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ファインマン11「ボース軍団の最期」

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ファインマン11「ボース軍団の最期」
素粒子戦隊ファインマン
11
— ボース軍団の最期 編 —
(c) Masaya Kasuga
Shaltics 2006
湯川:
「2006年か……前に会ったのは二年くらい前の気がするなぁ」
長岡:
「なんか今回は2005年に書いた部分がだいぶ混じっているそうな。
『うはっ、こいつ本当に解散しやがった!』って言ってた頃ですな」
湯:「……ところで、俺たちはどの時間軸で生きているんだろう。やっぱし
漫画時間?」
長:
「それ言いだしたら、マガジンでまかりとおっている少年はとうに中年
ですがな1 」
あらすぢ
湯:
「世界の物理学会を統一しようとする「統一物理協会」。そいつらが、俺
様の研究室のボスである斉藤教授を抹殺しようとしているのさ」
長:
「教授をまもるために研究室の五人が正義のヒーローに」
「「ぶっちゃけありえな∼い」」
湯:
「敵といろいろすったもんだあったあげく、敵の幹部フェルミを撃破!」
長:
「一難去ってまた一難♪」
湯:
「……」
長:
「……」
湯:
「ほら、ネタが古い……」
俺様の仲間
斎藤丈隆(教授)
湯:
「俺達のボス。一見ただのロートルオヤジだが、本当は凄い人であるら
しいという噂も無きにしもあらずという話も」
長:
「独立行政法人化で予算が減ってるんだから2 、そろそろ本当の姿を見せ
てくださいよ」
真田和也(助手)
湯:
「6 次元テクノロジー (ツッコミ不可) という人知を越えた技術で俺達を
救ってくれる知恵袋。嫁と別れろ∼(怨念)」
長:
「凄い兵器をつくってくれるけど、絶対どこかでボケてるんだよな」
湯川秀男(B7)
湯:
「俺様だ。学祭も終わったので、あとは教養部のドイツ語に専念だ。今
年こそ卒業するぞぉ」
1 「コータローまかりとおる!」ってもう20年を余裕で越えてるのね
2 三万円で何を研究しろと……
1
長:
「法則:準備期間の長さにかかわらず、実際の勉強時間は不変である3 」
朝永振一(D1)
湯:
「俺様の中学以来のクールな相棒だ。今回も女装癖にますます磨きが」
長:
「ナルシィでロリィという犯罪者予備軍なのに、普段は一般人のふりを
しているのが許せません」
江崎玲奈(D1)
湯:
「からかいがいのある女王様だが、最近は論文でテンパっているらしい。
まるで更年期障……」
長:
「それ言うと、ハリセンじゃなくグーで殴られますよ」
長岡半太(M1)
湯:
「なぜ神はこの濃いキングオブオタクに、平均以上の……いや上から数
えたほうがいいくらいのルックスを与えたのだろう」
長:
「僕が喋ると、なぜか女の子が逃げていくんです。どうしてでしょう?」
南部陽子(B4)
湯:
「最近、春先の破壊魔っぷりがおさまって、非常におとなしいな。毒電
波受信アンテナが壊れたか?」
長:
「今は卒論でテンパっているので、そっとしてあげて下さい」
統一物理協会
湯:
「俺様の敵。車椅子の天才・ホウ教授が主催する悪の秘密結社。全世界
の物理学会を自分たちの物にしようとたくらんでいるそうな」
長:
「「ホウ教授、宇宙を騙る」「ホウ教授、未来を騙る」の印税が協会の活
動費にまわっています」
ボース
湯:
「んで、今回の最強の敵。どっちが勝つんだ?」
長:
「白いほうが勝つわ」
素子=ジョゼフソン
湯:
「京都工作員でなぜか俺の下宿の隣に住む」
長:
「実は腐女子4 。僕の秘密資料で買収しましょう」
湯:
「最後に、良い子のみんなに注意したい。この話に本気で科学的考証を
持ちだしてはいけないよ!」
長:
「良い子の約束だお!」
3 だいたい締切間際になってから始めるもんだ。
4 ホモネタに走る女オタク限定の言葉かと思っていたら、そうじゃないっぽいね
2
オタクの境界はどこにある
1
1.1
学園祭も終わり12月になる。
京都理科大学の大学構内は木々の葉が落ち、夏とはかわった雰囲気を醸しだ
していた。
駐車場の落葉をかきあつめてゲリラ的に焼き芋をする学生と、火元には敏感
な大学当局とで争いがおこるのも、この時期ならではの微笑ましい年中行事で
あった5 。
この時期の学生は、堕落する者はとことんまで堕落する。中間報告・論文・
学会といったイベントを前にしていない者の中には、
「どうせ来年からやればいいや」
という魔法の合言葉でもって、自らの行動力を低下させる人もいる。
そういう人は、年末までのらりくらりと仕事をかわし、ただひたすらに仕事
納めを待つ日々を送るのであった。
斉藤研究室では、B7の湯川とM1の長岡が、そのたぐいの人間であった。
湯川はとうの昔に卒論はクリアしているし(残している単位は教養部のドイツ
語)、長岡は学会とは当分縁がなかった。
ここ数日長岡は毎日学校に来て机に向かっている。しかし、研究をやってい
るというわけではない。
彼が必死になっているのは、冬の聖地巡礼に向けての執筆活動であった。
机のまわりにうず高く本を積みあげ、いわばポテンシャルの壁をつくって他
人の視線を避けていた。あるいは、長岡がポテンシャル井戸の中の粒子といっ
