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SPring-8施設・・・・熊谷教孝

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SPring-8施設・・・・熊谷教孝
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放射光第 9 巻第 5 号
(1996年)
熊谷教孝
原研・理研大型放射光施設計画推進共同チーム*
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概要
そのセルから偏向電磁石 2 台を抜いた直線セル
大型放射光施設 SPring-8
8GeV)1) は,
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X 線領域での生物,物理,化学,
4 セルで構成されている。蓄積リングへの電子ビ
ーム入射は,
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0mA のビーム強度を安定に実現
医学等の先端的分野での基礎および応用研究に用
するために, 8GeV の全エネルギー入射方式と
いるため,
日本原子力研究所・理化学研究所が共
し,また蓄積リングでイオントラップ等によるビ
同して平成 2 年から兵庫県播磨科学公園都市内
ーム不安定性により,ビーム強度とビーム性能が
に建設を進めている挿入光源を主体とした高輝度
劣化する場合にそなえて陽電子の加速,蓄積がで
放射光光源である。この施設の全体配置図を図 i
きるように加速器系全体が作られている。加速器
に示す。
系の主要パラメータを表 1 に示す。
加速器施設は高輝度光を作る 8GeV の蓄積リ
蓄積リングに設置される放射光ビームラインの
ング2) と,これにビームを供給する入射器系 (1
数は 61 本で,その内 38 本が挿入光源から,残り
GeV の線型加速器と 8GeV のシンクロトロン) 3
)
23 本が偏向電磁石からのビームラインである。
5nmrad の低
この内,光源から実験ステーションまでの長さが
エミッタンスビームを得るためと,高輝度光を発
80m の普通長のビームラインが 49 本, 300m の
生させる挿入光源を多数設置できるようにチャス
中尺ビームラインが 12 本,
マングリーン型磁石配列 (C-G セル) 44 セルと,
ラインが 3 本である。また将来的には, 4 ヶ所の
で構成されている。蓄積リングは,
*原研・理研大型放射光施設計画推進共同チーム
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の長尺ビーム
兵庫県赤穂郡上郡町 SPring-8 リング棟
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-8(C) 1996 The Japanese Society for Synchrotron Radiation Research
放射光第 9 巻第 5 号
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(1996年)
下
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園 -111 工漬
圏一工事中
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放射光
直線セルからのビームライン(普通長一2 本,中
尺・長尺-各 1 本)は,このセル内の電磁石を取
第 9 巻第 5 号
(1996年)
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り払い,両端の電磁石を再配置し約30m の自由
空間を利用した更に高性能の放射光ビームを利用
することができる。又 1 GeV 線型加速器は,蓄
積リングの入射器としての役割以外に小型の
VUV リング,
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および可干渉光発生装置への入射
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引き続きシンクロトロン,蓄積リングへの電子ビ、
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し, 1GeV までの電子ビームの加速に成功した。
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建物が作られている。現在施設はほぼ完成し,線
型加速器は平成 8 年 8 月からビーム調整を開始
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ームの入射調整を行い平成 9 年 10 月から完成し
た数本のビームラインを用いて実験を開始する予
据え付け,あるいはアライメントする事が必要と
定である。その後,順次ビームラインの整備を進
なる。
めて行き,平成 15 年頃までには全数のビームラ
インが完成する。本稿ではこの SPring-8 施設の
蓄積リング, 入射器系,建物等について報告す
電磁石系
蓄積リングの主電磁石は 88 台の偏向電磁石,
480 台の四極電磁石, 336 台の六極電磁石で構成
る。
されている。図 3 にこれらの電磁石の断面形状
2
.
