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移動する皮疹、嚥下困難を主訴に 来院し

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移動する皮疹、嚥下困難を主訴に 来院し
一般演題【症例報告 20(不明熱)】
O-091
一般演題【症例報告 21(膠原病・自己炎症)】O-092
一般演題【症例報告 21(膠原病・自己炎症)】O-093
一般演題【症例報告 21(膠原病・自己炎症)】O-094
大動脈炎、脳症により再燃した
ベーチェット病の一例
結節性強膜炎を呈した
ベーチェット病の一例
無症候性の中大脳動脈閉塞を伴った
血管 Behçet 病の一例
移動する皮疹、嚥下困難を主訴に
来院し、診断に難渋した不明熱の一例
1)
【症例】77 歳、男性
【主訴】発熱、嚥下困難、移動する皮疹
【現病歴】2015 年 7 月より 38 度台の発熱、嚥下困
難、皮疹が出現し、7 月 31 日に他院に入院した。
皮疹は、浸潤を伴う淡紅色斑で、頚部と両腕を移
動した。血液、尿、痰培養は陰性であった。気管
支 炎 の 疑 い で、LVFX、TAZ-PIPC、CLDM を 投
与されたが改善せず、リケッチアの疑いで AZM、
MINO を投与されたが改善しなかった。8 月 18 日
に、別の病院に転院した。ツツガムシ抗体、ASO、
ANCA、IgG4、腫瘍マーカーは陰性であった。皮
疹は、MRI で脂肪織炎が疑われ、CEZ を投与され
たが改善しなかった。皮膚生検では特異的な所見
はなかった。10 月 13 日に退院し、10 月 20 日に当
院初診となった。
【経過】体温 37.7 度。右側頚部、両手に浸潤を伴う
淡紅色斑を認めた。IgG4 と CH50 は軽度高値であっ
たが、抗核抗体、抗 SS-A 抗体、ANCA は陰性で、
膠原病は否定的であった。頚・胸・ 腹・骨盤造影
CT では、気管支炎を疑う所見と、中咽頭と頚部の
軟部組織の腫脹を認めた。WBC 5,500、CRP 9.1 で
あったが、KL-6、ベータDグルカン、アスペルギ
ルス抗原、MAC 抗体、クォンティフェロンは陰性
であり、血液培養陰性であったため、感染症は否
定的であった。CEA、CA19-9 は基準範囲内であ
り、CT でも明らかな腫瘍は認めなかった。嚥下困
難、中咽頭と頚部の軟部組織の腫脹について、耳
鼻科診察では器質的疾患を認めなかった。最終的
に、当院皮膚科にて、皮膚生検の所見より、皮下
脂肪織炎様 T 細胞リンパ腫と診断された。
【結語】不明熱、皮疹、嚥下困難を主訴に来院し、
診断に難渋したが、最終的に皮下脂肪織炎様 T 細
胞リンパ腫と診断された症例を経験した。
独立行政法人国立病院機構 高崎総合医療センター 総合
診療科・内科
◯村場麻衣子、佐藤正通、渡辺俊樹、合田 史
【症例】70 歳、女性
【主訴】意識障害、発熱
【現病歴】昭和 62 年ベーチェット病と診断され、
虹彩網様体炎により右眼失明に至っている。平成
22 年には寛解と判断され、高血圧、糖尿病につい
て内服治療が継続されていた。平成 27 年 9 月中旬
未明、うずくまっている本人を夫が発見。問いか
えるも意思疎通困難であり、次第に体動抑制困難
となり救急搬送となった。
【現症】受診時、起立は困難な状態で四肢を振り、
抵抗するしぐさを繰り返し、呼名にうなずくも指
示動作不能な状態であった。体温 37.8 度、右上肢
血 圧 162/58mmHg、 左 上 肢 134/60mmHg、GCS
E3V3M5 であった。頭部 MRI 検査では新規病変を
検出せず、髄液検査では単核球の出現、蛋白濃度
上昇を認めた。採血では白血球増多を伴う炎症反
応上昇あり、熱源精査目的で CT 検査を施行した
ところ、胸部上行大動脈から下行大動脈移行部に
かけて、全周性の壁肥厚、遅延濃染像あり大動脈
炎と診断した。
【経過】薬物的鎮静を開始後 NIPPV 装着。メチル
プレドニゾロン大量投与に続き、プレドニン服用
により治療を行った。動揺性精神症状はステロイ
ド治療により早期から改善に至り、全身状態は改
善し、炎症反応は陰性化した。
【考察】この度我々はベーチェット病寛解中に、急
性脳症及び、大動脈炎により再燃した一例を経験
した。再燃時においては口腔内病変、皮膚病変、
眼病変は認められず、ベーチェット病の既往や画
像所見より急性脳症随伴血管型ベーチェット病と
診断し、重症度分類 IV-V に相当すると判断しステ
ロイド剤による治療を開始。炎症所見は鎮静化し
経過は良好である。多くの同症患者は長期の経過
に伴い活動性が低下するため対症療法のみで観察
されることが多い。活動性低下した後にあっても、
本例にみられたように臓器障害を伴う重症型によ
り再燃する可能性があり、寛解後にあっても診療
継続の必要性を感じた症例であった。
−132−
1)
湘南鎌倉総合病院 総合内科/ 2)同 リウマチ科
◯新津敬之 1)、渡邊晋二 1)、西口 翔 1)、吉澤和希 2)、
北川 泉 1)
九州大学病院 総合診療科
◯武田倫子、崎山 優、山嵜 奨、平峯 智、林 武生、
志水元洋、迎 はる、豊田一弘、小川栄一、貝沼茂三郎、
村田昌之、古庄憲浩
【症例】29 歳、女性
【主訴】陰部痛
【既往歴】好酸球性血管浮腫、陰部カンジダ
【現病歴】約 10 年前から年に 3 回程度の発熱と年
に 4 回以上の口内炎で声が出なくなる事があった。
数年前より朝に増悪する手・肘・膝関節の痛みを
自覚した。入院 3 か月前より両眼に違和感を伴う
充血を認め、4 日前より陰部痛と発熱を伴った。
激しい陰部痛と咽頭痛で食事摂取困難となったた
め当院入院となった。
【入院時現症】眼瞼結膜は充血なく、両眼球結膜に
結節を伴う充血を認めた。咽頭に小アフタが集簇
し、両側脛骨前部に粟粒大の暗赤色丘疹が散在し
ていた。小陰唇に半小指頭大の潰瘍を認めた。
【検査結果】採血検査は、CRP 1.544mg/dl、梅毒・
アデノウイルス・単純ヘルペスウイルス・帯状疱
疹ウイルス各種抗体陰性、HLA-B51 陰性。針反応
陽性。下部消化管内視鏡検査は回盲部潰瘍を認め
た。
【経過】激しい疼痛を伴う結節性病変より、眼病
変は結節性強膜炎と合致した。外陰部潰瘍、再発
性口内炎、毛嚢様皮疹と合わせ、厚生労働省ベー
チェット病研究班診断基準の主要 4 項目を満たし
たため完全型ベーチェット病と診断に至った。コ
ルヒチン 1g/日の開始後、約 1 週間程度にて各症
状は軽快し、食事摂取も可能となった。
【考察】結節性強膜炎を伴う全身性疾患患者の約
70%は眼病変から原因精査をきっかけとして全身
性疾患の診断に至っていると報告がある。膠原病
では、関節リウマチ、多発血管炎性肉芽腫症、再
発性多発軟骨炎、全身性エリテマトーデスなどの
報告例を多数認めたが、ベーチェット病と関連し
た結節性強膜炎の文献報告は数例であった。本症
例は結節性強膜炎を呈した非常に稀なベーチェッ
ト病の一例で、多彩な症状から診断に時間を要し
た。
【結語】結節性強膜炎は全身疾患を示唆する所見で
あり、繰り返す口内炎や陰部痛の病歴を伴う場合
には、鑑別疾患としてベーチェット病を念頭に入
れる必要がある。
【緒言】血管 Behçet 病は、様々なサイズの静脈系・
動脈系に病変を生じ、動脈病変を有する場合、副
腎皮質ステロイドと免疫抑制剤の併用投与が治療
の主体である。今回、無症候性の中大脳動脈閉塞
を認めた血管 Behçet 病の一例を経験したので報告
する。
【症例】33 歳男性。X-15 年より難治性の口内炎を
繰り返していた。X-1 年 10 月より右下腿に発赤・
疼痛を伴う皮下硬結、両足関節痛が出現した。X
年 4 月に近医を受診し、下肢血栓性静脈炎・深部
静脈血栓症と診断され、ワルファリン・ロキソプ
ロフェンの内服を開始された。しかし病変は拡大
傾向であったため、精査加療目的で当科外来を紹
介受診し、8 月 3 日より入院となった。入院時所見;
BT 36.7℃、口腔内にアフタ性潰瘍あり、両下肢
の静脈に沿って発赤・疼痛・皮下硬結あり、両足
関節炎を認めた。眼科診察は異常なく、陰部潰瘍
も認めなかった。検査所見;WBC 6,250/μl、CRP
13.9mg/dl、 血 沈 23mm/hr、HLA-A26 (+)。 消 化
管内視鏡検査と頸部~骨盤部・下肢の造影 CT で
は異常所見はみられなかった。主症状として口腔
内アフタと皮膚症状(血栓性静脈炎)、副症状と
して関節炎と深部静脈血栓症を認め、不全型の血
管 Behçet 病と診断した。さらに脳血管病変の評価
を頭部 MRI 検査で行ったところ、右中大脳動脈閉
塞の合併が認められた。神経学的異常所見はなく、
SPECT 検査では血管バイパス術の適応となるよう
な血流低下は認められなかったが、血管病変進行
抑制のために、プレドニゾロン 35mg/日およびア
ザチオプリン 50mg/日の内服を開始した。
【結語】血管型 Behçet 病では静脈系・動脈系のい
ずれにも病変を生じうるため、無症状であっても
全身血管の画像評価が必要と考えられた。
−133−
一 般 演 題
一 般 演 題
群馬大学大学院医学系研究科 総合医療学 2) 医療法
人二之沢会 二之沢病院 3)社会医療法人輝城会 沼田ク
リニック 4)群馬大学大学院 保健学研究科
◯後藤耕作 1)、小和瀬桂子 1)、佐藤浩子 1)、佐藤真人 1)、
森田元穂 2)、橋本陽子 1)、金子尚子 3)、大山良雄 4)、
田村遵一 1)
一般演題【症例報告 22(膠原病・自己炎症)】O-095
一般演題【症例報告 22(膠原病・自己炎症)】O-096
Crowned dens syndrome の
臨床的検討
国立病院機構仙台医療センター 研修医/ 2)同 総合診
療科/ 3)同 血液内科 4)ゆうファミリークリニック
◯佐藤友里恵 1)、高橋広喜 2)、高野由美 2)、森 俊一 2)、
鈴木森香 2)、田所慶一 2)、伊藤俊広 3)、高橋裕一 4)
大阪市立大学 総合診療センター 総合医学教育学
◯衣畑成紀、梅田桜子、幕内安弥子、並川浩己、福本一夫、
小林正宜、甲斐沼成、豊田宏光、鎌田紀子、栩野吉弘、
竹本恭彦、森村美奈、首藤太一
岐阜市民病院 総合内科・リウマチ膠原病センター
◯安藤大樹、浅野元尋、北田善彦、藤岡 圭、石塚達夫
【症例】23 歳、女性
【主訴】発熱、咽頭痛、咳嗽
【既往歴】アトピー性皮膚炎
【現病歴】x 年 3 月頃から毎月約 1 週間続く高熱を
認めた。7 月末日に 39℃台の発熱と咽頭痛と咳嗽
を認め近医で抗菌薬やステロイドを投与されたが
改善なく 8 月初旬に当院で入院となった。
【 検 査 所 見 】WBC 12,500/μl(neu 78.5%)、CRP
13.3mg/dl、フェリチン 2,1464ng/ml、AST 118 IU/l、
ALT 40 IU/l、LDH 1,665 IU/l、RHF 陰性、抗核
抗体陰性
【入院後経過】ウイルス感染症を疑い経過を観察
したところ数日で解熱し血液検査上も改善を認
め、フェリチンも 2,172ng/ml に低下し初回入院 8
日目に退院した。退院 3 日後に再び 40℃を超える
発熱を呈し再入院。発熱に加え咽頭痛や咳嗽も悪
化していた。血液検査では WBC 15,100/μl(neu
85 %)、CRP 16.7mg/dl、 フ ェ リ チ ン は 30,486ng/
ml に再上昇し、造影 CT 検査で肝脾腫や全身のリ
ンパ節腫脹を認めた。再入院 4 日目呼吸苦が出現
し SpO2 は 80 % 以 下、 胸 部 CT 検 査 で 両 側 胸 水、
肺野にびまん性スリガラス状影を認め急性呼吸窮
迫 症 候 群(ARDS) の 病 態 を 呈 し て い た。Plt は
10.6万/μl へ低下、FDP は 105μg/ml へ上昇し、播
種性血管内凝固症候群(DIC)の合併も考えられた。
骨髄穿刺検査では悪性リンパ腫、血球貪食症の所
見は認めず、関節痛や皮疹がなく非典型的である
が成人 Still 病(AOSD)を最も疑った。人工呼吸
管理とステロイドパルス(m-PSL 1,000mg×3 日)
療法後、ARDS および DIC は改善した。挿管 6 日
目に抜管し全身状態も改善がみられ膠原病専門医
療機関へ転院。
【結語】関節炎や皮疹の見られない AOSD 様の経
過中に ARDS、DIC を合併した 1 例を経験したの
で報告する。
【症例】22 歳、女性
【主訴】前胸部痛
【現病歴】5 か月前、前胸部痛の持続痛が出現し悪
化してきた。痛みは 8/10 であった。その後 A 循
環器内科や B 整形外科を受診するも異常なしとい
われた。C 病院では Tieze 病といわれ、ロキソプ
ロフェン処方にて痛みは軽快せず、3 か月前に自
然軽快した。2 か月前に左手掌の水疱を自覚し近
医 D を受診したところ掌蹠膿疱症を疑われた。1
カ月半前から再度前胸部、背部、左肘の痛みが出
現したため、ロキソプロフェンを服用するも効果
に乏しかった。再度 C 病院を受診するも原因不明
といわれ E 病院を受診した。血液検査にて軽度の
炎症所見と胸部単純 CT で胸骨の異常を指摘され
たが、精査は希望されなかった。その後近医 D を
再診した際、ペインクリニックへの紹介を勧めら
れたが診断の希望あり当科へ紹介受診となった。
【初診時所見】前胸部や背部などの圧痛はみとめず、
血液検査では炎症所見に乏しかった。
【経過】再診時は前胸部痛を自覚しており、胸骨部
に圧痛を認めた。前医の胸部 CT を確認したとこ
ろ、胸鎖・胸肋関節には異常を認めなかったが、
胸骨柄体部接合部に虫食い像を認めたため、乾癬
性関節炎を疑った。乾癬の家族歴はなかった。爪
の点状陥凹は認めなかったが、頭皮に 1cm の鱗屑
を伴う発疹をみつけた。また骨シンチにて胸骨体
部上部および両側肘関節に異常集積をみとめ、皮
膚科での頭皮の生検では乾癬と診断された。以上
より乾癬性関節炎と診断し、リウマチ内科でサラ
ゾスルファピリジンにて治療が開始された。
【考察】若年女性の原因不明の増悪緩解する胸痛に
おいて診断がつかず、ドクターショッピングをし
ていた一例を経験した。若年者の原因不明の胸痛
では乾癬性関節炎も念頭に置く必要がある。また
患者自身が皮疹に気づいていない場合があるため、
全身をくまなく診察し、皮疹を見つけ出すことが
重要である。
Crowned dens syndrome( 以 下 CDS) は、 環 軸
椎歯突起周囲の calcium pyrophosphatedehydrate
(CPPD)沈着による石灰化を伴う、急性の後頸部
痛と、頸椎の可動域制限をきたす症候群である。
当初は稀な疾患と考えられていたが、頸部痛を主
訴に外来を受診した患者の約 2%に認めるといっ
た本邦からの報告もあり、決して稀な疾患ではな
い。ただし、明確な診断基準が確立されておらず、
鑑別対象も多岐に亘るため、診断に苦慮する場合
も多い。 感染症として加療されている症例も散見
し、一般的なスクリーニング検査で疾患を想起す
る必要がある
今回、2012 年 4 月から 2015 年 9 月までに当院の
総合内科外来を受診し、最終的に CDS、もしくは
頸椎偽痛風と診断された 11 症例を retrospective
にカルテレビューを行った。対象症例 11 例(男性 4、
女性 7、年齢中央値 85 歳)に対して、病変部位(頸
部 4、肩関節 4、膝関節 2、手関節 1)、併存疾患(肺
炎 5、腎盂腎炎 2、関節リウマチ 2、併存疾患な
し 2)、体温(37.4±1.5℃:中央値±SD 以下同様)、
白血球数(10,060±4,960/μl)、C 反応性蛋白(16.9
±9.1mg/dl)、赤沈(86±32.4mm/1 時間)、プロカ
ルシトニン(0.31±0.27ng/ml)を検討することに
より、CDS の診断に寄与する臨床的な特徴を考察
した。その結果、体温、白血球数、CRP、赤沈を
用いた CDS と感染症の鑑別は困難であるが、CRP
の値に対するプロカルシトニンの値による鑑別は
ある程度有用である可能性が示唆された。さらに、
以前に他施設より報告されている類似の報告の結
果も踏まえ、一般内科外来における CDS 診療の注
意点を検討し報告する。
一 般 演 題
−134−
−135−
一 般 演 題
若年者の原因不明の胸痛において、
頭皮の皮疹が診断に寄与した一例
1)
【症例】25 歳、女性
【主訴】発熱・腰痛
【既往歴・既存症】なし
【現病歴】入院 2 日前にパソコンの操作作業をして
いる際に、緩徐に右臀部の痛みを自覚した。痛み
で歩行ができなくなり、近医を受診した。ジクロ
フェナク座薬 25mg とレボフロキサシン 500mg/日
を処方された。症状改善せず、当科で精査加療目
的で入院となった。
【入院時現症】右股関節外旋時に疼痛あり、動作制
限を認めた。
【検査結果】炎症反応は高度上昇し、クラミジアト
ラ コ マ テ ィ ス IgM・IgA は 陽 性。MRI-DWI で は
仙腸関節が高信号域。
【経過・考察】腎・消化器・婦人科系・動脈炎症候
群の疾患を鑑別否定し、最も仙腸関節炎を疑った。
前医にてレボフロキサシン処方されており、抗菌
薬治療を開始し約 2 週間使用した。クラミジアの
既感染を認め、まだ強く認めていた為に、反応性関
節炎を考え、NSAIDs を開始した。NSAIDs 開始
後もやや不良であり、歩行不可であった為に、サ
ラゾスルファピリジンを併用使用した。その後疼
痛コントロール良好になり、独歩可能となったた
めに第 22 病日に退院となった。
【結語】原因不明の腰痛症の患者さんの中には、反
応性関節炎を含めた脊椎関節炎の患者さんが多く
隠れている可能性があり、今後もこの疾患を鑑別
に忘れずに診療・診断すべきと考える。
一般演題【症例報告 23(膠原病・自己炎症)】O-098
急性呼吸窮迫症候群ならびに
播種性血管内凝固症候群を合併し、
成人 Still 病が疑われた 1 例
原因不明の発熱・腰痛を認めた
25 歳女性の一例
東邦大学医療センター大森病院 総合診療部
◯鄭 有人、馬場寛子、増岡正太郎、城戸秀倫、
佐々木陽典、石井孝政、渡邉利泰、宮崎泰斗、
財 裕明、中嶋 均 、瓜田純久
一般演題【症例報告 22(膠原病・自己炎症)】O-097
一般演題【症例報告 23(膠原病・自己炎症)】O-099
一般演題【症例報告 23(膠原病・自己炎症)】O-100
慢性多関節炎を呈した家族性偽痛風
(軟骨石灰化症)疑いの一例
家族性地中海熱の一例:
僥倖(ぎょうこう)に頼らない
診断をめざすために
国立国際医療研究センター病院 総合診療科
◯田邉 翔、國松淳和、佐藤達哉、前田淳子、牧 正彬、
藤江 聡、荒井三記子、渡邊梨里、加藤 温
大分大学医学部附属病院 総合内科・総合診療科
◯堀之内登、宇都宮理恵、阿部真希子、山本恭子、
石井稔浩、塩田星児、加島 尋、吉岩あおい、
阿部 航、宮崎英士
【背景】外来診療では、患者は今困っていることを
医師に訴え、また医師はその主訴の原因がわかり
症状が軽快すれば解決とみなすことが普通である。
今回我々は、受診時にはない症状ではあるが患者
を悩ませている症状について、過去を遡って病歴
を聴き直すことで診断の端緒を見出し、家族性地
中海熱(FMF)の診断に至った症例を経験したの
で報告する。
【症例】30 歳女性。娘の口唇の出血を見た際に失神
し救急外来を受診。血管迷走神経反射の暫定診断
となり、翌日の当科受診を指示された。当科受診
時には症状改善傾向、診察・検査のすえ失神につ
いてはやはり血管迷走神経反射で矛盾しないと判
断し診療としては解決し終了したが、問診の中で、
「2 年ほど前から 2 週間〜2 ヶ月ごとに強い腹痛が
あり、困っている。」との訴えを聴取した。FMF
を鑑別に入れ病歴聴取をしなおし精査したところ、
高熱でなく微熱にとどまるものの、MEFV 遺伝子
変異(L110P/E148Q/M694I の複合ヘテロ接合体)
を有しコルヒチンで腹痛発作が消失したことから
FMF と診断した。
【考察】FMF は、発作と発作の間は比較的長い
無症状期が続くため、患者自身発作が反復するこ
とを問題視しないケースも多い。今回の症例も、
FMF(最終診断)の発作とはおよそかけ離れた主
訴(失神)で当科を初診していた。潜在的な FMF
患者の多くは長い無症状の間欠期を持っているた
め、臨床医は「目の前の」症状以外の症状を拾い
上げることが有効な疾患であることを知るべきで
ある。
【結語】主訴に関する訴えだけでなく、患者の健康
に対する悩みにも包括的に聴取することで発見で
きる疾患もある。臨床経験を積み、多忙となって
くると怠りがちな「他に何かありませんか?」の
一言を言い添えることを忘れないようにしたい。
−136−
O-101
一般演題【臨床教育 1】
プロブレムリスト作成を重視した
症例検討会による研修医教育
O-102
Rheumatology in General Practice の
試み
帝京大学ちば総合医療センター 血液・リウマチ内科
◯萩野 昇、德永健一郎、津田健司、村中清春、
篠﨑美樹子、小松恒彦
田附興風会医学研究所 北野病院 総合内科
◯田中孝正、藤本卓司
【序文】当院では週 1 回、2 時間かけて入院した 1
症例の症例検討会を行っている。総合内科では幅
広い病気に対して診断をつける能力が求められる
が、それを鍛える場を提供することは難しい。患
