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「ゐる」と「をり」に つ いて 重今昔物語集を中心にしてー

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「ゐる」と「をり」に つ いて 重今昔物語集を中心にしてー
11
﹁明 海 日 本 語 ﹂ 第 一号
( 一九 九 五 ・三 )
り ﹂に
つ い て
・存 在 詞 ・今 昔 物 語 集 ・語 法
今 昔 物 語 集 を 中 心 に し てー
" ﹁ゐ る ﹂ ・ ﹁を り ﹂
1
﹁ゐ る ﹂ と ﹁を
キ ー ワ ー ド
今 昔 物 語 集 の ﹁あ り ﹂ と ﹁ゐ る ﹂ に つ い て は 既 に 述 べ た
谷
光
忠
彦
﹁あ り ﹂ の 主 体 が 人 ・動 物 ・物 と 幅
広 く 用 い ら れ る の と 対 照 的 で あ る 。 こ の ﹁ゐ る ﹂ の 用 法 に
動 物 であ る。 こ の点 が
が ら そ の用 例 を み るが 、 主 体 が 人 と 動 物 であ る点 で は殆 ど
類 似 し た も の に ﹁を り ﹂ が あ り 、 今 昔 物 語 集 に も わ ず か な
同 じ と み て よ い。 し か し、 たし か に 二者 は同 じ 語 源 であ る
(1 )
が 、 そ の 際 に ﹁ゐ る ﹂ に は ﹁座 る ﹂ の意 味 と ﹁存 在 ﹂ の 意
は ﹁ゐ る ﹂ に は ﹁居 給 ヘ ル﹂ な ど
ら し き こ と は散 見 す るが 、 今 昔 物 語 集 の用 例 を みる 限 り で
(2 )
味 と 二通 りあ る こと を 述 べ た 。 そ の中 で、 両者 の頻度 数 の
ら れ て も 、 ﹁を り ﹂ に は そ の よ う な 用 例 は み あ た ら な い こ
﹁給 ふ ﹂ の つ い た 形 は み
比 率 は (表 1 ) に み る 通 り 、 天 竺 震 旦 部 で は 前 者 が 大 き い
が 本 朝 部 にな ると 大 幅 に 逆 転す る。 し かも 存 在 の主 体 は
と か ら 、 両 者 の間 に は 用 法 上 の 相 違 が あ る か と 思 わ れ る 。
以 下 そ れ に つ いて述 べ て み よ う。
︹
巻 二十 四 、 二十
(仏 三 例 を 含 む ) と
﹁亦 塵 居 テ 不 巾 ル 時 ニ モ 腹 立 テ 不 鳴 ナ リ
四 話 ﹂︺ の 一例 を 除 い て 他 は す べ て 人
13
12
「ゐ る 」 と 「を り」 に つ い て
る
座
在
存
(1)
(1)
70
(4)
27
(1)
88
(5)
52
(1)
179 (6)
6
13
(2)
31
(1)
26
24
(3)
37
(1)
5 1 (5)
76
話
地
345(23)
80 (10)
2 02(11)
242
(8)
524 (29)
53
(1)
197 (7)
42
(7)
157 (12)
216
(8)
415(27)
104(13)
2 39(12)
269 (9)
612(34)
る
座
計
意富牟盧夜爾
岐伊理衰理
久夫都都伊
(4 )
伊斯都
伊 理 衰 理 登 母 (入 り 居 り
比 登佐 波 爾
久米 能 古 賀
(来 入り 居 り ) 比 登 佐 波 爾
意佐加能
とも ) 美 都 美 都 斯
都伊母知宇知豆斯夜麻牟
﹁を り ﹂ と 訓 ま せ て い る
訓 点 資 料 で は ﹁を り ﹂ の 用 例 は め ず ら し い よ う で あ る が
(5 )
(大 乗 大 集 地 藏 十 輪 経 十 輪 品
次 の よ う に ﹁居 ﹂ ま た は ﹁庭 ﹂ を
も のを散 見 す る。
第 二)
悪 行 者 は同 じ く 居 れ ば
(大 慈 恩 寺 三 藏 法 師 伝 巻
(法 華 義 疏 序 品 初 )
天 下 の名 僧 を 召 し て居 ら しむ
第 一)
此 の龍 はそ の中 に居 り
ヲリ
﹁を り ﹂ と も 訓 ん だ こ と は 明 白 で
(法 下 八 九 )
歓 智 院 本 ﹃類 聚 名 義 抄 ﹄ に も
独 り 林 藪 に 庭 り (大 唐 西 域 記 巻 第 七 )
ま た
居
の 表 記 が あ り 、 ﹁居 ﹂ を
あ り 、 文 献 以 前 か ら あ っ た こ と は 想 像 に 難 く な い が 、 ﹁ゐ
る ﹂ ほ ど に は 広 く 用 い ら れ な か った 感 が あ る 。 し か し 、 そ
れ に は何 んら か の理 由 が 考 え ら れ な け れ ば な ら な い。 そ こ
主 語 が 人 間 であ るも の
で まず 今 昔 物 語 集 の中 に用 いら れ た 用 例 を みる と 、
A
然 ラ バ 其 二坐 シ テ 被 居 タ レ カ シ (右 同 ) 巻 二 十 九 十七話
同 所 ニ モ 不 令 居 ズ (猿 が ) 巻 五 - 二 十 三 話
話
木 ノ ウ ッ ホ ニ付 テ 居 リ (こ う も り が ) 巻 四 - 十 二
主 語 が 動 物 であ るも の
九-十七話
廻 リ モ 元 キ御 堂 ノ廊 ナ ド ニ被 居 テ ハ (右 同 ) 巻 二 十
C
が 僧 に対 しで ) 巻 十 三- 二話
一語
木 ヲ 焼 テ 火 二向 テ 居 リ (女 が ) 巻 十 七 - 四 十 三 話
馬 飼 ノ男 居 リ (男 が ) 巻 二 十 二 ー 七 話
話
弥 ヨ狂 フ様 ニシ テ 語 リ 居 リ (敵 が ) 巻 二 十 三 - 十 五
