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現代社会において公正と正義をいかに考えるのか

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現代社会において公正と正義をいかに考えるのか
「現代社会」のさまざまな理論・思想から社会事象を考える。
現代社会において公正と正義をいかに考えるのか
▶▶▶ 東京大学 教授 中島 隆博
はじめに 理性と啓蒙への批判――フランクフルト学派
公正と正義を考えるときに,どうしても触れて
フランクフルト学派の起源は,フランクフルト大
おきたいのは,西洋近代が抱える矛盾である。西
学におかれた社会研究所である。ナチズムの台頭
洋近代は,理性と啓蒙を旗印として,人間を特定
によって,社会研究所とメンバーは国外に分散す
の宗教的・政治的な桎梏から解き放ち,自由,平等,
ることになり,1934年にはニューヨークのコロンビ
公正,正義といった普遍的な価値に開かれた社会
ア大学を拠点とするようになる。フランクフルト学
の可能性を示した。そのなかで,民主主義や人権
派の第一世代を代表するマックス=ホルクハイマー
という概念が鍛えられ,西洋以外の地域に大きな
とテオドール=アドルノは,亡命先のカリフォルニ
影響を与えていったのである。しかし,その光に
アにおいて『啓蒙の弁証法』
(執筆は戦時中の1939
は深い影がつきまとい,他方で,西洋近代は,植
年から1944年にかけてであり,出版は1947年)を書
民地主義や帝国主義,奴隷制や社会の構造がつく
き,西洋的な理性が他者を支配する手段としての
り出していく貧困といった,西洋の外側にいる人々
道具と化し,文明化を進めるはずの啓蒙が弁証法
の生を暴力的に支配する不正を許したのである。
的にその反対物に転化することで,ナチズムという
こうした不正が極点に達したものが全体主義で
新しい野蛮をもたらしたと述べた。
「啓蒙が神話へ
ある。民主主義的な手続きをとって成立したナチ
と逆行していく原因は,ことさら逆行することを目
ス・ドイツは,ホロコーストもしくはショアーと
的として考え出された,国家主義的,異教的等々の
よばれるユダヤ人虐殺を遂行しようとした。それ
近代的神話のもとに求められるべきではなく,むし
は,そのユダヤ人が生きていた痕跡までも消し去
ろ真理に直面する恐怖に立ちすくんでいる啓蒙そ
ろうとする,極限的な悪であった。しかもそれは,
のもののうちに求められなければならない」
(
『啓蒙
ナチスの官僚であったアドルフ=アイヒマンのよ
の弁証法』序文,徳永恂訳,岩波文庫,2007年)
。
うに,ユダヤ人を強制収容所や絶滅収容所に移送
それは,理性と啓蒙への徹底した批判であるが,
する計画を冷徹に「計算」して実行する理性(理
徹底した批判を行う限りで,理性と啓蒙を徹底的
性のラテン語であるratioは計算するという意味
な崩壊から救うものでもあった。
を含む)に支えられていたのである。
こうした西洋近代の不正に対して,思想家たち
ナチズムはなぜ起こったか?
はきびしい批判を行った。それは,西洋近代を支
えていたはずの理性と啓蒙を根底から問い直さず
にはおかなかったのである。とはいえ,理性と啓
西洋的理性
他者支配
啓 蒙
ナチ神話
蒙を否定し,反理性や反啓蒙に向かえば,公正と
正義が実現するわけではない。理性のもとで抑圧
されていた感性や身体の意義を回復しつつ,また
啓蒙の限界を指摘しつつ,思想家たちはもう一度
理性と啓蒙の意義を考え直そうとしたのである。
1
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
近代
悪の陳腐さと公共領域――ハンナ=アーレント
的な領域ということで,アーレントが念頭におい
ナチズムにきわまる絶対的な悪について,ホルク
ているのはギリシャであり,そこでの民主主義で
ハイマーやアドルノとは異なる仕方で考えようとし
ある。ギリシャは西洋近代の起源として位置づけ
たのがハンナ=アーレントである。やはりドイツか
られてきた経緯があるが,今や西洋近代の限界を
らニューヨークに逃れていたアーレントは,1961年
救うものとして呼びもどされたのである。
に雑誌『ニューヨーカー』の特派員として,エルサ
公共領域
レムでのアドルフ=アイヒマンの裁判を傍聴し,そ
れを1963年に『イェルサレムのアイヒマン――悪の
陳腐さについての報告』として出版する。そのな
思考
意見
かでアーレントは,ユダヤ評議会のナチスへの協力
を指摘するとともに,アイヒマンに体現されている
悪を陳腐な悪もしくは凡庸な悪と理解したために,
ごうごうたる非難を受けることになる。しかし,
アー
レントはナチズムの悪を決して軽く見積もろうとし
たわけではない。そうではなく,ナチズムのような
絶対的な悪が,アイヒマンのような思考の欠如した
無限の責任と正義の計算――エマニュエル=レヴィナス
人間すなわち,誰か他の人の立場にたって考える
ナチズムに加担したマルティン=ハイデッガー
ことのできない人間によって担われており,さらに
の影響を受けたうえで,そこから離脱することに
は被害者もまたその巨悪のプロセスに巻き込まれ
よって,ナチズムをのりこえようとした思想家に
てしまうことを指摘することで,ナチズムを単なる
は,先ほどのアーレントに加えて,エマニュエル
異常な現象として断罪して終わりにしてはならない
=レヴィナスがいる。捕虜収容所の経験を有する
と考えたのである。
レヴィナスは,その主著である『全体性と無限』
ではどうすれば,ナチズムとその悪に抵抗しうる
(1961年)というタイトルに明らかなように,西
のか。それは,思考することを取り戻し,他者の立
洋哲学を全体性(totality:ナチズムの全体主義
場にたって考え,普遍的な正義にもとづいて判断
を意識した表現)に向かうもの,
「戦争から生じ
することによってである。ここで重要なのは“他者”
る全体性の存在論」であると批判し,全体主義に
である。思考することは,自分のなかに閉じこもる
おちいらないように,全体性を破る無限,すなわ
ことではなく,他者の立場にたって考えることなの
ち無限である他者への責任を対置した。アーレン
だ。悪の陳腐さもしくは凡庸さが破壊するのは,複
トが公共領域という政治空間を強調したのに対し,
数の他者とともにあり,おたがいがそれぞれの見方
レヴィナスは他者に正義を返す倫理を主張したの
を見聞きし合うような人間の領域,つまりは公共的
である。
な領域である。したがって,悪の陳腐さもしくは凡
ここでレヴィナスが念頭においているのが,ユ
庸さに対して,単に善や善行を対置しても十分で
ダヤ教と,それが思考する無限の神であることは
はない。なぜなら,善や善行はそれ自体が,悪と同
重要である。アーレントがギリシャをもち出した
様,自己を他人から隠し,光の明るさからのがれる
ように,レヴィナスもまた西洋近代をのりこえる
ものであるために,公共領域の破壊には無力であ
ものとして,ユダヤ教に一筋の道を見いだそうと
るからだ。必要なことは,複数の人々がたがいの距
した。それは,20世紀後半にユダヤ系の思想家た
離を維持しながら,言語を通じてその意見を交換
ちが,ホロコーストもしくはショアーという経験
する公共領域を回復することなのだ。
をふまえて,新たにユダヤ教を思想的に賦活する
思考すること,さらには意見を交換し合う公共
ことによって,西洋近代を批判しようとする試み
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
2
のなかの重要な位置を占めるものであった。ただ
域(公共圏)を再構築しようとした。また,啓蒙
し,レヴィナスが西洋哲学に対置した倫理は,主
としての西洋近代はナチズムという野蛮に堕した
体や自我という西洋近代の重要な装置をただ放棄
というよりも,十分にその理念を実現していない
して他者に向かえというものではない。それは,
「未完のプロジェクト」だとして,近代に備わっ
もう一度主体や自我を定義し直し,他者への無限
ていた普遍的な諸価値(とりわけ公正や正義とい
の責任を負う,エゴイズムなき自我を要求するも
う倫理)を擁護し直したのである。
のであった。
さらに,正義に関してレヴィナスは,他者が複
数存在する(敵もまた他者である)以上,無限の
道徳的理性
対話的理性
責任にしても正義にしても,なんらかの計算に送
り返されざるをえないと述べる。
「正義の次元は
表象から生まれ,自我の他者への身代わりを抑制
し計測し,自己を計算に送り返す」
(
『存在すると
は別の仕方で あるいは存在することの彼方へ』
公共領域
(公共圏)
合田正人訳,朝日出版社,1990年)
。計算が理性
の語義であったことを思い出すなら,正義を前に
してレヴィナスは,計算をこえるものを計算する
ハーバマスは,18世紀の啓蒙の哲学者たちが考
という,行きづまるような難題としてのアポリア
えていた,
「世界と自我の解釈」,
「道徳的進歩」,
「公
を思考したのである。
正な社会制度」,「人間の幸福」が促進されるとい
無限の
責任
う方向性を,それがいかにくじけていたとしても,
?