たところか。
ふと、執筆に煮詰まった6 長岡は、学生の談話スペースへと雑談にやってきた。
栄養ドリンクと風邪薬とスポーツ飲料を抱えていた。最近の執筆活動のため
に、体調が悪いらしい。顔はやや赤く、ときおり咳こんだ。
談話室では、これまた研究をしていない湯川が携帯ゲームで遊んでいた。
「長岡ぁ、なんでお前は大学で描くかな。体調悪いのなら家でやれよ家で。
参考資料もあるだろうし」
湯川は自分だって携帯ゲームなら家でできることを棚に上げて言った。
長岡はカコナールで生薬臭くなった口で答えた。
5 一番強い公権力はどこか?意外や意外、消防は消火と人命のためにかなり大胆なことができる
6 作業が先に進まないことの意味なのだが、もともとは「物事の結論が出る直前の状態」のことである。意味が正
反対なので、ちょっと気をつけなければならない
3
「その資料があるからですよ。同人執筆の前に、ネタを確認しようとしてD
VDを見出したら、つい勢いで朝まで見入ってしまってですね」
「で、話に夢中でネタを拾うのを忘れるのな」
「それに、家では家でしか描けないものを描いていますから」
どうやら家はエロ同人7 のための秘密基地になっているようだった。
1.2
そんな中、玲奈がカツカツとハイヒールを鳴らしてやってきた。
談話スペースの片隅にある、欲求不満解消用パンチング人形8「○○くん (名
前は使用者が私怨に基づき勝手に決める)」を、おもむろにげしげしと殴り出
した。
「何が『不採用』じゃぁ∼。査読の奴、ちゃんと読んでないじゃんかー」
どうやら、先日に投稿した論文がリジェクトをくらったらしい。
論文は投稿されたあと審査にまわる。これを査読と言い、だいたいは似たよ
うな研究をやっている研究者に依頼される。
論文投稿者と査読者はお互いが分からないようになっているが、査読者は論
文を見ることで、論文投稿者は査読コメントを見ることで、だいたい誰だか分
かってしまう……じゃあ匿名の意味ないじゃん。
その査読は、フェアに審査されるべきものであるが、時としてライバル意識
丸出しの意地悪な意見や、こちらの主張を理解するそぶりも見せない意見が
帰ってきて、箸にも棒にもひっかからないこともあるのだった。
玲奈は心の中で、パンチング人形を「査読くん」と命名する。
ものすごい勢いで拳骨のラッシュをあびせた。
今の彼女なら、ペガサス流星拳が打てそうだった。
それを見ている湯川と長岡は、キレた玲奈を「更年期」や「かんの虫」と冷
やかす余裕はなかった。
せいぜい、
「顔はやめな」
「ボディだよボディ」
と、3年B組のスケバン女生徒のようなセリフで茶々を入れて、研究室に逃
げ帰るしかなかった。
7 「戌年コミック」ってネタ、今年使ってる人が絶対にいるだろうな。
8 学生時代、安物を買って研究室に置いたはいいが、一週間で使いものにならなくなった。安物だったからか、み
んな溜まっていたからか……
4
玲奈はひとり部屋に残り、「査読くん」を殴りつづけた。
いつも玲奈のやつあたり先となっている被害担当係の朝永は、最近は夕方に
なると急にいなくなっていた。それが玲奈の鬱憤を増大させていた。
一時間後、「査読くん」は空気が抜けてその生涯を終えた。
ハイヒールに踏まれたことによる穴が死因だった。
その日の夕方、玲奈のストレス発散を助けるために……というかそれを理由
として……宴会がはじまった。
研究室での宴会は、近所のコンビニに行ってイナゴのように買いあさり、ピ
ザ屋や寿司屋の配達を頼むのが常であった。
帰り際の斉藤教授がふと宴会に立ちより、落ちこんで暴れている玲奈を見
舞った。
「んまぁ、何をすればいいのかが分かったということは良いことじゃないか
ね?論文を出さなければ批判はされないけど、それだと改善も進歩もありえん
わけじゃし」
教授が教授らしいアドバイスをした。
学生たちは驚いた。
「こ、これが年に一回しか見られないという教授のスーパーモードか」
「めずらしいものを見てしまった。なんまいだぶなんまいだぶ」
「くそぅ、クリスマスの前に今年の運を使い果たしてしまった」
学生たちは教授を尊敬しなおした
— ビーフジャーキーがなくなっていることに気づくまでの5分間。
1.3
長岡は体調が悪いことと、原稿を進める必要があったために、宴会はそこそ
こに切りあげて、自分の机に向かっていた。
隣では湯川がネタ検索&供給要員としてアシスタントをしている。
目の前には、さきほどの宴会で買ってきたペットボトルについていたおまけ
フィギュアが並んでいる。
「この手のフィギュアとかグッズとかを集めていてもオタク扱いされるとは
限らないんですよね。ルパンフィギュアとか北斗の拳フィギュアとかガンプラ
とかを集めてもそれは変な目で見られないのに、どこかからオタク扱いされ
る。そのボーダーラインはいったいどこ?」
5
確かに、非ヲタ世間に許容されるコレクションとそうでないコレクションと
いうものがある。
しばらく二人は原稿を離れ、それについて話した。
世間的に許容されるためには、まずなによりもメジャーであることが大事だ。
ガンダムのプラモデルは許されるだろう。しかしこれがガルダンとかガンガ
ル9 とかになってくると、さすがにマニアックすぎる。
では、ただメジャーであれば良いのだろうか?