侵 ヌ仰 ヌ シ テ 語 リ 居 レ バ (敵 が ) 巻 二 十 三 ー 十 五 話
が鳥を)巻十三-四十三話
木 ノ 辺 ニ ハ草 ヲ モ 不 生 サ ズ 鳥 ヲ モ 不 居 ズ シ テ (女 子
只 二居 ル ヲ (男 が ) 巻 二 十 三 - 十 九 話
十 九 ー 三 十 一話
其 ノ 切 タ ル 足 ヲ海 二浸 シ テ 平 ガ リ 居 リ (虎 が ) 巻 二
跨 ノ 有 ル ニ子 ヲ 炮 テ 居 リ (猿 が ) 巻 二 十 九 - 三 十 五
其 の他
右 の例 を みる と
﹁ら れ ﹂ を 付 し た も の 三 例 を 除 い て 目 上
﹁を り ﹂ の 主 語 と な る も の は 人 と 動 物 で
に 対 し て は 用 い な い よ う で あ る 。 こ れ を ﹁ゐ る ﹂ と 比 べ て
あ る 。 ま た、 敬 語
十 五話
男
太 子 受 取 リ テ 平 地 二居 セ ッ (樹 神 が 太 子 を ) 巻 三 -
話
話
て) 巻 二十 九- 十 七 話
忽 二可 被 居 キ 所 コ ソ元 ケ レ (住 持 が 旅 の 老 僧 に 対 し
敬 語 の例
遂 二京 ニ モ 否 不 居 テ (夫 が ) 巻 三 十 - 五 話
皆 投 テ 居 ル ヲ (弱 い 男 が ) 巻 二 十 九 - 二 十 四 話
只 向 ヒ 居 リ (男 が ) 巻 二 十 九 - 二 十 三 話
十 四話
畳 ヲ 本 ノ 如 ク 敷 テ 居 ル ニ (殿 上 人 が ) 巻 二 十 八 i 二
今 四 五 日 許 ハ此 ヲ 居 ラ ム ト (患 者 が ) 巻 二 十 四 - 八
泣 ツ ・返 テ 屈 リ 居 リ (女 童 が ) 巻 二 十 三 - 十 六 話
D
此 レ汝 ガ 所 居 ニ ア ラ ソ ト (頼 光 が 智 光 に ) 巻 十 五 ー
汝 ヂ 我 レ ニ暫 ク 不 近 付 ズ シ テ 遠 ク 去 テ 可 居 シ (仙 人
総
(6)
在
存
(7)
計
小
190
﹁を り ﹂ は 古 く は 古 事 記 に み る 。
る
座
(1)
計
小
11
会
在
存
18
1
二
12 6(11)
(3)
2 9 (5)
82
計
本 朝 部 後 半
2 2 ^ '3 1
明 レ将 レ打 二其 土 雲 '之 歌 日
B
62
合計
) 内 は 動 物 を 主 語 とす る
(
合
本 朝 部 前 半
1 1 ^ '2 0
天 竺 ・震 旦
1 { '1 0
(今 昔 物 語 集 )
る
ゐ
1
表
14
15
「ゐ る 」 と 「を り」 に つ い て
(6 )
み る と 、 (表 2 ) に み る 如 く 動 物 を 主 語 と す る も の は 巻 に
旧 妻 ヲ 召 取 テ 本 ノ如 ク令 居 メ テ 養 ヒ ケ レバ ヰ タ マ ヘ リ
た る 対 象 を 高 く 待 遇 し え な い 性 質 を も って い る の で は な い
の方 が 高 い。 こ の こ と は
此 二暫 ク居 給 ベ シ (巻 十 六 - 第 十 五 話 )
人 々 ⋮ 堂 二向 テ 居 給 ヘリ (巻 十 二 - 第 三 十 六 話 )
彼 ノ 山 ノ 中 ノ堀 居 給 ヘリ (巻 十 一- 第 三 話 )
(巻 十 - 第 二 十 五 話 )
か と 思 わ れ る 。 し か し 、 ﹁を り ﹂ に は ﹁被 ﹂ (ら れ ) を 付 し
心 細 ク怖 シ ク 思 エテ 居 給 ヘ ル ニ (巻 二 十 二- 第 七 話 )
今 ハ此 二居 給 ヒ タ レ (巻 十 六 - 第 三 十 三 話 )
﹁を り ﹂ は ﹁ゐ る ﹂ に 比 べ て 主 語
て 敬 語 を 表 わ し た も のが 三 例 あ って 、 こ の こ と が 先 の 判 断
よ っ て 出 入 は あ る が 全 体 的 に み る と 、 そ の 比 率 は ﹁を り ﹂
を 鈍 ら せ る 。 た だ 、 こ の 三 例 は い ず れ も 巻 二 十 九 の ﹁摂 津
四- 第 三 十 四 話)
(巻 二 十 二 - 第 八 話 )
惟 高 新 王 ト 申 ケ ル 人 ノ 山 崎 二居 給 ヘ リ ケ ル 所 二 (巻 二
今 昔 公 任 大 納 言 春 比 白 川 ノ家 二居 給 ヒ ケ ル 時 (巻 二 十
住 職 は ﹁﹃鍾 堂 ノ 下 二居 タ ラ ム﹄ ト 云 ツ レ バ 宿 シ ツ 。﹂ と い
十 四- 第 三 十 六 話)
大 臣 寄 テ 引 ヘテ 居 給 ヒ ヌ レバ
う よ う に 老 僧 に 対 し て 決 し て敬 語 を 用 い な い な ど特 殊 な情
国 来 二小 屋 寺 一
盗 γ鍾 語 第 十 七 ﹂ の 説 話 で あ っ て 、 小 屋 寺 の
況 の 中 で 用 い た も の で あ る 。 そ れ だ け に ﹁を り + ら る ﹂ の
其 レ ニ ヤ ガ テ 居 給 タ レ ト テ 居 ヘ ッ (巻 二 十 九 - 第 十 七
住 職 が 旅 の老 法師 に 対 し て のこ とば であ るが 、 陰 で は こ の
形 が わ ず か な が ら も 当 時 は 一般 的 な 用 法 と し て 存 在 し た の
話)
(巻 二 十 九 - 第 三 十 九 話 )
右 の 例 の通 り ﹁ゐ 給 ふ ﹂ は 仏 に 対 す る ほ か 、 か な り の 目
今 朝 ヨ リ 居 サ セ給 へ り 也
か ど う か は 直 に は 決 め が た い 。 そ れ に 対 し て ﹁ゐ る ﹂ は
﹁ゐ + 給 ふ ﹂ の 形 で 敬 語 を 表 わ す こ と が 一般 的 に 行 わ れ て
いた。