守っていくことが必要なのだと述べている(
「近
他者の
複数性
代 未完のプロジェクト」
,1980年アドルノ賞受
賞の際の記念講演)。
計算
また,市民的な公共領域(公共圏)という着想
はアーレントともつながるものである。1989年の
バランス
無限の
責任
他者の
複数性
東欧革命のあとに,『公共性の構造転換』(細谷貞
雄・山田正之訳,未來社,1994年)の新版を出し
た際,新たに付した序文にはこうある。「市民社
会という概念の株価が上昇しているが,これはと
りわけ国家社会主義体制[ナチズム]の批判者た
3
公共領域(公共圏)と近代の擁護――ユルゲン=ハーバマス
ちが,全体主義による政治的公共圏の破壊に対し
フランクフルト社会研究所が戦後にフランクフ
て加えた批判によるところが大きい。そこで重要
ルト大学に戻ると,フランクフルト学派の第二世
な役割を演じているのは,ハンナ=アーレントに
代が登場することになる。それを代表するのがユ
よって展開された,コミュニケーション的な理論
ルゲン=ハーバマスである。
を背景として把握された全体主義の概念である。
ハーバマスは,ホルクハイマーやアドルノによ
さまざまな自律的な公共圏は意見形成を行う結社
る理性と啓蒙への批判のあとで,もう一度理性と
(アソシエーション)を中心としてその周囲に形
啓蒙を立て直そうとした。
すなわち,
「道具的理性」
づくられうるが,アーレントの概念を下敷きにす
に対しては「対話的理性」をおき,
他者とのコミュ
ると,市民社会のなかでなぜこうした結社が傑出
ニケーションによって構成される市民的な公共領
した地位を占めるのかが理解できるようになるの
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
である。全体主義の支配が諜報機関組織の監視下
寄与したのである。
に隷属させるのは,まさにこうした市民のコミュ
このことをフランソワ=ジュリアンというフラ
ニケーション的実践にほかならない。東欧や中欧
ン ス の 哲 学 者 は,「 普 遍 化 可 能 な も の 」
での革命的変化は,このような分析を裏書きし
(l’universalisable) と「 普 遍 化 す る こ と 」
た」
。アーレントは,権力を複数の人々が集まっ
(l’universalisant)という繊細な区別によって説
て意見を交換することだと述べていたが,ハーバ
明しようとしている。つまり,当該の社会や文化
マスはそれを結社=アソシエーション(社会を構
に普遍化可能なものがあらかじめ存在しないにし
成すること)という言葉で引き受けている。そし
ても,人権のような理念に向かって普遍化してい
て,ナチズムや(当時の)東欧・中欧の全体主義
くことこそが重要だというのである。無論そのた
の暴力に対抗しうるのは,こうした結社からなる
めには,繰り返しそうした概念を批判的に検討す
市民的な公共領域だと述べるのである。
ることが条件となる。それなしの普遍化は単なる
ユ ニ ヴ ェ ル サ リ サ ー ブ ル
ユ ニ ヴ ェ ル サ リ サ ン
暴力におちいってしまうからだ。
現代社会における公正と正義――普遍について
同じことが公正や正義にもあてはまるだろう。
以上何人かの思想家を検討したことからわかる
私たちは公正や正義という理念を有してはいるが,
ことは,現代社会において公正や正義が問われる
それは未完の概念であり,私たちがつくりあげる
のは,他者との関係においてである,ということ
公共領域でたえず検証し,それを普遍に向かって
だ。自分のための公正や正義を主張し,他者の生
開く努力が不可欠である。そのためにも,なぜ現
を暴力的にそこなってきた近代の影をはらい,い
代社会において公正や正義が問われなければなら
かにして他者に公正や正義を返すことができるの
ないのか,その歴史的な背景を知っておくことが
か。そのためには,理性や啓蒙を再検討するとと
重要である。ここでは西洋近代とそれがもたらし
もに,他者とともにある公共領域をつくり続けな
た全体主義について述べたが,これが決して西洋
ければならない。そこにおいて,公正や正義があ
のみの経験ではなく,日本も含めた西洋の外部で
らためて普遍的な倫理として登場することだろう。
も同様に生じた経験であることは明らかである。
ここで上にあげた思想家たちが普遍への志向を
公正や正義は単なる抽象的な概念ではない。そ
放棄しない理由を考えておきたい。例えば人権と
れは,他者に,さらにいえばマイノリティたる人々
いう概念を例にとってみる。それは,ヨーロッパ
に返されるべき,具体的な概念である。全体化の
において歴史的に誕生した概念であり,最初から
力に抗しながら,他者とともにある公共領域を開
一挙にその普遍的な意義を明らかにしていたもの
くことは,それが個別的で具体的なものに寄り添
ではなかった。フランス人権宣言が予定していた
う限りにおいて,それ自体が公正や正義に向かう
のは男性市民だけであった。人権が「すべての人
実践なのだ。
間」に保証されるのは,世界人権宣言(1948年)
を待たなければならなかった。つまり,人権概念
普遍的な倫理へ
が普遍的になるためには,さらなる歴史的なプロ
セスが必要だったのである。そして,このプロセ
スには,西洋近代への反省とともに,西洋の外部
での近代の経験が決定的に重要であった。たとえ
当該の社会や文化に,人権に相当する考えの萌芽
理性・啓蒙 を再検討
公共領域で検討し続ける
個別的・具体的な他者によりそう
を見つけることができないとしても,人権という
新しい概念を受け取り,それに向かって困難な道
を歩む経験が,人権概念を真に普遍化することに
?
公正・正義
?
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
4
現代社会において公正と正義をいかに考えるのか 練習問題
Q1
あなたの友達が振り込め詐欺に協力していたとしよう。その人は,「私は行き先で渡される書類を受
け取るだけの簡単な仕事と聞かされて封筒を受け取っただけで,詐欺だとはまったく知らなかった」
と言った。さて,あなたはどう考えるだろうか。
Q2
あなたのとなりの家の父親は家庭内暴力をふるい,その家族は大変に困っていた。見かねたあなたが
意見をしにいくと,その父親に,「うちにはうちのやり方があるから口出しをしないでくれ」と言わ
れた。さて,あなたはどうするだろうか。
Q3
あなたの村の村長は大変に気のいい人で,村の土地の一部をよそから来た人たちに譲ってあげた。と
ころが,その後,その人たちはかってに仲間を呼び,村中に家を建て,耕作し始めた。あげくの果て
に,もともといた村人を村から追い出すとまで言い始めた。困った村長はあなたに意見を求めてきた。
さて,あなたはどう答えるだろうか。
Q4
あなたのクラスでいじめがあった。いじめていた生徒たちは反省し,自分たちがいじめていた生徒に
あやまったが,その人からは「絶対にゆるさない」と言われてしまった。あなたはこの状況をどう考え
るだろうか。
練習問題 解説 悪の陳腐さ
5
啓蒙と暴力
独裁的な国家にどう対処するのか。これは現代
アイヒマンに体現した悪の陳腐さ,もしくは凡
社会においてなかなかの難問である。不正が行わ
庸さという問題は,私たちの社会においても日々
れている状況を前にして介入するのかしないのか。
問われている。ここにあげた例は,オレオレ詐欺
介入するとすれば,いかなる介入(例えば人道的
や振り込め詐欺に協力する受け子である。日本の
介入)ならよりましなのか。21世紀に入って,国際
法律においては詐欺罪が適用されるにもかかわら
的立憲主義ということのできる流れのなかで,国
ず,受け子になった人には,
「詐欺だとは知らな
家主権を「保護する責任」と再定義し,それを放
かったのだから罪に問われることはない」と信じ
棄した国家に対しては国際社会が介入することが
ている,あるいは信じ込まされているケースが
できるとした議論が登場し(
『保護する責任』介入
多々あると聞く。少し考えれば,自分が行ってい
と国家主権に関する国際委員会(ICISS)報告書,
る行為がもっている意味(詐欺への加担)がわか
2001年)
,それが2011年にはリビアへの人道的介入
るはずだが,思考すること,他の人の立場にたっ
の根拠として実際に用いられた。とはいえ,それ以
て考えることをやめた瞬間,より大きな悪に加担
前の,アフガニスタンやイラクへの介入がもたらし
してしまうのである。これは受け子だけでなく,
た結果を考えると,人道的介入に関してはさらなる
見張り役であるとか,連絡係であるとか,まさに
練り上げが必要である。
人が道具的に使われてしまう局面では起こりやす
家庭内暴力やこどもへの虐待にも同様の構造が
いことである。立ち止まって自ら考えるとともに,
ある。それらに介入し,それらから守る制度が徐々
複数の他人に意見を聞き,場合によっては性急な
に整備されているが,それとともに必要なことは,
結論を出さないということが,こうした現代社会
そうした暴力をふるう人々やそれを許容する人々
の陳腐な悪におちいることを防ぐ方策であること
に対する,新しい啓蒙であろう。つまり,民主主
を論じていただければと思う。
義を上から押しつけるような古い啓蒙のかわりに,
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
個別の状況を勘案したうえで,そこで生じている
らなるのである。
暴力について自ら思考することをうながすような
新しい啓蒙である。そして,それは公共領域にお
和解と赦し
いて批判的に検証されながら行われなければなら
社会に深刻な衝突や亀裂が生じたあと,私たち
ないのである。
はどう対処することができるのだろうか。ナチズ
ムのあと,ドイツでは「過去の克服」が大きな課
歓待,植民,正義の計算
題となった。そして,ナチ党員の司法的な訴追や,
他者を歓待すること。例えば,破綻した国をの
被害の補償を行うとともに,何が起こったのかを
がれてきた難民を歓待することは,今日において
知り,それを公共的な記憶として継承することに
公正と正義を考えるときに欠かすことのできない
よって,近隣諸国やイスラエルとの和解が進んで
テーマである。しかし,同時にこれが複雑な問題
いったのである。アパルトヘイト政策を放棄した
をもたらしてきたことを私たちは忘れるわけには
あとの南アフリカにおいても,真実和解委員会の
いかない。北米において,主としてヨーロッパか
もと,いかなる人権侵害が起こっていたのか,そ
ら来た移民が先住民を追い払った歴史を思い出そ
の真実を知ることによって,懲罰や復讐ではなく