いい歳したお兄ちゃんが「ムシキング10 」のカードを持っていても非難はさ
れない。ポケモンカードやら遊戯王やらギャザやらのカードも、問題ないだろ
う。しかしこれが「オサレ魔女ラブ&ベリー11 」になると、さすがにアウトだ
ろう。近くで幼女や少女の監禁事件があったら、疑われかねない。
どうやら、商品には「それを持っているにふさわしい」と思われる年齢と性
別があり、年齢は多少外れてもよいが、性別には厳しいという傾向がありそう
だった。
湯川の考察に長岡は納得しなかった。
「『切手を集めています』を言ったところで郵政ヲタクとは思われず、それど
ころか典雅な趣味として受けいれられるけど、『切符を集めています』を言っ
たら鉄分が多いと思われる。なぜだー!」
そのあと二人は、あれはどうだ、これはどうだ、いやプリキュアの対象は男
子大学生も含まれるから問題がないだの、夜遅くまで議論した。
原稿は全く進まなかった。
そもそも、あるグッズが世間で認められるかどうかは、グッズそのものの属
性ではなく、それを持っている人の属性で決められるものなのかもしれない。
9 ガルダンもガンガルもガンダムのパチモンプラモデル。後者については「ケロロ軍曹」でネタにされている。ウェ
ブで検索するよろし
10 どうでもいいが、カブトムシの絵が描いてある「ムシキングカレー」のデザインはもうすこしどうにかならなかっ
たのだろうか。
11 ムシキング系ゲームの女の子向け版。カードを使って音ゲーやってキャラをオサレに着せかえて育てるってな感
じ。ダンスシーンがなぜかローアングルだったりパンチラがあったりするらしいが、設定やアイテムは決して男に媚
びた設定ではないので(というか男向けならもっとあざとく作る)、ちゃんと女の子向けにつくっているのだろう。
6
フレンチメイドはメイドと認めない!
2
2.1
一方、統一物理協会の東京支部 in 台場。
秘密基地では、ボースとモトコと戦闘員たちが、決戦に向けての会議を開い
ていた。彼らには次の失敗は許されなかった。
はじめに作戦を口にしたのは、独特の輝かしさをもった(口語訳:ケバい)
衣裳に包まれたモトコであった。
「子供の頃、アニメを見ていて思ったんだけど、どうして悪の勢力って、一
度やって途中まで上手くいきかけた作戦を、二度としないんだろう。」
「それは、『上手くいきかけた』だけであって『上手くいった』ではないか
らな」
「それでも、ニセ者陽動作戦12 とか、ロボットの合体中の攻撃とか、秘密研
究所のバリアを発生装置ごと破壊する13 とか、その手の作戦は何度でもやれば
いいじゃない。」
モトコはあきらめずに言った。
ボースは戦闘員に指示して、自分たちが日本に着いてからのファインマン
チームとの戦いを整理させた。
1)
2)
3)
4)
京都に直接出向いて戦闘
スパイを潜入させる
旅行先で偶然出会う
メンバーを誘拐して他の面子をおびきだす
一同は頭をかかえた。
「使えねぇ……」
部屋は息苦しいものとなった。世界征服気分にひたるためのドライアイスの
煙が、いっそうその苦しさをひきたてていた。
沈黙の中、突然にモトコの眼鏡が光った。
「そうだ、逆転ホームラン!ぜーんぶひっくるめて、
『京都にて、スパイから
の情報を元に、メンバーに偶然出会ったふりをして、誘拐!』これでどうよ!?」
……あんたそれ、そのまんまやがな。
ちょうどそのとき、通信が入った。
12 視聴者にはニセ者だと分かるような作画になっていて、とっても親切
13 バリア発生装置はバリアの外にあるので、外から壊すことができる
7
原色がぺこぺこと光っていたモニターに画像が映しだされた。
モニターの先は、諜報部のディラックの部下である坂田だった。彼は今、ス
パイとして斉藤研究室に出入りしている — 全く役立たずだが。
「メンバーを誘い出すのに良いところを見つけた」
その言葉とともに、モニター脇のアナクロなファックスから紙が出てきた。
ボースとモトコはその紙を奪いとった。
エプロンをつけた女の子の写真が写っていた。流行りのメイド喫茶の広告で
あった。
坂田は続けた。
「あのメンバーの中に、イケメンだけどやたら濃い奴がいるのは御存知かと。
そいつをおびきよせる罠として、そのメイド喫茶を使えないか?」
と、割引チケットを片手にひらひらさせた。
ボースは頭をかかえた。今は亡き相棒のフェルミならまだしも、肉体派であ
る彼にとって、「めーど喫茶」などいう軽薄な場所を使いたくはなかった。漢
