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中央家畜衛生通信
中央家畜衛生通信 第63号 平成 25年2月発行 岩手県中央家畜保健衛生所・岩手県中央家畜衛生協議会 目 次 口蹄疫侵入防止対策の継続を! ~飼養衛生管理基準の遵守を徹底しましょう~ 過去最高の被害! 牛ウイルス性下痢ウイルス持続感染牛の多発事例について 意外とある?牛の鉛中毒 今年も定期報告書の提出時期がやって参りました! ・・・・・・ 1 ・・・・・・ 2 ・・・・・・ 4 ・・・・・・ 5 口蹄疫侵入防止対策の継続を! ~飼養衛生管理基準の遵守を徹底しましょう~ 平成 22 年 4 月に宮崎県で発生した口蹄疫は、感染が 292 農場へ拡大し、約 30 万頭の牛や豚などが殺処分されたことは記憶に新しいところだと思います。 口蹄疫は、偶蹄類家畜(牛、豚、めん羊、山羊など)が感染する治療法の無い 家畜伝染病の一つで、感染力が非常に強く、ひとたび発生するとまん延(拡大) する可能性が非常に高い特徴があります。 宮崎県での発生以降、国内での発生はありませんが、中国、韓国や台湾などア ジア諸国を中心に継続的に発生しており、飛行機や船で人や物が常に移動してい る中、いつ日本に侵入してくるかわからない状況にあります。 当所では、宮崎県での発生以降、口蹄疫の特徴病変写真や侵入防止対策を記し た独自のリーフレットを作成し、管内の偶蹄類飼養農場全戸へ配布するととも に、各種研修会、総会や部会などで口蹄疫の侵入防止対策の徹底を呼び掛けてき ました。平成 22 年から平成24年末までに述べ 147 か所で 2163 名の農家及 び関係者に直接注意喚起を行ってきました。 宮崎県での口蹄疫発生を踏まえ、一昨年には家畜伝染病予防法が改正され、飼 養者が遵守すべき「飼養衛生管理基準」が法律で制定されました。牛を含め法に 定められた家畜を飼養する者が守るべき衛生管理基準が規定されています。 牛では次の 8 事項が定められています。(200 頭以上飼養の場合は 9 項目) ①家畜防疫に関する最新情報の把握 ②衛生管理区域の設定 ③衛生管理区域への病原体の持込み防止 ④野生動物等からの病原体の感染防止 ⑤衛生管理区域の衛生状態の確保 次頁に続く -1- ⑥家畜の健康観察と異状が確認された場合の対処 ⑦埋却地の準備 ⑧感染ルートの早期特定のための記録の作成及び保管 (⑨大規模農場に関する追加措置) 当所では今年度から「飼養衛生管理基準」の遵守状況について、法に基づく検 査に併せて確認及び指導を実施してきましたが、牛飼養農場では特に基準の②、 ③、⑦及び⑧が不十分であることがわかりました。農場の衛生管理は衛生管理区 域を明確に区分することがまず基本であり、そのうえで衛生管理区域内に病原体 を持ち込まないこと(車両消毒、長靴・手指消毒)が重要です。また、万が一発 生した場合の迅速な防疫措置に備え埋却地を確保しておいて下さい。 感染ルートを早期に特定することが病気のまん延を防止することから、衛生管 理区域に立ち入った者・家畜の導入及び出荷・健康観察等に関する記録も作成し、 保管して下さい。 口蹄疫に限らず家畜の伝染病はたくさんあります。自分の財産である家畜を病 気から守るため、また万が一発生しても被害を最小限にするためにも、飼養衛生 管理基準を遵守しましょう。 <防疫課> 過去最高の被害!牛ウイルス性下痢ウイルス持続 感染牛の多発事例について 牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)による被害が拡大しています。 本病において、最も恐ろしいのは、一見正常に見える持続感染(PI)牛 ※ です。 