者に内在する病気の枠組みを考えるトレーニング
として、当院での取り組みを報告する。
【方法】週 1 回、初期研修医または後期研修医が入
院で実際に担当した症例の基礎資料(病歴、過去
の資料、身体所見、ルーチン検査所見)を入院時
点まででまとめて発表する。指導医、参加者が質
問等で情報追加し、基礎資料以外の情報なしに参
加者全員が入院時点のプロブレムリストを作成す
る。プロブレム一つに対して一つの病気とし、プ
ロブレムリストが時系列で患者に起こった順番に
挙げる。参加者全員に自身の各プロブレムに対す
る病態考察を行ってもらい、最後に発表者からプ
ロブレムリストと考察、その後の経過の発表をし
てもらう。
【考察】形式をもって 1 症例を吟味することで、実
際に担当した患者の病態理解が深まり、参加者も
疑似体験から学ぶ貴重な機会となる。教科書での
勉強のみでは得られない診断能力育成の場として、
このような形式の症例検討会は有用と考えられる。
筋骨格・軟部組織に関する主訴を有して医療機関
を受診する患者は多い。特に受診者の高齢化が進
むにつれ「腰痛」「関節痛」を訴える患者の割合は
増加の一途を辿っている。
本邦においては非 = 手術的筋骨格・軟部組織疾患
についても先ず整形外科を受療するのが一般的な
受診行動とされているが、米国、欧州などでは「家
庭医療」「総合内科」あるいは「リウマチ科」が同
疾患の担当科であるとされ、バリエーションが認
められる。近年、特に関節リウマチについて、生
物学的製剤をはじめとした治療のブレークスルー
が起こり、より多くの内科医が関節リウマチ診療
に従事するようになってきたが、一方では関節リ
ウマチ患者に生じた「炎症に由来しない」疼痛は
整形外科医の担当とされる部分もある。
また、膠原病についても治療の進歩は著しいが、
膠原病を専門とした診療医が患者ケアに当ってい
る地域は決して多くなく、総合診療医が膠原病専
門医のアドバイスを受けながら診療している地域
や、罹患臓器によって診療科が異なる地域(間質
性肺炎は呼吸器内科、腎炎は腎臓内科、等)もあり、
一様ではない。
演者らは講演活動・執筆活動や外来診療などを通
じて、より「総合診療医の目線に立ったリウマチ
学」、Rheumatology in General Practice の普及に
取り組んできた。演者らの所属する帝京大学ちば
総合医療センター(千葉県市原市)は、内科系リ
ウマチ科常勤医が勤務する千葉県内房領域最南端
の病院であり、市原市のみならず袖ケ浦市・君津市・
木更津市・富津市・茂原市など、高齢化の著しい
エリアにおいて、筋骨格・軟部組織の疼痛や免疫
異常による炎症を主徴とした疾患の診療に従事し
ている。また、甲府共立病院(山梨県甲府市)で
も外来診療を行い、毎月研修医を対象としたリウ
マチ性疾患のレクチャーを行っている。短期・長
期の効果は今後の測定を要するが、ひとつの試み
として活動報告を行いたい。
−137−
一 般 演 題
一 般 演 題
【背景】偽痛風発作は通常急性単関節炎として発症
するが、稀に多関節炎を呈することがある。ピロ
リン酸輸送 ANKH 遺伝子の変異が家族性偽痛風の
発症に関与しているとされている。
【症例】43 歳、女性
【主訴】繰り返す発熱、多関節痛
【現病歴】X-2 年頃から誘引なく不定期に発熱する
ことがあった。X-1 年 8 月頃に 1 ヶ月間程度続く
発熱と身体各所の疼痛が出現するとの主訴で当科
を受診し、炎症反応以外に特記所見を認めず終診
となっていた。X 年 4 月に発熱し近医を受診し、
当科再受診となった。
【経過】経過中に発熱と発作的な左肩関節痛を自覚
し、診察で左肩・左膝・両側手各関節に炎症所見
を認め、採血上軽度炎症反応上昇があった。患者
の母親、姉、母親の弟が偽痛風と診断されている
ことが判明した。経過中に Crown-dens 症候群を
発症し、その他周期的に関節痛を訴えた。膠原病
関連検査や内分泌代謝機能では特記所見なく各種
画像検査で関節腔内の石灰沈着像を認めた。偽痛
風による関節炎発作を繰り返しているものとして
NSAIDs の頓用を継続し経過観察中である。
【考察・結語】多発関節炎を繰り返す症例では偽痛
風も鑑別の一つに挙げる必要がある。特に家族歴
がある場合、偽痛風を念頭において精査すべきで
ある。
一般演題【臨床教育 1】
一般演題【臨床教育 1】
O-103
一般演題【臨床教育 2】
アクティブ・ラーニングを取り入れた
医学生に対する症候論講義の取り組み
O-104
NPO 法人卒後臨床研修評価機構の
臨床研修評価を受審して
順天堂大学医学部 総合診療科
◯乾 啓洋、坂間玲子、坂本梨乃、福井由希子、渋谷克彦、
藤林和俊、三橋和則、大嶋弘子、横川博英、平井由児、
福田 洋、檀原 高、内藤俊夫
東住吉森本病院 救急・総合診療センター/ 2)同 内科
/ 3)同 看護部/ 4)同 事務管理部/ 5)同 技術部/ 6)同
臨床研修管理部/ 7)同 院長
8)
大阪市立大学 総合診療センター 総合医学教育学
◯池邉 孝 1)、八木 匠 1)、仲川浩一郎 2)、木下千富 3)、
松本英樹 4)、浅沼晴雄 5)、原田詳子 6)、中野由紀子 6)、
村上依公子 6)、廣橋一裕 1)、田中 宏 7)、首藤太一 8)
【はじめに】現在の臨床研修制度になって 10 年が
経過した。臨床研修指定病院はより質の高い研修
医教育を行うべくプログラムに工夫を凝らしてい
る。当院は大阪市東住吉区にある 329 床の急性期
病院である。年間 4,000~5,000 台の救急搬送を受
け入れており、救急研修がプログラムの目玉であ
る。受け入れ可能な初期研修医の定数は 11 名(1
年次基幹型 3 名、大阪市立大学との協力型 5 名、2
年次基幹型 3 名)で、ここ数年連続してフルマッ
チしている。
【目的】臨床研修指定病院としての基盤を固めるこ
とを目的に、平成 27 年 11 月 24 日に NPO 法人卒
後臨床研修評価機構(以下 JCEP)の臨床研修評価
を受審することとなった。
【方法】院長をはじめとする診療部、看護部、技術
部、事務など多部署の代表者からなるプロジェク
トチームを結成した。月に 2、3 回定期的に集まり、
JCEP から問われる数多の項目について、当院がク
リアできているかひとつひとつ検証した。達成度
が低いと思われる項目については新たに基準や規
定を作成し、研修医および関係部署に周知した上
で実績を積んでいった。
【結果】本抄録提出時現在、合否はまだ不明である
が、今回の準備を通じて、指導医だけでなく、病
院全体および地域で研修医を育てることの重要性
がよく理解できた。
【考察】受審の準備を通じて、研修医教育に関する
様々な規定や評価の方法を見直す良い機会となっ
た。また、初期研修医にプログラムの目的や院内
の規定を周知する機会となったため、受審以後の
研修への取り組む姿勢にも良い影響を及ぼした。
【結語】JCEP の臨床研修評価を受審することは、
研修プログラムを見直す良い機会となり、臨床研
修指定病院としての基盤を固めるのに有効である。
−138−
O-105
体系的漢方医学カリキュラムにおける
e ラーニングの実施評価
一般演題【臨床教育 2】
O-106
「新・内科専門医研修手帳」における、
当科の疾患網羅度の検討
1)
公益財団法人 神奈川科学技術アカデミー
慶應義塾大学 医学部漢方医学センター
◯伊藤亜希 1)、渡辺賢治 2)
飯塚病院 総合診療科
◯工藤仁隆 、江本 賢
2)
【目的】がん治療の分野で 9 割近くの医師が漢方薬
を処方しているにもかかわらず、3 割以下の医師
しか漢方医学を学習していない実態がある。その
ため、公益財団法人神奈川科学技術アカデミーで
は、文部科学省の事業の一環として、通常の診療
に追われ漢方を学習する時間が取れない先生方の
ために、PC やスマホを利用して学習できる漢方の
e ラーニング教材を作成している。コンテンツの
質を高めるために、体系的漢方医学カリキュラム
の 42 コンテンツに対し良かった点と改善点につい
てアンケートを実施した。
【方法】医師 46 名、薬剤師 7 名、医学生 10 名、薬
学生 147 名の計 209 名に 42 コンテンツを受講依頼
した。受講後、良かった点や改善点を自由に記入
する方法を取った。
【結果】166 名が受講した。そのうち 91 名がアンケー
トに答え、良かった点に記載した人数は 88 名、改
善点に記載した人数は 68 名であった。良かった点
には「携帯を使って簡単に学習できるので使いや
すかった」「漢方の用語は読み方が難しいものが多
いので、実際に発音しているのを聴けるのは記憶
に残りやすくて良かったと思います」など、改善
点では「知らない単語が多すぎてついていけない」
「コンテンツ受講後の確認問題が難しい」などの記
載があった。
【考察】多くの受講生が良かった点に記載しており、
漢方 e ラーニングの有用性が確認された。一方、
講義の中に出てくる単語が難しいと記載する受講
生もおり、漢方用語集のようなものが必要である
と考える。
【結論】内容の改善は必要があるが、手軽に音声学
習ができる e ラーニングの有用性が分かった。
【目的】2017 年度から新・内科専門医制度が導入さ
れることで、後期研修でも広い領域の症例経験が
必要となる。新・内科専門医研修手帳(以下、手帳)
への記載が義務付けられる予定で、診療科別 15 領
域に分類され、合計 67+3 疾患群が規定されている。
今回我々は総合診療科(以下、当科)で受け持つ
患者が手帳の要求事項に対してどの程度網羅して
いるのかを後方視的に検討した。
【方法】対象は 2014 年度 1 年間に当科に入院した
2,205 症例で、退院サマリーの第 1 から第 3 病名を
手帳に則って分類した。手帳の総合内科領域はサ
マリーに記載しえない病態名が含まれており今回
の研究では扱わないこととした。
【結果】第 1 病名のみの場合、手帳との一致率は
79.5%(1,752/2,205)であった。症例数が多い領域
は消化器(442)、腎臓(309)および呼吸器(247)
領域で、疾患群別にみると腎臓領域 7:腎尿路感
染症・泌尿器科的腎・尿路疾患(216)、呼吸器領
域 1:感染性呼吸器疾患(205)および消化器領域 9:
膵臓疾患、腹腔・腹壁疾患、急性腹症(182)の順
で多かった。尿細管・間質疾患(腎臓)、免疫性疾
患(神経)および真菌感染(感染症)の 3 疾患群
に関しては該当症例がなかった。第 2 病名まで含
めた場合、手帳との一致率は 75.4%(3,093/4,100)
であり、67 項目の全疾患群を網羅することが出来
た。
【考察】筑豊地域は高齢化が著しい地域で、尿路感
染症や肺炎が多くなる。また、当院では小腸閉塞
に対する保存的加療を当科で受け持つことが多い
ため、このような結果になったと考える。第 2 病
名まで含めると、67 項目の疾患群の全てを満たす
ことが出来、幅広い疾患を当科でカバーしている
ことがわかった。
【結論】1 年間の当科ローテートで新・内科専門医
制度において規定された疾患群の多くを経験でき
ることがわかった。
−139−
一 般 演 題
一 般 演 題
【はじめに】近年、高等教育でのアクティブ・ラー
ニング(能動的学習)の必要性が指摘されており、
その導入に関する議論がなされている。医学教育
においても教員の一方向的な講義形式の授業だけ
ではなく、アクティブ・ラーニングを取り入れる
ことで社会的能力や問題解決能力を養成し、主体
的に学び続ける社会人基礎力を持った医師を養成
することが重要な課題となっている。今回、医学
部 3 年生対象の症候論講義において、アクティブ・
ラーニングを取り入れた講義を行ったので報告す
る。
【活動報告】2015 年度の順天堂大学医学部 3 年生の
カリキュラムで、アクティブ・ラーニングを導入
した講義を行った。学習到達目標は、①症候論の
概略を学ぶ、②情報を効率よく収集することがで
きる、③ PowerPoint のプレゼンテーションが作成
できるようになる、④伝えたいことを効果的に人
に伝えることができる、とした。講義期間は 1 週
間で、実講義日数は 3 日間のプログラムを作成し
た。初日はアイスブレークとして医局員による医
師のキャリアの話を行い、その後 2 日目にかけて
データの収集方法、PowerPoint の使い方、興味を
引く発表コツの授業を行った。並行して症候論(発
熱、胸痛、腹痛、頭痛)のミニレクチャーを行い、
最終日は 12 グループ(各 10 人)に分かれて指定
された症候のプレゼンテーションを作成し発表し
た。それぞれの発表に対してクリッカーを用いて
全学生が評価し講評を行った。
【今後の課題】今年度は新たな試みのため講義期間
は 1 週間であったが、来年度は 2 か月間のアクティ
ブ・ ラーニングを取り入れたカリキュラムを計画
している。課題として評価方法が挙げられる。今
回は従来のカリキュラムの一環であるため筆記試
験での評価としたが、今後は評価基準を設けて授
業の中で評価を行うことも検討する。またグルー
プ人数も、教員数を加味して効率的な学習ができ
るよう再検討が必要である。
1)
一般演題【臨床教育 2】
一般演題【症例報告 24(膠原病・自己炎症)】O-108
一般演題【症例報告 24(膠原病・自己炎症)】O-109
SLE 経過観察中に急性十二指腸炎を
発症したループス腸炎の 1 例
インフルエンザウイルス感染後に発症
した全身性エリテマトーデスの一例
関節リウマチに髄膜炎・脳炎を合併し、
ステロイド治療が奏功した 1 例
岐阜大学医学部附属病院 総合内科
◯臼井太朗、不破雅之、村上大輔、高橋典子、山内雅裕、
池田貴英、梶田和男、森田浩之
独立行政法人国立病院機構 高崎総合医療センター 総合
診療科・内科
◯山口莉佳、合田 史、渡辺俊樹、佐藤正通
武蔵野赤十字病院 研修医/ 2)同 総合診療科/ 3)同 リウマチ膠原病科
◯南谷優成 1)、上ノ町優仁 2)、清水孝一 2)、長田 薫 2)、
関谷和佳子 3)、高村聡人 3)
広島大学病院 総合内科・総合診療科
◯亀谷貴浩、小池隆夫、原武大介、菊地由花、篠田亮子、
岩本修一、岸川暢介、菅野啓司、溝岡雅文、田妻 進
【症例】37 歳、女性
【主訴】腹痛、嘔吐、発熱
【現病歴】X-11 年血栓性血小板減少性紫斑病を発
症、ステロイド加療治癒後。X-2 年蝶形紅斑、抗
核抗体、抗 ds-DNA 抗体、抗 Sm 抗体陽性、補体
低下、血小板減少、以上から SLE と診断するも自
然軽快し、無治療経過観察されていた。X 年 5 月
下旬、突然の腹痛、嘔吐、発熱出現、当院を受診、
CT 上、十二指腸水平脚を中心に壁肥厚、周囲液
貯留、中等度の腹水を認め、同日緊急入院となっ
た。 意 識 清 明、 血 圧 155/69mmHg、 脈 拍 69 回/
分、KT 37.2℃、心窩部に反跳痛を伴う圧痛+。蝶
形紅斑・紫斑・関節炎・浮腫なし。CRP<0.02mg/
dl、WBC 4,050/μl(Neut 74.3 %、Lymph 23.6 %、
Eosino 0.0%)、Hb 8.9、Plt 11.9万、C4 3mg/dl、フェ
リ チ ン 48.7ng/ml、ANA Speckled 320倍、 抗 dsDNA IgG 抗体 21 IU/ml、尿 TP(–)、入院同日の上
部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚に全周性
粘膜下浮腫像を認め、造影 CT 上、十二指腸壁造
影効果の低下、十二指腸周囲~後腹膜に液貯留を
認めた。腹水は数時間で増加、ループス腸炎と診
断した。腹痛も増強、入院同日 PSL 1mg/kg を開始、
投与後速やかに症状は改善、6 日後の内視鏡再検
では浮腫は消失。抗アニサキス IgG・A 抗体陰性、
C1アクチベーター活性上昇なし。
【考察】ループス腸炎は回腸に好発するが、17%は
十二指腸に発症し、SLE の活動性を問わず、腸炎
が急性発症すると言われている。腸管穿孔の可能
性があり、早急な診断・治療が必要である。
【症例】51 歳、女性
【主訴】皮疹
【現病歴】平成 27 年 3 月中旬発熱。インフルエン
ザ A ウイルス感染症の診断を受け投薬により改善。
解熱後、全身倦怠感継続し額に円盤状紅斑をみる
ようになり、6 月中旬より同様の皮疹が頬や前胸
部にも出現したため 7 月初旬紹介となった。
【現症】体温 36.3 度、血圧 96/56mmHg、脈拍 65
bpm、呼吸数 18 回/分、両上眼瞼及び額、両頬部
に直径 20mm 程度の円盤状紅斑を認め、左眼瞼の
腫脹あり、口腔内びらん、発赤を多数認めた。関
節痛の訴え関節腫脹はなく、両手指に違和感程度
の感覚異常あり、筋痛、筋把握痛は認めない。採
血検査では血球減少、肝酵素の著名な上昇を認め
た。血清学的検査から抗核抗体陽性の他、抗 Sm
抗体、抗 ds-DNA 抗体陽性、補体低値等を検出。
発熱、急激な肝酵素上昇、フェリチン高値(1,830.9
ng/ml)などより血球貪食症候群精査のため骨髄
穿刺検査施行。低形成性骨髄であり、大型化し空
砲を有した活性化マクロファージ及び血球貪食像
を検出した。
【経過】血球貪食症候群及びループス肝炎合併、全
身性エリテマトーデス(SLE)と診断し、メチル
プレドニゾロン パルス療法に続き、1mg/kg プレ
ドニン内服治療を開始。緩やかに肝酵素及び血球
減少は改善傾向を示した。プレドニン減量開始時
よりアザチオプリン併用。各異常値は正常化し第
52 病日退院とし外来診療へ移行した。
【考察】この度我々はインフルエンザウイルス感染
後より皮膚症 状出現し診断に至った SLE を経験し
た。本症例の特徴として肝障害及び血球貪食症候
群合併が認められた点である。腎障害については
初診時の検尿異常に留まり、治療開始後は消失に
至っている。以前より同症とウイルス感染との関
連について、症例報告の蓄積により検討がなされ
てきた。これらより自己免疫素因を有する個体に
おいて、ウイルス感染が同症発症の契機と成り得
ることが示されている。
【症例】71 歳、男性
【主訴】発熱、右下肢痛
【現病歴】10 年来の関節リウマチにてプレドニゾロ
ン 2.5mg/day とトシリズマブで治療中。入院 2 か
月前から 37℃台の発熱を認めていた。入院前日か
らの右下腿の腫脹・発赤・熱感のため来院し、右
下腿蜂窩織炎の診断で総合診療科緊急入院となっ
た。
【経過】入院後、セファゾリンを投与し局所症状
の改善を認めたが、発熱と炎症反応高値は持続し
た。徐々に意識障害が出現したため、第 14 病日に
髄液検査・脳 MRI を施行した。髄液単核球と蛋白
の増加、側頭葉に T2 強調画像で高信号域を認め、
髄膜炎・脳炎と考えられた。ヘルペス脳炎を疑い
アシクロビル投与を行うも発熱・意識障害は遷延
し、髄液中蛋白・細胞数も増加傾向であった。第
32 病日には再度急激な意識レベルの低下と左片麻
痺、病的反射・共同偏視を認めた。髄液中の HSVPCR や抗酸菌を含む培養検査、髄液細胞診は陰性
であり、関節リウマチに伴う髄膜炎・脳炎と診断し、
ステロイドパルス療法を開始、その後はプレドニ
ゾロン 1mg/kg の投与を行った。治療開始後は意
識レベルと麻痺の著明な改善を認め、髄液所見も
改善した。
【考察】急激な意識障害と片麻痺が出現し、脳血管
障害や感染症が否定され、ステロイドパルスが著
効したため、自己免疫性脳髄膜炎と考えられた。
関節リウマチに伴う髄膜炎・脳炎では変動する神
経症状、発熱や頭痛、片麻痺、髄液中蛋白・細胞
数の増加、髄液糖の減少を認めるとされており、
本症例に合致する。治療はステロイドパルス療法
を含む免疫抑制治療が有効とされており、本症例
でも副腎皮質ステロイドが有効であった。稀では
あるが、関節リウマチ患者の意識障害では鑑別の
一つとして挙げるべき疾患であると考え報告する。
【症例】47 歳、男性
【主訴】胸痛、右足底部の腫脹
【既往歴】30 歳:副鼻腔炎、36 歳:気管支喘息
【現病歴】入院 1 ヶ月前、飲酒後に強い胸部絞扼感
を自覚したため、A 病院救急外来受診した。精査
にて異常なく帰宅となるがその後も飲酒後・運動
後に症状が継続。また同時期より右足底部の発赤、
腫脹、感覚鈍麻を自覚するようになり、B 病院受
診した。血液検査で好酸球の上昇、CT で両下肺野
に浸潤影認めたため精査・加療目的で当科入院と
なった。
【入院後経過】第 3 病日に胸痛が急激に増悪・持続
した。血液検査で心筋逸脱酵素上昇、心電図では
広範囲の誘導で ST/T 波変化を認めた。心臓超音
波検査で、壁運動異常を認めた。好酸球性心筋炎
の合併が疑われたため、同日より mPSL 1,000mg/
day のステロイドパルス療法、また臓器障害(肺・
心)を認めエンドキサンパルス療法 2 回(入院第
6 病日、入院第 20 病日)を併用した。治療開始翌
日には 胸部症状は劇的に改善。諸症状ならびに好
酸球数、心電図・壁運動異常も改善したため入院
38 日目に退院となった。
【考察】本疾患は比較的予後良好であるものの、予
後規定因子の 1 つとして心筋障害が挙げられ、急
速に進行し心停止に至った症例が散見される。本
症例では幸いなことに、好酸球性心筋炎の合併を
入院後早期に発見したため迅速な対応することが
できた。本疾患は重要臓器障害を合併し生命予後
にも影響することがあるため、早急な対応が必要