身 挙 テ 居 給 ヘ ル 座 不 安 ズ (巻 一- 第 四 話 )
上 に 対 し て 用 い る こ と が 多 い よ う で あ る が 、 ﹁ゐ る ﹂ を 単
n
5
1
11一
2
14 7
13 7
51
54) 43
01
31D 92
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21
2010
1
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1
168
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42
11
11
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10
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3 24 25
5
26 27
22
28
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2)
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18
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22 5
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1 3 1 1 3 1 5 1 4 6 3 1 1
(
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(
!\
1
ー
366
10
5
1
662
行 基 其 ノ 所 二居 テ 此 ノ謄 ヲ 食 給 ヒ ツ(巻 十 一- 第 二 話 )
此 ノ 人 ノ 居 給 ヘ ル 室 ハ広 サ方 丈 也 (巻 三 - 第 一話 )
2
独 で 用 い る 場 合 で も 目 上 に 対 し て 次 の 例 の よ う に 一般 に 用
37
舎 利 弗 衣 ヲ補 テ 居 給 ヘリ (巻 三 - 第 五 話 )
1
25
3 7.
1
1
25
1
12
1
■⊥
1
-← - ←
-⊥ -⊥
12
-
1L一
22
23
い る な ど 幅 の 広 い用 法 が 目 立 つ。 こ の 点 に 於 て ﹁を り ﹂ の
51
2
-←
QU 1
5
つρ
3
1
4
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)
5
1
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4
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U211 6 16
(
(
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01
2)
)
1
1
21
5357(
362
(
(
12
10
2
用 法 と 区 別 でき る。
存
計
座
存
計
実 二帝 尺 仙 ノ前 二居 給 ヘリ (巻 五 - 第 三 十 話 )
計
地
座
計
存
座
計
3 2 ) 1 4 ) 1 1 1
2︼
QU
(
(
り0
1
(
1)
134
(
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1
(
679
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24
つ々
2一
45
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9 8 ) 2 4 6 ) 2 9
存
11
3 4
56)
213
(
222
)11
(
(
座
計
存
座
123
23
樟 ノ 音 不 聞 ズ 成 ル マデ 礼 ミ 入 テ 居 給 ヘリ (巻 十 - 第 十
話)
ヰ
テ
会
計
地
弗
ル
人
(
( ) 内= 動物
ヰ
会
巻
合計
(き
ヨ≦
§
き
1三
9弓
(ヲ≧1 (ξヨ (§≧1 (2)
(ムき1 (三亭1 (≡≧1 (7)
、4 851 99
11 261 27 1 52} 1901
190 2421 531 2161 2691 11 6} 71 13} 79} 921 141
(i≡1 (手さ1 (き≡1 ≦亨弓1(ξ2≧1(識 1 ≦5亭(葦ヱ≧Il書壬≧L
2L lq 、8! 32 露劃 1書≧ 34旨葦ヨ{ §1
小計
(人 )
ノレ
(1
1(五亭1 5
81 12
(三ヨ (1)
51
(圭
ξ
亭
脇
(1) (三亭1
(i三ヨ(三さ≧
31
76
小計
31 71 121 191 81 14i 22
11 2
(iヨ (}≧ (茎≧ (9∼i (易 (18ヨ (9≧1 (三≧1(i8≧
ノ
」・計
ゐ る ・て ゐ る ( 今 昔 物 語 集 )
2
表
16
17
﹁を り ﹂ の 相 違 に つ い て 他 文
大 師 可 為 キ 方 元 ク テ 仏 ノ 中 二居 テ (巻 十 一- 第 十 一話 )
次 に こ の よ う な ﹁ゐ る ﹂ と
(7 )
献 の用 法 を み て み よう 。
ま ず 万 葉 集 で は ﹁を り ﹂ の 主 語 と た る も の を 四 種 類 に 大
A
B
C
D
自 分 とす るも の
天 の川 川 門 八 十 あ り 何 処 に か 君 が み 船 を わ が 待 ち 居
ら む (巻 十 ・二 〇 八 二 )