う。歓待されていた人々が植民することによって,
和解を実現することがめざされた。
先住民にもたらした災厄は甚大なものがある。そ
したがって,深刻な衝突のあとに和解を実現す
れを正そうと,先住民の権利を回復する運動がな
るためには,何よりも過去に向き合いそれを知り,
されるゆえんである。
記憶することが重要である。ただ,知ること・記
本文で触れたレヴィナスが直面していた政治的
憶することが,被害者に二次的な被害をもたらす
な課題は,イスラエルとパレスチナという今日で
こともある。それに十分注意を払い,どのように
も解決をみていない問題であった。ナチズムによ
知り,記憶するのかについても考えを深める必要
る極限的な暴力にさらされたユダヤ人がイスラエ
がある。
ルを建国し,パレスチナ人を抑圧するという,な
現代社会において,いじめは決して容易に解決
んともやりきれない現実を前にして,レヴィナス
できるたぐいの問題ではない。いじめを可能にし
は正義の計算というアポリアを考えていたのであ
た構造を打ち破るとともに,いじめがもたらした
る。つまり,遠い他者ではなく「最も近き者」の
深刻な亀裂とトラウマを修復することが必要であ
正義を求めることは,それをイスラエルとパレス
る。それには,やはり何が起こったのかを知ると
チナの状況に重ね合わせるとき,容易ならざる結
いうことを避けて通るわけにはいかない。それな
論にいたるのである。
しには和解はありえないし,さらにその先にある,
卑近な例で考えてみても,ある地域において旧
被害者から加害者に向けての赦しは望むべくもな
住民と新住民の利害が対立することは,しばしば
いのである。
である。例えば過疎地域を取りあげると,なんと
ウラジミール=ジャンケレヴィッチというフラ
しても外から人を招き入れたいが,さりとて自分
ンスのユダヤ人思想家は,戦後,ホロコーストも
たちの守ってきた慣習や権利がそこなわれること
しくはショアーをめぐって,
「われわれは赦しを
は望んでいない。新住民のほうも旧習に見えるよ
請う言葉を聞いたのか」と問いかけ,赦しえない
うなものには従いたくないし,権利においてもで
ものを赦すアポリアにとって,加害者の言葉がど
きるだけ平等であることを望むだろう。利害の対
れだけ重要かを考えた。いじめという,身近な
立が,一方の他方に対する暴力に帰着することが
しかし決して些細なものではない暴力を前にして,
ないためには,何をおいても対話が必要である。
考えるべきことは多い。
そして,市民社会は,対話のための時間と空間か
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
6
私の 教 材 紹 介
①
公平公正な感覚を身につけた主権者の育成をめざして
▶▶▶ 北海道紋別高等学校 稲守 俊宏
1はじめに -主権者として必要な視点とは何か-
に判断し,真の公平性について考えさせることが,
投票年齢が18歳に引き下げられ,学校でも「政
主権者としての素養を育てていくことにつながる。
治教育」をどのように行うべきか,
「選挙」をど
⑵ 授業で使ったワークシートより
のように扱うべきかなど,私も含めて,公民科に
授業では,交通事故における加害者および被害
かかわる先生方は頭を抱えている。模擬投票授業
者の過失の割合について考えさせる。
など,くふうをこらした授業を実践されている先
初めに,事故の概要について,それぞれの条件
生方の話を見聞きするが,果たして高校生に必要
について読み合わせをさせ,加害者は被害者に対
な主権者としての視点とはなんなのだろうか。私
してどれくらいの損害賠償金を支払わなければな
自身が考える主権者教育とは,公平公正な視点・
らないのか,第一印象だけで答えさせる。
批判的な視点をもつ生徒の育成である。そのこと
をふまえたうえで,三つの手がかりを紹介したい。
2司法参加をふまえた公正な判断力の育成
⑴ 裁判のしくみを体験する
実際に,主権者としての思考力を身につけさせ
るうえで大切なことは,ただ単に自分の意見をも
つことではなく,否定派にも肯定派にも立てるマ
ルチな視点ではないだろうか。そのうえで,最終
的な「賛否」という自分なりの考え方をもつこと
が必要であると思う。
司法の単元では,
学習指導要領で「裁判員制度」
に触れることを求めているが,しくみや制度に注
36歳のXさんは,2007年6月19日午後10時
30分ごろ,Yさんの運転する自動車にはねられ
て重傷を負った。
■警察の調べによると…
①事故現場は見通しの悪いカーブだった。また,
事故当日は弱い雨が降ったりやんだりしていた。
②事故直前,対向車線から大型のダンプカーがセ
ンターラインをはみ出しそうになり,Yさんが
運転する車に向かってきていたため,Yさんは
そちらに気をとられていた。
③Xさんは事故当時,黒い服を着ていた。
④事故現場には横断歩道がなく,30m先の信号
にしか横断歩道はなかった。
目しがちである。私は,ここでリーガルマインド
⑤Xさんは,入院しないですんだが,3か月の通
(ここでいう「リーガルマインド」とは「公平な
院治療を余儀なくされた。また,治療費は月に
感覚」をさす)を意識させることを提案したい。
『高等学校 新現代社会』
(以下,
教科書)p.87「How
to……身近な争いをどう解決する?」にある交通事
7
■事故の概要
20万円かかった。
⑥Xさんは,月収30万円の仕事についていたが,け
がのため仕事ができずに給料はもらえなかった。
故の事例を利用しながら,生徒に民事紛争の解決
その後,4~5人のグループをつくり,グループ
の方法について理解させることを通じて被害者の
ごとに被害者のXさんやその弁護士ならどのような
視点だけではなく,
加害者の視点にも注目させる
(私
主張をするか,また,加害者のYさんおよびその弁
はオリジナルのものを利用する)
。
護士ならどのような主張ができるかを吟味させる。
もし裁判員に選ばれた場合,どのように「事実
はたして,事故を起こしてしまったYさんだけが
の認定」をしなければならないのか,
「量刑」をど
悪いのか,被害者のXさんにはまったく落ち度がな
のように考えるのかということが求められる。その
かったのかなど,さまざまに掲げた条件を検討して
ことをふまえたうえで,法律や相手の状況を客観的
いくと,生徒の多くは実は被害者にも責任や落ち度
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
があるのでは?ということに気づき始める。
えさせることで,地元の産業の強みを生かした町づ
自分が裁判官だとしたら,最終的にどういう結論
くりの視点に立たせることもできる。
を下すか。第一印象では,
「加害者が悪いので過失
ちなみに私は,スーパーマーケットで買い物を
の割合は10:0である。
」と答える生徒も,グループ
したレシートを利用し,どの国で生産されたもの
での話し合いを通じて,8:2だとか,半々である
かを生徒にたずねている。とくに納豆は,日本人
などと,当初の自分の主張を大きく転換させていく。
の食卓には欠かせないものというイメージもあり,
授業を通して,
「事故は加害者が悪い」という
生徒の多くが国産だと思っているようである。ア
視点をなんの“疑いもなく”もってしまうことに
メリカ産の大豆を使っていることを伝えると,生
対して(実はこの“疑いもなく”ということがこ
徒の反応はおもしろいように変わる。この授業の
わい),まったく逆の視点を加えることができる。
場合,家庭科の教諭と連携をとることで,指導が
単なる賛否や自己主張ではなく,リーガルな視点
一層効果的に行える。
をもたせることで,物事の本質を見抜く力へと変
わっていくと私は考える。
4コンクールの活用
ただし,制度そのものの解説や,事故が起こっ
財政についての単元では,政府のあり方に言及
た場合の保険の話題,過失責任については補足を
する。日本が抱える財政赤字や今後も増大してい
加えておかなければならない。
く社会保障関係費,国債費などの問題を取りあげ,
「大きな政府」と「小さな政府」のどちらをめざ
3食の問題から高める主権者意識
すべきか,生徒に考えさせる。格差の問題や子育
TPPへの参加に伴う産業への影響やその懸念
て関連の話題など,自分たちがいずれ直面する課
は北海道では重要な問題である。生徒のなかには
題について考えさせたあと,最後は国税庁の「税
農業や漁業の後継者を希望する者も少なからずい
に関する高校生の作文」を書かせて応募している。
る状況で,食料問題や町づくりのあり方について
納税者としての権利意識が主権者としてのスター
考えさせることも主権者教育では大切である。
トである。正しい税のあり方を考えさせるうえで,
教科書p.148 〜 149「国際経済のしくみ」のなか
コンクールなどに応募することも有効な方法であ
で扱う単元はおもに,貿易や為替に関することであ
る。コンクールへの応募により,行政や地域との
る。しかし,教科書の導入部「もしも貿易がなかっ
つながりを意識させることもできる。受賞によっ
たら」の図では,和食をモデルにどのくらいの割合
て生徒の参画意識もより一層高まる。
で国産なのかという問いが出てくる。この問いをそ
全国のみならず,各地域独自に行われているコ
のまま日本の食料農業問題にあてはめて考えさせる。
ンクールなどを探してみてはいかがだろうか。
『アクセス現代社会2016』
(以下,資料集)p.205
なお,北海道には「『北方領土を考える』高校
には食料自給率のグラフ(1海外にたよる日本の
生弁論大会」などもある。
食料)がある。これらを活用しながら日本の食料
事情について考えさせることでTPPのメリット・
5おわりに
デメリットにも目を向けられる。とくに北海道では
冒頭にも述べたように,
「政治活動」とか「選挙」
その影響を懸念する声も多いなか,関連して資料
に関することがひとり歩きしているように思える。
集p.17 〜 18「NEWSの論点 ②TPP参加による
模擬投票など,確かに生徒には必要な知識といえ
影響を考える」を紹介すれば,政府がTPPを推
るが,それ以上に,身近な問題を自分のこととして
進していく側に立っている理由を考えさせることも
とらえ,それを「公平」
,
「公正」な観点をふまえた
できる。さらに,食の安全保障,自由貿易推進の
うえで,事象に対して自分なりの立場に立たせるこ
観点から地産地消や高付加価値商品のあり方を考
とが主権者を育てる土台であると私は考える。
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
8
私の 教 材 紹 介
②
「主権者教育」を実践しよう!
