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ー8歳選挙権に関する考察

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ー8歳選挙権に関する考察
18歳 選 挙権 に 関す る考 察
井
田
正
道
は じめ に
選 挙 制 度 が 存 在 す る限 り,有 権 者 資 格 の範 囲 に 関す る議 論 はつ き ま と う。
男 女 普 通 選 挙 が 実 現 した 国 家 で は,有 権 者 年 齢 を何 歳 に定 め る のか が主 要 な
論 点 とな る。 わ が 国 で は,敗 戦 直 後 の1945年
歳 か ら20歳 に 引 き下 げ られ,今
に有 権 者 年 齢 が それ ま で の25
日 に至 って い る。 しか し,現 在 の 世 界 の大
勢 は18歳 で 選挙 権 を与 え る と い う制 度 で あ り,サ ミ ッ ト参 加 国8力
国 中で
18歳 選挙 権 が採 用 され て い な いの は 日本 だ けで あ る 。 近 年 で は ま た,わ
が
国 の 人 口構 成 の急 速 な少 子 高 齢 化 か ら高 齢 者 比率 が高 ま り,有 権 者 年 齢 を18
歳 に 引 き下 げ るべ きで あ る とす る議 論 が所 々 で主 張 され るよ うにな って きた。
18歳 選 挙 権 を 公 約 に掲 げ る政 党 が 存 在 す る だ け で な く,「 選 挙権 年 齢 の 引 き
下 げ を求 め る 国会 議 員 懇 談 会 」 とい う超 党 派 の集 団 が 存在 し,選 挙 権 年 齢 の
引 き下 げ を主 張 して い る。
ま た,住 民 投 票 に関 して は2002年
に大 き な動 きが み られ た。 まず,同 年6
月 に 愛知 県 高 浜市 が全 国 で 初 め て 住 民 投 票 へ の参 加 資 格 年 齢 を 「満18歳
上 」 に引 き下 げ た。 また,同 年9月
住 民 投 票 が 実 施 され,初
め て18歳
以
に は秋 田県 岩 城 町 で 市 町 村 合 併 に関 す る
と19歳 の 者 が 投 票 を 行 い,全 国 的 な注 目
を集 め た 。 この よ う な 住 民 投 票 に お け る18歳
投 票 権 の動 き は 少 な か らず
「18歳 選 挙 権 」 を主 張 す る勢 力 に追 い風 と な り,ま た世 論 の動 向 に も影 響 を
(721)141
政経論叢
第71巻第5・6号
与 え る潜 在 的 可能 性 を 秘 め て い る。
しか し,選 挙 権 年 齢 の 引 き下 げ は少 年 法 や民 法 な どの成 人規 定 との 関 わ り
もあ り,慎 重 な議 論 を必 要 とす る事 項 で あ る。 ま た,現 段 階 で は18歳
治 的 資 質 につ い て の デ ー タ に基 づ い た議 論 や,こ
の政
の テ ー マ に関 す る世 論 の状
況 の 把 握 が 欠 如 して い る。 そ こで 本 稿 で は,近 年 の選 挙 権 年 齢 引 き下 げ に 関
す る論 点 を 整 理 し,国 勢 調査 デ ー タや世 論 調査 デー タを使 用 しつつ,こ のテ ー
マ に つ い て 多 角 的 な 検 討 を試 み る。
1.・ 各 国 の 選 挙 権 年 齢
表1は
国 立 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 政 治 議 会 調 査 室 が2000年2月
に 作 成 し た 世 界 各 国 議 会(下
一覧で ある
院 ・直 接 選 挙)の
。 こ こ に 示 す よ う に,世
定 し て い る 。 な か に は,イ
ラ ン,ニ
選 挙 権 を 認 め て い る 国 も あ れ ば,朝
よ う に17歳
界 の 大 半 の 国 が 選 挙 権 年 齢 を18歳
カ ラ グ ア,キ
ュ ー バ の よ う に,16歳
と規
で
鮮 民 主 主 義 人 民 共 和 国 や イ ン ドネ シ ア の
で 選 挙 椎 を 認 め て い る 国 も存 在 す る 。 こ の 表 で 示 す 国 の う ち,
日 本 と 同 様 に20歳
タ イ ン,モ
選 挙 権 年 齢 と被 選 挙 権 年 齢 の
で 選 挙 権 を 認 め て い る 国 は,カ
ロ ッ コ,ナ
の よ う に,わ
ウ ル,大
韓 民 国,チ
が 国 で 採 用 さ れ て い る20歳
メ ル ー ン,リ
ュ ニ ジ ア の6力
ヒテ ン シ ュ
国 に過 ぎな い 。 こ
選 挙 権 は世 界 の 大 勢 と は異 な つそ
い る の で あ る。
ロ ー ズ(R.Rose)が
項 目 に よ れ ば,18歳
が 最 も早 く,21歳
タ リ カ,パ
編 纂 し た 『選 挙 の 国 際 百 科 事 典 』 の
へ の 選 挙 権 年 齢 引 き下 げ の 時 期 は ラ テ ン ア メ リ カ 諸 国
か ら18歳
ラ グ ア イ な ど)か
ズ エ ラ な ど)に
へ の 引 き 下 げ は19世
ら20世
紀 初 期(ブ
紀(ア
ル ゼ ン チ ン ,コ
ス
ル グ ア イ ,ベ
ネ
ラ ジ ル,ウ
か け て 行 わ れ て い る 。 ア メ リ カ や 西 欧 諸 国 の 多 くが 同 様 の 引
き 下 げ を 実 施 し た の は1970年
142(72i)
「投 票 年 齢 」 の
代 で あ る。 ま た,ア
フ リ カ,ア
ジ ア,カ
リブ
18歳 選 挙 権 に 関 す る考 察
権
挙
選
披
権
挙
選
名
国
権
挙
1 5 5 5 5 1 8 5 8 3 1 1 1 1 1 5 8 5 8 1 1 1 1 8 8 8 8 8 8 1 8 5 8 5 8 5 1 1 8 0 3 5 1 8 5 1 5 5 5 5 1 1 5 1
∼
26888888888876
魏 釧
8 ∪8888n688881111111211111121111221111111111111112111211111111111111ー
12222221212222222121222211111121212122213222122222222221288888Ω∪808888QU81888811888888Qu888888881888088888Ω
ゴ
μ
ンペ
ア
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シ
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ン
ド
イ
8 0 8 8 0 8 8 8 6 8 8 81111111111111111121111211121121111221111111212112111111ー
響初ル
コ野ルダ 罫
8 8 8 8 8 0 9 8 8 8 1 8 8 8 1 8 8 0 8 8 8 8 1 1 8 8 8 8 8 8 8 1
8 5 1 8 8 5 8 1 8 5 1 5 5 1 1 5 1 5 0 5 1 1 0 5 1 1 5 1 5 0 5 1 1 1 1 5 1 8 1 5 8 1 0 5 5 3 8 1 0 5 8 8 1 5 8 512211212122722222232223222222222222221221232221222112212
陽
菰
鷺
梱
欝 轟鋤
瓢難
脚
賜
棚 鑑
腿
権
挙
選
名
ン
卸 客 鶏 麹ア
駅
瓢 艶豹 酬
勃㍑ ラ
8 8 8 5 i 5 5 0 8 5 1 5 1 1 1 8 5 5 8 1 1 1 1 5 5 3 8 1 5 5 1 5 1 8 8 5 1 7 8 3 1 5 0 5 5 1
1 1
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婚
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8 3 1 5 8 8 1 512132222122222212212222222122222211221122232222212221222
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け 多 客 猛 裟 罪 訪 貌 裂 膨の 誤 癬 軽 雰 得 髭 紹 膓リ 彗↓↓ 銘 謡 影 読 ㌻ 蕩 為財
ダ 鍔 舞
国
権
挙
選
被
権
挙
選
名
国
∵ 勢バ
隅
珈難欝
紘
驚鼎茄難欝舞
微隔術蕪
繍
嬢
(723)143
界 各 国議 会(下 院 ・直 接 選 挙)の 選 挙 権 年 齢 ・被 選 挙 権 年 齢
表1世
注:2000年2月21日