目 上 でな い他 者 と す る も の
(巻 五 ・八 七 七 )
人 も ね のう ら ぶ れ を る に竜 田 山 み 馬 近づ かば 忘 ら し
なむか
動 物 とす るも の
婆 羅 門 の作 れ る小 田を 含 む 烏 ま な ぶ た腫 れ て は た ほ
こ に を り (巻 十 六 ・三 八 五 六 )
非 情物 と す る も の
(巻 十 四 ・三 三 八 ○ )
さ き た ま の 津 に を る 船 の風 を い た み 綱 は 絶 ゆ と も 言
な絶えそね
計
1
1
1
-⊥
1 6
1⊥
11一
1
9
1
7
4
1
1
1
7 7 2
-・
一-←-
1
2
2
1
8
2
2
4
6
1
1
7
8
3
1
1一
計
2
3 2 3 1 7 2 9 8 4 9 8 2 3 3 8 8 6 1 8 3
1
1⊥1 1
1
1
1 2
1 2 34 5 6 7 89 0 12 34 5 6 7 8 9 0
1 1 1 1 11 1 1 1 1 2
対 し て の 敬 意 は 、 今 昔 物 語 集 の 例 と 同 様 に ﹁ゐ る ﹂ + ﹁給
(動 作 を 含 む ) に
ぼ し う た が へり 。 (桐 壷 ) 主 体 - 源 氏
(8 )
(9 )
つ と に 居 給 ひ て (乙 女 ) 主 体 i 夕 霧
体i男
(伊 勢 二 十 一) 主 体 ー
長 岡 と い ふ 所 に 家 つ く り て 居 り け り (伊 勢 五 十 八 ) 主
(伊 勢 四 十 九 ) 主 体 - 男
む か し 、 を と こ妹 の いと を か しげ な りけ る を見 を り て
主体-男
い と 暑 き こ ろ ほ ひ に 夜 ゐ は 遊 び を り て (伊 勢 四 十 五 )
つ れ づ れ と こ も 居 り け り (伊 勢 四 十 五 ) 主 体 - 男
る と も ﹂ (伊 勢 二 十 三 ) 主 体 - 女 自 身
﹁君 が あ た り 見 つ 二 を ら ん 生 駒 山 雲 な か く し そ 雨 は 降
女
住 ま ひ し﹂ と い ひ てな が め居 り
﹁思 ふ か ひ な き 世 な り け り 年 月 を あ だ に ち ぎ り て 我 や
十 四 ) 主 体 1 み ち の国 の女
よ ろ こ ぼ ひ て ﹁思 ひ け ら し ﹂ と ぞ い ひ 居 り け る (伊 勢
を と こ弓 錬 を 負 ひ て 戸 口 に 居 り (伊 勢 六 ) 主 体 - 男
な例をみる。
ま た、 伊 勢 物 語 、 三 宝 絵 詞 、 和 泉 式 部 日 記 に は次 のよ う
(10 )
こ の 御 子 の ゐ 給 ふ べ き な め り と 一の御 子 の女 御 は お
氏 物 語 に は 八例 あ るが 、 自 分が 主 語 と な って い るも の はな
な り 。 (乙 女 ) 主 体 ー タ 霧 の 師 大 内 記
り つ \ ぞ を る 。 (宿 木 ) 主 体 - 浮 舟 一行
こ の人 の聞 か む も つ\ま し と 思 ひ て か し こ ま り てを り
舟 ) 主 体 -随 身
り 。 (蜻 蛉 ) 主 体 - 下 繭 女 房
右 に み るご と く 源 氏 物 語 に用 いら れ た
分 の 低 いも の ば か り で あ る 。 目 上 の 存 在
す べ て 他 者 で あ り 、 し か も 使 者 、 随 身 ・下 繭 の 女 房 な ど 身
﹁を り ﹂ の 主 体 は
﹁⋮ え 人 も 聞 き つ け 給 は ぬ な ら む か し ﹂ と 思 ひ 困 じ て を
(浮
わづ ら は しげ に思 ひ て 馬 ども 引 き さけ な ど し つ 、か し こま
と 額 に 手 を あ て 、念 じ 入 り て 居 り 。 (玉 葛 ) 主 体 - 三 条
﹁⋮ 三 条 ら も 随 分 に さ か え て か へり 申 し は 仕 う ま つ ら む ﹂
入 り て 居 り 。 (玉 葛 ) 主 体 - 侍 女 三 条
﹁⋮ あ な む く つけ ﹂ と て 、 な ほ さ ら に 手 を ひ き 放 た ず 拝 み
く
大 将 盃 さ し 給 へば い た う ゑ ひ し れ て を る 顔 つ き い と や せ
る 。 (明 石 ) 主 体 i 二 条 院 か ら の 使 者
に驚 き 怖 ぢ てを る 顔 の いと から き にも 心 細 さ ぞ ま さ り け
﹁⋮ い か づ ち の 静 ま ら ぬ こ と は 侍 ら ざ り き ﹂ な ど い み じ 様
(帯 木 ) 主 体 ー 藤 式 部 丞
﹁こ れ よ り め づ ら し き こ と は さ ぶ ろ ひ な む や ﹂ と て を り
ふ ﹂ が 用 い ら れ て 、 ﹁を り 給 ふ ﹂ の 用 法 は み た い。
ど 自 分 を 中 心 と し た 歌 が 多 い こ と に よ る も の であ ろ う 。 源
例 も みな いが 、 万 葉 集 で は 大 多 数 を 占 め る のは、 相 聞 歌 な
な い。 た だ 主体 が 自 分 自 身 であ る も のは今 昔 物 語 集 に は 一
る 。 つ ま り ﹁を り ﹂ は 敬 意 を 表 わ す べ き 対 象 に は 用 い て い
は 八 六 % で あ り 、 他 は 目 上 で な い 他 者 と 動 物 ・非 情 物 で あ
表 3 に み る よ う に ﹁を り ﹂ の 主 体 が 自 分 自 身 で あ る も の
巻
「を り」 の 主 語 た る対 象
い。
右 のA B C D の使 用 度 数 を みる と 次 の通 り にな る 。
