Comments
Description
Transcript
荻上委員講演資料(PDF:1.8MB)
評論家 シノドス編集長 NPO法人 ストップいじめ!ナビ 代表理事 「データから見るいじめ対策」 荻上チキ [email protected] 私が何をしてきたか:いじめ対策のポータルサイトを運用 「命の生徒手帳プロジェクト」 手帳は、自治体や学校ごとに内容を変えられる ■学校の方針を明示 ■緊急連絡先の明示 ■いじめ対策の明示 ※体罰、家庭内暴力等、様々な問題事例に対する情報提供としても、生徒手帳等の活用は重要 ※現在、このような試みをしている学校は極めて少ないのが現状 ※一方で、この試みには、多くの手間や予算を必要としない いじめ研究のデータは何を教えてくれるのか いじめにはピーク、ブームがあるのか? ・いじめの定義変更、メディアイベントの発生によって大きく影響 ・そもそも「調査統計」と「実務統計」は異なる 「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/08/__icsFiles/afieldfile/2011/08/04/1309304_01.p いじめ自殺ばかりに注目すると、不登校リスクがスルーされる 文部科学省「平成21年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(小中不登校)について http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/08/__icsFiles/afieldfile/2010/08/05/1296216_01.pdf ※「逃げてもいい」とメディアは言う。しかし、「逃げる先」が「不登校」では、結局はリスクを個人 で丸抱えしろと言っているのに等しい。「逃げなくても済む環境」「どんな状態でも、教育を安心して 受ける権利を満たす社会の構築」「不登校児への適切なアプローチ」を視野にいれなくてはならない。 不登校をめぐる、学校と当事者の認識ギャップ 「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省、H26) 「不登校生徒に関する追跡調査報告書」(文部科学省、H26) いじめには傾向があること/例:いじめホットスポット ※いじめの起きやすい場所、時間、対称生徒などについての傾向を、科学的・疫学的に分析する 必要がある ※その分析を踏まえ、効果的な処方箋を考えるという作業を抜きにして、いじめ対策は成立しない ⇒<祈り>だけでは、いじめは減らない 「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より作成 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/08/__icsFiles/afieldfile/2011/08/04/1309304_01.pdf いじめには傾向があること/例:ピーク学年 18000 学年別いじめの認知件数 15866 16000 14000 11489 12000 10000 8051 8000 6910 7415 7364 6000 4993 4819 4000 3680 3429 1922 2000 1015 0 小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3 とくに中学生男子のいじめは、小学校に比べて、「頻繁化・長期化」しやすい、すなわち「深 刻化」しやすいことが指摘されている。 森田洋次ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999) 「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より作成 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/08/__icsFiles/afieldfile/2011/08/04/1309304_01.pdf 厚労省のデータでも同様の傾向…但し、ゴールは本当に「仲裁」? クラスの誰かが他の子をいじめているのを見たときの対応の構成割合 厚生労働省『平成21年度 全国家庭児童調査』より http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/72-16b.html いじめ頻度はいじめ程度と相関する(エスカレーション) いじめ頻度といじめの程度(エスカレーション) しばしば残酷 時には残酷 余り残酷でな 全く残酷でな 合計 い い 頻繁にいじめが 29.2%(20) あった 62.5%(45) 6.9%(5) 1.4%(1) 100%(72) ときどきいじめが 5.7%(20) あった 62.2%(219) 30.1%(106) 2.0%(7) 100%(352) ほとんどいじめ がなかった 27.5%(66) 55.8%(134) 15.0%(36) 100%(240) 1.7%(4) 鈴木智之「学校における暴力の循環と「いじめ」― 大学生を対象にした回想形式の調査結果を起点 として」 体罰といじめの発生は相関する いじめ→ ときどき ほとんど まったく ↓体罰 頻繁 しばしば 22.0%(20) 54.9(50) あった 2.2(2) 91 8.4(22) 262 ほとんど 6.2%(17) 42.9(117) 41.8(114) 9.2(25) なかった 273 ときどき あった 20.9(19) 合計 10.3%(27) 57.6(151) 23.7(62) まったくな 5.7%(7) かった 9.5(71) 合計 