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口頭発表セッション2抄録のダウンロード
O-4
医学部臨床実習における e ラーニングおよび e ポートフォリオ
を導入した教育実践の現状と課題
Problems and Improving Strategies about Bed Side Learning of Medical Students Using
e-Learning and e-Portfolio
淺田 義和
Yoshikazu ASADA
石川
鎮清
岡崎
Shizukiyo ISIKAWA
仁昭
Hitoaki OKAZAKI
自治医科大学
Jichi Medical University
<あらまし> 自治医科大学医学部では、2013 年度より医学部の臨床実習において 4 年
生および 5 年生を対象として iPad を配付し、e ラーニングおよび e ポートフォリオの導
入を開始した。本年度は、Moodle は主として臨床実習の資料掲載、manaba folio は各自
が臨床実習において日々の学習を記録するために活用した。Moodle の資料掲載において
は特にその著作権について、manaba folio での学習記録についてはその記載方法や教員
からのフィードバック内容、その頻度や質の管理などが今後の課題として得られた。
<キーワード>
e-Learning,e-Portfolio, iPad, 医学教育, 臨床実習
1.はじめに
習での学習記録を e ポートフォリオとして残し
自治医科大学医学部では、2013 年度より医学
ていけるよう、設定を行った。e ポートフォリオ
部の臨床実習において 4 年生および 5 年生に iPad
は学生が個人で日々の学習記録を残すことがで
を配付し、e ラーニングおよび e ポートフォリオ
きるほか、教員がコメントを記載することで、省
の導入をトライアルとして開始した[1]。本論文で
察を促すこともできるようにした。なお、投稿が
は、導入初年度における利用方法の詳細および利
煩雑とならないよう、各診療科において 1 投稿お
用状況の整理、今後の利用改善に向けた課題や対
よび複数のコメントで学習記録を残す形式とし
策について述べる。
た。manaba folio の画面例を図 2 に示す。
臨床実習では学生が複数の診療科をローテー
2.方法:現状の取り組み
本学では e ラーニングとして Moodle[2]を、e ポ
ートフォリオとして manaba folio[3]を、それぞれ
導入した。両システムともアカウントには学内の
インターネット接続に利用する ID・パスワード
を利用できるよう、LDAP 連携を行った。
本学は栃木と大宮において臨床実習を行い、か
ションしていくため、各学生の班と実習中の診療
科および担当する教員との対応付けは常に変化
させていく必要がある。しかし、学生アカウント
が所属する診療科および教員アカウントが担当
する学生の班を自動で変化させることは、トライ
アル導入時点では不可能であった。
そこで図 3 に示すように、学生の所属する班を
つ地域の拠点病院での実習などもあることから、
学外からもアクセスを許可した。インターネット
に接続できる環境さえあれば、学生はいつでも両
システムを利用することが可能である。
Moodle には、臨床実習において各診療科が配
付している資料を PDF 等の形式としてアップロ
ードし、学生各自にダウンロードして実習に臨ま
せた。Moodle の画面例を図 1 に示す。
manaba folio では、各診療科における臨床実
図 1
自治医科大学 Moodle の画面例
1 つのコース(授業の枠)として、学生はログイ
4.考察:今後の課題
ンすると毎回自分の班の名前がついたコースし
moodle への資料掲載では、著作権処理が課題
か表示されないようにした。一方、教員は 1 学年
となった。著作権には教育機関における複製等の
すべての班が表示される。毎回、自分の科を回っ
制限があるが、Moodle 上に資料を掲載すること
ている班の番号を選ぶことで、そのときに担当し
は公衆送信となり、正規の著作権処理手続きを踏
ている学生の情報を閲覧することが可能となる。
む必要が生じるとされる[4]。本年度は著作権処理
両システムの導入については学生・教員に対し
が不要である資料のみを掲載したが、著作権問題
て複数回の操作解説の講習を行った他、各学生お
よび臨床実習担当の教員に対する iPad の配付を
行い、病院環境での利用促進に努めた。
2013 年度はトライアルの運用期間として、両
システムに関して利用は必須とはしなかった。
