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JEM搭載超伝導サブミリ波リム 放射サウンダ(SMILES)による観測 (初期
JEM搭載超伝導サブミリ波リム 放射サウンダ(SMILES)による観測 (初期成果) 塩谷雅人(京大), SMILESミッションチーム 発表者: 佐野 琢己 (JAXA 宇宙科学研究本部 ISS 科学プロジェクト室) Who am I ? (SMILESサイエンス推進体制) JAXA 宇宙科学研究本部 ISS 科学プロジェクト室が中核となって、SMILES のサイエンスを推進している 有人宇宙環境 プログラムマネジャ 利用プログラム ISS 科学 宇宙環境利用科学 プロジェクト室長 プロジェクト SMILES サイエンスチーム SMILES プロジェクトマネジャ プログラム 管理 代表研究者(塩谷) ミッションリーダ(高柳) 科 ISS/JEM との サイエンス 学 本 インテグレーション チーム 部 バス系開発 ・システム インテグレーション 運用 サブミリ波 応用技術研究 チーム(菊池) 大気科学研究 チーム(小池) 検証実験 チーム(塩谷) データ処理部 開発・運用 チーム(高柳) アルゴリズム 研究チーム(笠井) 2 SMILES ミッションの目的 (SMILES: Superconduc=ng Submillimeter‐Wave Limb‐Emission Sounder) • 4K機械式冷凍機と超伝導技術を用いたサブミリ波帯リム 放射サウンダの世界で初めての軌道上技術実証 4K級機械式冷凍機: 超伝導ミクサ: 高い冷却能力を持ちなが ら,重さ90kg,消費電力 270Wと,小型・低消費電 力を実現 理論的な限界に迫 る低雑音を実現 (野辺山宇宙電波 観測所で製作) • 成層圏大気微量気体成分のグローバルな時空間分布に 関する観測実験 [標準プロダクト] – 1スキャン: O3, HCl, ClO, CH3CN, O3 isotopes, HOCl, HNO3 – 複数スキャン(積算):HO2, BrO [研究プロダクト] volcanic SO2, H2O2, UTH, Cirrus Clouds 3 JEM/SMILES の打ち上げから設置 • Antenna: 40 cm x 20 cm • Weight: < 500 kg • Mission Life: 1 year SMILES 9月11日 SMILESはH‐IIB を使ったH‐II Transfer Vehicle (HTV)で打ち上げられた 9月18日 HTVはISSとドッキング 9月25日 SMILESはJEMに設置された 4 JEM搭載超伝導サブミリ波リム 放射サウンダ(SMILES)による観測 (初期成果) 塩谷雅人(京大), 高柳昌弘(JAXA), 村山泰啓(NICT), 小池真(東大),菊池健一(JAXA), 笠井康子(NICT), 長浜智生(名大), 佐野琢己(JAXA), SMILESミッションチーム JEM曝露部搭載の第1期ミッション Superconducting Sub millimeter-wave LimbEmission Sounder (SMILES) Engineering Model MAXI SMILES SEDA-AP Monitor of All-sky X-ray Image (MAXI) Thermal & Structure Model Space Environment Data Acquisition (SEDA) Flight Model Solar flare induced neutron detected by BBND in US Lab”Destiny” 6 SMILES観測の概要 • 超伝導センサを用いた624- 650 GHz 帯における超高感度測定 • 大気のリム観測に基づく鉛直プロファ イルの測定(高度分解能約3km) • 国際宇宙ステーションでの実証・地球 大気のグローバル観測(65N- 38S) ⇒ オゾン化学に とって重要な役 割を果たすラジ カル分子種を ターゲットとした 観測をおこなう 7 成層圏オゾン問題の科学的背景 • オゾンホールの問題は,大掴みなところで解 決したという理解 • 特定フロンの排出が規制されたものの,オゾ ンホールの回復の兆しは明瞭でない • 将来予測に向けた素過程の精緻化が要求さ れるようになってきている • オゾンホールなど個別の事象の理解だけでな く,地球大気質変動を広く捉えることの必要性 8 オゾン層の現状と将来予測 中・低緯度(北緯60度から南緯60度まで)のオ ゾン全量の変化(WMO,2006) オゾン層回復の将来予測モデル計算による と,1980年代のオゾン量に戻るのは2060年か ら2070年ごろと推定されているが,それらの予 測には大きなばらつきがみられ,塩素系や臭素 系の反応の不確定性がそのおもな要因と考え られている. 南半球極域で観測されたオゾン全量 の最小値(黒丸)とモデル計算の結果 (色つきの印)(WMO,2006) 9 成層圏における塩素と臭素 塩素 臭素 X + O3 -> XO + O2 XO + O -> X + O2 (X=H, OH, Cl, Br, NO) 10 SMILESの狙う科学目標 1. 無機塩素の化学 • ClO と HCl の比率 • HOCl の生成 • 全球の ClO 分布 2. 臭素収支 3. HOx 収支 4. 巻雲の観測 5. オゾン同位体 (6. 対流圏-成層圏交換 (上部成層圏のオゾントレンド) (下部成層圏のオゾントレンド) (ClOの背景値) (寿命の短いソースガス) (HOxジレンマ) (異相反応と放射収支) (質量に依存しない化学) (オゾンフラックス)) 11 臭素収支の不確定性 Bry from CH3Br & Halons + 8 pptv Bry Source BrOの観測から,成層圏の臭素量を説明するには,寿命の長いソースガス (CH3BrとHalon)だけでなく,寿命の短いソースガスの寄与(5 pptv)が必要 (Salawitch et al., 2005). 12 全球のClO分布 ? 中緯度におけるオゾン破壊を 定量化するためにはClOの背 景値が重要である.