国 立 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 政 治 議 会 調 査 室 ・課 作 成
注:オ ー ス トリア で は,選 挙 年 の1月1日
の 時 点 で選 挙 権 年 齢 は 満18歳,被
選 挙 権年 齢 は 満19歳 で あ る こ と と
定 め られ て い る。
注:INTER-PARLIAMENTARYUNIONの
ホ ー ム ペ ー ジ(http:〃wwwjpu.org/english/parlweb.htm)及
び
新 聞 に よ る。 国名 は ア ル フ ァベ ッ ト順。
政経論叢
海 の 旧植 民 地 で は1970年
第71巻第5・6号
代 初 期 か ら1990年 代 に か け て 徐 々 に18歳
が実 現 して い る(1)。わ が 国 で は1945年
選 挙権
の敗 戦 直 後 に 衆 議 院 議 員 選 挙 法 の 改
正 に よ って,男 女 普 通 選 挙 の導 入 と と もに25歳 か ら20歳 へ の選 挙 権 年 齢 引
き下 げ が 行 な わ れ た。 この20歳
とい う年 齢 は21歳 選 挙 権 を採 用 して い た 当
時 の 欧米 先 進 諸 国 よ り も1歳 低 い年 齢 で あ っ た。 しか し,そ れ か ら半 世 紀 余
りの年 月 を 経 て,日 本 の 選 挙 権 年 齢 は表1に 示 す よ う に いつ の ま に か高 い方'
に位 置 す るよ う にな った の で あ る。
各 国 の選 挙 権 年 齢 引 き下 げ の理 由 は 多 様 で あ る。 た とえ ば,旧 東 欧 諸 国 や
キ ューバ の よ うに共 産 主 義 革 命 な どに よ って 新 しい政 治体 制 を 樹 立 した 際 に
民 主 化 を 印象 付 け る一 手段 と して選 挙権 年 齢 を 引 き下 げ る場 合 もみ られ る。
ま た,1970年
代 に主 と して 行 わ れ た先 進 諸 国 の 選 挙 権 年 齢 引 き 下 げ 理 由 に
関 して は,国 会 図書 館 調 査 立 法 考 査 局 政 治行 政 調 査 室 政治 行政 課 の 成 田 憲彦
が 作 成 した レポ ー トに よ る と,次 の4点 に要 約 さ れ る とい う②。
①
若 年 層 の社 会 的 ・政 治 的成 熟
②
社 会 教 育 ・政 治 教 育 の意 義
③
兵 役 義 務 との関 係
④
学 生 運 動 ・学 園紛 争 と.の関 係
これ らの う ち,① と② は包 括 的 な 引 き下 げ 理 由 と して挙 げ られ る もの で あ
り,当 時 の 若 年 層 の政 治 的 成 熟 と政 治 的 関 心 や判 断 力 の養 成 を論 拠 と した 引
き下 げ論 で あ る。 ちな み に,1945年
に わ が 国 に お い て 選 挙 権 年 齢 を25歳
か
ら20歳 に 引 き下 げ た理 由 と して は,教 育 文 化 の普 及 状 況,一 般 民 度 の 向上,
戦 時 中 に お け る社 会 的 経 済 的 活 動 を 通 した青 年 の 知 識 能 力 の 向上 が 挙 げ られ
て お り,① の 理 由 に該 当す る③。
そ れ に 対 して,③ の 理 由は と りわ け当 時 ベ トナ ム戦 争 に関 与 して い た ア メ
リカ で 盛 ん に指 摘 され た論 点 で あ っ た。 例 え ば,『 ア メ リカ に お け る政 党 と
選 挙』 を 著 した メ イゼ ル(L.S.Maisel)は
144(724)
次 の よ う に述 べ て い る。
18歳 選 挙権 に 関 す る考察
「ア メ リ カ で は,第
二 次 世 界 大 戦 中 に18歳
の 人 が 投 票 年 齢 を18歳
ジ ア 州 が18歳
で 徴 兵 さ れ た こ と か ら,多
に 引 き 下 げ る べ き で あ る と 感 じた 。1943年
に 引 き 下 げ た が,他
に ジ ョー
の州 で それ に追 随 した と こ ろ は 存 在 し
な か っ た 。 ア イ ゼ ンハ ワ ー 大 統 領 は 一 期 目(1953年
権 を 支 持 し た が,ケ
く
∼57年)に18歳
選挙
ン タ ッキ ー 州 の み が 州 法 を 改 正 して 引 き 下 げ た に 過 ぎ
な か っ た 。(中 略)さ
ら な る 変 化 は ア メ リ カ が ベ トナ ム 戦 争 に 巻 き 込 ま れ
る ま で 生 じ な か っ た 。」④
ま た ④ の 理 由 は,学
園 紛 争 な ど で 表 れ た 青 年 の 異 議 申 し立 て に 対 す る 一 種
の 宥 和 策 と し て と ら れ た 政 策 で あ る 。 つ ま り,若
者 を 投 票 と い う手 段 で 政 治
に 参 加 さ せ る こ と に よ っ て い わ ば 体 制 内 化 さ せ,そ
の 結 果,と
きに過 激 な 手
段 を 伴 う 「青 年 の 異 議 申 し立 て 」 の 運 動 を 沈 静 化 し よ う と す る意 図 で あ る。
こ れ ら の 理 由 に よ っ て 主 要 欧 米 先 進 国 は 今 か ら約30年
引 き 下 げ を 行 っ た 。 け れ ど も,当
る こ と な く,選
前 に選挙 権年 齢 の
時 の わ が 国 は 欧 米 先 進 諸 国 と歩 調 を 合 わ せ
挙 権 年 齢 の 引 き 下 げ は 行 わ な か っ た 。 そ の 最 大 の 理 由 に,国
民 世 論 が 引 き 下 げ に 反 対 で あ っ た こ と が 挙 げ ら れ る 。18歳
の 引 き 下 げ に つ い て の 世 論 調 査 は,ア
後 の1971年
メ リカ が選 挙 権 年 齢 引 き下 げ行 った 直
に 旧 自 治 省 が 数 回 実 施 して い る。 た と え ば,1971年5月
し た 「第7回
成 だ が 今 は ま だ 早 い 」6.0%,「
「不 明 」12.0%と
以 上 の 意 見 分 布 は 「賛 成 」14.6%,「
反 対 」52.2%,「
い う分 布 と な り,全
体 の中の賛成 派 が少 数派 で あ るばか り
き 下 げ の 恩 恵 を 受 け る18歳
∼19歳
の 層 で も賛 成 派 が24.7%で
あっ
対 派 が50.5%
対 意 見 が 賛 成 意 見 を 大 き く上 回 っ て い る と い う結 果 と な っ た 。
ま た,1971年7月
査 」(調 査 対 象20歳
(725)145
原 則 的 に賛
ど ち ら と も い え な い 」15.0%。
た の に 対 し て,「 原 則 的 に 賛 成 だ が 今 は ま だ 早 い 」10.5%,反
で あ り,反
に実 施
統 一 地 方 選 挙 に 関 す る 世 論 調 査 」 の 中 で 質 問 が 行 わ れ,18歳
へ の 引 き 下 げ に 対 す る20歳
で な く,引
へ の 選 挙 権 年 齢'
に 実 施 さ れ た 「第9回
以 上)に
お い て も18歳
参 議 院 議 員 選 挙 に 関 す る世 論 調
選 挙 権 に 対 して
「賛 成 」18.1%,
政経論叢
「反 対 」59.0%,「
不 明 」22.9%と
第71巻 第5・6号
い う 分 布 と な り,同
意 識 に 関 す る 世 論 調 査 」 で は,20歳
対 」60.e%,「
分布は
に,す
不 明 」17.8%で
「賛 成 」33.8%,「
年 に実 施 され た
「政 治
以 上 の 意 見 分 布 が 「賛 成 」22.0%,「
あ っ た の に 対 し て,16歳
反 対 」49.0%,「
か ら19歳
不 明 」22.3%で
で に 選 挙 権 を も っ て い る 成 人 の み な らず,未
斥
の層 の意見
あ った。 この よ う
成 年 者 に お い て も反 対 派
が 賛 成 派 を 大 き く上 回 る と い う結 果 と な った の で あ る 。
そ して,反
対 の 理 由 と し て 最 も多 か っ た の は,い
ず れ の 調 査 で も18歳
で
は 政 治 問 題 を 判 断 す る 能 力 に 欠 け て い る と い う 理 由 で あ る 。 一 例 と し て,
「政 治 意 識 に 関 す る 世 論 調 査 」 に よ る と,反
対 理 由 に 「18歳 で は ま だ 政 治 問
題 を 判 断 す る 能 力 が な い と思 う か ら」 を 選 択 し た 者 の 比 率 は,20歳
サ ン プ ル で は62。5%,16歳
か ら19歳
の サ ン プ ル で も63.2%に