の理解と解決は、次年度以降の課題の 1 つである。
学習記録を manaba folio に残すことについて
は、講習会でも質問のあった内容や頻度に関する
規定を作成する必要性が課題に挙げられる。
現在利用を続けている学生の投稿をみても、そ
の形式は様々である。利用者の意見を集め、シス
3.結果
テムの改善につないでいくことが必要である。
利用方法の講習会は、4 年生に対しては 4 月に
また、教員からのフィードバックを定期的に行
2 回、5 年生に対しては 6 月および 7 月に 1 回ず
えるよう FD を継続し、投稿した学生の満足度を
つ開催した。また、教員向けの FD としては、5
高め、よりよい省察機会とすることも重要である。
月から 7 月にかけて各診療科の教員と日程を調
IT を利用した臨床実習の改善には課題も多い
整しながら実施した他、2014 年の 1 月および 2
が、アウトカム基盤型教育を達成し、国際認証の
月に 1 回ずつの FD を企画した。
基準を満たしていくためにも、継続的な取り組み
学生・教員ともに入力する内容や頻度、および
による課題解決が必要である。
利用が必須であるか任意であるかという質問が
みられた。教員の FD 時には、掲載する資料に関
する著作権処理についての質問が複数あった。
以下、2013 年 4 月より 2014 年 1 月までの運用
結果について述べる。
moodle 上には 4 年生の実習に関する診療科が 7
つ、5 年生の実習に関する診療科が 1 つの合計 8
診療科について臨床実習の資料を掲載した。
manaba folio では 370 件の投稿がみられた。
内訳は 4 年生が 292 件(班平均 18.2±8.6)、5 年
生が 78 件(班平均 6.5±1.5)であった。
各投稿についたコメントの総数は 1105 件であ
り、内訳は 4 年生が 686 件、5 年生が 192 件、教
員が 227 件であった。
図 2 manaba folio の画面例
参考文献
[1] 岡崎 仁昭, 淺田 義和, 石川 鎮清:”自治医科
大学における国際的な地域医療教育の構築,”
医学教育, Vol.44, suppl, pp.116, 2013
[2] moodle.org : https://moodle.org/?lang=ja
(accessed 31/01/2014)
[3] 深瀬 道晴, 堀江 郁美, 立田 ルミ:” 獨協大
学情報学研究所におけるポートフォリオ活
用,”情報処理学会研究報告. コンピュータと
教育研究会報告 2013-CE-119(14), 1-8, 2013
[4] 日本著作権教育研究会:”e ラーニングと著作
権 ”, http://www.jcea.info/e-learning1.html
(accessed 31/01/2014)
図 3 コース一覧の表示(教員)
O-5
初学者の看護技術習得を支援するためのグループ演習を
ベースにした授業デザイン
Instructional design on the group work for supporting a beginner’s nursing skill acquisition
重年
清香 1 , 真嶋由貴恵 2
Kiyoka SHIGETOSHI,Yukie MAJIMA
1 森ノ宮医療大学,
2 大阪府立大学
Morinomiya University of Medical Science, Osaka Prefecture University
<あらまし> 従来の看護技術習得において、教員の指導の合間に、グループで効果的な演習を
行うことが必要である。しかし、入学して間もない学生にとっては、グループ間の人間関係の構築に時
間がかかるため、有効に機能せず、技術演習が効果的に行えないという課題があった。そこで、看護学
科 1 年前期に開講する日常生活援助技術科目で、学生の主体的な学習活動の促進と学習意欲
の向上を目的に、学習者主体でグループを編成し、その活動を中心にした授業設計を行った結果、
前年と比較して看護技術の習得状況に改善が見られた。本発表ではその方法をインストラクショナル
デザインの観点から整理、分析する。
<キーワード>
初学者,看護技術、グループ演習、授業デザイン
1.はじめに
近年の医療の進歩や社会の急激な変化に対応
できる看護師を育成するために、看護系大学にお
いては、看護実践能力の育成強化と主体的探求的
活動が保障されるような教育内容・方法の工夫が
必要である。
研究対象校の基礎看護学領域では、1 年次前期
に日常生活援助技術を学習する科目を開講して
いる。1 学年約 80 名に対して 60 時間(2 単位)
の演習科目であり、看護実践に必要な基礎的知識
