れも様々。
また、個店から集荷し、大型工場で一括処理をして、仕上がり品を
個店へ振り分けるため、誤配や紛失が起きやすい。
持ち込まれた衣類に合わせた「多品種少量生産」が適しており、
小ロットで処理していくことが重要。顧客毎、店舗毎の小ロットで処
理することで誤配や紛失も減少。
出典:週刊ダイヤモンド2002/12/7号
2.4 展示会場も病院もホテルも、インダストリアル・エンジニアリングで再設計
①イベント業:F社
コンサルタントを導入し、展示会場設置のパーティション組み立て作業の調査を実施。作業
動作の分析を通じて、習熟訓練・作業動線の短縮・人員計画の見直しを図り、合理的な組
み立て手順の検討と標準作業書の作成に取組。
●イベント業F社において、IE手法により展示会場設置のパーティション組み立て作業の
改善点を発見し標準作業書を作成し改善実施中。
●IE手法はイベント業においても十分有効であり、活用可能性が高い部分が多いことから、
さらなる具体的成果を生むことを目指している。
パーティション組立
作業分析結果
一枚の壁組立平均時間
ベテラン作業者
9.04秒
新人作業者
14.9秒
時間比率
1.65倍
新人は作業時間のばらつきも大で、失敗(不良発生)もある。
パーティション組立作業の標準作業書を作成
パーティション組立作業
段取り作業・使用部材・工具・保護具・安全を確認
•
作業の進行に沿った作業順序とする
•
要素作業を取り出す
•
ひとつひとつの要素作業を分解する
•
作業の急所(勘やコツ)を示す
•
急所をはずすと起こる現象を示す
•
教育用ビデオ作成
•
事前に新人への技能訓練の徹底
業務調査実施方法
実施方法; 作業観察と記録(数値データ化)
使用道具; ストップウオッチ+ビデオ
使用した主な手法
•
連続作業分析 繰り返し作業者の手順
•
稼働分析 連続稼働分析 ワークサンプリング
•
ムダ(価値を生んでいないもの)の発見
•
品質管理的データ解析(統計的なものの見方)
126
②医療:K病院
コンサルタントを導入し、受付や会計部門の調査を実施。患者の待ち時間ストレスを増すこ
となく、受付の編成・レイアウト・組み合わせを検討し、時間帯毎の患者数に応じたきめ細
かい体制の確立を目指す。
●K病院において、IE手法により新患受付業務の改善点を発見し、レイアウトの見直しや
改善実施中。
●IE手法は病院においても十分有効であり、活用可能性が高い部分が多いことから、
さらなる具体的成果を生むことを目指している。K病院では受付業務だけではなく、画像
診断部・検査科・用度課などで改善を進めている。
病院の受付業務の稼動分析例
(ワークサンプリングで稼動分析
を実施)
主体作業:患者対応、電話対応、画面入力など
付随作業:検査データの読み取り、データ処理
その他:待機、他業務応援、打ち合せなど
53.4%
10.7%
35.9%
K病院の受付
受付業務の分析と改善提案
業務調査実施方法
・主体作業は全体の1/2にとどまる(余裕がある)
・特に再来受付では付随作業、その他が極めて高い
・手待ちの比率が高く過剰対応である
・様々な書類作成は転記など重複記入が多い
・作業途中の離席が多く、レイアウトの変更が必要
・カルテの保管棚の設置変更
・曜日や時間帯を考慮したきめ細かい体制づくり
・患者(新患と再来)によりサービス対応をわける
実施方法; 作業観察と記録(数値データ化)
使用道具; ワークサンプリング+ビデオ
使用した主な手法
•
稼働分析 連続稼働分析 ワークサンプリング
•
ムダ(価値を生んでいないもの)の発見
•
レイアウト分析(動線分析、作業分析)
•
5S活用(整理・整頓・清掃・清潔・躾)
③ホテル:Y
コンサルタントを導入し、客室清掃作業の効率化に着手。作業動作の分析を通じて、作業
動線の短縮や重複作業の削減を図り、合理的な作業手順の検討と標準作業書の作成に
取組。
●Yホテルにおいて、IE手法により客室清掃の改善点を発見し標準作業書を作成し改善
実施中。
●IE手法はホテル業においても十分有効であり、活用可能性が高い部分が多いことから、
さらなる具体的成果を生むことを目指している。
