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妊娠女性が無線端末を用いた場合の 様々な胎児姿勢における電磁波

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妊娠女性が無線端末を用いた場合の 様々な胎児姿勢における電磁波
Annual Report No.24 2010
妊娠女性が無線端末を用いた場合の
様々な胎児姿勢における電磁波エネルギー吸収量の解析
Calculations of Specific Absorption Rate for Various Fetal Presentation in a Pregnant Woman
Using a Commercial Portable Radio
A04102
派遣先 カナダ、トロント
期 間 平成22年7月10日~平成22年7月17日(8日間)
申請者 千葉大学 大学院工学研究科 博士後期課程2年 秋 元 晋 平
2010)が7月11日(日)∼17日(土)
、カナダ
海外における研究活動状況
オンタリオ州トロントのSheraton Centre Hotel
研究目的
にて開催された。AP-S/URSIはアンテナ及び
近年、妊娠女性がワイヤレス端末を使用し
電磁工学に関する参加者の多い国際学会で、
た際の電磁波曝露評価が重要な研究課題の
過去4年間はサウスカロライナ、サンディエゴ、
一つになっている。特に、胎児のような発達
ホノルル、アルバカーキで開催された。
途上の器官や組織に対する不安や疑問は大き
投稿原稿は同分野の専門家により評価され、
く、WHO(World Health Organization:世界
今年度は投稿原稿の中から最終的に約1,600
保健機関)でも、電磁波を応用した機器を妊
の論文が通過し、発表が行われた。プログラ
娠女性が使用した場合の電磁波の胎児に対す
ムは約150のテーマで構成され、会場となる
る安全性を問題としている。しかしながら、
Sheratonホテルでは毎日、14の部屋で各セッ
精密な電磁波曝露評価が不十分であり、胎児
ションが並列して開催された。各セッション
における曝露量の閾値は明らかになっていな
は1演題20分で5、6演題から構成される。会
い。さらに、現時点では、総務省・電波防護
期中の一日のプログラムの流れは、朝8時から
指針においても妊娠女性および胎児を対象と
の口述セッションと同時にポスターセッショ
した曝露量の上限値も定められていない。そ
ンが行われ、午後も同様に口述セッション、
こで、本研究では、胎児における曝露量の安
ポスターセッションの同時講演となっており、
全なレベルを明確にするために、妊娠女性が
17時に演題発表が終了する。
ワイヤレス端末を使用した場合を想定した詳
申請者は10日(土)にトロントに到着し、
細な電磁波曝露評価を行った。
11日(日)はワークショップが開催されてお
り、一般公演は行われていないため、レジス
海外における研究活動報告
トレーションのみを行った。ここでは、ネー
2010 I E E E I n t e r n a t i o n a l S y m p o s i u m o n
ムプレートに加え、バッグ、発表プログラ
Antennas and Propagation and CNC/USNC/
ム、CD-ROMが配布された。12日(月)から、
URSI Radio Science Meeting(AP-S/URSI
いよいよ演題発表が始まる。まず申請者は
─ 836 ─
The Murata Science Foundation
“Human Exposure to EM fields: Dosimetry and
国内だと擬似人体を用いた評価が一般的であ
Therapy”のセッションに参加した。このセッ
るが、やはりそこには限度がある。実際に動
ションでは主に、人間が携帯電話などのワイ
物を用いた評価は、データにばらつきはでる
ヤレス端末を使用した場合の、電磁波による
ものの、シミュレーションではない現実的な
影響についての発表が行われた。同日午後は
結果をもたらすため、インプラントアンテナを
“Therapeutic and Rehabilitative Applications of
広めるためには非常にインパクトを与える内
Electromagnetic Fields”のセッションに参加
容であると感じた。
した。ここでは、電磁波を患部(がん)に放
14日(水)の午前中は、“A s s e s s m e n t o f
射することで、その患部を温め治療を行うな
Implanted and Body-Worn Devices”のセッショ
どの演題があり、まさに医学と工学の融合を
ンに参加した。ここでは、先日にも発表が行
試みたおもしろい研究が多くあった。その後、
われた題材であるインプラントアンテナと、人
“Biological Effects, Dosimetry, and Assessment
体装着型のアンテナに関する発表が行われた。
of EM Exposure”のセッションに移り、自ら
人体装着型のアンテナにおいては、RFIDを用
が発表を行った。申請者の研究テーマであ
いた検討などが行われていた。日本でRFIDは、
る「妊娠女性の電磁波エネルギー吸収量評価」
鉄道の乗車券や電子マネーなどに利用されて
は、近年世界的に注目を浴びている課題であ
いるなどで、実用例はあまりない。発表を聴
るため、非常に多くの質問やコメントを頂く
講して、今後の人体装着型デバイスに対する
ことができた。やはり聴講者にとっての一番
実用化が期待できた。同日午後は、ポスター
の疑問は、「妊娠女性がワイヤレス機器を使っ
セッション会場に移動した。大きな会場の中
ても、お腹の子供には危険はないのか?」で
に、5のテーマ別に掲示されており、
“Antennas
あったが、今回の申請者の発表により胎児の
for Mobile Applications”、“Human Body -
安全性について示唆することができたと思う。
Antenna Interactions”の2テーマのポスターを
しかしながら、今回発表したデータは、日本
主に観覧した。
人女性を対照とした1例にすぎないため、今後
15日(木)の最終日は、午後から“Applications
も更なる研究が必要であると実感した。その
of EM Fields in Medicine”のセッションに参
他にもこのセッションでは、電磁波による人
加した。ここでは、ウェアラブルワイヤレス
体影響の解析手法についての発表などもあり、
センサーを用いたリハビリへの応用や、新し
非常に勉強になった。
い診断画像技術の検討など、メディカルアプ
13日(火)は、朝から“B o d y I m p l a n t e d
リケーションに関する発表が行われた。
Antennas: Challenges and Opportunities”のセッ
以上で申請者のIEEE AP-S/URSI 2010での
ションに参加した。ここでは、インプラント
全日程が終了した。本大会では、携帯端末だ
アンテナについての発表が行われた。今大会
けではなく、アンテナの新しい用途、例えば
の中でも一番大きい会場で“Special Session”
治療やリハビリへの応用や、インプラントや
として扱われるほど現在世界で大きく取り上
ウェアラブルなど様々な研究が行われており、
げられているテーマであり、本研究室の教授
非常に勉強になった。自身の“電磁波による
が座長を勤めた。このセッションで一番の衝
人体の曝露影響に関する研究”についても、
撃は、海外での動物実験の多さである。日本
目前の課題の解決のみに集中すると一方的な
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Annual Report No.24 2010
この派遣の研究成果等を発表した
視点になって間違いがちであるが、多くの分
野に目を向け相互発展を目指さなければなら
ないと思った。
最後に、貴重な経験、機会を与えてくださっ
著書、論文、報告書の書名・講演題目
“Evaluation of Specific Absorption Rate for a Fetus
by Portable Radio Terminal close to the Abdomen
of a Pregnant Woman,”IEEE Transactions on
た、財団法人 村田学術振興財団には、心よ
Microwave Theory and Techniques(2010年9月採
り御礼申し上げます。
録決定)
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