気づかないまま複数の農場で病気が拡大していた事例があったので、御紹介し ます。 BVDV 感染が拡大した 2 つの事例 ◆その1(複数の農場を経由して拡大した事例) 管内肥育農場で発熱・流涎を呈した牛 が PI 牛と判明。この牛が生産された農 場には7頭の PI 牛が存在し、1頭の他 農場からの導入牛が原因とされた。 また、原因となった導入 PI 牛の生産 農場から管外農場に販売された牛も PI 牛であることが確認されたが、それは他 農場から導入されていた。それ以前の感 染源は不明であった。摘発 PI 牛はすべ て淘汰された。(図1) -2- 次頁に続く ◆その2(育成施設で拡大した事例) 育成施設において、下痢を機に PI 牛 を1頭摘発(検査後死亡)。施設利用牛 及び利用農場の牛を検査した結果、同時 期に利用農場へ遺伝子型が異なる(1型 及び2型)ウイルスが侵入、産まれた PI 牛の移動により、施設を介して複数農 場へ拡大したと考えられた。摘発 PI 牛 はすべて淘汰された。BVDV 対策とし て、新たに施設へ移動する牛へのワクチ ン接種と検査を実施し、清浄化の維持に 努めている。(図2) BVDV 感染症には適正なワクチン接種が有効で、容易に検査が可能です。 2事例とも、PI 牛の導入から確認されるまで約2年を要していました。 BVDV の被害はワクチン接種により防ぐことが出来ます。 他県においては、導入時における検査が行われていますが、県内ではまだ進ん でいません。少なくとも導入後に流・死産等の繁殖障害、奇形や虚弱子牛の出産 及び疾病の増加などの異常が認められた際には早期に検査を実施することが望 まれます。 本ウイルスは、血液はもちろんバルク乳・毛根等により容易に検索が可能です。 臨床獣医師や畜産関係者の皆様は積極的に対策・検査を行うよう生産者に注意 喚起をお願いいたします。 ※持続感染(PI)牛とは… ・BVDV が胎齢 25~125 日の間に初感染した妊娠牛から産まれた牛。 ・本ウイルスの抵抗性(抗体産生)を持たないため、持続的に感染している。 ・生涯ウイルスを排出する PI 牛は他の牛への感染源となるため、家畜衛生上、 大変危険である。 ・一見して、異常は認められないが、その多くは若いうちに死亡するとされる。 ・一方、全く異常なく飼養される牛も少なくなく、PI 牛は必ず PI 牛を産むため 病気が拡大する。 <病性鑑定課> 適正なワクチン 接種が有効 -3- 意外とある? 牛の鉛中毒 牛の鉛中毒は、全国的に散発が認められている中毒の一つです。 鉛は、バッテリー廃液や塗料など、意外と牛の身近に存在し、代謝の未発達の子 牛がこれを舐めるなどして中毒が起こります。親牛は症状を示さないことが多く、 気づかれないケースも多いと推察されますが、血液中の鉛濃度は長期間持続するこ とが知られています。現在、国内では食肉中の基準はありませんが、国際的には基 準値が設けられている国もあり、食品衛生上も注意すべき疾病です。 ◆原因 白鳥など水鳥では散弾を飲み込むケースが有名ですが、家畜の中で一番感受性が 高いのは牛で、その多くは鉄柵や柱の塗料が原因です。金属用の塗料や錆止め塗装 には鉛が含まれているものがあり、それを舐めたり、はがれた塗料を口にして消化 管から吸収されます。 また、漁網用ロープには耐性強化のため鉛が含まれていることがあり、これを頭 絡や防鳥ネットとして利用していたところから溶け出し、中毒を発生した事例が、 本県を含む複数で認められています。 吸収された鉛は、肝臓や腎臓に蓄積するほか、血液中濃度が高い場合には、中枢 神経異常を引き起こします。 ◆症状 急性の場合 12~24 時間後、亜急性の場合 3~4 日後に、運動異常・けいれん 等の神経症状を示し、重症の場合は死亡します。 