以 上 の
の ぼ り,他
の
理 由 を 選 択 し た 者 の パ ー セ ン テ ー ジ を 大 き く 引 き 離 して い る(5)。す な わ ち,
① の 若 年 層 の 社 会 的 ・政 治 的 成 熟 と い う点 に 関 し て,当
つ け て い た の で あ る。 ま た,③
時 の 国民 は疑 問 符 を
の 兵 役 義 務 と の 関 係 に 関 し て は,日
二 次 大 戦 後 徴 兵 制 が 廃 止 さ れ た こ と か ら,問
本 で は第
題 に な ら な か っ た 。 と も か く,
こ の よ う な 世 論 の 状 況 が わ が 国 を し て 選 挙 権 年 齢 引 き下 げ に 踏 み 切 らせ な か っ
た 大 き な 理 由 で あ る。
2.18歳
選 挙 権 を め ぐる 近 年 の わ が 国 の 動 向
しか レ,わ が 国 で は近 年,18歳
選 挙 権 の 主 張 が マ ス ・メ デ ィア や議 員 ・
政 党 な どか ら次 第 に活 発 に主 張 され るよ うに な って き た。 そ れ で は な ぜ 今,
選 挙 権 年 齢 の 引 き下 げ な の か。 まず,前 述 の1970年
代 にお ける先進諸 国の
引 き下 げ理 由 に つ い て 照 ら して考 え て み た い。 ① の若 者 の 政 治 的 ・社 会 的 成
熟 に関 して は そ れ を 証 明 す るデ ー タは 存 在 しな い。 む しろ若 年 層 の 投 票 率 は
低 水 準 の状 態 に あ り,若 者 の 政 治 的無 関 心 の蔓 延 が 指 摘 され て い る。③ の 兵
146(726)
18歳 選挙権 に関す る考察
役 義 務 と の関 係 に つ い て は1970年
当 時 と 同様 に徴 兵 制 が 存 在 しな い わ が 国
で は問 題 と は な らな い。 ④ の学 生 運 動 との 関係 に つ い て は,'今 日で は わ が 国
に お け る学 生 運 動 は弱 体 化 して お り,こ れ も問 題 と は な らな い。30年
前と
共 通 の 理 由 と して 残 る の は② の政 治 教 育 の意 義 の み で あ る。
そ れ に も関 わ らず,近 年,引
き下 げ論 が台 頭 して き た の は何 故 で あ ろ うか。
そ こで,近 年 の 引 き下 げ論 の主 な論 点 を整 理 して お き た い。
a少
子 高 齢 社 会 へ の対 応
b政
治的社会化の意義
c世
界的な潮流への同調
・aの少 子 高 齢 社 会 へ の 対 応 につ いて は,1999年8月2日
の 『朝 日新 聞』
社説 を 引 用 して お く。
「急 激 に進 む少 子 高 齢 化 を考 え る と,選 挙 権 年 齢 の 引 き下 げ は 重 要 な 意 味
を持 って くる よ う に思 わ れ る。(中 略)人
口構 成 の偏 りは,政
治 が高齢 者 の
意 思 で動 きが ちに な る こ とを 意 味 す る。 選 挙 で は 「数 」 が もの を い うか らだ。
投 票 率 も年 齢 が上 が る ほ ど高 くな る傾 向 が あ るの で,政 党 は ます ます 高 齢 者
向 け の政 策 に力 を 入 れ る。 そ うな れ ば,さ
ま ざ ま な分 野 で 世 代 間 の不 平 等 が
拡 大 し,若 者 が政 治 か ら遠 ざか る悪 循 環 に陥 りか ね な い。(中 略)欧
米か ら
遅 れ る こ と三 十 年 。 日本 で も若 者 の 政 治 参 加 の 問 題 に真 剣 に取 り組 むべ き と
き を迎 え た とい え そ うだ。」(6)
す な わ ち,政 治 家 が 次世 代 に 向 け た 政 策 を 打 ち 出 し,若 年 層 が 政 治 か ら疎
外 さ れ な い よ うに とい う意 図 で 選挙 権 年 齢 の 引 き 下 げ を主 張 して い る。 ま た,
この論 点 に は 負担 世 代 の権 利 とい う視 点 も見 られ る。 しか し,国 犀 年 金 保 険
料 の負 担 開始 年 齢 は20歳 で あ り,ま た 税 負 担 とい う観 点 か らす る と高 学 歴 化
な ど を背 景 に10代 後 半 の 労 働 力 率 は低 下 傾 向 に あ る た め,18歳
と19歳
の
層 で 所 得 税 を納 め て い る者 の比 率 は低 下 して い る と推 測 され る(7)。
と もか く,こ れ は1970年
(727)147
代 に は み られ な か った新 しい 論 点 で あ り,今
日
政経論叢
第71巻 第5・6号
の引 き下 げ論 に お い て最 も有 力 な論 点 とい え る。
bの 政 治 的 社 会 化 の意 義 に つ い て は,1970年
代 にお ける先進 諸 国の 引 き
下 げ理 由 の ひ とつ(社 会 教育 ・政 治教 育 の 意 義)と 同 様 の 理 由で あ る。 この
論 点 に該 当 す る主 張 の 内 容 と して は,若 者 の 政 治 離 れ を 改 善 す る手 段 と して
選 挙 権 年 齢 を 引 き下 げ るべ き で あ る と い う主 張 や 公 的 な 責 任 感 や 義 務 感 を育
む 一 手 段 と して の意 義 を 唱え る主 張 が あ る。 前 者 に関 して は,1999年3月
21日 の 『日本 経 済 新 聞』 にお い て次 の よ うな主 張 が掲 載 さ れ て い る。
「日本 で は若 者 の 政 治 離 れ が進 ん で い る。 各 種 の調 査 で,若 者 の 投 票率 は,
平 均 を 下 回 って い る。 若 い人 が 投 票 所 に足 を運 ぶ 方 策 を真 剣 に考 え る必 要 が
あ る。 選 挙 権 や 被 選 挙 権 を行 使 で き る年 齢 を引 き下 げ る の もひ とつ の方 法 で
は ない か 。(中 略)高 校 まで の 教育 で 民主 政 治 や 選 挙 の 大 事 な こ と を学 ん で
も,権 利 を行 使 で き るの は二 年 後 で あ る。 この 間 に選 挙 へ の 関心 が薄 れ か ね
な い。」(8)
後 者 につ い て は,・2000年2月20日
の 『産 経 新 聞 』 に お い て次 の よ う な主
張 が掲 載 され て い る。
「早 い 時 期 か らの選 挙 参 加 で,今 の 若 者 に希 薄 とさ れ て い る地 域 社 会 や 国
に対 す る 「責 任 ・義 務 」 とい った意 識 の 高 ま りも期 待 で き る」(9)
cの 世 界 的 な潮 流 へ の 同調 につ いて は,例 え ば2002年9月16日
新 聞』 社説 にお いて,次
「今 年4月
の よ うな 主 張 が 行 われ て い る。
の調 査 に よ る と,下 院(衆 院)の 場 合,先 進7力 国 で18歳
い の は 日本 だ け だ。18歳 選挙 権 は168力
さ れ,15歳
の 『毎 日
か ら17歳
国 の う ち,8割
強 の139力
でな
国 で採 用
とす る 国 も合 わ せ て6力 国 あ る。20歳 は7力 国 に過 ぎ
な い。 何 で も外 国 を 見習 う必 要 は な い が,世 界 の 国 々 と常 識 を共 有 化 す る こ
と は国 際化 の第 一 歩 だ。」㈹
こ の他,少 年 法 適 用 年 齢 引 き下 げ に連 動 して 選 挙権 年 齢 を 引 き下 げ る とい
う観 点 も存 在 す るが,マ ス ・メ デ ィア や 各 党 の 政 策 を み る と,少 年 法 適 用 年
148(728)
18歳 選挙権 に関す る考 察
齢 引 き下 げ の い わ ば 「副 産 物 」 と して の 選挙 権年 齢 引 き下 げ を 主 張 して い る
わ け で は な い。
政 党 で は民 主 党,公
明 党,共 産 党 な どが18歳 選 挙 権 を主 張 して い る 。 民
主 党,共 産 党 な どは公 職 選 挙 法 で規 定 され て い る選 挙 権年 齢 の 引 き下 げ と と
もに民 法 や少 年 法 で規 定 され る成 人 年 齢 も一 体 と して18歳
に 引 き 下 げ,18
歳 を成 年 と位 置 づ け る こ とを主 張 して い る。 成 人 年 齢 の 引 き下 げを 行 え ば,
憲法 第15条3項
の 「公 務 員 の選 挙 につ い て は成 年 者 に よ る 普 通 選 挙 を 保 障
す る」 とい う条 文 の改 正 が 不要 で あ るた め,憲 法 改 正 の 手 続 きを 踏 まず に選