を,表 2 に主要パラメーターを示す。この他に,
蓄積リンゲ
軌道のずれを補正するための 569 台のステアリン
ラティス構造
蓄積リングは高輝度放射光の発生を主目的とし
グ電磁石,入射時のバンプ軌道を作るための 4
て最適化されたチャスマングリーンラティス
台のパルスバンプ電磁石,シンクロトロンからの
(C-G セル)で構成されている。このラティス構
電子ビームを蓄積リングに導き入れる 4 台のセ
造とビームの拡がりを表すオプテイカル関数を図
プタム電磁石がある。
この C-G ラティスは,偏向電磁石部
これらの電磁石は,磁場中心位置の低励磁依存
と運動量分散関数 (ηx)
性,磁石毎の励磁力一様性等を実現するため 0.5
を小さくすることで,より小さな自然エミッタン
mm 又は 0.1 m m (バンプ電磁石) のケイ素鋼板
2 に示す。
でのベータ一関数 (ßx)
ス (ε0) を実現できること,そして挿入光源を設
置する直線部で,運動量分散関数をゼロにするこ
とができる。この特長から挿入光源の輝度を決め
る直線部での実効的エミッタンスが,ビーム内の
エネルギー拡がりによらず εo のみで決まること
から,
より輝度の高い光を作ることができる。そ
の反面, ベータ関数と運動量分散関数を小さくす
るために,
より強く,より精度の高い高性能四極
および六極電磁石の製作と,
これらを高い精度で
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を積層して作られた積層型電磁石である。特に主
リング電磁石用 569 台バンプ電磁石用 4 台,セプ
電磁石では,電子軌道の安定化のために,励磁コ
タム電磁石用 2 台等で構成されている。又,六
イルから鉄芯への熱移入によって鉄芯形状が変形
極電磁石用電源は,六極電磁石部の磁場の型と真
し,それによって磁場中心や磁場の強さが変化す
空チェンバーの形状から電流リップルが二極成分
る効果をできる限り小さくするため,コイルと鉄
の磁場リップルを誘起し,電子軌道の振動,ひい
芯聞に熱絶縁をほどこしである。これら主電磁石
ては光軸の振動を引き起こすことからチョッパー
の磁場の強さはロングフリップコイルとハーモニ
型の高安定化電源が使用された。
ックコイルで測定された。又,電磁石の精密な据
え付けに必要な四極,六極電磁石の磁場中心位置
高周波系
はハーモニックコイルで全数測定され,磁石上の
高周波システムは,蓄積リングの周上 4 ヶ所
アライメント用基準点に:t 10μm の精度で移し
の高周波ステーション (A, B , C, D) に設けら
換えられた。 C-G ラティスでは,直線部に収束
れ,各ステーションは 8 台のベル型単空胴と,
用と発散用の四極,六極電磁石を交互に配置する
それを:t 0.1 C 以内で温度制御する精密冷却水温
ため,これらを精度良く並べることで COD の大
調システム,空胴に高周波を供給する高周波発生
きさを抑制する事ができる 4) 。蓄積リングでは,
装置,高周波電力を空胴に伝送する高周波伝送系
直線部の電磁石は,共通架台上にレーザーと
および加速電圧や加速位相を制御する高周波励振
CCD を用いたレーザーアライメント装置で:t 25
入力系で構成される。当面 B , C, D の 3 ヶ所でビ
μm 以内に,そして共通架台と偏向電磁石,又は
ームに一周最大 15MV 程度の加速電圧を供給す
共通架台聞はレーザートラッキングシステム
る。高周波加速空胴は,基本周波数 508.58
SMART310 で:t 0.1 mm 以内に据え付けられた 5) 。
MHz, Q 値約40 , 000 の単空胴で,図 4 にその形状
電磁石の電源は,サイリスタ又はチョッパ型の
高安定(L1 I/I
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を示す。空胴には,高周波入力カブラー,信号の
) ,高精度(分解能 16 ビット
ピックアップ端子,基本周波数および高次モード
相当)の直流定電流電源で,偏向電磁石用 1 台,
の周波数を調整する固定チューナー 1 台と可動
四極電磁石用 10 台,六極電磁石用 7 台,ステア
チューナー 2 台が取り付けられる。
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放射光第 9 巻第 5 号
(1996年)
真空系
蓄積リングの真空システム 7) は,基本的には直
線部チェンバー (3 台)と,偏向電磁石部チェン
ノミー (2 台) ,クロッチチェンバー (2 台) ,挿入