が戦う場所は、夕日の海岸か採石場と相場は決まっている。
一方、モトコはそのコスチュームに興味をもった。彼女は、美的感覚が他の
追随を許さないほど個性的(口語訳:おかしい)ではあったものの、服の可愛
さは理解できていた。
「よーし、そこで『メンバーに偶然出会ったふりをして、誘拐!』これでど
うよ!?」
モトコはさきほどの自分の提案を復唱した。
結局、坂田の役割は長岡をメイド喫茶へと誘うこと、モトコはそこで薬を使っ
て眠らせて拉致すること、となった。
ボースはこの案に否定的であったが、かといって禁止するわけにもいかず、
モトコに自分の荷物箱から超物理アイテムを渡して作戦の成功を祈った。
2.2
翌日、坂田は長岡にチケットを見せた。
「これ貰ったんだけど、行ってみたらどう?」
と誘ってみた。チケットは5人分、つまり5枚あった。
長岡は乗り気でなかった。風邪はいっこうに治らず、原稿は進まず、かなり
深刻な状況にあった。
チケットを押しつけあっているふたりを、湯川はめざとく見つけた。
8
「ほほう、これが噂に名高きメイド喫茶」
湯川はお祭り男である。とりあえず流行りものはおさえておきたかった。
「長岡くん、たまには息抜きもどうかな」
と、説得してみた。
すぐ隣で卒論シミュレーション中の陽子がチケットに気づいた。チケットを
見るなり、
「あ、ここであたしバイトしてるんですよ。へへー」
と言った。
皆は驚いた — あの破壊魔の陽子がバイトできるとはいったい!
?
長岡にスイッチが入った。
「一度でいいから見てみたい コケずに給仕をするところ 歌丸です」
長岡は、陽子がどのようなトラブルをかまし、店がどのように対処し、客が
どのように反応するか見たかった……それは執筆のネタになる。今の長岡の行
動原理は、全て執筆活動のためにあった。
話は決まった。5枚のチケットは、まず長岡と湯川がとった。
意外にも玲奈が行きたがった。
「どういう客が来るのか見てみたいわ」
……性格の悪い女だった。
湯川は朝永を誘ってみたが、朝永はここ最近の夕方にバイトを入れていたた
め、断わった。
チケットは二枚あまった。湯川は「面白そうだから」と、真田夫妻を誘った。
2.3
ある日の夕方、5人は件のメイド喫茶へと向かった。
「おかえりなさいませ」という挨拶も「ご主人さま」
「お嬢様」という敬称も、
(あぁこれで給料もらっているんだろうな)
などとシニカルなことを考えはじめたら、萎えるものだった。
テーブルにつくと、ひとりの美少女メイドがやってきた。
「私、シンディと申します。よろしくおねがいいたします。どうかなんなり
とお申しつけ下さいませ」
どこかで見たような美少女は、どこかで聴いたような作った女声だった。
湯川と長岡と玲奈は、メニューを見るふりをして、対策会議に入った。
「おい、どうする?」
9
「振一 → シンイチ → シンディ → (笑)」
「そもそもメイドならいじってもらえる、って考えが大間違いよね」
「そうだ。甘やかしたらいけない。放置だ放置」
「「了解」」
とりあえず何事も見ていないかのように、オーダーすることにした。
皆はメニューをみて頭痛がした。値段が……セレブな気分にひたれる価格設
定だった。とりあえず一番安いアイスコーヒーを頼んだ。
頼んだものが来るまでの時間、皆はそれぞれの時間をすごした。
真田夫妻は店の雰囲気とは関係なく自分たちの世界に入っている。だいたい
メイド喫茶でデートするカップルなんてい……るな、絶対。
玲奈は、ひととおり客とメイドをウォッチしたあと、
「長岡くん、こういうところはどう思う?」
とオタク長岡の感想を聞いてみた。
長岡はよほど体調が悪いのか、機嫌悪そうに答えた。
「ここにいるのはメイドさんじゃなくってウェイトレスさんですよ。紺色系
統の長袖の以外はメイド服として認めません。ストッキングじゃなくてニー
ソックスなのも、メイドさんの様式美を分かってない14 」
長岡はメイドに一家言あった。
玲奈は、長岡をいつものように独白モードに励起してしまったと後悔したが、
長岡はよほど体調が悪かったのだろう、すぐに黙りこくってしまった。
2.4
その店にモトコもいた。数日前から従業員として潜りこんでいた。
彼女は化粧をしないことがそのまま変装になる。普段とは違う純朴な雰囲気
を醸しだしていた。
彼女の目的は、湯川たちを眠らせることである。通りがかったツインテイル
の小娘メイドをつかまえて、