3
2.2 %
4
2.9 %
8
5.8%
4
2.9%
119
86.2%
其 の他
非 情物
物
目上 で な
分 い他者
動
自
を り (万 葉 集)
表 3
別 す る こと が でき る。
「を り」 に つ い て
「ゐ る 」 と
18
19
「ゐ る 」 と 「を り」 に つ い て
女 のあ る 所 に 来 て 向 ひ 居 り け れ ば
- 男
(伊 勢 六 十 五 ) 主 体
(伊 勢 六 十 五 ) 主 体 - 女
﹁海 人 の刈 る 藻 に す む 虫 の 我 か ら と 音 を こ そ な か め 世
をば う ら み じ﹂ と泣 き を れば
﹁さ り と も と 思 ふ ら ん こ そ 悲 し け れ あ る に も あ ら ぬ 身
(伊 勢 六 十 九 ) 主 体 - 男
を 知 ら ず し て ﹂ と 思 ひ 居 り (伊 勢 六 十 五 ) 主 体 ー 女
いと 心 も と な く て待 ち居 れば
か のを と こ は 天 の 逆 手 を う ち て な む の ろ ひ 居 るな る
(伊 勢 九 十 六 ) 主 体 - 男
﹁野 と な ら ば う づ ら と な り て 鳴 き を ら ん か り に だ に や
は 君 は 来 ざ ら む ﹂ (伊 勢 百 二 十 三 ) 主 体 - 女 自 身
行 基 ス ク ル所 ニ ハ家 ニヲ ル人 ナ ク (三 宝 絵 詞 )
カ シ コナ ル女 ノ頭 ニケ タ ノ モ ノ ・ア フ ラ ス リ テ ヲ ル ト
イ ヘ ハ (三 宝 絵 詞 )
﹁お な じ 枝 に 鳴 き つ 、一を り し ほ と 二 ぎ す 声 は か は ら ぬ
し かも 、 殆 ど が 田 舎 女 か 召 使 い の よう な も のが 主 体 と な っ
﹁ゐ ﹂
て い て、 高貴 な 人物 が 主 体 と な って いる も の はな い。 高貴
+ ﹁給 ふ﹂ の 例 が 一例 あ る 。
な 人 物 と 思 わ れ るも の に対 し て は先 に述 べた よう な
二条 の后 の いと こ の女 御 の御 も と に仕 う ま つる や う に
て ゐ 給 へり け る を ⋮ (伊 勢 六 )
(U )
ま た、 動 物 や 非 情物 が 主 体 と な って いる も のも み な い。
今 昔 物 語 集 以 後 の 作 品 に つ い て の 若 干 の 用 例 を み る と 、﹃方
﹃雨 月 物 語 ﹄ な ど も す べ て 他 者 で 目 上 で な い も の に 対 し て
丈 記 ﹄ ﹃閑 居 友 ﹄ ﹃曽 我 物 語 ﹄ ﹃中 華 若 木 詩 抄 ﹄ ﹃雑 兵 物 語 ﹄
用 い て いる も のば か り で あ る 。
(方 丈 記 ) H
世 に 仕 ふ る ほ ど の 人 た れ か 一人 ふ る さ と に 残 り を ら む
主 君 の か げ を 頼 む ほ ど の 人 は 一日 な り と も と く 移 ろ は
む と はげ み 時 を失 ひ 世 に 余 さ れ て期 す る 所 なき も のは
愁 へな が ら 止 ま り 居 り (方 丈 記 ) O
あ り と しあ る 人 は皆 浮 雲 の思 ひ を な せ り。 も と よ り こ
(敦 道 親
王自身)
の 所 た を る も の は 地 を 失 ひ て愁 ふ 。 (方 丈 記 ) O
も の と 知 ら ず や ﹂ (和 泉 式 部 日 記 ) 主 体 - 鳥
あ ふ みち は神 の いさ めに さ はら ね ど 法 のむ し ろ に を れ
家 の内 に を れ ば 忽 に ひ し げ な ん と す 。 走 り 出 づ れ ば 地
割 れ 裂 く 。 (方 丈 記 ) O
お のれが 身 数 な らず し て権 門 のか た は ら に居 る も のは
(和 泉 式 部 日 記 ) 主 体 - 敦 道 親 王 自 身
伊 勢 物 語 の 例 は ﹁を り ﹂ の 主 体 を 自 分 と し た も の は 二 例
深 く よ ろ こ ぶ 事 あ れ ど も 大 き に た のし む に 能 はず 。
ば た 二 ぬぞ
であ って他 はす べ て物 語 中 の話題 の男 であ り 、 女 であ る。
ま た む か し に は に す な ん 思 ひ を り け る 。 (閑 居 友 )下 九
こ の 人 た 、 お ほ か た の な さ け か と は お も へと も さ す か
も し 貧 し く し て 富 め る 家 のと な り に居 るも のは朝 夕す
を う か が いけ れ ど も
宵 の程 は 御 前 に 砥 候 し を れ ば 夜 ふ け て ま か り い づ る 所
(方 丈 記 ) O
ぼ き 姿 を 恥 ぢ て へ つ ら ひ つ 、(出 で 入 る 。 (方 丈 記 ) H[
こ と さ ら に 無 言 を せ ざ れ ど も 独 り 居 れ ば 口業 を 修 め つ
事 な し 。 (方 丈 記 ) O
蝿 め はど こ に居 る そ
矢箱持く
精 練 ナ ル 行 者 ノ居 ル 処 ナ レ ハ (中 華 若 木 詩 抄 )
堂 ハ平 生 居 処 ヲ指 ス (中 華 若 木 詩 抄 )
(曽 我 物 語 )
も し せば き 地 に居 れ ば 近 く 炎 上 あ る 時 そ の災 を逃 る 、
べ し。 (
方 丈 記) 日
さ て は か の 葛 の 陰 に 何 ぞ 獣 の 居 る も の よ (伊 曽 保 物 語 )
(伊 曽 保 物 語 )
と 呼 れ と も お ら な い所 で (雑 兵物 語 ) 下