光源設置部のダミーチェンバー (1 台)およびこ
れらチェンバーをつなぐベローズ部チェンバー
(4 台)とゲートバルブ (2 台)等から構成され
ている。ダミーチェンバーは挿入光源が設置され
る際には,挿入光源用のチェンバーと交換され
る。直線部と偏向電磁石部チェンバーの断面形状
を図 5 に示す。
このチェンバーは,電子ビームが通るビーム室
と発生した放射光を取り出すためのスロット部,
チェンバー内の排気を行う非蒸発型ゲッター
(NEG) ストリップを取り付ける Ante
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部からなる。偏向電磁石部チェンバーには,この
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NEG が排気能力を持たない希ガスや CH 4 に対し
ても排気能力を持つ分布型イオンポンプが設置さ
このベル型形状は,基本モードのインピーダン
れている。スロット部を通った放射光の内,不要
スを大きく低下させる事なく,ビーム結合型の不
な部分を遮断するクッロチ,アブソーバ一部の直
安定性を引き起こす高次モードのインピーダンス
下には強力な集中型の NEG ポンプとイオンポン
を低減できる事から採用された。さらに,システ
プで放射光照射による脱ガスを排気している。こ
ムとして高次モードの影響を小さくするために空
れらのチェンバーはアルミ合金製 CA6063-T5)
胴の半数の入力カブラーの位置を水平に,残り半
数を垂直に取り付け,モードの分離を行うととも
3
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3
に,個々の空胴の高次モードの周波数が同じ値に
ならないように,形状を少しずつ変えて製作し
た。又,これとは別に各空胴にとりつけてある。
苫
可動チューナーを用いて,高次モードの周波数の
みを調整する方法が新たに開発された。高周波発
(め benclingma伊巴tchamber
HotWater
生装置は定格1. 2 MW ,周波数 508.58 MHz のク
ライストロンと,それに 90KV, 20A を供給する
クローバ一回路を必要としないサイリスタ型の高
圧電源6) で構成された。この1. 2MW のクライス
トロンからの高周波電力は矩形導波管とマジック
T を用いて 8 分岐され,スリースタブ方式の移
相器で位相が調整された後各空胴に供給される。
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(1996年)
診断用放射光ビームラインも設置される。
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BPM は, C-G セル中央の対称点の六極電磁石
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周で 288 箇所に設置された。この BPM の電気的
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中心は,リング内へ設置する前にクリーンルーム
内で, rf アンテナ法により据え付け基準面に対
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して 50μm 以内で測定された。 BPM 電極は真空
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チェンバーに直接溶接されているため,ベーキン
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磁石のアライメント基準芯に対して 10 数 μm 以
下の精度で較正する。
BPM の信号処理システムは,リング一周の閉
軌道の歪み (COD) を高精度 (0.1 mm 以下)で
で,チェンバー内面に徽密な酸化皮膜を得るため
測定する COD モードと,周囲毎のビームの位置
に, Ar+02 混合ガスをシールドガスとして用い
を,......, 1mm 程度の精度で測定するシングルパスモ
た特殊押し出しにより成型された。 24 時間のベ
ードの 2 つの信号処理回路で構成されている。
ーキングと NEG の活性化後到達した 1 セル分の
圧力分布を図 6 に示す。ベーキング温度はアルミ
0
部で 150 C ,ステンレス部で 220 C とした。又,
0
0
NEG の活性化温度は 450 C ,時間は 1 時間とし
3
.