「はい、これをあの人たちに持ってらっしゃい」
と、あらかじめ粉薬を盛ってある飲み物を持っていかせた。
渡した相手が悪かった。
ここでバイトとして働いていた陽子だった。陽子は段差のないタイルのすき
まにつまずき、顔から転んだ。
14 ストッキングをガードルで吊るのが耽美。たまにメイド萌え漫画で、ガードルが下着の上にあるんだが、がっか
りだよ。
10
客からは、
「ドジっ娘属性だ!15 」
「これぞメイドさん」
という喜びにも似たささやきが聞こえていた。
斉藤研究室の面々は、このような陽子は観なれたものであった。
「やはりやらかしましたな」
「あら、グラスが割れてないわねぇ」
「そんなこともあろうかとプラスチックの容器にしているのだろう」
と冷静だった。
一方、まぬけな形で作戦が失敗したモトコは舌打ちした。
すぐにもういちど薬を盛ろうと考えた。
しかしその前に女装朝永がやってきて、さっさと給仕してしまった。モトコ
の薬作戦は、実行のチャンスを失った。
そのときモトコは脳内に電気が走った。
「そうだ、逆転ホームラン!みんなまとめて眠らせてしまえばいいんだわ」
脳内に走ったのは電気ではなく電波だったのかもしれない。
そのとき陽子がまたころんだ。モトコがまきこまれた。薬包紙が手から離れ、
包みは空中で展開し、緑の粉が床に散乱した。3秒ルールはもはや適用不可能
だった。
モトコは床に手をついて嘆いた。絵で描けば orz
(この小娘。一度ならずとも二度までも……)
まわりから誰も邪魔されないところで、自分の力でなんとかするしかないと
いう考えに至った。
(こうなったらボース様からいただいた、アレを使うしかないわ)
含み笑いを浮かべて、湯川たちが店を出るときを待つことにした。
15 これは二次元や創作の世界だから可愛いのであって、現実にいたら絶対に苛立つと思う
11
3
焚型の交わり
3.1
湯川たちが店を出ると同時にモトコは動いた。
手にはインスタントカメラを握っていた。それはボースからもらった超物理
兵器 — 次元縮退カメラであった。
「写真撮影」と称して湯川たちを並ばせた。
長岡は今にも倒れそうで早く帰りたかったが、お約束には逆らえず、一枚だ
けならと許諾した。
「はぁーい、取りますわよー」
モトコは心底嬉しそうに、猫撫で声をあげた。ケータイを掲げて被写体を、
狙いを定めた。
(これで昇進、そして幹部よ。ほほほのほ)
シャッターを押した瞬間、カメラから高周波が鳴り、まばゆい光が放たれた。
そのとき、自分たちの変身用ケータイについているセンサーが警告音を発
した。
(これは普通のカメラじゃない)
皆は瞬時にそう思った。機械が発動するまでのわずかの間に、飛ぶようにそ
の場を逃げようとした。
ただ、長岡だけは風邪と疲れから反射神経が鈍っていた。
モトコのカメラから稲妻が走り、逃げ遅れた……逃げることすら考えつかな
かった長岡の体を包んだ。
光がおさまったあと、長岡はそこから忽然と姿を消していた。
店の中にいる女装朝永も陽子も変身用ケータイを持っている。ふたりも警告
音を不審に思い、店外に出てきた。
皆の目の前には、モトコが高笑いをしている。いつのまにかメイド服からい
つものキンピカコスチュームとなっていた。
モトコはカメラから出てきた印画紙を手にとり、黒い剥離紙をはがした。
「さぁて、ここに人質ができましたよ」
モトコは印画紙を見せつけた。そこには長岡が倒れているのが見えた。
「あ、あれはまさしく次元縮退カメラ!」
「何、知っているのか朝永……じゃない……シンディちゃん」
「うみゅ。空間をボース縮退させるボース縮退瓢箪16 。それはゼロ次元に向
16 6巻のネタ。西遊記の金角銀角がもっている瓢箪がモチーフですな
12
かって物質を縮退させるものだった。これもそれと同じ原理で、二次元方向に
異方性をかけながら縮退させるものだ……でございます、ご主人さま」
シンディは博識だった。かつて文明開化のときに、「魂を抜かれる」という
噂がたち、今なお「真ん中にいると死ぬ」と言われる、その原因となったカメ
ラがこれである — と言った。
3.2
湯川は下宿に帰り、押し入れから隣のモトコの部屋へと押し入った。
モトコはあたふたと机の上に散乱したものを隠すと、
「ここにいるあいだは停戦でしょう」
と言った。
湯川は「それは守る」と言って、長岡の様子を聞いた。
モトコは湯川を信じ、長岡を写った写真を見せた。