ところが, その高精度全球分布は観測さ れていない. Cl + CH4 → HCl + CH3 ClO + OH → HCl + O2 ClO + OH → Cl + HO2 6% 94% ClO + HO2 → HCl + O3 1-5% ClO + HO2 → HOCl + O2 95-99% SMILESの高感度観測によってこ れまでにない精度でClOの背景 値を観測することができる.さら に,ClO, HCl, HOCl, HO2 の同 時観測によって成層圏の塩素化 学に重要な寄与ができる. 13 上部成層圏における塩素の存在様態 observations (SAGE, SBUV, Umkehr) model without (2) model with (2) 1979-1990 Cl + HO2 → HCl + O2 6% ClO + OH → HCl + O2 (1) (2) 気球観測から得られている [ClO]/[HCl]の比の値は, (2)の反応を取り込むことで, 上部成層圏のオゾントレン ドをよりよく説明しうる. SMILESのClOとHClの同 時高感度観測によって,そ (WMO, 1998) の比に対する定量的な論議に 決着をつけることが可能.14 モデル計算による成層圏BrO分布 例) 10hPa,10月1日12Z におけるBrOのスナップショット 15 観測対象分子の精度検証 80 70 高 度 [km] 60 50 40 2% 30 5% 30% 20 10 50% 80% O3 HCl ClO CH3CN HNO3 HOCl HO2 BrO 18OOO 17OOO Retrieval error : 40N, March : daytime (single-scan) O17OO Temp 16 SMILES による試験観測 • 9月26日:主電源の投入 – その後ハードウエ アのチェック • 9月28日:冷却機が4Kに到達 • 10月10日:マニュアルによる初の大気観測 (数プロファイルのみ有効) • 10月12日より試験運用ながら連続的な観測 を開始(10月17日あたりまで) • 10月19日 ファーストライト発表 • 11月6日 定常運用移行 17 冷凍機の動作 将来の4K級冷凍機利用に向けて軌道上実証に成功した 18 JEM/SMILES データフロー& Level 2データ処理システム JAXA/TKSC L1B Data Server UOA EOS SMILES Raw data L1B DPS-L0/L1 Off-line JAXA/ISAS L2 Data Server Users Internet • DPS-L2 Internet L2 Inversion Control DPS-L2 Data transfer L1B • Forward Model Iteration L2 Data Processing Data Handling & Visualization L2 RAWデータはつくば宇 宙センタにあるDPSL0/L1で受信,輝度温 度スペクトルデータ (level 1B データ)に変 換される. DPS-L2 では,level 1B データをネットワーク越 しに自動的に取得し, 各観測点における観測 分子の高度プロファイ (Level 2データ)を算出 する.Level 2 データは DPS-L2のもつデータ配 布機能によりユーザに 公開される. 19 UOA: User Operation Area, EOS: Experiment Operations System, DPS: Data Processing System バンド A のスペクトル 20 バンド B のスペクトル 21 バンド C のスペクトル 22 データ処理の流れ SMILESによるリム放射観測 O3 HCl Level 1 data: スペクトルデータ HOCl BrO Level 2 data: 鉛直プロファイルデータ 23 Band A ‐ day=me 24 Band A ‐ nighame 25 Band C ‐ day=me 26 Band C ‐ nighame 27 O3 のリトリーバル結果 28 HCl のリトリーバル結果 29 28kmにおけるオゾン分布 30 O3の緯度高度断面 31 MLS O3との比較 32 ClOの緯度高度断面 33 MLS ClOとの比較 34 HClの緯度高度断面図 35 BrOの高度緯度断面図 36 他衛星データとの比較 H37Cl SciSAT‐1/ACE FTS赤外域太陽掩蔽法とのcoincidence 37 同 O3 38 SMILESデータ処理の状況 39 JEM/SMILES Science Promotion H/W Development Receiver Development SMILES Science Team Algorithm Research Data Handling Facilities Validation Participation of Outside Researchers (Project Collaboration Researchers) RA Release Research Community Atmospheric Science Research JAXA←→Research Community 40 ま と め • JEM/SMILES は ISS に取り付けられ,4K 冷却に到達し,順調 にセンサの動作を開始. • 予想よりも精密なスペクトルが取得され,これまでにない高 精度で,微量成分の高度分布を導出. • 算出が困難と思われた微量成分 (BrO など) のデータも取得, (従来は,これらの成分の発する微弱な電磁波に対して測定装置のノイ ズが大きすぎたため,検出が難しかった) • 今後 1 年程度で以下の研究に取り組み,地球環境問題の解 決に役立てる. – オゾン層問題の鍵となる,成層圏オゾンに関連した化学過程に関す る精密なデータを提供し,成層圏オゾン回復予測の高精度化に貢献. – 成層圏オゾン化学が対流圏に及ぼす影響について,観測データの解 析を進めることで、地球温暖化予測の精密化に貢献. 41 42 SciSAT‐1/ACE Pegasus XL ½ 打ち上げ級小型衛星, 太陽掩蔽法FTS 43