慢性の場合、栄養不良と発育不良の症状を認め、急性中毒が発生しない限り気づ かれない例も多いと推定されます。 ◆診断 血液中の鉛、死亡した場合には、肝臓・腎臓・胃内容の鉛を測定します。なお、 -4- 次頁に続く 血液中で鉛は赤血球に含まれるので、血清ではなく全血が必要です。 また、感染性脳炎やチアミン欠乏症などとの類症鑑別も重要ですので、本病等を 疑った際には、適切な採材を治療前に行っておくことも重要です。 ◆こんな牛舎はありませんか? 鉄骨や鉄パイプ構造で、これら金属部分に錆止めや塗料を塗ってある牛舎。 最近の塗料は無鉛化が進んでいますが、上部の塗装が剥げてきて、過去の錆止め 塗装が顔を出し、これを舐めて発病したと思われる例も散見されるので要注意で す! 心当たりのある場合には、塗装部分を覆う、別の建物を牛舎として検討するなど、 牛が暴露されないような対策をとりましょう。 <衛生課> 今年も定期報告書の提出時期がやって参りました! 平成23年4月、家畜伝染病予防法が改正され、家畜を飼養する方々に飼養家畜 の衛生管理状況の報告が義務付けられました。 ◆家畜伝染病予防法に基づく「定期報告」とは 家畜伝染病予防法第12条の3の規定に基づき飼養衛生管理基準が定められた 家畜(牛、水牛、鹿、馬、めん羊、山羊、豚、いのしし、鶏、あひる、うずら、き じ、だちょう、ほろほろ鳥及び七面鳥)の所有者は、同法第12条の4の規定に基 づき、農林水産省令で定める事項を、毎年、岩手県では管轄する家畜保健衛生所に 報告することが義務付けられています。 万一、報告を怠った場合は、10万円以下の過料を課すといった罰則もあります。 なお、これらの家畜の飼養頭羽数が下記に該当する場合は、飼っている家畜の種 類と飼養頭羽数のみを報告して下さい。 ①牛・水牛・馬の場合:1頭 ②鹿・めん羊・山羊・豚・いのししの場合:6頭未満 ③鶏・あひる・うずら・きじ・ほろほろ鳥・七面鳥の場合:100羽未満 ④だちょうの場合:10羽未満 ◆報告書作成手順と報告様式 報告様式は昨年送付しました「家畜の衛生管理状況等の報告」内にありますので、 コピーして様式としてお使い頂くか、市町村や農協窓口に設置しているものをお使 -5- 次頁に続く い下さい。 また、報告様式は岩手県中央家畜保健衛生所のホームページよりダウンロードが 可能です。 詳しくは、お手元の冊子「家畜の衛生管理状況等の報告」をご確認ください。ご 不明な点は家畜保健衛生所へお問い合わせください。 ◆家畜の飼養頭羽数の報告基準日と報告期限 家畜所有者の区分 飼養頭羽数の報告基準日 牛、水牛、鹿、馬、めん 毎年の2月1日現在 報告期限 毎年4月15日まで 羊、山羊、豚およびいの ししの所有者 鶏、あひる、うずら、き 毎年の2月1日現在 毎年6月15日まで じ、だちょう、ほろほろ 鳥及び七面鳥の所有者 ◆報告書の提出先及び問い合わせ先(郵送、持参、ファックス) 岩手県中央家畜保健衛生所 〒020-0173 岩手県岩手郡滝沢村滝沢字砂込 390-5 電話:019-688-4111 ファックス:019-688-4012 お住まいの市町村、農協の畜産担当窓口を経由して提出することも可能です <衛生課> 定期報告は毎年必要です。 今年(平成25年)も忘れずにお願いします。 < お問合せ先 > ○岩手県中央家畜保健衛生所 電話:019-688-4111, FAX:019-688-4012 ホームページ:http://www.pref.iwate.jp/info.rbz?ik=3&nd=707 「岩手県中央家畜」で検索してください ○沿岸広域振興局農林部宮古農林振興センター 電話:0193-64-2214, FAX:0193-64-5631 ○岩手県中央家畜衛生協議会 電話&FAX:019-688-4015 -6-