写真の中で長岡は寝ていた。さっきと違う格好をしているから、生きている
だろうことは予想できた。
「おーい、長岡生きてるか?」
と写真を振って声をかけた。
長岡は目をさまして応えた。写真に閉じこめられているだけで、光も音も通
じるようだった。
長岡は生きているあいだに、伝えたいことを言った。いわば遺言に近かった。
「湯川さん。僕の親は僕のヲタク生活を知らないんです。親が来る前に部屋
を片づけておいてください。ベッドの下のダンボールに入っている同人誌と、
床に散乱するマンガの山と、棚に陳列したフィギュアのコレクションと、ビデ
オの上に置いたDVDと、PCの横においたエロゲーと。あ、そうそう、PC
は湯川さんで接収してください。エロゲーは好きにしていいですが、でもでも
セーブデータの場所とその画像から俺の好きなシチュエーションを想像するの
はやめてくださいね。お願いですよ。それからそれから —」
湯川はあきれはてて、聞いているふりだけした。
モトコは苦笑いしてカップラーメンを二つとりだし、お湯を注いだ。
カップラーメンができあがった頃に、
「 — ということで、宜しくお願いしますよ」
と、長岡のセリフは終わった。
湯川は「はいはい」と生返事を返した。
長岡は湯川を試した。
13
「湯川さん、僕いま何て言いましたか?」
その問いに、湯川は歯を輝かせて爽やかな笑顔で答えた。
「そんなの決まってるだろ。
『何て言いましたか?』って言ったのをちゃんと
覚えてるさ」
かくして、長岡は再び遺言の独白をはじめるのであった。
湯川は単純にまとめた。
「ようするにだ。教科書などの学術に関係したものだけ残して、あとは親御
さんに見えないようにして、ヤフオクで転売するなり焼却処分しとけば言いん
だろ」
古来、お互いの首を切られてもよいという深い仲を「刎頚の交わり」と言う。
今のオタクの間に必要なものは、自分に不幸があったときにフィギュアを処
分する友かもしれない。
3.3
湯川がここにきた目的は、長岡と話すためだけではなかった。
長岡の処遇について、モトコと交渉するためであった。
モトコは、
「そりゃ決まってるでしょ。こうハサミでばっさり」
と、長岡を亡きものにすることを示唆した。
湯川にとっては、それは避けなければならなかった。なんとかしてモトコを
懐柔し、長岡を生かすように考えを変えさせなければならなかった。
「待て、待つんだ」
と、ハッタリによる説得を始めた。
「この長岡は、ミラーマン17 の父親のごとく二次元だ。」
「そりゃ、見て分かるわよ」
「二次元のポーズの、良いデッサンモデルになると思わないか?」
モトコはすぐに湯川の言葉を理解した。しかしシラを切って黙っていた。
湯川の説得は続く。
「君は今、冬の祭典に向けて同人誌を描いている。その机の上が証拠さ」
「な、何もないわよ。これはヌードデッサンの勉強。私はゲージュツ家なの」
無理のある言い訳をしてシラを切りつづけた。
「じゃあ、一般人チェッククイズをしよう。問題は三問だ」
17 昔の特撮で、二次元の父と三次元の母をもつという設定。でも今となってはミラーマンという言葉を聞くと、経
済学者の植草センセの代名詞だよなぁ
14
湯川はモトコを試すことにした。
「第一問、『攻め』の反対は?」
「受け!」
「普通は『守り』だ。じゃあ第二問。女同士の同性愛は百合、男同士の同性
愛は?」
「そんなのヤオイに決まってるでしょ」
「百合とくれば『薔薇』だろ。さて第三問。かけ算記号は交換可能18 ?」
「できるわけないでしょ。逆になったら攻守が逆になるでしょ。それで喧嘩
することもあるんだから」
「そりゃ外積演算子かカップリング記号19 だ……どうみても腐女子です。あ
りがとうございました」
モトコは屈伏した。
「そうよ、こいつは二次元のデッサンにちょうどいいって思ってたわよ。だ
から切るのも本当は嫌なのよ。せめて描きおわるまではここにいて、私の命令
どおりのポーズをとらせたいとおもっているわよ」
煩悩のままに語った。
湯川は満足した。
「よし!人間は正直なのがいいぞ」
と言って、写真の中の長岡に声をかけた。
「ということで、お前は生きたかったら、何でも言うことを聞くように」
「何でも?」
「そう、あんなことやこんなこと」
長岡は絶望した。しかしモトコの言うことを聞くしかなかった。
モトコはすでに、あんなことやこんなことの内容を頭に浮かべて、写真を手
にとって、長岡を見つめてにやにやと笑っていた。