と技術を学修できるよう講義と演習を組み合わ
せ、筆記試験と実技試験による評価を行っている。
前年度、履修者の半数以上が実技再試験該当者
となり、従来の知識伝達型一斉講義と演習方法を
見直した。その結果、入学して間もない学生は、
新しい人間関係や初めての演習に戸惑い、演習時
間を有効に活用できていない状況が考えられた。
そのため、演習時だけでなく、講義の段階から学
生の主体的な学習活動と学習意欲を促進するよ
う学習者主体でグループを構成し、グループ活動
を中心に授業を行ったところ、前年度と比較して
実技再試験該当者の減少が見られた。本稿では、
L.M.ケラーの ARCS モデルの観点から本授業を
整理・分析し、今後の課題を明らかにする。
2.授業実践方法
本科目は、生活援助という臨床現場で主要な看
護活動の一つであり、看護学の必修科目として位
置づけられている。ここでは、1 年前期の学生が、
看護師の基本的姿勢やすべての看護行為に共通
する技術を学修し、患者が安全で安楽な療養生活
を送るために必要となる基本的な生活援助技術
を習得することをねらいとして、5 つの到達目標
を設定している(表 1)。
表 1 本科目の目標
1.人間の日常生活や健康に支障をきたした状態について、
身体的、精神的、社会的側面から理解できる
2.看護技術に関する概念、4 つの基本原則(安全、安楽、
自立、個別性)を理解できる
3.すべての看護行為に共通する援助技術について理解し、
援助時に活用できる
4.安全で快適な療養生活に必要な基本的援助技術を実施
できる
5.安楽な生活に必要な基本的援助技術を実施できる
次に、到達目標に沿った教育内容、教育方法を
検討し、ARCS モデルの観点から学習者の学習意
欲を予想した。
Attention(注意)については、看護師を目指
して入学した学生であれば、はじめは注意深い
(関心が高い)が、その注意を維持させるようグ
ループ・主体性をキーワードにした活動が必要と
予想した。
Relevance(関連性)については、本科目の各
講義・演習が看護師になるためにどのように関連
するのか実感できる工夫が必要と予想した。
Confidence(自信)については、演習では効果
的に身体を活用する能力が問われ、学生の個人差
が大きい。練習によって看護技術ができるように
3.授業実施後の評価
なり、学生の自信につながると予想した。
Satisfaction(満足感)については、本科目の
看護技術について、自己練習を重ねて実技試験に
合格することが満足感を与え、今後の学習意欲に
つながると予想した。
次に、15 回の授業(1 回 4 時間・計 60 時間)
を計画し、実践した授業方法を ARCS モデルの
4つの分類(さらに、3 つの下位分類)に従って
得られた。
2)アンケート結果
看護学生が自由記載した内容について、意味の
ある文脈で区切り、1 記録単位としてデータをコ
ード化した。次に、類似性のあるコードでまとま
りをつくり分類した。その結果、≪グループ活動
≫≪看護を目指す意欲の維持・向上≫≪講義への
課題≫に分類された。≪グループ活動≫に関する
分類した(表 2)。
主な内容は、「グループで練習してメンバーとの
意見交換がよかった」「自己の学びや成長につな
がった」「グループワークが楽しかった」などで
表 2 授業計画・グループ活動・授業方法の整理
(ARCS モデルの 4 つの分類より)
講義
グループ活動
学習意欲を刺激するために行った方略抽出(ARCSモデルの分類より)
A:注意
1
2
3
4
5
6
7
8
教科ガイダンス
看護技術とは
看護行為に共通する援
助技術①ボディメカニク
ス
看護行為に共通する援
助技術②コミュニケー
ション
看護行為に共通する援
助技術②コミュニケー
ション
看護行為に共通する援
助技術③ 環境調整
演習ガイダンス
療養環境について
看護行為に共通する援
助技術④ 手指衛生
【演習】衛生学的手洗い
リネン類の取り扱い
安全で快適な療養環境
に必要な基本的援助技
9 術
【演習】ベッドメーキング
(下シーツのみ)
【演習】ベッドメーキング
10 安楽な体位、体位変換
11
12
13
14
15
安楽な生活に必要な基
本的援助技術①体位
【演習】安楽な体位・体
位変換
【演習】安楽な体位保
持・体位変換
臥床患者のシーツ交換
安楽な生活に必要な基
本的援助技術② 罨法
【演習】罨法
安全で安楽な生活に必
要な基本的援助技術
(まとめ)
×
R:関連性
A3:変化性
R2:動機との一致
A2:探求心の喚起
R3:親しみやすさ
A1:知覚的喚起
R3:親しみやすさ
C:自信
S:満足感
4.考察
○
表 2 より本授業では、毎回「A:注意」と「R:
