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市民環境活動報告会 - 神奈川県環境科学センター
第13回 市民環境活動報告会 講演要旨集 平成 19 年2月 18 日(日) かながわ県民センター・ホール 第13回市民環境活動報告会実行委員会 プログラム 10:00∼10:05 開会のあいさつ 第13回市民環境活動報告会実行委員長 香川 興勝 10:05∼10:30 生ゴミから培養土をつくる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 神奈川県地球温暖化防止活動推進員 芹澤 孝之 10:30∼10:55 私の里山・私たちの里山 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 かながわ環境カウンセラー協議会川崎支部 川崎の市民活動団体『かりうど』 照沼 俊夫 10:55∼11:20 子どもたちと地球の未来のために∼人づくり・地域づくり∼・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 NPO法人 アース・エコ 北村 博子 11:20∼11:30 休憩 11:30∼ ポスターセッション 『神奈川県環境学習リーダー会大気環境部会活動報告』・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・13 神奈川県環境学習リーダー会大気環境部会 猪股 満智子 『環境ワークショップとしてのケナフ部会の活動報告 II』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 神奈川県環境学習リーダー会ケナフ部会 荒谷 輝正 『エコアクション21(EA21)とその普及活動』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 かながわ環境カウンセラー協議会環境管理委員会 高橋 信 『市民による小中学校の環境学習の実態調査報告』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・25 かながわ環境カウンセラー協議会環境教育委員会 上野 秀一 『環境の捉え方−研究という視点からの環境保全』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 神奈川県環境学習リーダー会・首都大学東京大学院 土屋 俊幸 『エネルギー自立ハウスに居住して9年間の記録から』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・33 神奈川県地球温暖化防止活動推進員 増澤 修 『藤沢・川名緑地の生物、水質調査活動報告』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・35 藤沢グリーンスタッフの会 立石 定巳 13:30∼14:30 基調講演 地球温暖化の将来予測 ∼地球温暖化は何を引き起こすのか∼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 (独)海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター研究員 鈴木 立郎氏 14:30∼14:40 休憩 14:40∼15:05 買い物で社会を変えよう! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 神奈川県環境学習リーダー会グリーン部会 杉山 陽絵 15:05∼15:30 環境調査活動から地域参加型保全活動へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・47 よみがえれ板戸川市民の会 本間 意三子・山口 夏子 15:30∼15:55 「よこすかエコニコ・サークル」の環境学習活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・51 こどもエコクラブ「よこすかエコニコ・サークル」 野崎 章子 15:55∼16:00 閉会のあいさつ 第13回市民環境活動報告会実行委員 上野 秀一 表紙イラスト: 齋藤美代子(神奈川県環境学習リーダー会) 1 2 3 4 私の里山・私たちの里山 川崎市の市民活動団体『かりうど』 川副勝人、小坂大吉郎、鴨志田基彦、佐藤義雄、清水登、田中肇、照沼静子 村元賢二、中山敏彦、松山一郎、宮沢文人、吉見栄市、○照沼俊夫 NPO法人かながわ環境カウンセラー協議会(KECA)川崎支部 大中睦夫、岡本正義、加藤幸雄、佐久間精一、谷敬、中山育美、茂木照男 照沼俊夫 山路きて何やらゆかしすみれ草 松尾芭蕉 1. 活動の動機と経緯 『かりうど』と『KECA川崎支部』が、現在川崎市麻生区で行っている活 動には、荒廃した森林の再生をする環境保全活動と観察会により環境への関心 を深める環境学習活動と二つあるが、環境学習活動は紹介に止め、今回は主に 環境保全活動について報告する。 現在の活動領域には、14∼ 川崎市 5年前、鳥の声で溢れていた。 真夏には4時半頃から鳴き始め て7時半頃迄ピーチクパーチク、 ジュルジュル、ジョロジョロと やっていた。ところが、199 6年頃から鳥の声が少なくなり、 1999年頃には鳥が居なくな ったかと思える程になった。 ここは、周囲を公園緑地が取り 川 崎 市 の ホームページよ り 囲んでいて、森林型の緑に溢れ ているのであるが、その公園緑 荒廃の状況 手入れ後 5 地を調べたところ、森林が荒れ放題になり、荒廃していた。篠竹が密集し、葛 が木に覆い被さり、とても鳥が生息出来る状況とは思えなかった。そこで私は、 家内と二人で先ずゴミ拾いから始めて会員を募った。同じ志を持った方が二人 来てくれた段階で『かりうど』を結成し、川崎市に『公園の森林部の維持管理 をする』と申し出た。2000年のことだった。 2. 川崎市麻生区の特徴 ・ 多摩丘陵の南端。丘陵と谷戸の入り組んだ複雑な地形。麻生川、片平川、 三沢川、真福寺川、黒須田川などの源流域。 ・ 足利尊氏の時代に「武蔵国麻生郷」が登場。北条氏時代に麻生、王禅寺、 黒川、万福寺、片平、早野等の郷村名が登場【北条氏直 発令の竹木伐 採禁止令、武器庫】。江戸時代は幕府の直轄領か旗本領【薪炭供給地】。 ・ 明治22年の市制・町村制施行で生田村、柿生村が誕生。昭和13年、 14年に生田村、柿生村が川崎市へ編入。昭和57年に麻生区が誕生。 ・ 江戸、明治、大正期を通じて人口増減のない農村地帯。農閑期の男の仕 事は炭焼き、女は木綿の機織り。炭の生産の最盛期は大正10年頃、昭 和40年代にはほとんど消滅。 ・ 昭和2年に小田急線が開通。昭和35年に百合丘に公団住宅が完成し、 革命的変化【宅地供給地】。 ・ 山を崩し、谷を埋めて住宅団地を開発した。その過程で里山の片鱗を公 園緑地の中に止めたが、里山は2地域を除き完全に消失した。 ・ 川崎市麻生区は、県の花であり、区の花である山百合の宝庫であったと 言われ、夏に小田急で箱根や湘南へ保養に行く人が芬々とする香りを楽 しんだと言う。しかし生育の適地である南斜面が住宅地に変わり、山百 合は消滅した。僅かに百合丘と言う地名や百合ヶ丘駅、新百合ヶ丘駅と 言う駅名にその名を冠して、往時を偲んでいる。 3. 取組の内容と成果 現在取り組んでいる場所は、川崎市が近隣公園と呼んでいる比較的広い公園 (36,225㎡)で、県の里山分布図で言う里山ではないが、里山の姿・形 をそのまま残し、薪炭の材となった樹木が残っているので、私達は里山と呼ん でいる。取組は、会員の気力と体力が勝負の山仕事で、背丈が5mもある篠竹 との格闘から始まった。しかし、闇雲に刈り込みをしている訳ではない。荒廃 が目に付き醜い所、切り土盛り土をしてコンクリート枠で土留めをし、藪にな っている所から手を入れた。藪を好む鶯などの生きる地山の藪は残している。 全体に手を広げるのは、先に手を着けた所の再生が出来てからと考えている。 その頃には第一世代の会員は引退しているだろう。下草刈りも時期を選び、梅 雨時は茂るに任せている。刈る時は、来年何が出てくるかとドキドキしながら、 慎重に地面を露出させないように刈っている。 6 1年目は、林床から光を奪っている篠竹や葛を刈り取って、光を入れること から始まった。開くと直ぐに葛(もともと多いのだが)やセイタカアワダチソウ 神奈川県の里山分布図 神奈川県の資料より 篠 竹との格 闘 や夏草が生い茂り、これと戦うのが次の仕事だった。 2年目は、篠竹を刈ったばかりの林床はまだザングイ状態であるから、葛や セイタカアワダチソウや夏草の草刈りと同時に、これらを毎月刈り揃えた。 3年目、4年目は、刈り揃えても、残っている節から新しい芽が出てくるの で、それらをまた刈り取った。蔦草やセイタカアワダチソウや夏草の草刈りは、 毎年毎年の繰り返しの労働である。しかし、この地域が住宅供給基地になると 共に、里山に人の手が入らなくなり、それ以来眠り続けていたとおもわれる植 物が、林床に光を入れ、条件を整えると言う我々の行為に対し、的確に反応し てくれた。2年後、3年後、4年後に、上の写真のような植物が顔を出し、増 えてくれたのである。中には、再生が追いつかず日当たりが良すぎて姿を消す ものもあった。一番悔しいかったのは、心無い人によって盗掘されたことであ った。30 年の眠りから覚めた、自慢の、自生の山百合が球根ごと盗掘されてし まったのである。乾燥した庭に植えても育つはずがないのに、無念でならない。 又、手前味噌ながら小鳥は増えたような気がする。今夏、4時には起こされた。 7 植樹が可能になるのは、篠竹の根が衰える5年目辺りからある。『かりうど』 は、地域の小学校や幼稚園の子供たちの協力と自己資金に加えて、地域住民や 地域自治会協議会の寄付、NPO法人かながわ環境カウンセラー協議会の協賛、 川崎市の後援を得て、下の写真のように2005年から植樹を開始した。先ず 目立ち易い斜面への植樹を行っている。子供たちは皆、 「自分が植えた木はどう なっているかな」と気にしているので、毎月の下草刈りを怠ることは出来ない。 葛が巻きつくと枯れてしまうのである。葛は根に一杯栄養を貯めているから刈 っても刈っても出て来るのである。尚、今年は 2007 年 3 月 11 日植樹である。 2005 年植樹 植え方の説明 実技指導待機 タウン誌の取材 2006 年植樹 怖い!と言いながら サッカーより僕は植えたい KECA 理 事 長 小学校長 副市長 発表者 自治会長 4. 今後の展開 クヌギや山桜などの実生の苗木(育成中)で森を再生すること。第一世代の会 員も年を重ねたので世代交代を図ること。東京農大の先生やKECAと行って いる昆虫観察会、野鳥観察会の回数を増すこと。今後の展開はこれらに尽きる。 5. お願い 各地で環境保全活動が行われていますが、困るのは、それを見ようとウォー カーが大挙してやって来ることです。見知ぬ人が大挙して地域を歩き回ってい ると、見知ぬ人への地域の感性が鈍り、地域の安全安心へのバリアが低くなり はしないかと心配になるのです。また大挙して来ると必ずや養生地へ踏み込ん だり、汚して帰ったりするのです。来るにしても、2、3人で来て、静かに見て、 静かに帰って欲しいのです。何にも手を付けず、何も取らず、何も置いて行か ないで欲しいのです。小人数で見るだけと言う文化が根付くのを願って止みま せん。こう言う文化の確立も環境保全活動の一環であると思うのです。 曼珠沙華水の遠くを馬車の影 8 池 芹泉 子どもたちと地球の未来のために∼人づくり・地域づくり∼ ̶気づき・考え・行動する環境教育実施事例報告̶ 特定非営利活動法人 アース・エコ 北村 博子 1.はじめに 平成13年8月、第1回「親と子の楽しい省エネ教室」の開催から活動を開始したアース・エコ は、平成18年1月「特定非営利活動法人アース・エコ」を設立、環境教育を中心に環境保全 普及啓発活動を地道に継続推進しつつあります。 小学校における温暖化対策環境教育として、少(省)エネルギー・新エネルギー・自然エネル ギー実験に依る体験、家庭での少エネルギー実践行動体験から実践行動の継続に向けて、 児童自らの気づき・思考から主体的に行動に移せる人づくり・環境教育を志向しています。 児童自らによる、少エネルギー行動目標設定と実践を伴う平成18年度実施環境教育3事 例を紹介し、子どもたちが教えられるのではなく、自らの実践体験から獲得した気付きと思考 力から醸し出される興味深いメッセージを受け取って頂き、『(環境)教育とは、教えることでは なく学び教えられること』の示唆するものをご理解頂ければ幸いです。 2.実施事業の概略 2.1.実施事業紹介 自主事業:「親と子の楽しい省エネ教室」 協働事業:「学校 ISO 応援事業(フィフティフィフティ事業)」(横浜市環境創造局) 委託事業:「グリーン教育支援制度環境教育」(神奈川県環境農政部環境計画課) 「環境教育・S 小学校3カ年」(横浜市立 S 小学校・温暖化対策環境教育(県 委託事業)) 支援事業:「温暖化対策環境教育」出前講座(横浜市環境創造局) 共同事業:「子ども環境体験教室」(神奈川県環境科学センター) 参加事業:「エコライフフェア」(環境省)「アジェンダの日」(県環境計画課) 「親子で楽しむ環境展」(神奈川県、神奈川県環境学習リーダー会等) 3.温暖化対策環境教育の実施事例 3.1.事業概略 実施期間 :平成18年6月∼11月(19年2月) 実施時間数 :2時間*2日間(少エネ実践期間1ヶ月∼2ヶ月を間に要す) 実施対象学校:横浜市立小学校3(4)校 実施対象学年:第5学年(2校):3組:101名、3組:98名、 第4学年(2校):3組:92名、(3組:104名) 3.2.環境教育プログラム:1日目 実施形態:1学年3組を2班に編成、各班8グループに編成し、各グループを5 9 名∼7名に編成。各グループには、スタッフが参加し、児童のグル ープワークを支援する。 3.2.1.地球温暖化 DVD 視聴 3.2.2.地球温暖化シミュレーション〔1950∼2100年〕映写 3.2.3.電気(実験)の説明 3.2.4.電気の実験〔2グループ一緒に、5分間程度次表4項目の実験体験〕 表1〔電気の実験体験項目〕 ① 電気の働き:手回し発電機で実験・体験 ② 手回し発電機何個で 20W の白熱電球を点けられるか、8W 蛍光灯では? ③ 照明消費電力比較 ④ 待機時消費電力計測 3.2.5.エコカルタ取り:環境保全活動の実践参考事例〔解説付き〕 3.2.6.グループワーク:少エネ実践行動目標について 3.2.7.少エネ実行計画:実践行動目標設定及び少エネカレンダーの作成。 3.3.プログラム1日目と2日目実施の間の 1 ヶ月∼2ヶ月間は、児童が自ら設定し た少エネ実践行動目標を各家庭で実行する。 プログラム2日目実施日の 1 週間前、少エネカレンダーを回収し、記録カレン ダーを整理して結果を児童にフィードバックする。 3.4.環境教育プログラム2:2日目 実施形態:1日目に同じ。 3.4.1.新・自然エネルギー実験〔電気の実験と同様に、4項目の実験体験〕 表2〔新・自然ネネルギー実験体験項目〕 ① 太陽光発電 (雨天時室内:電気使用) ② 燃料電池 (雨天時室内:電気使用) ③ 風力発電 (雨天時室内:電気使用) ④ ソーラークッカー (雨天時室内:電気使用) 3.4.2.少エネ実践結果報告 3.4.3.WS:実践して気づいたこと、考えたこと、大切だと思ったこと、工夫したこと、此れ からのこと等を、ポストイットに書き出し、各グループ毎にテーマを纏める。 3.4.4.