挙 権 年 齢 の 引 き下 げ を実 施 す る こ とが 可 能 と な る(11)。
こ こで は一 例 と して,民 主 党 ネ ク ス トキ ャ ビネ ッ トの主 張を提 示 してお く。
「民主 党 は,18歳
は経 済 的 自立 が可 能 な年 齢 で あ り,現 に結 婚 や深夜 労 働 ・
危 険有 害 業 務 へ の従 事,普
通 免 許 の 取 得,働
いて い る場 合 は納税 者 で あ る等,
社 会 生 活 の重 要 な 部面 で 成 人 と して の 扱 い を 受 け て お り,世
界 の す う勢 も
18歳 以 上 を 成 人 と して い る こ とか ら,以 下 の通 り,成 人年 齢 を18歳
下 げ る こ とを 提 案 します 。 これ に よ っ て,18歳
に引 き
選 挙 権 を 実 現 し,少 年 法 の
適 用 年 齢 も18歳 未 満 の 者 と します 。」(且2)
これ は,法 律上 の 成 人 年 齢 規 定 と は異 な っ て,社 会 が 実 質 的 に は18歳
を
大 人 と して扱 って い る こ とを 根 拠 と して い る。 法 律 上 の成 人 年 齢 を実 質 上 の
成 人 年 齢 に合 致 させ る とい う主 張 で あ り,成 人 年 齢 引 き下 げ と一 体 と して の
選挙 権 年 齢 引 き下 げ論 で あ る。
'利 益 集 団 に関 して は
,選 挙 権 年 齢 の引 き下 げ を求 め活 発 な運 動 を展 開 す る
団体 も出 現 し て い る。 こ こで は 一 例 と して,2000年5月
Rightsを 取 り上 げ た い。Rightsは,若
に結 成 され た
者 を主 体 とす る選 挙 権 ・被 選 挙 権 の
引 き下 げ を 求 め る単 一 争 点 集 団 で あ り,対 議 員 ロ ビイ ング や対 世 論 ロ ビイ ン
グ な どの 活動 を 活発 に 展 開 して い る。Rightsは
民 主 党 な どの主 張 とは異 な っ
て,公 職 選 挙 法 の み の 選 挙 権 年 齢 引 き下 げ も可 能 で あ る とい う立 場 か ら,民
(729)149
政経論叢
第71巻第5・6号
法,少 年 法 の 成 人 年 齢 の 引 き下 げ を 伴 う必 要 は な い と論 じて い る。 また,選
挙 権 年 齢 の 基 準 を義 務 教 育 修 了 に 求 め,16歳
へ の 引 き下 げ を 主 張 して い
る(13)。
この よ う に,近 年 の 選 挙権 年 齢 引 き下 げ論 の 論 拠 は,1970年
代 の欧米 先
進 諸 国 に お け るそ れ と は異 な って い る。 今 日の わ が 国 で は1970年
頃 に比 し
て高 等 教 育 進学 率 が 大 幅 に上 昇 し,一 般 的 な教 育 水 準 が 向 上 した に もに もか
か わ らず,若 者 の 政 治 的 ・社 会 的成 熟 とい う視 点 が み られ な い。 これ は,わ
が 国 の学 校 が政 治 的 社 会 化 の担 い手 と して の機 能 を さ ほ ど果 た して いな い 結
果 な の で あ ろ うか。 あ るい は高 学 歴 化 が モ ラ ト リア ム の 期 間 を延 長 させ,若
者 に お け る 生 活 と政 治 との関 わ りを希 薄 化 させ た の で あ ろ うか。 と もか く,
選 挙 権 年 齢 引 き下 げ 問題 を論 じる に 当 た って は,今
日の 若:者の 政 治 的 成 熟 度
に関 す る議 論 が必 要 な こ とは い うま で もな い。
3.選
挙 に 及 ぼ す イ ンパ ク ト
前 述 の よ うに,日 本 に お け る今 日の選 挙 権 年 齢 引 き下 げ論 に お け る最 大 の
論 拠 は少 子 高 齢 社 会 へ の 対応 で あ る。 事 実 わ が 国 で は 急速 な 高齢 化 が進 展 し
て い る。 国 立人 口 ・社 会 保障 問題 研 究 所 に よ れ ば,2000年
は65歳 以上 の 高 齢 者 が 全 人 口 に 占め る比 率 は17.4%で
国勢調 査結 果 で
あ り,2014年
に は4
分 の1に 達 す る見通 しで あ る と い うq4)。そ こ で,有 権 者 の年 齢構 成 が 中 高年
層 に次 第 に傾 斜 す る とい う 「ゆが み」 が拡 大 して い くた め,そ の ゆ が み を是
正 す る こ と が必 要 で あ る とす る。
それ で は,選 挙 権 年齢 を2歳 引 き下 げ る こ とに よ って どの 程度 の 「ゆ が み
是 正 効 果 」 が期 待 で き るので あ ろ うか。 そ こで,こ の 点 に つ い て2000年
国勢 調 査 結 果 に基 づ い て 検討 を加 え た。 同 調 査 結 果 に よ る と,18歳
を 合 計 した 人 口 は304万1311人
150(730)
の
と19歳
で あ り,選 挙 権 を2歳 引 き下 げ る こ とに よ っ
18歳 選 挙 権 に 関 す る考 察
て 新 た に 約300万
人 が 有 権 者 の 仲 間 入 りを す る こ と に な る 。 そ し て18歳
上 の 人 口 は1億400万6490人
層 は2.92%と
%弱
で あ り,こ
な る。 し た が っ て,18歳
の う ち に 占 め る18歳
か ら19歳
を 占 め る こ と に な る ㈹ 。 ち な み に,成
様 の 計 算 を して い る が,そ
で,仮
に18歳
率 は5.68%で
選 挙 権 を 実 現 し た 場 合,全
あ っ た(is)。約30年
か ら19歳
の
の 年 齢 層 は 有 権 者 全 体 の3
田 憲 彦 が1969年
の 時 点 で は18歳
以
と19歳
総 選挙 の際 に 同
の 人 口 は お よ そ417万
有 権 者 に 占 め る18か
前 に 比 して,18∼19歳
ら19歳
人
の比
の年 齢 層 が 全 有 権 者
中 に 占 め る 比 率 は ほ ぼ 半 減 して い る 。
さ ら に 考 慮 に 入 れ な け れ ば な ら な い の は,こ
の年 齢 層 の投 票 率 は ほ ぼ 間違
い な く平 均 を 下 回 る と い う こ と で あ る 。 例 え ば,ア
に 選 挙 権 が 付 与 さ れ た18歳
か ら20歳
率 を 大 き く下 回 る だ け で な く,ほ
メ リ カ で は1970年
以 降
の年 齢 層 の投 票 率 は有 権 者 全 体 の投 票
とん ど の選 挙 に お い て年 齢 階層 別 投 票 率 の
最 低 水 準 で しか な い 。 こ の 年 齢 層 の 投 票 率 は 近 年 の 大 統 領 選 挙 で は 約3割,
中 間 選 挙 で は1割
台 に と ど ま っ て い る 。 こ の よ う に2大
政 党 制 国家 で 党派 心
の 形 成 期 が 早 い と さ れ る ア メ リ カ に お い て す ら若 年 層 の 投 票 率 は 非 常 に 低 い
の で あ る(n)。 ア メ リ カ の 事 例 か ら す る と,わ
し た と し て も,18歳
∼19歳
が 国 で 仮 に18歳
選挙 権 が実現
の年齢層の投票率は年齢階層 別投 票率 の なか の
最:低水 準 と な る 可 能 性 が 高 い 。
た だ,わ
が 国 で は 選 挙 権 獲 得 直 後 の20歳
よ り も 高 い と い う デ ー タ も あ る。2001年
た 場 合,18歳
の 年 齢 層 の 投 票 率 は20歳
性 は 存 在 す る 。 し か し,全
の 投 票 率 は 約20ポ
選挙 権 が実現 し
代 前 半 を 若 干 上 回 る可 能
体 の 平 均 投 票 率(53.27%)と
イ ン ト も低 く,18歳
比 較 す れ ば,20歳
に 引 き 下 げ た と して も ほ ぼ 同 様 の 結
果 と な る で あ ろ う 。 な お,「 選 挙 制 度 の 比 較 研 究 」(ComparativeStudyof
(731)151
の層
の 投 票 率 は33.89%,21∼24歳
あ っ た(18)。こ の 事 実 か ら す る と,18歳
か ら19歳
か ら24歳
参院 選 にお いて東 京都 選挙 管理 委
員 会 が 調 査 し た 年 齢 別 投 票 率 に よ る と,20歳
の 投 票 率 は29.31%で
の 投 票 率 は21歳
政経論叢
ElectoralSystems)の
上 の そ れ との 差 は,そ
第71巻第5・6号
デ ー タ に よ れ ば,30歳