関連性」を組み入れていたことがわかる。「R:
関連性」においては、授業前期は初学者がグルー
プメンバーとの関係性を深められるよう「R3 :
A1:知覚的喚起
A2:探求心の喚起
R1 :目的指向性
A2:探求心の喚起
R3:親しみやすさ
○
A3:変化性
A2:探求心の喚起
R3:親しみやすさ
○
A2:探求心の喚起
A1:知覚的喚起
R3:親しみやすさ
A1 :知覚的喚起
A2:探求心の喚起
A3:変化性
A2探求心の喚起
R1:目的志向性
R2:動機との一致
C1:学習要件
R1:目的指向性
C1:学習要件
A2:探求心の喚起
A3:変化性
R1:目的指向性
R2:動機との一致
C1:学習要件
C2:成功の機会
A2:変化性
A3:探求心の喚起
R1:目的指向性
A2:探求心の喚起
R1:目的指向性
○
○
○
○
○
○
×
A1:知覚的喚起
A2:探求心の喚起
○
A2:探求心の喚起
○
あった。≪看護を目指す意欲の維持・向上≫に関
する内容は、「実際の現場で役立つ体験・学ぶこ
とができた」「少しずつ上手くなっているのが実
感できた」「これからも練習していきたい」など
であった。
×
○
1)アンケート調査
本科目終了後、自記式質問紙を用いた授業アン
ケート調査を実施した。なお、学生への本研究へ
の協力依頼は成績確定後に行い、82 名の協力が
R3:親しみやすさ
R1:目的指向性
C1:学習要件
C2:成功の機会
S1:自然な結果
親しみやすさ」を、授業中~後期は演習を通して
科目目標に向かって意欲的に取り組め るよう
「R1:目的指向性」を組み入れていた。特に、
授業 8 回目以降は毎時間グループ演習とし、学生
の練習が「C1:学習要点」
「C2:成功の機会」に
繋がるよう組み立てていた。15 回の授業を上記
のように構成したことで、アンケート結果の≪看
護を目指す意欲の維持・向上≫が分類されたと考
える。グループ演習をベースにした授業デザイン
は、看護技術習得を目指す初学者の学習意欲を高
める方法として期待できる。今後も継続的に運用
し評価していく必要がある。
参考文献
[1] J.M.ケラー,
(鈴木克明監訳)
:学習意欲を
デザインする ARCS モデルによるインストラ
クショナルデザイン,2010.
O-6
地域体験実習における e-ポートフォリオのアクセシビリティの差による評価の比較
Comparison study into the the impact on the evaluation of e-portfolios in
early exposure program regarding to its accessibility
川上ちひろ、丹羽雅之、西城卓也、古田裕美
村岡千種、藤崎和彦、鈴木康之
Chihiro KAWAKAMI, Masayuki NIWA, Takuya SAIKI, Yumi FURUTA,
Chikusa MURAOKA, Kazuhiko FUJISAKI, Yasuyuki SUZUKI
岐阜大学医学教育開発研究センター
Gifu University, Medical Education Development Center
<あらまし> 岐阜大学医学科 1 年生の地域体験実習では、2009 年度から e-ポートフォ
リオでの実習のふりかえりを行っている。学外から e-ポートフォリオへのアクセスが不
可能だった 2009 年度と、可能になった 2010 年度以降の、教員による学生の e-ポートフ
ォリオ実習評価と、教員による学生の実習の態度評価を比較した。アクセシビリティが
よくなる(学外からのアクセスが可能)ことで、実習評価が向上することが示唆された。
<キーワード> e-ポートフォリオ、アクセシビリティ、地域体験実習、評価
1.はじめに
岐阜大学医学科の 1 年生の後期(10 月~11 月)
に、地域に住む人々(保育園児、妊婦、高齢者)
と 6 週間にわたり同じパートナーと継続的に交
流実習をする「地域体験実習」を行っている。
この実習は 2007 年に試行的実施を経て、2008
年から正式な授業となり現在に至っている。当初
は手書きによる実習のふりかえり(ポートフォリ
オ)を行っていたが、2009 年度から e-ポートフ
ォリオを導入した[1]。
今回は、学外から e-ポートフォリオへのアク
セスが不可能だった 2009 年度(学内のみの利用)
と、学外からのアクセスが可能になった 2010 年
度以降の、教員によるポートフォリオ評価と実習
態度評価や、学生の実習ふりかえりアンケートを
比較した。このアクセシビリティの違いが、評価
などにどのように影響するかを分析し、e-ポート
フォリオの利用の効果と今後の課題を検討した。
いる。
