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11/07/27-17:19 日米同盟/拓殖大学教授 川上高司東日本大震災で日
11/07/27-17:19 日米同盟/拓殖大学教授 川上高司東日本大震災で日米同盟は変わったか?
2011/07/27-17:19
日米同盟/拓殖大学教授 川上高司
東日本大震災で日米同盟は変わったか?
■米軍「トモダチ作戦」の重み
■「2プラス2」開催の意義
■日本の政治基盤が揺らぐ中での日米同盟の展望
マイケル・グリーン(元米国家安全保障会議=NSC
=アジア上級部長)とダニエル・トワイニング(元国務
省政策立案スタッフ)は、7月19日のワシントン・ポ
スト紙で「東日本大震災の米国の人道支援活動で日米関
係は一時的に支えられたが、日本政府の政治的混乱が継
続し日本の約束不履行(沖縄基地問題と太平洋連携協定
=TPP=)のため米国は憤怒している」と論じた。
アメリカは東日本大震災直後に史上最大の救難復興活
動「トモダチ作戦」を展開した。戦後、これほど日本国
民が日米同盟の「価値」を感じたことはなかった。しか
し、震災から4カ月経った今、アメリカは瓦解する民主
党政権の状況をみて、冷静に日本の価値を値踏みしてい
る。
◇米軍「トモダチ作戦」の重み
東日本大震災前、日米関係は民主党の鳩山政権では極めて悪化していたが、北朝鮮によ
る韓国の天安号沈没事件(昨年3月)と延坪島砲撃事件(9月)で当該地域の緊張が高ま
り、さらにその直後、尖閣諸島中国船衝突事件(9月)が発生して正常化した。日米同盟
が対北朝鮮のみならず対中抑止にきわめて重要なことが再認識されたからである。今年1
月には前原誠司外相(当時)が訪米し、クリントン米国務長官と日米同盟の深化について
合意、次いで訪日したゲーツ米国防長官は「昨年5月の日米合意(普天間の辺野古移転)
に沿って実施する」と明言した。その結果、来るべき日米安全保障協議委員会(2プラス
2)までに沖縄問題をどう対処するかが焦点となっていた。
しかしながら、日本政府の意気込みとは裏腹に、沖縄の理解は得らなかった。一方、米
政府は米上院から「具体的進展がない場合にはグアムへの移転費用は認められない」とい
う最後通牒を突き付けられていた。またその間、日米の中核的な交渉プレーヤーが相次い
で交代。現行案推進派の旗頭であった前原外相とメア国務省日本部長が相次いでスキャン
ダルで辞任した。
このような中、3月11日に東日本大震災が起きた。
それに対して自衛隊と米軍は、共同して迅速に対応し
た。防衛省は3月11日、地震発生後直ちに災害対策本
部を設置し、大規模震災災害派遣命令と原子力災害派遣
命令を出し、翌12日、東北方面総監を長とする統合任
務部隊(JTF−TH)を編成した。一方、米軍は災害
発生後直ちに「トモダチ作戦」を発動、災害救援活動に
当たった。
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米国は今回の大震災が日本の「有事」に匹敵するほど
深刻であると判断し、統合任務部隊(JTF)を、災害
有事として統合支援部隊(JSF)として日本で初めて立ち上げた。戦争時に立ち上げる
JTF(今回はJSF)は、陸海空と海兵隊を一元的に指揮統制して大統領直轄になる。
横田基地に設立されたJSFの指揮官にはウォルシュ米太平洋艦隊司令官が派遣され、自
衛隊から陸将補をトップとする連絡チーム(約10人)が加わって日米の任務調整所とな
り、事実上、日米は戦時態勢となった。
一方、日本側の市ヶ谷の防衛省統合幕僚監部には米海兵隊准将(約15人)、仙台市の
自衛隊の現地司令部には米海兵隊大佐(約50人)が送り込まれ、それぞれ「日米共同調
整所」となった。これら共同調整機関はガイドラインなどでのシナリオ上のものであった
が、それが初の日米共同作戦行動となった。
◇「2プラス2」開催の意義
ここで考えねばならないのは、「日米関係で『何が変
化』し『誰』が責任を取るのか」(マイケル・グリー
ン)である。東日本大震災を経て、自衛隊と米軍との関
係は強化されたが、日本側で「政治不在」の状況が続い
たため、米政府との協力は緊密には実行されずむしろ不
安定材料となってしまった。このような状況の中で政策
担当者ができることは、「2プラス2」で震災前からの
日米間の懸案事項である普天間問題に一定の決着を付
け、東日本大震災後の日米同盟の価値を再確認し、他の
懸案事項を論議することであった。
「2プラス2」開催前には、菅直人首相をはじめ閣僚
が「沖縄詣で」をした。しかし、沖縄は東日本大震災前
と全く変わらず、政治家の訪沖は米国に対する「アリバ
イ作り」だと揶揄(やゆ)された。しかも、今回の在沖
海兵隊の大震災での活動は、「(在日米軍が)普天間飛
行場の地理的優位性や在沖海兵隊の存在意義をアピール