であると考えられた。
−140−
1)
一般演題【症例報告 25(膠原病・自己炎症)】O-110
入院中に心筋炎を合併した好酸球性
多発血管炎性肉芽腫症の一例
−141−
一 般 演 題
一 般 演 題
一般演題【症例報告 24(膠原病・自己炎症)】O-107
一般演題【症例報告 25(膠原病・自己炎症)】O-112
一般演題【症例報告 26(膠原病・自己炎症)】O-113
一般演題【症例報告 26(膠原病・自己炎症)】O-114
側頭動脈生検で診断された
MPO-ANCA 陽性を伴う
結節性多発動脈炎(PN)の一例
攻める問診、診察から診断に至った
高安病の 1 例
リウマチ性多発筋痛症診断時に
無痛性甲状腺炎を合併していた 1 例
当院での経験した
成人スティル病症例の臨床像の検討
東海大学医学部付属八王子病院 総合内科
◯鴨野真弘、峠田晶子、蘇原映碩、壁谷悠介、仁科 良、
檜垣 惠
武蔵野赤十字病院 初期研修医/ 2)同 総合診療科/
同 膠原病・リウマチ内科
◯西山 秀 1)、三宅美佐代 2)、上ノ町優仁 2)、関川喜之 2)、
清水孝一 2)、長田 薫 2)、関谷和佳子 3)、髙村聡人 3)
東京医科大学八王子医療センター リウマチ性疾患治療
センター
◯青木昭子、岡 寛
【症例】85 歳、女性
【主訴】発熱、頭痛、顎跛行、大腿筋痛
【既往歴・既存症】高血圧症、脊柱管狭窄症、アル
ツハイマー型認知症
【現病歴】1 ヶ月以上持続する発熱のため、前医に
て数種類の抗菌薬投与を受けたが、解熱しなかっ
た。頭痛や顎跛行、両大腿の筋肉痛、疲労感など
の症状も出現し、血液検査で MPO-ANCA が陽性
のため、精査加療目的に当院に紹介となった。
【経過】当院での精査において、肺病変や腎糸球体
病変、および腎動脈病変を示唆する所見は得られ
ず、臨床症状からは、側頭動脈炎が疑われた。眼
科領域では、視神経炎や血管炎の所見を認めなかっ
た。側頭動脈生検を施行したところ、フィブリノ
イド壊死を伴う血管炎の所見を得た。巨細胞を伴
う肉芽種性変化は乏しく、巨細胞性動脈炎よりは、
壊死性血管炎の像であった。プレドニゾロン 40
mg/day(1mg/kg/day)の経口投与を開始したと
ころ、全身状態や炎症所見の改善を認めたが、治
療開始 6 日目に、左下垂足が出現し、筋電図検査
にて左腓骨神経障害、軸索損傷の所見を認めた。
追加治療なく、神経所見は徐々に改善し、歩行も
可能となった。
【考察】MPO-ANCA 陽性は、小動脈以下の血管炎
を強く示唆するとされているが、例外は散見され
る。本症例の場合、ANCA 関連血管炎で出現頻度
の高い腎炎や肺病変を認めず、組織病理所見は壊
死性血管炎の診断であったことから MPO-ANCA
陽性を伴う PN の診断とした。側頭動脈の罹患は、
PN でも認められるとの報告もある。また大血管(側
頭動脈)のみならず、末梢神経障害という、小〜
中血管炎の合併を示唆する所見を呈した稀少な症
例であり、報告する。
【症例】23 歳、女性
【主訴】咽頭痛、発熱
【現病歴】当院来院 3 カ月頃前から発熱、咳、痰が、
1 カ月前から咽頭痛が出現した。多数の医療機関・
診療科を受診し、検査(採血、血液培養、結核の
検査、造影 CT、TTE、TEE、ファイバー)、抗菌
薬治療が行われたが症状改善せず、診断に難渋し、
当院総合診療科紹介受診となった。
【入院時現症】
【身体所見】BT 37.2℃、BP(右)125/78mmHg、
BP( 左 )112/69mmHg 、HR 97/min 整、RR 18/
min、頸部:右内頸動脈に沿って圧痛あり、右後頚
部に圧痛あり 胸部:no crackles、no wheeze、2
LSB で LevineⅡ/Ⅵの収縮期雑音、四肢:左橈骨
動脈触知やや減弱
【検体検査】WBC 8,700/μl、CRP 7.78mg/dl、ESR
109mm
【画像所見】造影 CT で頸動脈、肺動脈の壁肥厚あ
り
【経過】数か月持続する発熱、右内頸動脈に沿った
圧痛と、CT 上の頸動脈と肺動脈の壁肥厚あり高安
病と診断した。入院後プレドニゾロン 50mg/day
内服を開始し、速やかに解熱、前頸部痛の改善を
認め退院、外来経過観察とした。
【考察・結論】
「若い女性の 1 ヶ月以上持続する発
熱、前頸部、全身倦怠感、橈骨動脈の触診の左右
差、血管雑音、造影 CT での血管壁の全周性の肥厚」
の所見をまとめてみると、高安病を想起するのは
容易だが、実臨床の場では診断が困難だった。今
回は問診の段階で、咽頭痛を「前頸部痛」と読み
替えることにより、身体所見の「血管に沿った圧痛」
に到達することができ、その後の上肢の血圧の左
右差の確認や、検査前確率の高い造影 CT 検査を
組んで診断が可能であった。診断に難渋した場合
に、検査に頼りがちではあるが、診断の基本は「攻
める問診と身体所見」ということを改めて教えら
れた 1 例であった。
【症例】71 歳、女性
【主訴】全身の筋肉痛、動悸
【現病歴】2014 年 6 月腰と大腿の疼痛出現。7 月初
めから 37℃台の発熱、動悸、頭痛あり。疼痛は両
肩から首にも拡がり、夜間から明け方に強く、日
中に少し軽減した。疼痛のため歩行が困難となり、
8 月 19 日当科入院となった。
【身体所見】148.5cm、45kg、37.1℃、血圧 154/82
mmHg、脈拍 112/分整、眼瞼結膜貧血なし。頸部
リンパ節腫脹なし。甲状腺腫なし。胸部;正常呼
吸音、心音清、腹部;平坦、軟、圧痛なし。関節
腫脹なし。疼痛のため上肢の挙上制限があるが、
関節の拘縮は認められない。
【検査結果】WBC 9,420/mm3、Hb 12.2g/dl、MCV
93、Plt 43.3×104/mm3、AST 20 IU/l、ALT 13
IU/l、LDH 174 IU/l、Cr 0.59mg/dl、CRP 7.32
mg/dl、MMP-3 407ng/ml、HbA1c 7.7%、リウマ
トイド因子 (–)、抗 CCP 抗体 (–)、TSH 0.24uU/ml、
freeT3 2.32pg/ml、freeT4 1.58ng/dl、抗サイログ
ロブリン抗体 (–)、抗 TPO 抗体 (–)、抗 TSH 受容
体抗体 (–)、尿蛋白 (–)、沈渣異常なし。胸部 X-P、
腹部エコー;異常所見なし。頸部エコー;甲状腺
腫大なし、両葉に 3~5mm の低~等エコー結節が
合計 3 個あり。Tc–99m 甲状腺摂取率 0.1%(基準
値 0.5-4)
【経過】ACR/EULAR 2012 の分類基準を満たしリ
ウマチ性多発筋痛症(PMR)と診断した。プレド
ニゾロン(PSL)10mg/日と血糖コントロールの
ためリナグリプチンを開始した。疼痛症状は速や
かに改善し、4 日目には CRP 0.5 となった。軽度
の甲状腺機能亢進症については無痛性甲状腺炎と
診断した。入院後、脈拍数は 80~90/分に落ち着き、
第 11 病日退院となった。
【考察】これまで無痛性甲状腺炎を合併した PMR
の報告はないが、無痛性甲状腺炎では甲状腺中毒
症状は軽度の場合が多く、見逃されている可能性
もある。PMR 診断時、甲状腺ホルモンのチェック
が必要ではないかと考え報告した。
1)
3)
−142−
岐阜県総合医療センター 総合診療科
◯岡田英之、宇野嘉弘、飯田真美
【緒言】成人 Still 病は広く認知された疾患であるが、
不明熱疾患として診断に苦慮することがある。ま
た、ステロイド抵抗性の症例や、血球貪食症候群
を併発する症例があり、必ずしも予後の良い疾患
というわけではない。
【目的】当院での成人スティル病の症例を通して臨
床像を明らかにした。
【方法】当院当科発足後 4 年間で経験した成人ス
ティル病 8 例について、50 歳で年齢を区切ると若
年群、高齢群の平均に有意差を認めたため、年齢
に着目して検討した。
【結果】主訴として発熱を全例に、咽頭痛を 4 例
に、関節痛、皮疹を各々 3 例に認めた。全経過で
は全例に皮疹を認めた。様々な形態の皮疹を、様々
な部位に認めた。熱型は弛張熱に限らずあらゆる
熱型であった。重症度と最も相関する因子を検討
したところ、若年群では好中球数が多いほど(相
関係数 r=0.956)、高齢群では HGB 値が低いほど
(r= – 0.999)、より重症であった。治療方法は依然
としてステロイドに依存しているのが現状である。
若年群では重症度とステロイドパルス療法の施行
回数が正の相関を示した(r=0.645)。一方、パル
ス施行回数は若年群に比し、高齢群で有意に多かっ
た(p=0.037)。PSL 投与量と最も相関した因子は、
若年群では好中球数が多いほど(r=0.895)、HGB
値が低いほど(r= – 0.948)、また高齢群ではフェ
リチン値および LDH が高いほど(各々 r=0.988、
r=0.834)、PSL 投与量が多くなっていた。
【結論】皮疹は、様々な部位に、様々な形態で出現し、
発熱はあらゆる熱型をとりうるため、皮疹、熱型
は成人スティル病診断の際の判断材料とするべき
ではない。重症度に最も関連する項目として、好
中球数や HGB 値に着目すべきである。今回の結果
を今後の早期診断、および治療方針の決定に活か
していきたい。
−143−
一 般 演 題
一 般 演 題
一般演題【症例報告 25(膠原病・自己炎症)】O-111
一般演題【症例報告 26(膠原病・自己炎症)】O-115
一般演題【臨床研究 6】
PR3-ANCA 高値を伴った
O-116
祐愛会織田病院における
肝炎ウイルス検査の陽性率と
適切なマネジメント率
Streptococcus mutans による
亜急性感染性心内膜炎の一例
東海大学医学部付属病院 総合内科
◯石原 徹、小澤秀樹、上田晃弘、沖 将行、柳 秀高、
高木敦司
佐賀大学医学部附属病院 総合診療部
祐愛会織田病院 内科
◯古川尚子 1)、多胡雅毅 1)、山口りか 1)、徳島圭宣 1)、
西山雅則 2)、山下秀一 1)
2)
【目的】外科、肝臓内科を併設し地域の二次病院で
ある当院の、肝炎ウイルス検査(HBs 抗原または
HCV 抗体検査)陽性率を調査し、陽性者の中で適
切なマネジメントを受けていない者の割合を明ら
かにする。
【方法】電子カルテより、2012 年 12 月~2015 年 3
月(27 ヶ月)に当院で肝炎ウイルス検査を受けた
者の年齢、性別、検査結果を収集した。2012 年 12
月~2015 年 9 月に当院で腹部超音波検査を受けた
者を抽出し、ID で陽性者のデータと照合した。診
療録を見直し、腹部超音波検査を受けていない陽
性者から腹部造影 CT を受けた者と死亡者を除い
た後、患者背景や受けたマネジメントを分類した
(他院で陽性を把握していた、他院に診療を依頼し
た、致命的な疾患を加療中、当院で治療中もしく
は治療後、左記に該当しない)。該当しないに分類
された者を適切なマネ ジメントを受けていない可
能性が高い者(X 群)とし、検査した診療科を調
査した。
【結果】3,885 名が HBs 抗原検査を受け、56 名が陽
性であった。X 群は陽性者の 41%を占め、内科で
検査された者が多かった。3,869 名が HCV 抗体検
査を受け、264 名が陽性であった。X 群は 25%を
占め、皮膚科で検査された者が多かった。
【考察】病院内の肝炎ウイルス検査陽性率は高く、
陽性者のマネジメントは重要である。当院の適切
にマネジメントされていない患者の割合は大学病
院と比べ低いが、二次病院の役割を考えると更に
抑える必要がある。診療科を超えた啓発、陽性の
情報を紹介時に漏れなく提供するシステムなどが
必要である。
【結論】当院の HBs 抗原陽性率は 1.4%、HCV 抗
体陽性率は 6.8%であり、陽性者の 3 割は適切なマ
ネジメントがされていない可能性があった。
−144−
O-117
一般演題【臨床研究 6】
O-118
C 型慢性肝炎に対するインターフェロ
ンフリー治療による血清肝線維化
マーカー WFA+–M2BP の動態
C 型慢性肝炎治療後の持続的ウイルス
陰性例の WFA+–M2BP 値
九州大学病院 総合診療科
◯浦 和也、古庄憲浩、小川栄一、崎山 優、山嵜 奨、
武田倫子、平峯 智、林 武生、志水元洋、豊田一弘、
村田昌之
九州大学病院 総合診療科
◯浦 和也、古庄憲浩、小川栄一、崎山 優、山嵜 奨、
武田倫子、平峯 智、林 武生、志水元洋、豊田一弘、
村田昌之
【背景】C 型慢性肝炎の治療は直接ウイルス阻害
薬により、持続的ウイルス陰性化(SVR)率は向
上した。しかし、高齢者や肝線維化進行例では
SVR 後であっても肝癌発症のリスクがある。新
規の血清肝線維化マーカー、Wisteria floribunda
agglutinin-positive human Mac-2-bindingprotein
(WFA+–M2BP)の高値例は肝細胞癌発症率が高
いことが報告されたが、抗ウイルス治療によって
血清 WFA+–M2BP 値が変化するか不明である。
【目的】インターフェロン(IFN)フリー治療中の
WFA+–M2BP 値の動態を前向きに調査した。
【方法】対象は、NS5B ポリメラーゼ阻害剤のソ
フォスブビルおよびリバビリン併用療法を行った
genotype 2 型 C 型 慢 性 肝 炎 98 例。 治 療 開 始 前、
治療開始 1、2、4、8、12 週後の WFA+–M2BP 値
(COI)を経時的に測定した。
【結果】全例において治療開始後、速やかに、血
清 HCV RNA は低下し、血清 ALT 値も低下した。
WFA+–M2BP の平均値は治療開始前の 2.81 から、
開始 1 週後に 2.05 へ有意に低下した(P<0.0001)。
治療開始 2、4、8、12 週後に、各々、1.89、1.79、1.62、1.62
へ緩徐に低下した。治療開始前の WFA+–M2BP
値に応じ、全症例を 4 群(<1.0、1.0–2.0、2.0–4.0、
≧ 4.0)に分け解析すると、治療前から開始 12 週
後 の WFA+–M2BP 値 低 下 率 は、 各 々、26.6 %、
40.8%、45.6%、52.0%で、治療前の WFA+–M2BP
値が高い群ほど低下率が大きかった。
【結語】IFN フリー治療により、WFA+–M2BP 値は、
まず治療開始 1 週後に大きく低下、12 週目まで緩
徐に低下した。WFA+–M2BP 値の低下は IFN フ
リー治療による肝細胞癌発症抑制を示唆している
可能性がある。
【背景と目的】C 型慢性肝炎の治療は直接ウイルス
阻害薬により、持続的ウイルス陰性化(SVR)率
は向上した。しかし、高齢者や肝線維化進行例で
は SVR 後 で あ っ て も 肝 癌 発 症 の リ ス ク が あ る。
無治療の C 型慢性肝炎において、新規の血清肝
線 維 化 マ ー カ ー、Wisteria floribunda agglutininpositive human Mac-2-binding protein(WFA+ –
M2BP)の高値例は肝細胞癌発症率が高いことが報
告されている。今回、SVR 後の WFA+-M2BP 値
について調査した。
【方法】対象は、ペグインターフェロンα・リバビ
リン 2 剤併用 24〜72 週間療法、テラプレビルまた
はシメプレビルの 3 剤 24 週間療法、ダクラタスビ
ル・アスナプレビル 2 剤併用 24 週間療法などを受
け、SVR となった C 型慢性肝炎 290 例のみである。
抗ウイルス治療終了 24 週後の血清 WFA+–M2BP
値(COI)に影響する因子を後ろ向きに解析した。
本研究は九州大学の倫理委員会の承認を得ている。
【結果】290 例中 38.2%において、治療終了後 1 年
後に WFA+–M2BP 値は 1.0 未満であった。1 年後
WFA+–M2BP 値 が 1.0 以 上 群( 高 値 群 ) は、1.0
未満群(低値群)に比べ、有意に治療開始時年齢
が高く、女性の頻度が高率であった。高値群は、
低値群に比べ、治療前の血清アルブミン値、血小
板数が低く、治療前の WFA+–M2BP 値が高値で
あった。多変量解析の結果、年齢(60 歳以上)、
女性が治療終了 1 年後の WFA+–M2BP 値 1.0 以上
となる因子と同定された。
【結語】高齢者、女性では SVR 後も WFA+–M2BP
値が高く、肝発癌に留意する必要があることが示
唆された。
−145−
一 般 演 題
一 般 演 題
【症例】66 歳、男性
【主訴】下腿浮腫と紫斑
【病歴】約 4 年前に僧帽弁閉鎖不全症と診断され手
術適応であったが本人が希望されず経過観察され
ていた。約 3 か月前から両下腿浮腫や全身関節痛、
約 1 か月前から両下腿紫斑が出現して前医を受診。
尿検査で多彩な円柱所見や PR3-ANCA >350 U/ml
であり、ANCA 関連血管炎による糸球体腎炎と診
断しステロイド治療が開始された。しかし、腎機
能や下腿浮腫など増悪傾向となり精査加療目的に
当院へ転院搬送となった。来院時、38℃台の発熱
や眼瞼の点状出血や体幹部の紫斑や下腿浮腫や心
尖部に収縮期雑音が聴取された。経胸壁心臓超音
波検査で僧帽弁に約 18mm、経食道心臓超音波検
査では僧帽弁に約 14mm 大動脈弁に約 6mm の疣
贅が認められた。また、血液培養検査で 3/3 セッ
ト か ら Streptococcus mutans が 検 出 さ れ、Duke
Criteria から感染性心内膜炎と診断した。腎生検
では半月体形成性腎炎が認められた。以上より、
ANCA 関連血管炎類似の臨床像を呈した感染性心
内膜炎と考えられた。早急に外科的治療が必要と
判断したが、頭部 CT 検査で微小脳出血が認めら
れ、待機的な手術を予定した。ベンジルペニシリ
ンカリウム 1,200 万単位/日で治療開始したところ、
臨床所見は改善傾向となり血液培養検査の陰性を
確認した。しかし、入院 13 日目に頭痛と意識障害
が出現し、感染性動脈瘤によるクモ膜下出血が認
められた。緊急手術を施行したが術後に不可逆的
な脳障害が残り、保存的治療を継続する方針となっ
た。
【 結 語 】PR3-ANCA 高 値 を 伴 っ た Streptococcus
mutans による亜急性感染性心内膜炎の一例を経験
した。感染性心内膜炎において ANCA が陽性とな
る症例は多数報告されている。ANCA 関連血管炎
が疑われる症例は、治療開始前に感染性心内膜炎
を除外する必要がある。
1)
一般演題【臨床研究 6】
一般演題【臨床研究 6】
O-119
一般演題【臨床研究 6】
75 歳以上の高齢者 C 型慢性肝炎に
対するダクラタスビル・アスナプレビル
療法の有効性と安全性
1)
O-120
B 型慢性肝炎における
核酸アナログ製剤による
HBs 抗原量の推移の検討
一般演題【症例報告 27(感染症)】
O-121
診断まで時間を要した
腰椎化膿性脊椎炎の 1 例
東名厚木病院 総合診療科
◯新井圭一、山下 巌、加藤奈月、神田菜月、安齋明雅、
安西秀聡、栗野 浩、野村直樹、日野浩司
【目的】C 型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法は
Interferon-free 治療が可能となり、副作用が軽減
され、実臨床では高齢者や肝硬変症例が主体と
なっている。今回、NS5A 阻害剤のダクラタスビ
ル(DCV)および NS3/4A プロテアーゼ阻害剤の
アスナプレビル(ASV)併用療法の有効性と安全
性に関して、75 歳以上の高齢者を中心に検討した。
【方法】対象は、DCV・ASV 療法(24 週間)を受
けた、1b 型 C 型慢性肝炎 321 例である。このうち、
75 歳以上の症例は 103 例(32.1%)、肝硬変症例は
127 例(39.6%)であった。同療法による持続的ウ
イルス陰性化(SVR)および副作用に関して検討
した。
【成績】全体の SVR 率は 90.3%(290/321)であっ
た。75 歳以上の高齢者および肝硬変症例の SVR
率もそれぞれ 90.3%(93/103)、90.6%(115/127)
と、いずれも高率であった。また、75 歳以上かつ
肝 硬 変 症 例 に お い て も、87.5 %(42/48) で SVR
が得られた。多変量ロジスティックス解析による
SVR に 関 連 す る 因 子 は、NS5A 薬 剤 耐 性 変 異 あ
り(OR 0.09、P=0.0003)、NS3/4A プ ロ テ ア ー ゼ
阻害剤であるシメプレビル使用歴あり(OR 0.04、
P=0.0003)、および早期ウイルス陰 性化(OR 2.87、
P=0.042) で あ っ た。75 歳 未 満 と 75 歳 以 上 の 群
で副作用の発症率に差はなく、最も多い副作用は
ALT 値上昇(>150 U/l)で、それぞれ 8.3%、9.7%
で認められた。副作用で中止された症例はそれぞ
れ 4.1%、10.7%であり、主な中止理由は両者とも
ALT 値上昇であったが、中止後は全症例で速やか
に改善し、肝不全に至る症例はなかった。
【結語】75 歳以上の DCV・ASV 療法は、肝硬変症
例であってもウイルス学的効果は高く、また重篤
な副作用は殆ど認めなかった。
【目的】B 型慢性肝炎の HBs 抗原量と血中 HBV
DNA 量の高値は肝発癌リスクである。B 型慢性肝