(1)e-ポートフォリオの内容評価(7 段階評価、
7:excellent、5:good、3:fair、1:fail)
(2)実習の態度評価(5 段階評価、5:good、3:
fair、1:bad)
<e-ポートフォリオ入力画面>
2.方法
地域体験実習は 2009 年度では交流実習が 5 週
間、2010 年度以降は交流実習が 6 週間実施され
ている(交流実習の前後の週には事前説明とまと
めの会も実施)
。
それぞれの領域(保育園児、妊婦、高齢者)の
実習施設には担当教員が 2 名程度おり、毎回学生
の実習中の態度評価と後日提出されるポートフ
ォリオを読み、以下のような基準で評価をつけて
2009 年度(学外から e-ポートフォリオへのア
クセスが不可能だった)と、2010 年度以降(学
外からのアクセスが可能になった)の、アクセシ
ビリティが向上した場合の e-ポートフォリオの
評価と実習態度評価を比較した。
なお、有意性の検定には Mann-Whitney U 検定を
用いた。
<e-ポートフォリオ評価入力画面>
4.考察
3.結果
検定の結果を以下に示す。
(1)e-ポートフォリオ評価
年 2009
2010
2011
n
61/101 99/107
95/107
Av 5.09
5.69*** 5.36**
SD 0.74
0.72
0.50
2012
104/108
5.13
0.38
10-12
298
5.39*
0.60
*p<0.05 :vs.2009,**p<0.01:vs2010,
***p<0.001:vs.2009;
n:母数は学生在籍数; Av:平均
検定の結果、2009 年度と 2010 年度では、e-ポ
ートフォリオ評価、実習態度評価ともに差がみら
れた。また、2009 年度と 2011 年度では、e-ポー
トフォリオ評価で差がみられ、実習態度評価では
差がみられなかった。
2009 年度と 2012 年度では、
e-ポートフォリオ評価、実習態度評価ともに差が
みられなかった。また、2009 年度と 2010~2012
年度の合計の間で、e-ポートフォリオ評価で差が
みられた。
以上のことから、年度によって差にばらつきが
あるため、アクセシビリティがよくなること(学
外からのアクセスが可能になる)によって確実に
学生の評価が向上するということはいえないだ
ろう。同じ条件(学外からのアクセスが可能)の
年度の間でも差がみられることもあったため、在
籍学生の性質など他の因子が影響している可能
性が考えられる。しかし 2009 年度と 2010 年度~
2012 年度の合計の e-ポートフォリオ評価の比較
でも有意性が認められたため、アクセシビリティ
がよくなることによって、e-ポートフォリオ評価
が向上する傾向があるということが示唆される。
また、2009 年度の学生 n が少なかったのは、
学外からのアクセスができなかったため、提出率
に影響したことが考えられる。具体的には、記入
漏れ、提出期限に間に合わなかった等の理由で、
学生・教員共に結果的に一部分欠損データとなっ
てしまったのではないかと推測する。
e-ポートフォリオ導入の初年度は、締め切りな
・e-ポートフォリオ評価では、2009 年度と 2010
年度の間、2010 年度と 2011 年度の間で差がみら
れた。
・また 2009 年度と 2010~2012 年度の合計の間で、
差がみられた。
どの事務的なことや、実習や e-ポートフォリオ
の評価の基準もはっきりしなかったことがあっ
たが、年度を経るごとにこのような基準が明確化
されてきた。このことは、e-ポートフォリオシス
テムを導入したことの効果の一つであると考え
る。
(2)実習態度評価
年 2009
2010
n
59/101 98/107
Av 4.17
4.22**
SD 0.36
0.32
2011
94/107
4.11
0.22
2012
100/108
4.03
0.12
10-12
292
4.12
0.25
**p<0.01:vs.2009;
n:母数は学生在籍数; Av:平均
・実習態度評価では、2009 年度と 2010 年度の間
で差がみられた。
・また 2009 年度と 2010~2012 年度の合計の間で
は、差がみられなかった。
参考文献
[1] 川上ちひろ,加藤智美,阿部恵子,村岡千種,
那波潤美:
“初年時における地域基盤型実習”
日本の医学教育の挑戦,pp.142-150,2012.
[2] 丹羽雅之:“e-Portofolios システムの構築
と利用” 日本の医学教育の挑戦,pp.200-204,
2012.
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