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泥炭地盤におけるカードボードドレーンと 盛土補強併用工法の適用性
535 K - 14 第40回地盤工学研究発表会 (函 館) 2 0 0 5 年 7 月 泥炭地盤におけるカードボードドレーンと 盛土補強併用工法の適用性について(その2) 泥炭 株式会社ダイヤコンサルタント バーチカルドレーン 同 ジオシンセティック 北海道開発局札幌開発建設部 ○正会員 佐藤 春夫 正会員 高坂 敏明 清見 博英 細矢 武司 林 宏親 同 北海道開発土木研究所 国際会員 1.はじめに 高含水比の泥炭を主体とする軟弱地盤上に道路盛土を施工する場合, 盛土の安定性,残留沈下等の問題から大規模な軟弱地盤対策工が必要と なるケースが多い。近年,コスト縮減や工期短縮等が求められるなか, 新たな軟弱地盤対策工が模索されている。特に,凾渠・橋台等の構造物 位置における施工期間を短縮するために,従来であれば深層混合処理工 法等の比較的高価な工法を採用するケースが多かったが,近年,強制的 に地盤から排水させる真空圧密工法が採用されるケースが増えており, 当該路線 対策効果について非常に信頼性が高いことも確認されている。 一般盛土部については,構造物位置よりも時間的に余裕があるため, 更なるコスト縮減が模索され美原道路の軟弱地盤対策工として,カード ボードドレーン工法を主体とし,許容安全率に不足するせん断抵抗力を ひし形金網等の補強材で補う併用工法を提案した。本報告は,本施工に 先立ち,カードボードドレーン工+盛土補強工併用工法による試験盛土 図−1 を実施し,確認された対策効果について報告する。 泥炭分布図 本線 計画高6.0m 施工盛土厚 10.6m 2.土質構成 道央圏連絡道路美原道路(美原道路)の地盤は,図-1 に示す 水田 ように,高含水比の泥炭と軟弱な粘性土が厚く堆積する泥炭性軟 弱地盤であり,路線計画は高盛土で計画されている。 側道 側道 Ap1 深度3∼4m 有機質粘土層 Wn=70∼200% 深度7m 中間砂層 層厚4∼5m程度 Ap2∼Ac2 試験盛土を実施した地盤構成は,図-2 に示すように,上部から 水田 泥炭層 Wn=500∼700% As3 自然含水比 Wn500∼700%の泥炭層が,層厚 3∼4m,有機質粘性土が 深度12m 層厚 3m,中間砂層が深度 7m から層厚 4∼5m 程度堆積し,下部に海 成の粘土が層厚 10m 程度と厚く堆積する地盤である。 粘性土層 Wn=60∼70% Ac4 3.試験施工概要 深度20∼22m 試験施工ヤードは,図-3 示すように ・ カードボードドレーン+補強土工法(敷網2段ヤード) +サーチャージ工法 ・カードボードドレーン+補強土工法(敷網1段ヤード) 図−2 カードボードドレーン+ 敷網2段+サーチャージ 土質断面図 カードボードドレ ーン+敷網1段 無対策 ・緩速施工盛土(無対策ヤード) の3ヤード実施した。 試験施工は,ドレーンの有効性と緩速施工による盛土により,地盤定 数の検証を目的に実施した。 盛土速度は,時間的な制約からドレーン,無対策ともに,10cm/d で施 工を行った。 施工盛土厚は,10.6m を基本とし,サーチャージ区間については,さら 図−3 に 1.2m を追加した計画とした。 試験盛土配置図 Application of the card board drain and reinforced soil method on peaty soft ground, (part 2);Haruo SATO, Toshiaki KOSAKA(DIA CONSULTANTS CO., Ltd.),Hirohide KIYOMI, Takeshi HOSOYA(Hokkaido Regional Development Bureau), Hirochika HAYASHI(Civil Engineering Research Institute of Hokkaido) - 1071 - 4.試験施工結果 5.0 無対策(盛土施工中) (1)安定管理 4.5 無対策(盛土放置中) 土厚 3m を越えてから水平変位が卓越し,盛土厚 5.9m で日変位量 4.0 敷網1段(盛土施工中) 2cm/d 程度に発生し,盛土が不安定化したものと判断し盛土を中 3.5 止した。 3.0 盛土施工中の安定管理図を,図-4 に示す。無対策ヤードは,盛 S (m) 敷網2段,1段ヤードの盛土は,一次盛土として盛土厚 6.5m まで施工し,3ヶ月放置後に二次盛土を実施している。 敷網2段,1段ヤードに安定管理図は,δ/S が 0.2∼0.3 の範 敷網2段(盛土放置中) 2.5 H16.3.2 Hb=6.5(m) H16.3.3 Hb=6.2(m) 1.5 盛土立上り後は,破壊基準線に沿って推移し,盛土施工中の敷 1.0 網に作用する張力を図-5 に示す。