▶▶▶ 兵庫県立尼崎小田高等学校 福田 秀志
1はじめに 2「貧困と格差」について
教育基本法第14条に「良識ある公民として必要
「貧困と格差」については通常国会でも焦点に
な政治的教養は,教育上尊重されなければならな
なっている。この問題を経済学習の一環として深
い。
」とある。文科省は「良識」とは「十分な知
めることを提案したい。
識をもち,健全な批判力を備えた」という意味で,
効率的な市場メカニズムにまかせておくだけで
「公民」とは「積極的に政治的な関係に入る場合
の国民」
(
「積極的に政治にかかわる国民」と理解
財政(政府)の出番であるが,小泉政権以来の新
していいだろう)と説明している。
「主権者教育」
自由主義的政策によって,市場の役割が重視され,
という言葉が使われるようになったのは最近のこ
財政(政府)の役割が低下している。
とであるが,
教育基本法制定時から「主権者教育」
財政(政府)の役割を認めつつ,その具体的な
は重視されていたことはいうまでもない。
「政治
内容がただちに決められるわけではない。そこで,
的教養」の内容については,
a 民主政治,政党,憲法,地方自治等,民主政
治上の各種制度についての知識
b 現実の政治の理解力及びこれに対する公正な
批判力
c 民主国家の公民として必要な政治道徳,政治
的信念
と文科省は説明している。
9
はうまくいかず「市場の失敗」が起こる。そこで,
①公共財として必要なものは何か。何を市場にま
かせればいいのか。
②財政の水準と規模はどれくらいがいいのか。
③所得や資産の再分配はどの程度行われるべきか。
などを生徒に考えさせるのである。例えば,
「プー
ルは財政か市場か,どちらが担うべきか」,「新自
由主義を唱えたフリードマンは,『社会保障制度』
はいらないといっている。その理由は何なのか」
,
教科書をみると,上記aの内容がほとんどであ
「最低賃金で働く人は年収141万円で生活し,日本
る。b,cの内容についてはあまり書かれておら
でいちばん報酬をもらっている社長は95億円で生
ず,教員も現実社会の諸問題について,取りあげ
活している。病障害をもつAさんは年収が20万円
る機会が少ないのが実情だ。これでは,現実政治
だ。所得とは労働市場でその人が企業にどれくら
の理解力や批判力や政治がどうあるべきかという
いの金額で購入されたのかということでその人の
信念が身につくわけがない。そこで18歳選挙権導
価値だという見方もある。君はこの状況をどう思
入を機に,現実社会の諸問題について,生徒が考
うか」などの問いかけはどうだろうか。
える機会を増やすことが必要となってくる。
さらに論争的なテーマとして,「保育所は市場
私は教科書の内容に関連する現実社会の諸問題
か財政のどちらが担うべきか」
,
「医療は誰が担う
を必ず取りあげている。大がかりな討論・紙上討
べきか―国民皆保険の是非」
,
「税収確保のために
論まで行うのは年に1,2回で,平素は,簡単な
消費税にたよるべきか」
,
「社会保障制度は財政の
ワークシートに現状と論点を提示し(25分)
,4
拡充で行うべきか」などが考えられる。
(『高等学
人グループで意見交換を行い(10分)
,その後,
校 新現代社会』
〔以下,教科書〕p.124 ~ 125,
全体に意見表明をする(15分)という形だ。
p.127,p.145)
以下,生徒に論点を提示し,自分の意見を表明
保育所については将来,保育士になりたい生徒
させるためのアイデアを紹介したい。
も多いうえ,自分に関係のあることなので関心も
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
高い。そこで,
2015年4月に施行された「子ども・
自が書き込み,討論にまでもっていくことができ
子育て支援新制度」について説明をしたあとに,
た。その後,友人の意見や自分で調べた結果をふ
4人グループで以下の問いを考えてもらった。
まえて,さらに2回の意見表明の機会をもった。
①従来の制度は「権利としての保育」なので「財
政」の活動として位置づけられている。新制度
は(ア)なので(イ)として位置づけられてい
る。(ア),(イ)に適当な語句を入れよう。
②新制度のプラス・マイナス面をあげよう。
③君の班はどう考えるのか。
「僕は今まで国の政治のことを考えたことはな
かったし,授業でも取り扱うことがなかった。こ
のように調べ,考える機会があってよかった」と
いう感想が寄せられた。この感想は,「現実の論
争問題をテーマに討論をしたい」という要望であ
り,「国のこと,政治のことを知り,自分たちで
総括テーマとして,
「今後の日本社会は『小さ
現実の論争問題について価値判断を下していきた
な政府』か『大きな政府』か,どちらを選択する
い」という主権者としての決意だと思った。
べきか」が考えられる(教科書p.57,p.108)。簡
単な書籍として,
『税ってなに?』
(三木義一監修
4大学の授業料と奨学金制度
かもがわ出版 2014年)をおすすめしたい。
上級学校へ進学するために日本学生支援機構の
奨学金を借りている学生が大学学部(昼間部)で
3「安全保障法制」を考えよう
51.3%(H26)を占めている。上級学校の卒業後,
2015年9月に制定された「安保法制」は2016年
この奨学金の返済によって生活に困窮する現状も
3月29日に施行された。施行後,現実に「安保法
ある。そこで,
「社会権,参政権,国務請求権」(教
制」が動き出せば,具体的な事象に対して,国民
科書p.68 〜 69)と関連して,以下の資料から,
の声を2分する可能性が大きく,参議院選挙の大
大学生を取り巻く現状を読み取る。
きな争点となるであろう。
そこで,「平和主義と日本の防衛政策」
(教科書
p.100 ~ 101)
,
「これからの日本の安全保障」
(教
科書p.102 ~ 103)を終えたあとに「集団的自衛
①大学授業料などの推移 ②大学生の生活費
③大卒初任給の例
④1世帯あたりの給与収入の推移
⑤卒業後の雇用の実態 ⑥奨学金の返済例
権の限定的行使の是非」を,
「国連の課題」
(教科
そのうえで「大学の授業料は誰が負担するべき
書p.172 ~ 173)を終えたあとに「さまざまな国
か―公的負担か受益者(個人)負担か」,「奨学金
際協力と日本の課題」
(教科書p.178 ~ 179)に
制度のあり方はどうあるべきか」について生徒同
関連させて,「安保法制」の第2の柱である「改
士の4人グループで意見交流を行った。
正国際平和協力法・国際平和支援法の是非」を生
OECD加盟34か国で,大学の授業料が有償でか
徒に考えさせてはどうだろうか。
つ給付制奨学金制度がない国は日本だけであるこ
•視点・論点「安保法制を考える⑴」慶応義塾大
学教授 細谷雄一 (NHK解説委員室 2015
年6月15日)
と,奨学金を滞納している社会人の声などに生徒
は驚くとともに,奨学金制度を通して,日本社会
の現状を真摯に考えていたのが印象的であった。
•
(耕論)これからの安全保障 川上高司さん,
柳沢協二さん (朝日新聞 2015年3月21日)
5おわりに
私は「安保法制」審議中の昨年9月,その第2
参院選の争点に浮上しそうな「憲法改正」問題
の柱を中心にし,「国際社会の平和・安全のため
もぜひ取りあげたいものだが,いずれにせよ,時
に自衛隊の活用を強化すべきか」という題を設定
事問題を積極的に授業で取りあげ,生徒に論点を
した。多面的・多角的な資料を生徒に配付し,4
提示し,自分の意見を表明させる。この繰り返し
人グループで話し合いながら,ワークシートに各
が主権者を育てる道ではないだろうか。
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
10
データでみる現代社会
COP21の成果と課題
公益財団法人 地球環境戦略研究機関
(IGES)上席研究員 田村 堅太郎
はじめに
枠組条約は,その究極目的として「安全なレベ
2015年12月,国連気候変動枠組条約(以下,枠
ルで気候システムを安定化させる」ことを掲げた
組条約)の第21回締約国会議(COP21)で採択
が,何が「安全なレベル」を意味するのかについ
されたパリ協定は,発展段階の異なる190以上の
ては明示していなかった。また,先進国に対して
国々が参加し,気候変動への取り組みを約束した
排出削減に向けた努力目標を課したほか,途上国
という意味で,普遍性,包括性をもつ歴史的な合
への気候変動対策支援の義務づけを行った。しか
意となった。ここでは,COP21にいたる経緯,パ
し,ゆるい形式の努力目標だけでは不十分である
リ協定の概要,そしてパリ協定が発するメッセー
ことが認識され,先進国に対して法的拘束力のあ
ジについて考察したのち,日本の今後の課題につ
る排出削減目標を課す京都議定書が1997年に採択
いて論じる。
された。米国は京都議定書に署名はしたが,2001
年,米国に対し経済的な負担を強いることや中国
COP21までの経緯
を初めとする途上国に削減義務を課していないこ
気候変動問題は1980年代後半に国際政治上の課
とを理由に京都議定書からの離脱を表明した。
題として注目され始めた。しかし,その当時は,
枠組条約や京都議定書では,先進国と途上国と
この問題に対する政策担当者の理解が十分ではな
いう二分論にもとづき,先進国に対しより厳しい
かったため,まずは最新の科学的知見を集約し,
義務が課された。その背景には,「共通だが差異
政策担当者に提供することを目的に,気候変動に
ある責任および各国の能力」原則がある。この原
関 す る 国 家 間 パ ネ ル(IPCC) が 設 立 さ れ た。
則は,気候変動問題は人類全体が共通して負う責
IPCCは,
「人為起源の温室効果ガスがこのまま大
任であるが,問題への寄与度(歴史的な排出量)
気中に排出され続ければ,生態系や人類に重大な
や対処能力(経済力)において先進国と途上国の