少エネ継続目標設定:少エネカレンダー作成 3.4.5.少エネの環カード作成 3.4.6.振り返り感想文記入 4.温暖化対策環境教育:少エネ実践結果 実施対象:横浜市立 Y 小学校第4学年3組92名、実施期間:6月32日∼7月11日 :横浜市立 I 小学校第5学年3組101名、実施期間:7月14日∼9月13日 :横浜市立 N 小学校第5学年3組98名、実施期間:10月18日∼11月9日 4.1.少エネチャレンジ目標:学校毎の児童の設定に依る目標の纏め 〔図 1-1,2-1,3-1〕 4.2.少エネチャレンジ結果:学校毎の児童の少エネ実践記録の纏め 〔図 1-2,2-2,3-2〕 10 人 少エネチャレンジ目標 (Y小学校第4学年59名) 7月 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 名) 30 25 20 15 10 5 TV 電気/燃料 水 食残/ゴミ 0 交通 やったね少エネ もう少し少エネ もっと少エネ 図 1-1 人 少エネチャレンジ目標(I小学校第5学年93名) 7月 8月 40 30 20 10 0 電気/燃料 コンセント 水 食残/ゴミ 少エネチャレンジ結果 (I小学校第5学年93名) やったね少エネ 交通 もう少し少エネ もっと少エネ 図 2−1 少エネチャレンジ目標(N小学校第5学年91名) 7月 8月 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 50 TV 図 1-2 人 60 人 7月 少エネチャレンジ結果(Y小学校第4学年59 人 35 図 2-2 10月 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 人 省エネチャレンジ結果( N小学校第5学年91名 10月 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 TV 電気/燃料 水 食/ゴミ/買 やったね 交通 もう少し 図 3−1 もっと 図 3−2 5.温暖化対策環境教育:少エネ実践感想 5.1.少エネチャレンジをした感想〔回答数:3校:274〕 5.1.1.少エネチャレンジをして楽しかったこと(有効回答数:202) 表3〔「少エネチャレンジをして楽しかったこと」の上位回答〕 ①自分の目標が達成出来た時、チャレンジするところ、頑張って出来たこと:20名 ②少エネは、むずかしいけど楽しかった:19名 ③研究したり、自分で考えたところが楽しかった:14名 ④自分たちのやったことが、地球に優しいことと思うと楽しくなる:14名 ⑤家族皆とやったこと(両親が進んでやってくれてうれしかった):10名 ⑥毎日つづけていたら楽しくなった:4名 ⑦少しずつ、こまめにやっていくところが楽しかった:3名 11 5.1.2.少エネチャレンジをしてむずかしかったこと(有効回答数:230) 表4〔「少エネチャレンジをしてむずかしかったこと」の上位回答〕 ①目標を忘れずにすること:40名 ②毎日こまめに少エネする事、慣れる迄大変:29名 ③いつもいつも、毎日続けてやること:22名 ④記録をつけること:7名 ⑤考えるのがむずかしかった:5名 5.1.3.少エネチャレンジ を続けるために 大切だと思ったこと(有効回答数:232) 表5〔「少エネチャレンジを続けるために大切だと思ったこと」の上位回答〕 ①毎日続け習慣にすること、あきらめず根気よく続けること:52名 ②つねに意識しやるという気持ち、地球を大切にし守ることを意識すること:50名 ③皆で協力すること(世界の皆、近所、家族):24名 ④どんどんいろいろな人、皆につたえていくこと:10名 ⑤自分が出来ることを面倒くさがらずやること:5名 5.1.4.少エネチャレンジ を続けるために 工夫したこと(有効回答数:222) 表6〔「少エネチャレンジを続けるために工夫したこと」の上位回答〕 ①家族皆で協力してやる:20名 ②少エネ目標を紙に書いて、見える所、壁などにはった:17名 ③買い物に、マイバッグを持っていったこと:8名 ④目標を持って意識すること:6名 ⑤楽しく、自分からすすんでやること:3名 5.2.少エネ実践への家庭の協力〔有効回答数:237〕 5.2.1.協力をして貰いました :97〔21:57:19〕 5.2.2.協力した人、協力しない人がいました: 70 〔22:22:26〕 5.2.3.協力して貰えませんでした : 80〔21:15:44〕 5.3.少エネ継続実践行動目標〔有効回答数:245(内、上位項目)〕 電気:96名 水:54名 残食/ゴミ:43名 暖房:8名 交通:7名 6.おわりに 実践環境教育参加児童に依れば、「少エネ」とは、「慣れないこと」「大変」なことで「すぐ忘れる」 が、「続ける事」で「習慣」にして、「家族の皆で協力」し「皆に広めること」が大切なことであります。 「新エネルギー・省エネルギー実験」体験に始まる、児童自身による少エネ目標の設定と実践に よる環境体験教育は、参加児童の振返り感想にもある通り、児童の少エネ実践行動による「気付 き・思考」から始まる、新たな実践行動への反映を、家庭内に止めず地域への働きかけを推進して 行くことによって、学校に軸をおいた環境教育の地域への展開を可能にしたいものです。 12 神奈川県環境学習リーダー会大気環境部会報告 猪股満智子 立石定己 (VOC/PRTR プロジェクト) 1 あゆみ 1998 年 3 月∼01 年 1 月 行政との連携・協働の 1 テーマとして「県民環境 モニタリングの手法」検討委員会にリーダー5 名参画、検討 2000 年9月∼環境モニタリング部会発足。NO 2 簡易測定の 12 月開始に向 けて、11 月、第 1 世代と第 6 世代測定方式との比較実験 さし当りデータ採用を第 6 世代測定方式のみとする 2001 年∼ 自然系モニタリング「皆ですすめる環境調査」に、指標生物と して春(タンポポ)、夏(ツバメ)、秋(ジョロウグモ)を選び調査 開始。6 月度の NO 2 測定も併せ、結果を地図情報化、ホー ムページに掲載開始 2002 年 4 月∼水質系モニタリング「酒匂川水系探水隊」活動開始 9 月∼県環境科学センター主催「夏休み子ども環境体験教室」講師役 2004 年 4 月∼水質系を分離し、それぞれ大気環境部会、水環境部会として 独立、運営 9 月∼「横浜 カーフリーディ 」に出展 。 05 年は NO 2 測定による比較も 12 月∼「地球温暖化防止の集い」分科会 そら”で事例発表とまとめ役 県グリーン教育支援制度による そら の環境教育講師役 2005 年 3 月∼NO 2 測定データの新地図情報化。 MANDARA での試行開 始とホームページ化 2006 年 2 月∼地球温暖化防止活動推進員等向けテーマ別専門研修 そら の講師役 6 月∼VOC・PRTR プロジェクト立ち上げ 12 月∼ 独立行政法人 「環境再生保全機構」の委託事業(予防・環境教育) のアドバイザー。新アジェンダ そら の指標づくりに参加 2 概念(よりおおぜいで進めよう) 皆ですすめる環境調査 行政によるモニタリングデータ 常時監視データ 1 大気系モニタリング 各種調査データ NO2測定 アサガオ、ウメノキゴケ類、 環境白書、環境概要等 ブナ等植物指標を見る手法 環境基本計画、実施計画等 各種基本計画等 2 自然系モニタリング 植物、鳥類、昆虫類等 3 水質系モニタリング リンク⇔共有 行政と県民の協働によるモニタリングネットワークの構築 ↓ 環境意識の活性、ライフスタイル見直し、車抑制、NOx・PM沈静化、地球温暖化防止 13 3 ホームページ (リンクで環境データが見られます) http://eco.pref.kanagawa.jp/ かながわの環境 http://www.k-erc.pref.kanagawa.jp 県環境科学センター http://members.at.infoseek.co.jp/k_leader/ 地球環境学習のひろば 神奈川県環境学習リーダー会 4 調査活動を基礎においた環境学習 神奈川県における大気汚染状況は大幅な改善傾向にあり、NOx・PM法による規制 も幸いし一般環境大気局の二酸化窒素(NO 2 )及び自動車ガス排気局の浮遊粒子状 物質(SPM)で環境基準達成率 100%となっている。しかし部会員が中心になって簡易 測定した環境マップデータでは基準値を超える所も見受けられる。つまり一般局以外の 地点の状況を把握でき、市民による補完と環境学習、さらには市民への啓発の役目も 担っている。また大気環境保全のみならず、市街地域でのNO 2 濃度は温暖化効果ガ ス(CO 2 )濃度に相関するということから、地球温暖化防止の観点からも指標として説得 力にもなる。また気象情報からの推察に加え、県常時監視局1時間値データを解析す ることから、簡易測定ながらより鮮明なデータ評価・予測ができることを発見した。 さらに最近、NO 2 沈静化と非メタン炭化水素(NMHC)とのバランスが影響し、オゾン との反応による光化学オキシダント発生が懸念されている。丹沢・大山総合調査でのブ ナ林の落葉で明らかになったように、人体よりも植物に感受性の強いものが多く、森林、 植物、野菜等への影響が心配されている。そういったことから、当部会ではNO 2 簡易測 定のほかにアサガオやウメノキゴケ類をはじめとする生物観察、それを手法とした環境 教育、VOC(揮発性有機化合物)の学習へとつながっている。 平成18年12月度N0 2 測定調査『環境マップ』 神奈川県環境学習リーダー会・大気環境部会 (ppb) 60 40 平成18年12月 7日∼8日24時間計測 天気 曇 気温 2℃∼12℃ MANDARA 風向 北北東∼北北西弱 ソフト使用 14 県環境科学センター実践講座「化学セミナー」を履修し、前頁4の炭化水素(H C)、NO 2 等による二次粒子や光化学オキシダント発生に興味を持った部員で VOC排出規制実施に遅れまいと 6 月プロジェクトを立ち上げた。揮発性とい う性状から市民レベルでは測定不可能であることと、土壌・農薬関係について は規制対象外といった残念さはあるものの、国・県のPRTR(環境汚染物質排 出移動登録)情報を活用し解析を試みた。 5 VOC(揮発性有機化合物トルエンやキシレンなど)の環境汚染 VOC環境汚染には大気汚染、土壌・水質汚染、オゾン層破壊及び室内空気汚 染等がある。大気汚染では光化学オキシダントや浮遊粒子状物質による健康被 害が発生し、また密閉された住居の多い私達の生活はVOC室内空気汚染によ る人の健康にも影響している。図1はVOC各種環境汚染を表した。そこで大 気環境部会では今年のテーマを「神奈川県のVOC」に焦点を合わせ、かなが わPRTR情報室のデータを活用して、各種のVOC排出量、その問題点及び 今後の課題について図表にまとめて検討した。 図1 VOCの各種環境汚染 6 県内の化学物質総排出量、各種のVOC排出量及び年度別推移状況 図2は化学物質総排出量、各種 の ③⑦ t/年 ①⑤⑥ t/年 40,000 2,000 38,767 VOC排 出 量 及 び13年 度 からの推 移 35,784 35,899 1,800 状 況 を表 すグラフである。前 項 の各 種 33,728 1,600 番号とグラフ番号を対比させている。 30,000 27,466 1,400 16年度のVOC全排出量25,300t 27,208 25,358 25,290 1,200 /年 は化 学 物 質 総 排 出 量 27,500t /年の92%を占めている。 20,000 1,000 種類別・年度別の推移を見ると、 800 15年 度 ∼16年 度 では総 排 出 量 は僅 600 10,000 かに増加している。 7,018 400 6,060 5,596 4,700 VOC排 出 量 はほと んど 変 化 が ない 。 200 移動体排出量は毎年増減を繰り返し、 0 0 13年度 14年度 15年度 16年度 16年度は増加している。 総排出量 ③全VOC 注1 水系排出量及び水 質汚染物質は毎 ⑦移動体(排気ガス) ⑤室内汚染物質 注2 ①フロン類ハロン類 注3 ⑥全VOC中の水系排出量 ⑥-1水質汚濁対象物質注4 年度ごと増加している。 1,667 1,536 1,490 1,585 1,443 1,468 1,371 1,141 33.6 7.5 81.9 2.3 72.8 4.3 159.8 5.3 図2各種類排出量と年度別推移状況 15 7 市町村別の各種排出量と事業所数 図3は市町村別にVOC、km 2 当りの排出量及び事業所数である。市町村別 の排出量上位5は横浜、川崎、平塚、横須賀、相模原順であるが、km 2 当りで は開成、綾瀬、平塚、川崎、横須賀順(枠内は大事業所数:注記参照)になる。 事業所数及び 2 km 当り排出量 排出量(t/年) 8000 120 151.3 b:5 7000 100 b:1、c:3 6000 b:1、c:3 5000 a:1 c:1 80 4000 60 3000 40 2000 20 1000 相模湖 藤野 城山 津久井 愛川 清川 湯河原 真鶴 開成 箱根 松田 事業所数(1t以上/年) 山北 中井 大井 二宮 大磯 寒川 葉山 南足柄 綾瀬 排出量 海老名 全VOC排出量(t/年) 座間 大和 伊勢原 秦野 厚木 相模原 三浦 逗子 注 記 小田原 総排出量(t/年) 茅 ヶ崎 藤沢 平塚 鎌倉 川崎 横須賀 横浜 0 0 単位面積当たりの排出量(t/年) a:100、b:50、c:10万t/年以上の事業所数 図3 市町村別各種排出量及び事業所数 8 排出された物質が半分になる時間 図4は総排出量上位10物質が環境に排出されて、その量が半分になる時間の グラフである。排出された物質がその期間大気や水系に滞留する。家庭で使う 防虫剤・消臭剤の原料p−ジクロロベンゼンは25日∼50日間滞留している。 9 問題点と今後の課題 環境に排出されたVOC各物質が半分になる時間 排出量t/年 15、16年度と年間約2万7千トン 8390 規模で排出される大量の化学物質は環 8000 7320 境に滞留して、環境を汚染し、人の健康 や生態系に影響を与えている。排出量推 6000 移状況では、15∼16年度にかけて総 排出量は増加に転じ特に移動体排出量 4000 は増加量が大きい。又km 2 当りVOC 排出量が多い市町或は50t/年以上 1850 2000 1160 1050 の事業所のある地域はリスクコミニュ 744 678 505 341 303 286 ケーションを実施すべき候補地となる。 0 今回は各種排出量を視点に検討したが、 0 .6 ∼ 3 ∼ 夏 季 1 0時 1 日 1 ∼ 7 ∼ 2 5∼ 5 3 ∼ 成 層 成 層 3日 1 3日 5 0 16 圏 で 圏 で 1 . 2 時5 . 5 時 間5 . 5 時 間 日 0日 分 分 今後は化学物質の有害性について幅広 間 解 解 間 く調査し、人の健康や生態系に対する影 図4 排出された物質が半分になる時間 響度の比較・検討を課題としたい。 16 環境ワークショップとしてのケナフ部会の活動報告Ⅱ (神奈川県環境学習リーダー会ケナフ部会の活動) 神奈川県環境学習リーダー会ケナフ部会 荒谷 輝正 1 はじめに 1999 年から神奈川県環境科学センターの裏側の圃場を使用させていただきながら、毎年 のように、いろんな種類のケナフを「栽培して 8 年になりました。毎年の気候は微妙に変わっ ており、一年、一年が新しい発見であったとように思います。ケナフは一年草植物として環 境保全、特に森林の保護をめぐる国際世論の高まりの中で木材繊維に代わる新しい非木 材資源としての期待が高まっていること。