ふも と に 一つの柴 の奄 あ り。 す な は ち、 こ の山 守 が 居
る 所 な り 。 (方 丈 記 ) 日
ま こ と に 鬼 の 住 べ き 宿 に 一人 居 る を (雨 月 物 語 ) 蛇 性
の婬
花 の 如 く な る 女 ひ と り ぞ を る (雨 月 物 語 ) 蛇 性 の婬
都 に 出 で て 身 の こ つが い と な れ る 事 を 恥 づ と い へど も
い と 喜 し げ に 鮎 頭 を る (雨 月 物 語 ) 蛇 性 の 婬
いか に い は む や つね にあ りき つね に働 く は養 性 な る べ
帰 り て こ 二に 居 る 時 は他 の 俗 塵 に 馳 す る事 をあ は れ
ち いさげ な る翁 の笑 を ふく み て をれ り
し。 な んぞ いたづ ら に休 み居 ら ん。 (
方 丈記)四
む 。 (方 丈 記 ) 四
福論
福論
誰 か 一統 し て 民 を や す き に 居 し め ん や (雨 月 物 語 ) 貧
(雨 月 物 語 ) 貧
あ は れ な る へき 心 の 中 の な さ け か な と 思 ひ お (を ) り
(閑 居 友 ) 上 十 二
は る かな る所 にあ や し の い ほり む す ひ てた 、 ひと り お
て (閑 居 友 ) 上 十 七
東 に む か ひ て は や 日 の い て た ま へ か し と 思 お (を ) り
故 な き 所 に 永 く 居 ら じ (雨 月 物 語 ) 菊 花 の 約
わ れ も 人 も 思 ひ を り し に (雨 月 物 語 ) 白 峯
宿
庭 竈 の 前 に 円 座 敷 て 茶 を 暖 り 居 る (雨 月 物 語 ) 浅 茅 が
こ の人 に つか は れ て ひ る は 日く ら し と いふ は か り に か
永 く 居 り て 益 な き を 思 ひ て (雨 月 物 語 ) 菊 花 の 約
(を ) り け り (閑 居 友 ) 上 十 二
く つ か は れ を る ら ん 。 (閑 居 友 ) 下 七 主 体 - 馬
2
0
21
「ゐ る 」 と 「を り」 に つ い て
﹁語 り 居 り ﹂ ﹁平 が り 居 り ﹂ が あ る が 、 万 葉 集 に も 複 合 語
今 昔 物 語 集 以 後 の用 例 と し て右 の文 献 を み る と 、 閑 居 友
つを り ﹂ を 熟 合 し た 形 と し て 複 合 語 に 含 め れ ば 五 四 % が 複
表 4 に み る 通 り 複 合 語 は 全 体 の 三 四 % を 占 め る 。 ﹁恋 つ
か の 僧 を 、 ら し め た る (雨 月 物 語 ) 青 頭 巾
の 一例 と 伊 曽 物 語 の 二 例 が 主 体 を 動 物 と す る の に 対 し 、 他
合 語 と い う こ と に な る 。 ま た 、 複 合 語 の 四 五 % は ﹁恋 を
の 例 は 多 い 。 そ の分 類 は (表 4 ) の 通 り で あ る 。
はす べ て 他者 を 主体 と し 、 し か も 目 上 に対 し て 用 いた も の
り﹂と
用 法 の み に 移 行 し て い った の で は な い か と 考 え る 。 し か
﹁を り ﹂ の用 法 は ﹁ゐ る ﹂ よ り も 限 定 さ れ て 他 者 を 低 め た
を り ﹂ ﹁遊 び を り ﹂ ﹁見 を り ﹂ ﹁向 ひ を り ﹂ ﹁た が め を り ﹂
物 語 でも
り ﹂ は 複 合 語 を 形 成 す る こ と が 多 か った よ う で あ る 。 伊 勢
多 い だ け に ﹁恋 ひ ﹂ + ﹁を り ﹂ の 形 が 目 立 つが 一体 に ﹁を
﹁見 つ つ を り ﹂ ﹁鳴 き を り ﹂ ﹁い ひ を り ﹂ ﹁こ も り
し 、 先 に あ げ た 伊 勢 物 語 ・源 氏 物 語 に も こ れ と 同 様 の 傾 向
物語 集でも
﹁を り ﹂ 二 十 二 例 の中 五 例 が 複 合 語 で あ っ て 、
る。 し か し、 今 昔 物 語 集 に は動 物 に用 い た例 は割 合 と し て
こ の傾 向 が 強 い と い え よ う 。 ﹃方 丈 記 ﹄ ﹃閑 居 友 ﹄ ﹃曽 我 物
﹁思 ひ を り ﹂ ﹁の ろ ひ を り ﹂ な ど 殆 ど が 複 合 語 で あ る 。今 昔
は多 い。 こ の傾 向 は表 3 を み る通 り 万 葉 集 に於 い ても 同 様
方 が 意 味 的 に 弱 いこ とが 理 由 と し て考 え られ る。 し たが っ
の こと が いえ る。 従 って今 昔 物 語 集 のあ る 面 で は相 当 古 い
の説 話 に は先 行 文 献 が あ って文 体 も 先 行 文 献 の影 響 を 受 け
て 、 動 詞 連 用 形 + ﹁て を り ﹂ の 形 が 後 に 広 く 用 い ら れ る よ
り 易 い と い う こ と は 複 合 す る 二 つ の 語 の う ち 、 ﹁を り ﹂ の
て い る こ と は周 知 の通 り であ る から 、 こ の点 から 考 え ても
う に な る こ と も う な ず け る 。 万 葉 集 で は ﹁て を り ﹂ は 十 例
語 ﹄ な ど も 同 様 の 傾 向 が あ る 。 ﹁を り ﹂ が 複 合 語 の 形 を と
﹁を り ﹂ が も し 万 葉 集 の 用 法 に 類 似 の 点 が あ れ ば 、 そ れ は
で 七 % に す ぎ な いが 、 源 氏 物 語 で は 全 用 例 八 例 の う ち 七 例
り