こで取h上
未 満 の 投 票 参 加 率 と65歳
げ られ た 先 進10力
国 中,日
以
本 が 最:も大 き
い と い う事 実 が認 め られ る(IS)。
これ らの 諸 事 実 か ら考 え る と,投 票 者 全 体 に 占 め る18歳 ∼19歳 の 年 齢 層
の比 率 は2.92%を
下 回 る こ とが 確 実 で あ り,さ らに2%を
る。 こ の 比率 か らす る と,18歳
も切 る可 能 性 もあ
∼19歳 の層 の選 挙 結 果 に対 す る イ ンパ ク ト
は,若 干 の大 激戦 区 で 当 落 の帰 趨 を 決 す る可 能性 は 存 在 す る もの の,選 挙 結
果 の大 勢,す
な わ ち全 体 と して の政 党 の議 席 勢力 図 に 及 ぼ す影 響 は ほ とん ど
な い とみ て よ か ろ う。 した が って,18歳
選挙権 の実現 が少 子高 齢化 社会 の
歪 み を是 正 す る効 果 は 微小 で あ ると い わ ざ るを得 な い。 しか し,裏 返 して言
え ば,仮 に18歳
か ら19歳 の層 が政 治 的 判 断 力 の な い まま に無 責 任 な 投 票 や
イ メ ー ジに左 右 され た投 票 を行 った と して も,全 体 に 及 ぼ す 悪 影響 も また 微
小 で あ る とい う こ とに な る。
選 挙 権 年 齢 の 引 き下 げ に関 して は,民 法,少 年 法 な ど との整 合性 とい う法
学 的 観 点 か らの議 論 の 他 に,政 治 学 の立 場 か ら18歳 に は 政 治 的 判 断 力 が あ
る の か否 か とい う点 に関 す る実証 デ ー タ に基 づ く議 論 と,18歳
す る世 論 の状 況 の 把 握 が 必要 で あ る。 そ の 結 果,18歳
選 挙 権 に対
に は政治 的判 断力 が
あ る とい う結 論 が 得 られ,か つ 世論 が 賛 成 して い る,特 に18歳
・19歳 の年
齢 層 で 賛 成 が 多 く,引 き下 げ られ た 暁 に は是 非 選 挙 に 行 き た い とい う回 答 が
多 い場 合 に は 引 き下 げ推 進 の有 力 な根 拠 とな ろ う。 しか し,残 念 な が ら この
よ う な検 証 資 料 が不 足 して い る とい うの が現 状 で あ る。
そ こで,筆 者 が 関与 した2つ の世 論 調 査 か ら この2点 に つ い て の 資料 を 提
示 した い。 ひ と・
つ は,2001年
に明 治 大 学 の 学 生 を対 象 と して 筆 者 が 実 施 し
た 「18歳 選 挙 権 に関 す る調 査 」 で あ る。 これ は,限
で は あ るが,18歳
選 挙 権 に関 す る若 者 の 意 見 の 一 端 が表 れ て い る と考 え る。
も うひ とつ は1996年
152'(732)
られ た集 団 の 意 識 調 査
に全 国 の18歳 以 上 を対 象 と して 杏林 大学 プ ロ ジ ェ ク ト
18歳 選挙権 に関す る考察
研 究 の一 環 と して行 わ れ た 「転 換 期 に お け る政 治 意 識 と投 票 行 動 」 調査 で あ
り,こ の デ ー タか ら18歳 ∼19歳 の年 齢 層 の政 治意 識 の 性質 につ い て 検 討 を
加 え る。
4.18歳
選 挙 権 に 関 す る大 学 生 意 識 調 査 一 明大生調査 よ り一
18歳 選 挙 権 に関 して 論 じた1999年3月21日
の 『日本 経 済 新 聞 』 中 外 時
評 に,「 権 利 の 獲 得 に 向 け て 若 い人 の 熱 い声 が 少 な い の が 気 に な る。 意
向 を 確 認 す る た め に18歳
と19歳 を 対 象 に世 論 調 査 を 実 施 した ら ど うだ ろ
う。」(2。)と
い う指 摘 が あ るよ うに,18歳
選 挙権 を め ぐって は,現 状 で は 議 員
や マ ス ・メ デ ィア主 導 の感 が強 く,国 民 世 論 は盛 り上 が りに欠 け る よ うに み
え る。 け れ ど も,選 挙 権 年 齢 の 引 き下 げ は,引 き下 げ に よ って 新 た に選 挙権
を獲 得 す る年 齢 層 の熱 い要 望 が な け れ ば な らな い。 当該 年 齢 層 が 「選 挙 権 な
どあ って もな くて もよ い」 とい う意 識 の も とで選 挙権 を 与 え て も,投 票 率 は
低 水 準 に と どま る他,投 票 に行 って もイ メー ジな ど に左 右 され た無 責 任 な投
票 とな り,健 全 な デ モ ク ラ シー の発 達 に と って逆 機 能 とな る恐 れ す らあ る。
そ こで,限
られ た 対 象 で はあ るが,筆 者 が2001年
に明治 大 学政 治経 済学
部 学 生 を 対 象 と して実 施 した意 識 調 査 の結 果 を 公 表 し,18歳
選挙 権 に対す
る若 者 の 世論 につ いて 考 え て み た い⑳。
4-118歳
選 挙 権 に対 す る賛 否
まず,今 回 の調 査 対 象 とな った学 生 の,選 挙 権 年 齢 引 き下 げ に 関 す る知 識
につ い て述 べ て お く。 選 挙 権 の18歳 へ の 引 き下 げ の動 き に つ い て は 「知 っ
て い る」 と回 答 した者 が37%,「
また,サ
知 らな い 」 と回 答 した ものが63%で
あ った。
ミ ッ ト参 加 国 で 日本 だ けが18歳 選 挙 権 を 実施 して いな い こ とを知 っ
て い る者 は15%に
(733)153
と ど ま る。 こ の結 果 か ら,調 査 時 点 に お け る学 生 の 選 挙
政経論叢
第71巻第5・6号
権 年 齢 に 関 す る知 識 は全 体 と して 乏 しい とみ る こ とが で き る。
今 回調 査 した学 生 に お け る18歳 選 挙 権 に対 す る賛 否 の分 布 を表2に
今 回 の調 査 結 果 で は,賛 成42%,反
年 齢 別,政
対41%と
示 す。
ほ ぼ拮 抗 して い る 。 男 女 別,
治 関 心 度 別 の ク ロス集 計 を行 った と こ ろい ず れ も有 意 差 が認 め ら
れ た。 男 女 別 で は,賛 成 派 の比 率 が や や 男性 の ほ うが 多 い。 年 齢 別 に は 年 齢
が 上 が る に した が って 賛成 派 が 減 り,反 対派 が増 え る傾 向 が認 め られ る。18
歳 で は賛 成 派 が反 対 派 の約1.5倍 存 在 して い た の が,19歳
し,20歳
以上 に な る と反 対 派 が 賛 成 派 を 上 回 る。 ま た,政
にな る と ほぼ 拮 抗
治 関 心 度 別 に見
る と,関 心 度 が高 い層 ほ ど賛 成 派 の比 率 が高 い。 政 治 に 「ひ じ ょ うに強 い 関
心 を も って い る」 と回 答 した層(全 体 の21%)で
は18歳 選 挙 権 に 賛 成 の 者
が6割 を 超 え,反 対 派 の2倍 以 上 に のぼ る。 そ して 政 治 に 「あ る程 度 関 心 が
あ る」 と した 者 で は賛 否 が 拮 抗 して い る。 そ して,政 治 関 心 の 低 い層 で は反
対 派 の 方 が 多 い。 また,年 齢 別 にみ る と,年 齢 が 低 い ほ ど関 心 度 別 の 賛 成 派
表218歳
賛 成
全
体
選挙権への賛否(%)
反
対
どち らで も
よい
わ か らな い
計(N)
42
41
13
5
101(615)
男
44
41
12
3
100(453)
女
37
38
17
8
100(156)
18歳
46
30
20
4
100(164)
19歳'
43
41
12
5
101(205)
20歳 以 上
39
47
9
5
100(241)
非 常に関心が ある
63
26
5
5
あ る程 度 関 心 が あ る
41
42
14
3
あ ま り関 心 が な い
23
55
15
6
99(78)
40
30
30
100(10)
性
年
齢
政治関心
ま った く関 心 が ない
154(734)
0
99(129)
100(395)
18歳 選 挙 権 に 関す る考 察
傷0
9
図1賛
成 派 の比 率(年 齢 ・政 治 関心 度 別)
0
8
一◆ 一18歳
0
7
一引 一19歳
0
6
一壱一20歳
以上
■.、
働噛
噂噂
0
5
・、
嚇
鴨、
馬、
、
0
4
・、
電、
r
馬
噂㌦
髄
噌
、軸
噛
0
3
ミ\.