炎に対する核酸アナログ(NA)製剤は、HBV 量
を低下させ、肝炎活動性鎮静化や肝線維化改善を
もたらす。NA 治療による HBs 抗原量推移を報告
した研究は未だないため、今回同推移を調査した。
【方法】対象は 2004〜2012 年に NA を開始された
B 型慢性肝炎 61 例(HBe 抗原陽性;HBeAg+26 例、
陰性;HBeAg-35 例)である。NA 開始時、1 年、2 年、
3 年後の HBs 抗原量、HBV DNA 量の推移を後ろ
向 き に 調 査 し た。 結 果 の HBV DNA 量(copies/
ml)および HBs 抗原量(IU/ml)は中央値で示した。
ウイルス学的著効は HBV DNA 量(TaqMan PCR
法)<2.1 log と定義した。
【 結 果 】 開 始 時、HBeAg+群 HBV量 5.9 log は、
HBeAg–群 4.7 log に比べ有意に高値であった。開
始時、HBeAg+群 HBs 抗原量 3.6 log は、HBeAg–
群の 3.0 log に比べ有意に高値であった。1 年、2
年、3 年後のウイルス学的著効率は、HBeAg+群
61.5%、73.0%、76.9%、HBeAg–群 94.2%、97.1%、
88.5%で、HBeAg–群では高率であった。1 年、2 年、
3 年後の HBs 抗原量は、各々 HBeAg+群 3.6、3.4、3.4
log、HBeAg–群 2.9、2.9、2.7 log で、 両 群 の HBs
抗原量は緩徐かつ有意に低下した。HBeAg+群の
3 年後 HBs 抗原量は、HBeAg–群に比べ有意に高
値であったが、各群間の 3 年後 HBs 抗原量低下量
(–0.17 vs –0.15 log)に有意差は認められなかった。
【 結 論 】HBeAg 別 に HBs 抗 原 量 や HBV 量 の 推
移に差はあるが、総じて HBs 抗原量は低下した。
NA 製剤治療は B 型慢性肝炎の肝癌発症抑制効果
が期待できることが示唆された。
【症例】70 歳、男性
【主訴】よく転ぶ、元気がない
【既往歴】脳炎(4 歳時)、左上下肢の不全麻痺、
知能発達障害、てんかん発作、現在、精神科に通
院中
【現病歴】3 日前にたたみの上に転倒し、頭部、頚部、
右胸部を打撲。身内が、よく転び元気がないのを
心配し、付き添い受診。
【来院時現症】車椅子にて来院。意識清明、左不全
麻痺、意思の疎通困難。血圧 145/67、HR106 回、
体温 39.0 度、SAT96%、右項部に圧痛あり。
【検査結果】血液生化学所見で白血球 4,330/μl、血
小板 12.7万/μl、CRP 25.4mg/dl、肝機能腎機能等
に異常値なし。胸部 CT にて右下肺の浸潤陰影あ
り。以上より肺炎が原因による体力低下と頸部打
撲による疼痛と診断、入院。
【 経 過 】PIPC 2g/日 で 投 与 開 始、4 病 日 に CRP
34.8 mg/dl と上昇し、痰培養で Serratia marcescens
陽 性 の 為、SBT/CPZ 2g/日 に 変 更。5 病 日 よ り
リハビリ開始、動かすと色々な部位の痛みを訴
えあり。8 病日に入院時の血液培養 2 セットより
Staphylococcus warneri 検出 19 病日再度 38 度台の
発熱と CRP の再上昇、22 病日の腰部 MRI 施行、
L3/4 で腰椎化膿性脊椎炎の所見を認め CMZ 3g/
日に変更、その後解熱と CRP の低下し、42 病日
に腰痛、発熱なく退院となった。
【考察】化膿性脊椎炎は中高年に多く発症し、起炎
菌はブドウ球菌が多い。腰背部の激痛、高熱を伴
うことが多いが、微熱や軽度の痛みで経過する場
合もある。今回、意思疎通が困難患者であり、確
定診断まで時間がかかった。血液培養で表皮ブド
ウ球菌が出た時点で積極的な問診と診察が必要で
あったと考えられた。
1)
一 般 演 題
日本医科大学付属病院 臨床研修センター/ 2)同 総合
診療センター
◯豊原瑛理 1)、藤本将友 1)、田中啓広 2)、小野寺麻加 2)、
三枝太郎 2)、兵働英也 2)、若栗太朗 2)、須崎 真 2)、
桐木園子 2)、小野寺直子 2)、小原俊彦 2)、川井 真 2)、
安武正弘 2)
【症例】81 歳、女性
【主訴】左季肋部痛
【既往歴・既存症】虫垂炎、帝王切開、小腸捻転・
部分切除後、糖尿病
【現病歴】当院転院の 1 ヶ月位前より、体動時の
左季肋部痛が出現。症状が徐々に悪化し、転院の
4 日前には 39 度台の発熱も出現したため、某院を
受診。S 状結腸捻転、腎盂腎炎が疑われ、入院に
て大腸内視鏡による減圧術及び FOM 投与が施行
された。発熱は改善するも左季肋部痛は持続した
ため、急性腹症の精査・加療目的にて当院消化器
外科転院となる。抗菌薬は LVFX に変更し継続投
与とし、大腸内視鏡にて減圧行うも症状改善せず。
整形外科関連疾患の可能性は少ないとのことで、
転院 4 日目に総合診療科転科となる。
【現症】体温 36.9 度、連続する複数の左肋骨・肋間
で背側から季肋部にかけて圧痛あり。皮疹はなく、
神経学的にも特記すべき所見なし。
【検査結果】血液所見:WBC 8,200/μl、CRP 5.10mg/
dl、プロカルシトニン 0.16ng/ml、LDH 195 IU/l、
ALP 226 IU/l、TP 7.2mg/dl、Cre 0.77mg/dl、Glu
151mg/dl、フェリチン 203ng/ml、尿定性:蛋白 (–)、
潜血 (–)、白血球 (–)
【経過】胸・腹部 X 線 CT で明らかな感染源は認
めず消化器疾患も否定的であったが、CRP 高値が
持続するため、非感染性炎症性疾患、悪性腫瘍の
除外目的にて転科 13 日目にガリウムシンチを施
行。胸椎に有意な集積を認めた。5 日後に施行し
た MRI にて、第 6~9 胸椎にかけての化膿性脊椎炎・
硬膜外膿瘍と診断され、整形外科転科となった。
【考察】化膿性脊椎炎は比較的まれな疾患であるが、
腰・背部痛のない症例も多いために診断・治療が
遅れ、予後不良の経過をとることが少なくない。
加齢や糖尿病など免疫力の低下が予想される症例
で、腰・背部痛や神経根痛がある場合は本症を必
ず鑑別する必要がある。
−147−
一 般 演 題
九州大学病院 総合診療科
◯高山耕治、古庄憲浩、田中佑樹、加藤禎文、浦 和也、
加勢田富士子、平峯 智、志水元洋、小川栄一、
村田昌之
−146−
O-122
左季肋部痛で紹介され診断に苦慮した
胸椎化膿性脊椎炎の一例
九州大学病院 総合診療科
原土井病院 九州総合診療センター
◯小川栄一 1)、古庄憲浩 1)、村田昌之 1)、志水元洋 1)、 豊田一弘 1)、林 純 2)
2)
一般演題【症例報告 27(感染症)】
一般演題【症例報告 27(感染症)】
O-123
一般演題【症例報告 28(感染症)】
当科で経験した感染性脊椎炎の 10 例
O-124
感染性後腹膜嚢胞の1例
1)
1)
国立病院機構仙台医療センター 総合診療科 臨床研修
医/ 2)同 総合診療科
◯寺村聡司 1)、高橋広喜 2)、高野由美 2)、森 俊一 2)、
鈴木森香 2)、田所慶一 2)
東京都済生会中央病院 総合診療内科・神経内科/
同 総合診療内科
◯足立智英 1)、谷山大輔 2)、小池 宙 2)、荒川千晶 1)
2)
【症例】36 歳、男性
【主訴】腰痛・発熱
【既往歴】幼少期よりアトピー性皮膚炎。30 歳時
に L4/5 の椎間板ヘルニア手術。
【現病歴】29 歳時に整形疾患精査目的で MRI 施
行、後腹膜の嚢胞性腫瘍を指摘されたが経過観察
となった。30 歳時の腰椎椎間板ヘルニア手術後も
時々腰痛を自覚し、前医にて硬膜外ブロック注射
を受けていた。直近の硬膜外ブロックは 201X 年 5
月中旬に施行された。同年 7 月上旬より誘因なく
腰痛の増強が認められ、発熱も出現した。翌日に
前医を受診し、38.9℃の発熱に加え、炎症反応高値
を認めた。造影 MRI を施行したところ、以前から
認められた後腹膜嚢胞性病変部に一致して、T1 強
調画像で低信号、T2 強調画像で高信号を示す病変
を認め、膿瘍形成が疑われ当科へ紹介となった。
【入院時現症】血圧 111/66mmHg、脈拍 89/分、体
温 40.0℃。腹部は平坦で右腹部に圧痛および反跳
痛あり、右背部に叩打痛あり。
【検査結果】血液検査では WBC 26,400/μl、CRP
31.1mg/dl と炎症反応は高値を呈していた。貧血
や肝胆道系酵素の上昇なく、蛋白尿や血尿もなく、
血液培養と尿培養は陰性であった。
【入院後経過】後腹膜膿瘍の診断で抗菌薬による保
存的治療を開始。発熱や腹部所見も軽減し、炎症
反応は緩徐に改善していたが、治療 3 日目の CT
では膿瘍の増大(長径 40 → 50mm)を認めたた
め、CT ガイド下ドレナージ術を施行した。嚢胞
内容液は膿性であり、培養の結果、Streptococcus
Pyogenes が検出された。ドレナージ後、発熱や炎
症反応は速やかに改善し、ドレナージ 7 日目の CT
で膿瘍の縮小を認めたためドレーンを抜去し翌日
に退院となった。
【結語】後腹膜嚢胞は、後腹膜腫瘍の 3〜6%を占
める稀な腫瘍で、リンパ管腫が多い。以前から認
めていた後腹膜腫瘍に膿瘍を形成した 1 例を経験
したので報告する。
−148−
O-125
一般演題【症例報告 28(感染症)】
明らかな食事歴を認めなかった
腸管出血性大腸菌による溶血性
尿毒症症候群(EHEC-HUS)の成人例
1)
東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病センター
済生会 横浜市南部病院
◯竹内泰三 1)、佐々木陽典 1)、斉藤隆弘 1)、小松史哉 1)、
鈴木健志 2)、山田篤志 1)、河越尚幸 1)、田中英樹 1)、
前田 正 1)、城戸秀倫 1)、石井孝政 1)、渡辺利泰 1)、
宮崎泰斗 1)、原 規子 1)、本田善子 1)、財 裕明 1)、
島田長人 1)、中嶋 均 1)、瓜田純久 1)
2)
【症例】30 歳、女性
【主訴】腹痛・水様性下痢
【既往歴・既存症】なし
【現病歴】入院前日より持続的腹痛と水様便が 10
回以上あった為、受診。整腸剤を処方され帰宅し
たが症状が改善せず、未明に再受診して入院となっ
た。
【入院時現症】全身状態不良で腹部正中~下腹部に
かけて強い圧痛を認め、腹部全体に叩打痛を認め
たが反跳痛はなかった。
【検査結果】血液検査では白血球 14,600/μl、CRP
5.7mg/dl、Alb 2.9g/dl と強い炎症を示唆する所見
を認め、腹部造影 CT で上行結腸優位に結腸全体
に及ぶ著明な全周性の腸管壁肥厚を認めた。
【経過】特徴的な食事歴はなく、著明な腹部圧痛と
CT での著しい腸管浮腫所見から症状の強い細菌性
結腸炎の診断で CPFX と MNZ 併用投与を行った。
入院 3 日目に便培養からベロ毒素産生株の EHEC
O-157 が検出された。腹痛・下痢が改善していた
こともあり、直ちに抗菌薬を中止したが、その後
より、急激な血小板減少、進行性の溶血性貧血、
乏尿を認め、EHEC-HUS の診断に至った。輸血を
含めた支持療法を行なったところ、徐々に症状が
改善し、無事退院となった。
【考察】EHEC-HUS は小児例が多く、成人例は稀
である。EHEC 感染症を示唆する食事歴が得られ
なかったこともあり、HUS 発症を想定せずに抗菌
薬が投与された反省を踏まえ、EHEC 感染症の早
期診断や HUS 発症予測等に関して考察した。
【結語】特徴的な食事歴を欠いた EHEC 感染症も
存在する為、食事歴に加えて臨床症状(右下腹部痛、
血便、無熱が多い)、特徴的 CT 所見(3 層構造を
伴う著しい結腸壁肥厚)を知っておくことが重要
である。HUS 発症危険因子としては年齢(5 歳以
下)、白血球数・CRP 高値、蛋白尿、下痢の持続(3
日以上)、止痢薬が報告されており、抗菌薬に関し
て一定の見解は得られていないが、使用・選択に
際して慎重な検討が必要と考えられる。
O-126
気腫性膀胱の一例
独立行政法人国立病院機構 高崎総合医療センター 総合
診療科・内科
◯沼尻一樹、佐藤正通、渡辺俊樹、合田 史
【症例】64 歳、女性
【主訴】発熱、血尿
【現病歴】14 年前より本態性高血圧症、10 年前よ
り 2 型糖尿病の治療を継続。アルコール性肝障害・
膵炎等の診療歴あり。平成 27 年 3 月大腿部熱傷の
ため植皮術施行しインスリン自己注射開始となっ
た。平成 27 年 4 月中旬発熱出現。血尿出現、起立
困難となり紹介となった。
【 現 症 】JCS 1、 体 温 37.5 ℃、 脈 拍 97bpm、 血 圧
160/60mmHg、呼吸数 22/分。腹部膨満、下腹部
に軽度の圧痛を認めた。尿は暗赤色、悪臭あり。
採血から、白血球増多、炎症反応異常高値、血糖
値 465mg/dl であった。血液ガス分析では代謝性
アシデミアは認められていない。
【経過】尿カテーテル挿入後、腹部 CT 検査により
膀胱壁肥厚及び気腫化、膀胱周囲間質に大量の気
腫を認める他、両側水腎、水尿管を認めた。尿の
流出は良好であり、大量補液、血糖補正及び抗生
剤投与による治療を開始。全身状態、血糖値は改善。
第 7 病日より歩行、摂食可能となり、CT 検査では
水尿管、水腎症は改善、膀胱壁、膀胱周囲の気腫
は著しく減少し、第 18 病日退院となった。血液培
養検査では複数回陰性であったが、尿検体を用い
た検査では大腸菌に加え、Serratia macrcescens、
Enterobacter aerogenes が検出された。
【考察】この度我々は、糖尿病罹患中に発症した気
腫性膀胱の一例を経験した。本例は抗生剤治療の
みで軽快に至っているが、状態によっては外科的
膀胱切除が必要な病態である。尿より検出された
細菌はいずれも通性嫌気性菌のみであった。大腸
菌を始めとする嫌気性菌はしばし尿路系気腫性病
変の原因菌として報告され、常在菌ではあるが、
重症、複雑性細菌感染症を引き起こす可能性があ
る。本例において検出された細菌では薬剤耐性は
認められなかったが、近年、セラチア菌などの耐
性化が問題視されている。
−149−
一 般 演 題
一 般 演 題
【目的】近年、人口の高齢化などに伴い感染性脊椎
炎の増加が報告されている。当科で経験した感染
性脊椎炎症例について報告する。
【 方 法 】2012 年 11 月 1 日 か ら 2015 年 10 月 31 日
の 3 年間に当科に入院した 1,370 例から、感染性脊
椎炎と診断した例を対象とした。対象の年齢、基
礎疾患、原因菌、病変部位、合併症について検討
した。
【結果】化膿性脊椎炎 9 例、結核性脊椎炎 1 例を認
め た。 年 齢 は 52〜90 歳、 平 均 68 歳、 全 員 男 性。
腰背部痛は全例に認めたが、発熱は 8/10 例だった。
部位は腰椎 8 例、胸椎 2 例。原因菌は椎体穿刺を
6 例 に 行 い。 肺 炎 球 菌、MSSA、MRSA、 緑 膿 菌
が各 1 例、不明 2 例。その他の例では血液培養で
MSSA 1 例、MRSA 1 例、Klebsiella pneumoniae 1 例、
Streptococcus oralis 1 例を検出した。腸腰筋膿瘍 4 例、
硬膜外膿瘍 1 例の合併を認めた。感染性心内膜炎、
糖尿病、悪性腫瘍、RA に対するステロイド投与
などの基礎疾患が存在する例が多かったが、2 例
では基礎疾患を認めなかった。
【症例提示】
症例 1:68 歳男性。5 ヶ月前から腰痛、左下肢痛
があり徐々に増悪、疼痛のため歩行も困難になっ
た た め 入 院。 腰 椎 MRI で L3-4 に T2WI 高 信 号、
右腸腰筋に膿瘍を認めた。化膿性脊椎炎と診断、
椎体穿刺を行ったが起炎菌は同定できなかった。
CTRX を 8 週間継続、整形外科にて椎弓切除術も
施行、軽快した。
症例 2:61 歳男性。1 ヶ月前から腰痛を自覚、マッ
サージなどで様子を見ていたが改善せず、微熱も
見られる様になったため精査のため入院。腰椎
MRI で L1-2 に化膿性脊椎炎の所見を認めた。椎体
穿刺により肺炎球菌を認め、ABPC 8g/日 6 週間治
療し改善した。
【結論】感染性脊椎炎は頻繁に遭遇する疾患では
ないが、糖尿病、悪性腫瘍などの基礎疾患がある
症例での発熱、腰背部痛では鑑別診断として考え
ておくことが重要と考えられる。
一般演題【症例報告 28(感染症)】
一般演題【症例報告 29(感染症)】
O-127
一般演題【症例報告 29(感染症)】
O-128
抗凝固療法を施行した
Lemierre 症候群の一例
劇症型溶連菌感染症の 1 例
1)
青森県立中央病院 総合診療部/ 2)同 産婦人科/
同 外科
◯葛西智徳 1)、村上祐介 1)、佐藤光亮 1)、伊藤勝宣 1)、
横山美奈子 2)、堤 伸二 3)
飯塚病院 総合診療科
◯佐々木充子、中澤太郎、松本弥一郎、棟近 幸、
齊藤悠太、岡村知直、江本 賢、吉野俊平、井村 洋、
小鶴三男
3)
【症例】26 歳、男性
【主訴】発熱
【既往歴】喘息
【現病歴】受診 7 日前より発熱、咽頭痛が生じ、近
医にて LVFX、NSAIDs を処方された。内服後も
発熱が持続し、少量の喀血があった。近医を再診し、
血小板 1.8万/μl、CRP 38mg/dl と血小板減少、炎
症反応亢進を認め、当院へ紹介された。
【経過】来院時、右頚部に圧痛を伴う索状物を触知
し、造影 CT で右内頚静脈の血栓、両肺の多発結
節影を認め、Lemierre 症候群の診断で ABPC/sbt
を開始した。第 2 病日に酸素化が低下し、挿管・
人工呼吸管理を開始した。以後も発熱が持続し、
第 6 病日の CT で右内頚静脈の血栓が頭側方向に
増大し、両肺の多発結節影も増大・増加していた
ため、同日よりヘパリンによる抗凝固療法を開始
した。血液培養から Fusobacterium necrophorum を
検出し、第 8 病日より全身に紅色丘疹が出現した
ため、薬疹を疑い ABPC/sbt から MNZ に変更し
た。呼吸状態は徐々に改善し、第 10 病日に抜管し
た。血栓は残存しており、ワルファリンの内服に
変更し、第 50 病日に退院した。抗菌薬は計 10 週
間投与した。
【考察】Lemierre 症候群に対する抗凝固療法につ
いては議論があるが、血栓傾向を示す場合、内頚
静脈血栓が海綿静脈洞などに逆行性に進展する場
合、48〜72 時間の抗菌薬治療で臨床的に改善しな
い場合に検討される。本症例では抗菌薬治療で改
善せず、内頚静脈血栓が頭側へ進展したため、抗
凝固療法を併用し改善した一例であった。
−150−
O-129
一般演題【症例報告 30(感染症)】
O-130
当院で検出された MRSA における
SCCmec type 別の病原性遺伝子に
関する検討
健康な人に発症した Rothia dentocariosa
による多発肺膿瘍の一例
1)
済生会唐津病院
◯千布 裕
九州大学病院 総合診療科
原土井病院 九州総合診療センター
◯村田昌之 1)、加勢田富士子 1)、豊田一弘 1)、浦 和也 1)、
志水元洋 1)、迎 はる 1)、小川栄一 1)、古庄憲浩 1)、
林 純 2)
2)
【はじめに】Rothia dentocariosa は口腔内常在菌で
あり、健康な人に重篤な感染症をおこすことは非
常にまれにである。
【症例】38 歳、男性
【主訴】咳嗽、体重減少
【既往例】特記事項なし
【生活歴】飲酒なし 喫煙 1 〜 2 本/日
【現病歴】健康にすごしていた。口腔内に特に疾病
なし。X 年 7 月より咳嗽持続した。咳嗽は 乾性咳
嗽で血痰なし。近医にて CFDN 投与されたが改善
せず。X 年 8 月 21 日当科紹介となった。2 か月で
10kg の体重減少あり。体部 CT 検査施行され多発
肺腫瘍あり。8 月 26 日精査加療目的 で入院となる。
【入院時現症】169cm、53.7kg、胸部腹部異常なし、
皮膚にカフェオレスポット多発、リンパ 節腫大な
し
【家族歴】父 Recklinghausen 病
【経過】入院後気管支鏡施行した。悪性細胞は検
出されず。喀痰、気管支洗浄液より nocarida spp
と 思 わ れ る 菌 が 検 出 さ れ た。 同 定 検 査 で Rothia
dentocariosa はと同定された。ST 合剤 1,000mg と
ABPC/SBT 静注 6g/日併用で 4 週間加療し、状態
は改善した。その後 ST 合剤単独で外来加療を施
行している。
【考察】Rothia dentocariosa はによる感染症として
は、口腔内感染症や心内膜炎の報告が散見される。
肺感染症は、白血病や肺癌患者などの易感染患者
での報告があるのみである。この症例のように健
康な人に発症した肺膿瘍ははきわめてまれとおも
われる。画像上血行性感染が疑われたため、心臓
超音波検査を施行したが、感染性心内膜炎は指摘
できなかった。
【まとめ】Rothia dentocariosa はは、健康な人でも
肺膿瘍の起炎菌となることが示された。
【 目 的 】 当 院 で 検 出 さ れ た MRSA に つ い て、
SCCmec type 別の病原性遺伝子の保有による疫学
的解析について検討する。
【方法】対象は 2015 年 1 月 1 日から 3 月 15 日まで