影響を及ぼす気候変化が生じるおそれがある」と
間に差異がある,というものである。この考え方
する第1次評価報告書を1990年に発表した。それ
にもとづき,先進国は枠組条約の附属書にリスト
を受ける形で,1992年に気候変動問題への取り組
アップされ,先導的な役割やより厳しい義務が課
みの大枠を示す枠組条約が採択された。
せられた。
しかし,枠組条約採択当時とは世界経済や温室
35,000
30,000
20,000
5,000
0
日本
10,000
途上国
その他非附(非附属書Ⅰ国)
中国
68億トン
属書Ⅰ国
→189億トン
中国
その他附属
その他附属
書Ⅰ国
先進国
書Ⅰ国
(附属書Ⅰ国)
ロシア
142億トン
→142億トン
米国
米国
1990
2012
(図1),先進国と途上国を固定的な概念としてと
らえるのではなく,時代の変化に対応できる柔軟
なアプローチを求める声が先進国から高まった。
ロシア
日本
百万トン/年間
25,000
15,000
効果ガスの排出構造が大きく変わりつつある現在
その他非附
属書Ⅰ国
(CAIT Climate Data Explorer. 2015. Washington, DC:World
Resources Institute に基づき算出)
図1 年間温室効果ガス排出量:1990年と2012年
11
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
他方,中国,インドなど図2の第4象限に位置す
る国々は,累積的な排出量(図3)や1人あたり
の排出量でみると,依然,先進国と途上国との違
いは大きく,また,国内に多くの貧困層を抱える
途上国に対して排出削減策を求めることは不公平
であるとし,二分論の妥当性を主張した。
EU(欧州連合):28
か国
AILAC(独立中南米カリビア
ン諸国連合):6か国
:39か国
AOSIS(小島嶼国連合)
LDC(後発発展途上国)グルー
プ:49か国
アフリカ・グループ:53か国
LMDC(同志途上国)グルー
プ:十数か国
先進国の歴史的責任 先進国ー途上国の二分論
主な構成国
AILCA:コロンビア,コスタリカ,チリ,ペルー;AOSIC:小島嶼諸国;BASIC:ブラジル,
南アフリカ,インド,中国;EIG:スイス,メキシコ,韓国等;LDCグループ:後発発展途上国;
LMDC: インド,中国,サウジアラビア,ボリビア等;UG:米国,日本,カナダ,豪州等
(Blaxekjær & Nielsen
(2014)
に加筆)
9%
ロシア
G77及び
BASIC:4か国
中国
(132か国)ALBA(米州ボリバル同盟)
:
6か国
中国 5%
注1)縦軸は「共通だが
差異ある責任および各国
の能力」原則の解釈を表
し,横軸は構成国を表す。
注2)各グループの参加
国は重複を含む。
その他
17%
米国
31%
OECD欧州
31%
カナダ 2%
インド 2%
日本 3%
EIG(環 境 十 全 性
グループ)
:5か国
途上国(構成国)
先進国(構成国)
UG(アンブレラ・グ
ループ)
:9か国
カナダ 2%
インド 2%
日本 3%
先進国のリーダシップ 途上国も能力に応じた取り組み
その他
21%
米国
28%
OECD
8%
欧州
9%
ロシア
25%
中国
1751年~1991年
(累積排出量は 8100億トン)
1751年~2009年
(累積排出量は 1兆2600億トン)
(ORN L(2013), EIA(2011, 2012)に基づき算出)
図2 「共通だが差異ある責任および各国の能力」原則の
解釈をめぐるおもな交渉グループのポジション
図3 エネルギー起源からの累積CO2排出量
こ う し た 対 立 構 造 の な か, カ ン ク ン 会 議
対して脆弱な小島嶼諸国などが(図2の第1象限
(COP16,2010年)で,先進国のみならず途上国
に位置する国々)
,新興国に対してもそれ相応の
に対しても2020年までの排出削減・抑制行動を求
貢献(排出削減努力および途上国支援)を求める
めるカンクン合意が採択された。また,この合意
など,これまでの二分論からの脱却の必要性が指
には,地球温暖化による気温上昇を産業革命前に
摘されるようになったことがある。
比して2℃未満に抑えるという2℃目標が盛り込
まれた。この2℃目標は前述の枠組条約の究極目
パリ協定の内容
的にある「安全なレベル」に対する具体的な解釈
COP21では,各国が批准手続きを必要とする
といえる。2℃目標の達成には,途上国による排
国際条約であるパリ協定と,パリ協定の細則など
出削減・抑制が不可欠となるとの認識が,途上国
を規定する政治合意であるCOP決定を採択した。
が排出抑制行動をとることに合意した背景にある。
パリ協定は排出削減のみならず,適応や損失と損
ただし,カンクン合意は,それまでに比べて希薄
害,技術,資金などを含む包括的な枠組みである
化したとはいえ,二分論にもとづく先進国と途上
が,以下におもな内容を記す。
国との間の差異化が残る形であった。さらに,こ
排出量削減
の合意は自主的な枠組みであり,また,大多数の
パリ協定は,その目的として,気温上昇を「2
先進国および途上国が自主的な排出削減目標・行
℃よりも十分低く」抑え,さらには「1.5℃未満
動を掲げたが,2℃目標達成には遠く及ばない状
に抑えるための努力を追求する」ことを明記し,
況であった。
その目的に向けて,世界全体の排出量をできるだ
そのため,先進国と途上国が参加する新たな法
け早く減少に転じさせ,今世紀後半に人為的な排
的枠組みの構築に向けた国際交渉が2011年のダー
出量と吸収量のバランスをとるための方策を講じ
バン会議(COP17)から開始された。その成果
るとしている。これは,2℃目標達成には,2050
がパリ協定である。ほぼすべての国々が参加し,
年までに2010年比でほぼ半減(40−70%削減)し,
気候変動への取り組みを法的拘束力のある国際条
2100年までにほぼゼロにする必要があるとする
約のなかで規定することになった点で,パリ協定
IPCC第5次評価報告書のメッセージに沿うもの
はこれまでの国際的な取り組みの総決算といえる。
である。
先進国がリーダーシップを発揮することを前提に
また,各国は「自らが定める貢献」(国別目標)
途上国も含めたすべての国が能力応分の貢献を求
をCOP21前に申し出ることが求められていた。日
められることになった。その背景には,途上国の
本を初め,中国,米国,欧州連合(EU)
,インド
なかからも,海面上昇などの気候変動の悪影響に
など,170か国程度が国別目標案を提出した(現
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
12
10億トン
(CO2換算)
70
60
IPCCの「対策なし」シナリオ
(4.1~4.8度の上昇)
現状政策のみを行った場合の
排出経路
がそれぞれ独立した項目として位置づけられ,そ
の国際的な取り組みの強化が認識された点がある。
として扱うことや,先進国の法的責任や補償を求
40
120億トンのギャップ:
条件付きの国別目標案も
実施した場合
年間排出量
「損失と損害」については,とくに小島嶼諸国
50
140億トンのギャップ:
条件なしの国別目標案を
実施した場合
2℃目標と整合性のある排出経路
0
2020
が枠組条約の交渉時から,適応とは独立した課題
めていた。他方,先進国,とくに米国は政治的な
問題(補償額が巨額になる懸念)や科学的な問題
(特定の損失や損害を引き起こした排出者を特定
30
2030
(年)
(UNEP Gap Report 2015 より作成)
図4 2℃目標と国別目標案との間のギャップ
13
と,適応しきれずに発生してしまう「損失と損害」
することは不可能であること)を背景に,責任や
補償という考え方自体を否定していた。
最終的には,
「損失と損害」を独立した問題と
在は188か国が提出済み)
。しかし,依然,すべて
して認識し,この問題に対応するための国際的し
の国別目標案を合計しても,1.5℃抑制はおろか,
くみを整えていくこととなった。他方,パリ協定
2℃抑制にも達しないことが明らかとなった(図
とは別の政治合意(COP決定)のなかで,パリ
4)
。そこで,5年ごとに世界全体での削減努力
協定における「損失と損害」条項の規定が,責任
の進捗状況の確認作業を行い,それをふまえる形
や補償の根拠とならないことが同意された。
「損
で,各国は国別目標を5年ごとに提出することが
失と損害」が国際条約のなかで規定されることは,
義務づけられた。その際,各国の取り組みは段階
途上国にとって大きな成果であったが,責任や補
的に強化することが求められている。また,長期
償が今後,議論の対象外となることは大きな譲歩
的な低排出発展戦略の策定・提出も求められてい
となった。
る。このことにより,各国は,2℃目標と整合性
資金
のある長期的な排出削減戦略を描き,そのなかに
2020年以降,誰が,どれだけ資金供与を行うの
5年ごとの短期的な削減目標を位置づけることが
かが争点となった。インドや中国は,先進国のみが
可能となる。つまり,パリ協定は各国が国内対策
資金供与の義務を負うべきであり,公的資金を中
強化を進めるうえでのペースメーカーとしての役
心とする具体的な供与額の提示を求めた。他方,
割を果たすことになる。
先進国は,先進国のみの負担や具体的な数値目標
なお,パリ協定のもとでは,各国は国別目標を
には難色を示す一方,民間資金の重要性を強調した。
準備,提出,維持し,およびその目標達成に向け
最終的には,先進国の途上国への資金提供を行
た国内措置の追求が義務づけられているが,目標
う義務があらためて規定される一方,その他の国
の「達成」については法的義務を課していない。
に対しては提供を奨励するという形で認めること
小島嶼諸国やEUなどは,目標達成についても法
となった。また,先進国は,多様な資金源やチャ