鴨 、
・噂 幅
囎■ ■
0
2
0
1
0
非 常 に 関心 が あ る
あ る程 度 関 心 が あ る
政
治
関
あ ま り関 心 が な い
心
の 比率 に顕 著 な違 い が認 め られ る(図1)。18・19歳
で政 治 関心 の 高 い者 は,
早 く投 票 した い とい う気 持 ちを 抱 いて い るの に対 して,お そ ら く,低 関心 層
は 自 らが棄 権 層 に な る可 能性 が 高 い た め,選 挙 権 年 齢 引 き下 げの 意 味 を と く
に感 じな い の で あ ろ う。
4-2賛
成 ・反 対 理 由
本 調 査 で は18歳 選 挙 権 に 「賛 成 」 ま た は 「反 対 」 と回答 した者 に対 して,
そ れ ぞ れ賛 成 理 由 と反 対 理 由 を選 択肢 法 で 質 問 して い る。 表3に,賛
成理 由
及 び反 対 理 由 の分 布 を示 す。
賛 成 理 由 の分 布 を み る と,最 も多 い の は 「若 者 の 政 治 意 識 を高 め るか ら」
とい う理 由で あ り,賛 成 者 の半 数 が この理 由 を選 択 して い る。 それ に対 して
「18歳 と もなれ ば,政 治 に関 して の判 断 力 は身 につ いて い る か ら」 とい う理 由
を選 択 した者 は2割 強 に と どま って お り,若 者 の 政 治 的 成 熟 とい うよ りも,選
挙 権 の 引 き下 げ に よ る政 治 的 社 会 化 の効 果 を期 待 した賛 成論 が 多 い こ とが わ
(735)155
政経論叢
表3賛
第71巻 第5・6号
成理 由 ・反 対 理 由(%)
賛 成理 由
・若者 の政 治 意 識 を高 め るか ら50
・18歳 と もなれ ば,政 治 につ いての 判 断力 は身 について い るか ら22
・世 界 の多 くの国 で18歳 選 挙 権 だ か ら6
・18歳 で高 校 を卒 業 するか ら,20歳
で 区切 る意 味 がな い14
・その他g
計101
反対理 由
・18歳 か ら19歳 の 層 は政 治 的 関 心 が低 く投 票 率 が下 が るか ら19
・まだ まだ未 熟 で あ り,政 治 的 判 断 力 が ある とは思 え ない か ら66
・社 会 に出 て いない 学 生が 多 いか ら'8
・その他7
計100
か る。
ま た,反 対 理 由 と して は,3分
の2の 者 が 「ま だ ま だ未 熟 で あ り,政 治 的
判 断 能 力 が あ る とは思 え な い か ら」 と い う理 由 を 選 択 し て お り,18歳
・19
歳 の 政 治 的 判 断 能 力 に疑 問 符 をつ け てい る。 こ の理 由 を挙 げ た もの の比 率 は
18歳 も20歳 以 上 の 回 答 者 もほ とん ど差 が み られ な か った。
この よ う に最 大 の賛 成 理 由 は若者 に対 す る政 治 的 社 会 化 効 果 で あ り,最 大
の反 対 理 由 は若 者 の政 治 的 未 熟 さで あ る。 何 れ に して も,今 日の若 者 が政 治
に対 して 無 関 心 で あ る と い う共 通 の 認識 が 横 たわ って い る。
4-3少
年 法 適 用 年 齢 引 き 下 げ論 との 関係
選 挙 権 年 齢 の 引 き下 げ論 は,少 年 法 の 適 用 年 齢 の 引 き下 げ論 と関 連 して論
じ られ る こ と も多 い。 そ こで 本調 査 で は少 年 法適 用 年 齢 引 き下 げ に関 す る質
問 も行 った。
少 年 法 の適 用年 齢 を20歳 未 満 か ら18歳 未 満 に 引 き下 げ るこ とにつ いて は,
85%と
い う圧 倒 的 多 数 が 賛 成 して お り,反 対 とす る者 は8%に
156(736)
す ぎ なか っ た
18歳 選挙権 に関する考 察
(そ の 他,「 どち らで もよ い」5%,「
な賛 成 は,18歳
わか らな い」2%)。
この よ うな 圧 倒 的
は精 神 的 に も身 体 的 に も大 人 で ある とい う認 識 の 表 れで あ る。
民主 党 や共 産 党 な どは選 挙権 年 齢 の 引 き下 げ と少 年 法 適 用 年 齢 の 引 き下 げ
とを一 体 と して行 う こ とを主 張 して い るが,少 年 法 の 適 用 年 齢 引 き下 げ に対
す る賛 否 と,選 挙 権 年 齢 引 き下 げ に対 す る それ との 間 に は関 連 性 が 認 め られ
るの で あ ろ うか。 ク ロス 集 計 を 行 っ た と こ ろ,こ れ らの 間 に は有 意 差 が認 め
られた 。 表4に 示 す よ う に,18歳
選 挙権 に賛 成 す る者 の 比 率 は,少
用 年齢 の 引 き下 げ に 賛 成 の 者 で は45%だ
年法 適
った の に対 して 反 対 の者 で は28%
に と ど ま る。 また,少 年 法 適 用 年 齢 引 き下 げ に反 対 の者 で は選 挙 権 年 齢 の 引
き下 げ に反 対 す る者 も多 く,そ の比 率 は6割 を超 え て い る。 この よ うに,こ
の2つ の テ ー マ に関 す る態 度 に は関 連 性 が 認 め られ る。
なお,少 年 法 適 用 年 齢 引 き下 げ と選 挙 権 年 齢 引 き下 げ に と もに賛 成 した者
は38%,と
もに反 対 は5%,少
の者 は32%,そ
者 は わ ず か2%c一
年 法 引 き下 げ は賛 成 だ が18歳 選 挙 権 に反 対
して少 年 法 引 き下 げ に は反 対 だ が 選 挙 権 引 き 下 げ に 賛 成 の
と どま った。 つ ま り少年 法 適 用年 齢 の み を 引 き下 げ るべ き
とす る者 は お よ そ3人 に1人 存 在 す るが,選 挙権 年 齢 の み を 引 き下 げ るべ き
とす る者 は極 め て少 な い。 換 言 す れ ば,18歳
選 挙 権 賛 成 派 の 多 くは 少 年 法
適 用年 齢 引 き下 げ に も賛 成 して い る。
表4少
年 法適用年齢 引き下 げに対す る賛否 と18歳 選挙権 に関す る賛否(%)
少年 法適用年 齢
引き下 げ
18歳 選 挙 権
賛
成
反
対
ど ち らで も
よい
わ か らな い
計
(N)
賛成
45
38
13
4
100
(520)
反対
28
63
7
2
100
(46)
ど ち らで も よい
29
42
26
3
100
(31)
わ か らな い
31
46
0
23
100
(13)
(737)157
政経論叢
5.18歳
∼19歳
第71巻 第5・6号
の政治 意識
選 挙 権 年 齢 引 き 下 げ の是 非 を め ぐる論 点 の 中 に は,引 き 下 げ た年 齢層 の 政
治 参 加 の意 欲 の有 無 と政治 知 識 ・判 断 力 の有 無 が含 ま れ る。 これ らを判 断 す
るた め に は18歳
・19歳 を サ ンプ ル に含 め た世 論調 査 の 蓄 積 が 必 要 とされ る。
仮 に 政 治 参 加 の意 欲 が 低 けれ ば,選 挙 権 年 齢 の 引 き下 げ は高 齢 化 社 会 の ゆ が
み を正 す 効 果 は ほ とん ど期 待 で きず,ま
た政 治 的 判 断 力 が 欠 如 して いれ ば,
未 熟 な投 票 者 を 増 やす だ け とい う帰 結 を 生 み だ す 。
と こ ろ が,18歳
か ら19歳 の 政 治意 識 の 性 格 を 他 の 年 齢 層 との 比 較 に お い
て論 じ られ るデ ー タは 少 な い。 わ が 国 で は 有 権 者 年 齢 が20歳
で あ るため,
世 論 調 査 の 多 くは20歳 以 上 を対 象 と して い る か らで あ る。 そ の 点,1996年
11月 に実 施 され た杏 林 大 学 プ ロ ジ ェ ク ト研 究 の 一 環 と して 行 わ れ た全 国世
論 調 査 で は,全 国 の18歳 以 上 の 者 を 母 集 団 と して い る(Y)。 した が って,こ
こ で は18歳 ∼19歳 の年 齢層 の 政 治 知 識 の 実 態 を検 討 す る。 た だ し,18歳
ら19歳 とい う2歳 の 年 齢層 の サ ンプ ル サ イ ズ は 小 さい た め に,誤
か
差 が大 き
い こ と も留 意 して おか な けれ ば な らな い。
5-1政
治知識
18歳 選 挙 権 の是 非 を論 ず る場 合 に は,こ の 年 齢 層 の 政 治 的成 熟 度 を 検 討
す る必 要 が あ る。 政 治 的 成熟 度 を検 討 す る に際 して最:も有 力 な指 標 は政 治 知
識 で あ ろ う。 今 日で は マ ス メデ ィア や イ ン ター ネ ッ トの 発 達 で,未 成 年 者 に
お い て も政 治 知 識 を得 る こ とは 十 分 可 能 な環 境 に あ る。 そ れ で は,18歳
∼
19歳 の 層 の 政 治 知 識 の 実 態 は い か な る もの で あ ろ うか 。
こ の調 査 で は 官 房長 官,衆 議 院定 数,ア
よ うな選 択 肢 法 で 回 答 を求 め た。 な お,()内
メ リカ 副大 統領 に 関 して,以 下 の
158(738)
は回 答 率 を示 す 。
18歳 選挙 権 に 関 す る考 察
問1こ
のll月7日
に成 立 した第 二 次 橋 本 内 閣 の官 房 長 官 の 名 前 は次 の
うち どれ で しょ うか。
・
1)梶
山 静 六(65.3)2)加
藤 絋 一(10.4)3)亀
井 静 香(2.5)
4)小
泉 純 一 郎(2.9)5)三
塚
崎
博(4.3)6)山
拓(0.7)
7)DK。NA(13.9)
問2新
しい 衆議 院 の 定数 は 何 人 で しょ うか 。
1)252人(15.6)2)300人(9.1)3)471人(7.4)
4)500人(36.6)5)512人(14.0)6)600人(0.4)
7)DK・NA(16.9)
問3ア
メ リカの 現 在 の 副 大 統 領 の 名 前 は次 の う ち どれ で し ょうか 。
1)ク
リ ン ト ン(18.4)2)ド
ー ル(12.8)3)ゴ
ア(29.1)
4)モ
ン デ ー ル(17.8)5)ブ
ッ シ ュ(2.4)6)ペ
ロ ー(1.9)
7)DK・NA(17.6)
各 問 の 正 解 は,問1が1)梶
あ る 。 す な わ ち 正 解 率 は,官
統 領 は29.1%だ
山 静 六,問2が4)500人,問3が3)ゴ
房 長 官 が65.3%,衆
っ た 。 そ れ で は,18歳
う で あ っ た か 。 問1の
か ら19歳
アで
議 院 定 数 が36.6%,米
副大
の年 齢 層 の正 解 率 は ど の よ
正 解 率 は50.0%,問2は10.7%,問3は14.3%で
あ っ
た 。 い ず れ も サ ン プ ル 全 体 の 正 解 率 を 大 き く下 回 る ば か り で な く,全
の 中 で 最 低 で あ る 。 図2に
年齢層
は年 齢 階 層 別 の各 問 の正 解 率 を示 す 。 政 治 知 識 は
一 般 に 年 齢 が 高 く な る に し た が って 高 く な る 傾 向 が 見 られ る が
,個
々 の知 識
に よ って 年 齢 別 の 正 解 率 の パ タ ー ンは微 妙 に異 な る。 官 房 長 官 の名 前 に 関 し
て は50代
が 最:も正 解 率 が 高 く,衆
院 定 数 に つ い て は60歳
が 高 い 。 ま た 米 副 大 統 領 に つ い て の 正 解 率 は40代
以 上 が 最 も正 解 率
が 最 も 高 い が,他
に 比 べ て 年 齢 に よ る 正 解 率 の 差 が 少 な い 。 こ の う ち,衆
の項 目
院 定 数 に関 して は選
挙 椎 の 有 無 が 正 解 率 の 差 異 の 原 因 と な っ て い る こ と が 推 測 で き る 。 仮 に18
歳 選 挙 権 が 実 現 す れ ば,18歳
(739)159
か ら19歳
の 年 齢 層 の 正 解 率 は 現 状 よ り上 昇 す
政 経論 叢
第71巻 第5・6号
%
(
図2年
齢別正解率
0
8
0
7
0
6
0
5
0
4
....…
0
3
....、
0
2
'
0
1
'
二 慣
・二 二=へ
.●'一
/
一
馬
一◆一
.'