に当院の 17 診療科から検出された MRSA の内、
重複検体を除いた 74 株。PCR で SCCmec typing
と 7 種 類 の 病 原 性 遺 伝 子(tst 、sea 、seb 、seh 、
seq 、eta 、etb )を検出し、SCCmec type 別の病原
性遺伝子の保有パターンを検討した。
【結果】MRSA74 株の SCCmec は、I 型;13 株、Ⅱ
型;16 株、Ⅲ型;1 株、Ⅳ型;33 株、Ⅴ型;6 株で、
全体 の病原性遺伝子保有数(%)は、tst;18 株(24)、
sea ;12 株
(16)、seb ;16 株(22)、seh ;10 株(14)、
seq;13 株
(18)、eta;1 株(1)、etb;1 株
(1)であった。
SCCmec type 別の病原性遺伝子パターンは、Ⅰ型;
1 パターン(病原性遺伝子陰性)、Ⅱ型;5 パターン
(seb 、seq ;3 株、seb ;9 株、tst 、seb 、seq :2 株、
tst 、seb :1 株、tst :1 株)
、Ⅲ型;1 パターン(tst )、
Ⅳ型;6 パターン(sea 、seh 、seq :8 株、sea :4 株、
seh:2 株、陰性:5 株、tst:13 株、seb:1 株)
、Ⅴ型;
3 パターン(eta ;1 株、etb :1 株、陰性:4 株)の
16 パターンに分類された。SCCmec Ⅱ型とⅣ型で
病原性遺伝子の保有パターンが異なり、Ⅱ型では
tst と seq 、Ⅳ型で は tst 、sea 、seh の保有パターン
で分類が可能であった。
【結語】SCCmec Ⅱ型およびⅣ型 MRSA は、病原
性遺伝子の保有パターンから疫学的解析に利用で
きる可能性が示唆された。
−151−
一 般 演 題
一 般 演 題
汎発性腹膜炎により開腹術が施行された 41 歳女
性。術後 DIC、多臓器不全、ARDS を併発。腹水
より A 群溶連菌が検出され総合診療部にて全身管
理を行う。CRRT、呼吸管理などを経て改善した。
全国的に劇症型溶連菌感染症の増加が指摘されて
おり、腹膜炎にて発症した症例について報告する。
一般演題【症例報告 29(感染症)】
一般演題【症例報告 30(感染症)】
O-131
一般演題【症例報告 30(感染症)】
O-132
犬による擦過傷で発症した
カプノサイトファーガによる
敗血症の1例
ケアミックス病院における病棟機能別
の大腸菌の薬剤感受性の検討
1)
公立置賜総合病院 総合診療科/ 2)同 臨床検査部/
同 救命救急センター
◯高橋 潤 1)、工藤慎也 2)、渡辺寛道 2)、高橋美咲 2)、
市川真由美 2)、伊藤千栄子 2)、荒木有宇介 3)
原土井病院 総合診療科
◯坂本篤彦、鍋島篤子、上山貴継、小森彩佳、林 純
3)
カプノサイトファーガ感染症は本邦での報告はま
だ少なく、2009 年までに 20 例ほどである。今回、
犬にひっかかれて発症した敗血症の症例を経験し
たので文献的考察などを加えて報告する。
症例は 83 歳女性で、平成 27 年 4 月 26 日に隣の家
の飼い犬に左頬をひっかかれ受傷。28 日より発熱、
局所の腫張あり 30 日に 39 度台の発熱、意識障害
が出現したため当院 ER へ救急搬送された。同日
入院で治療開始。血液培養の嫌気性ボトルでカプ
ノサイトファーガが陽性。国立感染症研究所に相
談し遺伝子解析などを行っていただいたのでその
詳細を報告する。
−152−
O-133
一般演題【症例報告 31(感染症)】
第三世代セフェム薬が有効であった
バングラデシュ人留学生による
腸チフスの一例
O-134
血清フェリチンが著明高値を呈した
腸チフスの 2 例
1)
国立病院機構別府医療センター 総合診療科
◯久保徳彦、児玉真由子
【諸言】腸チフスは、マラリア、デング熱と共に発
熱を主訴とする代表的な輸入感染症の一つである。
近年、南・東南アジア地域においてニューキノロ
ン系抗菌薬に低感受性の腸チフス菌 が出現してお
り、低感受性例では第三世代セフェム薬やマクロ
ライド系抗菌薬による治療が推奨されている。今
回、私共はバングラデシュから来日後に腸チフス
を発症し、CPFX に抵抗し CTX が有効であった腸
チフスの一例を経験したので報告する。
【症例】23 歳、男性。平成 25 年にバングラデシュ
より来日した留学生。平成 27 年 9 月 15 日より母
国に帰国し、25 日日本に入国した。10 月 14 日よ
り発熱し、その後も解熱せず全身倦怠感も強いた
め、21 日当科外来を受診した。 受診時、意識清明、
体温 38.5℃、血圧 99/62mmHg、心拍数 91/分であり、
呼吸器症状や消化器症状なく、背部に径 3mm 程
の皮疹を数個認めた。血液学所見は白血球数正常、
血小板減少、肝機能障害、CRP=21.26 であり、同
日入院となった。胸~腹部 CT 画像で肝脾腫は認
めず、回盲部付近のリンパ節腫大を認めるものの
腸管壁肥厚は認めなかった。入院後は 40℃以上の
発熱が続き、心拍数 80/分程度で経過、背部に皮疹
を認め、血液培養から Salmonella Typhi が検出され、
腸チフスと診断した。22 日より CPFX 600mg/日
投与を開始したが、その後も解熱せず、肝機能障
害が増悪したことから、26 日に CTX 8g/日へ変更
した。28 日より解熱、11 月 9 日血液学所見で炎症
反応の改善を確認し、CTX は同日終了した。その
後も再燃なく、12 日退院となった。
【結語】熱帯・亜熱帯地方に滞在歴がある発熱症例
は、マラリア、デング熱に加え、腸チフスも念頭
に置き診療することが重要である。近年、ニュー
キノロン系抗菌薬に感受性パターンを示しても低
感受性となる腸チフス菌が報告されており、注意
が必要である。
東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病セン
ター/ 2)同 消化器センター内科
◯宮﨑泰斗 1)、前田 正 1)、佐藤高広 1)、福井悠斗 1)、
河越尚之 1)、田中英樹 1)、佐々木陽典 1)、城戸秀倫 1)、
石井孝政 1)、渡邉利泰 1)、原 則子 1)、本田善子 1)、
松清 靖 2)、財 裕明 1)、島田長人 1)、中嶋 均 1)、
瓜田純久 1)
【はじめに】慢性炎症の病態での血清フェリチン値
上昇は広く知られる一方、5,000ng/ml 以上では血
球貪食症候群や成人 still 病、悪性リンパ腫など限
られた疾患が多いと報告されている。今回我々は、
腸チフス(Typhoid fever)にて入院加療を行なっ
た 2 症例において血清フェリチンが著明高値を呈
したため報告する。
【症例 1】28 歳、女性。インド出身。38~40℃の
発熱が 1 週間続き、近医での加療に反応せず当院
を受診。症状が強く、炎症反応上昇と肝障害、脾
腫を認め、LDH 1,025 U/l、血清フェリチン 6,794
ng/ml と著明高値から血球貪食症候群が懸念され
入院した。血液培養より Salmonella Typhi が検出
され、CPFX 点滴にて症状の改善を認めた。キノ
ロン系薬の感受性は良好だったがナリジクス酸に
耐性を示したため、CTRX に変更して 14 日間の投
与を行い軽快退院した。
【症例 2】41 歳、男性。39℃の発熱が 2 週間続き、
他院での加療に反応せず紹介受診。炎症反応上昇
と肝障害、脾腫を認め、LDH 1,225 IU/l、血清フェ
リチン 5,310ng/ml と著明高値であった。成人 still
病が懸念され入院したが、インド渡航歴があり腸
チフスを考え CTRX 点滴を開始したところ症状
の改善を認めた。血液培養にて Salmonella Typhi
が検出されナリジクス酸耐性を示したが、他の薬
剤感受性は良好で 14 日間の CTRX 点滴を行い軽
快退院した。経過中の血清フェリチン最高値は
9,092ng/ml であった。
【考案】2 症例ともインド渡航歴があったが、症状
が強く血清フェリチンの著明高値から当初は血液
疾患や膠原病が懸念された。腸チフスでは発症早
期より鉄代謝ホルモンであるヘプシジンの発現が
亢進するとの報告があり、血清フェリチンが著明
高値を示す場合は同症も考慮する必要があると考
えられた。
−153−
一 般 演 題
一 般 演 題
【目的】療養型病床における病原菌の薬剤感受性に
関する報告は乏しい。療養型病床における病原菌
の薬剤耐性化の一端を明らかにすることを目的に、
当院の療養型病床における大腸菌の薬剤感受性の
現状を調査し、一般病床、リハビリ病床との比較
検討を行う。
【方法】2014 年 10 月より 2015 年 9 月までに当院
の臨床検体から分離された大腸菌の全株を対象と
し、薬剤感受性を一般病床(地域包括ケア病床を
含む)、リハビリ病床、療養型病床の病床機能別に
集計した。なお、セファロスポリン系薬の感受性
判定は ESBL 産生株においても MIC を基準に行っ
た。
【結果】大腸菌は一般病床 / リハビリ病床 / 療養型
病床(以下、同様)で 91/29/145 株分離されてお
り、その薬剤感受性率は ABPC 47%/41%/26%、
CEZ 56 %/55 %/32 %、 CMZ 99 %/100 %/100 %、
CTRX 65 %/55 %/39 %、CAZ 87 %/59 %/60 %、
IPM 100%/100%/100%、LVFX 47%/41%/21%、
AMK98%/100%/99%であった。ESBL 産生率は
37%/45%/61%であった。
【考察】療養型病床では大腸菌の ESBL 産生率は 6
割を超え、セファロスポリン系薬やフルオロキノ
ロン系薬に対する感受性は一般病床と比べて著し
く低下していた。療養型病床においてはこれらの
薬剤による大腸菌感染症の治療はますます困難と
なってきており、抗菌薬適正使用の観点から、適
切な検体採取・初期治療と de-escalation の徹底な
どの対策が必要と考えられる。また、療養型病床
における大腸菌の耐性化には ESBL 産生菌の増加
の寄与も大きいことから、標準予防策・接触感染
予防策などの感染対策も重要である。
【結論】療養型病床では大腸菌の耐性化が進んでい
ることが示唆された。
一般演題【症例報告 31(感染症)】
一般演題【症例報告 31(感染症)】
O-135
一般演題【地域医療 3】
九州大学病院における
渡航外来の現状について
O-136
一般演題【地域医療 3】
九州大学病院 総合診療科/ 2)同 グローバル感染症セ
ンター 総合診療科
◯豊田一弘 1)2)、加勢田富士子 1)、浦 和也 1)、村田昌之 1)、
古庄憲浩 1)
京都府立医科大学 総合診療部/ 2)同 消化器内科
◯阪上順一 1)、十亀義生 1)、白波瀬真子 1)、浅野麻衣 1)、
上山知己 1)、入江 仁 1)、内山和彦 1)、坂井亮介 1)、
小泉 崇 1)、岡山哲也 1)、松原 慎 1)、楳村敦詩 1)、
水谷信介 1)、滋賀健介 1)、田中武兵 1)、白山武司 1)、
谷口隆介 1)、鎌田 和浩 1)、山脇正永 1)、伊藤義人 2)
【目的】特定機能病院では紹介率と逆紹介率は相関
する。当院 34 診療科での紹介数、逆紹介数を検討
し、総合診療医における紹介数と逆紹介数の関係
を解明する。
【方法】平成 26 年度の診療科別、医師別の年間紹
介数、逆紹介数を集計した。一次相関関係を解析
し P ≦ 0.001 を強相関、0.001<P<0.05 を弱相関、P
≧ 0.05 を無相関とした。
【結果】全診療科合計での紹介数、逆紹介数は強相
関した。強相関は眼科、耳鼻咽喉科、循環器内科、
小児科、消化器内科、神経内科老年内科、整形外科、
精神科心療内科、総合診療部、泌尿器、放射線科
で認められ、弱相関は血液内科、歯科、小児外科、
小児循環器腎臓、小児心臓血管外科、消化器外科、
腎臓内科、内分泌糖尿病、皮膚科、膠原病リウマ
チ科であった。無相関は移植一般外科、感染症科、
救急医療科、形成外科、呼吸器外科、呼吸器内科、
産婦人科、周産期産科、心臓血管外科、漢方外来、
内分泌乳腺外科、脳神経外科、疼痛緩和ケア科で
あった。
【考察】当院全体では紹介数と逆紹介数は強い相関
関係にある。総合診療部は強い相関関係がある診
療科であった。
【結論】総合診療医による逆紹介数増加は、紹介数
増加に繋がりうる。
−154−
O-138
整形外科、外傷中心の病院における
総合診療部門の役割
1)
独立行政法人 国立病院機構 広島西医療センター 看
護部外来/ 2)同 総合診療科/ 3)同 看護部外来
◯東江里香 1)、木村一紀 2)、多川麻恵 3)、久保口綾子 3)、
藤村和恵 3)、平崎奈美恵 3)、濵口富江 3)、生田卓也 2)、
中村浩士 2)
【目的】A 病院は病床 440 床(一般病床 200 床重心
120 床筋ジス 120 床)を有する広島県西部 2 次医療
圏の中核病院である。総合診療科は 2 年前に立ち
上がり、昨年までは内科に総合内科医が配置され
ていた。新患対応は専門内科医師も担い、救急患
者は、曜日別担当医制で診療を行っていた。2015
年 4 月より総合診療科が内科から独立し、新患外
来の窓口が一元化された。現在、総合診療科開設
半年を経過し、その成果及び各部門に与える影響
について、アンケート調査を行い評価する。
【方法】院内のコメディカルを含めた全職種、地域
の医師、総合診療科を受診した患者を対象とした
アンケート調査を実施。研究内容は口頭で説明し、
アンケート回答で同意を得たとし た。
【 結 果 】 ア ン ケ ー ト 回 収 総 数 180 名。 回 収 率
80.5%。アンケート結果は、院内の医師からは救急・
新患対応に対する期待、精査や全人的医療の推進
を求める(70%)地域の医師からは、紹介患者の
スムーズな引き受けや救急医療体制の強化を求め
る(88%)患者からは、窓口が一元化され分かり
やすく受診しやすくなった(71%)という意見が
多かった。再診患者の時間調整等により、新患患
者の待ち時間を短縮できればという意見もあった。
【考察】当院の専門内科医師より、専門性を発揮し
やすくなったとの意見から内科診療が整備できて
きたといえる。又、受診患者より、窓口が一元化
されてわかりやすくなったとの意見から、患者満
足度の向上が示唆された。しかし、待ち時間調整
についての意見もあり、今後の検討課題と考える。
【結語】院内外の声を収集・分析することで、総合
診療部門が担うべき役割、機能を認識でき、今後
の課題が明らかとなった。
社会医療法人緑泉会 米盛病院 救急科総合診療部門
◯松木薗和也
【はじめに】当院は以前は整形外科単科病院であっ
たが、2013 年に救急科を新設し、2014 年の移転時
に外傷センターを併設した。また、この機に救急
科内に循環器部門、総合診療部門を配置した。ド
クターカー、救急医療ヘリコプターを導入したこ
ともあり、救急患者、殊に外傷患者が増加した。
一方で、法人には従来から当院の他に 2 つの整形
外科クリニックがあり、当院へは手術目的で入院
するケースが圧倒的多数を占める。移転と総合診
療部門の開設から 1 年を経たため、実績を振り返
るとともに当科の役割を総括する機会とした。当
院においては総合診療部門(以下「当科」)は救急
科の一翼を担う。そして、総合診療部門、循環器
部門以外の救急医は一般的な外傷を中心とした救
急患者の診療を担当する。当科は救急科として、
外傷以外の患者を直接担当する一方で、救急科扱
い以外の他科、即ち整形外科からのコンサルテー
ションを受け問題解決に務める。
【方法】今回の集計においては、整形外科からのコ
ンサルテーションについて集計を行った。また、
診療録に記録が残っているケースを対象とした。
対象期間は移転・当科設置の 2014 年 9 月から 1 年
間を当初予定したが、2014 年 9 月の移転・当科設
置は月の半ばであったことを考慮し、2015 年 9 月
までの 13 ヶ月間とした。
【結果】整形外科から当科への対診件数は 50 件で
あった。対診理由の内訳は、術前検査での胸部画
像異常が最多であった。一方で、胸部疾患・呼吸
状態不良が理由となって全身麻酔手術に至らな
かった症例は皆無であった。それ以外の対診理由
として、術前・術後の発熱に依る熱原因精査およ
び治療など整形外科領域以外の問題点であるケー
スが目立った。呼吸器系疾患への対応がある一方
で、高齢者に特有とされる疾患・病態が比較的目
立つ結果となった。その他の結果と合わせて 13 ヶ
月間の当科の役割について総括する機会としたい。
−155−
一 般 演 題
一 般 演 題
【目的】近年、海外渡航者の増加に伴い、渡航先で
の感染症罹患や輸入感染症が増加している。当科
では 2011 年に渡航外来を始め、渡航先の生活環
境・感染情報の提供、予防接種、輸入感染症など
診療を行っている。今回、2011 年から 2015 年ま
での当科における渡航外来患者の現状ついて検討
を行った。
【対象と方法】対象は、2011 年 11 月から 2015 年 9
月までの渡航外来受診者 668 例(平均年齢 34.4 歳、
男性 381 例、女性 287 例)で、渡航目的、渡航地域、
ワクチン接種、狂犬病暴露後ワクチン接種、マラ
リア予防内服処方、輸入感染症などについて調査
した。
【結果】受診者は、20~40 歳代が 70%以上と主流
を占めた。渡航目的は、仕事 367 例(夫・親の付
き添いを含む)(58%)、留学 70 例(11%)、観光
56 例(9%)と、仕事関連の渡航が多かった。渡航
地域は、東南アジア 291 例(44%)、東アジア 134
例(20%)、北アメリカ 69 例(10%)、南アジア 38
例(6%)、アフリカ 38 例(6%)と、アジア地域へ
の渡航が多かった。ワクチン接種は、575 例(86%)
に行い、そのうち、A 型肝炎 437 例(28%)、B 型
肝炎 330 例(21%)、破傷風 366 例(24%)、狂犬病
189 例(12%)、日本脳炎 173 例(11%)であった。
狂犬病暴露後ワクチン接種は、20 例で、暴露翌日
以降の接種は 11 例(55%)と遅れて接種していた
症例が多かった。マラリア予防内服は 16 例で、ア
フリカへの渡航者が 10 例(63%)と多くを占めた。
輸入感染症では発熱、消化器症状を呈する症例が
多く、デング熱の入院例もあった。
【考察】当科の渡航外来を受診する患者は、アジア
地域へ仕事目的での渡航者が多かった。狂犬病暴
露後ワクチン接種の必要性の認識が低く、啓蒙が
必要と考えられた。総合診療医として渡航医学・
輸入感染症に対する診療も必要である。
1)
一般演題【地域医療 3】
総合診療科開設半年後の評価
~全職種及び患者アンケート調査を
実施して~
総合診療医の紹介数と逆紹介数の関係
1)
O-137
一般演題【症例報告 32(感染症)】
O-139
一般演題【症例報告 32(感染症)】
O-140
本邦で発症した
非熱帯熱マラリアの 1 例
胸水貯留を呈した第 2 期梅毒の一例
岡山大学病院 総合内科
◯李 大賢、大重和樹、岩室雅也、長谷川功、柏原尚子、
花山宜久、三好智子、草野展周、大塚文男
国立病院機構 九州医療センター 総合診療科
◯太田(畑島)梓、永樂訓三、岸原康浩
【症例】30 歳代、男性、パキスタン人
【主訴】発熱・頭痛
【現病歴】20xx 年 7 月初旬から 2 ヵ月間パキスタ
ンにその後ドバイに 2 日間滞在していた。9 月 3
日に日本に入国し、4 日朝に発熱と頭痛が出現し、
近医を受診した。血液検査で血小板減少を認め、
さらに塗抹でマラリア原虫が発見されたため、同
日に当院救急外来に紹介となった。迅速検査や血
液塗抹でマラリアの診断が確定し、SpO2 の低下や
脱水も認めたため同日当科に入院となった。
【既往歴】なし
【入院後経過】血液検査は、WBC 5,340/μl、PLT 5.1
万/μl、CRP 7.78mg/dl、T-Bil 1.76mg/dl で、塗抹
標本・迅速診断キットでは三日熱マラリアと卵形
マラリアの両方が疑われたが、確定には PCR が必
要でありすぐに診断できなかった。いずれの治療
法も同様であるため、脱水に対して補液を行いつ
つ、アトバコン 750mg+プログアニル 300mg/日を
3 日間処方した。入院中に低酸素血症 と脱水は徐々
に改善し、入院 4 日目の血液塗抹でマラリア原虫
の消失が確認された。第 5 病日で退院し、その後
経過は良好であった。根治療法としてのプリマキ
ンは他院で導入する方針とした。
【考察】マラリアは世界では年間約 2 億人以上の感
染者がいるとされるが、我が国では輸入感染症と
して年間約 70 症例と多くない。特徴的な症状が発
熱と頭痛しかないため臨床的には診断が困難であ
る。海外渡航歴がある患者にはマラリア感染症を
念頭においた積極的な問診と検査が必要である。
【結語】我々は国内では貴重なマラリアの 1 症例を
経験した。
−156−
O-141
一般演題【症例報告 33(感染症)】
O-142
当院の血液培養陽性症例における
白血球およびその分画についての
臨床的検討
SFTS による脳炎像を呈し、
救命し得た一例
1)
広島市立安佐市民病院 総合診療科
◯河原章浩、原田和歌子、永井道明、小田 登、
加藤雅也