ケナフは成長が早いことで炭酸ガスを多量に吸収 するため地球温暖化防止につながると期待されていること。また、環境教育の題材として大 変有用と考えられています。 また、ケナフ繊維の持つ強靭性を利用して、「大型のテント膜材」や「ケナフボード」等の工 業用品が展示されたということで、ケナフ用途の今後、更なる発展が期待されています。 さらに、ケナフ等の植物材料を利用したエコ携帯(NTT ドコモ、NEC 製)など、新しい製品が 出てきた。また、森林保護に配慮した製品として非木材紙製品であるケナフはグリーン購入 ネットワークからも注目されています。 また、私どもは、新しい環境ワークショップ教材として「100%段ボール古紙再生による紙管 (丸方、角形)」使って、家具、文具、遊技などの造形物を造る」ことを目指して、昨年から活 動をしているので、この活動も報告いたします。 2本年度の活動報告 2−1,環境科学センターの「実験圃場」を利用したケナフ栽培(主な記録) H18年 3 月 24 日 ケナフ畑起し(耕耘機による耕運)図1、2、3 H18年4月20日 ケナフの種蒔き 図4 H18年5月19日 ケナフの種蒔き 図5 H18年7月07日 ケナフの補植を実施 図6 H18年8月18日 ケナフ草取り 図7、8 H18年9月21日 ケナフ草取り 図9 H18年11月25日 ケナフ刈り取り 図10、11 H18年12月19日 ケナフ刈り取り 図12 2.外部講座の手伝い: H18年2月18日 相模原市大野北公民館環境委員会主催 「紙管を利用した写真立てを作ろう」開催 図13,14 H18年6月17日 「親子で楽しむ環境展」で紙漉き及び「古紙を利用した作品作りで貯金 箱」を作成コーナを実施 図15、16,17,18、19 H18年9月16日 相模原市大野北公民館「古紙を利用した工作教室」開催 図20,21 H18年6月14・10月20・10 月 28 日藤沢市立高谷小学校 4 年生(3クラス)に 3 回にわたっ て、種うえから、刈り取り、紙漉きを実施 H18年11月19日 横浜市港南区野庭地区第 20 回「ふるさと・のば「福祉のつどい」 ケナフを利用した紙漉き実施 図22,23 17 H18 年 12 月 9 日 平塚リサクルセンター「くるりんまつり」で紙漉き実施 図 24,25,26 3.神奈川県環境科学センター主催の「子ども環境体験教室」 H18年7月27日「写真立てを作ろう」 図27,28 H18年8月24日 「ケナフを使った自分だけのハガキを作ろう」 図29,30 図1耕運機で耕運してい る風景 図2畑の手入れ風景 図3マルチを張って種蒔き 準備完了 図4種蒔き風景 図5種蒔きを終えて名札を 立てる。 図6 6月末早々に花がさ きました 図7ケナフが順調に成長 している 図8背丈に比べて高いの がわかります。 図9タイケナフ。少し葉っ ぱが違います。 図10枯れはたケナフ 図11種をつけたケナフ 図12不要な部分は畑に戻 します 18 図13相模原市大野北公 民館写真立て教室 図14相模原市大野北公民 館写真立て教室 図15親子で楽しむ環境展 図16親子で楽しむ環境 展 図17親子で楽しむ環境展 「貯金箱」作成 図18親子で楽しむ環境展 工作教室 図19親子で楽しむ環境 展工作教室 図20相模原市大野北公民 館工作教室 図21相模原市大野北公 民館工作教室 図22「ふるさと・のば「福 祉のつどい」 図23「ふるさと・のば「福祉の つどい」 図24「ふるさと・のば「福祉 のつどい」 図25平塚リサクルセンタ ー「くるりんまつり」 図26平塚リサクルセンター 「くるりんまつり」 図27写真立てを作ろう 19 図28「写真立てを作ろ う」 図29「ケナフを使った自分だ けのハガキを作ろう」 図30「ケナフを使った自 分だけのハガキを作ろう」 4今後の活動 今年も多くの方と、ワークショップを通じて、地球お温暖化防止の重要性を訴える事が出来 て楽しく過ごさせて頂きました。1999 年(平成 11 年)にケナフ部会を開設して8年間「物を作 り」を通じて、環境保全の大切を訴えてきました。今後ともケナフを中心にいろいろなワーク ショプを加えて環境保全の大事さを訴えて行きたいと思います。 近年、温暖化ガス削減の一環として植物を素材とした製品が注目をあびています。冒頭に 述べた、エコ携帯(NTT ドコモ、NEC 製)をはじめ、自動車のスペアタイヤ用カバー等、ケナ フが耐久性、耐熱を確保する事が判っています。今後は産業としても重要性を増してくるも と期待されています。 ケナフ部会としては、これから盛んになる環境学習で「ケナフを通じて環境保全のことを学 ぶ」ことをモットーに頑張って行きたいと考えています。 5 文献紹介 1ジェルバ(JELBA) 2005・11・12 NPO法人 非木材紙普及協会 2 植物原料の素材広がる「温暖化ガス削減に期待」 日経新聞 200・12・25 3 地球にやさしいエコケータイドコモホームページ (Http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/701i/n701ieco/topics_01.Html) 20 エコアクション21(EA21)とその普及活動 NPO法人かながわ環境カウンセラー協議会(KECA) 環境管理委員長 理事 高橋 信 1 はじめに 1.1 NPO法人KECA 特定非営利活動法人 かながわ環境カウンセラー協議会(略称:NPO法人 KECA)は 特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人で神奈川県に在住又は在勤して、 神奈川県を中心に環境保全に関する活動をする環境カウンセラーのNPO法人です。 平成10年 3月28日 任意団体「かながわ環境カウンセラー協議会」を設立 平成11年11月 5日 神奈川県より特定非営利活動法人の認証を取得 平成11年11月18日 特定非営利活動法人「かながわ環境カウンセラー協議会」登記 環境カウンセラーとは、環境保全に関する専門知識や豊富な経験を持ち、市民や団 体、事業者、行政など様々な立場の人々に、環境保全活動に対する助言を行う人材で、 『平成8年環境庁告示第54号「環境カウンセラー登録制度実施規定」』 により環境省の行う審査を経て環境大臣によって認定された様々な環境分野のスペシャリ ストです。 1.2 目的と活動 環境の世紀を実現すべく環境保全 に関する諸活動を行います。 社会のすべての構成員が、環境保 全に積極的に参加して、21世紀を自 然社会のすべての構成員が、環境保 全に積極的に参加して、21世紀を自 然共生する「環の世紀」とするために、 国民生活、産業活動、さらに国際社 会の諸活動を見直し、中立かつ公正 な立場を保持し、市民、企業および 行政とのパートナーシップの形成に 努めつつ、循環型社会の形成と環境 保活動の推進を目的として活動します。 1.3 会員数 平成18年 6月1日現在の会員数は、 152名で次の通りです。 事業者部門登録者 118名 市民部門登録者 34名 両部門に登録している会員もいます。 2 EA21 2.1 概 略 21 エコアクション(EA21)は幅広く中堅中小企業者、学校、公共機関などが自主的に「環 境への取組を効果的・効率的に構築・運用・維持するシステムです。環境目標と行動計画 を策定し、運用結果を評価・公表する。」方法として環境省が策定したガイドラインに基づく 認証・登録制度です。 数多くの事業者が「グリーン購入」「サプライチェーン」における環境の取組を推進するた めの第三者による認証・登録制度にして欲しいとの要望が高くなりました。 1966年に環境庁(現環境省)が策定したのを2004年3月に全面改定を行いました。 財団法人地球環境戦略研究機関持続性センター(IGES−CfS)EA21事務局がこの 「EA21認証・登録制度」の事務を行っています。 2.2 審査人 審査人は、EA21認証・登録制度において、事業者の構築したシステムがガイドラインの 要求事項への適合状況を、審査することができる個人の資格です。 審査人は一定の要件を満たした上で、IGES−CfSEA21事務局が実施する書面試験 (一次試験)、筆記試験(二次試験)、面接試験(三次試験)合格した上で、所定の講習を 修了しなければなりません。審査人の必要要件は以下の通りです。 * 環境問題や環境保全に関する基本的な知識を有していること * 事業者の環境保全活動に関する豊富な知見と経験を有していること * 環境マネジメントシステムに関する豊富な知見と経験を有していること * 審査事業者との間で適切なコミュニケーションが図ることができ適切な審査及び指導・ 助言を行うことができること EA21審査人として事務局より認定・登録され、事務局のホームページ上で、氏名、経歴 等が公開され、事業者の依頼により審査を行うことができます。 また、産業廃棄物処理事業者の審査等にかかわる審査人は財団法人日本産業廃棄物 処理振興センターが実施する「産業廃棄物の許可申請に関する講習会」で合格修了書を 取得し、「産業廃棄物処理許可者の能力に係る基準」を満足しなければなりません。 2.3 特 徴 2.3.1 中堅・中小事業者に取り組みやすい環境経営システムが組み込まれている。 参加事業者が把握すべき環境負荷の項目及び環境への取り組むべき内容が定められ ている。ガイドラインに基き活動することで、環境負荷を低減し、経費削減を実現できる。 2.3.2 中堅・中小事業者が大きな負担がなく、環境活動レポートを作成し、発行する。 事業者が社会に対する説明責任を果たせる。 ①環境方針②環境目標とその実績③主要な環境活動計画④環境活動の取組結果の 評価⑤環境関連法令等への違反、訴訟、外部からの苦情等の有無 2.3.3 認証・登録事業者として第3者機関EA21中央事務局(IGES-CfS)に登録する。 EA21地域事務局かながわ(神奈川県中小企業団体中央会内)が登録申請し、EA21 審査人の審査で審査基準に適合している場合はEA21審査人EA21が地域事務局か ながわ中央事務局へ審査結果を報告し、事務局の判定会を経て認証・登録される。 2.4 メリット 2.4.1 京都議定書が発効した今、地球にやさしい活動をすることが企業の信頼性を 高めることにつながる。 22 2.4.2 資源・エネルギー使用の 合理化・原価低減を図ることができる。 2.4.3 法令等の遵守・環境問題の 解決を図ることで、環境リスクを事前 に回避できる。 2.4.4 環境経営システムが確立さ れ、PDCAサイクルを回すことで管理 能力が増し、企業体質が向上する。 2.4.5 神奈川県や大企業からEA 21又はISO14001を認証取得する要 請が強くなっており、対応が可能となる。 2.4.6 ISO14001と比較し安い費用と少ない労力、短期間で認証・登録ができる。 2.5 取組手順 2.5.1 EA21の取組決定 代表者が組織全体でEA21の取組を決定し、実施体制を(責任と権限)組織します。 2.5.2 環境への負荷と取組の自己チェック 環境負荷の種類と量を把握し、 取組状況を認識し、今後の具体的 取組を検討します。 2.5.3 環境経営システムの構築 環境経営システムを構築し、環境 方針・目標・計画を作成し、運用・ 評価します。 2.5.4 環境活動レポートの作成 環境への取組の成果を公表します。これが環境コミュニケーションの第一歩です。 2.5.5 EA21審査 EA21審査人の審査を受ける。審査後の認証登録は継続的改善の第一歩です。 3 普及状況 3.1 全国 2004年3月に認証登録制に改定 され、この年の11月から認証登録が 始まり、2年経過し時点で全国で 1205事業所が認証登録をしてい ます。都道府県別の認証登録は第一 グループが東京・静岡・大阪・神奈川 ・石川で100事業所前後、第二グル が長野・福岡・熊本・滋賀・愛知で 40∼60事業所、第三グループが 群馬・栃木・兵庫・埼玉・北海道で30∼35事業所になっています。 2006年末までに更新登録を必要な事業所は約100事業所あり、その内更新手続きを 23 完了した事業所は23事業所です。(IGES-CfS発表分) 3.2 県内 県内の2006年12月末の認証登録事業者数は97事業所で、認証登録申請中・システ ム構築中の事業所を加えると120事業所を超えています。 業種別の統計は製造業40%・廃棄物処理業20%・小売卸業15%・建設業8%・その他 16%です。また、地域別の統計は横浜市54%・川崎市11%・相模原市10%・その他25 %です。 4 今後の展開 産業廃棄物処理事業者のマニュアルが制定されました。産業廃棄物処理事業者は これに従いシステムの構築が必要です。 自治体イニシアチィブプログラム・関係企業グリーン化プログラムを作成し、IGES-CfS EA21事務局が普及啓発をしてEA21登録認証事業所の増加を促進しています。 これに対応し、神奈川県ではグリーン購入基本方針のなかでEA21を入札ポイントに 加点しています。また藤沢市では補助金制度を制定しています。 同様な制度を制定している他の自治体があります。(山形県・岩手県・山口県・上越市 ・長野県・静岡県・滋賀県・京都府・福岡県検討中)(石狩市・柏市・八尾市・葛飾区) 自治体イニシアチィブプログラムで地方自治体内の事業所にEA21構築の支援をする 自治体が多くなり始めています。また自治体自身でEA21を構築している事例もあります。 教育機関でもEA21を構築し、認証登録しています。教育機関の認証登録は学生・生 徒に与える影響は大きく、将来の環境問題を解決するポイントの一つの思います。(郡山 開成学園・山口県立大・琉球大システム構築中・東京都立農芸高校・群馬県立勢多農林 高等学校・石川県立大聖寺高校) 企業では傘下関係企業の「グリーン購入」「サプライチェーン」化のためにEA21の認証 登録を求めています。これに対応して金融機関もEA21認証登録事業者を支援するため 融資条件の優遇等を実施しています。(都銀・地銀・商工中金等8行) 構築・維持コストと手間隙を比較するとEA21はISO14001より大幅に負担がかかりませ んのでEA21にISO14001から移行する事業者も出はじめています。 連絡先 * NPO法人かながわ環境カウンセラー協議会(KECA) 〒231-0001 横浜市中区新港-2-1 横浜ワールドポーターズ 6F NPOスクェア内 Tel 045-226-5822 Fax 045-226-5825 E−mail [email protected] URL http://www1.c3-net.jp/keca/ * EA21地域事務局かながわ 〒231-0015 横浜市中区尾上町5-80 神奈川中小企業センター 9F 神奈川県中小企業団体中央会内 Tel 045-671-1138 Fax 045-633-5139 E−mail ea21chuokai-kanagawa.or.jp * 財団法人地球環境戦略研究機関 持続性センター(IGES-CfS)EA21事務局 〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-2-1 日本プレスセンター 8F Tel 03-3509-7903 Fax 03-3595-1084 E−mail cfs@ea21 URL http://www.ea21.jp 24 市民による小中学校の環境学習の実態調査報告 かながわ環境カウンセラー協議会環境教育委員会 高橋弘二、今泉奉、岩下次郎、岡本正義、上野和雄、樋口籐太郎 瀧元男、小林敏興、藤森公彦、福田昭三、江副章之介、○上野秀一 1 はじめに かながわ環境カウンセラー協議会(KECA)は、神奈川県下で環境保全活動を行って いる環境省登録の 環境カウンセラー 有志で構成された特定非営利活動法人(NPO) です。