的義務を課すことを求めた。しかし,パリ協定に
ンネルを通じた資金動員を率先して行い,その動
そのような内容が含まれると,米国では共和党が
員規模は継続的に引き上げられることが求められ
多数派を占める上院を通じた批准手続きが必要と
た。一方,具体的な数値目標はパリ協定に含まれ
なる。それを避け,大統領権限で受諾したいオバ
ず,法的拘束力のないCOP決定で,2020年まで
マ政権の意向を反映する形で決着した。
に官民合わせて年間1000億ドルを動員する目標を
適応策と「損失と損害」
2020年以降も2025年まで継続し,2025年までに新
パリ協定が,幅広い途上国からの支持を得た理
たな全体目標を設定することが規定された。この
由の一つとして,
気候変動の悪影響への「適応策」
ように,それぞれが妥協する形で,決着地点が見
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
いだされた。
COP21の成果と課題
前述の通り,パリ協定は,各国に対し長期的な
削減戦略をつくりつつ,2020年以降,5年ごとに
短期的な削減目標を提示し,それを引き上げてい
パリ協定の最大の成果は,化石燃料に依存しな
くことを求めている。日本も,2050年80%削減
い社会づくりに向けて世界が動き出すことを,長
を温暖化対策計画案に盛り込んだことで,パリ協
期的シグナルとして発信したことといえる。気温
定が求める国内基盤づくりの第一歩を踏み出した
上昇を具体的なレベル(1.5℃も視野に入れつつ,
といえる。
2℃以下)に抑えるために,いつまでにどのよう
2050年80%削減は第4次環境基本計画でも掲げ
な規模の削減を行うか(今世紀後半に世界の温室
られているが,これは民主党政権下で閣議決定さ
効果ガス排出量を実質的にゼロ)を示した。そし
れたものである。今回,自民党・公明党政権でも
て,世界全体で,選挙などの短期的な政治サイク
その方向性が確認されたことになり,今後は,党
ルに左右されずに,継続的な対策強化を行ってい
派をこえた建設的な議論が期待される。
くことに合意した。低炭素社会づくりにはエネル
その際,これまでのように「いまできること」
ギーシステムのみならず社会インフラ全体の大転
を積み上げるのではなく,2050年80%削減という
換が必要となり,長期的な投資判断が求められる。
目標に向けて,何年までに何が必要になってくる
こうした投資判断に必要となるシグナルをパリ協
のかというバックキャスト的な視点が重要となる。
定は送っている。
まさにこの点が,パリ協定が各国に求めているこ
しかし,パリ協定は各国が取り組みを強化する
とでもある。
際のペースメーカーとしての役割を果たしても,
また,COP21での合意事項のもと,日本を含
その取り組みの内容を規定したり,確実に実施さ
む各国は,2020年に,2030年目標案を見直すこ
れることを担保したりするものではない。パリ協
とが認められている。この見直し機会における目
定が実効性のあるものになるかどうかは,各国が
標の引き上げは,法的義務のあるものではない。
長期的な排出削減戦略とそれを実現するための具
しかし,2℃目標の達成に向けては,少しでも早
体的政策を導入し,民間企業が中長期にわたる低
期の取り組み強化が必要とされており,パリ協定
炭素事業に投資できる環境を早急に構築できるか
の実効性に対する最初の試金石となる。日本も,
否かにかかっている。そして,そのような国内で
2050年80%削減の通過点として2030年目標を考え
の 取 り 組 み 強 化 に 裏 打 ち さ れ る 形 で, 各 国 が
た場合,現在の目標を引き上げる余地はある。日
2020年以降に削減目標を実際に強化できて初め
本が,パリ協定の実施に向け,どのように貢献で
て,パリ協定の実効性についての評価がなされう
きるかが注目される。
る。真の評価はこれからとなる。
パリ協定を受け,2016年3月4日に「地球温暖
勢志摩サミットまでに閣議決定されることとなっ
た。同計画案は,すべての経済部門や国民運動を
含む網羅的なものであるが,注目される点として,
日本の温室効果ガス削減の取り組みとして,2020
年目標,2030年目標に加え,2050年に80%削減を
めざすことが明記された(図5)
。
CO2
換算)
化対策計画」の政府案が公表され,同年5月の伊
百万トン(
日本の国内動向と今後の課題
1,600
2020年3.8%削減
(2005年比)
1,400
1,200
1,000
800
2030年26%削減
(2013年比)
600
400
200
2050年80%削減
(2005年比)※
※基準年は示されていないが,
便宜上2005年比としている
0
(年)
1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050
(国立環境研究所のデータをもとに作成)
図5 日本の温室効果ガス排出推移と削減目標
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
14
◆新しい公民教育のためのワークシート◆ 『高等学校 新現代社会』p.6~17
環境問題解決のために講じるべき対策は何か
課題1
教科書p.6
~ 7を読みながら,内容の要点を整理しましょう。
(1)
p.6 ~ 7「現代社会の諸問題の特徴」を読みながら,次の文章の空所に適語を補いましょう。
私たちが生きる社会ではつねに[ ]のなかで生きていくことを私たちは自覚し,行
動しなければなりません。
(2) p.7「現代社会をとらえる視点」で示された「幸福」,「正義」,「公正」は「現代社会」を学ぶとき
の大切な視点になります。ここでは「幸福」と「正義」を中心に,(1)で考えた内容を「あなたの街
に大型ショッピングセンターの建設が予定されたら?」を例に確認しましょう。教科書の「声」にある
八つの立場から,それぞれの立場での「建設の賛否」,「声」から読み取れる自らの「幸福」と「この場
合の幸福・正義を導く価値観」
,
「正義」を考え,すでに表にある内容を参考にして,書き込みましょう。
「声」の立場
建設の
賛否 幸福
①ショッピングセンターを
建設したい業者の声
この場合の幸福・
正義を導く価値観
正義
よい財やサービスを安く提供で
自由な競争
きたものが利益を伸ばす。
②建設予定地近くでアルバ
イトをする学生の声
③建設予定地の近くに住む
家族Aの声
子どもが健康で安全にくらす。
渋滞や騒音の悪影響を受けな 規制による平等
い。
④建設予定地の近くに住む
高齢者の声
今までどおりの生活を維持する。
⑤建設予定地近くで商店を
営む人の声
仕事が増える。
店がもうかる。
⑥建設予定地近くの建設業
者の声
仕事が増える。
仕事を受注して利益を伸ばす。
会社がもうかる。 需要の創出を歓迎する。
⑦建設予定地の近くに住む
若者の声
消費者としての選択肢が増え
る。
⑧建設予定地の近くに住む
家族Bの声
規制による平等
自由な競争
(3) ショッピングセンターの建設が決定されたとして,(2)の①~⑧のなかから1人を選び,選んだ
番号の立場を異なる立場の人に納得してもらえるためにはどのような配慮が必要か,考えましょう。
15
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
課題2
教科書p.8
~ 11を読みながら,内容の要点を整理しましょう。
(1)
p.8「人間の営みと環境問題」
,
「地球温暖化」を読みながら,次の文章の空所①,②に適語を補い
ましょう。
私たちは長い間,自然にはたらきかけ豊かな社会を築いてきましたが,はたらきかけが行き過ぎて環
境問題を招きました。地球規模の環境問題は個々の問題が相互に関連し合って問題群をなしているので
① といわれ,対策を怠ってきたことも問題になっています。①の代表例として
は,地球全体で気温が高くなる地球温暖化があります。地球温暖化の要因には② を
消費することで発生する二酸化炭素などの温室効果ガスの増加も大きく関係しているといわれます。
(2)
p.10 ~ 11「地球温暖化への国際的な取り組み」を参照しながら「温暖化対策」を考えましょう。「温
暖化対策」には大きく二つの対策があり,一つは温室効果ガスの排出量を抑制する方法を考えることで
す。もう一つは,温暖化しているという現状に合わせて社会や経済のしくみを改めることです。
① 温室効果ガスの排出量を抑制する方法の具体例をあげましょう。
あなたの意見
ほかの人の意見
② 温暖化に合わせて社会や経済のしくみを改める具体例をあげましょう。
あなたの意見
ほかの人の意見
課題3
教科書
p.8 〜 17 の『テーマ 環境』のなかから「地球温暖化」以外の事例を一つあげ,その問題
を解決するために講じるべき対策を提言しましょう。
あなたの意見
ほかの人の意見
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
16
◆新しい公民教育のためのワークシート◆ 『高等学校 新現代社会』p.6~17
環境問題解決のために講じるべき対策は何か 指導上の留意点・解答
全国公民科・社会科教育研究会授業研究委員会 ■指導案1(基礎的基本的な理解を重視した指導案)
導入
分
5
展開
分
Ⅰ
15
学習項目
学習内容
・ 教 科 書p.6 ~ 7 を 通
・具体例にそくして現代社会にどのよう
読する。
・ 課題1 (1)
な問題があるかを知る。
・さまざまな立場から
・教科書p.6~7の「あなたの街に大型
「幸福」,「正義」,「公
ショッピングセンターの建設が予定さ
・まず個人の作業で表の空所を埋め,次
れたら?」を活用してさまざまな立場
にグループで話し合いながら表を完成
正」を整理し考察する。
の意見があることや立場が異なると利
展開
・教科書p.8~ 11を通
読する。
分
Ⅱ ・「温暖化対策」を提
20
言する。
まとめ
分
10
指導上の留意点