川崎市立多摩病院 総合診療内科/ 2)同 細菌検査室 聖マリアンナ医科大学病院 総合診療内科
◯山﨑行敬 1)3)、國島広之 1)3)、黒須絵莉 1)3)、照屋陽子 1)3)、
横川雅敏 1)3)、廣瀬雅宣 1)3)、酒井 翼 1)3)、内藤純行 1)3)、
土田知也 1)3)、小野嘉文 1)3)、西迫 尚 1)3)、小宮山純 1)3)、
宮本豊一 2)、松田隆秀 1)3)
3)
【はじめに】SFTS は、2006 年よりその流行が中国
で確認され、2011 年にブニヤウイルス科フレボウ
イルス属 SFTS ウイルスが原因病原体として特定
された新興感染症である。マダニによって媒介さ
れ、臨床的には発熱、消化器症状、神経症状、出
血傾向を認め、検査所見では血小板数の減少や肝
逸脱酵素の上昇を特徴とする。重症化した場合に
は、死に至る。
【症例】64 歳男性、8 月中旬、山林でイノシシの
防止柵を設置していた際、右腋下をマダニに刺さ
れた。第 4 病日、近医受診され、発熱を認めたた
め、SFTS ウイルス PCR 提出したところ、第 5 病
日、陽性報告あり、総合病院へ入院された。第 10
病日、意識レベル低下、白血球、血小板減少、フェ
リチン上昇あり、当院へ転院となった。同日より、
ステロイドパルス、血小板輸血、CHDF を開始し
た。第 12 病日、ステロイドパルス終了、不穏増強
したため、鎮静、挿管管理開始した。第 14 病日、
CHDF 終了、第 15 病日、髄液検査施行するも異常
所見は認めなかった。第 17 病日、意識レベル改善
傾向にあり、抜管、18 病日、MRI、脳波にて徐波
あり、脳炎所見を認めた。第 20 病日、発語を認め、
経口にて食事開始した。第 21 日、HSR 17 点、第
25 病日、HSR 29 点まで回復し、第 27 日退院となる。
第 58 病日、施行した MRI では脳炎所見は改善し、
高次機能障害を残さなかった。
【考察】本性例はマダニによる刺し口を認め、また
意識レベル低下しており、早期診断、治療介入が
可能であった。意識障害を併発し、病歴聴取が難
しい症例や、刺し口のない SFTS ウイルス感染の
報告もあり、肝逸脱酵素上昇、血小板減少、山間
部への移動があったこと等認めた場合、本疾患を
鑑別に入れることが必要となる。治療は対症療法
しかなく、早期に病態の把握、治療介入を行わな
ければならない。
【結語】SFTS による脳炎像を呈し、救命し得た一
例を経験した。
【目的】末梢白血球値およびその分画は、安価で最
も頻用され、迅速であるという利点のあるバイオ
マーカーである。今回、当院における血液培養陽
性症例についての白血球およびその分画における
臨床的検討を行った。
【方法】2014 年 4 月 1 日~2015 年 3 月 31 日に、川
崎市立多摩病院の当科入院患者において血液培養
が陽性となった 85 症例を対象とした。血液培養を
採取した日を day1 とし、day1 と day7 の白血球数
とその分画について比較検討した。
【結果】血液培養陽性 85 症例のうち、尿路感染症
38 例、 呼 吸 器 感 染 症 5 例、 消 化 器 感 染 症 10 例、
血流感染症 9 例、デバイス感染症 9 例、皮膚軟部
組織・筋骨格系感染症 9 例、その他が 5 例であった。
平均年齢は 73.9 歳、day1 では白血球数は 12,833/μl、
好 中 球 数 は 11,352/μl、 リ ン パ 球 数 は 763/μl、 好
中球 / リンパ球は 27.4、好酸球数は 61.2/μl、day7
ではそれぞれ 7,600/μl、5,394/μl、1,364/μl、9.42、
264/μl であった。感染症の超急性期においては、
好中球数の増加、リンパ球数の減少、好酸球数の
減少を認める傾向がみられた。
【考察】末梢白血球値は、治療効果判定・予後判定・
菌血症の有無の評価としても有用である可能性が
ある。感染症診断における最も基本的検査のひと
つであり、白血球分画を含めて感染症の病態につ
いて評価することが重要であると考えられた。ま
た、同期間中の血液培養陰性症例との比較も検討
しており、併せて報告する。
−157−
一 般 演 題
一 般 演 題
【症例】39 歳、男性。既往歴に特記事項なし。X 年
6 月 11 日に左側胸部痛が出現し、A 病院内科を受
診された。胸部単純 CT を施行され、左肺野に多
発結節影、左胸水貯留を認めた。転移性腫瘍を疑
われ上部及び下部消化管内視鏡を施行されたが明
らかな腫瘍性病変は認められなかった。胸痛の数
日前より手足の皮疹、口内炎が出現したため 6 月
22 日に精査加療目的に当科を紹介受診となった。
来院時、36.8 度と発熱なく、呼吸状態も良好であっ
た。頸部リンパ節腫脹を認め、呼吸音は清で左側
胸部に自発痛を認めるが圧痛はなかった。皮疹は
手掌および足底に限局し、舌を含めた口腔内に口
内炎を認め、いずれも痛みは伴わなかった。皮疹
の性状、数か月前の性交渉歴、RPR 64倍、TPHA
10,240倍より第 2 期梅毒が考えられた。前医より
指摘されていた多発結節影や胸水貯留については、
原発性肺癌、転移性腫瘍、悪性リンパ腫などを疑っ
たが諸検査所見よりいずれも否定的であった。梅
毒に対して 6 月 26 日より AMPC を開始したが 7
月 28 日より前腕に皮疹が出現し、薬疹の可能性
を考え MINO へ変更した。また、多発リンパ節腫
大を認めたためリンパ節生検を施行したが悪性所
見は認められず、梅毒による反応性腫大と考え抗
菌薬で経過観察とした。8 月 21 日には RPR 4倍、
TPHA 2,560 倍となり、皮疹はほぼ消退したため
9 月 11 日で抗菌薬を中止した。8 月、11 月の CT
ではリンパ節や肺陰影の縮小、胸水の消失を認め、
経過より梅毒による肺病変と考えられた。
【考察】梅毒の発症者は年々増加しており、有症状
例では第 2 期梅毒での報告が多い。全身症状とし
てリンパ節腫脹や、皮膚、心・血管系、骨、中枢
神経系などに病変を呈するが、本症例のように肺
病変を伴う第 2 期梅毒の報告は少なく、貴重な症
例と考えられ文献的考察を踏まえて報告する。
一般演題【症例報告 32(感染症)】
一般演題【症例報告 33(感染症)】
O-143
一般演題【症例報告 33(感染症)】
O-144
脾梗塞を合併した
サイトメガロウイルスによる
伝染性単核症
細菌性髄膜炎との鑑別に難渋した
水痘帯状疱疹ウイルス性髄膜炎の一例
1)
1)
川崎市立川崎病院 感染症内科/ 2)同 内科・総合診療科
◯細田智弘 1)、坂本光男 1)、前田麻実 2)、岡野 裕 2)、
野崎博之 2)
岡山大学病院 総合内科
麻生飯塚病院 総合診療科
◯西村義人 1)、鵜木友都 2)、木村真大 2)、片岡仁美 1)、
大塚文男 1)、吉野俊平 2)
2)
【症例】47 歳、男性
【主訴】発熱・心窩部痛
【既往歴】高血圧
【現病歴】入院 28 日前から 23 日前に インドネシ
アに渡航し、現地の女性と性交渉あり。入院 9 日
前から発熱と悪寒、7 日前から下痢、3 日前から皮
疹と心窩部痛が出現。前医で輸入感染症が疑われ、
当院を紹介受診し入院。
【 入 院 時 現 症 】 意 識 清 明、 体 温 37.9 度、 血 圧
152/102mmHg、心拍数 112/分、呼吸数 27/分。心
窩部・両側季肋部に圧痛あり、Murphy sign 陽性、
肝脾叩打痛陰性。体幹・前腕皮膚に退色傾向のあ
る紅斑あり。
【 検 査 結 果 】WBC 13,940( 異 型 リ ン パ 球 9.0 %)、
Hb 13.4、Plt 19.8、FDP 8.8、AST 59、ALT 80、
LDH 602、CRP 3.5、ギムザ染色でマラリア原虫陰
性、胸部 X 線で両側横隔膜の拳上あり。
【経過】発熱・肝障害・異型リンパ球の出現から伝
染性単核症(IM)を疑った。右季肋部痛から肝膿
瘍の合併を疑って施行した造影 CT で、偶発的に
脾梗塞を認めた。IM 以外に感染性心内膜炎、脾
結核、悪性リンパ腫、SLE、凝固異常等の合併を
疑った。抗酸菌を含めて血液培養陰性、心エコー
で疣贅を認めず、抗核抗体や凝固検査の異常なし。
サ イ ト メ ガ ロ ウ イ ル ス(CMV)–IgM(+)、CMVDNA PCR 110 copies/ml、HIV 迅速検査 (–)、EBIgM(–) から CMV による IM に合併した脾梗塞と
診断。未分画ヘパリンの静注を行い、症状の改善
を認め第 12 病日に退院。退院後はアスピリン内服
を継続し、退院 4 週後の造影 CT で脾梗塞の縮小
を確認して中止。
【考察】脾梗塞は IM、肝硬変、悪性リンパ腫に伴
う肝脾腫を契機に発症しうる。CMV による IM は
しばしば脾腫を伴うが、心窩部や左季肋部の疼痛
が遷延する場合は、脾梗塞の合併も念頭に置く。
【結語】CMV による IM では脾梗塞を合併しうる。
−158−
O-145
一般演題【症例報告 34(血液・リンパ腫)】 O-146
自覚症状と検査値が自然に改善し、
再燃時に PET と皮膚生検で
確定診断した血管内リンパ腫の 1 例
健常高齢者でのサイトメガロウイルス
初感染の一例
国立病院機構 九州医療センター 総合診療内科
◯福田翔子、太田 梓
防衛医科大学校病院 総合臨床部
◯永田 亘、藤田直也
症例は 73 歳男性、フグ中毒で当院入院歴あり、そ
の他既往に特記事項なし。X 年 3 月 19 日より 39℃
の発熱が出現した。翌朝には解熱したものの夜間
に再度 38℃台の発熱が出現した。近医を受診し解
熱剤と感冒薬を処方されたが改善を認めなかった。
23 日には食事中に嘔気も出現したため当科を受診
した。血液検査上炎症所見、WBC 分画で異形リン
パ球を認めた。ウイルス感染に対する精査を行っ
たところ、CMV-IgG 抗体陰性、CMV-IgM 抗体陽
性であった。肝機能障害、血小板減少を認めたため、
31 日に当科入院となった。何らかの免疫抑制によ
る再活性化を疑ったが、WBC の減少や可溶性 IL-2
受容体抗体の上昇はなく、画像上も悪性腫瘍や感
染巣を示す所見を認めなかったため、Cytomegalo
virus(CMV)初感染と診断した。上部消化管内視
鏡検査では CMV 性潰瘍を多発性に認め、下部消
化管内視鏡では浅潰瘍が散在していたが、非特異
的な大腸炎の所見であった。CMV の活動性の病変
を認めなかったため、ガンシクロビルの投与は行
わず対処療法のみを行った。その後、解熱傾向で
あり血液検査上炎症所見の改善、CMV 陽性細胞の
減少、異形リンパ球の消失を認めたことから当科
外来にて経過フォローを行う方針で 4 月 25 日に退
院となった。その後 CMV-IgM 抗体が 4 年間持続
した。CMV 初感染は思春期から若年成人期に多く、
免疫抑制状態において再活性化を起こしうる。本
症例では明らかな免疫抑制のない健常高齢者での
CMV 初感染による症例であり、文献的考察を加え
検討する。
【症例】54 歳、女性
【主訴】発熱
【既往歴】33 歳子宮外妊娠、梅毒
【現病歴】X 年 5 月に動悸と微熱で近医受診の所、
LD 異常高値を認めた為、当科紹介。LD の他、フェ
リチン、sIL-2R の高値と貧血、血小板減少を呈し
ていた。CT 上肝脾腫は認めたがリンパ節腫大は
なかった。その後症状は自然軽快し、検査値も改
善した事からウイルス感染による血球貪食症候群
(VAHS)であったと判断し経過観察。8 月 27 日に
39.5 度の発熱と LD、フェリチン、sIL-2R の再上昇
あり、貧血・血小板減少が進行したため、9 月 15
日精査目的で入院。
【 入 院 時 現 症 】 身 長 150cm、 体 重 55.5kg、 体 温
37.2℃、血圧 103/74mmHg、脈拍 101 回/分整、呼
吸数 18/分、SpO2 98%、表在リンパ節腫脹なし、
肝脾触知せず。
【検査結果】WBC 4,700、Hb 10.9、Plt 6.2、TP 5.3、
Alb 2.6、AST 22、ALT 22、LD 1,330、ALP 329、
TG 286、CRP 12.1、sIL-2R 3,570。
【経過】骨髄穿刺を実施した所、血球貪食像を認
めた。血球貪食症候群(HPS)の原因検索を行っ
たがウイルス・細菌感染・膠原病は身体所見・血
液検査から否定的であった。PET-CT にてリンパ
節に異常集積を認めず、両側大腿皮膚面に小結節
状の淡い集積が散見された事から血管内リンパ腫
(IVL)を疑い同部の皮膚生検を行い血管内大細胞
型 B 細胞リンパ腫(IVLBCL)の確定診断を得た。
【考察】本症例は経過中に特異的な治療を要さずに
自覚症状と検査値の改善を認めた事から IVL の自
然寛解が起きたものと推測された。IVLBCL を含
む中・高悪性度非ホジキンリンパ腫の自然寛解は
非常に稀である。
【結語】HPS の経過中に自然寛解を認める症例で
あっても、IVL の可能性を念頭において PET-CT
や皮膚生検を考慮すべきである。
−159−
一 般 演 題
一 般 演 題
【序論】水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の重篤な合
併症として髄膜炎が知られている。今回、来院時
の髄液検査で多核球優位の細胞増加を認め、細菌
性髄膜炎との鑑別に難渋した VZV 髄膜炎の一例を
経験したため報告する。
【症例】主訴:発熱、意識障害。現病歴:74 歳女性。
入院前日から 38℃台の発熱、右季助部から背部に
かけての水疱、意識レベル低下を認め前医受診し
た。帯状疱疹と診断されアシクロビルを処方され
たが熱源は不明であった。入院当日失禁し体動困
難であったため当院へ救急搬送された。来院時の
髄液検査で多核球優位の細胞数上昇を認め精査加
療目的に入院となった。臨床経過:入院時髄液検
査から細菌性髄膜炎が疑われたが、髄液グラム染
色では細菌像を認めず帯状疱疹もありフォーカス
不明の髄膜炎として治療開始した。入院 3 日目、7
日目に髄液検査を再検したところ、単核球(%)/
多核球(%)はそれぞれ 50/50、100/0 と変化し、
入院 7 日目に 髄液 VZV PCR 陽性が判明し VZV
髄膜炎と確定診断した。入院後は合併症無く経過
し、入院 23 日目 に退院した。
【考察】ウイルス性髄膜炎は一般に単核球優位の細
胞増加をきたすが、初期には多核球優位の細胞増
加を認める例もある。さらに VZV 髄膜炎は前駆症
状の皮疹を認めない例もあり、診断に難渋するこ
とがある。本症例では経時的な髄液検査で髄液パ
ターンが変化しており、全身観察による皮疹発見、
ウイルス PCR 提出に加えて複数回の髄液検査施行
が早期介入に有用と考えられる。
【結語】細菌性髄膜炎との鑑別に難渋した VZV 髄
膜炎の一例を経験した。髄膜炎は帯状疱疹の稀な
合併症であるが早期治療介入で治癒が見込めるた
め早期診断が重要で、皮疹をチェックするための
全身観察に加え、経時的な髄液検査施行が有用で
ある。
一般演題【症例報告 33(感染症)】
一般演題【症例報告 34(血液・リンパ腫)】 O-148
集学的治療で救命し得た
TAFRO 症候群の一例
味覚障害を主訴に外来受診した
多中心型キャッスルマン病の一例
岡山大学 総合内科 ◯牧田美友紀、木村耕介、灘 隆宏、寺坂絵里、長谷川功、
大重和樹、花山宜久、早稲田公一、岩室雅也、近藤英生、
大塚文男
独立行政法人国立病院機構 高崎総合医療センター 総
合診療科
◯岩﨑 理、渡辺俊樹、合田 史、佐藤正通
【症例】60 歳代、男性
【主訴】発熱、呼吸困難感、腹部膨満感
【現病歴】約 1 ヶ月前から腹部違和感が出現。発熱
も出現してきたため、近医を受診。CT 上胆嚢腫
大あり胆道系感染を疑われ、抗生剤加療を受けた
が改善はみられなかった。不明熱の検索目的で Ga
シンチ施行されたが、原因は同定できず。血小板
が 3 万/μl 程度まで減少、胸水貯留による呼吸状
態の悪化あり、精査加療目的で当院転院となった。
入院同日に左腋窩の約 2cm の腫大リンパ節を生検
し、TAFRO 症候群の診断に至った。mPSL パルス、
tocilizumab, rituximab、cyclosporine と使用した
ところ炎症所見の改善は認めたが、一時的な効果
に留まった。炎症所見は再度上昇傾向に転じ、血
管透過性も同様に亢進した。血管内容量の低下か
ら無尿、胸水の増加により呼吸状態も悪化したた
め、CVP 療法を追加。その後も血管透過性のコン
トロール不良で、入院 11 日目に CHDF、人工呼吸
器管理を開始した。CHDF 時にはサイトカイン吸
着膜を使用。血漿交換も施行したところ炎症所見
に関しては再度改善傾向となった。しかし血管透
過性の改善は乏しく、尿量の増加みられなかった。
Bortezomib を追加したところ自尿が得られるよう
になり、入院 34 日目に CHDF から離脱し一般病
棟管理となった。しかし、その後も血小板上昇は
みられなかった。Melphalan を追加したところ急
速に血小板の回復を認め、また残存していた腹水
も減少していった。
【 考 察 】 近 年 Castleman 病 の 類 縁 疾 患 と し て
TAFRO 症候群の概念が提唱されており、症例の
報告が増えてきている。本疾患の報告例の中には
劇症の経過を辿り、治療効果無く死亡した症例も
ある。この度複数の化学療法とサイトカイン除去
療法を組み合わせる事で救命し得た TAFRO 症候
群の一例を、文献的考察を加え報告する。
症例は 76 歳男性。某年 8 月より苦味、味がわから
くなるなど味覚障害を自覚したため近医を受診。
精査目的で当科紹介となるも亜鉛欠乏の診断とな
り近医で加療することとなった。しかし味覚障害
の改善なく全身倦怠感、発汗も出現したため、精
査目的で当科へ再紹介となった。浮腫は認めず、
体表面では頸部、鼠径にリンパ節腫脹をあらたに
認めた。採血では白血球 2,900、好酸球 32%と増
加、 血 小 板 40,000 と 低 下、CRP 5.17mg/dl と 炎
症所見を認め、IgG 3,370mg/dl、IgG4 306mg/dl、
sIL2-R 4,170 U/ml、IL-6 16pg/ml と上昇していた。
確定診断のためリンパ節生検をおこない、細血管
の増生を伴いリンパ濾胞間の拡大と多クローン性
の形質細胞の増多を認め、肝腫大や肺うっ血も認
めたが、骨髄検査にて線維化は認めず、多中心型
Castleman 病と診断した。ステロイド投与により
リンパ節腫脹や炎症所見、血小板減少、IgG4 など
改善し、味覚障害や発汗も改善した。外来にてス
テロイド漸減しているが、再発を認めていない。
多中心型キャッスルマン病は IL-6 過剰産生により
発熱、全身倦怠感、食欲不振、体重減少、発疹な
ど様々な症状を呈すると考えられている。稀な疾
患であるが、味覚障害という極めて一般的な症状
でも経過観察することが重要であると考えられた。
−160−
一般演題【症例報告 35】
O-149
一般演題【症例報告 35】
Occult germinoma に続発した
中枢性尿崩症の一例
O-150
低 K 血症により四肢麻痺を来した
遠位尿細管性アシドーシスの1例
1)
1)
岐阜市民病院 総合診療・膠原病リウマチセンター
岐阜県総合医療センター 総合内科
3)
岐阜大学医学部附属病院 総合内科
◯北田善彦 1)、宇野嘉弘 2)、森田浩之 3)、石塚達夫 1)
三豊総合病院 内科
岡山大学病院 総合内科
◯林 啓悟 1)、森本尚孝 1)、吉田賢司 1)、藤川達也 1)、
大塚文男 2)
2)
2)
【症例】17 歳、男性
【主訴】口渇、多飲、多尿
【現病歴】X年夏頃より飲水量が増加し、10 月頃
から食欲不振、口渇の自覚と夜間に頻尿、飲水す
るようになった。家族に飲水を控えるよう制限さ
れたが、1 日 1.5 l 程度飲水していた。翌年 2 月に
体重減少と集中力の低下を認め精査目的で受診し
た。血中 Na 152mEq/l、血中浸透圧 319mOsm/㎏
と高張性脱水を認め、同日緊急入院となった。
【経過】補液、自由飲水とし 1 日尿量 9,130ml、来
院 時 ADH 4.5pg/ml で あ っ た。DDAVP 点 鼻 2.5
〜5μg で尿量減少し、尿浸透圧の上昇を確認した。
単純 MRI T1 強調像で下垂体後葉の高信号の消失
と造影 MRI T1 強調像は松果体部に嚢胞成分と石
灰化を伴う造影効果のある腫瘤性病変を認め、生
検し病理結果は germinoma で全脳室照射、化学
療法を行った。主徴候 3 項目、尿量、尿浸透圧、
ADH の相対的低下を確認し、続発性中枢性尿崩症
と診断した。
【考察】MRI で 松果体の単発 germinoma と診断さ
れた場合でも、下垂体機能異常を認めれば、occult
germinoma が存在する可能性があり注意が必要で
ある。
【症例】40 代、女性
【主訴】歩行困難
【現病歴】X-1 年 5 月に四肢脱力で他院に入院、低
K 血症を指摘も原因は不明であった。X 年入院 2
日前、旅行先から帰宅したが、入院前日朝より両
下肢脱力により歩行困難となり入院当日に当院内
科外来を受診、血清 K 1.8mEq/l と著明な低 K 血
症を認め、精査加療のため入院した。
【臨床経過】KCl を混注した点滴により K 補充を
