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トマト品種の果実成分と熟度の関係
東北農業研究 (Tohoku Agric Res)47, 275-276(1994) ト マ ト品 種 の 果 実 成 分 と 熟 度 の 関 係 石井 孝典・ 藤野 雅丈・矢ノロ幸夫・ 内海 敏子 (野 菜・ 茶業試験場盛岡支場 ) Relationships bet、 veen Fruit Characteristics and Ripening Stage in Tomato Varieties Takanori lsHII, Masatake Fu」 (ヽ INO・ Yukio YAN(Ж UCHI and Toshiko UcHluMl lorioka Branch, National Research lnstitute of Vegetables, Ornamental Plants and Tea) 1 は じ め 15(kg/a)で あ った。収穫 は 8月 に 6日 か ら10月 5日 ま で行 い,熟 度 は果実 の着色度 で判定・ 分類 した。糖度・ 酸 差異が見 られ ,高 糖度品種 や高色素品種 として利用 されて い る品種が数多 く存在する。 これ らの成分含有量 の差異が 度 は新鮮試料を使用 し,そ の他 の項 目は-30℃ で凍結保存 した試料 を使用 した。 L― グル タミン酸 は L― グル タミン 酸測定 キ ッ ト (ヤ マサ醤油),糖 類 は高速液体 ク ロマ トグ 成熟 ステージの中でどのように変化す るかをとらえること で ,高 品質系統 の特性 を明 らかに し,新 たな素材育成 の基 ラフィー (島 津LC 6A, カ ラム :島 津 SCR-101N,検 出 器 :Shodex RI SE 51),ビ タミンCは ヒドラジン比色法 礎資料を得 ようとした。 本報 では トマ ト品種61種 について 4熟 期 (緑 熟期 ,催 色 期 ,桃 熟期 ,完 熟期)の 主な果実成分量 (糖 ,L― グル タ そ して色素類 は永田 ら (1992)の 方法 を一部改良 して行 っ トマ ト品種 の果実成分含有 量 は完熟期にお いて品種間 の , た。 3 ミン酸 ,ビ タ ミン類 ,色 素類等)を 分析定量 し,成 熟 に伴 糖度 は緑熟期 において も完熟期 の73∼ 86%の 値 を示 し 緑熱 か ら催色期にかけての着色初期 にはいずれの品種群 に う果実成分 の変化 を調査 した。 2試 験 試験結果及び考察 , 方 法 表 1に 示 した トマ ト61品 種・ 系統 を供試 した。試験 は19 おいて も糖度 の上昇が見 られた。 しか し,赤 色 の生食用品 種 ではそれ以 降糖度 の上昇 は見 られず ,加 工 用 トマ ト, ミ 93年 4月 2日 播種 ,5月 27日 定植 のハ ウス雨 よけ支柱栽培 ニ トマ トは挑熟期 で糖度 の上昇 は停止 した。高糖度素材 で実施 した。畦幅180硼 ,株 間40側 の 2条 植 えで 桃色生食用品種 は完熟期 まで緩やかではあ ったが糖度 の上 1区 5株 2反 復 とした。施肥量 は N:P205:K20=15130: 表 1 昇 は見 られた。糖含有量 は糖度 とほぼ平行 して同様な変化 供試品種 の用途別分類 桃色生食用品種 桔梗交 22号 ,盛 岡24号 ,桃 太郎 ,ハ ウス桃太郎 ,桃 太郎T93,試 交92-1,フ ァース トパ ワー・ ジュンピンク Ponderosa,ろ じゆたか 赤色生食用品種 Young, Manalucie6301, Y-13-1524-10-6, Tropic, Floridaヽ 4H-1, カゴメ0050, Annette, , 黄YmS 2-6,Delicious 黄 寿 (黄 ),White wOnder(自 ) ミニ トマ ト イ ェ ロー キ ャ ロル (黄 ),ミ ニ キ ャ ロル ,ピ コ,盛 岡 23号 高糖度 素材 系統 LEP-1,LA1563,81Ll182-1,80N89,R982,Brehem's solid red,Ark 60-19-1,75T81 加 工 用 トマ ト Pink San ヽlarzano, Peron, Nectarin, Lesley 1040, Roma, San Marzano, Delsher, 59-400, Cannon10,T1003,Mendoza44,な つ の こま ,Redlander,Ponbana,Sante Rita,M10-10-16,盛 岡 7号 45-4-1, カ ゴメ77, Early lethbrige, Heinz 1417, ECSU-4, お,り こま ,M19SU-51, Ontario778, , Pocomoke Summer time 表 2 糖度 及 び糖含 有量 の熟度 に よ る推 移 目叩 ミユ トマ ト 高糖度素材 種 4 23 485 489 397 508 500 492 592 670 4 34 5 29 5 49 加工用 トマ ト品種 411 443 476 注 括弧内 は糖の組成比 (プ ドウ糖 /果 糖 ) 5 27 499 677 5 98 478 , 280(085) 311(083) 318(0 353(086) 2 94(0 86) 301(085) 3 51(0 85) 4 76(086) 3 38(0 84) 3 12(089 494(092) 3 58(089) 273(088) 273(086) 283(085) 280(089) -275- 東 北 農 業 研 究 第 47号 (1994) 表3 を示 した。