全体活動として、環境管理委員会、化学物質委員会、環境教育委員会、エネルギ ー委員会の4つの委員会を設け、中小企業の環境活動評価プログラム(EA21) 、化学物 質リスクコミュニケーション、環境教育、省エネルギー等の普及活動を行っています。 また、7 つの各支部(横浜、川崎、湘南、県央、西湘、横須賀三浦、相模原)で、地元 の環境保全活動や、子どもたち・一般市民を対象とした自然観察会などを行っています。 ここでは、KECA の環境教育委員会が行った「市民による小中学校の環境学習の実態 調査」を報告します。 2 調査の概要 2.1 調査目的 私たちが生きている地球を、身近なまちを、人にとってだけでなく生き物たちと共生 する環境をつくり保全し、持続可能な循環型社会を形成していくためには、21世紀を 担う子どもたちの環境教育は不可欠です。小中学校においては、総合学習の時間に環境 教育を取り入れる学校が増えつつありますが、教師による環境学習をもとに、さらに専 門家として知識・経験豊富な市民が環境学習を手助けすることは極めて意義のあること と考えます。 そこで、市民による小中学校の環境学習の現状を調査するとともに、KECA 会員の環 境教育の経験や、今後の取り組みの意欲などについてアンケート調査を実施しました。 これらをもとに、KECA 会員がそれぞれ専門とする分野を活かし、小中学校で環境学 習授業をサポートできるシステムを作っていくことが、本調査の目的です。 2.2 調査期間 平成17年8月∼平成18年3月 2.3 調査内容・方法 2.3.1 小中学校における環境学習の実態調査 環境教育委員会の委員が地元自治体(教育委員会、環境部等)を訪問し、現在、 小中学校で行われている環境学習の実態、事例について調査しました。 2.3.2 KECA 会員へのアンケート調査 小中学校における環境学習の経験、環境学習できる「環境分野」 、対象地域、 学習形態、時間、報酬、指導者リスト登録希望の有無等について調査しました。 3 調査結果 3.1 小中学校における環境学習の実態調査結果 現在、小中学校で行われている環境学習を整理し、表 1 に示します。 25 表 1 小中学校における環境学習の類型分類 類型 1 学校が総合学習の時間等で独自に行っている。 外部講師等は関与していない。 類型 2 学校が地域で活動している人を探し、直接講師に招いている(ようである) 。 自治体は、外部講師による環境教育・環境学習の実態を把握していない。 類型 3 登録・仲介型。市民公募による外部講師リスト(環境分野に限らない)を作成して、小 中学校に配布し、学校から依頼時に地域で活動している人を探して紹介している。 類型 4 自治体職員による出前講座。自治体が市民サービスの一環で行う出前講座の中で、小中 学校への環境分野の出前授業を行っている(業務として) 。 類型 5 自治体による環境教育指導者派遣事業。環境教育に意欲のある有資格者に登録してもら い、自治体が仲介を行い、学校(教師)と講師で日時、内容を調整して授業を実施。 類型 6 NPO など市民団体による環境教育。環境団体がプログラムを作り、自治体、学校へ講師 派遣を積極的に売り込んでいる。 類型 7 企業による小中学校への環境教育。各企業が CSR 活動として地元の小中学校等への環境 学習を行っている。 3.2 環境学習実施事例 3.2.1 自治体職員による出前講座(類型4の事例) (1) 横浜市の場合(環境創造局環境活動事業課) :名称は環境教育「出前講座」 よこはまの水・みどりなど21講座がある。地域向け講座もある。 (2) 川崎市の場合(環境局) :名称は「出前ごみスクール」 幼稚園から小学校を対象。 (3) 横須賀市の場合(市民部市民生活課) :名称は「まちづくり出前トーク」 主に市民対象、環境に関するメニューとして、よこすかの農業と水産業など 3.2.2 自治体による環境教育指導者派遣事業(類型5の事例) (1)神奈川県環境教育推進事業(神奈川県グリーン教育支援制度) マイアジェンタに登録して、エコマーク等の環境ラベルを収集する小中学校 に対し、NPO 等を仲介し、学校での環境教育を実施している。 所管は神奈川県環境農政部環境計画課アジェンダ推進班。 【支援した NPO など】 :神奈川県環境学習リーダー会(新エネルギー体験) 、 NPO ふるさと環境市民(環境マークが地球を救う) 、NPO ソフトエネルギー プロジェクト(環境教育体験車 NEO 号による体験) 、地球環境蘇生化実践協会 (ビオトープって何?) 、ナウシカの会(森林を中心にした自然環境モデル)等 (2)神奈川県研究者・技術者等学校派遣事業 神奈川県では、 将来の科学技術やものづくりを担う青少年を育成するために、 県内に在住または在勤の研究者・技術者等の方々を、ボランティアで小中学校 に派遣し、授業を行ってもらっている。所管は神奈川県企画部政策課科学技術 班。科学技術・ものづくりの振興が目的。 (3)横須賀市環境教育指導者派遣事業 環境教育テーマ、指導者リストを市内小中学校に配布し、学校から要請のあ 26 った指導者を派遣、環境学習を行っている。登録指導者は市内在住の ①環 境カウンセラー ②県環境学習リーダ− ③アイクルマイスター(市の講習 を受けたごみ分別等指導員) ④市が認定した市民。環境教育テーマは ① 大気汚染と児童のぜんそく ②よこすかの川 ③ごみはくらしのキーワード ④地球温暖化防止等。 3.2.3 NPO など市民団体による環境教育(類型6の事例) (1) NPO 法人ふるさと環境市民(http://www.furusato-kankyo.com/) 環境学習プログラムは ①グリーンコンシューマーになろう ②先進国ドイ ツに学ぶ ③わたしたちのまちの環境等。 (2) NPO ソフトエネルギープロジェクト(http://netlaputa.ne.jp/npo-sep) 環境教育体験車(NEO)や太陽光発電パネル、風力発電機、ミニソーラーカ ー、ソーラークッカーを所有し、エネルギーを中心とした環境教育を実践。 (3) 神奈川県環境学習リーダ−会(http://members.at.infoseek.co.jp/k_leader) エネルギー部会、ケナフ部会、自然環境部会、廃棄物 GO3部会、大気環境 部会、水環境部会、グリーン部会の各部会で環境教育を実施。 (4) NPO かながわ環境教育研究会(http://homepage2nifty.com/KERE/) 自治体(大和市、川崎市ほか)の環境教育・環境学習の企画・運営の支援、 教材(副読本)づくり、講座の講師など実践。 (5) NPO アースエコ(http://eartheco.web.infoseek.co.jp/) 横浜市地球温暖化対策環境教育、神奈川県グリーン教育支援制度環境教育、 フィフティフィフティプログラムほか地域教育活動も実施。 (6) その他 ボランティア講師の会、小田原報徳実践会、よこはま湘南ネーチャーゲー ムの会、かまくら環境会議、ナウシカの会、こどものためのオープンハウス、 エネルギー環境教育情報センター等の団体が実施している。 3.2.4 企業による小中学校等への環境教育(類型7の事例) (1) 富士通株式会社 パソコンを分解することにより、3R を理解し、日常生活で自分たちがで きる環境負荷低減活動を考え、行動をおこすきっかけとしている。 (2) 東芝研究開発センター 家電製品の省エネ技術等を実験を交え小中学校へ出前授業している。 また、東芝科学館を見学する小中学生に環境学習を行っている。 (3) その他、東京電力、東京ガス、富士フィルム等の企業が実施。 3.3 KECA 会員へのアンケート調査結果(回答者数53人、会員の 1/3) ① 小中学校の環境学習の経験者は14人、各支部1∼3名の経験者がいる。 ② 未経験者の内、今後やってみたい人が28人(70%)いる。 ③ 環境学習できる環境分野は、水、地球温暖化、廃棄物、エネルギーが多い が、有害物質、大気、自然保護、土壌汚染等各分野に人材がいる。 ④ 対象は小中学校両方できる人が多く、学習形態は座学が多い。 27 ⑤ 対象地域は、地元に限らず、支部内、県内どこでもという人が多く、時間 については、事前に調整すれば、ほぼいつでも可能との回答が多い。 ⑥ 報酬は交通費の実費程度を希望する人が多いが、無償でも良い、有償が良 いとの意見もあり、今後論議が必要。 ⑦ 環境学習支援者リストの登録については、匿名希望も含め31人が希望。 ⑧ 学校から10名が相談を受けており、今後のシステム作りに反映させたい。 4 今後 KECA が進める環境学習支援システムについて 実態調査結果から、多くの NPO など市民団体による小中学校への環境学習が行わ れていることが明らかとなりました。一方、KECA 会員の中には、自治体による環境 教育派遣事業の登録者として、あるいは NPO など市民団体による環境教育を実践し ている人もいます。しかし、アンケート調査結果によれば、経験はないが今後、環境 教育に取り組んでみたい人も多数いることから、KECA として、小中学校の環境学習 を支援するシステムづくりを行っていく必要があります。 そのためには、まず環境学習支援希望会員に対し、環境学習の支援できる分野を記 載してもらい、KECA 環境学習支援登録を行い、その後、分野ごとに学習プログラム (テーマ) ・メニューづくりを行う予定です。同時に基本教材を作成していくことも検 討しています。これらをもとに、KECA 環境学習支援者リストを作成し、各自治体の 教育委員会や環境部課および小中学校へ配布し、KECA 会員を環境教育現場でご活用 願いたいと考えています。 一方、今後、小中学校の先生方と積極的に接触し、学校のカリキュラム、子どもに 即した話し方やプログラムの勉強、環境教育現場の視察、会員相互の勉強会等による 研鑚を重ねていくことが課題です。子どもたちの目線に立ち、これまで様々な場で活 動した経験を小中学校の環境学習現場で発揮できればと思っています。さらに学校を 拠点とした地域の環境保全活動に発展していきたいと考えていますので、学校関係者、 行政、市民、他の NPO、企業の方々の連携・協力方よろしくお願いいたします。 自治体 KECA □ □ □ □ □ □ 環境分野の専門家集団 経験豊富 環境省認定 市民部門/事業者部門 時間に余裕 ボランティア 各 (市区町村) ・教育委員会 ・環境部課 支 部 小中学校 ・環境学習 ・実験 ・自然観察・体験 図 1 KECA 環境学習支援システム 【お問い合わせ先】 NPO法人かながわ環境カウンセラー協議会(KECA) TEL:045-226-5822 E-Mail : [email protected] 28 以上 「環境の捉え方―研究という視点からの環境保全」 神奈川県環境学習リーダー会,首都大学東京大学院環境地理学研究室 土屋俊幸 0.本発表について 環境保全では,様々な主体(地域住民,行政,企業,学識者など)が,独自にまたは連 携して活動を行っている.しかし,学識者による環境保全の研究は,それが広く発表され, 現実の市民活動に効果を挙げることは少ないように思われる. そこで,本発表では,私が卒業論文「環境基本計画における環境の捉え方−神奈川県小 田原市を事例に−」を執筆した際の研究をもとに, 研究 の地域への還元を目的とする. 以下は,その研究の概要である. 1.はじめに 今日の環境問題は,日常生活を行っている市民が環境問題の被害者にも加害者にもなっ ており,より多くの人が保全に関わることができる基盤づくりが必要である. そこで, Think globally, act locally. の考えのもと,市民に最も近い地方自治体,特に 環境基本計画が,地域の環境特性をどう捉えているのかを調べる.そして,行政と市民が 考える環境の相違点を明らかにし,今後の地域の環境保全を考える上での着眼点をまとめ ることを目的とする. 地域の環境保全の基礎的な計画を立てるのであれば,まず,地域の環境とは何なのかを, 市民と行政がともに見つめなおすことが必要である.それには,自然及び人文の両面から 地域や環境を見ることができる地理学が重要な役割を担うことができると考える. 本研究では,神奈川県内 28 市町の比較と,小田原市を事例とした行政と市民の環境の捉 え方の比較の2つの方法で調査を行う. 2.環境保全 2.1 環境の範囲 環境の意味は広域に及び,環境問題はそれぞれが単独で起こっているのではなく,様々 な要素が相互に影響し合っている.したがって,一般的な環境保全のイメージである自然 保護や公害問題だけでなく,暮らしの快適性を良くするようなア メニティや歴史資源の保全までも環境に含めて研究を行う. 2.2 環境基本計画 環境基本計画(図 1)は,広範多岐にわたる環境保全を総合的 計画的にまとめ,目標や各主体の取組を示すものである. 国,県,市町村の環境基本計画を比較すると,国や県では,表 現が抽象的,包括的になっている一方で,市町村では,「心の豊 かさを感じられる故郷」(小田原市)や「暮らしと文化が融和す るまち」(津久井町)など,自身のまちの方向性を具体的に表現 している. 3.地方自治体の環境基本計画 29 全国市町村の環境基本計画の策定状況をみる と,2005 年 12 月現在,2166 市町村のうち 539 が策定しており,全体の 25%を占める.都道府 県別に見てみると,大都市近隣で値が大きく, 地方の県では極端に値が小さいことがわかる (図 2).神奈川県では計画策定率は 76%と, 最も大きい値を示した. これら都市部と地方との間に大きな差が発生 する要因として,2つ挙げられる.1つは,地 方では環境を専門に担当する部局を置く余裕が ないため,もう1つは,多くの環境問題を抱え, 市民の環境への意識も高い都市部に比べ,地方 では積極的に環境保全を行おうとする意識が低 いためと考えられる. 4.神奈川県内市町村の環境基本計画の比較 図2 各市町村(図3)がめざす「望ましい環境像」 都道府県ごとの環境基本計画の策定率 (ホームページ「知恵の環」をもとに作成 ) を比較すると,特有な表現としては,愛川町の「人に会い,自然に逢い,地球に愛」や, 南足柄市の「金太郎のように元気な子どもが 育つまち」など地域に根付いた表現を使い, その地域に住む人に計画が目指す環境像を思 い描くことを容易にしている. また,各環境の項目を比較すると,緑に関 しては,県東部から西部にかけて,都市内緑 地,里山,豊かな山林を扱うというように地 域によって特徴が見られる.水に関しても, 観光資源,親水,生態系,農林水産業,水源, 工業用水など,地域に合った視点から重要 図3 神奈川県内の環境基本計画を策定している市町村 な環境を計画に挙げている.地域に合った, 身近な感じを出すことによって,この計画への興味が生まれれば,そこから環境保全への 興味につなげることが可能になると考えられる. 5.小田原市の環境基本計画と市民の意識の比較 5.1 小田原市環境基本計画の概要 「まちづくりの施策一つ一つに対して,常に環境というフィルターを通した取り組みを 加え,小田原市の環境行政を総合的かつ計画的に推進すること」を目的として平成 10 年に 制定された.目的や位置づけ,環境資源と課題,望ましい環境像,基本方向と計画の柱・ 目標,具体的な市の事業や市民等の役割,推進体制や進行管理についてまとめられている. 5.2 市民の環境意識 5.2.1 アンケート結果 市民が小田原の環境をどのように考えているかを調査するためにアンケート調査を行い, 小田原の優れている環境と保全及び改善が必要な環境を挙げていただいた.アンケートは, 30 計 78 名から回答をいただくことができた. 