行うとともに、原因精査を開始した。下痢はなく、
嘔吐の誘発歴は聴取されたが頻度は少なかった。
入院前、漢方やサプリメントの摂取はなかったが、
約 3 年前に市販のダイエット食品の摂取歴があっ
た。食生活は概ね規則正しく、血糖値や血中イン
スリン濃度は正常範囲、清涼飲料水を好む傾向が
あるものの過量ではなかった。甲状腺機能は正常、
ACTH・コルチゾール値に異常はなく、脱水を反
映しレニン活性・アルドステロン濃度はやや高値
であった。24 時間蓄尿中 K 20mEq であり、慢性
的な高度低 K 血症の成因は尿中 K 排泄の亢進によ
ると判断した。血液ガス分析では pH7.316・HCO3
18.4mmol/l と代謝性アシドーシスを呈したが、腎
機能の低下なく、尿 pH が 7.0 と高値で、両腎に結
石が多発しており、遠位型(1 型)尿細管性アシドー
シス(RTA)と診断した。KCl 点滴からアスパラ
ギン酸 K 内服に変更、血清 K 値の上昇とともに四
肢脱力は速やかに改善、第 8 病日に退院し外来フォ
ローとした。 抗 SS-A 抗体 305 U/ml と異常高値・
高γグロブリン血症を認めたが、臨床所見に乏しく、
原因疾患の特定には至らなかった。
【まとめ】原因不明の低 K 血症とされていた患者が、
歩行困難で受診、高度の低 K 血症を認めた。随時
尿中の K 濃度は低値だが、入院後広く低 K 血症の
鑑別を行った結果、RTA と診断した症例を経験し
た。鑑別にあたり臨床および検査所見の解釈に注
意を要した興味深い症例であるため報告する。
−161−
一 般 演 題
一 般 演 題
一般演題【症例報告 34(血液・リンパ腫)】 O-147
一般演題【症例報告 35】
O-151
一般演題【症例報告 36(代謝・内分泌)】 O-152
一般演題【症例報告 36(代謝・内分泌)】 O-153
一般演題【症例報告 36(代謝・内分泌)】 O-154
ふらつきを主訴に救急搬送された一例
乳癌術後照射により発症した可能性の
ある原発性甲状腺機能低下症の 1 例
急速な症状発現を認めた
高齢クッシング病の 1 例
特発性中枢性尿崩症の一例
東住吉森本病院 救急・総合診療センター
◯水野雄貴、森口明宣、八木 匠、池邉 孝、廣橋一裕
金沢医科大学 総合内科学/ 2)同 腫瘍内科学
◯小林淳二 1)、澤田未央 1)、守屋純二 1)、山川淳一 1)、
上西博章 1)、赤澤純代 1)、元雄良治 2)
【症例】56 歳、女性
【主訴】体重増加
【既往歴】特記事項なし
【家族歴】父 糖尿病、兄 ・弟 ・娘 肥満
【 現 病 歴 】 右 乳 癌(T3、N1、M0)stage ⅢA に
て当院乳腺外科で術前化学療法施行後、右乳房全
摘術+腋窩リンパ節廓清を施行。術後、右鎖骨上
窩リンパ節に対し放射線療法 2Gy×25 回を施行
された。その後、3 年で 12㎏の体重増加を認めた
た め 当 科 対 診 と な っ た。 身 長 158cm、 体 重 91.1
㎏、甲状腺腫大なし。採血検査では、血糖 164mg/
dl、HbA1c 8.5%、fT3 2.68pg/ml、fT4 0.70ng/dl、
TSH 79μIU/ml、抗 TPO 抗体:陰性、抗 Tg 抗体:
陰性、ACTH 25.6pg/ml、コルチゾール 14.4μg/dl
と原発性甲状腺機能低下と糖尿病を認めた。食事
制限療法と甲状腺ホルモン、ビグアナイド薬の内
服を開始した。甲状腺機能は正常化し、血糖コン
トロールも良好で 9 ヶ月で 14.4㎏の体重減少を認
めた。
【考察】我が国で遭遇する原発性甲状腺機能低下症
の原因は慢性甲状腺炎(橋本病)、医学的治療後、
ヨード過剰、先天性甲状腺機能低下などがある。
本症例では、放射線療法を施行後に体重が著明に
増加し、この時期に甲状腺機能低下を発症した可
能性がある。乳癌の術後照射中に体重増加を認め
た場合、甲状腺機能を検査すべきことを示唆する
貴重な症例と思われた。
−162−
1)
岡山大学病院/ 2)同 総合内科/ 3)同 脳神経外科
◯長谷川功 1)、中村絵里 2)、萩谷英大 2)、木村耕介 2)、
三好智子 2)、花山宜久 2)、黒住和彦 3)、大塚文男 2)
1)
原土井病院 総合診療科/ 2)九州大学病院 総合診療
科 3)総合診療科(研修医)
◯上山貴嗣 1)、志水元洋 2)、西村大吾 3)、居原 毅 2)、
豊田一弘 2)、小川栄一 2)、村田昌之 2)、古庄憲浩 2)
【症例】70 歳代、女性
【主訴】眼瞼下垂・複視
【既往歴】腰椎椎間板ヘルニア、変形性股関節症
【現病歴】2 か月前から眼瞼下垂と複視を自覚し、
精査のため施行された頭部 MRI でトルコ鞍内から
鞍上部にかけて 20mm 大の下垂体腺腫を認めた。
また、同時期より急激な血圧上昇と血糖上昇も認
めるようになった。
【入院時現症】血圧 163/101mmHg、甲状腺腫 1 度、
下腿浮腫を軽度認めたが、中心性肥満や赤色線
条、満月様顔貌などクッシング徴候を欠いていた。
早朝安静時血中コルチゾール 16.2μg/dl・ACTH
105.4pg/ml、24 時間尿中コルチゾール >1mg/日と
高値でありクッシング症候群が疑われた。腹部 CT
では両側とも明らかな副腎腫大はなく、骨塩定量
は腰椎で YAM 55%と骨粗鬆症を認めた。コルチ
ゾール日内変動は消失し、デキサメサゾン 0.5mg
試験で血中コルチゾールの抑制なく、CRH テスト
では ACTH の上昇は軽度であった。コルチゾー
ルの自律性分泌を認めるも、クッシング徴候を認
めないため臨床的には Subclinical Cushing 病と診
断し、脳外科にて経蝶形骨洞手術を施行したとこ
ろ、術後には血圧・血糖値ともに速やかに安定した。
【考察】通常 Cushing 病では下垂体正常部の機能が
抑制され、下垂体腺腫術後コートリル補充療法が
必要となるが、本例では術後 4 か月後に補充療法
から完全に離脱でき、残存腫瘍の存在を考慮して
慎重にフォローしている。高齢者に発生した比較
的急速な経過のマクロ腺腫によるクッシング病で
あり、症状発現と臨床経過が興味深いため報告す
る。
【緒言】中枢性尿崩症は、バソプレシンが下垂体後
葉から適切に分泌されないため、腎臓での自由水
の再吸収が障害されて多尿かつ低張尿が持続する
疾患である。今回、特発性中枢性尿崩症の 1 例を
経験したので報告する。
【症例】52 歳の男性。X-1 年 6 月頃より口渇が出現
し、8 l/日程度の飲水をし、多尿を自覚した。複
数の医療機関を受診後、同年 12 月 24 日に当科外
来を紹介受診、X 年 2 月 3 日に入院となった。入
院時血圧 143/96mmHg で、身体所見上は明らか
な異常は認められなかった。入院時の血液検査で
は、BUN 9.0mg/dl、Na 143mEq/l で、 血 漿 浸 透
圧は 294 mOsm/kg と高値であった。空腹時血糖
119mg/dl、HbA1c 6.6%と高値であったが尿糖は
認められず、尿浸透圧は 91mOsm/kg で高血糖に
よる浸透圧利尿は否定された。水利尿をきたす尿
崩症、心因性多尿の鑑別のため、5%高張食塩水負
荷試験とデスモプレシン負荷試験を実施し、高張
食塩水負荷試験で有意な尿量の減少や尿浸透圧の
上昇が認められず、デスモプレシン負荷後に尿浸
透圧の 300mOsm/kg 以上への上昇が認められ、中
枢性尿崩症と診断された。頭部 MRI では器質的疾
患を認めず、特発性中枢性尿崩症と考えられた。
経口デスモプレシン製剤(ミニインメルト®)の投
与を開始し、尿量は速やかに正常化し、低 Na 血
症等の治療合併症も認めなかった。
【結語】多飲・多尿では、糖尿病以外に浸透圧利尿
と水利尿が原因として考えられる。水利尿では、
中枢性尿崩症など原疾患の鑑別のため、必要に応
じて積極的に負荷試験の施行を検討すべきである。
−163−
一 般 演 題
一 般 演 題
【はじめに】高カリウム血症は不定愁訴様の症状を
示すため、血液検査を行うまでわからないことも
多く、突然の不整脈や心停止で初めて気づかれる
こともある。今回我々は、ふらつきを主訴とした
高カリウム血症の一例を経験したので報告する。
【症例】83 歳、女性
【主訴】ふらつき
【既往歴】ラクナ梗塞、高血圧、脂質異常症
【内服歴】メトプロロール酒石塩酸、アトルバスタ
チン、インダパミド、スピロノラクトン、バルサ
ルタン・アムロジピンベシル酸塩配合錠
【現病歴】来院 1 ヵ月前より食欲低下、全身倦怠感
を自覚。数日前からふらつきで歩行困難になり、
改善しないため当院に救急搬送された。バナナは
好んで食べていた。
【現症】体温 36.6℃、血圧 82/52mmHg、脈拍 30/分、
SPO2 95%(室内気)、JCSⅠ-1、神学的異常所見なし。
【検査結果】心電図上 P 波の消失、T 波の増高と尖
鋭化を認めた。血液検査で BUN 88.8mg/dl、Cre
6.76mg/d、8.5mEq/l と異常値を認めた。
【経過】以上より腎不全・高カリウム血症と診断。
すぐにグルコン酸 Ca を静注、十分な補液を行い
入院。GI 療法・ベネトリン吸入を開始した。また
CHDF を一時的に導入した。以上の治療により血
清カリウム値は正常化したが、第 5 病日に右下肢
の急性動脈閉塞症を発症し他病院へ転送となった。
高カリウム血症を来した要因として、利尿薬の内
服とバナナの嗜好が考えられたため利尿薬は中止
し栄養指導を実施。
【考察】自験例は高齢者によくみられるふらつきと
いう主訴を示したが、初診時ショックバイタルで
非常に危険な状態であった。心電図異常と血液検
査で高カリウム血症と診断し、迅速な治療により
救命できた。利尿剤の内服歴やバナナの嗜好など
も本症を想起させるエピソードであった。
【結語】ふらつきを主訴とする場合、本症を念頭に
置き、緊急性の評価と素早い初期治療を行う。
1)
一般演題【症例報告 37(代謝・内分泌)】 O-156
一般演題【症例報告 37(代謝・内分泌)】 O-157
薬物治療が奏効した高齢の
異所性 ACTH 症候群の1例
心外膜炎精査により診断された
ACTH 単独欠損症の一例
両下肢痛、食欲不振、
全身倦怠感を主訴に外来受診した
汎下垂体機能低下症の 1 例
高齢にて診断に至った肺動静脈瘻合併
遺伝性出血性毛細血管拡張症の一例
岡山大学病院 総合内科
◯光井佳代子、中村絵里、木村耕介、灘 隆宏、安藤明美、
花山宣久、大塚文男
独立行政法人国立病院機構 高崎総合医療センター 総合
診療科・内科
◯村場麻衣子、佐藤正通、渡辺俊樹、合田 史
広島西医療センター 総合診療科/ 2)同 内分泌代謝内
科
◯生田卓也 1)、木村一紀 1)、中村浩士 1)、太田逸朗 2)
独立行政法人国立病院機構 高崎総合医療センター 総合
診療科・内科
◯沼尻一樹、佐藤正通、渡辺俊樹、合田 史
【症例】76 歳・女性
【主訴】肥満、浮腫の増悪、糖尿病、高血圧などで
近医加療中であった。20XX 年頃から頭頂部脱毛、
下肢筋力低下、顔面・下腿浮腫を自覚していた。
血液検査で ACTH とコルチゾールの高値を認め、
Cushing 症候群を疑われ当院紹介となった。身体
診察にて円形顔貌、中心性肥満、多毛、水牛様脂
肪沈着、皮膚菲薄化、下腿浮腫、筋萎縮を認めた。
血 液 検 査 で は ACTH 35.8pg/ml、 コ ル チ ゾ ー ル
28.5μg/dl と高値を示し、日内変動は消失していた。
デキサメサゾン(0.5mg/8mg)抑制試験で翌朝の
コルチゾール値の抑制を認めず、CRH 負荷試験で
は無反応であった。造影 MRI で下垂体に明らかな
腫瘍は認めず、異所性 ACTH 産生腫瘍の検索のた
め FDG-PET/CT を施行したが、有意な集積は認
められなかった。また尿中 5-HIAA の上昇は認め
ず、カルチノイドの存在も否定的であった。選択
的海綿静脈洞サンプリングは年齢と全身状態を考
慮し、施行はしていない。明らかな責任病巣の同
定は困難であったが、内分泌精査の結果から異所
性 ACTH 産生腫瘍による Cushing 症候群を強く疑
い、高コルチゾール血症の是正のためにメチラポ
ン(500mg/day)とオクトレオチド LAR 20mg に
よる治療を開始した。薬物治療により血中・尿中
ともコルチゾール値は正常化し、自覚症状も改善
を認めた。
【 考 察 】 異 所 性 ACTH 症 候 群 は Cushing 症 候 群
の中でも頻度は低く、原発巣が微小であるため、
Cushing 病との鑑別や局在診断の同定に難渋する
ことは少なくない。今回、薬物 療法が奏効した原
発巣不明の異所性 ACTH 症候群の 1 例を経験した
ので文献的考察を含め報告する。
【症例】51 歳、男性
【主訴】発熱
【現病歴】平成 27 年 7 月下旬自宅内で意識消失し
倒れているところを家人に発見され当院へ救急搬
送。重度意識障害、呼吸減弱あり、挿管後人工呼
吸開始となった。経過中全身性痙攣出現し鎮静剤
投与により頓挫。髄液検査では軽度の単核球出現
を認め、脳症の診断により抗ウイルス剤及び抗生
剤投与行い 15 日間の入院加療により退院となっ
た。同年 10 月初旬発熱及び食思不振のため当院受
診。前日より断続的な呼吸苦の訴えがあっ た。
【現症】体温 38.6 度、心拍 125bpm、呼吸数 22/分。
採血では Cre 1.75mg/dl、Na 127.5mEq/l 等の異常
に加え、炎症反応高値を検出。胸部レ線上左胸水、
心陰影拡大あり、心エコー検査により心嚢液貯留
を認めたため心外膜炎と診断した。
【経過】入院後、血液培養後 CTRX 2g/day 開始。
スクリーニング検査では抗核抗体陰性、甲状腺ホ
ルモン正常に加え血中 ACTH < 2.0pg/ml、cortisol
1.7μg/dL であり、他の下垂体性ホルモン値は全て
正常であることから、ACTH 単独欠損症と診断し
コートリル内服開始。複数回の血液培養は陰性で
あったが、補液及び抗生剤投与により炎症反応は
正常化し心嚢液は減少。低ナトリウム血症はコー
トリル服用により改善し退院となった。
【考察】この度我々は脳症に続き心外膜炎を発症し、
ACTH 単独欠損症の診断を得た一例を経験した。
脳症及び心外膜炎は抗生剤もしくは抗ウイルス剤
によりごく短期に改善に至っている。脳症発症よ
り 3 カ月間の経過にあって、主要臓器に原因不明
の高度炎症を呈しており、ACTH 欠損による副腎
機能低下が主要な要因と思われた。不明熱や原因
同定困難な炎症を認める場合は副腎機能不全を鑑
別の一つとして精査を進める必要性を感じた一例
である。また経過を通じ、低ナトリウム血症及び
軽度の好酸球増多は検出されていた。
【症例】81 歳、女性
【主訴】両下肢の痛み、食欲不振、全身倦怠感
【既往歴】右内包後脚出血、高血圧
【現病歴】入院 1 か月前までは自力歩行、食事摂取
可能であったが徐々に食欲が低下し嘔吐も伴い、
動作緩慢となってきた。かかりつけ医受診後、当
院消化器内科、整形外科に紹介となったが、検査
を拒否されたため経過観察となっていた。その後、
症状が増強し歩行困難となってきたため、当院救
急外来に搬送され精査加療目的で入院となった。
入 院 時、 体 温 36.6 ℃、 血 圧 135/72mmHg、 脈 拍
84/min と保たれていたが、血糖 52mg/dl と低値
を認め、ブドウ糖静注にて回復を認めた。四肢の
筋の把握痛、他動時の関節痛を認めた。入院時の
血液検査で コルチゾール 0.2μg/dl、ACTH 4.5pg/
ml と異常低値を認めたため下垂体機能低下に伴う
続発性副腎機能低下症を考え、第 5 病日よりヒド
ロコルチゾン 100mg を 6 時間おきに投与したとこ
ろ症状の回復を認めた。第 10 病日よりヒドロコ
ルチゾン 30mg/日内服に変更した。第 24 病日に 3
者負荷試験を施行したところ、CRH 負荷に対する
ACTH、コルチゾールの反応不充分、LH-RH 負荷
に対する LH、FSH の反応不充分、TRH 負荷に対
する PRL の反応不充分を認め、汎下垂体機能低下
と診断した。頭部 MRI 検査にてトルコ鞍に T1 強
調像、T2 強調像で共に高信号を示す領域を認め下
垂体腫瘍や下垂体卒中などが疑われた。リハビリ
を施行し、杖歩行にて第 43 病日に退院。かかりつ
けの脳外科にてフォローアップする方針となった。
【考察】両下肢痛を伴った汎下垂体機能低下症の 1
例を経験した。1 次性、2 次性の副腎皮質機能低下
症において、本例のように関節の屈曲拘縮などの
筋痛、関節痛症状を呈することが稀にあるため、
リウマチ性疾患との鑑別が必要となることもある。
診断にあたって詳細な問診と身体診察が重要と思
われた。
【症例】76 歳、女性
【主訴】発熱
【現病歴】平成 25 年に行った脳検診では頭部 MRI
検査により陳旧性多発脳梗塞を指摘されていた。
数年前より検診にて胸部異常陰影を検出されてい
る。平成 27 年 7 月中旬、38 度台の発熱出現。ふ
らつき、めまいのため翌日近医受診。熱源同定困
難のため 紹介受診された。
【現症】意識レベル JCS10-20、GCS E3V5M6、体
温 39.1 度、 心 拍 数 77bpm、 呼 吸 数 25/分、BP
103/70mmHg。腱反射正常、病的反射や麻痺は認
めず、頚部硬直は不明瞭であった。採血では軽度
炎症反応上昇、白血球増多を検出。頭部 MRI 検査
を施行したところ、陳旧性脳梗塞を認める他、右
側脳梁膨大部に新規虚血性病変を認めた。画像上、
脳膿瘍の可能性あり髄液検査を施行し、多核球増
多及び蛋白濃度上昇が認められ脳膿瘍と診断した。
【経過】3 剤抗生剤治療を開始し脳膿瘍は改善に至っ
ている。経過中呼吸不全観察され、胸部 CT 検査
から肺動静脈奇形の診断を得た。第 25 病日夕方突
然の呂律障害及び右半身麻痺出現。MRA 検査よ
り左中大脳動脈描出不明瞭であり脳塞栓と診断し
t-PA 製剤投与施行。治療後は後遺障害なく治癒に
至った。鼻腔、上部消化管精査により毛細血管集
塊を複数の箇所に認め遺伝性出血性毛細血管拡張
症(HHT)と診断。肺動静脈奇形に対しては退院後、
第 90 病日左肺上葉部分切除を行った。
【考察】本例において、遺伝子検査は行っていない
が、現在の HHT 診断基準より診断は確定的であっ
た。HHT は常染色体優性遺伝により発症する疾病
であり、本例においては両親、2 人のご子息に鼻
出血や出血傾向の既往はなく、1 人の孫に鼻出血
が起こることを聴取した。脳 MRI 検査では画像上
陳旧性脳梗塞を認めているが、患者の生涯におい
て脳梗塞を発症したことはなく、これらのことが、
76 歳に至るまでに同症の診断に至らなかった原因
の一つと考えられた。
−164−
1)
一般演題【症例報告 38】
−165−
O-158
一 般 演 題
一 般 演 題
一般演題【症例報告 37(代謝・内分泌)】 O-155
一般演題【症例報告 38】
O-159
一般演題【症例報告 38】
O-160
当帰芍薬散による
薬剤性好酸球性肺炎の一例
水腎症を伴った後腹膜線維症の1例
福岡大学病院 総合診療部
○野下育真、柳田賢一郎、福田 佑、堀端 謙、武岡宏明、
鍋島茂樹
川崎市立多摩病院 総合診療内科
聖マリアンナ医科大学病院 総合診療内科
◯酒井 翼 1)2)、國島広之 1)2)、松田隆秀 1)2)
2)
【症例】26 歳、女性
【主訴】咳嗽
【既往歴】乳腺症
【現病歴】2015 年 10 月 10 日ごろから微熱があり、
その後咳嗽・倦怠感・熱の上昇をみとめた。17 日
に近医にて抗生剤処方され経過をみるも改善なく
24 日に他の近医受診、レントゲンによる異常影、
炎 症 反 応 の 上 昇 み と め(WBC 15,300、CRP 4.9)
肺炎の疑いにて当科紹介受診となった。
【入院時現症】意識清明 血圧 98/61、HR 85、BT
36.3、SAT 97(room air)、RR 20
【検査結果】IgERIST 2,800、WBC 17,400、Stab 1.5、
Seg 50.0、Lymph 14.5、Mono 4.0、Eosino 30.0、
CRP 2.02、 赤 沈 49、KL-6 278、 マ イ コ プ ラ ズ マ
抗 原 迅 速 –、PA<40、 ク ラ ミ ジ ア N 抗 体 IgA±、
IgG+、 抗 核 抗 体 640、Homogeneous+、 他 –、 百
日咳抗体 IgG<3、プレセプシン 187、β-Dグルカン
14
【画像】レントゲン:両側びまん性の透過性不良域
あり CT:両側肺上葉主体に比較的区域明瞭なす
りガラス状の濃度上昇散見。
【経過】漢方の内服歴・採血・画像上から薬剤性好
酸球性肺炎疑い、症状の増悪ある際は BAL 施行予
定とし鎮咳薬にて当科初診時は外来 follow とした。
しかし気道症状増悪したため予約外受診、呼吸器
内科とも相談の上現時点で上記診断が強く疑わ
れる経過であることから BAL 施行は行わず PSL
0.5mg/㎏ /日より開始し、継時的に症状改善。内
服終了後も症状の再燃なく良好な経過をたどって
いる。DLST 検中である。
【考察・結語】当帰芍薬散による薬剤性肺炎の報告
は今までなく、報告の有無に関わらずびまん性肺
疾患の鑑別としてすべての薬剤の副作用を疑わな
ければならないこと、病歴の聴取の重要性も改め
て再認識させられた。今後も薬剤副作用は常に意