実測値は,盛土載荷と伴に張力 0.5 が発生し,盛土立上り時には,104kN/m 程度が生じているが,立 敷網2段(盛土施工中) 二次盛土H16.8.17 Hb=10.5(m) 2.0 囲で推移し,安定した状態で盛土の施工が行われた。 敷網1段(盛土放置中) 二次盛土H16.8.28 Hb=11.6(m) H16.2.20 Hb=5.9(m) qj/qf=1.0 Fs=1.00 qj/qf=0.8 Fs=1.25 qj/qf=0.9 Fs=1.11 0.0 0 上り後は,収束する傾向を示している。 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 δ/S (2)沈下管理 図−4 安定管理図 ドレーンの計算値と実測値の比較を,図-6 に示す。設計当初からドレーン打設長が 20m と長尺となることから,ウェ ルレジスタンスを考慮しており,実測値は計算値とほぼ一致する結果となった。よって,泥炭地盤に対する Barron の式 の適用性が確認された。 二次盛土Hb=10.6m 12.0 12.0 一次盛土Hb=6.2m 10.0 施工盛土厚(m) 10.0 盛土厚(m) 8.0 6.0 4.0 8.0 6.0 4.0 盛土実績 盛土高計算値 計算値盛土厚 2.0 2.0 0.0 H15.10.6 H15.11.25 H16.1.14 H16.3.4 H16.4.23 H16.6.12 H16.8.1 H16.9.20 H16.11.9 H16.12.29 H17.2.17 0.0 11/1 12/21 2/9 3/30 5/19 7/8 8/27 10/16 12/5 1/24 全層 0 一次盛土立上り時 3/2 49.34kN/m 二次盛土立上り時 8/17 104.24kN/m -50 -100 -150 沈下量(cm) -200 -250 -300 地表面沈下量(cm) 1・Cv(ウエルレジスタンス考慮) ウエルレジスタンス考慮なし -350 -400 12/21 2/9 図−5 3/30 5/19 7/8 8/27 10/16 12/5 1/24 -450 H15.10.6 敷網に作用する張力 H15.11.25 H16.1.14 図−6 (3)周辺への変位 H16.3.4 H16.4.23 H16.6.12 H16.8.1 H16.9.20 H16.11.9 H16.12.29 無対策 100 各工法の施工中の変位を比較した結果を,図-7 鉛直変位図に示す。 無対策と比較しドレーン+敷網工法が変位の影響範囲は,無対策に比 べ影響範囲が小さく,真空圧密工法と同様の影響範囲であった。 盛土のり尻から27m(1.0∼1.5D) 10 1 0 このことから,カードボードドレーン+敷網工法は,周辺への変位対 策に対しても有効であることが確認された。 0 10 20 30 40 のり尻からの距離(m) 50 60 鉛直変位量(cm) カードボードドレーン+敷網工法は,試験施工により当該地盤には有 効であることが検証され,本工法を採用することによりコストの縮減が 盛土のり尻から11.0m(0.5D) 10 1 0.1 0 可能となった。ただし,今回の試験施工から安定,周辺への影響に対し 対する検証が行われるまでは至っていない。 今後は,長期的な沈下観測を行い長期沈下量の予測と,サーチャージ 盛土の長期沈下量の低減効果について検証を行っていく予定である。 10 20 30 40 のり尻からの距離(m) 50 60 盛土のり尻から12.0m(0.5D) 10 1 0.1 0 10 【参考文献】 北海道開発土木研究所:泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル,2002 20 30 40 のり尻からの距離(m) 図−7 1) 独立行政法人 2) ジオテキスタイルを用いた補強土壁の設計・施工マニュアル:財団法人 3) Sakaguti,Y:Paleogeographical saudies of peat bogs in northern Japan,Jour.Fac.Science,Univ.of Tokyo,Sec. 50 60 鉛直変位図 土木研究センター,2000 Ⅱ,Vol.12,Pt.3,pp.421-5132,1961 4) 佐藤春夫,高坂利明,清美博英,細谷武司,渡辺周市,林博親:泥炭地盤におけるカードボードドレーンと盛土補強 併用工法の適用性について(その1),地盤工学会北海道支部,第 45 回技術報告会,PP249∼252,2005. - 1072 - 70 真空圧密 100 鉛直変位量(cm) ては,有効であることが検証されたが,泥炭性地盤における長期沈下に 70 敷網 一次盛土 二次盛土 100 5.まとめ H17.2.17 ドレーンの計算値と実測値の比較 鉛直変位量(cm) 敷網に作用する張力(kN/m) 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 11/1 70