集計結果をまとめると,小田原において優れている環境は「緑」,「水辺」,「歴史資源」 が,保全や改善が必要な環境については, 「交通」と「景観」に回答が集まった.具体的な 回答の傾向を見ると, 「酒匂川」や「小田原城」など,小田原のシンボルともいえるキーワ ードや話題性の高いものが多く挙げられた. 5.2.2 環境基本計画との比較 計 12 個の項目について,環境基本計画で述べられているものと,アンケートによる市民 の意見を比較する.今回は,緑,水質,歴史資源の3つを記す. 緑:箱根山地の豊富な緑は,市,市民ともに非常に優れていると考えている.また,課題に 関しては,市民は里山を,計画では市街地の緑化を課題と挙げており,多少差異が生まれ ている. 水質:アンケートでは「酒匂川」に意見が集中した.また,市の計画では,環境保全の対象 を「環境資源」と表現しているが,市民も産業や観光資源,飲料水と,自然としての水だ けでなく,水に対しては資源としての意識が高いことがうかがえる. 歴史資源:城下町としての歴史資源については,市民も市も誇りとしているが,保全が必要 だという意見はあまり得られなかった.これは,整備が行き届いており,現在の状況で満 足しているからだと考えられる.また,課題としては,資源そのものよりも触れる機会の 増加や景観としての整備など,今ある資源をどうするかという意見が多かった. 6.考察 6.1 行政の環境保全に対する捉え方 市町村では,公害,自然,資源から生活の快適性や歴史まで,環境保全の対象を広く捉 えている. 環境という言葉が表す範囲は広く,何でも環境保全の対象となり,無限に広がっていく だろう. 「環境」の内容を多種多様にしすぎると,自然保護と快適性の確保との間など,同 じ環境保全という言葉でも矛盾が生じてくる.そこで,①「環境」という言葉を広く定義 し,様々な面から地域の環境を捉えること,②それらを分析し,本当にその地域に必要な ものを大きく掲げていくことの両立が必要だと考える.それには一部の人々ではなく,多 くの市民とともに直接議論して保全すべき環境を定めていくことが重要である. 6.2 市民と行政の環境の捉え方の違い 小田原市を事例として,市民と市の環境の捉え方を比較した結果,極端に差異がでるこ とはなかったが,一部では違いが顕在化した. 差異が生まれた背景は,行政側が総合的に環境保全を考えているのに対して,そこに住 んでいる市民は特定のものの環境保全が必要だと感じているところにある.また,行政は 環境保全だけを扱っているのではなく,開発など市民に必要な様々な事業を並行して行っ ている点も,市民と行政との間の差異を生んでいる原因である. ここで小田原市の景観問題を事例として取り上げる.この問題 は,小田原城の近くに天守閣より高いマンション及びビルを建設 する計画が持ち上がり,市民から反対の声が上がったことを契機 としている.マンションは,市が 6 億 2 千万円で建設予定地を購 入し,市も参画していたビルは,当初の予定を変更して「天守閣 より高くしない」という方針にして一応の解決を向かえた. 31 写真1 小田原城 この景観問題には注目すべき点がある. ①環境基本計画で景観の保全をうたっているにもかかわらず,反対運動が起こらないと 景観を破壊する開発が行われそうになった.たしかに行政として開発などの環境負荷とな るものをすべてやめることはできない.その地域に合わせた環境保全と開発の境界を見極 めて,両立させていくことが必要である. ②市が景観を破壊する建設計画に参画していた.環境基本計画で「歴史的空間と都市的 空間の不調和」を挙げていたのだから,小田原のシンボルである城下町の景観を阻害する 危険性を早くから考えるべきであった.それには,第三者としてその地域で実際に生活し ている市民がチェックする機能を充実させることが必要である. ③市民が小田原の景観に対して,城より高いことに対して問題意識を持った点である. 小田原市民にとって小田原城というものは歴史資源という意味以上に,生活の一部分とい った意味も含まれていると考えられる.したがって,実際の環境とともに,地域住民がど のように環境を捉えているかといった意識も大切にする必要がある. 6.3 今後の環境基本計画での環境の捉え方 環境は多岐にわたるため,市民,行政が一体となって保全を進めていく必要がある.そ のために,市民とともに,環境基本計画を策定する際には,何の施策が必要なのかではな く,まず,①該当地域の環境は何なのか,②どんな環境が優れているのか,③どんな環境 に問題があるのか,④地域にとってどのような環境が大切なのか,ということから,共に 考えていくことが必要である. 小田原市民へのアンケート結果より,市民の環境への意識は地域のキーワード,ランド マークとなるものに集中していることがわかった.市民の視点を持ち,しっかりと地域の 環境を表現して,多くの人がイメージできるようなキーワードを目標や指標にすれば,市 民は受け入れやすくなるであろう. したがって,環境基本計画では,①環境を広く様々に捉えて現状の環境を把握し,②環 境像や目標は地域に象徴的なもので簡潔に表現し,③実際の施策や行動の面では再び環境 を幅広く捉えて環境保全を行っていくことが重要である.これが,市民と行政がともに地 域の環境保全を進めていく上で,最も基礎となり,最も重要な環境保全の捉え方であると 考える. 7.まとめ 本研究では,行政の環境保全への考え方や,行政と市民との環境の捉え方の違いについ てみてきた. 環境は地域の特性に影響しあっているため,環境保全においてまず必要なことは,地域 の環境とは何かといった環境に対する捉え方をまとめ,地域に合った独自の環境保全を見 定めることだと考える.しかし,行政の環境保全施策の実施に関しては,小田原市の景観 問題でもみられるように,環境行政が必ずしも有効に機能するわけではない.今後,地域 の状況に合った環境保全を考え,市民にとっても,行政にとっても,実際の環境にとって も有効な環境基本計画を作り上げていくことが重要な課題である. 謝辞 調査にご協力いただきました小田原市民の皆様,小田原市をはじめ各市町の関係者の皆様,東京 都立大学(現首都大学東京)地理学教室の皆様に深く感謝いたします. 32 エネルギ−自立ハウスに居住して9年間の記録から 神奈川県地球温暖化防止活動実行推進委員 藤沢市 増澤 修 Ⅰ.はじめに 1996年4月35年間の会社勤務を終了し、かねて懸案になっていた、私たち夫婦 がこれから快適な生活を送れる住まいを建築することになった。家の設計に当たり配 慮したことは、地球温暖化とエネルギ−問題、さらに建材使用に当たっての健康上の 安全性であった。築後1997年12月に居住してから9年間の記録をもとにその成 果についいてお話します。 Ⅱ.1.エネルギ−自立ハウスとは 家屋に降り注ぐ太陽の光と熱を有効に活用して、居住していくのに必要なすべてのエ ネルギ−が賄うことの出来る家をエネルギ−自立ハウスと呼ぶことにします。 2.エネルギ−自立ソ−ラ−ハウスの外観図 このハウスの外観を写真−1,図−1に示しました。2階建の木造住宅で、建物に降 り注ぐ太陽のエネルギ−を有効にり利用して、太陽光発電、太陽熱給湯、太陽熱暖房 をしています。 Ⅲ.エネルギ−自立ソ−ラ−ハウスの説明 ハウスの建築方式は従来型の木造住宅方式を基本として、省エネ住宅として高気密、 高断熱、コンクリ−ト蓄熱に重点をおいた。居住に必要なエネルギ−は、まず2階の 広い窓および1階のサンル−ムから暖房用の暖気集熱し、床下のコンクリ−ト蓄熱層 に蓄熱する。1階屋根上に設置した4m2の集熱モジュ−ルから300m3給湯用タン クに蓄湯する。他に夜間電力利用の300m3 の給湯タンクも使用している。さらに、 2階屋根上24m2 太陽光発電用モジュ−ルにより公称能力 3.48kwh の電力が得ら れる。得られた電力は1部自家消費し余剰電力は電力会社に売電する。 IV.居住して9年の間の記録 9年間のエネルギ−収支記録を表−1グラフ−1 にしめした。年間の発電量(A)は公称 3.48kwh の設備能力で 3,500~4,000kwh/年であった。その内、 自家使用分は約 30%で、電力会社へおよそ 70%を 販売したことになる。年間購入電力量は最近の4年 図−1 写真−1 33 表−1, グラフ−1・エネルギー自立ハウスのエネルギー収支 年 98(9月) 発電量(kwh) A 内売電(kwh) 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2401 3766 3971 3832 3810 3530 4013 3973 1664 2845 2683 2696 2687 2479 2958 2761 内自家使用(kwh) 745 941 988 1136 1120 1051 1055 1176 買電昼1(kwh) 739 1044 1226 1146 1058 1071 886 994 買電夜1(kwh) 538 849 977 1255 1268 1196 1056 1245 買電夜2(kwh) 2000 2594 2249 1646 1502 1561 1411 1554 買電夜計(kwh) 2538 3443 3226 2901 2770 2757 2467 2902 3277 4487 4455 4047 3828 3828 3353 3903 4022 5428 5443 5183 4948 4879 4418 5079 740 921 56 0 0 0 0 0 4762 6349 5499 5183 4948 4879 4418 5079 自給率 A/B 73.5 84.4 89.1 94.7 99.5 92.9 119.7 101.8 自給率 A/C 50.6 59.6 72.2 73.9 76.9 72.4 90.8 77.5 買電計(kwh) B 電気使用量計(kwh)C 都市ガス 総エネルギ−量 C 2006 表−2, グラフ−2・エネルギー自立ハウスの金額収支 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 買電金額 A 年 41,035 55,806 60,160 57,465 52,493 51,843 44,385 50,708 ガス料金 B 13,641 17,324 1,101 0 0 0 0 0 売電金額 C 45,480 79,171 79,171 74,232 82,317 63,724 84,524 75,086 9,214 -6,041 -6,041 -12,973 -24,849 -16,892 -27,278 -24,376 (A+B)-C 1998年 2006 間では3,350∼3,900kwh で、総電気使用量は4,900∼5,100kwh であった。当ハウスではこれが総エネルギー 使用量になる。購入電力の内、時間帯別電力契約による昼間電力使用量は 900∼1,100kwh、夜間電力使用量 は2,500∼2,900kwh。夜間電力の割合が75%と多い。 エネルギー自給率は購入電力に対しては 92∼110%、発電量の自家使用量を含めた総エネルギー使用量に 対しては72∼90%であった。 つぎに、エネルギー費用の金額収支を図−2、グラフ−2 に示した。売電金額が購入電力金額を上回り、2004 年には年間2,600 円の利益が生じている。 ここには建物内外の気温記録を記載しないが、冷暖房器具をほとんど使用せずに四季を通して快適であっ たことも付け加えておく。 以上、建物に降り注ぐ太陽エネルギーを積極的に利用可能なように工夫すれば、太陽エネルギーで居住生 活に必要な全てのエネルギーを賄う事が実証された。今後国の内外に普及させ化石燃料を使わない、持続可 能な生活にしていくようにしていきたい。 34 「藤沢・川名緑地の生物、水質調査活動報告」 「藤沢グリーンスタッフの会」立石定己、「藤沢かわせみの会」代表川嵜章美 1 はじめに 1 この生物・水質調査活動報告は平成17年4月から18年3月まで「ヤマト センブリ」発見で話題となった藤沢・川名緑地水生生物及び水質・水系を「F GSの会」調査部会と「藤沢かわせみの会」が合同で行った調査結果である。 1.1 「FGSの会」と「川名かわせみの会」 1.1.1 「FGSの会」(正式名称藤沢グリーンスタッフの会) 平成13年から藤沢市「里山保全ボランティアリーダー養成講座」終了者の グループで総勢80名。川名緑地など10箇所の緑地整備保全活動を行ってい る。調査部会は「川名緑地の水生生物生息状況や水質・水系を調査する」ため 平成17年4月環境科学センター野崎氏を講師にお迎えして活動を開始した。 1.1.2 「川名かわせみの会」 藤沢市生涯大学かわせみ学園の平成16年度「藤沢の自然」研究グループが 「川名清水谷戸に生息する水生動物」をテーマに川名緑地の生物調査活動を継 続して行っている。 1.2 藤沢・川名緑地 藤沢・川名緑地は藤沢駅から東南方約 2kmに位置し、鎌倉手広大谷緑地と隣 接する場所にあり、休耕田や昔ながらの 里山と湧き水や浸透水の流れのある約 11㌶の緑地である。その大きな特徴は ①常緑樹の森に隔離された3つの谷戸 が都市部の近くにあり、また平地部にあ る事。②緑地全体が約40年間自然の状 態で残されていた事である。 写真1川名緑地中谷戸入り口 写真1は中谷戸入り口付近の風景で、休耕田跡 の湿地帯や葦原がある。また左右両側斜面の下に 谷戸の流れがある。入り口一帯は葦原であったが、 この場所を田んぼに修復中である。写真2は野崎 氏による谷戸の植生や生物・水質について講義中。 ここでは鉄バクテリアの話を聞いている様子。 写真2(右側の写真)中谷戸で野外講義 2 水生生物調査結果の概要 平成17年度から始めた藤沢・川名緑地の生物、水質調査活動一年間の成果に ついてその概要は次の3項目である。①川名緑地においてヤマトセンブリ(成 虫)が発見された同じ場所で、今度は「川名かわせみの会」が(幼虫)を発見 した事。②採集した水生生物をセンター実習室で検索同定実習を行い、38科 (種)の確認が出来た事。③川名緑地の水生生物分類表を作成した事である。 35 2.1 希少種ヤマトセンブリ(成虫)発見 藤沢・川名緑地においてヤマトセンブリ発見の記事が平成17年10月20 日付新聞で報道された。発見者の野崎氏が奥谷戸休耕田に沿って生えているヤ ナギの木付近で採取したものです。 写真4はヤナギの木と休耕田や湿地帯。 写真4ヤマトセンブリ採集場所 ヤマトセンブリ ヘビトンボ目センブリ科の昆虫で 体長2㌢程度(写真4)、トンボの ような姿だがウスバカゲロウの仲 間である。県内で始めて、全国で も数か所だけという日本特産種で ある。4月から5月ヤナギの花 によく集まる。平野部の沼地や池 など湿地帯が生息地である。 写真3 2.2 ヤマトセンブ発見の報道 1月22日同じ場所でヤマトセンブリ(幼虫)を発見 活動日の前日は藤沢 市一帯大雪だった。 雪の中を田んぼに張 った氷を割って穴をあ け、水生昆虫を採集した。 氷の厚さは2cm∼3 cm、水温は約2℃。 「川名かわせみの会」グ ループが発見した。 写真左側から2枚が ヤマトセンブリの(幼 虫)である。 写真5(幼虫)発見時に 作成したパネル 36 2.3 川名緑地で採集した水生生物の分類群別種類数 4綱14目38科(種)を同定した。表1は年4回採集時期と種類である。 