識し診療にあたることが重要であると考えられた。
−166−
O-161
一般演題【症例報告 39(神経・精神)】
O-162
摂食嚥下障害終末期とされていたが、
保存的に改善した
口舌ジスキネジアの一症例
見えづらさを主訴とする若年性認知症
:後部皮質萎縮症の 1 例
1)
川崎市立多摩病院 総合診療内科
聖マリアンナ医科大学 総合診療内科
3)
横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合診療科
◯小宮山純 1)2)、松田隆秀 1)2)、長谷川修 3)
医療法人 関東病院 総合診療科
◯門馬正志、前田紀章、衛藤裕介、黄 勇澤、藤崎公達、
長崎直美、中山國明、梅川淳一
2)
【症例】52 歳、女性
【現病歴】45 歳から某大学病院眼科において正常
眼圧緑内障疑いで経過観察(視力両眼ともに 1.2)
されていた。数か月前から下がみづらいと訴え視
力も 0.3 に低下したが、視神経乳頭陥凹はわずかで
頭部 MRI でも脳室拡大をみるのみで、病状説明が
困難のため当科を紹介・受診した。患者自身によ
る視覚障害の病歴陳述が困難なため、長女に確認
したところ半年前の交通事故(右足粉砕骨折)後
自宅療養中から次第に発語減少、記銘力低下が進
行し、見えないため料理もしなくなり、不慣れな
場所で混乱した。
【現症】対座法で視野障害はなく、失語、観念運動
失行、構成障害、失算、失読・失書を認めた。
【 検 査 】 認 知 機 能 検 査 で Mini-Mental State
Examination(MMSE)は 8/30 と低下し、Clinical
Dementia Rating(CDR) は 2 と 中 等 度 の 認 知 障
害がみられた。なお、経過中静的視野検査のみで
右同名半盲を呈し(動的視野検査では異常なく)、
Riddoch 現象と理解した。脳血流シンチグラフィ
画像統計解析では、左優位に両側の頭頂葉、後部
帯状回・楔前部、側頭葉内外側、後頭葉内外側に
血流低下を認め、アルツハイマー病(AD)に合致
する所見であった。
【結語】早発性 AD では非健忘症状で発症する場合
が多く、主な亜型として視覚障害を主徴とする後
部皮質萎縮症(posterior cortical atrophy:PCA)
があること、その場合眼科を初診することが多い
が異常を認めないことから内科併診となることを
指摘した。従来 PCA では動くものが見やすいこと
が知られてきたが、本報告で動的・静的視野検査
の解離(Riddock 現象)を初めて呈示した。
【症例】83 歳、女性
【既往歴】統合失調症、多発性脳梗塞
【現病歴】当院入院半年前より活動性が徐々に低下
した。約 40 日前より経口摂食不良となり前医に入
院した。精査されるも原因は特定されず、嚥下は
可能ながら摂食せずとの事であった。ご家族が経
管栄養や中心静脈栄養を希望されず、末梢輸液の
みにて経過観察の希望にて、当院転院となった。
【入院後経過】入院時覚醒良好だが認知機能の低下
が認められた。身体所見上口唇や舌の不随意運動
を認める他、著明な異常は認めなかった。口舌ジ
スキネジアと診断し、クロナゼパム 1mg 開始した
ところ、約 1 週間程で口舌の不随意運動は著明に
改善した。その後嚥下機能と覚醒度の改善を目標
にアマンタジン塩酸塩 100mg を追加、嚥下リハビ
リテーション開始した。濃厚流動食経口を経てミ
キサー食摂食となり、施設へ退院した。
【考察】口舌ジスキネジアは高齢の入院患者などに
しばしば認められる、決して稀ではない疾患であ
る。また多くの場合、視診のみにて気付くことが
可能である。しかしながらこの疾患は神経内科や
精神科を専門にしていない医師にはあまり知られ
ていない。この為今回の様に見過ごされて摂食嚥
下障害とされ、経管栄養や点滴管理になっている
例を時に経験する。この疾患は治療抵抗性である
事も多いが、標準的な治療で著明に改善する事も
あり、この症例では終末期とされていながら経口
摂食、活動性の改善、退院に繋がった。高齢者は
主治医の専門外となる疾患を含めた多疾患に罹患
している事が多く、医師として幅広い知識が必要
であると再認識した。
−167−
一 般 演 題
一 般 演 題
【症例】72 歳、男性
【主訴】1 ケ月持続する発熱
【現病歴】X 年 6 月 8 日より左側腹部痛、11 日より
微熱が出現した。15 日に A 病院の検査で WBC:
24,330/μl(Neut:86.7%)
、CRP:20.7mg/dl、尿路
感染症、CT で左水腎症を認めた。A 病院に入院し、
ビアペネム、アルベカシン投与にて加療した。7
月初旬には左側腹部痛は消失したが、38 度前後の
発熱は、持続していた。7 月 9 日に不明熱として
当院当科紹介入院となった。
【 検 査 成 績 】WBC 8700/μl、Plt 60.9万/μl、BUN
13mg/dl、Cr 1.47mg/dl、CRP 10.51mEq/l、IgG
1,473mg/dl、IgG4 196mg/dl、 フ ェ リ チ ン 461ng/
ml
【腹部造影 CT】大動脈分岐部に軟部腫瘤影、両側
水腎症
【臨床経過】発熱、IgG4 上昇、炎症反応高値、大動
脈分岐部の軟部腫瘤影の所見より IgG4 関連疾患を
強く疑った。プレドニゾロン 30mg/日を開始し、
その後、軟部腫瘤影は縮小し、両側水腎症も改善
し、バイタルサイン、炎症反応、腎機能、IgG4 値
は改善を示した。腫瘤からの生検困難であったが、
他疾患の除外により確定診断とした。プレドニゾ
ロンの減量を入院中に行いながら退院とした。
【結語】生検不可能な場合でも、画像検査で後腹膜
線維症が疑われ、IgG4 高値であれば、治療的診断
としてステロイドを開始すべきである。また、後
腹膜線維症を疑う場合は、IgG4 関連疾患の一部と
して他の全身疾患の検索が必要である。
1)
一般演題【症例報告 39(神経・精神)】
一般演題【症例報告 39(神経・精神)】
O-163
一般演題【症例報告 39(神経・精神)】
一過性の神経脱落症状を呈し、
造影 MRI により硬膜動静脈瘻(dAVF)
と診断した一例
防衛医科大学校病院 総合臨床部
◯佐々木大雄、福富絵玲奈
O-164
うつ病治療中に
認知機能低下をきたした一例
金沢医科大学 高齢医学
◯入谷 敦
【症例】81 歳、男性
【主訴】急激な認知機能の低下
【既往歴・既存症】生来健康で病院受診歴なし
【現病歴】X-3 年、78 歳の時点で妻に先立たれ易
疲労感・意欲低下が顕著となり、食欲不振から体
重減少を認めた。自殺願望があると家人が判断し、
近医精神科クリニックを家人とともに受診。GDS
が 13 点で老年期うつ病の診断で抗うつ薬の投薬が
開始された。抑うつ症状は改善増悪を繰り返すも
のの少し改善傾向であるために通院継続にて経過
を観察していた。X-2 年には幻視(壁に向かって
怒るような発言、寝室には怖い男が 2 人いるなど)
を認める発言が目立つようになる。さらに、認知
機能の悪化(場にふさわしくない行動、記憶など)
が顕著となったために、主治医に相談し内服薬が
増量された。本年認知機能の急激な悪化を心配し、
当科もの忘れ外来を受診した。
【入院時現症】意識清明、血圧 138/74mmHg、体
温 36.3℃、脈拍 72 回/分、胸腹部診察上異常所見
無し、神経学的に異常所見無し、顔面浮腫様、眉
毛外側 1/3 で薄い。頸部甲状腺腫大なし、結節触
知せず。四肢浮腫状変化なし。
【 検 査 結 果 】CK 451 U/l、FreeT 31.43pg/ml、
FreeT 40.15ng/dl、高感度 TSH 150.6μIU/ml
【経過】甲状腺ホルモンの投与により値が正常化し
た。その間、抑うつ症状も幻視の症状も消失した。
HDS-R は 25 点まで改善(受診時 15 点)した。
【考察】うつ病治療中に、認知機能の低下・幻視の
症状からレビー小体型認知症を強く疑う症状が出
現した。精査の結果、probable DLB と矛盾しなかっ
たが、原因疾患として甲状腺機能低下症による認
知機能低下であることが判明し、内科的治療を行
うことで認知機能の低下を改善することができた。
【結語】甲状腺機能低下症に伴う認知症・うつ病な
どの多彩な精神症状を呈する症例を経験したので
報告する。
−168−
O-165
一般演題【漢方】
三叉神経痛による不定愁訴に
真武湯が有効であった1例
O-166
膀胱癌による肉眼的血尿に
芎帰膠艾湯が有効であった1例
1)
金沢医科大学 総合内科学 2) 金沢医科大学能登北部
地域医療研究所 3)公立穴水総合病院
◯山川淳一 1)、守屋純二 1)、中橋 毅 2)、赤澤純代 1)、
島中公志 3)、小林淳二 1)
【緒言】手術は直接的な侵襲であり、心身に大きな
ストレスが加えられる。頻回の手術により症状が
軽減しなければ、身体因子よりも精神因子の関与
が大きくなり、不安と不満が著しく増強すること
を第 16 回の本会で報告した。今回は術後不定愁訴
に真武湯合温経湯が有効であった三叉神経痛の症
例を経験したので報告する。
【症例】77 歳、女性
【主訴】左三叉神経痛術後のしびれ感およびその他
の愁訴
【現病歴】平成X年頃より左三叉神経痛を認め、A
大学脳外科受診。その後 B 病院に紹介され、2 回
のガンマナイフ治療では改善せず、微小血管減圧
術にて一時軽快した。しかし、口腔内・ 舌・口唇
のしびれ感が継続し、神経痛も再発したため、グ
リセリンブロック療法が施行され た。三叉神経痛
の悪化のため、平成 X+9 年当院脳外科紹介となる。
平 X+9 年 10 月に微小血管減圧術を再度受け一時
軽快したが、平成 X+9 年 12 月に今までと違った
しびれ感が残存し、不定愁訴が多いとのことで漢
方外来紹介となった。
【東洋医学的所見】口腔内・舌・唇のしびれ感のほ
かに多くの愁訴を認める。顔色は蒼白で暗い表情、
舌診では淡白色~薄紫色で乾燥・微白苔~無苔・
脈診は沈細。腹診は腹力軟弱・右胸脇苦満・臍上
悸を認めた。
【臨床経過】真武湯合温経湯を処方。投与 28 日後
には不定愁訴が減少した。
【考察】我々が経験した症例は八綱分類で裏寒虚証・
慢性の瘀血に腎陽虚が生じたと考える。特に瘀血
がベースにあり、痛みによりさらに気血の鬱滞を
増悪させ、『肝気欝滞』(ストレス)となり不定愁
訴が生じたものと考える。治療に行き詰まった際
に、漢方医学を取り入れることが有効な治療につ
ながることがあることを報告する。
1)
日本大学医学部 内科学系総合内科・総合診療医学分野
日本大学医学部
◯矢久保修嗣 1)、上田ゆき子 2)、種倉直道 2)、池田 迅 2)、
大塚博雅 2)、林 悠太 2)、笠巻祐二 2)、矢内 充 2)、
加藤公敏 2)、相馬正義 2)
2)
【はじめに】肉眼的血尿はその実際の出血量が多く
なくとも、その所見から患者、およびその家族に
与える心的影響も小さくない。膀胱癌による肉眼
的血尿に芎帰膠艾湯が有効であった症例を経験し
たので報告する。
【症例】80 歳、女性
【主訴】肉眼的血尿
【現病歴】X-3 年から物忘れが顕著となり、日常生
活の組み立てができなくなった。その後、不安感
が強く、積極的な行動ができなくなった。2 年前
に抑うつ傾向を伴うアルツハイマー病のため、近
医から当科へ紹介された。ツムラ牛車腎気丸 5.0g/
日、ツムラ人参湯 5.0g/日の投与を開始した。この
内服により、活動が活発になったため治療を継続
していた。
【既往歴】X-4 年に膀胱癌の手術。
【診療経過】X 年 7 月に頻尿となったため、ツム
ラ八味地黄丸 5.0g/日、ツムラ著苓湯 5.0g/日に変
更した。泌尿器科を受診し、膀胱癌の再発を指摘
された。肉眼的な血尿が時々みられ、腰痛の出現、
増悪があり、膀胱癌の進行が推測された。X+1 年
2 月には歩行が困難となった。頻回の肉眼的血尿
から持続的な肉眼的血尿がみられるため、ツムラ
芎帰膠艾湯 9.0g/日の投与を開始した。家族からは、
この内服により肉眼的血尿は消失する。しかし、
この内服を忘れると血尿が出現する、とのことで
あった。芎帰膠艾湯の内服を継続したが、同年 11
月に尿閉となり腎不全により永眠した。
【考察】芎帰膠艾湯の効能又は効果は痔出血と記載
されている。しかし、漢方の考え方からは、この
治療目標はやや虚証で痔出血、下血、出血が長び
いて、貧血やめまい、手足の冷えなどと言われて
いる。このことから膀胱癌による出血にも有効で
ある推測された。
【結語】膀胱癌による肉眼的血尿に芎帰膠艾湯が有
効である症例を経験した。肉眼的血尿はその患者
や家族にあたえる影響も小さくない、芎帰膠艾湯
による止血作用は臨床上有用であると考えられた。
−169−
一 般 演 題
一 般 演 題
【症例】68 歳、男性
【主訴】一過性の左膝脱力、複視
【既往歴】20 歳:片頭痛、65 歳:両耳下腺腫瘍、
常用薬なし。
【現病歴】X 年 10 月 20 日より左膝脱力感あり 2 日
で自然軽快した。11 月 2 日より複視が出現したた
め 11 月 6 日に当科受診、左眼球の下方偏位を訴え
た。
【 来 院 時 現 症 】 身 長 170cm、 体 重 71kg、 血 圧
121/76mmHg、脈拍 61 回/分、眼球運動異常なし、
協同運動異常なし、眼振なし、その他脳神経症状
なし、Barre 徴候なし。
【検査結果】WBC 7,800/μl、Hb 15.0g/dl、Plt 26.7
万/μl、血糖 154mg/dl、HbA1c 6.2%。
【経過】症状から糖尿病(DM)による外眼筋麻痺
や脳血管障害、多発性硬化症(MS)等が疑われた。
血液検査では DM は否定的で、一過性脳虚血発作
(TIA)としては症状持続時間が長かった。MS の
初期症状も鑑別に挙がるため脳造影 MRI を施行し
たところ、右前頭葉に微小血管網を認め硬膜動静
脈瘻(dAVF)と診断した。右前頭葉の病変は左
膝脱力、左眼球運動障害の原因として矛盾せず、
症状は dAVF によるものと考え、脳神経外科に紹
介した。現在治療適応につき精査を行っている。
【考察】dAVF は硬膜の動静脈短絡で、発生頻度
は 0.29 人/10 万人/年と稀な疾患である。皮質静脈
への逆流を認める場合、脳出血や静脈梗塞をきた
す危険があり、部位や血行動態に応じて外科的治
療、血管内治療、放射線治療等が選択される。病
変が微小なため MRA では描出されず、造影検査
を実施しないと診断できない。一過性の神経脱落
症状を呈し、TIA や非可逆性虚血性神経脱落症状
(RIND)が疑われるも、非典型的である場合は造
影 MRI も考慮するべきである。
【 結 語 】RIND 様 症 状 を 呈 し、 造 影 MRI に て
dAVF の診断に至った一症例を経験した。
一般演題【漢方】
一般演題【漢方】
O-167
一般演題【漢方】
成人を対象とした感染性胃腸炎に
対する五苓散とプロバイオティクスの
効果に関するランダム化比較試験
O-168
漢方リモート支援による末期癌患者の
end-of-life care への介入の試み
【目的】感染性胃腸炎は集団感染や高齢者での重症
化が問題となり、早期の症状改善が望まれる。本
研究では五苓散とプロバイオティクスの症状改善
効果を比較検証した。
【方法】2014 年 12 月 12 日から翌年 10 月 31 日に
感染性胃腸炎と診断した 287 名の外来成人患者を
対象とした。同意が得られた 67 例を五苓散(ツム
ラ五苓散 ® 7.5g/日 分 3)群とビフィズス菌(ラッ
クビー細粒 N® 3g/日 分 3)群(以下、BF 群)に無
作為に割付けた。主要評価項目を下痢嘔吐改善時
間、副次的評価項目を付随症状(嘔気、腹痛、発熱、
倦怠感、食欲低下)消失期間 とし、5 日間アンケー
ト調査した。
【結果と考察】47 例から回答が得られ、細菌性腸
炎と判明した 4 例を除いた 43 例(五苓散群 20 例、
BF 群 23 例)を解析対象とした。発症から受診の
時間は五苓散群で 18.7±12 時間(平均値±標準偏
差)、BF 群で 11.1±8 時間であり両群間に差を認
めた。下痢消失時間は五苓散群と BF 群で 45.6±
32 と 39.9±35 時間、嘔吐消失時間は 16.2±10 と
13.2±14.9 時間であり両群に有意差はなかった。付
随症状消失日数は五苓散群と BF 群で、嘔気 1.8±
0.9 と 2.1±1.5 日、発熱 1.4±0.5 と 1.7±0.7 日、腹
痛 2.0±1.2 と 2.8±1.4 日、倦怠感 2.5±0.9 と 3.0±1.2
日で有意ではなかったが、食欲低下は 2.1±1.2 と
2.9±1.3 日と五苓散群で有意に短かった。本研究の
結果では、両群の下痢嘔吐消失時間に差はないが、
五苓散群で食欲低下の持続期間が有意に短く、そ
の他の付随症状も短縮できる可能性が示唆された。
五苓散の滋養強壮作用が全身症状の早期改善に関
与していると考えられる。
【結論】感染性胃腸炎に対し五苓散は早期に食欲低
下を改善しその他の全身症状改善にも貢献するこ
とが期待でき、重症化を防ぐ可能性が示唆された。
1)
山口大学医学部 医学部附属病院・漢方診療部
譜久山病院 外科
◯飯塚徳男 1)、譜久山仁 2)
2)
【症例】61 歳、女性
【主訴】上腹部痛、腹部膨満感、胃内容が逆流する
感覚、食欲不振
【既往歴】2003 年、X 病院にて卵巣癌(Stage Ⅱc
pT2cN0M0 endometrioid adenocacinoma, G3) に
対し、手術および術後補助化学療法が施行された。
【現病歴】2013 年 7 月、腹腔内播種等の再発を認
めたため、化学療法(Tri-weekly TC 療法)が付
加されたが ADL 等が悪化傾向のため、2014 年 9 月、
緩和ケア目的で譜久山病院・外科に転科。本年 6
月 19 日、経過および検査所見により小腸イレウス
の診断の下、同院入院。本年 7 月 3 日、イレウス
管および保存療法により、全身状態が改善し食事
摂取可能となったため、イレウス管抜去。その後
に生じた上記主訴に対し、漢方治療を行っていた
が、効果乏しいため、メールを介し他の漢方薬療
法の可能性につき相談を受ける。
【譜久山病院 入院時の所見と検査結果】身長
144.7cm、体重 35.0kg、血圧 127/90。腹部は軟で膨満、
蠕動不穏や波動を認める。CT 検査にて腹水、胃液
や小腸液の貯留を、イレウス管からの造影検査に
て小腸拡張像 +、結腸の拡張像なし。血液検査で
貧血(Hb9.5)を認めるが他に異常を認めず。
【経過】本年 7 月 14 日より、緩和ケア医と漢方専
門医間のメールのやりとりにて小建中湯 5g 分 2 朝
夕食間、茯苓飲 2.5g 分 1 昼食間に変更した。7 月
18 日には腹部膨満感は軽減し、食事の経口摂取も
良好で、9 月 12 日に退院された後、自宅で余生を
過ごされ 9 月 28 日永眠された。
【考察】メールを介した緩和ケア医と漢方専門医の
情報共有は、末期癌患者の経口摂取を可能とし、
人生最後の 2 週間を自宅で過ごせるような環境を
創出した。このような試みは末期癌患者の end-oflife care のバリエーションを広げるツールとして
有用かもしれない。
−170−
O-169
漢方薬の副作用に関する検討
聖マリアンナ医科大学 総合診療内科
◯櫻井正智、松田隆秀
我が国では 1989 年に小柴胡湯の副作用が発表され
て以来、これまでに漢方の副作用に基づく 20 例を
超える死亡例が報告されている。また、厚生労働
省は 1994 年から 1996 年まで漢方の副作用で 88 人
が間質性肺炎となり、そのうち 10 人が死亡したと
報告されている 5。それゆえ医学教育においては、
2002 年に文部科学省 医学教育コアカリキュラムに
「和漢薬を概説できる」が示され、全国の医学部に
おいて卒前教育に漢方医学が取り組まれている。
しかし、漢方の副作用に関する臨床研究が乏しい
こともあり、副作用出現の機序も含めて、漢方に
よる副作用についての臨床研究が急がれている。
そこで著者らは漢方専門外来を有する銀座診療所
を 2010 年から 2014 年の 4 年間に受診し、漢方の
処方を受けていた患者に対して、副作用に関する
検討を行った。今回調査の対象とした 157 例にお
いては副作用発症件数は 9 例(9 例、5.7%)であっ
た。副作用の内訳は胃腸障害 5 例、皮疹 2 例、肝
障害 1 例、偽アルドステロン症 1 例で、間質性肺
炎の発症はなかった。今回の調査で漢方薬の副作
用の発生頻度は、過去の調査での発生率とほぼ同
じとなった。このことから漢方薬の副作用は必ず
発生するものだという事実を前提に、効果の判定
を行わずして漫然と長期にわたって処方すること
は避けるべきことを啓発すべきであると考えられ
た。最近の調査では、臨床医の 90%を越える医師
が漢方を処方しているとする調査研究もあり、副
作用の出現を軽減し、副作用早期発見にも役立つ
ガイドラインの作成が必要であると思われた。
−171−
一 般 演 題
一 般 演 題
順天堂大学医学部附属順天堂医院 総合診療科
◯森田芙路子、松田直人、高橋雄一、福井早矢人、
鈴木彰人、高橋宏瑞、種井実佳、加野美希、志賀教克、
乾 啓洋、上原由紀、藤林和俊、横川博英、小林弘幸、
内藤俊夫
一般演題【漢方】
Fly UP