・ 課題1 (2)
させる。細部にはこだわらない。
害が対立することもあることを知る。
・ 課題1 (3)
・環境問題と具体例としての地球温暖化
・ 課題2 (1)
にそくして事実関係を確認する。
・温暖化対策を二つの立場から考え,意
・ 課題2 (2)
・まず個人の作業で自分の意見を書き,
見を交換しつつよりよい結論をめざし
次にグループで意見交換しながらほか
て討論する。
の人の意見を書く。
・グループで話し合っ
・グループ内での協議のようすの概要や
たことや内容を発表
おもな意見,合意点と対立点などを手
する。
短かにまとめ発表する。
・おもだったグループに発表させる。時間
があればすべてのグループに発表させる。
・ 課題3 は宿題
■指導案2(言語活動や探究活動を重視した指導案)
導入
学習項目
・予習内容を確認する。 ・教科書にそくして現代社会にどのよう
5
な問題があるかを知る。
分
展開
分
Ⅰ
15
展開
・予習として 課題1 (1)と 課題2(1)
を課し授業冒頭で内容を確認する。
・教科書p.6~7の「あなたの街に大型
「幸福」,「正義」,「公
ショッピングセンターの建設が予定さ
・まず個人の作業で表の空所を埋め,次
れたら?」を活用してさまざまな立場
にグループで話し合いながら表を完成
の意見があることや立場が異なると利
させる。細部にはこだわらない。
正」を整理し考察する。
・「温暖化対策」を提
言する。
・ 課題1 (3)
・温暖化対策を二つの立場から考え,意
・ 課題2 (2)
見を交換しつつよりよい結論をめざす。 ・まず個人の作業で自分の意見を書き,
おもな意見,合意点と対立点などの要
まとめ
点をまとめ発表する。
・地球環境問題の解決
分
に向けた提言を考え
発表する。
・ 課題1 (2)
害が対立することもあることを知る。
・グループ内での協議のようすの概要や
分
17
指導上の留意点
・さまざまな立場から
Ⅱ
20
10
学習内容
次にグループで意見交換しながらほか
の人の意見を書く。
・おもだったグループに発表させる。
・まず個人で考える。
・ 課題3
・グループ内で報告し合い,解決策を取
・おもだったグループに発表させる。
りまとめ発表する。
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
■ワークシート解答例
課題1 (1)他者との関係
(2)①賛成/仕事が増える。会社がもうかる。
②賛成/アルバイト先が増える。収入が増える。/
⑧賛成/休日に遊びに行けるところができる。/余
暇を楽しむゆとりをもつ。
(3)①渋滞・騒音対策を行う。 ②商店街で
より高い賃金を支払ってくれる雇用主のもとで働く。
もアルバイトをする。 ③渋滞・騒音対策を求め
/自由な競争 ③反対/安全で静かな生活をお
る。 ④商店街がさびれないように補助を求める。
くる。 ④反対/便利な生活をおくる。/規制
⑤店がつぶれないように補助を求める。 ⑥騒音
による平等 ⑤反対/今までどおりの生活を維
対策を行う。 ⑦商店街の店も利用する。 ⑧公
持する。 ⑥賛成/自由な競争 ⑦賛成/ほ
共交通機関を使って渋滞をつくらない。
しいものがいつでもすぐに買える。/自由な競争 課題2 (1)①地球環境問題 ②化石燃料
■指導上の留意点
「現代社会」は正解が複数存在する問題を考えた
を意識して授業者と生徒で考えてみることが最も
り,正解が存在しない課題を考えたりする科目です。
大切なことなのです。ここで示すのは一例にすぎ
つまり「考えること」そのものが大切なのです。今
ません。正解を一つ強制するようなことにならな
回のワークシートは,
「考えること」の大切さを自
いように注意してください。
覚し,日ごろから「考えること」を惜しまない「学
び」の姿勢を身につけさせる第一歩となる授業を念
頭においています。
課題2 (2)ここでは気候変動に対する「緩和」
策と「適応」策を考えることになります。
① 教科書ではp.10本文に京都議定書の話が出て
課題1 (2)教科書に掲載されている範囲で八つ
いますから各国が削減目標を掲げて二酸化炭素
の立場を整理させてみましょう。やりにくいこと
の排出量を抑制することはすぐ指摘されること
は「反対」の立場の人が,どういう価値観にたっ
でしょう。さらに,二酸化炭素を地中に閉じ込め
て「反対」するのか考えないと「幸福」が見えな
る技術,効率的な発電メカニズム,植林や自然
いところでしょう。とはいえ,表を埋めていくと
エネルギーの利用促進,大容量でロスのない蓄
「賛成」の立場の人が「自由」や「競争」の原理
電池の開発などが指摘されるでしょう。
「経済成
にたっていることや,
「反対」の立場の人が「平
長率を抑制する」などの極端な意見もかまいま
等」を重視していることなどが明らかになりま
せん。今日の私たちの社会の根底から考え直さ
す。
「自由」も「平等」もともに現代社会におい
て普遍性のある価値ですが,立場が違うと正当性
ないと解決策はないのかもしれないからです。
② 地球温暖化で何が起こっているか,あるいは
の根拠も異なることがわかります。教科書p.7の
起こりそうかを考えて提言することになります。
記述にしたがえば,
「人それぞれおかれた状況が
例えば気温上昇で九州にマラリアが発生するか
異なる」と「人によって扱われ方が異なる」わけ
もしれないとなると予防接種を実施することに
で,数の論理でいけば多数派に正当性はあります
なります。永久凍土がとけて地盤が軟弱になる
が,少数者に配慮することによって正当性を維持
のであれば土木技術の分野での対策が求められ
することもあります。教科書p.62側注のポジティ
るでしょう。高潮や洪水に備えて堤防を補強し
ブ(アファーマティブ)
・アクションが,この一
たり,気温上昇に耐えられる農作物への品種改
例です。
「幸福」
,
「正義」
,
「公正」は「現代社会」
良などが指摘されるでしょう。
という科目全体を貫く視点となる重要な概念です。
課題3 ここでは課題1~2の成果にもとづき
留意すべきことは,「幸福」
,
「正義」
,
「公正」と
「地球温暖化」以外の地球環境問題の事例を一つ
はそれぞれ何かを考えることでは決してないとい
あげ,解決策を提言させます。「地球温暖化」の
うことです。これらの概念を使って現代社会の諸
ように抑制する方法と対応するしくみを考えると
課題を考えることを通して,現代に生きる私たち
いう二つになる場合もあれば,解決策は一つしか
の生き方とあり方を考察することが,学習指導要
ないというものもあるでしょう。正解は一つでは
領に掲げられた
「現代社会」
指導上の要点なのです。
ありません。取りあげた事例が適切であれば,そ
(3)現代社会の授業を一年かけて展開していく
なかで,考える軸となる「幸福」
,
「正義」
,
「公正」
の事例の解決策として有効な解決策を提言できる
かが要点となります。
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
18
新聞スクラップ 2015.11〜2016.1
続・高校生も有権者
▲
トピックス
●18歳選挙権 教材配布
(中国新聞2015.11.18より)
●軽減税率食品全般で合意
●18歳の1票 国の財政
(読売新聞2015.12.13より)
(読売新聞2015.11.7より)
■授業での活用■
前号に続き,18歳選挙権について新聞記事を活用した
明確な記載や部分的な引用,個人的事情,事実と意見の
授業の考察をしたい。
混同がある場合があり,誤解や偏見を生む可能性がある。
選挙制度や投票方法の解説は,
「政治・経済」
「現代社会」
その点,新聞はある程度客観性があり,個人の投書が分
の教科書や資料集,総務省と文部科学省が製作した副読
かれている。特定の課題について各党がどのような政策
本『私たちが拓く日本の未来』に掲載されている。いず
を主張しているか,一つの紙面で理解できる場合が多い。
れもよくくふうされてわかりやすく,授業で補足説明を
一 例 を あ げ る と,2015年12月13日 付 の 新 聞 各 紙 は,
すれば政治がにがてな生徒でも理解できるだろう。
2017年4月の消費税10%引き上げと同時に導入する軽減
だが主権者教育の本質は,生徒自身が社会を動かし,
税率について報じている。これは高校生にも直接影響す
かえていける主体なのだと自覚させることである。自分
る身近な問題であり,政党によって意見が分かれている
と社会のかかわり方,社会のあり方を考察することでも
ため思考力や判断力を養う題材として好適である。記事
ある。そうした主権者意識の醸成には,客観的知識だけ
をプリントにのせて配布し,各党の主張とその論拠をま
でなく,当事者としての思考力や判断力が必要となる。
とめさせると,与野党の立場の違いも把握できる。
当事者意識が欠落すると,棄権や感情的な投票に結び
なお,判断は感性ではなく,理性を用いることを強調
つく。それを防ぐには,
「倫理」や「現代社会」の倫理
したい。これは「芸術作品の評価」と「資格試験の合否」
分野がとくに効果的である。例えば実存主義を学ばせ,
を例示し,それぞれ感性と理性のどちらで判断するかを
主体性について考察させる。サルトルの思想,アンガー
問えばすぐに理解できる。消費税の問題なら,
感性で
「税
ジュマンなどは絶好の教材である。社会契約説や社会主
金は安いほうがいい」と速断しないよう,税のあり方や
義,アーレントやマザー =テレサの思想も社会への責任
国家財政の現状に対する幅広い視野をもった判断が必要
を負い動かせる存在として人間をとらえており,主体的
だ。幸い,2015年11月4日付読売新聞のように,そうし
な主権者意識を養える。
た点をわかりやすく解説した記事も各紙に掲載されてい
思考力と判断力は,具体的な政治的課題について考え,
るので,教科書や資料集とあわせて活用できる。
自分の意見に近い政策をもつ政党を選ぶ,という経験を
選挙権以外の参政権にも注目させたい。政治への参加