り
2
1
1
1
1
3
2
-←
3
11
4
1
2
1
2
1
4
7
1
1
4
1
5
2
-←
1
6
9
-▲
3
QU
2
7
8
4
-⊥
1
1
ーム
8
1
ヨ⊥
9
10
5
2
6
1
4
1
19
11
5
4
1
2
1
5
18
12
1
3
1
2
2
4
13
13
2
1
3
14
1
1
2
15
3
1
1
-▲
3
9
16
2
5
-▲
8
17
2
1
1
1
-▲
6
18
-▲
1
19
1
2
6
一
⊥
10
2
0
2
2
8
3
1
こ の よ う に ﹁を り ﹂ が 本 来 独 立 性 が 弱 い 故 に 複 合 語 や
﹁て を り ﹂ の 形
む し ろ 当 然 と い う べ き で あ ろ う 。 ﹁を り ﹂ の 主 語 と し て の
り
り
他
を
り
2
﹁て を り ﹂ の 形 で あ る 。 今 昔 物 語 集 で も
を と る も の は 七 例 で 複 合 語 よ り も 多 い。
が
語 法 を 内 蔵 し て い る の で はな いか と も 考 え る 。 今 昔 物 語 集
物 に 対 す る 用 法 は 薄 ら い で い た の で はな か ろう かと 考 え
が みら れ る点 から 考 え る と中 古 の初 期 から 既 に動 物 や 非 情
﹁恋 つ つを り ﹂ の 二 種 類 で あ る 。 万 葉 集 は 相 聞 歌 が
は な い。 こ の よ う な こ と か ら 少 な く と も 今 昔 物 語 集 以 降 は
4
対 象 が 動 物 であ る例 が 多 い の は万 葉 集 と 類 似 し て い るが 、
計
ノ
詞 十 を
を
つ
詞 + を
つ
を
1
2
複 合 語 を つく る こ と に 於 い て も 同 様 の 傾 向 が み ら れ る 。 今
恋
動
動 詞 + つ つも を り
(
て
助
昔 物 語 集 に は ﹁を り ﹂ の 複 合 語 は ﹁向 ひ 居 り ﹂ ﹁屈 り 居 り ﹂
其
独
単
語
合
複
恋
巻
8
5.8 %
45
32.6%
10
7.2 %
12
8 .7 %
29
2 1.0 %
15
10.9 %
計
19
13.8 %
り (万 葉 集 )
を
4
表
22
2
3
﹁て を り ﹂ の 形 を つ く り や す い と も 思 わ れ 、 ま た 敬 意 表 現
っ て お ら れ ま す よ ) 資 料 巻 五 ﹂ ﹁オ ジ ー サ ソ オ ソ ナ サ ル ノ
か 。 ﹁お る ﹂ の 敬 意 表 現 は ﹁よ う や っ て ら ん す で (よ く や
て ま (嫁 ) を も ら っ て 大 変 喜 ん で お り ま す 。 (島 根
(あ の 人 が ) お っ て ん な い よ う な り ゃあ
(い
去 年 の 踊 り に ゃ (に は ) だ え ぎ り (だ い ぶ ん ) お り
県)
あれが
ま し た で 。 (広 島 県 )
に あ る 。 こ の こ と は 今 日 の よ う な ﹁て い る ﹂ 用 法 が 当 時 か
も のが 表 2 に み る 通 り 、 平 朝 部 後 半 に 至 っ て 増 え る 傾 向
ま た 、 ﹁ゐ る ﹂ が ﹁て ﹂ に 接 続 し て ﹁て ゐ る ﹂ と た った
の 用 法 と 通 う も のが あ る 。
的 に は対 象 の主 語 を 高 く 待 遇 しな い点 に於 い て今 昔 物 語 集
こ の よ う に 今 日 の 方 言 に み ら れ る ﹁お る ﹂ の 用 法 も 本 質
あ る。
動 詞 + ﹁お る ﹂ は 緊 張 し た 場 面 に は 似 つ か わ し く な い 感 が
敬 意 語 を 下 接 し た 複 合 形 式 で 用 い る よ う で 、 単 独 の ﹁お る ﹂
(お じ い さ ん い ら っし ゃ い ま す か ) 同 巻 五 ﹂ な ど の よ う に
に 用 いる こと も 適 切 でな い ことが 考 え ら れ る。 現 在 中 国 地
方 や 四 国 地 方 で 用 い ら れ て い る ﹁お る ﹂ も こ の よ う な こ と
②
③
お。 (広 島 県 )
(女 ) が お る 。 (愛 媛 県 )
ら っ し ゃ ら な い よ う に な れ ば ) 一人 以 上 違 う よ う の
四人 おた ご
ご ぶ さ た ひ て (し て ) お り ま す 。 (高 知 県 )
に あ げ た 今 昔 物 語 集 の 用 例 の 中 に み る よ う に ﹁て ゐ 給 ふ ﹂
の 形 で 敬 意 を 表 現 す る な ど -﹁て を り ﹂ よ り も 幅 の 広 い 用 法
ら 既 に 一般 化 の 傾 向 が あ った こ と が 思 わ れ る が 、 こ れ も 先
が み う け ら れ る 。 こ の 点 で も ﹁て を り ﹂ の ﹁て ゐ る ﹂ と の
へ え 行 き ょ う た わ あ (行 き お り ま し た ) (岡 山 県 )
学 校 に 行 っき ょ る (行 き お る ) (香 川 県 )
三
相 違 が み られ る。
遅 く な っと る (な っ て お る ) (岡 山 県 )
﹁お
あ が に 生 き と り ゃ あ (生 き て お れ ば ) い い よ う な が
(12 )
﹁あ り ﹂ よ り も 限 定 さ れ た 用 法 で あ る が 、 ﹁を
(3
1)
以 上 今 昔 物 語 集 を 中 心 に ﹁を り ﹂ の 用 法 を み て き た が 、
﹁ゐ る ﹂ は