官房長官
\ ▲
・畳 一 衆 院 定 数
,二"
・
→ ・一 米 副 大 統 領
0
18∼1920∼2930∼3940∼4950∼5960以
上
年
図3年
60以
齢
齢別正解数分布
上{
..・.・.・.・.・.・.・III1,1、Illlll・1・llllll,・
年
・・一4gi灘
。
・
・
・
・
・
…lllllllII
問 問 問 問
O
U 2 1 0
圏 腰 四 囲
韓 二===撒=鞘====‡===‡===躍=,=鞘
に..・..."..七"七
、1
_.__...,.....,Illllllll,,lll,1、1,lllllI
齢30∼3gi
20∼29
18∼1g灘i難:i・i・i・i・i・i・i・i・iiiiiii}ilililili;il照lilili榊il坤ili
020406080100(%)
る可 能 性 が 高 い。
図3に
ら19歳
は,正
解 数 の 分 布 を 年 齢 別 に 示 す 。3問
の 年 齢 層 で は 皆 無 で あ っ た 一 方,全
19歳 の 年 齢 層 で は 約4割(39.3%)に
46.4%に
の ぼ り,8割
160(740)
問 不 正 解 で あ っ た 者 は18歳
の ぼ り最 も多 い 。 ま た,1問
以 上 の 者 は1問
よ う に 政 治 知 識 に つ い て は18歳
と も正 解 し た 者 は,18歳
か
か ら
正解者 が
以 下 の正 解 率 とい う こ と に な る。 こ の
か ら19歳
の層 は他 の年 齢 層 に比 して知 識 水
18歳 選挙権に関す る考察
準 が か な り低 い こ とが わ か る。
しか し,16歳
以 上 を 対 象 と したNHK放
送 文 化 研 究 所 に よ る全 国 調 査 に
よ る と,「 憲 法 で定 め られ た 国民 の権 利 」 に 関 す る知 識 に つ い て は,16歳
か
ら19歳 の年 齢 層 は最 も高 い とい う結 果 もあ る⑳ 。 中学 や 高 校 の 社 会 科 の 授
業 で学 習 した効 果 が残 って い る た め で あ ろ う。 た だ,NHK調
査 で質 問 され
た権 利 に関 す る知 識 は投 票 選 択 の 際 に必 要 な知 識 とは い え ず,投 票 参 加 との
関 連 性 は低 い と考 え られ る。
5-2生
活 と政 治 との 関 わ り
若者 の 政 治 的 無 関 心 が いわ れ て 久 しいが,そ
の原 因 と して 日本 社 会 が経 済
的 に豊 か にな り,若 者 が 社 会 の 現 状 に満 足 した こ とが しば しば指 摘 さ れ る。
この調 査 で は,「 あ な た の生 活 と現 実 の政 治 との 間 に は,ど
の よ うな 関係が
あ る と思 い ます か。」 と い う質 問項 目を設 定 し,「 強 く影 響 を及 ぼ されて い る」
「や や 影 響 を 及 ぼ され て い る」 「ほ とん ど関 係 は な い 」 「ま っ た く関 係 な い」
と い う回 答 選 択 肢 を 設 定 した。 図4に
は 「ほ とん ど関 係 はな い」 また は 「ま っ
た く関 係 な い」 を選 択 した者 の年 齢 階層 別 比率 を 示 す。 この 年 齢 階 層 別 分 布
のパ タ ー ンは,40歳
代 を 底 とす るV字
型(谷
間構 造)を
示 して お り,ま
た
18歳 か ら19歳 の 年 齢 層 で 最 も'高い 比 率 を示 す 。
図4に
は ま た,「 現 在 の お た くの 暮 ら し向 きに,ど の 程 度 満 足 して い ま す
か 。」 との 質 問 に 対 して,「 満 足 して い る」 ま た は 「どち らか とい え ば 満足 し
て い る」 と回 答 した 者 の 比 率 を示 す 。 こ ち ら も お お む ねV字
を 示 して お り,18∼19歳
型 のパ タ ー ン
の年 齢 層 で 顕 著 に 高 い 。 こ の よ う に18歳
か ら19
・ 歳 の年 齢 層 は生 活 満 足 度 が 高 く,か つ 生 活 と政 治 と も関 わ りを あ ま り感 じて
い な い 層 とい え る。 朝 日新 聞 社 の 世論 調 査 に よ る と,生 活 や 政 治 に対 す る満
足 感 が 谷 間 型 に な っ たの は,1970年
代 後 半 か ら1980年 代 にか けて で あ り,
この谷 間構 造 が 若者 の 保 守 化 の 一 因 と推 定 され た(24)。
この パ タ ー ンは現 在 で
(741)161
政 経 論 叢i第71巻
図4政
第5・6号
治 と生 活 の 関 係 と生 活 満 足(%)
90
一◆ 一・ 関 係 な し
80
一■ 一
生活満足
70
60
50
◆..
40
・
噌
隔㌔ ◆
㌔ 亀
哨陶
30
物噛
㌔
㌦
、,'◆
、6'
袖
一
一'一'"'"
幅'ρ
噛,
20
10
0
18∼1920∼2930∼3940∼4950∼5960以
上
年
齢
も続 い て い る と み て よ さ そ う で あ る 。
こ れ ら の 調 査 結 果 か ら み て も,18歳
さ れ る。 徴 兵 制 も な く,平
の 若 者 が,投
仮 に18歳
和 な 時 代,経
か ら19歳
済 的 繁 栄 の 時 代 に生 ま れ育 った現 在
票 に 行 か な い と い う の は,あ
選 挙 権 が 実 現 した と し て も,18歳
を 向 上 さ せ る に は,中
の 年 齢 層 の低 投 票 率 が 予 想
る 意 味 で 当 然 の 帰 結 と も い え る。
か ら19歳
の年齢 層 の政治 意識
学 校 や 高 校 に お け る政 治 教 育 の 見 直 しが 不 可 欠 で あ る。
具 体 的 に は 政 策 デ ィ ベ ー トの 導 入 な ど を 検 討 す る 必 要 が あ ろ う。
結
・ び
本 稿 で は,18歳
国 で近 年,選
へ の選 挙 権 年 齢 引 き下 げ論 に つ い て 検 討 を加 え た 。 わ が
挙権 年齢 の 引 き下 げ論 が 台 頭 して き た理 由 と して は,少 子 高 齢
社 会 へ の対 応,若
者 の 政 治 的社 会化 の意 義,世 界 的 な 潮 流 へ の 同調 とい う論
点 が挙 げ られ る。 この う ち最 も有力 な根 拠 は 少子 高齢 社 会 へ の 対 応 とい う論
162(742)
18歳 選挙権 に関す る考察
点 で あ る。 しか し,皮 肉 な こ とに 選 挙 権年 齢 引 き下 げ に よ って 新 た に選 挙 権
を得 る18歳
と19歳 の年 齢層 が全 有権 者 中 に 占め る比率 は 低 下 して お り,選
挙 結 果 に及 ぼす 影 響 力 は 微小 とい わ ざ るを 得 な い。
また,若 者 の政 治 的社 会 化 の意 義 につ いて も,ア メ リカ に お け る18歳
20歳 の年 齢 層 の低 投 票 率 とい う結 果 か らす る と,ア
メ リカ と同 様 に投 票 率 の
年 齢 によ る差が 大 きいわが 国 で はさ ほど期 待 で きない と思 われ る。 また,本
で 分析 しt:全 国世 論 調 査 結 果 によ る と,18歳
から
稿
か ら19歳 の層 は最 も政 治 と生 活
との関 係 を 感 じて いな い年 齢 層 であ る。 若 者 の政 治 意 識 を高 め るた めに は,中
学 校 ・高 校 教 育 におけ る公 民 教 育 の あ り方 を再 検 討 す るこ と も必 要 とな ろ う。
世 界 的 潮 流 へ の同 調 と い う論 点 は,選 挙 権 年 齢 引 き下 げ論 に と って,さ ほ
ど強 力 な論 点 と は い え な い。 と は い え,さ ま ざ ま な面 で の グ ロー バ ル 化 が 指
摘 され て い る今 日で は無 視 で き な い論 点 で は あ る。
全 体 と して,18歳
へ の選 挙権 年 齢 引 き下 げ の効 果 は あ る と して も 微 小 で
あ ろ う。 これ か ら さ らに議 論 を展 開 して い くた め に は法 律 論 に基 づ く議 論 も
さ る こ とな が ら,政 治 学 的観 点 か らは少 な くと も次 の2点 に 関 す る資 料 の蓄
積 が 必 要 で あ る と考 え る。 第 一 は,18歳
と20歳 と政 治 意 識 の質 に違 い が 存
在 す るの か 否 か とい う点 に関 す る詳 密 な分 析 で あ る。 そ の た め に は青 年 層 に
絞 った 政 治 意 識 研 究 の必 要 性 が認 め られ る。 第 二 は,18歳
国 民,と
選 挙 権 に対 す る
くに若 年 層 の 世 論 動 向 の 把 握 で あ る。 こ こ で は明 治 大 学 で実 施 した
意 識 調 査 結 果 を 紹介 した が,今 後 よ り広 範 なサ ン プル で 調 査 を実 施 す る必 要
が あ る。 世 界 的 潮 流 へ の 同 調 とい う以 外,選 挙 権 引 き下 げ論 の確 固 た る根 拠
が希 薄 な現 状 で 選挙 権 年 齢 引 き下 げを 実 施 す る に は,少 な くと も若 者 自身 に
引 き下 げ へ の熱 い要 望 が な けれ ば な らな い と考 え る。
《注 》
(1)R.Roseeds.InternationalEnc:yclopediaofElections(Macmillan,2000),p.