川名緑地で採取した水生生物の時期と種類 分 類 綱 目 科、 種 マキガイ ニナ カワニナ ヒル ヒル ヒ ル ミミズ イトミミズ ワラジムシ ミズムシ ヨコエビ ヨコエビ 甲 殻 アゴトゲヨコエビ ヌマエビ エビ アメリカザリガニ カゲロウ フタバカゲロウ ヤマトセンブリ ヘビトンボ ヤマトセンブリ ヤマトクロスジヘビトンボ ミルンヤンマ オニヤンマ ギンヤンマ シオカラトンボ オオシ オカラトンボ トンボ シオヤトンボ カワトンボ オオカワトンボ イトトンボ オナシカワゲラ カワゲラ カワゲラ 昆 虫 アメンボ シマアメンボ カメムシ コセアカアメンボ ミズムシ ホタルトビケラ トビケラ トビケラ コシボソガガンボ キリウジガガンボ ハエ ユスリカ カ ヘイケホタル キベリヒラタガムシ コウチュウ ハイイロゲンゴロウ コシマゲンゴロウ マメゲンゴロウ 計 38 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 4月17 日 7月17 日 10月1 6日 1月2 2日 態 成 虫 成 虫 幼 虫 成 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 幼 虫 成 虫 成 虫 18 11 19 孵化から羽化まで の期間 注目種 外来種 1年 備 考 貴重種 貴重種 他の水生生物を捕食 ※1 湘南地区で初めて発見 講師の環境科学センター野崎氏が発見 ※2 : 川名かわせみの会が発見 希少種 別名ヒガシカワトンボ 3年以上 5年から7年 1年1.2世代型 ※1 藤沢では初めて 発見。 ※1 湘南地区で初めて発見 ※1 藤沢では初めて 発見。 ※1 湘南地区で初めて発見 ※2 湘南地区で初めて発見 14 ※1: 神奈川県昆虫誌2004 (神奈川昆虫懇話会発行、30目10,700種の目録)と照合した。 ※2: 川名かわせみの会が発見 FGS 表1 川名緑地水生生物分類表 3 水質調査結果 中谷戸水源は両斜面の浸透水、谷戸中央の湧水、湿地帯や休耕田貯水及び植 生類保水である。この水源から水系を流れる水質の特徴と測定結果は次の通り。 3.1 水質の特徴 ①伝導率:中谷戸の浸透水、湧水は通常でも無機イオン濃度が高い。特に渇水 期は導電率が高い値を示し、最大で480μS/cmであった。 また地形の特性上降雨後は中谷戸全体の雨水が谷間に広がり、浸透水のイオン 濃度を低下させるので、導電率は1/2以下に減少している。 ②PH:PH測定値は6.9∼8.3 で水道水質基準の範囲内であった。 ③COD:測定値が夏季や渇水期及び田んぼや下流ほど高い値であったが、降 雨後には5前後と低い値を示した。その範囲は2∼17と増減が大きい。水生 生物もその環境に適した種類が生息し水系全体として多種混在していると思う。 ④気温と水温:冬季には気温が0℃以下になり田んぼや湿地は凍結するが、谷 戸の川は水温2℃以上を保ちゆっくり流れている。 ⑤鉄バクテリア:中谷戸の中央付近や休耕田の畦に、赤褐色の鉄バクテリアが 発生している。またその場所をすこし掘り下げるときれいな水が湧き出ている。 発生箇所は鉄イオン濃度が2mg/Lを示し、他の場所と比較し約10倍と赤 い値を示した。 37 3.2 水質等測定結果 水質等測定は測定項目12、測定場所3を毎月1回行い、分析は年4回行った。 環 境 川名緑地中谷戸の水質調査結果 (17年4月∼18年3月) 要 素 気温( ℃) 測定範囲(測定結果 0.0 の最大値と 最小値) 南 川 北 川 田 ん 水温(℃) 17.0 33.0 境 要 素 南 川 北 川 ん ① CODパックテスト( m g/L) 0 5以下 0 2 5 8 10 16 アンモニウム[ N H 4 ] ( m g/ L) きれい 少し多い 川 田 ん ぼ 備 考 導電率( μS/ cm) 8.5 14 10 8 10 17.1 6.9 8.3 雨水 水道水 10 120 122 250 480 0.0 0.2 0.5 導電率が600∼800以上で種類数、 個体 数共減少する事例がある。 未濾過水 亜硝酸[ N O 2 ] ( mg/ L) きれい 通常0.05以下 測定範囲(測定結果 0.0 0.2 0.5 1.0 の最大値と 最小値) 北 5 os:貧腐水性 βm:β中腐水性 αm:α中腐水性 ps:強腐水性 濾過水 水質評価の目安 川 3.4 水道水 素 南 PH(0 ∼1 4 ) 0 6.5 ぼ 要 2 ② COD分析( m g/L) os βm αm ps 工業用水 ※ 田んぼ南側の畔に沿って 鉄バ ク テリア による黄褐色の所 備 考 境 0.2 2.0 ※ 田んぼ南側の畔 水生生物は 水温0℃以上あれば生息で きる。 水質評価の目安 環 150 700 ぼ 測定範囲(測定結果 の最大値と 最小値) 田 12.0 22.0 32.0 ( 参考) 鉄[ Fe]( mg/ L) 合流点 備 考 環 1.4 流量( cc/ sec) 0.0 0.05 0.02 0.05 0.20 硝酸[ N O 3 ] ( m g/ L) りん酸[PO 4 ] ( m g/L) 少ない 通常5∼10 きれい 0 5 10 0.0 0.1 少し多い 0.5 1 5 8 18 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 検出せず 検出せず 検出せず 1 0 月は 測定箇所全部きれいであった。 年間を通じてきれいである。 1 0 月の田ん ぼは 田起し作業中であった。 年間を通じて 北川、 南川ともきれいであ る。 1 0 月の田んぼは 田起し作業中 田んぼは りん酸イオンが高い。 富栄養化が 起きる可能性がある。 補足1 測定範囲は 1 年間行な った 測定値の中で最大値と最小値を取った 。 補足2 印は 4月、 印は 7月、 印は 1 0 月、 印は 1月の生物調査時の測定値。 参考資料 神奈川県内河川の底生動物20 0 5 (神奈川県環境科学センター) 、 パ ックテストで環境し らべ( 共立理化学研究所) FGS 表3川名緑地中谷戸の水質調査結果 4 写真6 水系調査結果 中谷戸では谷戸奥から土砂流失、 谷戸斜面の緩み、土砂崩落等の自 然崩壊が進行している。特に谷戸 奥一帯及び休耕田の一部は流砂で 埋まっている。緑地を整備し将来 にわたって生物多様性が維持でき るよう早期の対策が必要である。 5 今後の調査と課題 生物水質調査は始まったばかり であり、引き続き緑地保全グルー プ と 連 携 し 生 物 ・水 質 調 査 活 動 を 行う。また今後当面の課題として、 次の2項目を検討して行きたい。 ①繁殖し成長を続ける水生生物が 今後増加するのか又は減少してい くのかその傾向を探る事 ②生態系の主要要素である水環境 の変化の有無を調査する事 以上 中谷戸水系図 38 基調講演 地球温暖化の将来予測 −地球温暖化は何を引き起こすのか− 独立行政法人海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター研究員 鈴木立郎 はじめに 近年、大量の化石燃料の消費により大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が増加 し、地球温暖化が進行することへの懸念が高まってきました。国際的な取り組みとして、 地球温暖化を防ぐため、先進国などに対し温室効果ガス排出の削減を義務づけた京都議定 書が2005年2月16日に発効しました。日本は1990年比で2008年から201 2年に排出量を6%削減する必要があります。ここでは、このような判断の基礎になって いる地球温暖化予測とはどのように行われ、どのような結果が得られているのか説明しま す。 1. 地球温暖化のしくみ 地球温暖化予測について説明する前に、そもそも現在の地球の温度がどのように決まって いるのか、二酸化炭素などの温室効果ガスが増加するとなぜ地球の気温が上昇するのか簡 単に説明します。皆さんもご存知のとおり地球は太陽からの熱で暖められています。暖め られた地球は、赤外線などを放射します。この際に、もし温室効果ガスを含む大気が地球 になければ赤外線は宇宙空間にそのまま出て行き、地球の表面温度はおよそマイナス1 7℃になります。しかしながら、地球には大気が存在するため、ここまで冷えることはあ りません。太陽からの熱は直接地球表面にとどきますが、地球からでた赤外線は直接宇宙 空間には出て行かず、まず大気を暖めます。この暖められた大気は赤外線を上下に放射し ます。地球は太陽から直接来る熱とこの下向きの赤外線によって暖められるため、その温 度は15℃くらいになります。この効果を温室効果とよびます。二酸化炭素などの温室効 果ガスが増えれば温室効果はさらに強まり、温度はさらに高くなります。これが温室効果 ガスの増加による地球 温暖化のしくみです。 この他にも、地球の温 度は様々な要因によっ て変動します。たとえ ば、太陽からくる熱自 体が増加すれば暖まり ますし、空気中に雲や 火山噴火などによるち りが増えれば太陽から の熱が反射されてしま うため、地球の温度は 下がります。現在の地 球の気温はこのような絶妙なバランスの上で成り立っています。 39 2. 地球温暖化は既に起こっている。 二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの大気中の濃度は産業革命以降急激に増加してい ます。これと同時に地球の平均気温も20世紀中におよそ0.6度上昇しています。特に 20世紀後半においては急激な上昇が観測されています。先に述べたように、地球の気温 は温室効果ガスの増加だけでなく、太陽放射や火山の噴火によるチリの増加などでも引き 起こされます。しかしながら、20世紀後半の急激な気温の上昇は自然起源の要因ではな く、人為起源の温室効果ガスの増加によって合理的に説明されています。言い換えれば、 地球の温暖化は人間の社会活動によって既に引き起こされています。 3. 温暖化予測とはどのようなものか 地球温暖化の予測を行うためにはまず、将来の世界の社会経済がどのような方向に発展す るか予測しなければなりません。これは、世界の発展の仕方により、温室効果ガスの排出 量が異なるためです。しかしながら、この予測は非常に困難です。そこで、発展のしかた に関して、いくつかの場合(シナリオ)を想定して、それぞれのシナリオについて排出量 を予測します。次にこの排出された温室効果ガスのうちどれだけ大気中に残るか予測しま す。現在、人間活動によって排出される二酸化炭素の一部は植物と海によって吸収されて います。自然界がどれだけ二酸化炭素を吸収できるかは大きな問題ですが、現在、人間活 動によって排出される二酸化炭素は自然界が吸収できる量を大きく上回っています。この ようなメカニズムを考慮して、大気に残る温室効果ガスの量を推定します。 このようにして得られた温室効果ガスの濃度から、気候モデルを用いて地球温暖化の予測 を行います。気候モデルとは物理の方程式を用いてコンピュータの中に仮想的に地球の気 候を再現したものです。多くの研究機関のモデルの結果から、地球の平均気温は 21 世紀末 までに 1.4℃から 5.8℃上昇すると予測されています。この予測の幅はシナリオの違いによ る不確かさと気候モデルの不確かさによるものです。物理の法則をコンピュータで計算し ているのになぜこのような不確かさがでるのかと思う人もいると思いますが、世界最速の コンピュータを使ったと しても雲粒ひとつひとつ を計算することはとても できません。そのため、 気候モデルの中ではいく つかの経験的な法則や仮 定を用いています。これ らが、モデルの不確かさ の原因です。この不確か さは、近年のモデルの改 良や観測との比較検証、 コンピュータの飛躍的な 進歩などにより大幅に減 ってきています。 40 温暖化の予測に用いられる気候モデルは不確かさを持っていると述べましたが、ではどう いった予測が信頼できるのでしょうか?「注目する変化が自然変動に比べた十分大きく明 瞭な場合」 「物理的・合理的な説明ができる場合」 、 「多くのモデルで傾向が一致する場合」 、 、 「注目する現象に関して現在の気候をモデルがよく再現できる場合」には研究者はその予 測に自信を持っています。 4. 地球温暖化は将来なにを引き起こすのか 地球温暖化が進むと世界の気候、日本周辺の気候がどのように変化するのか私たちの研究 グループ(東大気候システム研究センター・国立環境研究所・地球環境フロンティア研究 センター)が文部科学省「人・自然・地球共生プロジェクト」において「地球シミュレー タ」で計算した結果をもとに示します。この結果は世界の温暖化の計算の中でも最も詳細 な予測です。 二酸化炭素濃度が21世紀末に現在のおよそ2倍になると仮定したシナリオでは20世紀 末から21世紀末にかけて全球平均気温がおよそ4℃上昇しています。地球温暖化といっ ても地球が一様に暖まるわけではありません。特に、北半球の陸上や北極海では非常に大 きな気温の上昇が予測されています。一つの原因は、雪や氷がとけて日射を吸収しやすく なるためです。降水量は全球平均でおよそ6%増加します。中高緯度でより降水が増えま すが、これは主に温暖化により大気中の水蒸気量が増加するためです。さらに、渇水のリ スクと洪水のリスクの両方が増える地域が存在します。これらの地域では雨が降る場合は 豪雨となり、雨が降らないときはまったく降らないといった状況になります。 次に日本周辺の気候の変化について示します。21世紀末の日本の夏(6月から8月)の 平均気温は20世紀末と比べて、およそ4℃上昇、降水量は約2割増加します。図でその 要因を説明します。まず、温暖化に伴う熱帯太平洋の昇温と関係して日本の南側が高気圧偏 差となり、これが日本付近に低気圧偏差をもたらすと同時に暖かく湿った南西風をもたらします。 さらに、大陸の昇温と関係して日本の北側が上空で高気圧偏差となり、これが梅雨前線の北上 を妨げています。これらの結果、日本周辺では長梅雨の気圧配置が続くことになります。長梅 41 雨というと冷夏になるのではと思う人もいるかも知れませんが、温暖化しているので吹き込む 空気も暑く、悪天候でも暑い夏になることが予測されています。たとえば真夏日は現在の倍以 上になるかもしれません。また、平均的な降水量が増加するだけでなく豪雨の頻度も平均的に 増加しています。これは大気中の水蒸気が増加することにより、一雨あたりの降水量が平均的 に増加することによると考えられます。冬は、詳細は省略するが、暖かくなるので、当然雪が 減少します。100年後は本州ではスキーはできなくなるかもしれません。 5. どのくらい排出量を減らせばよいか 地球温暖化によって生態系や人間活動にも様々な影響が懸念されています。温暖化により 地球の平均気温が1℃上昇すると生態系に大きな影響が、2℃上昇すると被害人口が急激 に増加、3℃上昇すると地球システム激変の可能性が示唆されています。これらの被害を 避け、地球の気温を危険な水準以下に安定化させるためには、大気中の二酸化炭素を一定 以上増やさないようにする必要があります。最終的には二酸化炭素の排出量が自然界で吸 収できる量と同じにする必要が。先に述べたように自然界が吸収できる二酸化炭素の量は 非常にすくない。したがって、 将来、途上国を含めて世界全体 がほとんど二酸化炭素をださな いシステムに移行する必要があ ります。これで気温の上昇は抑 えられますが、海面水位はその 後もじわじわ上昇を続けます。 これは、暖かくなった気温によ り海水が数百年かけてゆっくり と熱膨張し、グリーンランドや 南極の氷が数千年をかけてゆっ くりと解けるためです。 6. 地球温暖化はすでに起こっており何らかの対策をとらなければ間違いなく深刻化すると考 えられます。確かに、この対策と基礎となるべき地球の温暖化予測には不確かさが存在し ています。しかしながら、この不確かさを理由に何も対策をとらない場合、将来より事態 が深刻化し、取り返しのつかないことになりかねません。降水確率30パーセントで傘を 持っていかないと判断した場合、雨が降ってもせいぜいぬれる程度でしょう。