積むと身につけることができる。これは候補者個人の政
は,投票だけではないのである。これは請願権を学ばせ
策から選んでも可能だが,政党なら数が少なく情報も入
るとよい。民主政治の本来の姿は直接民主制であるから,
手しやすいので調べやすい。
意見を直接議会へ伝えられる権利を学ぶ意義は大きい。
あるいは特定の政治的課題から入らず,理想の社会を
教科書には請願権がのっており,資料集や『私たちが拓
考えさせる方法もある。小論文を書かせたり,暮らしや
く日本の未来』には解説もある。具体的な資料としては,
環境,
外交,地域の課題などテーマを設定したワークシー
署名運動を報じる新聞記事が活用できる。
トをくばって,望ましい社会を表現させてもよい。それ
さらに社会科の授業に加え,
「総合的な学習の時間」
を各政党の政策と対比させるのである。
やLHR,学校行事など,さまざまな場面で社会への参
重要なのは,教員が政党の政策を解説するのではなく,
画意識を高めさせる必要がある。記述が簡潔でわかりや
生徒自身に調べさせることだ。その際に有用なのは新聞
すい新聞記事の特性を生かし,他教科の教員と協同で取
記事である。インターネットも利用できるが,問題点も
り組む教育活動でも新聞を活用したいものである。
多い。検索で個人のブログなどがヒットすると出典の不
19
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
(千葉県立市川東高等学校 星野景一)
現場 から
議員インターンシップで若者と政治を結ぶ ~主権者意識をはぐくむために~
〈訪問先〉NPO法人ドットジェイピー 理事長 佐藤 大吾 さん
18歳選挙権が成立し,多くの若者が選挙に出向き,自身の声を政治に反映することへの期待が高
まっている。一方で,その背景には若者の低い投票率という切迫した問題がある。
こうしたなか,NPO法人ドットジェイピーでは,大学生が長期休暇中に参加できる2か月間のイン
ターンシップを中心に,政策立案コンテストやウェブメディアへの政治情報の提供を行っている。なぜ
それらの取り組みが若者の投票率の向上に結びつくのか,佐藤理事長にお話を伺った。
■“議員を知る”ことで身につく主権者意識
■政治という言葉を因数分解して伝えること
ドットジェイピーは,さまざまな体験型プログラムを
議員の生の姿を知ることで,若者の主権者意識は劇的
通じて若者の投票率向上をめざしています。そのなかで
に向上します。一方,若者が集まる場として最たる例で
も議員インターンシップは,地方議員や首長,国会議員
ある学校現場に,政治の生の姿を直接もち込むことはき
のもとで実務研修を行って“議員を知る”取り組みです。
わめて困難です。なぜなら,大半の若者は政治という言
若者は,自分たちが選挙で選ぶ議員がどのような存在な
葉そのものにネガティブなイメージを抱いており,
「政治
のかをほとんど知りません。知らないからこそ,積極的
ってよくわからないし近寄りがたい」
,
「思想をうえつけ
に選挙に足を運ばないのだと私たちはとらえています。
られて危ない」などと大きく反発してしまうからです。
議員とじかに交流することで,二つの観点から若者の政
したがって,いかに政治を別の言葉におきかえるかが重
治参加の意識を高めることができると考えています。
要になります。政治は「議員」
,
「主権者」
,
「投票」など,
一つ目は,議員を「壁打ち相手」として自分の意見を
学校でも教わるさまざまな要素から構成されます。それ
形成することができる点です。選挙になると,いきなり
らの要素に因数分解してかみ砕いて伝えることが,結果
見ず知らずの(多くの場合年の離れた)候補者のなかか
的に若者の政治意識を高めることにつながるのです。
ら自分の考えに合う人を選び出さなければなりません。
同時に,政治にネガティブなイメージをもたせないよ
どこから手をつけていいかわからないまま投票しなけれ
うに伝えるくふうも大切です。「選挙に行きなさい」と
ばならない状況は,選挙の経験のない若者にとってはな
口をすっぱくして言っても,言われる立場からすると義
かなか酷なことです。その点,議員と交流していれば,
務をしいられているように聞こえ,いやけがさしてしま
政治のこと,地域づくりや町づくりについての考え方の
います。そうではなく,「18歳になったら選挙に行ける
手本に触れることとなります。そこを出発点として「自
ようになるんだよ」とうながしたほうが,権利の意識が
分はどうだろうか」と考えるようになれば,その議員の
芽生えて投票に行く気になるのではないでしょうか。
考えに共感するなり反発するなりして,自らの意見を形
政治側が発信する生の情報は,そのマイナスイメージ
成することができます。議員というわかりやすいモデル
から,なかなか若者には届きません。しかし,伝え方を
を通じ,政治を自分のこととして考えられるようになれ
くふうすれば,そのメッセージに対する関心をよぶこと
ば,主権者意識も自然と身につくと考えています。
は可能です。議員インターンシップも政治を因数分解し
二つ目は,議員という職業を知ることで,政治そのも
て伝える重要な手段ですが,インターネットなどの若者
ののイメージが上がるという点です。私たちは,政治を
に訴求力のあるツールで政治の声を届けることも,政治
取り巻くマイナスイメージこそ「投票しても何も変わら
を身近に感じてもらうための有効な手段です。これから
ない」という空気をつくり出している原因だととらえて
も,若者の投票率の向上のために,政治情報の翻訳機・
います。インターンシップ参加前の学生に意識調査を行
増幅器としての役割を果たしていきたいと考えています。
うと,政治や議員に対するイメージは軒なみ低いのが現
状です。しかし,実際に議員とともに活動すると,彼ら
■18歳選挙権への期待
が本気で地域や国をよくしようと汗を流していることに
18歳選挙権の成立によって,今までになく政治参加がポ
すぐ気づきます。朝早くからビラくばりや演説を行い,
ジティブにとらえられていると感じます。18歳だけでなく
他方で夜遅くまで支援者の方々とミーティングをしてい
それに近い年齢の若者にも,その重要性が確実に届いて
るようすは,普段メディアが報じる不祥事や議会でもめ
いるでしょう。議員インターンシップは,政治への印象を
るシーンからは想像できない姿です。議員について何も
かえ,自らの意見をもつまたとない機会です。政治をどこ
知らない若者に政治の一次情報に触れる機会をつくるこ
から勉強すればいいかわからない人こそ,まずは現場の議
とは,政治へのイメージをポジティブなものにかえ,若
員の姿を見てください。そして,その経験を実際の投票行
者を選挙に導いてくれると期待しています。
動につなげてもらえればうれしく思います。
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
22
現場 から
インタビューはp.22
議員インターンシップで若者と政治を結ぶ ~主権者意識をはぐくむために~
■20代の若者が投票に行かない理由
(上位5項目)
どの党の議員もよく
わからないから
30%
住民票を移していな
いから
26%
投票に行くひまがな
いから
8%
0
(複数回答)
10
回答率
20
■議員インターンシップ参加学生への意識調査
政治に対するイメージ
100
(%)
7%
80
22%
59%
よい
16%
参加前
悪い
どちらかと
いえばよい
33%
回答数:720
参加後
30%
49%
60
40
どちらかと
いえばよい
44%
よい
13%
参加前
悪い
どちらかと
いえば悪い
54%
20
0
1%
6%
回答数:720
参加後
19%
60
32%
40
20
0
48%
参加前
34%
66%
参加後
現代社会へのとびら❖2016年度1学期号
12:00
会議や勉強会の合間に昼食
〈総務省,文部科学省「私たちが拓く日本の未来」を参考に作成〉
⃝議会/委員会傍聴
議員の出席する議会や委員会を傍聴する。
⃝調査活動
データの収集や,各機関への問い合わせなどを行い,政策立案のサ
ポートをする。
⃝街頭演説
議員といっしょに街頭で演説を行う。
⃝広報活動
チラシや政策報告書のポスティングなどを行う。
⃝地域イベント参加・施設訪問
地域のお祭りなどのイベントに参加する。また,その他公共施設な
どに訪問し,現場で働く方々から意見を聞く。
⃝支持者訪問
支持者のところへあいさつに行く。
★参加者の声 関口
采己 さん
高校生のころに参加した震災ボランティアの経験か
ら,メディアの情報だけではわからない現場のようす
選挙に対する意識
100
(%)
80
13:00
本会議に出席
⃝事務作業・接客
資料作成,電話の応対,来客対応などを行う。
議員に対するイメージ
100
(%) 2%
80
10:00
国会の委員
会に出席
■受け入れ先議員事務所での活動例
どちらかと
いえば悪い
54%
40
0
3%
15:00
来客との
意見交換
30(%)
〈「第18回統一地方選挙に際しての若者の政治意識調査」より〉
6%
6:30
地元駅で演説
8:00
政党の会
議に出席
9%
投票所が近くにない
から
20
19:00
地元で支持者
と会合
20%
自分が投票しても何
も変わらないから
60
■ある国会議員の一日
を体感したいと考え,議員インターンシップに参加し
1%
ました。政治に対してはもともと漠然とした不信感を
行こうと思
わない
都合がよけ
れば行く
必ず行く
回答数:550
抱いていましたが,議員さんや事務所の方々が熱心に
活動する姿にふれ,政策を積極的に評価・選択しよう
という意識に変わりました。現在はドットジェイピー
の学生スタッフとしても活動しているので,多くの同
世代の有権者に,政治参加の重要性を伝えていきたい
と考えています。
資料提供:NPO法人ドットジェイピー
HP:http://www.dot-jp.or.jp/
Fly UP