し」「政治宣伝のために支援していると言っているよう
なもので不謹慎だ」(沖縄タイムズ)といった報道がな
されていた。
そして5月12日、国防総省に対してレビン、マケイ
ン、ウェッブの上院議員が、第一に米国の財政赤字と、東日本大震災への日本政府の巨額
の財政負担のため、第二に沖縄およびグアム住民の移設反対から、辺野古移転計画を見直
すべきだ、との内容の書簡が提出された。この時点で、米国では大半の専門家は「普天間
の辺野古移転はもはや不可能である(Futenma is dead!)」と判断していた。
このような中、6月21日に「2プラス2」が開催された。そこでは普天間問題は実質
的に「棚上げ」された。その理由は、第1に、日米政府間の合意事項である、第2に、担
当者の交代(4人の閣僚のうち3人)を目前に変更は不可能であった。つまり合意事項を
確認して次の担当者につなげば「誰が責任を取るのか(Who would be blamed!)」とい
う責任問題を回避可能である。第3に、普天間移設問題を「棚上げ」にし日米同盟の弱体
化を防げる。
こうして「2プラス2」では、普天間問題は東日本大震災後の日米同盟を再確認(リア
シュアー)し、2005年に合意した「共通の戦略目標」を更新して北朝鮮と中国に対す
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る抑止の強化を訴えた。また、これまで日米2国間協力を強調していたが今回は、3カ国
協力(日米豪、日米韓)に言及した。米国の相対的パワーの低下に伴う当該地域に対する
コミットメントを多国間協力で補おうとするものである。
◇日本の政治基盤が揺らぐ中での日米同盟の展望
オバマ米大統領は来年の大統領選挙に勝利するため、財政赤字削減を至上命題とする。
そのため金のかかる海兵隊のグアム移転を取り止めて、国防費の削減を行う可能性は十分
にある。米国の安全保障上の最大の懸念は、いかに軍事的に台頭する中国に対し軍事的
ヘッジをするかであるが、自国のパワー低下のため日本や韓国といった同盟諸国の協力が
不可欠となる。ところが、当てにしていた日本の自衛隊は「震災シフトを継続せざるを得
ず、地域的脅威への対処も難しくなる」(米新安全保障センター)。
そのことから、オバマ政権は中国からの脅威に対処す
るために、中国への宥和政策の傾向を強めることになろ
う。2011年1月の胡錦濤訪米以来、オバマ政権は中
国との関係をリセットした。5月には第3回米中戦略・
経済対話(SED)をワシントンで開催し、そこで合意
したアジア太平洋協力協議の初会合を6月にハワイで開
催し、軍事的な取り決めを話し合った。ほぼ月に1度の
ペースで大統領、副大統領級の会合を重ね、まるでG2
体制(米中の平和)を確立する勢いである。
この先に懸念されるのが、日米同盟の形骸化の問題で
ある。
米中関係が政治的に良くなれば、海底資源を求める中国は、海軍を、第1列島線を越え
第2列島線へと投入しやすくなる。そうなれば、米軍は中国の「A2AD戦略」(アクセ
ス拒否・エリア拒否能力)に対抗するため「Air Sea Battle戦略」(空と海の戦力を一体的
に運用し最大限に活用する戦略)を取り(パネッタ国防長官)、日本に駐留する米軍態勢
を見直すことも考えられよう。
一方、米国との関係を進展させている中国は、尖閣諸島近海への漁船や海軍を展開する
誘惑に駆られるであろう。その時、米国は以前のように「尖閣諸島は日米安保の適応範囲
である」との宣言政策を行使できるのであろうか。
ジョージ・ワシントン大学のチャールズ・グレーザー教授はフォーリン・アフェアーズ
誌(2011年No.5)で、「米中は『自制と協調』を選択して共存の道をとり、この
時、米国は同盟国が不可欠かどうかを再考するだろう」と論じる。現在、日本は、米国か
ら「見捨てられる危機」に直面している。もしそうなった場合、日本は自主防衛を選択せ
ねばならないが、それができない場合、中国へのバンドワゴン(迎合)の道しか残されて
ない。日本の民主党政権はそれを望んでいるのであろうか─。
川上高司(かわかみ・たかし)
拓殖大学海外事情研究所副所長・教授。
1955年熊本生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)、83年フレッ
チャースクール外交政策分析研究所研究員、88年(財)世界平和研究所
研究員、97年防衛庁防衛研究所主任研究官、01年北陸大学法学部教授
を経て04年より現職。著書に『アメリカ世界を読む−歴史をつくったオ
バマ』『米軍の前方展開と日米同盟』『米国の対日政策−覇権システムと
日米関係』『国際秩序の解体と統合』、共著に『アメリカ外交の諸潮流』
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