湯川は、モトコが写真に気をとられているすきに、こっそりとモトコの使っ
ていたインスタントカメラを奪った。
(攻撃したわけじゃないから、停戦協定は守っているよな。うーん俺って紳士)
紳士はとても腹黒だった。
18 アーベル群というやつですな
19 「カップリングの記号は外積だ」と考えると、腐女子のあなたもちょっとだけ数学のベクトルが好きになれます
15
4
ボースの最期
4.1
ボースは人質を餌にして決闘を申しでた。
場所は比叡山の中腹。ボースが好む採石場ではなかったが、中途半端に開発
されて山肌があらわとなっている雰囲気は採石場に似ていた。
今は12月である。気温はとても寒かった。
朝永と真田の車に便乗してその場所へと行く。
ボースと戦闘員たちはすでに待っていた。—ちなみに、モトコは人体玩具の
長岡を片手に楽しい執筆活動中だった。
あたりはうす暗くなり、物理兵器が超常の力を発揮する26次元の戦闘空間
へと入ってゆく。
今日はめずらしく玲奈も戦闘服に身を包んでいた。
「姐さん、何があったんですか?いつもはいろいろ理由をつけて、着なかっ
たのに」
と、赤い服の湯川が言った。
「あたしだって暴れたいときがある」
玲奈はまだ論文がリジェクトされた鬱憤がたまっていた。
その玲奈の力は、ザコ戦闘員に発揮された。ハリセンがうなり、ほとんどひ
とりで倒したのではないかと錯覚するほど活躍した。
残りの三人は、一息ついていた。
「楽でいいなぁ」
「れーなさん本当は強いんですねぇ」
「次も論文がリジェクトされてくれないかなぁ」
一部、不謹慎な発言があった。
残るはボースだけとなった。
ボースの体が震えたかと思うと、溶けた。溶液は変幻自在にその輪郭を変
えた。
湯川は武器であるバールのようなもの20 で殴った。
ボースの輪郭は固く、湯川の打撃を激しい音とともに受けとめた。すぐに柔
らかくなり粘性を増し、湯川の腕ごとバールのようなものを包んだ。
20 ニュースとかで「バール」と断言していると、少し嬉しくなるのは著者だけだろうか
16
腕がボースの胎内に入った瞬間、湯川は違和感を覚えた。すぐに力づくで逃
げた。腕の先は鈍い光を放ち、その部分の装甲は微妙に薄れていた。
残されたバールのようなものは、しばらくして光とともに消えていった。そ
れはあたかも食べられて消化されるようだった。
ボースの状態は、これまで見てきたただの超流動ではなかった。ときに固く、
ときに流れた。そして全てを包み、光に溶かした。
「さぁ、みんな縮退してしまいなさい。エネルギーもスピンも全てが同じ、
平等の世界へ」
ボースの人類補完計画から、皆は必死で逃げた。
4.2
知恵袋の真田のところに走った。
「こんなこともあろうかと、朝永君の車に空間4回微積分ガトリング砲を搭
載しておいたよ」
「な、なんだってー」
三角関数を4回微積分すると、係数の部分だけが大きくあるいは小さくなっ
た元の関数となる。空間4回微積分ガトリング砲は、その原理を応用したも
ので21 、物体を拡大縮小することができる。しかもガトリングなので連発可能
だった。
朝永はふたつ質問があった。まずひとつめの質問をする。
「どこにそれを隠しておいたのですか?」
「新しい機能を追加したときに、それが目に見えて邪魔になるようでは、技
術者として失格です」
真田は得意気に答えた。
皆は一瞬、(どの口が言うんだどの口が)と、心の左手がシンクロツッコミ
していた。
朝永は茶々を入れることなく、つぎの質問をした。
「小さくしたところで、勝てるとは限りません。先延ばしになるだけです」
それに対する答は、湯川からだった。
「俺様にまかせな。俺様が苦労して手に入れた。コレが役にたつぜ」
モトコから無断で借りた、次元縮退カメラであった。
ボースは近づきつつある。
21 そういう設定なんだから悩んじゃだめだお
17
朝永は車に乗りこみ、適当な位置へとまわりこんだ。
いつのまにか運転席に着けられていた花まるボタンを押すと、屋根からは空
間4回微積分ガトリング砲が出現した。
湯川がハコ乗りとなり、砲のトリガーに手をかけた。
虹色の光が無数に放たれた。光はボースに集中し、加速度的にボースは小さ
くなっていった。
「これならば被写体に入るぜ」
湯川は次元縮退カメラを掲げ、ボースの最期を記念撮影した。
ボースは写真の中で、二次元の中で留まることになった。
始めのうちは暴れていたが、そのうちあきらめたのか、石のように動かなく