しかしなが ら、現在懸念されている地球温暖化による被害は甚大なものです。我々は、温暖化予測の 不確かさを十分理解した上で地球温暖化を避けるためにはどのように行動したらよいか判 断していく必要があるでしょう。 42 買い物で社会を変えよう! 神奈川県環境学習リーダー会グリーン部会 ○ 杉 山 陽 絵 、○ 下 條 泰 生 、○ 柳 川 三 郎 、齋 藤 美 代 子 、 鎌 田 裕 二 、上 田 恵 一 、米 山 有 美 、高 橋 敬 子 1 グリーン部会の目指すもの 1-1 消 費 者 は 地 球 環 境 の 加 害 者 か つ て は モ ノ を 生 産 す る 人 と 消 費 す る 人 は 同 じ で し た 。数 世 紀 前 の ヨ ー ロ ッ パ や 日 本 で は 、少 数 の 上 層 階 級 を 除 き 、多 く の 人 々 は 必 要 な モ ノ を 自 分 で つ く り 消 費 す る か 、他 の モ ノ と 交 換 す る と い う 自 給 生 活 を し 、自 ら 足 る を 知 っ て い ま し た 。そ し て 大 家 族 で 生 活 し 子 育 て す る こ と が 普 通 で し た 。 し か し 、産 業 革 命 に よ り 生 活 様 式 が 大 き く 変 化 し ま し た 。生 産 力 の 増 大 に よ る 生 産 者 と 消 費 者 の 分 離 、人 口 や 所 得 の 増 加 と 大 量 生 産 ・ 流 通 に よ る 新 商 品 ・ 新 サ ー ビ ス の 普 及 は 、 大 量 消 費 ・廃 棄 社 会 を も た ら し 、 多 く の 公 害 や 地 球 環 境 問 題 を 引 き 起 こ し ま し た 。資 源 と エ ネ ル ギ ー を 大 量 に 消 費 す る 生 活 を 今 、変 え な け れ ば 、私 た ち は 未 来 世 代 の 加 害 者 と な っ て し ま い ま す 。 1-2 グ リ ー ン 購 入 が あ な た の 生 活 様 式 を 変 え る モ ノ や サ ー ビ ス を 購 入 す る 際 は 、少 し で も 安 く 質 の よ い も の を 選 び ま す が 、同 時 に 地 球 環 境 に 配 慮 し 、で き る だ け 環 境 負 荷 の 小 さ い モ ノ や サ ー ビ ス を 選 ぶ こ と が グ リ ー ン 購 入 で す 。長 持 ち す る も の 、過 剰 包 装 で な い も の 、 エ ネ ル ギ ー 消 費 が 少 な い も の 、生 態 系 へ の 影 響 が 少 な い も の な ど を 優 先 的 に 購 入 す る 買 物 の 仕 方 で 、グ リ ー ン 購 入 を 心 が け て い る 人 の こ と は ”グ リ ー ン コ ン シ ュ ー マ ー ”と も 呼 ば れ て い ま す 。グ リ ー ン 購 入 を 心 が け よ う と す る と 、 モ ノ や サ ー ビ ス が ど の よ う な 経 路 を 経 て 提 供 さ れ て い る か を ”知 る ”こ とになり、今までとは違った新しい価値観が見えてくるでしょう。 < グ リ ー ン コ ン シ ュ ー マ ー の 10 の 原 則 > 1.必要なものを必要な量だけ買う 2.使い捨て商品ではなく、長く使えるものを選ぶ 3 . 包 装 は な い も の を 最 優 先 し 、次 に 最 小 限 の も の 、容 器 は 再 使 用 で き る も の を 選 ぶ 4 . 作 る と き 、使 う と き 、捨 て る と き 、資 源 と エ ネ ル ギ ー 消 費 の 少 な い も の を 選 ぶ 5.化学物質による環境汚染と健康への影響の少ないものを選ぶ 6.自然と生物多様性を損なわないものを選ぶ 7.近くで生産・製造されたものを選ぶ 8.作る人に公正な分配が保証されるものを選ぶ 9.リサイクルされたもの、リサイクルシステムのあるものを選ぶ 10. 環 境 問 題 に 熱 心 に 取 り 組 み 、 環 境 情 報 を 公 開 し て い る メ ー カ ー や 店 を 選 ぶ グリーンコンシューマー全国ネットワーク著「グリーンコンシューマーになる買い物ガイド」より 43 1-3 グ リ ー ン 購 入 の 普 及 を 目 指 し て あ な た が い ま 食 べ て い る 野 菜 は 、ど こ で ど の よ う に し て 栽 培 さ れ た も の ですか?昨日食べたエビや魚の由来は?飲んでいるコーヒーは?マーガ リンは?このようなことを考えながら環境への負荷が小さい商品を私た ち が 主 体 的 に 選 ん で い く こ と が 、モ ノ や サ ー ビ ス を 提 供 す る 企 業 を 変 え 社 会 を 変 え て い く こ と に つ な が る と 考 え 、グ リ ー ン 部 会 は 活 動 を し て い ま す 。 グリーン購入をする人が、環境に配慮した商品が、日々、年々増え、大き な社会の流れとなることを願っています。 2.「 グ リ ー ン 購 入 学 習 」 プ ロ グ ラ ム の 構 成 要 素 私 た ち が 実 施 し て い る 「 グ リ ー ン 購 入 学 習 」プ ロ グ ラ ム に は 、 次 の よ う な内容が盛り込まれています。 2-1 食 べ 物 に ま つ わ る 現 状 ・ 食 糧 自 給 率 : 40% ・ 輸 入 食 料 を 栽 培 す る た め に 必 要 な 海 外 の 土 地 : 日 本 の 農 地 の 約 2.5 倍 (エコロジカルフットプリント) ・ 輸 入 食 料 を 栽 培 す る た め に 必 要 な 水 : 日 本 の 農 業 用 水 の 約 1.1 倍 (640 億 t) (バーチャルウォーター) ・ フ ー ド マ イ レ ー ジ ( 輸 入 食 料 の 重 さ ×輸 送 距 離 ): 9,002 億 t・km <参 考 各 国 の フ ー ド ・マ イ レ ー ジ (農 林 水 産 省 )> 韓 国 : 317 億 t・km ア メ リ カ : 296 億 t・km フ ラ ン ス : 104 億 t・km ド イ ツ : 172 億 t・km イ ギ リ ス : 188 億 t・km ・ハウス栽培と露地栽培で必要となるエネルギー量の違い ・食べ物の旬 2-2 ご み の 問 題 ・ ど の よ う に し て 販 売 さ れ て い る か (包 装 容 器 に つ い て ) バラ売り、個別包装、発泡トレー、ビニール袋入りなど ・食べ物ごみ、食べ残し 毎 日 約 300 万 食 に 相 当 す る 食 べ 物 が 捨 て ら れ て い る と も 。 2-3 グ リ ー ン 購 入 の チ ェ ッ ク ポ イ ン ト ・ 原 産 地 の 確 認 、 地 産 地 消 (商 )= 身 土 不 二 、 旬 ・環境ラベル ・省エネ、マイバック、マイボトル、マイハシ 3 「グリーン購入学習」プログラム 3-1 オ リ ジ ナ ル 紙 芝 居 「エコエコ商店街 なつやすみ編」と「冬のお つかい」は、シナリオからイラストの作成まで、 全て部員が手作りしたオリジナル紙芝居です。い 44 など ずれも、小学生 2 人がお使いを頼まれて一緒に 買物に行くという設定で、食べ物の旬、産地、 包 装 ご み 、地 球 温 暖 化 問 題 と の つ な が り な ど を 、 クイズを交えて参加者と対話しながら、グリー ン購入について学びます。 3-2 買 物 ゲ ー ム (グ ル ー プ ワ ー ク ) 3-2-1 誕 生 日 パ ー テ ィ ー の 買 物 紙芝居の主人公の誕生日パーティーのメニ ューの食材を買物するという設定で、実際の 商品を見ながら、産地や旬、包装容器のこと に注意して、環境への負荷が小さいと思う商 品を選択するゲームです。 3-2-2 朝 食 の 買 物 和洋の朝食メニューの買物をするという設 定で、産地や値段、包装容器の種類が書かれ た食材カードを見ながら、環境への負荷が小 さ い と 思 う 商 品 を 選 択 す る ゲ ー ム で す 。ま た 、 工程カードを用いて、食材の産地から販売店 に届くまでの工程数も考えます。 3-3 店 頭 で の 食 材 し ら べ スーパーの協力を得て、店舗で実際にどのよ う な 食 材 が 売 ら れ て い る か (食 材 の 旬 や 産 地 、 値 段、包装容器の種類など)をワークシートを用 いて調べます。 3-4 産 地 か ら の 距 離 し ら べ 国内外の産地から神奈川までの距離を地図を 用いて調べます。 3-5 ま と め と 発 表 買物ゲームで選択した食材、選ばなかった食 材 に つ い て 、 選 ん だ 理 由 (選 ば な か っ た 理 由 )、 産 地 、 旬 、 包 装 容 器 ご み 、 価格等についてまとめ、グループごとに発表し ます。 4 「グ リ ー ン 購 入 学 習 」プ ロ グ ラ ム の 実 施 4-1 2006 年 度 の 実 績 45 3-1∼ 5 を 組 み 合 わ せ た プ ロ グ ラ ム を 、 「神奈川県 地 球 温 暖 化 防 止 活 動 推 進 員 等 基 礎 実 践 研 修 」、平 塚 市 立 み ず ほ 小 学 校 と 金 目 小 学 校 (い ず れ も 神 奈 川 県 グ リ ー ン 教 育 支 援 制 度 に よ る )、㈱ 西 友 七 里 ガ 浜 店 の 協 力 を 得 て 、鎌 倉 市 七 里 ガ 浜 自 治 会 ・子 ど も 会 を対象に実施しました。 4-2 参 加 者 の 感 想 子ども ◎驚いたこと ・イチゴの旬が冬だと思っていたけれど、春だったこと。 ・ ハ ウ ス 栽 培 で ト マ ト を 育 て る た め に は 、 露 地 栽 培 の 約 10 倍 も エ ネ ル ギーが必要なこと。 ・ペットボトルからリサイクルされたマイバックがあったこと ◎ 楽しかったこと ・平塚産や外国産などいろいろな県や国から野菜が平塚に来ているのを 知 っ て 買 物 で き る こ と が 、少 し 大 人 に 近 づ い て き た な と う れ し か っ た 。 ・買物で環境にいいものを選ぶことがすごく楽しかった。 ・いろいろな食べ物の旬を知って、買う時に「これは今が旬だから買お う」と思えるようになりたい。 ・どんなものを買ったほうが良いのかもっと勉強したい。 大人 ・買物をする時に地球のためになることを考えるという、とても身近で あるがうっかりしてしまいがちな大切な学習ができた。 ・紙芝居、クイズその説明の中に学びが含まれて構成されているので、 分かりやすかった。 ・外国産の食物の移動距離の合計が地球 1 周以上もあることに驚いた。 ・スーパーを始め、ゴミを減らす工夫や研究を進めている方々がいるこ とをはじめて知った。 5 今後の活動 5-1 グ リ ー ン 購 入 学 習 プ ロ グ ラ ム の 深 化 食 べ 物 以 外 を テ ー マ と し た 紙 芝 居 、例 え ば 、詰 替 え 製 品 や 再 生 資 源 を 用 い た 文 具 ・日 用 品 、省 エ ネ 家 電 、発 展 途 上 国 に お け る 生 産 現 場 の 問 題 を 考 え た 買 物 (フ ェ ア ト レ ー ド な ど )等 を テ ー マ に し た 紙 芝 居 の 作 成 を 目 指 し ま す 。 5-2 実 践 者 と の 交 流 グ リ ー ン 購 入 を 実 践 し て い る 方 々 や 活 動 団 体 、野 菜 作 り を 実 践 さ れ て い る 方 々 と の 交 流 、環 境 に 配 慮 し た 事 業 活 動 を し て い る 事 業 者 や 環 境 に 配 慮 した農業を営んでいる農家の方々等との交流を進めます。 46 環境調査活動から地域参加型保全活動へ 人と生物の共生する水辺の環境再生をめざして よみがえれ板戸川市民の会 本間意三子 1 プロローグ 1−1 発足の経緯 2003年4月、2級河川板戸川に流入する雨水幹線の終末地点に油の流失が発見され、神奈川 県、伊勢原市による立ち入り調査の結果汚染源が特定され、行政指導により企業の一部土壌 の入れ替えと、敷地内地下水くみ上げによる水質調査が行われ油流失事故はひとまず決着しま した。この事故を契機に板戸川に関心のある市民の輪が広がり、板戸川の実態を把握するため リバーウオッチングを行い、環境科学センターの協力を得て、本格的な水質調査を実施し 2004年4月「よみがえれ板戸川市民の会」が発足しました。 環境科学センターでの水質検査 2級河川板戸川(この上流が雨水幹線) 1−2 板戸川の変遷 伊勢原市は大山山塊を水源とする鈴川、渋田川の扇状地に開け た台地状地形で平地は浸食作用による谷戸が多く、東部に平野 が開けています。板戸川は毘沙門池に端を発した灌漑用水路が 合流し2級河川板戸川へと変貌する総延長3.8kmの変化に 富んだ川と言えます。昭和30年後半以降宅地化が進み、鈴川 工業団地造成、大磯線開通により板戸地区を取り巻く環境が大 きく変り、水田によるダム機能が消失し灌漑用水路は3面張り の雨水幹線に変り一部幹線は生活廃水の流入するどぶ川と化し ています。 水田 昭和36年、板戸川流域の土地利用図 水路 1−3 板戸地区集落の変遷 (246号線より北部の板戸地区) 人々の暮らしは源流の毘沙門池と最も関係が深く、関東大震災により陥没した池から水を引く ため地下5メートルのす掘りの隧道が300mも掘られ、出口の溜池は洗い場として活用され、 人々の憩いの場でした。その後隧道の一部崩落、洗い場の埋め立てに宅地開発、水路の全面暗 渠化が拍車をかけ、水辺の環境から最も遠ざかった不幸な地域です。 (246号線より南部の板戸地区) 住宅密集地域を流れ、排水路化した雨水幹線Ⅰと毘沙門池に隣接する企業のくみ上げた地下水 の間接冷却水の放流が豊富な水量を確保している雨水幹線Ⅱが合流し、更に鈴川工業団地内に 整備された雨水幹線Ⅲ、Ⅳが合流、下流は川幅が広がり川底も深く危険防止のため堅固なネッ トが覆い、人々の暮らしと水辺の環境は分断されています。又この地域は集中豪雨による冠水 被害の多発地域でもあり都市化による雨水対策の早期改善が求められています。 47 2 活動紹介 2−1 水質、水生生物同時調査により板戸川の汚濁状況調査 2005年4月、イベント「板戸川生き物調査隊」に自治会、行政が加わりパックテストによる水質 調査を行いました。(調査項目)COD・アンモニウム・亜硝酸・硝酸・リン酸・陰イオン系界面 活性剤) 又同一ポイントで水生生物調査を行い環境科学センターで同定し、水質と水生生物関係 表を作成しました。この表から判明した板戸川評価と今後の方向性は以下の通り。 ① 板戸川はややきれいな水質に属する ② トビケラ、カゲロウ類が見られず川床の砂礫をはじめ生育環境改善が求められる ③ カワニナも同様。ホタルの成育環境確保が必要 ④ 河川法が改正されたが全ての河川が親水護岸化されるのを待つ内に生物多様性が失われる。 市民の知恵が必要だ。 