14.な
(743)163
お,先
進 主 要 国 に お け る18歳
選 挙 権 の 導 入 時 期 は,ア
メ リ カ1970年,
政 経論 叢
イ ギ リ ス1969年,旧
第71巻 第5・6号
西 ドイ ツ1970年,フ
あ っ た 。 こ れ ら の 国 は い ず れ も21歳
ラ ン ス1974年,イ
選 挙 権 か ら18歳
タ リ ア1975年
で
選 挙 権 に 移 行 し た 。 「主
要 国 の 選 挙 権 年 齢 の 引 き 下 げ に つ い て 」1999年8月19日,国
立 国会 図 書 館 調
査 及 び 立 法 考 査 局 政 治 議 会 調 査 室 ・課 作 成 資 料 。
(2)成
田憲 彦
7号,調
(3)杉
「日本 で 選 挙 権 資 格 を18歳
に 下 げ た 場 合 の 利 害 得 失 」 『調 レ」 第16
査 立 法 考 査 局 政 治 行 政 調 査 室 政 治 行 政 課,1975年7月14日,2∼6頁
原正純
。
「選 挙 権 年 齢 の 引 き 下 げ 問 題 に つ い て 」 『選 挙 時 報 』 第19巻
号,1970年,6頁
第11
。
(4)L.S,Maisel,1勉
漉 θsα忽E'θ6`醜sゴ
ηAmerica,thisg⑫
纏(Rowman&
LittlefieldPublishers,2002),pp.99-100.
(5)各
調 査 の 結 果 は 「選 挙 時 報 』1972年6月
(6)『
朝 日 新 聞 』1999年8月2日
い て も18歳
(7)15∼19歳
509頁
に掲 載 され て い る。
社 説 。 朝 日 新 聞 は2002年9月26日
の社説 にお
選 挙 権 を 主 張 して い る 。
の 労 働 力 率 は,1970年
減 少 した。 労 働 省 編
(8)井
号,31∼45頁
に は32.5%だ
「労 働 白 書 』 平 成12年
っ た の が1999年
版,日
に は17.7%に
本 労 働 研 究 機 構,2000年,
。
上
繁
「18歳 以 上 に 選 挙 権 を 」 「日 本 経 済 新 聞 』1999年3月21日
「中 外
野和夫
「18歳 投 票 の 本 格 的 論 議 を 」 「産 経 新 聞 』2000年2月20日
「一 筆
時 評 」。
(9)長
多 論 」。
(10)「
毎 日新 聞 』2002年9月16日
(11;法
社説。
学 的 立 場 か ら の 選 挙 権 年 齢 に 関 す る 論 稿 と し て,辻
村 みよ子
「な ぜ 未 成 年
者 は 選 挙 権 を も っ て い な い の か 」 『法 学 セ ミ ナ ー 』No.424,1990年4月,
30∼32頁,が
あ る。
(12)http://www.doj.or.jp/seisaku/sihou/BOX-SHOO22.html.
(13)Rights編
『16歳 選 挙 権 の 実 現 を 』 現 代 人 文 社,2002年
。 ま た,政
治学者 か
ら も18歳
選 挙 権 の 主 張 が み ら れ る 。 前 田 英 昭 「選 挙 ・被 選 挙 権 の 引 き 下 げ:
'若 者 よ
,政 治 を か え て い こ う」http://www.citizen・netorg/policy/hmaeda1/
(14)http://www.ipss.go.jp/Japanese/newestO2/1/suikei_g.html
(15)総
務 省統計局
「平 成12年
国 勢調 査 報 告
協 会,2001年,6∼7頁,第3表
(16)成
田,前
(17)合
衆 国 商 務 省 セ ン サ ス 局 線(鳥
164(744)
そ の1全
国 編 』 日本 統 計
掲論文。
東 洋 書 林,2002年,251頁
(18)東
第2巻
よ り算 出。
京都選挙管理委員会
居 泰 彦 監 訳)『 現 代 ア メ リ カ デ ー タ総 覧2001』
。
『平 成13年7月29B執
行
参議院議員選挙
年代別投
18歳 選 挙 権 に関 す る考 察
票 行 動 調 査 結 果 』2001年
。 ま た,ド
イ ツ の 地 方 選 挙 に お い て は16歳
を 認 め て い る 州 も あ る が,16∼17歳
の 年 齢 層 の 投 票 率 は20歳
い う事 例 も 存 在 す る。 『朝 日 新 聞 』1997年10月23日
(19)比
較 研 究 で 対 象 と さ れ た 国 を,若
の 投 票 率 一65歳
以 上 の 投 票 率)が
位 ア メ リ カ(一31),3位
8),9位
年 層 と 老 年 層 と の 投 票 率 の 差(30歳
ノ ル ウ ェ ー(一17),7位
オ ラ ン ダ(一6),10位
代 よ り も高 い と
。
大 き い 順 に 並 べ る と,1位
ス イ ス(一30),4位
ラ ン ド(一18),6位
で選 挙権
イ ギ リス(一21),5位
ド イ ツ(一11),8位
オ ー ス ト ラ リ ア(一2)で
未満
日 本(一37),2
ニ ュー ジー
ス ペ イ ン(一
あ っ た 。M.P.
Wattenberg,WhereHaveAlltheVotersGone:(HarvardUniversityPress,
2002),p.85.
(20)井
上,前
掲論文。
(21)同
調 査 の 概 要 は 次 の 通 り で あ る。
調 査 対 象:明
治大学政治経済学部学生
調 査 時 期:2001年6月27日
調 査 方 法:集
∼7月2日
合調査法
有 効 回 収 数:615名
(22)本
調 査 は,平
研 究(研
究課題
成8年
度
「杏 林 大 学 プ ロ ジ ェ ク ト研 究 費 」 の 助 成 を 得 て 行 っ た
「転 換 期 に お け る 政 治 意 識 と 投 票 行 動 」,代
科 学 部 助 教 授 河 野 武 司,共
同 助 手 進 邦 徹 夫,常
時))に
同 研 究 者:同
教 授 公 平 愼 策,同
磐 大 学 人 間 科 学 部 専 任 講 師 井 田 正 道(肩
表:杏
林 大学 社 会
専 任 講 師 岩 崎 正 洋,
書 き は いず れ も当
よ る。 記 し て 感 謝 の 意 を 表 し た い 。
調 査 概 要 は 以 下 の 通 り。
対 象 地 域:全
対
国
象:18歳
以 上 の 男 女 計2000人
調 査 時 期:1996年ll月28日
標 本 抽 出 方 法:層
∼12月4日
化多 段 無作 為 抽 出
有 効 回 収 数:1222(61.1%)
(23)NHK放
送文化研究所
会,2000年,93頁
(24)朝
(745)165
「現 代 日 本 人 の 意 識 構 造
〔第5版
〕』 日 本 放 送 出 版 協
。
日新 聞 世 論 調 査 室
「ザ ・ニ ッ ポ ン人 』 朝 日 新 聞 社,1988年,194∼195頁
。
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