Yホテルのベッドメイク
ホテルの客室清掃時間分析例(客室清掃をVTR録画して時間分析を実施)
(例)客室 改善項目(客室のセットアップ・清掃の場合)
業務調査実施方法
実施方法; 作業観察と記録(数値データ化)
使用道具; ストップウオッチ+ビデオ
使用した主な手法
•
工程分析的手法 作業者の手順 ものの変化する過程
•
稼働分析 連続稼働分析 ワークサンプリング
•
ムダ(価値を生んでいないもの)の発見
•
品質管理的データ解析(統計的なものの見方)
127
作業時間短縮 + 品質確保
•
台車・小道具の改善
•
動作・作業方法のムダ取り改善
•
作業編成の改善
•
複数チェック(ダブリ)から責任チェック
•
標準作業の設定
•
標準作業書(マニュアル+教育用ビデオ)
•
新人への技能訓練の徹底
3.サービス産業による地域活性化
3.1 地域内需対応型サービス
①健康サービス産業協議会の設立(大阪府、熊本県)
少子高齢化時代を迎え、都道府県単位で産学官による健康サービス産業協議会が立ち上がりつつある。
大阪健康サービス産業創造協議会
熊本県健康サービス産業協議会
• 平成17年3月24日 発起人会(協議会設立)
• 平成17年5月27日 総会
• 目的
健康をキーワードにした新たな付加価値産業の発展に寄与し、
府民の健康で豊かな生活と活力ある都市大阪の再生を図る
• 意義
1.先進的健康サービス産業の創出及び活性化
2.府民全体の健康づくりの推進、医療・健康保険料などの
抑制効果
• 役割
1.「健康サービス産業プラットフォーム」の形成
−健康をキーワードに、これまでにない産・官・学・医連携基盤を構築
2.「府民の健康リテラシー向上」を支援
3.「大阪発の健康サービス事業ブランド」の創出
• 平成19年1月25日設立(設立総会、設立記念講演会)
• 事業内容
<調査研究事業>
健康サービスに寄与する調査・研究及び提言
<情報交換・交流・情報発信事業>
産学官、異業種間等の連携強化、交流の円滑化の支援
<県民啓発情報発信事業>
健康サービス産業に資する健康知識を県民に普及するための
啓発事業
<新サービス開発支援事業>
科学的根拠に基づく商品・サービス開発の支援
<人材育成支援事業>
科学的根拠を踏まえた健康サービス産業に係わる企画・技術
等人材の育成支援
• 参加主体
1.県内の健康サービス産業関係企業
2.県内大学の研究者、医療、検診機関(日赤熊本健康管理セ
ンター等)
3.熊本県 等
事業フレーム
3.2 地域ブランド創出型サービス
①高精度な小規模店舗立地判定・売上予測システム
高精度な小規模店舗 立地判定・売上予測システムを開発した有限会社A社とS大学の例(島根県)
・小規模店舗の出店に関して、経験と勘に頼って推測・試算するという従来手法ではなく、商圏や立地など
の各種要因を基に裏付けのある予測値を算出するシステム。新規出店のマーケティングにとどまらず、既
存店の経営改善にも適用可能。
・売り場面積500㎡以下の「服販売店」「コンビニ」「飲食店」を対象とし、売上予測精度は80∼97%。
・地域の小規模店舗の出店や社会基盤整備の支援とともに、コンサルタント・サービスの質の向上に繋がる。
・事業計画書作成の際の重要な基礎データとして利用している。
・平成15年度 IT活用型経営革新モデル事業を活用し、S大学教員と共同開発。
ポジショニング
調査依頼
レポート
実地調査(票)
•多くの調査項目
•共通の評価基準
•点数化評価
約50項目/箇所
入力
GIS出力表
コンサルティング
約500項目/箇所
改善点
①時間の短縮
②コスト低減
③ あいまいな
判断基準の排除
④ 大手FC本部のよ
うな共通の判断基準
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価
格
以前
の
手法
FC本部
今回の
手法
パフォーマンス
【活用実績】
・レポート作成依頼6件 (平成16∼17年度)
・システムの販売実績はないが、コンビニFC
や公的機関から打診あり。
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