なった。
4.3
26次元が消え、青い空が広がった。
皆も変身を解いて、研究室へと戻った。
長岡はまだ写真に入ったままだった。
ボースがいなくなると同時に、長岡が戻るのかと思っていたが、ボースは死
んではいないし、そもそももとからそんな保証はなかった。
こうなると真田の出番だった。真田は朝永を助手として、長岡救出作業を始
めた。
「3次元から2次元に変換するテンソルの逆テンソルをかけてやればいいさ」
「しかし、逆テンソルが見つからなかったら」
「大丈夫。こんなこともあろうかと、長岡くんが変身したときのデータから、
彼の量子情報をひそかにバックアップしておいたよ。それを使えば戻せる」
朝永は
(それじゃクローンが作れるじゃん)
と思ったが、それを言うと真田がそちらも試してしまいそうだったので、黙々
と作業に従った。
数日ののち、長岡は3次元に戻ってきた。
やたらとやつれていた。
18
冬の巡礼間近
5
5.1
長岡はここ数日の遅れを取り戻すべく、懸命に執筆活動に入っていた。
「女って恐い」
長岡はすっかり腐女子恐怖症にかかっていた。
作中の女性描写が微妙に変わっていた。
長岡の風邪はまだ治らないでいた。
写真の中に全裸でいた時期が長かったせいか、余計ひどくなっていた。
玲奈は絶え間ない咳の音に苛だっていた。
「長岡くん、帰ったら?」
と言った。
長岡はマイペースだ。
「玲奈姐さんに暖かい言葉を貰えるとは嬉しいなぁ」
「いやね。あたしに移すなって言ってるだけ。あたしの邪魔をするなって言っ
てるだけ。別に長岡くんのことを心配しているわけじゃないんだからね!」
今の長岡の思考回路は、全て執筆活動のためにあった。
「何そのツンデレ」
ハリセンが同人脳に叩きつけられる、乾いた音が響いた。
5.2
ボース軍団が壊滅したことで、学生たちは平和な正月を迎えることとなった。
しかし、まだ統一物理協会の野望は潰えてはいない。
総合人間・環境学科の織田先生は、白い大仏の姿となって、戦士の安寧の日々
を祈っていた。
19
6
ゲージの話
真田: ボソンにまつわる話で、ゲージの話をします。
長岡: 先生質問です。”Sausage” は”sau” が「ソー」なのに、
: どうして “Gauge” は「ゴージ」じゃなくて「ゲージ」なんですか?
朝永: 英語に対して、綴り字と発音の違いをツッコむのは無駄かと。
真田: さて、現在の物理学では4種類の力があるといわれています。
:「重力」「電磁力」「強い力」「弱い力」の4つです。
長岡: そういえば最近「第五の力」ってネタが静かですね。
湯川: トンデモとしてもSFとしても使い古されていますからねぇ。
真田: 引力や斥力がはたらくことを「相互作用する」と難しく言いますが
: その相互作用を媒介する粒子のことをゲージ粒子と呼びます。
: まず重力のゲージ粒子が「重力子(グラビトン)」。
長岡: 油断すると動子って読めちゃうんだよな。
朝永: そりゃお前の字が汚いからだ。マリリン=マンソンって書いてみそ。
湯川: んで、電磁力のゲージ粒子が「光子(フォトン)」。
: 以上のふたつのゲージ粒子は質量がゼロであり、作用は無限遠まで。
朝永: 強い力のゲージ粒子がグルーオン。膠着子という言葉があるけど、
: あまり使われないみたい。質量があって、10−12 ミリまで届く。
: こいつのおかげで、電荷が正である原子核が分裂しないわけだ。
真田: 最後が、素粒子の間にはたらく弱い力を担う「ウィークボソン」。
: 電荷のあるものがWボソンで、電荷のないものがZボソン。
: これも質量があって、到達範囲は 10−15 ミリ。
: ここで問題。4つの相互作用のうち、一番強いものと弱いものは何。
長岡: 一番強いのは強い力で、一番弱いのは重力。
真田: はい。重力が意外に弱いという話は、ファインマン物理学の教科書
: にも書いてありますね。さて、この4つの力は宇宙ができたときは
: ひとつだったと考えられてますね。
朝永: それが素粒子物理学の目的のひとつであって、いい歳した大人が
: ああでもないこうでもないと仲良く喧嘩しているわけです。
長岡: ゴレンジャーにまかせればいいんだよ。
: いつつのちか∼らを∼ひとつにあわ∼せて∼♪
湯川: オープニングで終わるってのもなんだかなー。
20
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