29.5(36) 40.2(49) 24.6(30) 122 47.3(354) 32.6(244) 10.6(79) 748 鈴木智之「学校における暴力の循環と「いじめ」―大学生を対象 にした回想形式の調査結果を起点として」 教師の抑圧的な態度といじめは相関する 服装・髪型指導といじめ頻度 頻繁 ときどき ほとんど まったく 合計 34.5%(50) 4.8%(7) 100%(145) 非常に厳し 13.8%(20) い指導 46.9%(68) 比較的厳し 10.3%(30) い指導 50.7%(147) 31.0%(90) 7.9%(23) 100%(290) あまり厳しく 6.8%(18) なかった 47.5(126) 31.3%(83) 14.3%(38) 100%(265) ほとんど指 導はなかっ 8.0%(4) た 26.0%(354) 44.0%(22) 22.0%(11) 100%(50) 鈴木智之「学校における暴力の循環と「いじめ」― 大学生を対象にした回想形式の調査結果を起点 として」 教師の理不尽な態度といじめは相関する 「連帯責任」というかたちで罰を受けたこととクラスでいじめが生じること(小学校5・6年 生の回答) よくある ときどきある あまりない まったくない D.K.,N.A. 計(N) よくある 17.9 28.6 21.4 32.1 0 100.0(28) ときどきある 13.8 21.1 28.4 33.9 2.8 100.0(109) あまりない 7.4 21.1 36 34.9 0.6 100.0(175) まったくない 3.1 11.5 37.2 47.1 1 100.0(382) 0 11.1 33.3 50 6.3 16 34.8 41.6 D.K.,N.A. 計 5.6 100.0(18) 1.3 100.0(712) 「いじめ問題と教師―いじめ問題に関する調査研 究(Ⅱ)― 」 教師の寛容な態度といじめ減少は相関する 担任の先生が話をよく聞いてくれることとクラスでいじめが生じること(小学校5・6年生の 回答) よく聞いてく ときどき聞 あまり聞い まったく聞い D.K.,N.A. れる いてくれる てくれない てくれない 計(N) よくある 21.4 32.1 39.3 3.6 3.6 100.0(28) ときどきある 29.4 49.5 17.4 1.8 1.8 100.0(109) あまりない 45.7 36 15.4 2.9 0 100.0(175) 49 38.5 9.7 1.8 1 100.0(382) 44.4 44 44.4 39.5 0 13.2 0 2.1 11.1 100.0(18) 1.3 100.0(712) まったくない D.K.,N.A. 計 「いじめ問題と教師―いじめ問題に関する調査研 究(Ⅱ)― 」 疎外感と極端なエスカレーション度合いは相関する 学校の成績 いじめ関連非行 一般非行 男子 仕返し 誘発 加害 小計 女子 男子 女子 加害 全体 いじめ態 いじめ態 全体 度肯定 度否定 いじめ態 いじめ態 度肯定 度否定 たいへん よい 1.4 ― 0.9 ― 0.9 1.2 0.9 0.6 ― ― まあよい 2.8 4 6 ― 6 6 8.6 2.3 1.2 3.9 まんなか ぐらい 9.8 24 22.1 19.5 22.1 22.1 24.3 25 20.2 31.4 あまりよく ない 34.3 37.3 36.8 29.3 36.8 36.8 34.7 30.1 29.8 3.33 よくない 51.7 33.3 34.2 48.8 34.2 34.2 31.5 42 48.8 31.4 ― 1.3 ― 2.4 ― ― ― ― ― ― 不明 計 143人 100.0 75人 100.0 218人 100.0 41人 100.0 798人 100.0 342人 100.0 222人 100.0 176人 100.0 84人 100.0 51人 100.0 いじめに関わる非行の実態調査研究 疎外感と極端なエスカレーション度合いは相関する 学校での楽しさ 女子 一般非 行 男子 加害 全体 いじめ関連非行 男子 仕返し 誘発 加害 とても楽 しい・ま あ楽しい 楽しくな い・あま り楽しく ない わから ない 不明 小計 女子 肯定 否定 全体 肯定 否定 51 41.3 47.7 36.6 62 57.9 70.3 54.5 47.6 64.7 41.3 53.3 45.4 56.1 31.1 36.8 24.8 38.6 44 31.3 5.6 4 5 7.3 6.5 5.3 4.1 6.3 7.1 3.9 2.1 1.3 1.8 ― 0.4 ― 0.9 0.6 1.2 ― いじめに関わる非行の実態調査研究 いじめの社会理論 いじめは環境により「育てられる」もの -エスカレーション:黙認や放置がいじめを拡大させること -マウンティング:狭い空間で、互いの序列づけを確認するために攻撃すること -ラベリング:レッテル貼りのサインによってターゲットが「つくられる」こと -コミュニケーション操作系のいじめ:日本では暴力系よりもこちらが多数派 -通報者、スイッチャー、シェルター:友人の役割は「仲裁者」だけではないこと ⇒通報などをしやすい環境は学校・教師・保護者により作ることができる ストレッサー仮説 ‐ 学校ストレス、家庭ストレス、友人ストレスなどの発露としての逸脱行動 ‐ いかなるストレスケア、アンガーマネジメントが可能となるか ⇒生徒の個別性・多様性に配慮した教室空間の構築 様々な提言⇒SC・SSWの配置、授業案、クラス制度・教育バウチャー LGBT とは L=レズビアン(非異性愛女子) G=ゲイ(非異性愛男子) B=バイセクシャル(両性愛) T=トランスジェンダー (FtM、MtF、FtXなど自らの性別に違和感がある人達の総称) 日本では「セクシャルマイノリティ」とも表記される。 