入射器系
線型加速器
線型加速器は,電子銃,プリパンチャー,パン
チャー,
た。
250MeV 線型加速器, e 一 /e+ 変換部,
蓄積リングのようにパンチ長の短い低エミッタ
900MeV 主線型加速器およびビーム輸送系で構
ンスリングでは,真空チェンバ一等の内面形状の
成され,電子で1. 15 GeV ,陽電子で 0.9 GeV の
不連続によって作られるインピーダンスが,ビー
加速エネルギーをもっ o 電子銃としてはエミッシ
ム不安定性を引き起こす要因となる。そのためフ
ョン能力 10 A/cm2 , EIMAC 社製 Y796 のカソー
ランジ間,ベローズ,ゲートバルブのような段差
ドアセンブリ(有効面積 2 cm 2 ) を使用し,引き
や不連続部を持つ部分のインピーダンスを低く抑
出し電圧 180
えるため,ビームの通過する内面を BeCu 製の
ム電流が得られる。電子ビームのパルス巾は単パ
rf コンタクトで滑らかに接続した。
ンチ用として 1 nsec ,陽電子の多パンチ用とし
KV (定格200KV) で 20A のビー
て 10 nsec ,電子の多パンチ用として 1μsec の 3
モニタ一系
種類が可能で,目的に従って切り換えて使用す
ビーム診断系は,ビーム軌道を測定するための
る。この電子銃から発生した電子ビームは, 2 台
ボタン電極型のビーム位置モニター (BPM) ,蓄
のプリパンチャーと,定在波型加速管を用いたパ
積ビームの電流値を測定する電流モニター,チュ
ンチャーによって,高周波加速位相( "'5 度以内)
ーンを測定するチューンモニター,入射部でのビ
に約 65% の捕獲効率で捕獲され, 2
50MeV 線型
ームの位置とプロファイルを観測する蛍光板を用
加速器へ送られる。陽電子ビームを生成する場合
いたスクリーンモニタ一等で構成され,近い将来
には,この 250 MeV 線型加速器の後に設置され
ビームサイズとエミッタンスを測定する,ビーム
ている e-/e+ 変換ターゲットで,陽電子を発生
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放射光第 9 巻第 5 号
させ主線型加速器に送られる。線型加速器は,長
(1996年)
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さ 2.835 m の進行波型加速管26本で構成され,内
訳は 250 MeV 線型加速器で 7 本,主線型加速器
で 19 本である。 1 本当たりの加速エネルギーは
26MW の高周波入力に対して約45MV である。
高周波発生装置は周波数2856 MHz ,高周波出力
80MW のクライストロンと定格出力 190MW ,
パルス巾 5μsec ,パルス平坦部 2μsec ,平坦度
リングの単空胴と同じ 508.58 MHz で,形状は加
:
1
:0.5%,繰り返し 60Hz のパルスモジュレータ
速効率を重視したスロット結合型の 5 連空胴で
ー 13 式で構成され,一式で 2 本の加速管に高周
ある。加速空胴の数は, 8GeV 時に必要な最大
波電力が供給される。又主線型加速器の下流に
加速電圧 18.7 MV と空胴のシャントインピーダ
は,将来さらにビーム性能を高度化するために利
ンス約30 MO/1 台とから 8 台とし,それに必要
用できる空間が確保してある。ビームの取り出し
な1. 7MW の高周波電力は,定格 1.2MW クライ
1
.1
5GeV にシンクロト
ストロン 2 本から,各々 4 台の加速空胴に供給
ロン用 1 ヶ所と将来計画用 1 ヶ所の計 2 ヶ所に
される。 1GeV から 8GeV までの加速時に必要
設けられている。
な電圧は,クライストロンの出力を一定に保った
は 250 MeV 部に 1 ヶ所,
まま, 2 台のクライストロン聞の高周波位相を
シンク口卜口ン
0
165 から O。まで変え,必要な加速電圧をビーム
シンクロトロンは,線型加速器で加速された電
に与える。シンクロトロンへのビームの入射はセ
子または陽電子を 8GeV まで加速する。繰り返
プタム 2 台とキッカー電磁石 2 台を用いた on-
しは 1 秒で,入射 0.15秒,加速部 0.35秒,フラッ
axis 方式で,そして出射は,取り出し用キッカ
トトップ 0.15秒,減速部 0.35秒からなる。シンク
ー電磁石 3 台とバンプ電磁石を用いたシングル
ロトロンのラティス構造は加速時のトラッキング
ターン取り出し方式でビーム輸送系へ取り出す。
比の取りやすさから FODO 型とした。リングの
形状は,入射用機器と高周波空胴および出射用機
4
.