含有するブ ドウ糖 と果糖の比率 はどの品種群 に L― (mg%)の 推移 グル タミン酸含有量 おいて も緑熟期か ら桃熟 期 にかけて一定 であ り,完 熟期 で やや ブ ドウ糖 の比率の上昇 が見 られた。 381 その他生食用品種 うま味成分である L― グル タミン酸は緑熟期か ら着色が ミニ トマ ト 高糖度素 材 進むとともに増加 し,完 熟期での増加が最 も著 しか った。 これはどの品種群 において も同様な傾向が見 られた。 ビタ ミンCの 含有量 は生 食用品種群 で完熟期 にやや減少 表4 (")を 保有す る系統 の うち `ふ りこま' と `Ontario 77' は緑熟期 において も高 い ビタ ミンC含 有 1525 2425 992 627 1276 1766 1461 719 1161 加工用 トマ ト品種 したが ,各 成熟期ではぼ一 定 に推移 した。表 4下 段 の高色 969 689 2554 2871 1487 2137 (mg%)の 推移 ビタ ミンC含 有量 素遺伝子 量を示 したが,更 に熟期 が進む に したが ってその含有量 は ミニ トマ ト 高糖度 素材 増加 した。 加工用 トマ ト品種 なつのこま 赤・ 桃色果実品種では色素類 の うちク ロロフィルは着色 が始まるとともに大 きく減少 し,桃 熟期 までその減少 は停 むに伴 い著 しくなり,桃 熟期 か ら完熟期 にかけて最 も大 き くな った。 カ ロチ ン類 やキサ ントフ ィル類 を含 む黄色色素 類 は緩やかにはぼ一定の割合で増加 した。 ただ ミニ トマ ト 21 6 224 189 372 263 322 255 344 242 332 236 214 199 219 224 312 376 249 292 239 321 336 385 26 6 26 3 34 5 33 8 ふ り こま 止 した。 それとは逆 に リコピンの含有量 の増加 は熟期 が進 204 21 5 219 21 9 240 240 189 189 215 その他生食用品種 Ontario77 寿'で は熟期が進むにつ れて増加 したが , `イ エ ロー キ ャ ロル'で は黄色色素 の増加が見 られず ´ 定であ った。自色 については桃熟期 までの増加 は見 られなか った。黄・ 自色 果実 の品種 のいずれ もク ロロフ ィルの減少 は他 の品種 と同 果実 の `White wonder'に ついて もク ロロ フ ィル は同様 様 であったが ,リ コ ピンの生成 は認め られなか った。黄色 果実 `黄 寿', `イ エローキ ャロル' の ク ロロ フ ィル は他 認め られた。レ 遺伝子を保有 す る系統 の リコ ピン含有量 の赤色 や挑色 の品種 と同様 な減少を示 したが ,リ コピンに ついて はその生成 は認め られなか った。黄色色素類 は 嘆 表5 は他の加工用品種 と同様 に桃熟期まで は増加 したが , `な つの こま'と `Ontari0778は 桃熟期 か ら完熟期 にか け ての増加 が著 しか った。 熟度 による色素類 の推移 赤色生食 用品種 ミニ トマ ト 高糖度素材 品種 _加 工用 上 =上 White 、 vOnder ヲ 字 '貨 1ら `ユ ふ り こま 19 66 30 7 254 11 11 22 9 2 11 7 =[ま 4848 5 9 4 40 0 5 2 3 3 8 1 9 0 12 0 25 7 25 6 982 52 2 66 4 2 2 3 99 866 93 0 0 1 1 3 14 04 18 158 468 1188 6 9 12 3 7 1 __27,7 12.6__■ 0_■ .3___■ :7 117 426 1081 30 9 249 23 1 4 1 ルー静:… 1:一 Ontario778 表6 な減少 を示 し,更 に桃熟期 か ら完熟期に黄色色素 の減少 が 547 15 1 66 9 27 3 17 1 32 25 33 :1-― 68 42 =:― 79 44 1 1 02 06 0 1 76 49 5 熟度 による色素構成 の推移 177 2 11 7 14 0 32 08 94 100 155 29 87 32 88 4ま 9 9 70 ―li l:-11-■ 1::一 03 7 8 10 2 15 6 12 9 12 3 14 3 122 44 169 533 一 ―:ギ ー ::― 1;: 205 200 274 =` 10 4 11 7 27 4 と め L― グル タミン酸や リコピンの含有量 は完熟期 直前 に大 赤色生食用品種 ミニ トマ ト 高糖度素材 031 029 054 037 070 052 087 062 021 044 067 0 76 きく増加 し,高 リコピン系統 は桃熟期で他 の系統 より高 い 値 を示す ことが 明 らかにな った。糖度 についても高糖度 と 加工用 トマ ト品種 040 052 080 087 ヽ Vhite 、 vonder 0 04 0 20 0 06 0 43 黄寿 031 014 002 003 イエローキ ャロル 。001 005 002 005 … なちあ きま 17- 。i59 ¨ bi84… bi9o ふ りこま Ontario778 000 044 070 081 0 03 0 42 0 81 0 87 して利用 されて い る品種 は完熟期まで糖度 の上昇が認め ら れた。ゎ 遺伝子を保有する高 ビタ ミンC系 統 は熟期 が 進 むとともに ビタ ミンC含 有量が増加すること力ゞ 明 らかになっ た。 -276-