LGBTへのいじめや暴力被害の有無 違和女子 違和男子 非異性愛女子 非異性愛男子 全体の割合 78% 54% 48% 55% 57% 53% 53% 51% 49% 45% 36% 35% 34% 30% 23% 19% 23% 20% 18% 12% 11% 12% 10% 7% A. 身体的ないじめや暴力 B. 言葉によるいじめや暴力 C. 性的ないじめや暴力 D. 無視・仲間はずれ いのちリスペクト。ホワイトリボンキャンペーン「学校生活調査」より作成 E. 上記なし 32% LGBTへのいじめの時期 70% 62% 60% 57% 55% 50% 40% 30% 20% 25% 22% 19% 17% 16% 26% 23% 22% 21% 33% 30% 28% 38% 36% 34% 30% 47% 43% 40% 37% 36% 45% 39% 37% 35% 33% 45% 44% 43% 40% 45% 44% 41% 38% 39% 35% 32% 26% 21% 17% 16% 13% 16% 10% 0% A 小 1 B 小 2 25% C 小 3 違和女子 D 小 4 E 小 5 違和男子 F 小 6 G 中 1 H 中 2 非異性愛女子 I 中 3 17% 16% 15% 13% 14% 11% 10% 9% J 高 校 ・ 高 専 K 高 校 ・ 高 専 L 高 校 ・ 高 専 1 2 3 非異性愛男子 6% 4% 2% 0% O そ れ ら 以 外 の 時 期 全体の割合 いのちリスペクト。ホワイトリボンキャンペーン「学校生活調査」より作成 LGBTへのいじめ継続年数 50% 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 1年 2年 違和男子 違和女子 3年 非異性愛女子 4年 非異性愛男子 5年以上 平均 %はいじめられた人に占める割合 いのちリスペクト。ホワイトリボンキャンペーン「学校生活調査」より作成 教師の介入には確かな効果がある 森田洋司『日本のいじめ』および日本教育政策研究所のデータより 適切な介入を増やすべく、教師が働きやすい環境をつくることも重要 いじめ対策の方向性について ●「予防」「発見」「対策」「検証」の重要性 1)いじめを減らすには「予防」が必要 2)いじめ被害を最小化するためには「発見」が必要 3)いじめ被害を終わらせるには「対策」が必要 4)いじめの実態を知り、何が効果的な手段だったかを知り、研究し続けるために は「検証」が必要 ⇒適切なPDCAサイクルが重要 「いじめ問題は、教員の労働問題である」という視点 小学校教員が学校にいる時間は 07年調査に比べ17分長くなって いる(11時間29分)。 その一方、家出の仕事時間は約 8分減少している(67.9分)。土日 の平均出勤日数は1.7日で、教職 経験人数が少ないほど出勤日数 が多い。 教員生活の実態と意識 - ベネッセ教育総合研究所より 教師の多忙化を改善せずに、新たなリソース投入は困難 教員生活の実態と意識 - ベネッセ教育総合研究所より 日本教育のマクロ的課題 指導実践 参加国平均 生徒は課題や学級での活動にICTを用いる 生徒は完成までに少なくとも一週間を必要とする課題を行う 日本 38% 9% 28% 14% 72% 生徒のワークブックや宿題をチェックする 61% 全生徒が単元の内容を理解していることが確認されるまで、類似の課題 67% を生徒に演習させる 32% 新しい知識が役立つことを示すため、日常生活や仕事での問題を引き合 68% いに出す 学習が困難な生徒、速度が速い生徒には、それぞれ異なる課題を与える 51% 44% 22% 生徒が少人数のグループで、問題や課題に対する共同の解決策を考え出 す 47% 33% 前回の授業内容のまとめを示す 74% 60% 「国際教員指導環境調査」(TALIS)2013より作成 日本教育のマクロ的課題 教員の仕事時間1 参加国平均 生徒に対する教育相談(生徒の監督指導、インターネットによるカウンセリング、 進路指導、非行防止指導を含む)に使った時間 日本 2.2 2.7 生徒の課題の採点や添削に使った時間 4.9 4.6 学校内での同僚との共同作業や話し合いに使った時間 2.9 3.9 学校内外で個人で行う準備の計画や準備に使った時間 7.1 6.7 指導に使った時間 19.3 17.7 仕事時間の合計 38.3 53.9 「国際教員指導環境調査」(TALIS)2013より作成 日本教育のマクロ的課題 教員の仕事時間2 参加国平均 日本 2 その他の業務に使った時間 2.9 2.1 課外活動の指導(例:スポーツ活動や文化活動)に使った時間 7.7 保護者との連絡や連携に使った時間 1.6 1.3 2.9 一般事務業務(教員として行う連絡事務、書類作成その他の事務業務を含む) に使った時間 学校運営業務への参画に使った時間 5.5 1.6 3 「国際教員指導環境調査」(TALIS)2013より作成 学級人数は時間外勤務時間を増やす 学級規模別の時間外勤務時間(月間) 80 74時間55分 75 70時間01分 70 71時間18分 65 62時間50分 60 55 25人以下学級 26~30人学級 31人から35人学級 35人超学級 ※全日本共同組合「時間外勤務時間」より 部活動指導時間 中学校教員の部活指導時間の国際比較 9 8 日本 7 6 5 4 米 3 韓 豪 2 1 伊 芬 仏 瑞 0 20 30 英 40 50 60 労働時間 ※OECD「TALIS」2014より ストップいじめ!ナビ 代表理事 荻上チキ [email protected]