例 えば ﹁
私 に は子 供 が 三 人 あ る ﹂ と い う 場 合 と ﹁私 には
子供 が 三人 い る﹂ と いう 場 合 の ﹁あ る﹂ と ﹁いる﹂ に は当
然 なが ら意 味 の相 違 が あ ってよ か ろ う 。 即 ち ﹁
あ る﹂ は 普
遍 的存 在 を 認識 し たも の であ り 、 ﹁いる ﹂ は 存 在 の '面 を
﹁を り ﹂ は 人 ・動 物 の部 分 的 な 側 面 、 例 え ば
表 し たも の であ ると いう 本 質 に基 いて解 釈 す べき で あ る こ
(2 ) ﹃存 在 詞 に関 す る研 究 ﹄ 序 論
八 一六頁
(3 ) ﹃古 事記 ﹄ 日本 典 文 学 大 系
(4 ) ﹃訓 点 語 の研 究 ﹄
中 田祝 夫 著
築島裕著
日 本 放 送 協会 篇
の ﹃あ り﹄ と ﹃ゐ る﹄﹂
風 間書 房
﹃古 点 本 の 国 語 学 的
昭 和 五十 六 年 四 月
(13 ) ﹃文 化 言 語 学 1 そ の提 言 と 建 設 1 (三省 堂 ) ﹁
今昔物 語集
十 日発 行
(12 ) ﹃全 国 方 言 資 料 ﹄
﹃雨月 物 語 本 文 及 ぴ 総 索 ﹄引 鈴 木 丹 士郎 編 ・武 蔵 野書 院
﹃中 華 若 木 詩 抄 文 節 索 引 ﹄ 馬 渕和 夫 監 修 ・
笠間索引叢書
﹃雑 兵 物 語 研 究 と 総 索 引 ﹄ 深 井 一郎 編 ・武 蔵 野書 院
笠間書院
﹃曽 我 物 語 総 索 引 ﹄ 大 野 晋 ・武 藤宏 子編 ・至 文 堂
﹃閑 居 友 本 文 及 ぴ 総索 引 ﹄峰 岸 明 ・王 朝 文 学 研 究 会 編 ・
(n ) 広 本 略 本 ﹃方 丈 記 総 索引 ﹄青 木 伶 子 編 ・武 蔵 野 書 院
(10 ) ﹃日本 古 典 文 学 大 系 ﹄ 岩 波書 店
(9 ) ﹃三 宝 絵 詞 自 立 語 索引 ﹄ 笠 間索 引 叢 書 使 用
(8 ) ﹃日 本 古 典 文学 大 系﹄ 岩 波 書 店
(7 ) ﹃万葉 集 総索 引 ﹄ 正 宗 敦 夫 編 ・白 水 杜 版 を 使 用
(6 ) ﹃今 昔 物 語 集文 節 索 引 ﹄ (笠 間 索 引 叢 刊 ) を 使 用
研 究﹄ 訳 文篇
の国 語学 的 研究 ﹄ 訳 文 篇
(5 ) 次 の 著書 を参 照 し た ﹃興 福 寺 本 大 慈 恩 寺 三 蔵 法 師 伝 古 点
大坪併治著
存 在 を 主 と し て表 現 す るよ う にな る。
春日和男著
と を 強 請 し たも の であ る。 こ の ﹁いる ﹂が 後 に 人 ・動 物 の
﹁座 る ﹂ ﹁生 活 ﹂ ﹁存 在 ﹂ な ど を 認 識 す る 点 に 於 て は ﹁ゐ る ﹂
﹁を り ﹂ は 用 い ら れ な い のが 通 例 の よ う で
﹃文 化 言 語 学 1 そ の 提 言 と 建 設 1 ﹄﹁今 昔 物 語 集 の ﹃あ り ﹄
と ﹃ゐ る ﹄﹂ 三 省 堂
(1 )
︽注︾
リ﹂ の 用 法 と 併 せ て 検 討 す る こ と と し て お き た い。
る と み て よ か ろ う が 、 こ れ は今 後 特 に 近 世 以 降 に み る ﹁ヲ
い る こ と が 多 く て ﹁お る ﹂ は 限 定 さ れ た 用 法 を 残 存 し て い
み ら れ な い よ う で あ る 。 今 日 で も 一般 的 に は ﹁い る ﹂ を 用
定 さ れ た 用 法 で あ る ので 、中 世以 後 に於 ても 大 き な 変 化 は
時 は ま だ な い。 ﹁を り ﹂ が こ の よ う に ﹁ゐ る ﹂ に 比 べ て 限
﹁風 が 吹 い て お る ﹂ な ど の よ う に 非 情 物 に 対 す る 用 例 は 当
除 い て ﹁て ゐ る ﹂ と ほ ぼ 同 様 で あ る が 、 た だ 今 日 の よ う に
思 わ れ る 。 ﹁て を り ﹂ の 用 法 は 主 体 に 対 す る 敬 意 的 表 現 を
り 用 例 数 に出 入 りが あ る の は こ の よう な事 情 によ る も のと
家 物 語 ﹄ ﹃義 経 記 ﹄ な ど に み え な い な ど 文 体 に よ って か な
あ る 。 ﹃法 華 修 法 一百 座 聞 書 抄 ﹄ ﹃打 聞 集 ﹄ ﹃更 級 日 記 ﹄ ﹃平
記 述 文 に は殆 ど
に 関 す る記 述 文 や 自 分 より 高 いと 認 識 し て いる層 に対 す る
で あ る 点 で ﹁ゐ る ﹂ と 相 違 す る 。 し た が って 仏 と か 高 僧
と 同 様 であ る が 、 敬 意 を 必 要 とす る 対象 に は極 め て消 極 的
る。 つま り
り ﹂ は 更 に ﹁ゐ る ﹂ よ り も 限 定 さ れ た 用 法 で あ る と い え
い う 表 現 は 単 な る ﹁お る ﹂ 表 現 と は 区 別 す べ き で あ ろ う
し 、 広 島 県 ㈹ に み る よ う な ﹁お る ﹂ + ﹁て﹂ の 形 で 丁 寧 に
る ﹂ は 単 独 ・複 合 語 、 ﹁て お る ﹂ と も に 広 く 用 い る 。 し か
右 の例 に みる よう に中 国 地 方 、 四 国 地 方 な ど で は
あ の (幸 福 だ ね ) (広 島 県 )
(9) (8) (7) (6) (5) (4
ω
と 関 係 が あ る か も し れ な い。
「ゐ る 」 と 「を り」 に つ い て
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