マシン制御系
器を設置するための 2 ヶ所の長直線部を持つ,一
SPring-8 のマシン制御系8) の構成を図 7 に示
周約400m のレーストラック型である。電磁石
す。入射器制御系(線型加速器とシンクロトロ
系は 64 台の偏向電磁石, 80 台の四極電磁石, 6
0
ン) ,蓄積リング制御系,中央制御系,ビームラ
台の六極電磁石, 80 台の軌道補正用二極電磁石,
イン制御系の 4 系を 100 Mbps の通信速度をもっ
入出射用キッカーおよびセプタム電磁石と,それ
光ファイバー FDDI でネットワークを構築し,
らを励磁する高精度電源で構成されている。主電
ここに 6 つの FDDI ノードが設置される。
磁石のパラメーターを表 3 に示す。真空チェンバ
FDDI の全長は約4500m で光ファイバーはエア
ーは, 0.35秒の加速部での渦電流による磁場のみ
ブロン (Air
だれを極力小さくするために,偏向部ではリブ付
に設置される。入射器系では DEC
の薄肉ステンレスチェンバーを,直線部では肉厚
使用するため,ノードシステムはマルチ・プロト
1. 5mm のステンレスチェンバーが用いられた。
コル・ルーターが用いられ,このルーターから
内径は,水平方向に 80mm ,垂直方向に 30mm
Ethernet で機器制御用 VME に接続される。蓄
とした。高周波加速空胴は共振周波数として蓄積
積リングの 4 つのノードシステムは Ethernet/
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放射光第 9 巻第 5 号
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言語又は FORTRAN で開発されている。
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ghub は蓄積リングの保守通路に沿って設置
され,この hub の各 Ethernet ポートから機器制
5
. 建屋およびユーティリティ
御用 VME の CPU ボードまで,光ケーブルで 1
蓄積リング棟の建屋構造は収納部を含む蓄積リ
対 1 で接続されている。この機器制御用 VME
ング棟の地盤レベルの経年変化と,冷却水ポン
には電磁石電源用, rf 用,ビーム診断用,挿入
プ,冷凍機およびトランス等で発生する振動の伝
光源用等がある。中央制御室には,
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達を出来る限り小さくするため,
1 周1. 5km に
hub が 1 つ設置され,この各 Ethernet ポートと
わたって直接回い岩上に建設された。建物の構造
オペレーターコンソールの UNIX ワークステー
は図 8 に示すように,加速器本体を格納する収納
ションがメタルケーブルで接続される。最終的に
部を蓄積リング棟内に設置する,サヤ堂形式を採
は,このワークステーション上から全ての系の機
用した。これにより,外境変化の影響が直接収納
器を制御することができる。運転の記録,各制御
部に伝わらない構造となっている。また,蓄積リ
機器のパラメーターなどのデータの保守,管理
ング棟の外周側 2 ヶ所と内周側 1 ヶ所の計 3 ヶ
は,データベース・サーバマシンとリレーショナ
所に,この変化による建物の変形力と各種振動が
ル・データベースを用いて行う。オペレーティン
床面を通して伝わらないように,縁切りスリット
グシステムとしては,上位ワークステーションで
が設けられた。又,冷却水ポンプなどの振動発生
は UNIX を, VME システム系ではリアルタイ
源には,大地への振動伝達を少なくするために防
ム OS (HP-RT ,あるいは OS-9) が用いられ
震装置を取り付けた。現在,収納部内の電磁石上
る。機器および軌道制御用ソフトウェアーは C
で振動測定を行っているが,冷却水などを通水し
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放射光第 9 巻第 5 号
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た状態で最大 10 数 nm と非常に小さい。また設
置機器の室温変化による変形を抑えるため,収納
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謝辞
本稿を書くに当たって資料を提供して下さっ
部内は設定温度に対して:t 1 C 以内に,実験ホー
た, SPring-8 の横溝英明,米原博人,原雅弘,
ル内では:t 2 C以内に制御される。このように光
大熊春夫,妻木孝司,田中良太郎,田中均の各氏
軸の変動と振動除去のために,いろいろと建物の
に深く感謝いたします。
0
建設段階から対策が取られているが,仮に光軸の
変動や振動が問題となった場合には,個々の挿入
文献
光源の変動を独立に補正するフィードバックシス
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)
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テムを導入することにしている。
一方入射器系建物でも,蓄積リングほどではな
いが地盤沈下を防ぐため,建物は切り土の上に建
設されている。
SPring-8 施設の電気の設備容量は,全体で 90
MVA ,内訳は蓄積リング系の第一特高が 60
MVA , (
2
0MVA, 2 バンクが加速器, 2
0MVA,
l バンクが建屋) ,入射器系の第二特高が 30
MVA である。蓄積リング棟の接地系は,
リング
棟が大地に対して接地を取りにくい岩上に建設さ
れているため,一周1. 5km のリング棟床面全体
に埋め込んだメッシュ筋で大地接地されている。
この事情から,短絡事故および落雷から機器を保
護するため施設内の弱電系の信号伝達には光ファ
イバーシステムが採用された。
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