板戸川生物・水質調査表 2005年4月10日午前 調査地点 単位 望ましい数値 雨水幹線・2級河川 気温22℃ よみがえれ板戸川市民の会 1 2 3 4 5 雨水Ⅱ号 雨水Ⅱ号 ⅠⅡ合流 ⅠⅡⅢⅣ 板戸川 水温 ℃ 19 19 19 18 19.8 水深 cm 9 7 18.5 22 25 流入 有 有(合流) 有 有 なし 色 油 にごり△ にごり△ 無色 無色 匂い なし なし なし なし 少々 泡 なし なし なし なし なし 化学的酸素消費量 mg/L 0∼5 6 4 7 5 8 アンモニウム mg/L 0.2∼0.5 0.5 0.2 1.5 0.5 0.5 亜硝酸態窒素 mg/L 0.05以下 0.5 0.5 0.5 0.2 0.5 硝酸態窒素 mg/L 20 45 45 20 45 リン酸イオン mg/L 0.5 0.5 1 0.5 0.75 陰イオン系界面活性剤 mg/L 1.5 0.75 0.75 1.5 0.75 ハグロトンボ コカゲロウ(の仲間) ハグロトンボ ミズムシ シマイシビル アブラハヤ シマイシビル オニヤンマ(ヤゴ) シマイシビル シマトビケラ シマイシビル サカマキガイ ツチガエル サカマキガイ ミズムシ ミズムシ カワニナ アメリカザリガニ ユスリカ サカマキガイ ユスリカ カワニナ オオカナダモ ハグロトンボ コカゲロウ コカナダモ アメリカザリガニ ヨシノボリ イトモ オオカナダモ ドジョウ コケ コカナダモ アブラハヤ イトモ (テナガエビ) (モズクガニ) 48 2−2 夏休み親子参加企画による「板戸川さかな調査隊」 2005年8月、ポイントを絞り追い込み漁による魚類調 査を行いました。図(追い込漁)多種、大量(?)の魚が 捕獲され一同興奮気味でした。環境科学センター魚類専門 研究員から魚類の生態、水質と魚類との関連性を学びまし た。判明した板戸川評価は以下の通り。 ①他の都市河川に比べて夏季の水温が低い(22.5℃)。 湧水の流入が予測される ②アブラハヤの個体数が多いことから湧水起因の川が伺 える ③水質が比較的良い。生物多様性に希望がもてる ④大型コイが群遊して魚類の生態系を乱している。コイ の放流、餌付け禁止対策が急がれる。 板戸川さかな調査隊 2−3 情報を地域に公開―小さな広報活動 生物を通した川への愛しみ、ゴミ捨て防止の啓発に行政も協力し板戸川水生生物、魚類調査 パネル(A3サイズ)を製作し両岸に設置しました。 3 豊かな水辺環境の再生ー毘沙門池再生に活動の方向性を見出す 3−1 毘沙門池の今昔 板戸川の水源、毘沙門池は大山山塊を源流とする鈴川が上粕屋台地へ流下する扇状地の末端に 現れた湧水池です。昭和30年代前半、隣接地に企業が進出するまでは、板戸地区は水田、畑に 囲まれた農村集落でした。池は灌漑用水の要として大切に保全され、周辺の巨木は 神木として 崇められ、みだりに枝おろしをするとたたりがあると信じられて来ました。水の配分をめぐる争 い、溜池(洗い場)に集う女達、子供達の隧道探検と水遊び、池さらいとウナギの分配など住民 のどの思い出も深いものがあることがわかってきました。 県道大山板戸線計画に伴い毘沙門池埋め立てに関する住民との協議の結果住民が保全策を要望、 一部埋め立て・橋脚により、現在の姿になりました。池は残ったものの街区公園の奥に追いやら れ、「毘沙門池公園」とは名ばかりの危険な水溜りとして近づけません。都市基盤整備を推進す る行政の担当課は「現在の池の水は雨水の地下浸透と上流の田んぼの浸透水だ」と決め付け周辺 住民をがっかりさせています。改めて都市基盤整備の残忍性を感じます。 3−2 毘沙門池再生の意義は二つ・・市長に要望書を提出 2004年、私達はグランドワーク三島の招きで、再生した源兵衛川に足をつけました。水と戯れ る老若男女の豊かな笑顔を感じ取り、水と共生する本来的意義がわかったような気がしたのです。 私達は水と共生する責任と歓びを次の世代に伝えなくてはなりません。小さな湖沼が開発により 49 急激に消失しています。便利な暮らしと引き換えに失われたのは自然と共生する豊かな人間性 多様な生き物達です。都市を生き物達の殺戮の原野にしてはなりません。都市はどうあるべきか、 改めて考えなくてはならない時に来ているのです。「毘沙門池の誇りを次世代に伝えよう」市長 に要望書を提出しました。池さらいの許可が下りました。沈黙の池と見守ってきた御神木が語り かける時がやって来たのです。 3−3 毘沙門池公園の池周辺の現状と課題 水温調査を2004年から行いましたが24.5℃から漸次下降し現在は16℃を保ち湧水温 度に近づいています。問題は水深です。初夏、上流地域が田植えを始める頃から水量は増え続 け、稲刈り頃から減少し渇水期を迎え、池の底が見えるまで水量が減少します。これでは水生 生物の生息できるはずがありません。水生生物の餌環境を調べるためプランクトン調査を行い ましたが珪藻、緑藻が微量に確認されたのみでした。池周辺はムクノキ、エノキ、タブノキ、 クスノキ、シロダモなどが枝を広げ、更にシュロノキが隙間を埋め尽くして池の照度が上がら ず、プランクトンの炭酸同化作用を妨げています。樹木の間伐の必要があります。又、池の構 造がすり鉢状で水際まで近づくと危険が伴います。伊勢原市は財政難を理由に「近づくな険」 の安全策を講じるのみでこれ以上の保全計画はありません。伊勢原市内の間伐材などを用いた 親水公園の市民プランを提案し市民、近隣企業、行政による協働体制を作ることが急がれます。 3−4 毘沙門池公園を生物多様性公園に-イベントは毘沙門池公園 3−4−1 イベント① 2006年8月 「毘沙門池公園トンボ調査隊」 (親子参加) 防犯上園内の草刈を早く済ませたい公園緑地課を説得、生い茂る 草木の中から22種の昆虫を確認しました。神奈川県レッドデータ ブック調査報告書の要注意種に当るショウリョウバッタモドキも 確認され生物多様性公園管理のあり方について検証が必要です。 又3ヵ月後の巣箱掛けのために全員がシジュウカラの巣箱を製作 しました。年度内に昆虫パネルも設置する予定です。 3−4−2 イベント② 2006年11月 「シジュウカラ毘沙門公園によっといで」 都市化が進み大径木が伐採され野鳥の営巣を妨げています。里地・市街地に生息するシジュウ カラの営巣を助け公園内に呼び込むため、予め作った巣箱を更に桧皮葺きに化粧し巣箱を掛け ました。毘沙門池周辺樹木に樹名版を掛けグリーンインストラクターによる」自然観察も行い ました。春の営巣が楽しみです。終了後、委託先の伊勢原森林里山研究会がシュロノキ10本 を伐採してくれました。水生生物の生育環境にかすかな望みが湧いてきました。市内のNPO 2団体と協働することにより毘沙門池公園の課題を共に考えるきっかけ作りになりました。 3−4−3 イベント③ 2007 年2月下旬(予定)「毘沙門池 村じゅう総出の池さらい」 池の水位が最も下降すると思われる2月に年中行事だった池さらいを試みます。このイベント の主眼とする所は以下の3点です。 ① 年中行事を再現し水を大切にする稲作文化の精神風土を復活させる ② 毘沙門池を復元し、公園と一体化した豊かな水辺環境を創生する意識を高める ③ 池に堆積する腐葉土を浚渫し湧水量を確保し水生生物の生息環境を作る 既に噂が広まり我々の会の活動に関心を持つ旧住民も増えてきています。池を囲み昔話に花が 咲くことを期待しています。 4 将来展望 イベントをきっかけに「毘沙門池公園を守る会(仮称)」を設立し、市民、住民、企業、行政 による協働体制を構築し、安心安全な水辺公園に向けてワークショップをおこない推進のため の実施団体(毘沙門池再生実行委員会)を立ち上げます 50 「よこすかエコニコ・サークル」の環境学習活動 図1 高月 紘/著「絵コロジー」より 地球にやさしく暮らすための絵本 よこすかエコニコ・サークル ○呉東みどり,○野崎章子 依田 毅, 奈良谷裕昭 1.「よこすかエコニコ・サークル」の紹介 1.1〈すかっ子セミナー〉の生活環境系コースとして 学校の完全週 5 日制の導入で休みが増えた子ども達に活動の受け皿を提供しようと、横須賀市内 の多様な市民団体がネットワークを組み、2002 年(平成 14 年)に、小中学生の土曜体験プログラ ム〈すかっ子セミナー〉が発足しました。自然系(生き物・川と海・活断層) ・国際理解・福祉・ 歴史など、参加団体がそれぞれの専門分野や持ち味を生かしたコースを開設し、毎春参加者を募集、 子ども達は 5 月以降、ほぼ毎月 1 回ずつフィールドワークを中心に自然や社会について学び、6 ヶ 月間の活動後には、11 月の合同発表会や年度末のパネル展でその成果を発表し合うというものです。 翌年の〈第 2 回すかっ子セミナー2003〉より、生活環境系コースとして「エコニコ・サークル」 の前身「ゴミ・リサイクル探検チーム」は参加者を募りました。が、応募が大変に少なく、計画し た 6 回の活動のうち実施できたのは 2 回[6 月・海のゴミしらべと流木アート/7 月・リサイクル プラザ アイクル 見学と牛乳パックで紙すき]だけでした。セミナーの終了後、他コースの実施 メンバーにたずねたところ、 「ゴミ」と銘打ったチーム名の印象がよくないのでは‥‥という感想 が寄せられ、ならばネーミングを変更してみようということになりました。 チーム名を「エコニコ・サークル」に変えてからは、平成 16 年・11 名、17 年・14 名と参加児童 が増え、昨年(18 年)には 22 名の参加となりました。どうやら「ゴミ」は暗いイメージ、 「エコ」 や「ニコ」は明るいイメージということのようです。 「エコニコ・サークル」の活動のプランニングやサポートには、神奈川県環境学習リーダー、か ながわ環境カウンセラー、横須賀市アイクル・マイスター、横須賀市環境教育指導者などの資格を 持った者が 4∼6 名で当たっています。サポーター一人一人の得意分野も様々ですから、それぞれ の個性や得意分野を生かすことのできる活動テーマを月ごとに計画し、その月の活動ではその人が リーダーシップをとるという形が自然にでき上がっています。 というわけで、 ごみ リサイクル だけでなく、環境( 自然 をも含めた)について広く、 多角的に、いろいろなテーマで体験学習している「よこすかエコニコ・サークル」の活動について、 今日は報告をいたします。 1.2 環境省〈こどもエコクラブ〉のメンバーとして 横須賀市こどもエコクラブ事務局を担当している市環境計画課から指導いただき、2004 年(平成 16 年) 、 「よこすかエコニコ・サークル」も他の自然系コースと同様、 〈こどもエコクラブ〉に登録 しました。 こどもエコクラブニュース サポーターズニュース は環境活動のマニュアルとして 大いに役立っていますし、毎年開催される 壁新聞コンクール への応募も子ども達やサポーター が自分たちの活動をまとめ、振返るための大きな助けとなっています。 今日は〈こどもエコクラブ〉のメンバーとしての活動状況も、併せて発表いたします。 51 2. 活動報告 活動趣旨:私たちは宇宙船「地球号」に乗って、自然やほかの生きもの達と助け合いながら宇宙 を旅しています。さあ! 横須賀の山や海や畑や町にとび出して、地球の仲間からたくさんのこと を教えてもらいましょう!(図 1) 2.1 2004(平成 16)年の活動 第 1 回(5.15 横須賀市自然・人文博物館)電気や温暖化の実験(写真 1-1) 第 2 回(6.12 峯山)畑で農作業。土にもどるゴミ、もどらないゴミ。ウマ牧場見学。 第 3 回(7.31 うみかぜ公園) 横須賀市環境フェスティバル に参加。 第 4 回(8.21 リサイクル・プラザ) アイクル 見学。紙すき・せっけん作り。 第 5 回(9.18 東京ガス環境エネルギー館) Wonder Ship の見学。リサイクル工作。 第 6 回(10.23 峯山)畑で収穫祭「エコニコすいとん」 。ゴミのタイムカプセル確認(写真 1-2) 写真 1-1 地球温暖化の実験のためにドライアイスを砕く 写真 1-2 畑にいろいろなゴミを埋める 2.2 2005(平成 17)年の活動 第 1 回(5.14 横須賀市博物館)アイスブレイクゲーム(写真 2-1)炭電池作り。温暖化の実験。 第 2 回(6.18 前田川)水生生物調査、水質検査。畑で農作業。 第 3 回(7.30 野比海岸)海のごみ調査。ビーチコーミング。 第 4 回(8.20 子安の里)昔と今の里山の暮らしを知る。 第 5 回(9.10 生涯学習センター)太陽光発電(写真 2-2)廃油でロウソク作り。 第 6 回(10.15 秋谷町内会館)畑で収穫した野菜で「エコニコすいとん」 写真 2-1 アースバルーンでアイスブレイク 写真 2-2 ソーラープロペラ製作中 52 2.3 2006(平成 18)年の活動 第 1 回(5.13 横須賀市自然人文博物館)水と電気の大切さを知る。エコカルタ大会。 (写真 3-1) 第 2 回(6.3 芦名の県産廃最終処分場) 「芦名ごみ処分場」見学ハイキング。 第 3 回(7.8 東京ガス環境エネルギー館) Wonder Ship の見学(写真 3-2) 。リサイクル工作。 第 4 回(7.22 市民活動サポートセンター) 「よこすかエコかるた」づくり(図 2) 第 5 回(8.23・24 三浦ふれあいの村)エコキャンプ 海のすばらしさを知ろう (写真 3-3) 。 第 6 回(9.30 馬堀自然教育園)自然観察会(写真 3-4) 第 7 回(10.21 アイクル )廃油せっけん作りと牛乳パックで紙すき体験 写真 3-1 エコかるた大会 写真 3-2 東京ガス環境エネルギー館 Wonder Ship よこすかエコかるた 読み札 名作選 [え]エコでいよう 地球も心も たいせつに [た]大切にしようね いまの地球も 未来の地球も [り]リデュース リユース リサイクル とても大事な3R 図2 エコかるた のために描いた作品 写真 3-3 三浦ふれあいの村 長浜の塩竈 写真 3-4 テナガエビもアメリカザリガニも 53 2.4〈こどもエコクラブ〉メンバーとしての活動 2005.3.13 こどもエコクラブ研修会に参加 4.3 横須賀市こどもエコクラブ交流会「東京電力」見学(写真 4-1) 2006.3.18 研修会でエコニコ・サークルの活動を紹介 3.4 神奈川県こどもエコクラブ交流会「アイクル」 (写真 4-2) 3.25・26 こどもエコクラブ全国フェスティバル in かめやま(写真 4-3) 7.25 神奈川県こども環境シンポジウム(写真 4-4) 写真 4-1 火力発電について知る 写真 4-2「地球は水球?」のワークショップ 写真 4-3 壁新聞セッション 写真 4-4 参加者全員で環境クイズ 3.これからの「よこすかエコニコ・サークル」 2006 年の活動が終わり、体験したこと、学んだこと、感じたことや考えたことを子どもたちは 1 枚の壁新聞にまとめ、こどもエコクラブの事務局に送りました。この壁新聞は、3 月 24・25 日に 開催される〈こどもエコクラブ全国フェスティバル in よこすか〉で、全国のこどもエコクラブか ら集まったたくさんの壁新聞といっしょに展示されることでしょう。そして、フェスティバル会場 は今年もまた、環境に取り組む子ども達の力強く頼もしいエネルギーで満たされることと思います。 現在「よこすかエコニコ・サークル」では、来年度の活動プログラムを検討しています。子ども たちが 気づき や感性をみがき、環境問題に対してどのように行動すべきかという 自己決定能 力 を身につけ、 責任ある行動 がとれるようになることが、私たちサポーターの願いですし、 そのためには、子どもたちが意欲的に活動できるプログラムを提供することがとても大切だと考え ています。今年も子どもたちと共に、 未来の地球 のための活動を続けていきたいと思います。 54 第 13 回市民環境活動報告会実行委員会 実行委員長 実行委員 実行委員 実行委員 実行委員 実行委員 実行委員 実行委員 実行委員 香川 安藤 上野 大野 大森 杉山 高橋 野崎 安丸 興勝(神奈川県環境学習リーダー会) 紘史(神奈川県環境学習リーダー会) 秀一(かながわ環境カウンセラー協議会) 治良(神奈川県環境計画課) 勝 (神奈川県環境学習リーダー会) 陽絵(神奈川県環境学習リーダー会) 尚道(神奈川県環境学習リーダー会) 隆夫(神奈川県環境科学センター) 元一(神奈川県環境学習リーダー会)